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「以外と近場なんだな」
 
「大西洋の北じゃあ近いよね」

 6人はは最果ての島、クロウ島に降り立った。(もちろん実際には存在しませんので……)
 天使の4人は羽をしまい、咲香は人間の姿になった。
 そして吹雪の中遠くに見える城に向かっていった。
 白い雪と強い風が私たちの身体を凍え上がらせる。
 優とジェイドは平気らしかった。
「もう、みんなだらしがないなぁ!」
「優ちゃん、みんなは君みたいに氷を操ったり、俺みたいに毛皮があるわけじゃないからな。ところで咲香、なんでフェンリルの姿でいないんだ?」
「足が……冷たいのです」



Angel

驟雨

最終話 『好き』の終焉







「生身じゃ無理ないかな?」
 私がコートを魔法で作り出し、3人(健一、咲香、ガイア)に配った。
「俺としたことが……この程度で寒さに震えるとはな……」
 ガイアがコートを受け取りながら強気ながらもやはり寒さで震えていた。
「はいはい、強がらないでこれ着て、風邪引かないでね」
「お、おう」
 ガイアがさっきとは大違いの表情を見せて私からコートを受け取った。
 青と紫がベースの大きめのコートだ。
「ありがとうございます」
 咲香もそれを着る。
 私の火の力もちょっと加えておいたので暖かそうだった。
「悪いな愛美。お前も着ろよ」
 健一は白い息を吐きながら言った。
「わかってるよ」
 自分もコートに袖を通す。
「……お姉ちゃん、やっぱり私もそれ欲しい」
「言うと思ったから作っておいたよ」
 私は優にもコートを渡した。
「いくら氷が得意だからって完ぺきに平気なわけじゃないからね……」


 城は6人が歩むに連れてその周りに立ちこめる黒いオーラをあらわにしていった。
 白い雪もその黒に映えて黒く見えた。
「不気味だよね」
「魔王の城はやっぱりこうじゃなきゃね」
 優がやる気満々に近づいていく。
「魔王じゃなくてゼロ様は神だ」
 急に氷の地面が揺れ動く。
 そして白い氷の粒を巻き上げ、氷の中から人らしい影が見えてきた。
「誰だ!」
 健一は叫んだ。
 出てきた人影は次第にその姿をあらわにした。
「幹部の1人……氷のウェリガーですね」
 咲香が言った。
 その身は氷に包まれ、人間と思われる外見に、髪は白銀の長髪だった。
「すごーい。寒そうだね」
 優が言ったとき、咲香が身を乗り出した。
「えっ、咲香?」
「ここは私にまかせてください」
「お前がやるのか。よし、じゃあ俺もやるよ」
 ジェイドも続いた。
「まあ、ここはお前らに花をもたせてやるよ」
 ガイアが憎らしい言い方ながらも2人を後押ししているのが分かった。
「じゃあお姉さん、私とジェイドはコイツを止めますのでお姉さんと健一さんと優さんはおまけを連れて先に行っててください」
「はぁ?俺はおまけかよ。ったくきっついなぁ」
「じゃあよろしくね。咲香、ジェイド」
「まっかせとけって。っとそんなこと言ってるうちに相手もそろそろキレはじめたようだな」
 ウェリガーとの距離がかなりあったと思いきや、いつの間にか、もう数十メートルまで迫っていた。
 ジェイドはツメを光らせ前に出すと相手に向かっていった。
「このツメを受けろ!!」
「じゃあ私も行きます。"メテオストライク"!!」
 咲香が手を天にかざし、召喚獣魔術をスペルした。



