戻る ・ シリーズタイトルへ
 魔法界の魔法使いってこんなにいたんだ……。

 日本人らしい人もたくさんいるし召喚獣の姿もたくさんみえる。
「どうした愛美?そんなにたくさんの魔法使いが珍しいか?」
「う、うん。私たち以外の魔法使いってあんまり見たことないしね」
「そうだな。しっかしゼロはこれだけの人数すべてを殺すってんだから恐ろしい奴だよ」
「……なんでそんなことするのかな」



Angel

驟雨

第11話 『ファイナルバトル(Magic vs Magic)』






「集まってくれた諸君、こちらに注目していただきたい」
 ゼラ聖堂長が広間の高台から覚醒した声で話した。
「今より5時間後、魔法界神、ゼロ・ジョーカーの総攻撃がはじまる。相手は正面からの真っ向勝負を挑んできている。こちらも大西洋の空に拠点を築き、西から攻めてくるゼロの軍に対し、そこから出陣するよう準備してある。まずは大聖堂の武装倉庫より浮遊石、『スカイストーン』を持ってきてあります。
 それをもって拠点へ向かうのだ!」
 その声は聖堂内に響き、やがておさまると高台のしたにきちんと並んだ白い石がパッと現れた。
 魔法使い達はその石を順々に手に取り、その場で消えていった。
 おそらく移動術で拠点へ向かったに違いない。
「スカイストーンって?」
 魔法使いが集まった一番後ろに私たちはいた。
「スカイストーンと言うのは常に浮遊術を保てる魔力を消費しないアイテムです。浮遊術を長時間保つにはやはり魔力の消費を感じます。なのでこれを使うのです」
「確かに浮遊術使いっぱなしじゃきついよな」
「ふーん。じゃあ私ももらってこようかな」
 優が列をかき分け行こうとしたが、咲香が止めた。
「優さん、あなたは天使でしょう? 飛べますからいりませんよ」
「そっか!でも咲香お姉ちゃんははいるんでしょ?」
「はい。もうすでに持ってます」
 咲香はそう言うと聖服のポケットから白い石を出した。
「拠点にはいろいろ準備するものがあると思いますが、お姉さん達は魔装をもうすでに習得済なのでおそらく最前線へ行くことになると思います」
「一番前か」
「早く行こーよおー!!」
 優が足をバタバタさせた。
 こうしてみると優はまだまだ子供だった。
「わかったってば!」
 私は少しはお姉さんらしいところを見せようと、ちょっと強気で優に接した。
 今日からの戦いのことも考えると甘いことは言ってられない。
「私がやるよ。"アルバステッド"!」
 紫色の魔方陣が足下に出現する。
 続きて魔法をスペルした。
「"コンダクション"!」
 魔方陣から強い光が発せられ、
 身体がふわっと浮いた感じがしたあと一瞬で目の前の世界が変わった。


「ここが空の拠点か」
 周りは青い空と白い雲。
 空の島の端のこの場所は下をみるとこの高さは数千メートルはあるかと思われる。
 下にはきれいな青い海が広がっている。
「きれいだね」
「ホントですね。今から戦争がはじまるなんて信じられませんね……」
 そう言う咲香の横顔は少し寂しげだった。

