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悪魔少女ニコ

作:NHK


悲劇の誕生 1



「きゃぁぁぁぁぁ〜っ! あ・・・アレがないっ!」

 ボクは絶叫した。
 朝目覚めたら突然、ボクの股間から16年間慣れ親しんできたアレが消えてなくなり、その代わりに、胸には二つの膨らみがあった。
 こんな話、信じられる? これで平然としていられる人がいたら、ボクはその人にあって、ぜひともサインを貰いたいくらいだ。

 ボクはパニックに陥った。
 ボクは部屋の中を走り回り、立てかけていたギターを掴むと、脳内1万人野外ソロライブを敢行し……ひとしきり暴れ回ると、疲れとショックで強い眠気に襲われて、再び深い眠りに落ちていった。

 どのくらい時間が経っただろうか? 意識を回復したボクは、恐る恐る目を開いた。
「あぁ〜っ、やっぱり夢じゃなかった……」
 先ほどと同じように、ボクの股間はすっきりと何もなく、胸には二つのふくらみがあった。
 ほんとマジで? 嫌だ! 嫌だ! 嫌だ! ボクはこんなの絶対に認めないぞ!
 ……と言ってみたところで、これだけはっきりと事実を突きつけられたのでは認めざるを得ない。


 つまり……その……ボクは女の子になってしまったのだぁぁぁっ!!


 あぁ……めまいが、目眩が、眩暈がするぅぅぅっ! ボクの頭のまわりに小さなお星様がクルクル回って見える〜っ!!

 はっ! ……こ、こういう時こそ冷静にならなくちゃ、落ちつかなくっちゃ!
 えぇと……ボクの名前は彼方ニコ。大阪市内の私立S高校に通う、どこから切っても金太郎飴みたいにごく普通で平凡な高校生の男子で、水をかぶると女に変身したりするような、特異体質の持ち主では決してなかったはずだ。
 と、とにかく、こうなってしまった原因を考えるんだ!

 すぅ、はぁ、すぅ、はぁ、まずは深呼吸。
 さぁ、考えろ! ボクの灰色の脳細胞! 思い出すんだ、思い出すんだっ! 記憶の糸よカモ〜ンッ!!

 ……………………………………………………………………………………
 ……そうだ! 昨日だ! 昨日の夕方あの女の子に会ってから、ボクの体はおかしくなったんだ!

 昨日の夕方、ボクはいつものように学校から家に向かって歩いていた。
 大通りから脇道に入り、神社の境内を通り抜けようとした時、境内の真ん中に、このあたりでは見かけない黒いセーラー服を着た女の子が立っていた。……年齢はボクと同じくらいだろうか? 女の子はにっこり微笑むと、まっすぐボクに向かって歩いてきた。
「よぉ、待ってたぜ」
 女の子はボクの前で立ち止まると、そう言った。
 まるで男みたいな言葉使いだ。女の子はとびっきりの美人で、黒く大きな瞳がボクを覗き込んでいる。
「あの、人違いじゃないですか?」
 ボクはうろたえた。そりゃ、とびっきりの美人でも、いきなり知らない人に「お前を待っていた」なんて言われたら、普通、警戒するよね。
 そんなボクの言葉にもお構いなく、
「右手を出して」
 女の子はボクに言った。ボクの右手は、ボクの意思とは関係なく、女の子の前に差し出された。
 これってどうなってるの? 混乱するボクをよそに、女の子は銀色の指輪を取り出し、ボクの薬指にはめた。
 そしてボクの首の後ろに手を回し……ボクにキスした。
「ん、ンン……」
 女の子のやわらかい唇と、ボクの唇が重なる。あまりにも唐突だったのと、初めて感じる甘い刺激に、ボクの頭の中はぐるぐると回転した。
 突然、カリッと女の子がボクの唇を噛んだ。
「……!!」
 ボクはびっくりして女の子を突き飛ばした。口の中に血の味が広がっていく。タイヤがパンクして空気が抜けていくみたいに、全身から力が抜けていき、ボクはその場に座り込んでしまった。
 猛烈な疲労で、意識が遠退いていく……
「ふふ……これで契約完了」
 意識を失う直前に見た女の子は、ボクを見て笑っていた。……その笑顔は、少女とは思えない、まるで小悪魔みたいな笑顔だった。







 はじめまして、NHKです。

 少年少女文庫は二年ほど前から読ませて頂いていました。
 しかし、読むばかりでは申し訳ないと思い、公共に貢献すべく、本作を書いてみました。

 読み苦しい文ではありますが、楽しんでいただけたなら、幸いです。

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