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Angel・Hyper

驟雨
「7th story   理想郷と4戦士」





7th story

「花畑か・・都会じゃあまり目にしなかったからな。」

健一は思わずぽろりと漏らした。一面に広がる色鮮やかな花。
まるで夢の国みたいだった。

健一が住んでいる地域にはここまで広い花畑を目にすることなどありもしない。
開発のために破壊された自然と、それに伴って建てられた高層ビル。
そのビル郡が『花畑』のような存在だったのだ。

「みんなとはぐれちまったな。早く合流しないと・・。それよりここは一体どこなんだ?」

全くいいタイミングだった。
その答えはこの人物の口から出された。

「七瀬・・健一さんですね?いや、本当は石垣愛美と呼ぶべきですか・・」

そこにいたのはキルだった。
不敵な笑みを浮かべ、こちらを凝視している。

「キル!これはどういうことなんだ!?」

「以前のあなた方なら私の魔法も簡単に防げたでしょうに。」

「フン、今ならお前を倒せるんだからな!!」

健一は『剣を抜き』、キルに切りかかった。
が、太刀筋は残ったものの、切れたのは花の茎や葉だけだった。
健一は身体ごとキルをすり抜けたようだ。

「くっ、どうなってるんだ・・?」

体勢をすばやく立て直し、振り向いた。

「そういきり立たないでくださいよ。ここがどこなのかお教えしようとしたところです。」

「何!?」

「ここは私の作り出した世界。私の望んだ理想郷なのですよ。憎しみも、痛みも、嫉みもない・・。」

「お前が作り出した世界だと?」

「そうです。永遠に続く楽園・・」

「永遠に!? それじゃここからは出られないのか!?」

「出られる方法は無いわけではありませんが・・おそらく出るのは不可能でしょう。まあせいぜい抗うことです。私はじっくりと見させてもらいますよ・・。」

そう言い残すとキルはスーッと消えていった。
残された健一はぼう然と考え込んでいた。

「出る方法があるのだとすれば・・・! どんなに過酷でも、やり遂げてみせる!」









「助けに来たのにこの様じゃなぁ・・・」

愛美も花と草の上に横たわっていた。
なかなか起き上がろうとしないのはこの場所がとてつもなく心地よいからだ。
今まで感じたことのない気持ち良さ。
心がすうっと透き通っていく感じ。

「ふう、なんかいい気持ち。風に吹かれて・・花の香りが鼻を通って。」

「その快感がいつまで続きますかね、石垣愛美さん? ・・いや、七瀬健一さん。」

あえて入れ替わり前で呼ばれた愛美は一瞬戸惑ったが、
すばやく上半身を起こした。
起き上がった拍子に背中についた花びらが舞った。

「だ、誰!?」

「そう、その快感こそ私の最大の願い・・。苦痛が何も無い世界、それがこの理想郷なのです。」

声のする方向に振り向くと、そこにこの事件の首謀者がいた。

「キル! 一体なにをしたの!?」

「あなたのボーイフレンドにも同じことを聞かれましたよ。」

「健一にも? 健一に会ったの!?」

「同じように言ってきました・・。共にこの世界にいるのです。探せばいつか会えるでしょう。探すのは至難でしょうが・・。なにかヒントでも差し上げましょうか?あなたは華麗ですから特別に・・。」

「あなたの言葉なんかいらない! 私の力で健一を、みんなを見つけてここから出てみせる!」

「・・そうですか。残念です。」

そう言うとキルは消えていった。
その場に佇む愛美は1度下を向き、そして目線を前へと向けた。

「あきらめない・・例えどんなに難しくても、どんなに過酷でも・・みんなを信じてるんだから!」









「我としたことが・・・!」

悔しさのあまり、下唇(?)を噛むリオ。
リオもまた別の場所に飛ばされていた。
リオのみ、飛ばされた場所が花が咲き乱れる場所ではなく、地肌が露になった荒れ地だった。