 空の島にはすでにたくさんの魔法使いが集い、スカイストーンの性能を試しているのか、飛び回っている魔法使いも見られる。
 そして鳥や蝶の形をした色とりどりの羽を広げ、ふわふわと浮いているのは天使だ。
「天使ってけっこういるんだね」
 優が興味津々に眺めていた。
 見たことの無い服装の少年やお姉さん、おじさんやおばさんまで年代は様々だった。
 大抵は青、赤、緑の色をした羽を広げていたが、稀に紫色の羽を持つ天使もいるようだ。
「咲香?紫色の羽の天使の属性って?」
「天空属性です。潜在属性は1つしかないですが、初級魔術も強力なレーザーを放つのです」
「そうか。それでさっきからこっちにレーザーが飛んでくるんだな」
「えっ……?」
 健一は片手を上げて魔法障壁を展開し、
 飛んでくる紫色のレーザーを受け止めていた。
 それは防御しなければ私たちにも当たる角度で飛んでくるのだった。
「ったく、どっかのバカが俺たちに魔法をスペルしてるんだ」
「どっかのバカだと?天使に向かってよくそんな口がたたけるなぁ?」
 現れたのは金髪の少年だった。
 青い目をした普通の少年だが、言葉遣いは荒く、タチが悪そうだった。
 翻訳術をすべての言語に対してスペルしていたから言葉は理解できたが……。
「もうっ、危ないじゃない!」
 優がすかさず反抗した。
 私も続く。
「なんでこんなことを……」
「こっちをジロジロ見るからだ。何か文句でもあるのか?」
 少年は青い目を光らせ、こちらを睨んだ。
「なんの関係もない人に魔法をスペルしたのか!?」
 健一は取り乱した。
「俺の性格上嫌なんでね。とくに集団に見られるのはな!」
「よくそんなことができるなぁっ!」
 健一が右手を掲げる。
 私はその健一の右手を押さえた。
「ダメッ。そんなことしたらコイツと同じになっちゃうよ」
「くっ……」
「なんだ?天使に刃向かうってか?面白い。その腰抜けをかばうのか」
 その言葉にさすがの私もキレた。
 両手を広げ、いつものように天使化した。
 ピンク色の羽を広げ浮遊し、少年を睨んだ。
「さっさと向こうに行かないと本気で怒るよっ!」
「うっ、お前も天使かよ。ちっ」
 少年はちょっと顔を赤らめると、羽をはばたかせその場から飛び去った。
 紫色のオーラを纏った羽が一枚私の目の前に舞ってきた。
 私はそれをつかみながら言った。
「どうしてあんなやつが天使なんだろう……」

「ついに始まりますね」
 咲香がバティクスとしてフェンリルの姿になり、
 スカイストーンで空に浮遊しながら羽を羽ばたいている私に言った。
「うん。やっぱりちょっと不安かな」
「そうですよね。まさかお姉さんが指揮官になるとは……」


 つい30分くらい前、魔法使いと天使、召喚獣はすべてこの空の拠点に集まり、大聖堂長に配られた軍隊表にしたがって隊をわけられたのだ。
 それぞれの隊長は司令室に集まり、作戦会議というのか、とにかく集まったのだ。
「エクス・マオ様の軍はこの私が指揮をとります」
 大臣が自ら指揮を取ると言ったので反対する者はいなかった。
 いないと言えばジェイドの姿が見えなかった。
「じゃあ私でで決定だな。じゃあゼラの軍は誰が指揮をとるんだ?」
 大臣はゼラ大聖堂長に話しをふった。
 ゼラはこう答えた。
「もちろんブラストリーダーは石垣愛美に任せるつもりだ。そしてこの戦争の総司令官に任命したい」
 私は配られた軍隊表にブラスト隊・リーダーと書かれていてそしてこの場にいるのだが、まさか総司令官とは……。
「ゼ、ゼラ大聖堂長。私にそのような大役は……」
 私は冗談抜きで焦った。
「そなたこそ、すべてを兼ねそろえた最高の魔法使いであり、天使である。そなたにお願いしたいのだが……」
 ゼラが私の事を天使と言った瞬間、周囲の目線を感じた。
 天使は珍しくない筈なのになぜか変な目線だった。
「この子が天使なの?どうみても魔法使いにすら見えないのに……」
 さっきとは別の女魔法使いが答える。
「私のように華麗な仕事をこなしたという実績も無いのになぜこのような少女に総司令を任せるのか。その理由を聞かせていただきたい」
 今度は背中に「羽のある」若い男性が言った。
「ダストよ。そなたも魔法界において名高い実績を残している天使だ。しかしそなたは召喚獣を操ったことがあるのかの?」
「ありますよ。すでにここにいます」
 ダストがそう言うと、足下の鞄から小さなウサギをだした。
 ウサギがしゃべっても別に驚きはしなかったが、私のバティクスである咲香に比べてすごく魔力が劣っている感じがした。
「召喚獣を操るのはいとも簡単じゃ。しかしここにいる愛美の召喚獣はフェンリルの咲香だ」
 司令室内がどよめいた。
 フェンリルという言葉に驚いたのか。それとも咲香がそんなに有名なのか……?
「もう反対の予知はないであろう?」
 全員が黙り込んだ。
「ふむ。では愛美よ。そなたにこの戦いの総司令官を命じる。仲間の助言があってもかまわんよ。そなたの大事な仲間が3人いた筈であろう?」

