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「え〜では自己紹介から・・・
 私、石垣優! えーと高校1年生の女の子♪ ・・・なんか『知ってる』って目ね。
 それはそうだけど、改めてよろしく。今年から、朝布学園の生徒になりました!
 お姉ちゃんの後を追って、今は高1としての生活を過ごしてます!
 最近お姉ちゃんと健一お兄ちゃんのラブラブっぷりしか出てこないから、今回は私が主役っ!
 ・・・そんなわけで『Angel・Hyper』、お楽しみください♪」



Angel・Hyper

驟雨
1st Storyのようなプロローグ?」





1st story

「優ちゃん! 一緒に帰ろ!」「うん! 今行く!」

 空が黄金色に染まり、陽は傾き雲の姿が薄くなっていく。 白く光る月がうっすらと見え始め、闇夜へと時は進んでいる。
 時が進むに連れ、この暑さがようやくゆらいできたが、まだまだ暑い。
 校門の前のアスファルトが黒く湿っている。
 校庭の木に留まる蜩(ひぐらし)の鳴き声が聞こえてくると、まさに夏の夕暮れという感じを醸し出す。
 午前中は雨が降っていたので、わたしたちは片手に傘を握っている。
 熱気によって水分が蒸発し、一層じめじめした暑さが身体にしみる。
「ホントこの暑さにはまいるよね。」
 部活帰りのわたしたち。
 スポーツ盛りの今の時期、汗だくになってがんばるのはいいけど、あとが大変なんだよねぇ〜。
 だって一応女の子だからね!
「優ちゃん、今日はりきってたもんね!」
 ちなみに今話してる相手は澤野亜美ちゃん。同じバスケット部の1年生。
 毎日一緒に行動している仲良し2人組で有名なんだ〜!
「だって今日は・・・」
「今日は?」
「あっ・・・ううん、なんでもない!」
「あ〜なんか隠してる。あたしたちの間で隠し事は無しだよ!」
「ちょ、ちょっと待ってよ。私にだって言いたくない事が・・・ふがっ!?」
 亜美ちゃんはいきなり私の頬をひっぱった。「いふぁい、いふぁい! わはったよ〜(痛い、痛い! わかったよ〜)。」
 やっと観念した私は、亜美ちゃんに理由を話した。
「実は特別な人の誕生日なんだ・・・」
「え〜またあの彼?」
「うん・・・」
「あの人・・・なんか怖い感じしない?」
「私はそんな事感じないけどね。」
「まあ優ちゃんがそう言うなら、私は何も言わないけどさ。」
「・・・」



「ただいま〜。お姉ちゃんいる?」
 大きな玄関で声を張り上げた。・・・まあ予想はしてたけど、誰からもどこからも返事はない。
 白いセーラー服をパタパタさせながら階段を上がり、広い廊下を走った。
 ちょうどすれ違ったメイドさんに声をかける。
「・・・お姉ちゃん帰ってる?」
「お帰りなさいませ、優さま。愛美さまはすでにお帰りですよ。」
「わかった。ありがと!」
 タタタと廊下を駆けぬけて、奥から3番目の部屋。
 「MEGUMI」と書いてあるプレートがかかっている。私はそのドアをノックした。

「(トントン!)・・・お姉ちゃん! 入るよ!」「どうぞ」

 中から返事が返ってきた。
 取っ手に手をかけ、すっと回す。無音で開く扉。
 部屋の中で、お姉ちゃんは隅にあるベッドに座っていた。
「速攻で帰ってきちゃった。」
「久しぶり、お姉ちゃん!!」
 私はお姉ちゃんの胸に飛び込む。
「フフッ、相変わらず元気そうで何よりね。」
「今日なんかね、私、ガイアのことを理由にして帰ってきちゃったんだから!!」
「あ〜ら、そんなことして、ガイアが怒らないといいね。」
 すっかり大人っぽくなった愛美お姉ちゃんと、まだまだ子供じみた私。
 なんでこんなセリフが飛び交うのかと言うと・・・



 半年前・・・

「優・・・」
「何? お姉ちゃん?」
「私、留学しようと思うんだけど。」
「ええっ!? それって、もしかして前から言ってた看護士の資格のこと?」
「まあそれにも関係するんだけど、医学を学ぼうと思って。看護士じゃなく、ちゃんとした医師になろうって決めたんだ。」

 まだ肌寒い日が続く3月下旬。お姉ちゃんたちが朝布学園高等部を卒業してから数日後。
 進路を決めて、専門学校へ行く予定だったお姉ちゃんは、急にこんなことを言いだした。
 とっくに4月から入学して通うと決まっていた、その矢先にである。

「そ、そんなことお父さんが許すわけないじゃん!」
「ううん、もう言っちゃった。『お前の好きにすればいい』だって。こんなセリフ、元私の家だったらあり得ない事だけど・・・
 健一にも言ったし、あとはよろしくね。」
「咲香お姉ちゃんには?」
「実はその咲香に連れてってもらうの。だって魔法は封印しちゃったし。」
「あ、そうか・・・それじゃ寂しくなるね、この家。」
「夏休みごろには、ちゃんと帰ってくるから・・・」