「ここは・・」

リオは乱れた服を直しながら呟いた。
耳をピンとたて、辺りを探った。

リオは気配を探り当てた。
髭がピクッと動き、ゆっくり振り向いた。

「ネコとはまた不可解な生き物だ・・・人間に飼われるはずの生き物がなぜ自分の意志をもって行動するのか。その意味はまったく無に等しい。」

そこにはキルがいた。
両手を広げ空を見上げながらしゃべっている。

「フン、なにを言いだすかと思えばくだらぬ。どんな生き物にも意志はあるものだ。」

「ネコごときに使命だの、運命だのが存在するとでも言うのですか? これはおもしろい。ネコは人間に近づこうとするあまり、頭がおかしくなったようです。」

「そのセリフ、そのまま貴殿にお返しいたそう。狂気なのはそなたではないか?」

「・・・っ。たかがネコの行く末を見つめることに気は向きませんが・・・いいでしょう。せいぜい粋がることです。」

スーッとキルの姿が揺らいでいく。
リオはその姿をじっと見つめた。

「我にもやるべきことがある。どんな姿だろうと、我は・・・」









「ひっ、ひっつくなっつ〜の!」

「ゼロ、そんなに照れなくてもいいんじゃないの?」

「うっ、うるさい!お前だって仮に男で急に女の子になったりしたら尋常じゃいられないぞ!」

「でもお姉ちゃんも健一お兄ちゃんも普通に生活してるけど?」

「日本人とフランス人を一緒にするな!」

と、強気のゼロだけどまだ私の手から逃れることができていない。
私のほうが力が強いんだ!なんてちょっと思ったりしている。
私はクスクス笑いながらゼロを見た。

膨れっ面のゼロは本当にかわいく見えた。
こないだまでの生意気なガキの姿はどこへやら。
右手に収まるゼロの白い手がそれを物語っている。

「っ、・・優。ちょっと足を止めたほうがよさそうだ。」

「えっ? ・・・なるほど、やっと現れたってワケね。」

2人の目の先に立つ背が高い人物。
顔を紫色の布で覆い、じっとそこに立ち尽くしている。

「・・・」

「さ〜て、やっと本領発揮だ。魔法は使えないが・・オレたちにはこれがある。」

ゼロは両手を差し出し、魔装である長刀を出現させた。
いつのまにか白い手は私の手から放れていた。

「相手もやりそうね。ゼロ、油断しないでよ。」

「心配するな。それほど落ちぶれちゃ居ないし、この姿の方がむしろ身軽に動けてちょうどいい!!」

ゼロは女の子とは思えないスピードで切りかかっていった。

「うあああ!!」

長刀をすばやく回し、身体ごと相手を切裂いた・・つもりだった。

「何!? 避けただと!」

「すばらしい身のこなしだ・・・」

気づくと相手はゼロの背後に立っていた。
そして片手を突きだしている。

「させないよ!」

私はすかさず弓を引き絞り、矢を放った。
魔力は使えなくても常に魔装には魔力が宿っている。
矢は、氷の帯を纏いながら向かっていった。

「・・・」

しかし相手はまたも素早くかわし、矢も外れてしまった。

ゼロは私の側までダッシュで移動してきた。
ゼロのスピードもさることながら、相手の動きもかなり俊敏だ。