「はい。わかりました。私、この戦いの総司令官の任務、承ります。この戦い、絶対に負けられません!」
 私は言うと同時に立ち上がった。
 司令室内の各部隊隊長に言った。
「あなた方の協力が必要です。どうか、お願いいたします」
 私は頭を下げた。
 肩からすべった長い赤髪が前に流れる。
「わかりました。愛美さん。あなたが天使であり、相応の魔力、そして咲香を操る力と仲間を信じる心が私にはわかります」
 ダストが立ち上がった。
「皆!この戦い、愛美さんのため、魔法界のために全力を注ぐぞ!」
 ざっとみんなが立ち上がった。
 そして歓声の声で司令室はあふれた。
 ゼラに肩をポンとたたかれてようやく私は顔をあげた。
 前にダストの明るい笑顔があった。

 やっと、やっとみんなに心が通じた。
 私はそんな充実感で胸があふれた。
 そして目からも涙がポロポロとあふれたのだった。


「お姉ちゃんも大変だね!頑張ってね!!」
 飛んでいる私の背中をバシッとたたく優。
「痛っ、もうっ。優!」
 私はいつものように優に言ったつもりだった。
 しかし振り向いて見た優の顔はいつもの優の表情では無く、まじめでいつになく緊張していた。
「……ごめんお姉ちゃん。でもこの緊張と恐怖をなくすには……こんな風に振る舞うしか……」
 優は俯いて泣き出しそうだった。
「あっ、優……」
「愛美。……無理も無いさ。優はまだ中学生だ」
「こっ、子供扱いしないでよっ!」
 優が俯いたまま首を振り、顔を手で覆った。
「……優、泣かないで。ごめんね……」
「グスッ……いいの。お姉ちゃんが謝らなくたって……」
 優は私に抱きついてきた。
 はじめて優を完全な妹と認知するまでこんなに年月がかかるとは思わなかったが、
 今までは妹として見てなかった気がする。
 私は優をやさしく腕で抱きかかえた。
 優の羽のしたに腕を通し、空中で2人は抱き合っていた。
「愛美……あの……すごく言いにくいんだが、大聖堂長から伝言だ。もうゼロの軍がこちらへ進軍中らしい。
 だから……その、戦闘態勢と取らなきゃならないんだ」
 健一が話しにくそうに私に言った。
 私は優の肩越しにうなずいた。
 そして優をはなし、両肩をにぎった。
「優、がんばろ!絶対負けない!!」
「うん!!」


「さあ!ショーの始まりだ!!」
 ゼロは右手を上にかざす。
 青かったそらが急に暗雲とともに黒くなっていった。
 そして雨がぽつりぽつりと降り出した。
「さあ行け!我が同志達よ!魔法界を奪い取れ!!」
 掲げた右手を前へ出し前方を指さす。
 それとともにコウモリの羽を持つ魔物が数えきれない数で魔法界の空の拠点へ向かって飛び立った。
「ふふふ……ついにこの時がきた!魔法使いを根絶やしにしろ!!」


「なんだ……急に空が黒く……なった」
「ん?雨……か」
 魔法使いたちがざわめき出した。
 私は魔法をスペルした。
「"スペルウェザー"!」
 スペルした瞬間、雨は止んだ。
 しかしこの空は変わらなかった。

