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I can't stand it anymore!
〜あたしの特別なバナナ〜

Written by NHK


―― 美波編 1 ――


「おぉ、ウェルカムバックマイサン! また逢えて父は嬉しいぞ!」

 あたしは朝起きるや否やパジャマ代わりのジャージをずらして、朝立ちしているおちんちんに呼びかけた。おちんちんはそれに応えるかのように力強く布を押し上げる。
 うっふっふ。
 憧れていたおちんちん。いつか私にも生えてくるんだ〜。とか思っていたおちんちん。女の子には生えてこないんだよ〜。と教えられてがっかりして一度は諦めたおちんちん。しかし、あたしはついに手に入れたのだ!

「にひっ。にひひひひ……」

 あたしはズボンの上からおちんちんに触れ、その形や硬さを確かめる。思わず笑いが込み上げてくる。……と、廊下からドタドタと歩く足音が響いてきたかと思うと、バン、と勢いよく部屋の扉が開き、一人の女の子が現れた。

「ミ……ミナミ! また勝手に人の身体入れ替えたなぁ!」

 この女の子はあたしの双子の弟で、名前は瑞貴。
 ミズキは目を逆三角形にしてあたしに詰め寄る。弟のミズキがなぜ女の子の姿をしているかというと、あたしのちょっとした超能力が原因なのだ。で、そのちょっとした超能力ってのは、人と頭をぶつけると、ぶつけた人と身体を入れ替えられるって能力なのだ。

 この能力に目覚めたのは今年の正月。あたしとミズキは一緒に初詣に行ったんだけど、その帰り、神社の境内で将棋倒しに巻き込まれて階段を転げ落ちた。で、気がつくとミズキがあたしになってて、あたしがミズキになってて、その時はかなりパニくったんだけど、すぐに頭をゴツンとやったら元に戻れたわけ。

 その後、いろいろ実験してみたんだけど、入れ替わりが出来るのはあたしだけで、ミズキにはこの能力はなくて、あたしが入れ替われる相手は誰でもいいんじゃなくてミズキだけで、まー、超能力には違いないんだろうけど、何だか中途半端な能力なのだ。それでもこの能力は上手く使えば結構便利で、あたしは時々ミズキと身体を交換して楽しんでいたりする。

「せっ……生理の時に人の身体を乗っ取るなんて卑怯だぞっ!」

 顔を真っ赤にして怒るミズキ。あっはっは。バレたか。明日あたり生理が来そうだなぁ〜と予想したあたしは、ミズキが寝ている間にこっそり身体を入れ替えておいたのだ。

「ミズキぃ。あたしたち双子なんだよ? 同じ日に生まれてきて同じように育ってきたのに、あたしだけ辛い思いするなんて不公平じゃん」
「だからってこんなことしてもいいと思ってるの!?」
「いいじゃん。生理痛なんて男には味わえない貴重な体験だよ?」
「その貴重な体験を毎回ぼくに押し付けるなよ!」

 ミズキはあたしを睨みながら、うぅ〜!と凄んでみせるんだけど、下から睨まれたってちーとも怖くなんかない。

「……ふぅ。仕方ないなぁ。じゃあ半分別けしよう。一日目と二日目と三日目はミズキが引き受けて。四日目と五日目は交代してあげるから」
「何だよそれ! こっちの方が一日多いじゃないか! しかも二日目と三日目だし!」
「えぇ〜。男が細かいことを気にすんなよ」
「今はそっちが男だろ!?」
「あー、あー、聞こえな〜い」

 あたしはミズキの反論をかる〜く無視して朝一番のトイレに向かった。トイレでシバババッと立ちションして水を流して手を洗って部屋に戻ったら男子の制服に袖を通して今度は台所へ。

 台所で棚から食パンの袋を取り出して、その中から二枚をオーブントースターへ。次にマグカップを取り出してインスタントコーヒーにお湯を注いでいると、ちょっと膨れっ面をしたミズキが女子の制服に着替えて台所にやって来た。
 ミズキは食器棚からガラスの小鉢を取り出し、冷蔵庫からヨーグルトと苺ジャムを取り出して、ジャムが入ったビンの蓋に手をかけ、んぎぎぎぎ、と力を込めるんだけど、ビンの蓋は外れない。