「優、気をつけろ。奴は、けた違いに強いぞ。」

ゼロは額から一筋汗を流しながら言った。

「う、うん・・・」









「お前がデルタの刺客ってやつか?」

「いかにも・・・。我が名は”刺客・ダイシン”。またの名はファリプス!」

ファリプスは空へ両手を伸ばす。
健一が出会った刺客は強靱な肉体と騎士道精神を持つ者だった。

ファリプスの右腕に大剣、左腕に巨大なモーニングスターを握っている。

「やっと我を楽しませてくれそうなな相手に出会えたぞ!」

ファリプスはモーニングスターをブンブン振り回し、
大剣を肩にポンポンと当てている。

健一はぐっと歯を食いしばり、左手をギュッと握り締めた。
そして右手を差し出し、青く輝く剣を出現させた。

「聖兵と戦ったときも苦労したが・・こいつは厄介だぞ。」

「さてと・・・いかせてもらうぞ!」

ファリプスはモーニングスターを振り上げ、
『オレ』は向かってくるモーニングスターを剣で受け止めようとした。
が・・・

「遅い!」

ファリプスの痛烈な蹴りがオレのわき腹に直に入った。

「!!」

オレはどのくらいだろう、花畑の上を横滑りに転がった。

「ぐっ・・あいつ、武芸だけじゃなく体術も使えるのか・・。こっちも本気でいかないとな・・・。」

オレはわき腹を押さえながら立ち上がった。
かなりの痛みが走る。
立ち上がって歩くのも困難だった。

「・・・。」

オレは目を閉じて心を集中させた。
アイツの動きを見るんじゃない。
読むんだ。感じろ。

「なんだ! もう終わりなのか!?」

ファリプスの気配が近づく。
オレは藍色の瞳をカッと見開いた。

「ふっ! もうオレはお前の攻撃は二度と受けない!」

オレは鼻で笑った。

ぐわん!!

モーニングスターが花や草を刈る。
だがオレは刈ることができなかった。

「!!」

オレはモーニングスターを触れずに片手を差し出して受け止めた。

「なっ!?」

「だが・・・腕はあっても心(ここ)がまだ未熟・・・勝負アリだ。」

オレはあいたもう片方の手で胸を指さした。
そして受け止めたモーニングスターを粉々に粉砕した。

「ぐおおおお!!? 一体、何をしたぁ!? 魔法は・・使えないはず!」

ファリプスは砕け散ったモーニングスターを目の当たりにし、当惑している。 
オレは剣をファリプスへ向けた。

「さあな。言う必要でもあるのか?」

「くっ! まだだ!」

ファリプスは剣を掲げ、こちらに向かってくる!
オレは剣をすかさず操った。
剣技はすでに”あの戦い”で習得済だ。

ファリプスの剣を一合一合、一寸の狂いもなく受け止める。
鉄の打ち合う音が耳の中でこだまする。

「剣の方はそうでもないようだな・・」

オレはファリプスに軽い笑みを浮かべて言い放った。
直後、ファリプスの表情に怒りが混み上がった!

「!」

ファリプスはオレの挑発に乗った。
ガイン! とオレの剣をなぎ払うと、一気に突き攻撃をはなってきた!

「ん!!」

オレは間一髪でその強烈な突きをかわした!

「まったく、ひどい蹴りを入れてくれるもんだ・・・」

斬!