「ほう……我の魔術を防いだ者がいるな……興味深いぞ」
 ゼロが感心していたとき、ついに遠くに魔物の軍勢が見えた。

「いいですか、みなさん。これが魔法界最後の戦いとなるよう全力で立ち向かうのです!」
「おう!!!」
 何人もの魔法使いや天使達が口々に返事をした。
「行くよ!突撃!!」
 そして大西洋の空に一直線にならんだたくさんの魔法使い、天使が一斉に魔装を装備し、
 相手の魔物軍団に向かって進んだ。
「全員、一定距離より追尾性攻撃魔法一斉射撃!!」
 どんどん相手が近くなる。
「今です!!」
「"ブラスト"!」「"チリス"!」「"ギガ"!」「"プロプション"!」「"クラウド"!」「"ロドク"!」
 全ての魔法使いが魔法をスペルした。
 一直線に並んだ魔法使いから魔法が一直線に相手に向かって飛んでいく。
「私も行くよ〜!今度こそこの力を!"シャドバー"!!」
 優のスペルした魔術は闇属性魔法だった。
 漆黒の闇が相手に向かっていく!
「俺の出番か!今まで秘密にしてきたけどな。"レリーフ"!!」
 健一は光属性の魔術だった。
 一筋の光が相手を狙う!
「ただの召喚獣ではないことを証明して見せます!"メテオシュート"!!」
 咲香は口から隕石をはき出す!
 ものすごい勢いで相手に飛んでいった。
「司令官として、1人の魔法使いとして!この魔法界を守る!"ナイツドラゴン"!!」
 私がスペルした魔術は魔装であるナイフの先からでる七色の光で攻撃する魔術。
 虹色の光が龍となり相手を貫く!

「魔法界を守るんだ!!!」
 一斉に放った魔法は相手軍の前線部隊を壊滅状態に陥らせた。
 しかし同じことを相手も考えていたようで、こちらの魔法が当たる瞬間、相手軍から夥しい攻撃魔法が飛んできたのだ!
「全員回避!防御魔法に専念!」
 私は指示を出した。
 魔法使いは進軍しながらも魔法障壁や魔法反射術をスペルし、相手に向かう。
 この指示のおかげでこちらには被害が少なかった。
「総員、白兵戦を心得てください!」
 全くその通りになった。 
 お互いにぶつかり合った両軍は魔装と邪悪なキバとのぶつかり合いになった。
 その中には魔法属性を付加して戦う者も多かった。
「お姉ちゃん!私は遠くから狙うしかないんだけど……?」
 優がこちらを向いて戸惑っていた。
「魔装が遠距離武器の者は遠距離より援護してください!仲間に当てないように!!」
 まったくいつもの言葉遣いとは違っていた。
 そんな自分が不気味だったが、もうそれどころではない。
 私は小柄な身体で相手の攻撃を巧みにかわし、
 両手のナイフで急所を突くピンポイント攻撃を繰り返していた。
 やられた相手の魔物は暗黒で染まった海へ落ちていった。
「うう、やっぱり白兵戦では相手に分があり過ぎかな?」
 相手は戦い慣れた魔物。
 こちらには戦いに慣れていない一般の魔法使いも混ざっている。
 だんだんとこちら側は押されるようになってきた。
 相手の白兵戦の実力はかなりのものだった。
「愛美!いくら魔装があったって白兵戦では相手に分がありすぎる!足止めだけ残して背後からの魔法攻撃の方がこっちに有利だ!」 
 健一が遠くから叫ぶ。
 目に入った健一は大きな剣を振り回し、相手を次々に討ち取っていた。
「うん!わかった。各部隊隊長と白兵戦に自信のある者のみこの場に残って相手を止める!その他の者は部隊の背後より魔法攻撃!白兵部隊の安否は気にしなくていいです!白兵部隊は魔法障壁常時展開!」
 私は大声で回りに指示を飛ばす。
 いいながらも襲いかかってくる魔物をナイフで迎撃していた。
「了解!」「まかせろ!」「向かうぞ!」
 いろいろな返事が返ってくる。
 見た目が強そうな魔法戦士や天使がこの場に残った。
「魔法部隊の隊長は優、やってくれる?」
「オッケー! ……でもみんな私のこと信じてくれるかな?」
「大丈夫!みんな優のこと信頼してるよ!」
 優は振り向くと優の後ろに隊列を組んだ魔法部隊の面々がそろっていた。
「……ふふ。じゃあいったん退くよ!」
 魔法部隊はこの戦場から退却した。
「よーし、私たちは魔法部隊退却の援護をしつつ相手を足止めせよ!」
 前線の白兵部隊は魔装に属性付加を行い、魔物達を一掃した。