 4人になった私たちはウェリガーの気をそらす咲香とジェイドを横目に、ゼロの居城へ向かった。
「そろそろ城門だね。正面から入るには危険が大き過ぎるかな……って健一、ガイア、なにやってるの!?」
 2人は普通に城門へ向かっていっていた。 
「はっ、こそこそ入るなんて俺の性に合わないんだよ!」
「まあこうして門があることだし、こっから入ろうよ」
「お姉ちゃん。今ここの兵士(?)……あ、いるかどうかは分からないけど、みんな私たちが倒しちゃった……なんてことは無いかな?それだったら……」
「そうかな。そうだよね今さら回りくどいことはしなくていいか!ゼロを倒せば終わりなんだからね」
「決まったな。じゃ行くぞ健一」
「……お前ちょっとは目上の人への言葉遣いってのを覚えた方がいい……って……はあ」
 ガイアはスタスタと門に歩み寄り、門の前に立った。
「こんな門なんか!"ディメンションボルト"!!」
 ガイアがスペルすると、一瞬の閃光が走ったかと思うと、門が爆音とともに粉々に砕け散った。
 そしてその残骸の奥から敵の大軍が押し寄せてきたのだ。
「なんだザコか」
「それじゃここは私と……ガイア。手伝ってよ」
「えっ……お、おう」
 ガイアは優の誘いにちょっと赤面して返事をした。
「2人で大丈夫?」
「大丈夫だよ。ピンチになったらガイアが私を守ってくれるよね?」
「そっ……そりゃもちろん。愛美、健一。安心していて大丈夫ですよ」
「なんでそんなにしゃべり方が違うんだよ?……まあいいか。じゃ愛美。行くか」
 私は返事をしながらガイアに耳打ちした。
「ガイア、優をよろしくね。そんなに照れないでさっ!」
 軽くガイアの肩をポンポンッとたたくと健一について走っていった。
 赤面してしまったガイアはその恥ずかしい(?)気持ちを抑えようと、首を振った。
「優をよろしく……か。ここまで言われて優に傷1つつけたら俺のプライドが……くそっ! お前らまとめて蹴散らしてやる!!」
「ありゃ?……頼もしいね!」
 2人は魔装を構えた。
 優は弓を、ガイアは大剣をそれぞれ敵に向けた。
 そして2人はそれぞれ青と紫の羽を出して宙に浮き上がった。
「ガイアには負けないからねっ!力の結束を許したまえ……来れ氷の精霊!"アースティックテルストリス"!!」
 優がスペルした魔術の効果は絶大だった。
 黒いオーラで覆われていた城内への道が優の氷の矢ですべてがはらわれ、
 押し寄せてきた大軍は凍りつき、粉々に吹き飛んだ。
 しかしすべてが吹き飛んだ訳ではない。
「俺の番だな。天の力をこの手に……全てを滅ぼす幾千の槍よ相手を射よ!"ビクシオマ"!!」
 
「あいつらなら大丈夫だって」
「うん……」
 城内をコツコツと歩く2人。
 黒く透き通った廊下。
 誰かがいる気配はしなかったが、それがかえって不気味だった。
「でもさ。こんなとこでアレなんだけど2人っきりで歩くのは久しぶりだな」
「そうだな……最初は入れ替わって初めて学校に行ったときだったかな?」
「ああ……そういえば入れ替わってんだよな俺たち」
「そうだね……」
 私はそれ以上何も言わなかった。
 健一も何もしゃべらない。
 
 
 やがて大きな扉が目の前に現れた。
「なんか見たまんまにこの奥にあいつがいるって感じがするね」
「これが最後だな。みんなのおかげでここまで来れたんだし、負けられないなぁ」
「さっき言ってたけど、入れ替わってから私、天使になったんだよね。ってことは今こうしていられ 
 るのは健一のおかげ……だよね?だから健一は自分の責任だって自分を責めないでね」
「愛美……?」
「じゃあ開けるよ……」
 重いくて大きい扉を開ける。

