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企みのストラップ

最終章 決着
作:奄美平次





 里奈は昌武とデートすることだけで満足しストラップを外そうとはしなく、そのためか昌武が女姿に変身する回数が増えてきていた。
「お前、英語の時間いたか?」
「あぁ」
 今村が気になったのか帰りの時間教室を出る昌武に聞きに来る。その時間はもちろん昌武は教室にはいた、だがある一時女姿に変身していたのだ。それも昌武に意識がなく女姿で授業を受けていたのだ。
「お前の席に宮川がいたから・・・」
「え? 里奈が?」
「あぁ」
 今村の話を聞き、とうとう来たかと思う昌武はすっごく落ち込む。
 帰り道いつも以上に落ち込んでいる昌武に気づいた純子は
「どうしたの? 昌武君」
「あぁ、今日さ・・・授業中変身してたんだ」
「え、でも昌武君気づいたんでしょ」
「いや・・・」
 その表情を見て純子の気持ちも沈んでいった。

 昌武は授業中にも変身するようになって心配になり
「なあ、なんかいい方法ないか?」
「いい方法って」
「里奈からストラップを外させるいい方法」
 今村に相談し、今村はすぐ思いついたのか
「あるよ」
「どういう方法?」
「お前が宮川と付き合うんだ」
「それはいい・・・・・・はずないだろ! 純子がいるんだし・・・」
 もちろん昌武その話にのるわけにはいかない、もちろん里奈ともその気があってデートをしてるんではなく、目の前で外してもらいたいただそれだけなのだ。
 だが昌武がその気持ちをいくら持っていても里奈が外さない限り一向に解決に向かわない。
「なあ、もうそろそろいいんじゃない?」
「え、何が?」
 仕方なくデートに行く昌武は里奈にそう切り出す。
「なあ!! とぼけるな!」
「怒鳴らないでよ! 耳痛いわよ」 
「いつになったら・・・」
 最初怒鳴っていた昌武も次第に泣き崩れるぐらいになりそうなぐらいまで暗い声にかわり
「どうかしたの?」
「お前が持っているから教室にお前がいるんだよ、オレの体がお前に・・・だからさ・・・」
 必死に頼み込む昌武を見て里奈は
「わかった、外すわ」
「里奈」
 昌武の目の前で自分の携帯ストラップを外し、念のためそのストラップを昌武がもらうのだった。

 ストラップを里奈が外し変身して困ることがなくなった昌武で
「よかったね」
「あぁ」
 授業中も純子とデートに行っても変身することがなくなった。
 だが、やはりまだ里奈が縒りを戻したいのかそんな嬉しい時間は長く続かなかった。
「え? 昌武君」
「どうした?」
 昌武がまた変身したのを見て動揺をすると言うよりがっかりする方が先で
「どうして?」
「さあ?」
 昌武もどうなっているか自分でもわからずにいた。ただわかるのはまた里奈の気が変わったことだけだ。
「なあ、純子?」
「うん、わかってるお姉ちゃんの・・・見るんでしょ」
 いつものように里奈に変身したのを見た純子は昌武の気持ちを察したのか昌武の言う言葉がわかるのだった。
「お姉ちゃんだといいね」
「あぁ」
 純子も元気のない声で話す。しばらく昌武は落ち込んで家に帰った。
 家に帰ってきたや昌武の表情を見て
「どうした? 兄貴」
「あ、裕弥」
「元気ないじゃん、朝あんなに嬉しそうに純子ちゃんと出かけるって何かあったの? 純子ちゃんと」
「いや・・・べつに」
 裕弥が心配そうな顔で昌武に部屋に入る。
「なあ、俺が女になったらどうする?」
「そんなことないじゃん、兄貴は兄貴、俺の大事な兄貴」
 そう話す裕弥の顔を見て昌武は
「なあ、裕弥。俺さ、このストラップ付けてから女の体にさ・・・」
「うそだろ? そんなの・・・」
 裕弥は信じようとしない。
「ただそれは一時なんだけどさ・・・」
「一時って?」
「俺付き合ってたじゃない・・・里奈と」
「あぁ、それが?」
 ストラップの話を裕弥にする昌武。
「純子と姉妹なんだ」
「純子ちゃんと?」
 なぜか異常に裕弥は驚く。
「だって、元カノの妹だろ?」
「あぁ」
「付き合うか、普通」
「しかたないだろ」
「兄貴らしいよ、ほんとに」
 裕弥にそう言われてしまう昌武で、ちょうどその頃純子も
「お姉ちゃん、ちょっと携帯見せて?」
「え? なに」
 純子はすぐ里奈の携帯を見るがそこにはあのストラップは見当たらない。どうして昌武は里奈に変身したのだろう・・・。