「ここまで下がればいいかな?」
 優の率いる魔法部隊は前線戦場の30メートルほど背後で隊列を組んだ。
「じゃあここから一斉に魔法攻撃ぃ!仲間のことは気にするなとの総司令官の命令だよ!」
「では私の強力な魔術をお見せしましょう。愛美の妹君。青く光る命の海(みなもと)よ……あふれそ
 の驚異をあらわにせよ!"ビロウスウェール"!」
 ダストは青い羽を光らせ、大量の水を呼びよせた。
 大きな津波となり、戦場に向かっていく。
「ダストさんに続いてください!」
「"アイシクルエミット"!」「"デスクラスト"!」「"ストラックフィールド"!」「"ファイアーバード"!」
 周りから次々に強力な魔術がスペルされていく!
 そのすさまじい威力と迫力は戦場にいた私にすごく感じられた。
「白兵部隊総員!防御魔法強化!仲間の魔法にやられるないで!」
「じゃ、私もやろっかな!来れ闇の精、戦慄をあたえ、螺旋の吹雪となれ!"ブラックブリザー
 ド"!!」
 漆黒の闇が渦になり、吹雪のように相手を襲う!
「優!その調子!」
「空中に舞し風よ。その力を我に!"オーガスラスト"!」
 健一は風属性付加術をスペルし、刀身に風を纏った。
「こんどは切れ味が数倍だぞ!"スパイラルソード"!!」
 健一は魔物部隊の隊長らしい堅い身体を持つ魔物と戦っていた。
 そっちに集中していて背後から向かってくる味方の魔法に気づかなかった。
「健一!ああっ、しょうがないか。私が!」
 私は急いで健一の元へ飛んでいった。
 途中襲い来る魔物は味方の魔法、あるいは私の魔法によってけ散らされていった。
「健一!」
 向かってきた"ファイアーバード"を私はガードした。
「愛美!うん、ごめん。助かったよ。コイツめ、今度こそ!!」
 健一の風と剣が相手を切り裂いた。
 そして健一はその魔物を倒すことに成功した!
「ふうっ、なんとか相手の軍はほぼ壊滅って感じだね」
「ああ。そう簡単でも無かったが相手も大したことなかったな」
「まあまあってとこだったね」

「どうやら前線部隊は壊滅状態らしいな」
 しかしゼロはやられながらも不敵な笑みを浮かべていた。
「だがこんなものはまだまだ序の口よ・・次は幹部クラスの者を送り込むとするか……。シド、頼んだぞ」
「お任せを」
 シドと呼ばれた者は2本の角、4枚の青黒い翼、そして漆黒の瞳を持つガーゴイルだった。
「やつらの弱点は仲間の死に耐えられないことだ。総司令官の石垣愛美も仲間の死には弱い……。うまく攻めるのだ」
「はっ」
 シドは一瞬で消え去った。
「ふっ、これからが面白いのだ」

「ふむ。どうやら敵の第1陣は破れたようだな」
「そうですね。愛美殿はやはりやりますね」
「なかなかの司令官っぷりであったな!」
 ゼラとエクス・マオは拠点で会話をしていた。
 しかしこの場にもう1人の幹部が送り込まれていたのだ……。
「フッフッフッ。ゼラめ。余裕を見せていられるのも今のうちだわ!」
 レディサタンは空の拠点の下に回り込み、
 ある策略を立てていたのだ。

