戻る



悪魔少女ニコ

作:NHK


悲劇の誕生2


どのくらい時間がたっただろう?空はすでに暗くなっていた。
わずかに元気を取り戻したボクは、這うようにして、というか文字通り這って何とか家まで辿り着いた。アスファルトの上を匍匐前進で家まで帰るなんて、初めての体験だった。出来れば一生そんな体験したくなかった。
ボクは制服を脱ぐのも煩わしく、すぐにベッドに倒れ込むと、深い眠りに落ちていった。

夢を見た。

ボクは学校の教室で、授業を受けていた。
何故か突然、足の親指がとても痛んだ。
あまりの痛さに、ボクは靴をぬいで、指先を見た。
指先には大きな刺が深く突き刺さっていた。
先生はボクにすぐ保健室に行くよう言った。

ボクは何かの台に横たわっていた。
幾つものライトが、真上からボクを照らしている。
ボクはどうやら保健室ではなく、病院の手術室にいるようだ。
医者はボクに刺を抜く手術をするのだと言った。
医者の顔には大きな傷があり、左右で皮膚の色が違っていた。
ボクは止めてください!と抗議して体を動かそうとした。
しかし、麻酔が効いているらしく、体はピクリとも動かない。

ボクが虚しい抵抗を続けている間も着々と手術の準備が進む。
ボクの足にギロチンのような恐ろしげな器具がセットされた。
『ふふ、用意はいい?』
看護婦さんがボクの顔を覗き込んで尋ねた。
その顔は、神社の境内で出会った少女にとても似ていた。
恐怖で、ボクは声にならない悲鳴を上げた。

そして朝目覚めると、ボクは女の子になっていたのだ。
思い出しただけで冷や汗がでる。すぅ、はぁ、すぅ、はぁ、もう一度深呼吸。ひょっとしたら、ボクはまだ夢を見ているのかもしれない。こういう時こそ、念には念をいれないとね。
ボクは願いをこめて手の甲の皮膚を軽くつまむと、
お願いです!夢であってください!夢であってほしい!てゆ〜か夢だろこれ!
願いをこめて思いっきりつねってみた。

「いっったあぁぁぁい!!」
ボクの口から漏れた声は、女の子のような甲高い声だった。
手の甲がひりひりする。青あざが出来てしまった。はぁ、これじゃあ、つねり損だよ。
昨日のことが嘘でない証拠に、ボクの右手には銀色の指輪がキラキラと輝いていた。手を広げて窓から射す朝の光にさらして指輪を観察すると、あれ?何か、指輪に文字か紋章のようなものが刻まれてる。
と、その時、ドン!ドン!ガチャリ、荒々しいノックと共に、ボクの部屋の扉が開いた。
「こらっ!ニコ!早く起きなさい!」
やばい!アルト姉さんだ!

「あっ!」
姉さんと目が合ってしまった。姉さんの顔がみるみる青ざめていく。
「……あ、ニコ、そ、それ、どうしたのよ?」
姉さんは声を震わせながらボクの胸元を指差した。
「……姉さん、ボク、女の子になっちゃったみたい」
「いつ手術したの?」
「……は?」
「手術したんでしょ?」
「してないよ」
「ウソ!手術もしないのに、急に女になるわけがないでしょ!母さ〜ん、大変!ニコが手術して女になった〜!」
姉さんはバタバタと足音を立てながら、台所にいる母さんのところへ走っていってしまった。
こ、この隙に何とかしなくちゃ、とはいえ何をどうしていいのかさっぱり分からない。ボクはとりあえず蒲団をかぶって体を隠した。そこへ、母さんを連れて姉さんが足音を響かせ戻ってきた。
「ちっ、違うんだ!母さん!」
ボクは必死で説明の言葉を捜した。母さんはボクを無言でにらみつけると、
「ニコ、その蒲団をどけなさい」
「嫌だ!」
「いいから、母さんに見せなさい!」
そう言うと母さんはボクの蒲団を引き剥がしにかかった。激しく抵抗するボク。
「見せろコラ!」
そこに姉さんが加わり、母さんに加勢する。
「わっ、ズルイ!二人掛かりなんて卑怯だぞ!正々堂々と一対一で勝負しろ!」
「卑怯も、読経も、鳴くようぐいす平安京もあるかぁ!見せなさい!とりゃぁぁぁ!!」
抵抗もむなしく、ボクは無理やり蒲団を剥ぎ取られて剥ぎ取られてしまった。







二度目まして、NHKです。
『悲劇の誕生2』を読んでいただき、ありがとうございます。
のんびりとしたペースで書き進めているので、
なかなか物語が先に進みませんが、
今後もよろしくお付き合いください。

戻る


□ 感想はこちらに □