 しかし昌武はまた変身するようになってそんな昌武に疑いの目で見るしか純子にはなかった。
「ねえ、気持ちあれから変わった?」
「気持ちって?」
「私に」
里 奈に変身しなぜ自分に変身しないのかそれを里奈にまだ気があると考える純子。だが昌武の気持ちは里奈にあらず、あの時のままだった。
「俺は変わってない、純子が好きだ」
「そう」
 昌武の気持ちを聞くが純子の顔はあまりさえない。
「どうした? 純子」
「ねえ、私たち・・・・・・」
 純子のその言葉を聞きとうとう来たかと昌武は純子の言葉を聞かず
「その話、今日はやめよう」
「え?」
「俺、今日忙しいんだ。悪い」
 慌てる様子も見せずまま昌武は純子と別れるが内心は慌てふためいていた。
 家に帰るやいなやすぐ部屋に閉じこもる。
「まさか、純子・・・・・・そんなぁ。そんなことぉ・・・・・・」
 嫌な妄想をして落ち込む昌武。その妄想が現実になるのか心配で昌武は寝付けなかった。それもそのはずだ、恋人を振ったことはあっても振られることを知らないからだ、それも前の彼女の妹なのだから・・・・・・。

 その妄想が現実になるのか昌武はいてもたってもいられないが変身はしてしまう。昼飯の時
「どうしよう・・・?」
「どうかした? 昌武君」
 言ってしまうと別れ話をされるかと思った昌武君はとっさに
「ちょっとな・・・」
「ねえ、気になるぅ」
 話をはぐらかす。それが気になる純子は話を戻す。
「何があったの、ほんとに?」
「いや・・・ちょっとな」
 隠そうとする昌武に
「お姉ちゃんとどこか行くとか・・・」
「里奈は・・・! あっ、ストラップどうだった?」
「お姉ちゃん持ってなかったよ?」
「え? じゃあ・・・」
  純子が確認したときはそうだった、その後里奈はあの店にまたストラップを買いに行っていたのだった。
 その行動を予知した昌武のストラップは反応を示したのだろう。
「ほんとに? また買いに行っては?」
 里奈の行動がまた気になる昌武は
「しらない、多分買わないと思うよ」
「そうか?」
「お姉ちゃんに確認してみればわかるはず・・・だよ」
 そう話す純子とあの店へと足を運ぶ。
 だが、そこにもうあのストラップは置いてなかった。
「あれ? ここに置いてあったストラップは?」 
「確かここに」
 あの貼り紙も一緒になくなっていた。
「そこに置いてあった奴だったらこの前の週末に買っていったよ、最後の1個」
「誰が・・・?」
 里奈が買ったのか知りたい純子を店員はジッと見つめ
「お姉さん、いる?」
「え?」
「あんたに似た子が買いに来たんだ」
「そのストラップってもうここには」
「えぇ、何かあのストラップを持つと変なことが起きるって噂がたってからうちで仕入れないようにして、この前買っていったのが本当に最後の1個」
「どうも」
 店員の話から買った女の子が里奈だと察した2人はそうそうに店を後にする。
「絶対、あいつだぞ」
「うん」
 純子も昌武と同じ考えである。
「でも、どうして?」
「さぁ? まだ俺と縒りを戻そうとしてるのか、それも無理矢理」
 里奈があのストラップを持つことにまだ納得がいかない純子だった。