 そのころの戦場では……
「こいつが最後の1人ですね」
 咲香がそのキバで相手を仕留める。
「勝ったぁ!」
 私は全身の力が抜けた感じがした。
 まわりから歓声が上がる。
 その声の中には私を褒める言葉もおり混ざっていた。
「とりあえず今は気を抜いてもいいと思いますが、まだ油断はできませんよお姉さん」
「うん」
「愛美。ゼロの昔の事件記録にやつの部下には4人の幹部がいてその中のレディサタンってやつがうっとうしい奴でな、相手の隙をついて本拠地を破壊したりこっちの司令官を殺したりする奴なんだよ」
「えっ、それじゃあ……」
「もしかしたら空の拠点が危ないかもしれないな」
「よーし、じゃあここで2つに軍をわけるか・・。ブラスト隊、ギガ隊、チリス隊、ロドク隊はこの場に残ってください。残りの部隊は空の拠点へ向かったと思われるレディサタン部隊の撃滅に勤めてください」
「OK」「よっしゃ、もう一暴れと行くか!」「総司令官!こちらは任せましたぞ!」
「愛美さん、こちらの軍はプロプション隊の私、ダストが勤めさせていただいてよろしいでしょう か?」
「はい。ではレディサタン討伐隊はダストさんの指示に従ってください。こちらはすでに見えている第2陣の空の拠点到達を防ぎます」
 そう言って魔物軍団がやって来た方角を見る。
 再びさっきと同じくらいの軍がこちらに向かってくる。
 暗雲でつつまれた空に稲光が迸った。
 そして強い風が吹き荒れ、服や髪が激しく靡いた。
「もう来やがったのか!?」
「しかもあの部隊の中央にいるガーゴイル……あいつシドですよ。ゼロの幹部の1人……」
 健一は動揺していた。
 咲香はその目でシドを見極めた。
「じゃあ作戦通り行きますよ!」
「こちらは任せてください。では愛美さん、ここは頼みます!」
 ダストの率いるレディサタン討伐隊は空の拠点へ引き返していった。
「こちらは相手を迎撃します!敵を揺動しつつ、シドを狙ってください!」
「愛美、さっきから気になってたんだけどなんでそんなに指示力があるんだ?」
「えっ? それは……よくわかんないよ。でも私が動けばみんなが動いてくれるんだし、私がしっかりしなきゃいけないからね!」
「そうか、なら俺に言うことはないな。総司令官の指示に従うのみだ!」
 健一は先陣を切った。
「"ギガブレード"!!」

「大いなる大地の恵みよ、この場に集い、我の糧となれ!"シールドブレイカー"!」
 私は地の力を呼び寄せた。
 ナイフに地属性を付加させ、防御とともの攻撃を狙った。
「"サンドサーベル"!!」
「冷淡なる青き氷の力をこの弓に従えよ!"ダイヤモンドダスト"!!」
 優もまた氷属性付加術をスペルした。
「これでいくよっ!"ホワイトアロー"!」
「はっ、さっきのやつらか。あいつらに負けてられないっての!」
 空の拠点で出会ったタチの悪そうな少年だった。
「ロドク隊隊長の名に賭けてあいつらをたおす!!"トレイションレーザー"!!」
 こっちの戦いは再び火ふだがきって落とされた。
 さっきよりも強力な魔術と攻撃で相手を翻弄させた。
 しかしシドの隊もさっきとは違った。
「さっきのやつらと一緒にされては困りまるなぁ。"ギガ・デストラクション"!!」
 シドがスペルした瞬間、暗雲から何本もの落雷が私たちの軍を襲った。
「愛美!これはまずいぞ!上級魔術だ。魔法障壁じゃ防げない!」
「えっ、どうすれば……くっ!」
 私の周りにも落雷が発生した。
 それをよけると次は敵のキバ、ツメが待っていた。
 ズバッ!と鈍い音がして、赤い液体が飛び散った。
 幸い傷は浅かったが、左腕に鋭い痛みが走った。
「ああっ!!」
「愛美!」
「司令官!」
 周りにいた魔法使いが私の身を案じた。
 私はカウンターでナイフの斬りをお見舞いした。
「うっ……傷は浅いです。気にしないでください!」
 血で白い聖服がだんだん赤く染まっていった。
 右手で押さえながら回復を試みた。
「"スラブリカバー"!」
 しかし傷は塞がったものの、痛みは引かなかった。
「なに・・?治ったのに・・」
「毒か!?」
「そんな!」
 しかし毒と聞いた瞬間、身体の力が抜けていった。
 私はガクッと身体を傾け、下の海へ落ちていった。
「愛美!!」
 健一は落ちる私を追った。
「優!咲香!ガイア!あとはまかせたぞ!」
「う、うん。お姉ちゃん……」
「わかりました……」
 そしてガイアと呼ばれたのはさっきのタチの悪い少年だった。
「ったくよだらしがねえな!まかせろ!全員、ギガ・デストラクションを防御しろ!そして俺につづけ!!"マジックミスト"!」
 ガイアは紫色の羽を羽ばたかせ、大剣を振り回し敵に突っ込んでいくのが見えた。
 それを最後に意識を失った。
 私は暗い海に堕ちていった……。