「真っ暗……?」
「なんにも見えないね」
 扉の奥はまさに漆黒の闇。
 何も見えなかった。
「こんな辺境の城までごくろうだったな。石垣愛美、七瀬健一」
 どこからか声が響く。
「ゼロ!どこにいる!?」
「我は神だ。その呼び方は魔法使いとして恥ずかしくないのか?」
「神なんて名ばかっりなんだろうが!」
「……ふっ、それも間違いではないな。だがな、これを示せば我に絶望すら感じることなく貴様らは無に還るのだ」
 突如、空間の向こうに明かりが灯る。
 そしてその明かりはこっちに向かって飛んできた。
「愛美!よけろ!」
 思ったより大きい火の玉だった。 
 しかもそれは1つではなかった。
 さらに切り裂く風が辺りに立ちこめる。
 私の着ていた聖服がズバッと裂ける音がした。
 やがてその攻撃はおさまり辺りが明るくなる。
 やっと部屋が見渡せるようになった。
「まっ、まさか!」
「そんな!君がゼロ!?」
 まさに信じられないことだった。
 目の前にたつ黒いすその長いマントを羽織って、黒いズボンをはいている人物。
 そのコートはこの広い部屋の床について歩くときには引きずる他ないだろう。
 腕を組んですべてを見下した眼差し。
「なんだ。我を見て信じられない……と感じているのか。まあ無理はない、か」
 子供――。
 ゼロと名乗る人物は私よりも幼い、子供だった。
 黒い瞳に黒い髪。闇を象徴したかのような容姿だった。
「子供が神を名乗って魔法界を滅ぼすと宣言した、そしてその子供に従う多くの魔物や我に忠誠を誓 
 う幹部。そんな統率力が我にあるはずがない。そうも思っているな」
 完全に頭の中が読まれていた。
 私はゼロが今言ったことと同じことを考えていたのだ。
「あ……」
「だが、これが現実だ」
 ゼロは両手を広げる。
 するとゼロの両わきに2人の人物が現れた。
「えっ……。大臣と大聖堂長?」
「こいつらはすでに降伏した。我に従う、ただの下僕だ。我が指を一鳴らしすれば即貴様らを地獄へ送るだろう」
「そんなことが……そんなことがあるわけない!!」
 私たちの目の前にいるエクス・マオとゼラは放心したようにただ立ち尽くしている。
 まるで生気が感じられない。
「何をしたってんだよゼロォ!この野郎!!」
 健一がそういった時だった。
 ゼロの全身から漆黒のオーラがわき上がる。
「我をそこまで侮辱できるほど七瀬健一、キサマは偉いのか?」
 そしてゼロの背中に黒い鳥の形の天使の羽が現れた。
 両手を広げ、浮き上がった。
「"シトラスドレイン"!!」
 一瞬光が見えた。
 気づくと……
「健一……ってあれ?この声……」
(ここから2人の名前は逆です。)
「め、愛美!?……もしかして、元に戻った?」
「フッ、これでキサマらはもう天使ではない!」
 2人は元に戻っていた。
 しかも天使の力が奪われ、魔力が弱まってしまったのだ。
「そ、そんな!天使になれないよ!」
「元に戻ったはいいけど……これじゃあ……」
 2人は浮遊しているゼロを見る。
 ゼロは右手をこちらに向けている。
「終わりだ……」
「逃げよう!」
「無駄だよ健一……相手は魔法、こっちは生身……あ」
「……愛美?」
「この手があった!」
「な、なにを……」
 (元に戻った)愛美は左手薬指の指輪をゼロに向ける。
 すると指輪は形を変え、二刀ナイフとなり、愛美の両手におさまる。
「ああ……そうか」
 オレは指輪に念を込める。