  それからしばらく昌武は変身するが何にも悩むことはなかった。また里奈からストラップを取り上げることだけが里奈と決着を付ける最後の手段だった。
  しかし、また昌武が変身し始めると里奈はなぜか雲隠れしたかのように純子と一緒に家を出るが一切昌武の前に現れることはなかった。
「どうしたんだろう? お姉ちゃん」
「今までこんなことなかっただろ」
「うん」
 学校で里奈の姿が見えないことで心配になる2人で
「そうだ、昌武君?」
「なに?」
 昌武に何か思いついた顔で話しかける純子。
「私たちもストラップ外そうか」
 願いが叶ったカップルはストラップを外し、持っているのは純子ら3人だけだった。
「でも、俺の体は?」
「治ると思うよ」
「そうか?」
「試してみようよ、私たちの気持ち」
 純子にそこまで言われ迷っていた昌武も気持ちを落ち着かせストラップを手にする。
「外そう」
「あぁ」
 ストラップを昌武が外したとたん、急に里奈に変身する。
「え?」
「なんだろう?」
 里奈に変身し戸惑う昌武にしばらくし純子の携帯に電話がかかる。
「もしもし?」
「純子・・・」
「お姉ちゃん?」
 里奈からの電話だが何か様子が変だ。
「そこに・・・昌武君・・・いる・・・?」
 里奈に変身した昌武を見て純子は
「・・・うん・・・いるよ、ねえどうしたの?」
 純子がそう言うとしばらく里奈に反応がない。何か変に感じた昌武は
「里奈? どうした?」
「たす・・・けて・・・」
「どこだ?」
 純子の電話で話しそれからすぐ
「国道近くの・・・工業団地・・・」
「わかるか? 純子」
「さあ?」
「目標物ないか?」
「うん」
 里奈は相手に気づかれないように辺りを見渡す。
「ねえ、正面に公園らしい街灯が建ってる」
「正面に公園がある工業団地?」
 それを聞きながらその場所を純子と探す昌武。
 夕方に電話がかかり、 いつしか辺りは暗くなっていた。
「あ、純子ちゃん」
「裕弥君、どうしたの?」
「兄貴知らない?」
 裕弥が心配になって探しに来たのだが、変身した昌武を知らないからなのか昌武に気づかない。
「いるわよ、ここに?」
「よ、裕弥」
「え!? 兄貴? 」
 里奈と会ってはいたがその里奈に昌武が変身しているとは誰も思うはずがない。
「どうして?」
「例のあのストラップ」
「あぁ」
 裕弥は納得したのかごく普通に昌武と話す。
「あ、裕弥君?」
「なに?」
「ここら辺で国道に近い工業団地って知らない?」
 裕弥に里奈の居場所を知らないか聞く純子に
「国道に近い工業団地?」
「そこに里奈が連れてかれたんだ?」
「里奈って前の彼女?」
「あぁ」
 まだ一向に昌武の体は元に戻らないままで裕弥も一緒に探す。
 裕弥が一緒に探し始め、しばらくし
「お前、何やってるんだ、彼女がどうなってもいいのか?」
 里奈を捕まえている男の声が聞こえたがなぜかその声に昌武は聞き覚えがあった。
「どうした、兄貴?」
「ちょっと待った?」
 電話の向こうから聞こえる雑音を聞き、昌武は走り始める。
「どうしたの?」
「場所わかったんだ」
「ほんと?」
「たぶん・・・」
 自信がなかった昌武はそのまま本能に任せ、ある公園の前にたどり着く。そこは里奈が言った通りの街灯もあり近くに倉庫がある。
「あそこかな・・・?」
 裕弥が倉庫へ行き、入り口のノブをひねるとドアの鍵は開いていた。
「誰だ!」
 中からすごい勢いで声が響く。
「裕弥君」
「誰だ! お前は?」
 そう言わんとばかりに裕弥に向かってくる。だが裕弥もそれに怯むことなく立ちふさがる。 向かってきた男に裕弥はタックルを食らわす。
「ぐぇ、なんや」
「参ったか」
 裕弥のタックルに男は倒れ込む。それもそのはずだ、裕弥も昌武と同様小さい頃から武術を習っていて高校に入って裕弥はラグビー部に所属していて裕弥はタックルに自信がある。
「なんやねん、お前は!」
 里奈の近くにいた男も裕弥に近づく。
「あいつ・・・」
「どうしたの?昌武君」
「見覚えないか?」
 倉庫の中に入った昌武は男の顔を見て何か気づく。その男たちとは純子を助けたときに一緒にいた男たちだったのだ。
「裕弥!」
「え?」
 男たちの方へ走っていく昌武。
「私の妹に何してるのよ!」
「えーっ! うわっ!って」
 勢いよく男の体にアタックしたつもりの昌武だったが里奈の体なのか
「双子なのか、あんた・・・」
「え? どうして・・・」
 男に押さえられてしまう。それを見た純子はとっさに
「お姉ちゃん、ストラップ取って!」
「え、純子?」
「お願い、早く!」
「でも・・・携帯が」
里奈の手元に携帯電話はなく
「あの人が・・・」
 里奈が持っているはずの携帯を持っていたのは昌武を羽交い締めにしている男の手にあった。
「兄貴!」
「え?」
 裕弥は昌武に向かって走る。
「おい、ちょっと裕弥」
「あっ! お前」
 不意に男の右に入り裕弥は里奈の携帯を奪い返す。
「裕弥君、石の付いたストラップ」
「どれ?」
 同じようなストラップがついていて迷う裕弥に
「紫の石!」
 奥から里奈がそう叫び、そのストラップを外すと
「え?」
「久しぶりですね」
 昌武の体が元に戻る。自分の体に戻った昌武は男の腕をほどき投げる体勢に入る。
「あの時の・・・」
「俺の元カノにてぇ、出すんじゃねぇ!!」
「うわっ!」
 羽交い締めにしていた男を投げ飛ばし、倉庫の柱にくくりつける。
「あっ・・・やべぇ」
 もう1人は逃げ出すふりをして里奈の方に行く。それを見ていた純子は見かねたのか男めがけて走り出す。
「お姉ちゃんに触るなぁ!」
 純子はすぐ男に追いつきボディーアタックをする。
「あんた、誰や?」
「忘れたの? 私がほんとの妹よ」
 男が怯んでいるうちに裕弥がきて
「純子ちゃん、大丈夫」
「ほんとに手こずらせるんだから」
 純子の姿に裕弥は驚く。
「純子ちゃん、驚いた。やっぱり兄貴と一緒にいるからかな・・・」
「もう、恥ずかしいわ」
 男を縛り付けた昌武は慌てて裕弥たちの方を見て叫ぶ。
「それより110したか? 裕弥」
「悪い」
 その後、警察が来て男たちを連れていき
「彼女も一緒に」
 事情を聞くため里奈も一緒に連れていかれた。
「大丈夫かな、お姉ちゃん」
「あぁ」
 前の公園で里奈の帰りを待つ純子は心配な顔で昌武を見る。
 里奈を待つ間裕弥は事情を話すため家に帰り
「兄貴、どう?」
「裕弥」
 里奈が戻ってこないことには帰る気にならない昌武も一緒に待っている。
「まだ?」
「うん」
 裕弥が公園に来てもまだ戻ってくることはなくしばらく経った後だった。
「お姉ちゃん」
「ごめん、迷惑かけちゃって・・・」
「ほんとに」
 里奈が戻ってきて、何か気になる里奈は昌武のところに行く。
「ねえ、どうして私に?」
「さあ?」
「たぶん、大事な人の危険を知らせたんだと思うよ」
 裕弥がそう呟き、里奈は昌武の携帯にストラップがついてないことに気づく
「ストラップ、どうしたの?」
「俺たちにはもういらないんだ、もう」
「そう、じゃあどうして?」
まだ自分に変身していたか納得いかない里奈に
「もう、俺と純子にはお前が欠かせないんだ。変な言い方だけど」
「そうよ、一緒にいようよ。ずっと」
「純子・・・」
 純子の気持ちを聞き里奈の表情が変わる。
「そう言うこと、付き合おうとしなくてもお前は純子の姉ってだけでいいんだ」
「昌武君」
 そう話し昌武はしばらくし純子たちと別れ、裕弥と家に帰った。