「…………」

 無言で苺ジャムのビンをあたしに差し出すミズキ。

「なに? ジャムがどうかしたの?」
「……開かない」
「ふ〜ん、そうなんだ。で、あたしに何か用?」

 あたしはちょっと意地悪っぽくジャムとミズキの顔を見比べる。

「……開けて」
「ほほぅ。それが人に物を頼む態度なんだ〜」
「……開けてください」
「(お願いします)が抜けてない?」
「……くっ、開けてください。お願いします」
「分かればよろしい」

 ミズキから苺ジャムのビンを受け取ると蓋に軽く手を乗せてひねる。力を入れるまでもなく蓋がぱかっと外れ、同時にオーブントースターがチンと音を立てた。






―― 瑞貴編 2 ――


 冬の東京の風景はいつもどこかしらシュールだ。
 それは、東京の上空を覆っているスモッグが太陽の光を遮り、建物とか街路樹とか歩いている人とかの影をぼんやりと霞ませ、全ての風景の輪郭を曖昧にしているせいだ。

 でも、シュールといえば生理痛で朝からブルーになってる高校生の男子の方がよっぽどシュールかもしれない。あぁ、何でこのぼくが生理痛で苦しまなくっちゃいけないんだろう? どうして神様はぼくには入れ替わりの超能力を授けてくれなかったんだろう? ひょっとして男女差別? とか考えながら駅前から学校に続くだらだらと長い登り坂を歩いていると、いきなり後ろから、ばん、と背中を叩かれた。

「ふぁーすとやっぴー!」

 振り返ると、それは奥宮優希ちゃんだった。ユーキちゃんはぼくとミナミが通う学校の同級生で、父親がI T関連の会社を経営する社長さんで、麻布に住む本物のお金持ちのお嬢様だったりする。あっ、でも、お嬢様といっても漫画とかアニメに出て来るみたいな高飛車で命令口調で口に手をあてて、ほ〜ほっほっほ! と笑うような、そんな女の子じゃない。ユーキちゃんはポニーテイルがよく似合う、可愛くて、気さくで、いつも元気一杯な女の子なのだ。

「……やっぴー」

 ぼくは力なく返事を返す。あぁ、こんな体調の日はユーキちゃんの元気が羨ましい。

「お? どしたのミッちゃん。元気がないぞー。ひょっとして女の子の日なのかなぁ?」
「……はぁ。まぁね」

 ぼくが憂鬱なのは生理痛のせいもあるんだけど、ミナミに身体を乗っ取られたことによる精神的ダメージも大きい。でも、ぼくとミナミが入れ替わっているなんてことはユーキちゃんには、てゆーか誰にも口が裂けてもいえない。もし、このことがバレてしまった日には、ぼくの人生はご臨終してしまう。

「そっかー。可哀想にねぇ。よしよし」

 ユーキちゃんは、よしよしとか言いながらぼくの頭を撫でて慰めてくれる。ユーキちゃん優しいなぁ。あぁ、人の同情が身に染みるぅ。

「それにしてもさぁー、毎回見てて思うんだけど、ミッちゃんって生理重そうだよねー」
「え? そ、そうかなぁー。自分ではよく分かんないんだけど……」
「絶対そうだよー。だって、私、生理とかでおなか痛くなったことないもん」
「えー? ホントにー? それ羨ましいなぁ」

 ちょっと照れたように、えへへへ、と笑うユーキちゃん。

「実は私、肩がこったこともないし、便秘になったこともないんだよねー」
「……へぇ」
「あと、風邪もひいたこともないんだよー」
「…………」
「どぉ! スゴイでしょ!」
「……そっ、それはユーキちゃんがバカだからじゃないの?」
「わっ! ミッちゃんひど〜い! バカじゃないよぅ! 健康ユーリョー児なだけだよぅ!!」

 ユーキちゃんの駄々ッ娘パンチを背中に浴び、ぼくはさらに足を速める。

「ところでさー、ミッちゃん今日放課後空いてる?」
「うん。空いてるよ」
「じゃあさー、ライブ見に行かない? 【Lunar LUNAR】ってインディーズのバンドなんだけど……」
「知らないなぁ。どんな音楽をやってる人たちなの?」
「え、え〜と……ロック……かな?」

 奥歯に物が挟まったみたいな表現で言葉を濁すユーキちゃん。んん? さては何か裏があるのか?