 指輪は変化し始め、両手で扱う太刀へと変わった。
「魔装はそのまま……か。ならこの力で……」
「"ブラッディレイン"!!」
 ゼロは魔術をスペルした。
 部屋に血の色をした雨が降り注いだ。
「健一!この雨はまずいよ!」
 そう言っている間に聖服は少しずつ溶け出し、
 持っていた魔装もその形を変え、指輪に戻ってしまった。
「そんな……」
「唯一の武器が……」
「無駄だ。魔力を失い、魔装を失い、そして今度は七瀬健一。キサマの大切な仲間を失ってもらう!」
 部屋の壁に2つの映像が映し出された。
 そこには優とガイア、咲香とジェイドがそれぞれ映っていた。
「何をする気だ!?」
「健一……もう無理だよ。なにも手はない」
「あきらめるなよ愛美!何か……何かある筈だ!」
「こうなったら……」
「……愛美?」
「私が健一の目の前で使った最初の魔法。この者に究極進化の力を……その力を解き放て!"アルティメットレボリューション"!!」
 そうスペルした愛美は目を閉じて、その場に倒れてしまった。
「愛美!!」
 近寄ろうとしたオレの身体に異変が訪れた。
「うっ……」
 自分の身体が光っているのに気がついた。
「この……光は!?」
 そして力があふれてきた。
 背中に緑の羽を纏って浮き上がる自分。
「天使の力!?」
「そんなバカな!キサマらの力は封じた筈……」
「愛美のおかげ……か。よーし!」
「フン、たかが一匹の天使。"プットサイクロン"!"ウイングソード"!!」
 ゼロは長い詠唱をせずに次々にスペルしてきた。
 ゼロの手に長く黒い杖が握られ、その杖は渦巻く風が纏っていた。
 自分の身体が切り裂かれるのがわかった。
「うっ……くぅぅ!!こ、こんな程度で!」
 オレは再び指輪を変化させ、
 太刀を握り締める。
 その時だった。また自分の身体に変化が現れた。
「またか!これは一体!?」
 ボロボロの白い聖服だった服装が虹色の装束に変わり、
 緑のオーラだった背中の羽も虹色に変化した。
「その羽の色!キサマもしかして……くっ、それならば殺しておかねばならないな!」
 ゼロは再び両手を前に出す。
「させるか!"アトミックウインド"!!」
 自分がスペルした魔術によってゼロの黒いマントはボロボロに引き裂かれ、無数の切れ端が宙に飛び舞った。
「ぐあっ!!こ……こんなことが!!"スカイテンディション"!!」
 ゼロはスペルすると共に両手を差し出した。
 ゼロの両わきにいたエクス・マオとゼラの偽物(?)の手に握られていた剣に紫の稲妻が走った。
 そして俺に向かって剣を振り上げ、突っ込んできた。
「2人は偽物だと思ってたが……どうやら本物らしいな。"フォースマインド"!」
 俺がスペルすると、2人は動きをやめる……はずだった。
 しかしなおも2人は剣を振り上げたまま、こちらに向かって走ってくる。
「なっ、なんだ?」
「「"エアレーザーブレイド"…………」」
 エクス・マオとゼラは紫電の剱を振り回した。
 それをなんとかよけることが出来たが、剣筋に纏っているレーザーが身体に触れる。
「ぐっ!!」
「ふん、洗脳術を使ったとでも思ったか?我を甘く見るな」
「くそっ……」
 転びながらも耐性をたてなおし、両手を十字に組む。
「その構え……光属性か」
「これなら!"フラッシュライトニング"!!」
 身体の周りに光の玉が6つ。
 そしてそれはすべて槍となってゼロへ向かっていった。