  そんなわけで半年間お姉ちゃんとは会ってなかった私。こんな再会でも不自然じゃないでしょ?
「そういえば咲香ちゃんは?」
「・・・ちゃん?」
「? ・・・まあいいから。優、咲香ちゃんはどこ行ったの?」
「いるじゃん。窓の外に。」
「えっ?」
 窓の方を見る。 お姉ちゃんもそれにつられて窓を見た。
 すっかり空は暗くなり、星がまばらに輝くようになっていた。
 その夜空に佇む1人の少女。どこかで見た事のある赤毛でまっすぐのロングヘアーで、なぜか真っ黒のとんがりぼうしをかぶり、黒のローブを着ている女の子。
「咲香ちゃん!?」「もう。・・・ずっとここにいたのですよぉ・・・? 気づいてくれないんですもん。ところでいつからその呼び方になったんですか?」
 私が窓を開けて咲香お姉ちゃんを中に入れた。なんと彼女は昔の魔法使いみたいな格好をして、箒に跨がっていた。
「なんとなく・・・よ!」
 お姉ちゃんが、入ってきた咲香お姉ちゃんに言った。
「はぁ・・・やっと入れてくれましたか。こんな格好じゃ玄関からは入れないので、なんとかお姉さんに入れてもらおうとしていたのですが・・・。」
「一緒に帰ってきてどこに行ったのかと思ったよ。優、咲香ちゃん・・・これどうしたの?」
「咲香お姉ちゃんは召喚獣としての立場から解放されて、本物の魔法使いになったんだよ。・・・ほら、留学前に言ってたじゃん。」
「あ、そうだっけ?」
「それで私は大聖堂が後援の魔法学校へ入りました。正式な魔法使いは卒業資格が必要ですから。」
「咲香お姉ちゃんは魔法界の職員を目差すんだって。」
「へぇ〜・・・私と同じで進路へ驀地(まっしぐら)ってことかぁ。」
「へへ・・・」
 初めて(?)かもしれない。咲香お姉ちゃんがこんなかわいらしい笑顔を見せるのは。
 笑顔を見せる事は前にもいくらでもあったけど・・・こんなに・・・こんなにかわいい笑顔は・・・初めてかも♪



 一週間前 IN FRANCE・・・

「あ、いましたね。」

 ここは魔法界大聖堂からあまり離れたところではない、町の市場の中心。
 果物や特産品を売っている売り子の中にあの少年がいた。

「いらっしゃ〜い・・・あ、そのオリーブはいいですよぉ! スペインからの輸入だと思うでしょ? 実は違うんです! この地では珍しい地場産品・・・あれ? お前は咲香!?」
「すっかりなじんでますね・・・ゼロ。」
 そう。この売り子は2年半前、魔法界に宣戦布告し、全魔法使いと戦った敵の将。
 数々の魔物を操り、その正体はなんと外見10歳前後の少年だった。
 名前は・・・
「このゼロ・ジョーカー様が、あの程度の魔法で死ぬわけないだろ?」

 ・・・そう、ゼロ・ジョーカーである。

 咲香はゼロとはもう何度も会っていて、この場所で働くように差し向けたのも彼女なのだ。
「まあ、私の回復魔法があったからこそ、ですけどね。」
「フン・・・敵のオレを回復させるお前は変な奴だな。」
「・・・あなたにはもう戦意は無い筈ですよ。そう言ったセリフももうなんとも思いません。それよりあなたは本当に大した方です。あれほどの力を持つ者が、こんな形で魔法界へ寝返るとは・・・」
「おいおい、『寝返る』なんて言い方はないだろ? まじめに改心したんだから。」
「フフ・・・そうでしたね。」
「フン。」
 ゼロはまた鼻をならした。



「――なんてこともありました。」
「・・・ってなんで咲香お姉ちゃん、そんなに語りだしてるのさ?」
「まあいいじゃん優。ゼロがそうなってくれて。」
「それはいいんだけどさ。」

 私たち3人は夜通し語り明かした。
 久しぶりの再会。久しぶりの笑顔。交わし合った言葉は数知れず、笑った回数も分からない。



そんなこんなではじまる『Angel・Hyper』。 次回をお楽しみに♪ By優




 −あとがきみたいなもの−

 どうも驟雨です。
 かなり長くなりましたが、『Angel』の正式な続編がやっと完成しましたので、お送りいたします。
 最近思った事を一言。今度『ウォーターボーイズ』の監督が吹奏楽ネタで『スウィングガールズ』っていう映画を公開するらしい。
 ここで一句。

 吹奏楽 ♀ばかりと 思うなよ(怒) 字余り

 ・・・と、知り合いの彼が言ってました(笑)。吹奏楽部には男子もいますよ〜! それでは関係ないですがこれで・・・。

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