 里奈も純子の気持ちを知って昌武とは今までの関係に戻る。昌武の体もストラップを外したのもあるが普通の体の戻って安心していた。
「ねえ、昌武君?」
「なに?」
 純子が帰り際何か手にして話す。
「これ、また付けてもいいよね」
「え?それって」
 手にしてたのは里奈も同じ物を持っていたあのストラップだ。
「俺、もう変身するのは・・・」
「大丈夫、昌武君に浮気心がなければだけど・・・」
「俺は・・・」
 浮気しているわけではなかったがまた変身するのが怖い昌武だった。
「どうしたの? 私付けちゃったわよ」
 迷っているのを見て純子は
「いいの?」
「なにが・・・」
「あの人にあげようかな・・・」
「あの人って?」
 あの人と聞いて昌武は慌て
「格好良かったな、裕弥君」
「裕弥?」
 裕弥と聞き驚く。
「うそ、はい心配しないで、どうせお姉ちゃん付けてないんだし・・・もしかして他に気になる人でも?」
「いいや」
 安心する昌武に純子は里奈を助けたときから疑問に思っていたことを話す。
「それよりあの時何でだろう・・・?」
「あの時って?」
「ストラップを外したのにお姉ちゃんに変身したとき」
 それを聞いて昌武は裕弥が呟いたことを思い出す。
「やっぱり姉妹は姉妹でいいんじゃない、争わなくても・・・」
「そうね」
 そう言い昌武の携帯にまたあのストラップが付けていた。

 それからしばらくし普通に生活を送る昌武は今まで通り変身することはなかった、しかしそれは昌武が少しだけでも浮気心があると純子の体に変身するのだった。
  昌武が里奈に変身したのは昌武と純子の気持ちより一時的に里奈が縒りを戻したいという気持ちが上回ったからだろう



 おわり

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