「無駄だ……"ブラックシールド"!!」
 ゼロの前に黒い盾が出現した。
 その盾によって光の槍はすべてはじき飛ばされてしまった。
「これも……ダメか!!」
「さて……せっかくここまで乗り込んできたバカな天使のために面白いものを見せてやる」
 そう言って手を伸ばした方向は倒れている愛美のいる方向だった。
「なっ!何を……」
「"マネージマインド"!!」
 ゼロがスペルした魔術のせいなのか、愛美は立ち上がった。
 愛美の周りには"ブラックシールド"が展開していて魔法を遮るようになっていた。
 そしてなんとこちらに向かって手を差し出している。
「洗脳術……!まさか!」
「さて、七瀬健一よ。自分のガールフレンドと戦う自信はあるか……?」
「なんてやつ!そんなことをしなくたって!!」
 そう言ってゼロを狙おうとした。
 しかし、両手をいつの間にか近づいていたゼラ、エクス・マオに捕まれ、正面に洗脳された愛美が立った。
 愛美は変わらず左手を前にかざし、俺を攻撃しようとしていた。
「しまった!おい、愛美!しっかりしてくれよ!!」
「ハッハッハッ!無駄無駄!!もうすでに石垣愛美は我の下僕と化した。何を言っても意味のないことだ。フッ、自分の彼女が自分を殺すなんてなぁ……」
 そう言いながらゼロの顔にはずっと笑みが浮かんでいる。
「くそぉっ!!お前さえ……お前さえいなければ!!」
 俺は必死でもがき、両手を振りほどこうと抵抗した。
 が、ゼラもエクス・マオもしっかりと両腕を握り、放そうとしない。
 ついに愛美が俺のすぐ目の前まで来た。
 手を俺の胸に当てる。
「クックッ……安心しろ。なんの痛みを感じることなくキサマは死ぬことになる。七瀬健一」
「愛美!!」
 俺は近づいた愛美の唇に自分の唇を付けた。
 そして心の中でこう思い続けた。
『愛美……お願いだ。元に戻ってくれ……!大好きだよ!!』
 そう願い続けた。
 すると口元が光だし、愛美からも光が溢れる。
 その瞬間、唇同志が離れ、ふうっと愛美から息が漏れた。
「はあっ!!はぁ……はぁ……け、健一?」
「愛美!元に……元に戻ったか!?」
「……!!!なっ、なんだと!?」
 ゼロが驚愕したとき、両手に入っていた力も抜けた。
 そして両わきで俺の腕をつかんでいたゼラとエクス・マオは砂となって音もなく崩れた。
「健一!!ごめん、ごめんね……!」
 愛美そう言うと俺に寄り掛かってそのまま目を閉じた。
「愛美……待ってろ、今カタをつける」
「フン、カタをつけるだと?お前1人で何が出来る!」
「1人ってことはないんじゃない?」
 その声に驚いた俺は後ろを振り向いた。
 聞き覚えのある高い、活発な声。
「やっほーお兄ちゃん!なんか大変みたいだね!」
「健一……女の子は守ってやらなきゃダメだろうが!」
「俺がいないとこれか?」
「元に戻ったのですね。なんとなく……わかります」
 後ろに立っていたのは優、ジェイド、ガイア、咲香の4人だった。
「みんな!」
「みんな……」
 愛美も俺の腕の中で目を4人に向けていた。
「何!?レディサタン、シド、ウェリガーはどうした!?」
「みんな片づけましたよ。私と、本物のゼラ様とエクス・マオ様も協力してくださいました」
 そう言って部屋に入ってきたのはちょっとボロボロの服装になっているダストだった。
「ダストさん!」
「健一さん……ずいぶんとやられましたね。ですが、これで形勢逆転と言えますか?」