「ふ〜ん。なんか微妙な言い回しだね」
「そっ! そんなことないよ! あー、ほら、チケット代はいらないから。ネッ!」

 なに!? タダですと!? それなら行って損はありますまい。

「場所は?」
「吉祥寺。開演時間は十九時。一緒に行こ! お願い!」

 胸の前で手を合わせておねだりポーズのユーキちゃん。その可愛らしさたるや男だったらイチコロだ。

「仕方ないなぁ。行きますか!」
「やっほう!」

 そんな調子で色々とおしゃべりしている間に、ぼくたちの通う学校の白い校舎が見えてきた。






―― 美波編 3 ――


 足が長い分、いつもより早く学校に到着したあたしは、自分のクラスへは行かずミズキのクラスへと向かう。でも、あたしを疑う人はいない。だって、今のあたしはどこから見たって吉川瑞貴だからだ。

 教室の扉を開けて中に入り、ミズキの席に座ると同時に一人の男の子があたしに話し掛けてきた。

「ちーす」

 あたしに話し掛けてきたのは末松大介。ミズキの親友だ。末松くんは肌が浅黒くて、まるで日焼けサロンで焼いてきたみたいな色をしている。で、一度、日焼けサロンとか行ってんのー? と聞いてみたんだけど、褐色の肌は天然なのだそうだ。まるで沖縄の人みたい。

「ちーす」
「ミズキさぁ、この問題分かる?」
「んー? どれどれ?」

 末松くんは教科書を開いてあたしに差し出した。で、教科書を覗き込んであたしは絶句。げっ、これ数学じゃん!

「あー、うー、ゴメン。分かんない」
「え〜何でだよ? ミズキ数学得意だろ?」

 うぐっ、ミズキは数学得意だけど、あたしは苦手なんだよぅ。なんてことは口が裂けても言えない。いや、マジで口裂かれそうになったら言うけど……。

「やっべー! 俺、ミズキを当てにしてたのに、一時間目、数学テストどうしよう?」
「マジで!? 勉強なんて全然してないよ!」
「なんで勉強してねーんだよ?」
「え、え〜と、昨日は疲れてたから勉強しないで寝ちゃったんだよねぇ」
「どうせオナニーのし過ぎで疲れたんだろ?」

 末松くんはすぐにこーゆーエロいことを言うので、男子の間では【エロ松】と呼ばれている。あっ、でもオナニーしたのは当たってる。てゆーか、あたしはミズキの身体を借りる度に、ミズキの身体でオナニーをしているのだ。それも毎日。だってさー、珍しいんだもん。それに何回でも出来るし……。

「あぁ、マジやっべー!」
「奇蹟よ起れぇー!」
「自習になれぇー!」



 ――――ならなかった。



 あたしたちの祈りの声は無常にも天に届かず、テストは惨憺たる結果に終わった。

 でも、暑さ寒さも彼岸まで……じゃなくて、喉元過ぎれば熱さ忘れる。の言葉通り、二時間目のチャイムが鳴る頃には数学ショックも消え失せてしまった。
 二時間目は現国。教科書に載ってる【ねじ巻き鳥クロニクル】を読んでたら、急におなかが減ってきて、腹の虫がぐぅぅぅ、と鳴るもんだからちっとも授業に集中できない。あー、仕方ない。早弁すっかー。てことで、教科書をバリケードにして、朝コンビニで買ってきた直巻きおむすびを一つ食べる。ところが、三時間目も四時間目もやっぱり授業中におなかが空いてきて、結局、朝買ったお弁当は昼休みまで保たなかった。

 で、昼休み。

「ミズキ、学食行こうぜ!」

 チャイムが鳴って授業が終わるなり、末松くんがあたしの肩を叩いた。一方、あたしの胃袋はコンビニで買った弁当を平らげたというのにまだまだ余裕があって、このままじゃ午後の授業まで保ちそうにない。まぁ仕方ないよね。今のあたしは育ち盛りの男子なんだから……。

「よっしゃ行くかー!」
「おぅ!」

 あたしたちは学食までダッシュ。急いで注文して見事に席をゲットした。二人で向かい合って座り、末松くんは百八十円のラーメンを、あたしは百六十円のキツネうどんをすごい勢いでちゅるちゅる胃に流し込む。

「ところでミズキさぁ」

 ふいにラーメンを食べる箸を止めて末松くんが言った。

「んー? なに?」
「今日放課後暇か?」

 ちょっとあたしに顔を近づけて小声で喋る末松くん。をを、何やら秘密の匂いがする。

「別にー。暇だよー」
「じゃあさ、今日、俺の家に来ないか?」
「行ったら何かあんの?」
「んっ、ふっ、ふっ。 最近俺スッゲーお宝ゲットしたんだよ。だから、ミズキにも俺のお宝見せてやるよ」