オレの剣筋はファリプスの身体を通過した。
もちろん殺すつもりは最初から無かったのだから急所ははずした。

「ぐおお!」

「あんた・・いい腕だが・・・心の方が弱いな。オレがさっき使ったのは心術。心の力だ。」

オレは倒れ込んだファリプスに向かって言った。
血を流し、どの花も赤く染まっていった。

「っ!! ああ!」

あえぐファリプスを見てちょっと哀れになった。
だが、ここから出るためだ。
ここへ閉じこめたそっちが悪いと開き直った。

「大丈夫。急所ははずした。傷口でも押さえてるんだな。さて、出口を教えてもらおうか。」

「・・・クッ・・・ククク。」

「なっ、なにがおかしい!?」

オレは不敵に笑うファリプスを見て言った。
ファリプスは鼻で笑うと語り出した。

「フン・・我以外にも刺客はいる。そいつらが鍵・・だ。我は刺客の中で・・最下の実力者。我1人、倒れたとて・・」

ファリプスはそれ以上なにも言わなくなった。
あんまり考えたくないが・・どうやら死んだようだ。

「あと3人いるのか。だがこっちも信頼できる仲間がいる。あいつらも・・戦ってるのか。」

オレは剣を元のリングに戻しながら言った。
そして掌に収まったリングをぐっと握り締めた。








「キサマ・・・何者だ?」

リオはその巨体を見上げながら言った。
目の前に現れた自分の身長のおよそ6倍はある大男。
もはや人間では考えられない身長だ。

右手にこれまた巨大な棍棒を持ち、
片目がないのもリオには見えたようだ。
月閃華戟を巨人に突きつけた。

「我・・・刺客・・・クラバー・・・別の名・・・エスプメージ!」

途切れ途切れの言葉を発する巨人クラバー。
クラバーは棍棒を振り上げ、リオをなぎ払った!
リオは戟で受け止めたものの、その小さな身体は数十メートルと言う距離を吹き飛ばされた。

「ぐっ!!」

リオは地面に背をつける前に受け身を取り、
なんとか着地はしたが、その衝撃は大きかったようだ。

リオは体勢をたて直そうとしたが、クラバーの動きは思ったより素早かった。
ドスドス地をつく走りでリオに近寄ると、失われた片目から赤い光球を放ってきたのだ!

リオは辛くもかわすことができたが、光球が着弾した跡は大きく抉れていた。

「なんという破壊力・・・それにスピード。だが・・・それだけじゃ我には勝てん!」

リオは戟を地に立て、心術で周囲に散乱した岩石を操り、クラバーの胸元へ投げ込んだ!

「ぐ・・・お。」

クラバーは一瞬怯んだが、あまり効果は期待出来ない。
その隙にリオはクラバーの背後へ回り込んだ。
クラバーの持つ棍棒にジャンプして飛び乗ると、クラバーの巨体を上り始めた!

「んん!!」

そしてリオは頭の上に上りきると、戟を頭に突き立てた!

「ぐぎゃああ!!!」

クラバーは大きな叫び声をあげる。
そしてリオを振り払わんと首を左右に大きく振り回し始めた!

「くっ・・」

リオは戟に必死にしがみついた。
そして首の動きに合わせて戟を引き抜くと、くるりと空中で身を翻し、地に足をつけた。

「あがが!!」

クラバーはまだ痛みに苦しんでいた。
だが・・

「ゆ、許さん!」

クラバーの怒りをかったようだ。
クラバーは懇親の力を込め、棍棒を振り、無き片目から光球を乱射してきた!!

が、リオは落ち着いて棍棒を避け、光球の着弾個所を見極めた。

「所詮計画性の無い乱れ撃ち・・・散るがいい!」

リオは戟をクラバーに向けると、
戟はひとりでにその柄を伸ばし始めた。
そして先端の刄がクラバーを貫く!

「ぐうううう・・・」

クラバーは暴れるのを止めた。
というより、もう暴れることなどできそうもない。
リオが戟を引き抜くと、クラバーはそこへ轟音とともに倒れ込んだ。

「我に勝てない理由・・己の御心の強さ・・戦闘の腕のみではない・・」

リオは長いマントを翻し、
倒れたクラバーに背を向け、歩き出した。

「優たちもここにいるのだな。早く合流しなければ・・・!」








あとがきですよ〜



そう・・そうなんです。
なぜ今回こちら側の人間&ネコは強いのか!
それは心の強さにあるのです。
信念、願い、祈り。そういう思いがキルより遥かに勝っていた。
それだけのことなんですけど、
魔力を使うことのできないこの理想郷ではおおいに反映されるのです。

っていうことなんですが・・・ダメでしょうか。
もうちょっとボロボロにさせてあげたほうが良かった・・?
最初のキルの挑発に乗らず、自分の気持ちを押し通すというシーンをあえて入れてみたんですが・・・

とりあえず7thは華麗な2人の戦闘。
なので萌え〜なシーンは次までお預けです・・・
次話は女の子達の美麗な戦闘が繰り広げられ、
萌え〜な特典つき! なのです。

鼻水が最近ひどい、驟雨でした。

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