 5人はゼロの前に並んで立った。
 ちなみに愛美と咲香は部屋の隅にいるので並んでいるのはその他の5人である。
「さあ、どうするゼロ?」
 俺がゼロに話しかける。
「仲間が増えて安心か?七瀬健一」
「フッ、そう言っているあなたが一番怖いのではないですか?」
 いつの間にか背後に回り込んだダストがゼロに魔法銃を突きつける。
 しかしそれにも動じず、ゼロは話し続ける。
「我はこの世の神である。たかが7人の魔法使いに負ける訳がない!」
 ゼロはそう言うと一瞬でその場から消え去った。
「なっ、どこへ……」
「フッフッ、我をそんなにも倒したくば城の最上階へ来い。命が惜しくなければ、な」
 どこからともなくゼロの声が響く。
 部屋中に反響してやがて声は消えた。

「さて、この誘いに乗るか否か……ですね」
 
「何言ってんだよダスト。もちろん乗るさ。なぁ健一?」
「俺だってこのまま引き下がれないさ。でも今度こそゼロは本気でかかってくる」
「俺より小さいガキのくせに魔力はいっちょまえだからなぁ」
「ゼロの魔力は健一さんよりもずっと上でしょう。いくら虹色の羽をもつ健一さんでも……」
「健一……どうするの?」
「私はお兄ちゃんについて行くよっ!」
「まあそれは私も同じです。ですよね、ジェイド?」
「そりゃそうだ。ガイアももちろん、だよな?」
「うっ……まあ健一がリーダーみたいな存在だったし、ここは引き下がってやる」
「健一を……信じるよ」
「ここで迷っても意味がない。ここまで来て諦めちゃ魔法界どころか地球は終わりだ。絶対にゼロを倒す。そう決めていた筈だ……よしっ行くぞ!」
「そうこなきゃな!」
「まあ、一仕事してやるか」
「私も協力します。みなさんのためにね」
「お兄さんとお姉さんと……この世界のために……」
「みんなを救うんだね!!」

 (えー、ながい会話文ですみません。確実に誰が何をしゃべっているのかわからないと思います。
  なので補足を加えておきますね。できるだけ分かりやすい会話へ……と努力はしましたがやはり
  無理がありました。上記の文章、上からダスト、ジェイド、健一、ガイア、咲香、愛美、優、ダス 
  ト、ジェイド、ガイア、愛美、健一、ジェイド、ガイア、ダスト、咲香、優……・と並んでいま 
 す。ホントならもっと分かりやすく書くのが勤めなのですが、物語の場面上、会話のみとなってしま 
 いました。もしこれでも分かりにくかった場合はご一報くださいますようお願いいたします。)

「やはり来たか。自分の命は大切にするものだ」
「それはそっちのセリフだろ?」
 7人は城の屋上へたどり着いた。
 雪が風と一緒に自分たちの顔に当たる。 
 俺の「自分で自分にあげた」コートが強風で吹き飛んでしまった。
「あっ……」
「っと。もう、私がもらったんだから大事にしてよね」
 左側にいた愛美がそれをキャッチした。
「あ、ああ。ありがとう」
 それを受け取って羽織るとこんどはしっかり前のボタンを締めた。
「おいおい健一!さっさとおっ始めようぜ!」
 ジェイドがしびれをきらして言った。
「そうだな……、ゼロ。お前を倒すためだけにここへ来たんだ。こっちは本気だぞ」
「私たちは絶対負けないよ!」
「やっと始まるなぁ!」
「神を騙るのはこれで終わりにしていただきたい。魔法界の実績を甘く見ないでください」
「みんなのために……負けられないんだから!」
「これであなたの命運も終わりですね。お姉さん(ディペント)に従う……それのみです」
「まあ俺がいるから負けないけどな」
 俺に続いてみんなが言った。
 そして天使は全員色とりどりの羽を広げて魔装を構え、召喚獣はその本来の姿になった。
「なっ、さっき天使の力を奪った筈の石垣愛美までが……虹色の羽か……」
「えっ?……ホントだ……でもいっか。健一とお揃いだしね」
「そ、そうか?よし、これがホントにホントの最後だ!!」
「くっ、これでは我に勝ち目は……そんな筈はない!!"ブラックボムヘルス"!!」
 ゼロが魔術をスペルする。
 咲香とジェイドがそれを2人で防御魔法で止めた。
「はっ、はやくゼロをお願いします!」
「くっ……見せ場は……もらった、ぜ」
「咲香……ジェイド……」
「2人がかりだと!この我をうろたえさせるとは……!"ダブルコンディングソード"!!」
 黒い2本の巨大な剣がこちらへ向かってきた。
「詠唱無しで行くよ!"シーウォーズスパイラル"!!」
「優に教わったんだがな!"アースティックテルストリス"!!」
 今度は優とガイアが一緒にスペルした。
 水と氷が剣を受け止める。
「優!ガイア!お前ら……」
「お姉ちゃん達、早く行きなよ。私たちで止める……から……」
「俺でもてこずることがあるんだな……くそっ、ここは任せておけ!」
「どこまで我を止められるかな?"アブソリュートデストロイ"!!」
 ものすごい大きな衝撃波が発生して強い風とともにこちらに向かってきた。
 それを止めようと……
「"マスターフィールド"!!」
 ダストだった。
 1人で境界をつくりだし、衝撃波と対峙した。
「くっ、これは強大な魔力……ですね……愛美さん、健一さん、私が死んでも生き返らせないでください……ね……」 
「ダストさん……そんなこと言わないでよ!」
「私はいいですから、早く……」
「ああ!ありがとう!」
 2人はゼロへ向かって飛んでいった。
 