「ぷはぁ!ゲホッ……お、おい愛美!」
 健一は海に落ちた私を海面まですくい上げた。
 私はすっかり意識を失っていた。
「くそっ、すっかり毒気にやられてるな。"メンタルコンディション"」
 健一の手が光り、私の身体をその光が包んだ。
 意識を失っていたのになぜかすーっと力が戻る感じがした。
「うっ、……ゲホッ、ゲホッ……はあはあ……け、健一……」
「愛美。治ったか」
「あ……私がこんなことじゃ――」
「待てよ。お前、自分で全部しょい込みすぎだ。仲間との連携が大切なんだろ?心術の心得だ」
「うん……。そうだね」
 私は健一の腕をぎゅっとつかんだ。
 元は自分の腕だったのになぜかとても強く、頼りがいのありそうな腕。
 すくなくとも今の自分はそう感じていた。
「ど、どうしたんだよ。そんなに……その……」
「えっ?あ、ごめん。気にしないで!それより治ったんだから早く戻んないと」
「そのことなんだけど、このままゼロの居城まで乗り込まないか?」
「そんなことしたら……上のみんなが……」
「ゼロを倒せば結局はOKだろ?それに今連絡受けたんだけど、ジェイドが召喚獣部隊を援軍として率いてきてくれたんだ」
 健一がそう言ったときだった。
 上からすごいいきおいでシドが落ちてきた。
 そして私たちのいるすぐ5メートルくらいのところに落ちた。
 それを追うように優と咲香とガイア、そしてジェイドがきた。
「あっ、お姉ちゃん!こっちは片づいたよ!」
「大丈夫ですか? ……その心配は無いようですね」
「ったくよお、俺がいたからいいもの……」
「ガイアはこんなんだが、頼りがいのある奴だよ」
 4人は順々に言った。
 私は笑顔を振った。
「それを見れば安心だ。で?健一。行くんだろ?奴の寝床へよ!」
「ああ。空の拠点は今どうだ?」
「それはダストさんからの情報によりますと、大変苦戦しているようなのでブラスト隊、ギガ隊、チリス隊は援護に向かわせました」
 と咲香は言った。
 あいかわらず落ち着いていた。
「私も頑張ったんだからね!」
「知ってるよ。だからみんなで行くんじゃない!」
 この場に集まった6人はゼロの居城、グラウンドエンドへ向かった。
 その場ですべてを終わらせるつもりだった。
 もちろん戦いが長引けばこちらの被害も拡大する。
 それを防ぐためにも、向かわなければいけなかった。
 世界を守るなんて今まで考えたことなかった。
 普通に高校生まで進学して普通に暮らしていた筈なのに今はこうして魔法を駆使して戦っている。
 そんな中で新しい仲間と出会って一緒に生活して、戦って……。
 自分はとても成長したと思った。
「目指すは地球(この星)を守ること!行くよお!!」
「オッケ〜!」
「今回ばかりはお前に従ってやるよ!」
「お姉さんは私が守ります」
「いよいよってことだね!」
「健一ばかりにいい格好はさせられ無いからな!」
「……愛美。本当にゴメンな。元々は俺のせいでこんな戦いに巻き込んじゃったんだからな……」
「健一はもうそれ以上言っちゃダメ。今こうしていられるのは健一のおかげだから。痛い思いをしても、苦しい思いをしても仲間がいれば乗り越えられる。それは私たちにとってとても大切なことでしょ?」
「……お前にはホント、負けるよな。俺はいつも愛美と一緒だ」
 こんなときにこんな感情は……とは思ったが、
 今の健一の言葉に顔が赤くなるのを感じた。
 そして胸の高まりと共に6人は最果ての地へ向かった。 

    最終話に続く……


戻る ・ シリーズタイトルへ

□ 感想はこちらに □