 にやり、と不敵に笑う末松くん。ほほぅ。男の子のスッゲーお宝と聞いては行かない訳にはなりますまい。あー、お宝って何だろな〜。楽しみ〜♪






―― 美波編 4 ――


 放課後、末松くんと一緒に電車に乗って、中央本線で末松くんの自宅がある小金井へ。
 末松くんの家は小金井でもわりと大きな家が立ち並ぶ閑静な住宅街にあって、小ぢんまりとした外見の家なんだけど手入れの行き届いた庭なんかがあったりして、調布にあるあたしの家より立派だ。

「おぅ。上がれ、上がれ」
「お邪魔しまーす」

 末松くんに促されて玄関で靴を脱いで上にあがり、古くて味わいのある板の間の廊下を進む。この廊下がまたぴかぴかに磨かれていて、歩く姿が廊下に移りこんだりする。で、よく見るとぴかぴかなのは廊下だけじゃなくて、家全体に掃除が行き届いていて埃一つないのだ。

 ぴかぴかの廊下をずんずん進んで階段を上がってまた廊下をずんずん進んで、それで廊下の突き当たりにある扉を開けると、そこは巨大なゴミ箱だった。

「…………」

 末松くんの部屋を見るのはこれが三度目になるんだけど、毎度ながらこの光景には絶句する。
 部屋の中は脱ぎ散らかした服とか漫画とか大量の雑誌とかCDケースとかポテチの空き袋とかが、え!? なに!? 竜巻にでも遭遇したの!? てな感じに掻き混ぜられて散乱している。

「おぅ。ちょっと散らかってるけど、気にせず入ってくれよ」

 この部屋のどこを見れば、ちょっと、なんて形容詞が出てくるのかさっぱり分からないけど、とにかくあたしは一歩部屋に足を踏み入れる。すると―― くさっ!――何ていうか男くさっ! てゆーか汗くさっ!
 あたしはドアを開け放ったまましばらく立ち止まって、部屋の中に充満する男くさいやら汗臭いやら何か色々くさい臭いがが薄れるのを待つ。

 ううむ。それにしても、こーゆーのが一般的な男の子の部屋なんだろうか? あー、でも、ミズキの部屋はこんな酷くはないか。本とか五十音順で並べてたりして、アイツって意外と几帳面なんだよねー。てゆーか、あたしの部屋より片付いてるし……。

 ようやく臭いが薄まってきたところで、あたしは飛び石みたいにある僅かな足場をぴょんぴょん飛び跳ねながら部屋の中に入っていく。

「ねぇ、お宝ってどれー?」
「あー、悪い。今ちょっと探すから、適当に座って待ってて」

 あたしの方を振り返りもせずに漫画がぎっしり詰まった本棚を引っ掻き回す末松くん。仕方がないのであたしは床に落ちていたクッションを見つけてその上に座る。するとクッションから、もわわん、と埃が舞い上がった。

 ちょっと手持ち無沙汰になったあたしは、黙々と本棚から漫画を引っ張り出していく末松くんの作業を見つめる。……んん? なんだ? 漫画を避けたらその後ろにまだ何かあるぞ? てゆーか裸の女の人の写真だ! まさか、あれが世に聞くえっち本!? てゆーか、うわっ、うわっ、スゴーイ! 漫画避けたら後ろは全部えっち本だぁ!!

「あっ! あった、あった。じゃじゃん! これが俺のお宝!」

 振り返ってあたしに突き出した末松くんの手には一枚のDVDが握られていた。で、DVDには【ぶっかけ女子校生パート8 〜もうおなかいっぱい〜】と書かれたラベルが貼られていた。てゆーことは、男の子のスッゲーお宝ってえっちビデオなの!?

 末松くんはさっそく部屋の隅にあったパソコンを立ち上げ、ディスクドライブにDVDを挿入した。
 しばらくして自動的に本編が再生される。



 最初は車内の映像だった。車はどこか田舎の道を走っていて、助手席にはセーラ服を来た女の人が座っていた。でもこの女の人、どう見ても二十歳は過ぎている。で、女の人がカメラに向かって、パパと香川県にやって来ました〜。とか言ってる。二十歳過ぎてセーラ服着るなんて、ちょっと厚かましいんじゃない?