「なぜだ……キサマらは仲間を犠牲にしてまで我を倒すと言うのか……?」
「信じることが出来る仲間だから犠牲じゃない。仲間は絶対にお前なんかに負けない!」
「どんなにたくさんの下僕がいても信じることが出来ないんじゃ仲間だってただの足手まといになるだけだしね」
「キサマらにそんなことを言われる筋合いはない!!"オールレイヴ"!!」
 ゼロの身体が黒い光を放ち、黒い翼によって宙に浮き上がる。
「愛美!全魔力開放術だ。対抗することはできない。もうこれしかない!」
「わかってるよ!こないだ話したやつだよね?」
「ああ!1回きりだ。はずすなよ!」
「そんな心配いらないって!」
 そして一緒に叫んだ。
「「"ウィズマジックジャジメント"!!!」」
 
 
 
  
 
 雪はまだ止むことなく降り注ぐ。
 白い霧が立ちこめる中、俺は愛美と目を合わせた。
 そしてゼロのいたところを見る。
 
 そこにはゼロは倒れているわけではない。
 しかしその姿はどこにもなかった。
「いない、ね」
「ああ」
 そう言ったきり2人はその場に膝をつき、倒れてしまった。
 冷たい風と雪が2人を襲ったが、「5人」が2人に近づきその場から運び出した。
 7人はその城をあとにした。
 
 
 
 
「いや〜やはり君たちはすばらしいな!存分にこのパーティーを楽しみたまえ」
「あ、ありがたいのですが、大聖堂長。ゼロを消し去ったのは私の、健一さんとお姉さんです」
「そういえば2人はどうしたのだ?」
「それが……まだ、目を覚まさないのです」
「お姉ちゃん達……無理するからだよ。あんな使ったことも聞いたことも無い天使術をスペルするなんて……」
「ふむ……。自分たちで天使術を作り出すとはあの2人はなぜそんなことが……」
「虹色の羽……このことをなにか知っていますか?」
「虹色の羽はかつて天使術を作り出した大賢者、イクサル様が持っていたと言われている天使の羽のことだ。2人の羽の色がそう変化したのなら、2人はイクサル様の末裔……なのかもしれないな」
「イクサル様……ですか?……お姉さん達が……」
「大賢者の末裔かぁ。じゃあ私もかな?」
「その可能性は高い……と言うよりそうでしょうね」
 
 
 
 
 白いベッドの上で目が覚めた。
 見ると大聖堂の個室らしいところだった。
 耳に小さくにぎやかな音楽が聞こえる。
 まるでブラスバンド部の練習の音のようだった。
 その音で目が覚めたのかもしれない。
「うん……ここは……大聖堂、か」
「おはよ、健一。……今はこんばんは……かな?」
「なんだ愛美。起きてたのか」
「音楽が聞こえた気がしたから」
「ああ、それは俺もだよ。なんか練習を思い出した感じだった」
「私にとっては懐かしいような感じ。行ってないから」
「そうだな。でも天使の力のせいで入れ替わってたんだな。ゼロ様々なのか……」
「ホントだね。気づいていれば私が元に戻したんだけどね」
「元に戻って良かったと思うか?正直に」
「なんか微妙だね。今までの生活に慣れてきちゃってたしね……」

