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SAK-UR-A39
第一話
作:NHK



『とう…は……い、……5…じょ……う…………を…けてい…す。V…Fしす……をちゅう…んし、…AK−…−……39をき………てください』

「はうぅぅ! ヤバイよぉぉぉ! 遅刻しちゃうよぉぉぉ!」
 ボクは口にトーストを頬張りながら、学校に向かって全力で走っていた。しかし、喋る&食べる&走るの三つを同時にこなすのは、かなり難易度が高く………………ぐほっ! げほっ、げほっ、げほ、げほ!!
 トーストを飲み込む時に失敗してむせてしまった。う〜ん、アニメみたいには実際はいかないものだね。アニメのヒロインはすごいなぁ!
 ボクはトーストを食べるのはあきらめ、走ることに専念する。地面を蹴るたびに、少し伸びた髪が跳ねるように揺れ、シャンプーの甘い香りを辺りに振り撒く。
 ボクはとにかく必死に走った。まさか転校初日から遅刻するわけにはいかない。
しゃにむに足を動かし、心臓破りの急坂を登りきる。………………はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、ここまで一気に駆け上がると、さすがに息が苦しい。少し立ち止まり、呼吸を整える。
 ボクの視線の先には、ゆるやかな長い下り坂があり、その終点には、これからボクが通うことになる私立光ヶ丘中学校の正門が見えた。もっとも、ボクにとっては転校というより、戻ってきた、という感じの方が強い。何故なら、ボクは小学校の五年間、あの正門を毎日通って、中学と同じ敷地にある小学校へ通っていたからだ。
 すぅぅぅ、はぁぁぁ、ふぅ。ボクはひとつ大きく深呼吸し、新鮮な空気を肺へと送り込む。
 風が吹き、朝の少し冷えた空気がボクの足の間をすり抜け、制服のフレアスカートを、ふわり、と持ち上げた。
「きゃぁ!」
 ボクはあわてて、手でフレアスカートを押さえた。………………ん? …………ちょっとまて、なぜボクがスカートなんて履いているんだ?

 首の後ろあたりが少しチリチリするような感じ。

 あれっ? ボクって男だったような気がしたんだけど……ん? ……ん? アレがない……こっちには……ん? ……ん? アレがある。しかもブラは 《天使のブラ》 だ。これってどうなってるの?
 ボクは男だった時のことを思い出そうとした。したのだけど………まるで記憶が抜け落ちたみたいに、どうしても思い出せない。光ヶ丘に通っていたことは憶えているのに、男の自分の姿を思い出すことが出来ない。
 う〜ん、よく分からない。ボクはちょっと首を傾げる。と、その瞬間、
「あぶねぇ!」
 悲鳴みたいなブレーキ音と共に、男の子の運転する自転車がボクの方に突っ込んできた! 信じられないことに、男の子は自転車で心臓破りの坂を猛スピードで駆け上がってきたのだ!
「うわぁぁぁ!」
 ボクは咄嗟に道の脇へと飛び退き、男の子は強引にハンドルを切った!

 がしゃん! がしゃん! がりがりがり!

 自転車は派手な音を立てて坂を滑り、ようやく止った。
「大丈夫!? ケガはないですか?!」
 ボクは慌てて男の子に駆け寄る。
「へーき、へーき、全然大丈夫」
 男の子はすぐに立ち上がり、制服のズボンに付いたホコリを払いながら応えると顔を上げた。
「……おっ?」
 男の子はまじまじとボクの顔を見つめ、ボクを指差す。
「お前、ひょっとして、水無瀬か!?」
「……う、うん。そうだけど?」
「うおぉぉぉ! マジかよぉ!? 転校生が来るって聞いていたけど、水無瀬のことだったのかぁ! スゲェ! マジで久しぶりじゃん! 俺、楠見だけど憶えてる!?」
 ボクは男の子の顔を改めて見た。さわやかで整った顔立ち。ちょっとかっこいいかも? でも、ボクの記憶に楠見という名前はないし………顔も思い出せない。だからといって、《ゴメン! 忘れちった! てへっ!》 とは答えられないよね。答えられないボクは………
「………えっ、えと、楠見くんでしょ!? 憶えてる! 憶えてる! ほ、ホント久しぶりっ!」
「マジでっ!? 憶えていてくれたの!? いやぁ、嬉しいなぁ!!」
 男の子はボクの手を握り、ぶんぶんシェイクして喜んだ。
 うぐっ、良心が痛い。あずきバーを食べると決まって痛み出す虫歯のように痛い! 女の子を口説く時に、《俺、柔道が得意なんだ。特に寝技がね、どう、今夜一緒に寝技で勝負しない?》 と言うのと同じくらい痛い(これはちょっと違うか)。
 と、とにかくボクは良心の呵責から逃れるべく、別の話題を探す。…………………そうだ! あのことについて聞いてみよう!
「……とっ! ところで楠見くん! ボクのこのカッコ、どこか変じゃない?!」
 ボクが男だった時のことを知っているなら、ボクが女子の制服を着ていることを指摘するはずだ。
 楠見くんは腕を組み、う〜ん、と唸ると、
「……水無瀬、ちょっと痩せた?」
 ボクの胸を指差した。……………カッティーン! く、くぉの野郎ぉぉぉ! とぅりゃぁぁぁ!!
「わあぁぁぁ! 水無瀬っ! ゴメン! 角で、カバンの角で殴るのはよせっ! イテッ! すいません! 許して〜!」
「もぅ! 人が真剣に質問しているのにぃぃぃ!!」
「落ち着け! 落ち着けよ! 学校に急がなくていいのか!? もうすぐチャイムが鳴るぞっ!」
 ボクは振り上げたカバンを、ぴたり、と止めた。……………そうだ、ボクはそもそも学校に遅刻しそうで急いでいんだ。
 腕時計で時間を確認する。8時29分。
「うわぁぁぁ! あと一分しかないよぉぉぉ!」
「水無瀬! 後ろ乗れ!!」
 楠見くんは倒れた自転車をすばやく起こすと、自転車に跨りボクを手招きした。
 ボクは急いで後ろの荷台に座ると、楠見くんのウェストに手を回す。
「しっかり掴まっていろよ!」
「う、うん!」
 楠見くんとボクを乗せた自転車は、朝の光を浴びながら、冷えた空気を押し広げ、猛スピードで坂道を滑り降りていった。



 最後まで読んでいただき、ありがとうございます。NHKです。
 物語は始まったばかりなので、物語については触れないでおきますね。

 最近、時間がない!
 どうにか時間を作って本屋に駆け込むと、閉店10分前!
 これじゃ、ゆっくり本を吟味できないぜ!
 そういうわけで、個人的なことで恐縮ですが、
 オススメの小説、漫画がありましたら、お教え下さい。(TSFに限らず、映画でも可)

 あと、(小説の)テクニックに関するアドバイスも(出来れば)よろしくお願いします。

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