 画面が切り替わって、今度はどこかのお店の中だ。さっきの女の人と三十代の男の人が無言で一心不乱にうどんを食べている。うどんの上には大根おろしと天かすがトッピングされていた。

 またしても画面が切り替わる。今度はどこかの旅館の客室のようで、二人は浴衣を着ていた。じゃあ、そろそろ。と男の人が言って女の人に近づき、女の人の浴衣の前をパッと開いた。その瞬間、女の人のの白くて大きな胸が、ぷるるん、と露わになる。

「うおぉぉぉ! でけぇぇぇ! 美味そー。喰いてぇぇぇ!!」

 突然隣にいる末松くんが叫んだ。ヲイヲイ、喰いたいって末松くん。ありゃー脂肪のカタマリだぞ? と心の中でツッコミを入れている間に画面の中では男の人が女の人の帯も解いて、女の人はとうとう浴衣をすべて脱がされてしまった。

 素っ裸になった女の人の肌は年齢の割には結構綺麗で、顔もよく見るとまぁまぁ可愛い。そっかー。こういうのが男の子には美味しそうに見えるんだー。とか考えていたら……









 ……凄かった。

 再び画面が切り替わって、また二人がうどんを食べている。うどんには最初と同じように大根おろしと天かすがトッピングされているけど、お店は最初とは別のお店みたいだ。で、ごちそうさまでした〜。と空っぽになった器が映し出されて、男の人が女の人に、どぉ?満足した?って聞いたら、女の人が、うん。もうおなかいっぱい。と応えたところで映像は終了した。



 映像が終わってもあたしの心臓はまだドクドク鳴ってて、あたしは気持ちを落ち着かせるために窓を開けて、深呼吸で外の冷えた空気を何度も吸った。

「どうだ? スッゲーだろ?」

 ディスクドライブからDVDを取り出した末松くんはあたしの方を振り向いて言った。末松くんの目はぎらぎら輝いてて、まるで飢えたオオカミみたい。

「……うん。マジびっくりした」

 あんなの始めて見た。てゆーか興奮した。あたしが男に犯されているような気分と、あたしが男になって犯しているような気分がして、そんで二つの気分が頭ん中でごちゃごちゃに混じってムチャクチャ興奮した。もうホントこんな気分初めてだよ。

「ふっ、ふっ、ふっ。そうだろう。そうだろう。何せ櫻坂亜美の極秘流出無修正バージョンだからな……」
「え!? こういうのって普通修正してあるものなの!?」
「お前なに言ってんだよ? 常識じゃん! つーか、お前だってエロビデの一本くらい持ってんだろ?」
「持ってないよ。てゆーか、こういうの見たの初めて」
「……ま、マジかよ!?」

 絶句して石みたいにカチンと固まる末松くん。

「え? え? 男子ってみんなこーゆーえっちビデオを持ってるものなの?」
「当たり前じゃん! フツー誰でも持ってんだろ」

 あたしはミズキの部屋にえっちビデオがあったかどうか記憶を探ってみたけど、それらしいものを見かけた憶えはない。てゆーか、あたしはミズキと身体を交換するたびにミズキの部屋を好き勝手に探索しているので、ミズキがえっち本とかえっちビデオを持っていないのはほぼ間違いない。

「あー、ミズキやばいって。お前ビョーキだよ。……よし。これから特訓しよう」
「特訓って?」
「俺の門外不出のチョーお宝ビデオを見せてやるよ」
「……ちょ、チョーお宝ぁ!?」

 思わず喉が、ごくり、と鳴った。






後書き


 最後まで読んでいただき、ありがとうございます。NHKです。

 小説を書き始めて気がついたのですが、日常には間違った日本語が溢れています。
 例えば、お茶をいれる器のことを『湯のみ』と呼びますが……間違っている! 例えば、ご飯をよそうための器のことを『茶碗』と呼びますが……間違っている!
 名称と実態が一致していません! 間違っています! あぁ、日本語の未来はこのままでいいのでしょうか!?

 などと全く以ってどうでもいい話題はやめて……

 ちょっとは後書きらしいことも書きたいと思います。
 ええと、ここ最近、シリアスというか(比較的)真面目な物語ばかり書いていたので、ちょっぴりふざけた物語でも書いてみようかなぁ? と思った次第なのです。まぁ、要するに気分転換ってことですね。
 で、実際に書いてみると、思いのほか長い物語になってしまったので、今回は分割してお届けすることにしました。続編については、まぁ、間を空けて、ぽつぽつとお届けしていこうかな? と考えております。

 では、また次回作でお会いしましょう。

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