「ああ……」
「どうしたの?そんなに考えちゃって」
「あのさ、愛美。……また……入れ替わっるっていうのじゃだめかな?」
「ええっ!?なんで?せっかく元に戻れたのに……」
「今でも愛美だったときの感覚とか心とかが残ってる気がして実は、元だったときの俺の心が無くなってる感じがするんだよ。残ってる気持ちは……」
「あの〜健一?それ実は私もなんだ。でも1つだけ残ってる気持ちがあるんだよ。……そのことだけが……残ってるんだ。残ってる気持ちを……知りたい?」
「……愛美……あとで2階のテラスに……来てくれ」
「あ……うん」
 俺はそう言い残してベッドを降り、部屋を出た。
 愛美はそのまま黙っていた。

「おい!健一!!目が覚めたのか!お前らが主賓なんだからこっちへ来いよ!!」
 呼び止めたのはジェイドだった。
 一緒にいたのは以外にもガイアだった。
「なんだ……その……一番いいところをとられたけどな……無事で良かったな」
 ガイアは照れ臭そうに言った。
 そのガイアを軽くたたきながらジェイドは言った。
「どうしたんだよ?……なんか考え込んでるな?」
「ああ……。あとで戻ってくるから待っててくれよ。ガイアも。ありがとう」
「…………」
 ガイアは顔を赤らめて俯いた。
 そこへ優と咲香が来た。
「健一さん……」
「お兄ちゃん!目が覚めたんだね!……お姉ちゃんは?」
「愛美も目覚ましたよ。ちょっと用事があるからあとで、な」
 俺は4人を背にフロアの隅の階段を上った。
 
 
 テラスに出て夜になった風景を眺めていた。
 この大聖堂は以外にも小高い丘の上にあって海がすこし眺めることだ出来た。
 外見はただの教会だから普通の人が見ても怪しまないのだろう。
 夜風と共にほんの少しだけ雪が降り始めた。
 その雪を眺めていると愛美がテラスに出てきた。
 
「健一……」
 
「あ、愛美。寒いか?」
 
「ううん、大丈夫だよ」
 
 そう言ったっきり俺は話を切り出せないでいた。
 愛美をチラリと見る。
 懐かしいようでいつも見ていた赤い長い髪。
 咲香と瓜二つというのは本当だった。
  
「健一?どうしたの?」
 
「ああっ、ごめん。……もう何言おうとしてるのか……わかってたりするか?」
 
「まあ……大体はね。最初に健一の部屋に入ったとき、写真が貼ってあったし、前々から気づいてたよ」
 
「それならもう言ってもいいかな……。俺も愛美が好きで好きでたまらない。それは今も以前も変わらないホントの気持ちだよ」
 
 思い切って言った。
 今まで思い切って言うことが出来なかった「好き」の一言。
 普通の高校生からいきなり魔法使いになって天使になって……
 そんな中でも新しい仲間に出会って……。
 自分自身がそう言える強さを身に付けたと感じていた。
 
「前おじいちゃんが言ってた『パステル』ってあるじゃん。あ、健一は知らなかったかな?その意味なんだけど……魔法界のスペクト文字で表すと好きな人……って意味なんだ。私の『パステル』は……健一だよ」
 
「愛美……」
 
「それから、入れ替わるって言う話だけど、……いいよ。入れ替わったままでも。私は入れ替わっても、このままでも気持ちは変わってなかったし、入れ替わっただけで気持ちが変わっちゃうようなら私は諦めるよ」
  
「入れ替わっただけで変わる気持ちなら今こうして言うことは出来なかったよ。俺は愛美が好き」
 
 自然な目で愛美を見つめる。
 やっと自分の気持ちをすべて出し切った。
 心の中のもやもやが無くなったようだった。
 気づくと愛美は俺の胸に顔をつけていた。
 やさしくそれをつつむ自分の両腕。
 その「自分」の両腕はすでに過去のものになっていた。
 
「ありがとうっ……健一」
 
「愛美。これで、いいんだよね」
 
「入れ替わっても想いは絶対……変わらないよ」  

    Angel 完


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