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企みのストラップ

第2章 三角関係
作:奄美平次





 昌武が変身することを話さなかったため里奈は納得しなく里奈の携帯には昌武と同じストラップが付いている。
「もう諦めて捨てちゃえば」
「それはできない・・・」
 昌武は一向にストラップを捨てようとしない。そのためまだ女に変身する昌武であった。

 変身するようになって1ヶ月がたち
「もうすぐ期末テストでしょ」
「あぁ」
「アレが気になってそれどころじゃ・・・」
 期末テストに時期になっていた。
 確かに気になっていたが大学受験が控えている昌武は勉強をしないわけにはいかない。両親も昌武に期待している。そんな時にこんな事になってどうしていいかわからないのだ。
「どうしたら・・・」
 商店街をそんな顔で歩いていると
「どうした? 新藤」
 今村が後ろから声をかける。どうやら昌武の雰囲気に気づいて後から追ってきたのだ。
「何かこの頃お前らしくないぞ」
「そうか」
「この頃覇気がみえない、この頃」
 中学から一緒に遊んでいる今村の前で変身をしなく
「言ってみろよ、俺たちの仲じゃ」
「驚くなよ、俺さ、時々・・・」
 昌武が何を言うかドキドキしながら聞く今村。
「俺さ、女になる」
「え、えぇーっ!」
 今村は昌武が想像していた以上に驚く。
「ただ一時だけだけど」
「それって何?」
「里奈の奴が変なの純子に渡して・・・」
 あのストラップの話を今村にする。
「それって縒り戻したいんじゃ・・・宮川も」
「そんなこと言われても俺付き合ってるんだし・・・」
「そういえば、いたな」
 そっけなく純子を彼女と認める今村だった。

 しばらくし純子が高校を休むようになったある日、昼飯を教室で寂しく食べる昌武に
「何か寂しそうだね・・・」
「えっ?」
「驚くことないでしょ」
 里奈が寂しそうにしている昌武を気にしていたのだ。
「ねえ、何か起きたの? あれから」
 あれからという言葉にピンッと来た昌武は少し怒った顔を見せる。
「なによ!」
「お前な、変な物を純子に勧めるなよ」
 ストラップを純子に勧めた里奈は
「なによ、私だって片思いはつらいのよ」
「そう言ったってお前なぁ!」
 純子が高校を休んでいるのが自分のことが原因しているのだろうと思っている昌武はいても立ってもいられない。
「お前、純子が・・・」
「純子が?」
 何も気にしてない顔をする里奈に憤りを感じる。
 授業が終わり昌武が帰ろうと校門を通ると
「ねえ、たまには一緒に帰ろうよ」
 後ろから里奈が一緒に帰ろうと腕を組んできた。仕方なく周りの目も気にしながらも昌武は里奈と一緒に歩く。
 商店街を通る2人は意外な光景を目にする。
「ねえ、あの子たち、何か嬉しそうだよ」
「何かあったのか」
 昌武たちは女子高生が歩いていく方についていく。そこはあのストラップが置いてある店だった。
「中行ってみよう」
「俺たちは別に」
 昌武は嫌々店の中に入り、中の様子を窺っていると
「これ、あの人に付けてもらおう」
「あの人ってあんたが好きな・・・?」
 女子高生たちは壁に書いてあることを信じ、買いに来ていた。渡した相手がどうなるかまだ誰も知るよしもない。
「あれ、純子じゃない?」
 里奈が指を指した女子高生は1人だけ表情が暗く、里奈は当然後ろ姿だけで気づいた。
「そうか?」
「もう! なんべんあの子の顔見てるの」
「そう言ったって」
 昌武がそんな話をしている間にも純子はレジを通り店を出る。
「あ、純子が! 私たちも行こう!」
 店を出る純子を追い後に付けようとした里奈の腕を昌武は掴む。
「なに?」
「そっとしておこう、どうせ家で聞けるんだし・・・」
 昌武の表情を見て落ち着きを取り戻し追うことはなかった。

 あれから純子が昌武たちと同じストラップを付ける。
 しかし純子が付けても当たり前のように変身することはとまらない。
「どうなんだろう?」
「やっぱりあいつに外してもらうしか・・・どうせ純子も持ったんだから」
「そうだけど・・・」
 さすがに純子の目の前で昌武がまだ里奈そっくり変身していることに純子も慣れるわけがない。それよりこんな事を招き寄せた里奈の前で全然変身をしない。それを2人は不思議になる。

 そんな不思議もすぐ終わる。
 期末テストが終わった週末、1人で街を歩く昌武。純子のためだといろんなブティックの前で気に入りそうな服を見ている。10月も過ぎ秋物から冬物に替わっている
「何かいいのある?」
「うん、これなんか似合う・・・」
「ぜんぜん」
「じゃあ・・・」
 声のする方に振り返り声を確認する昌武。そこには里奈がいる。
「里奈、なんで?」
「昌武君だって今日1人?」
「悪いか」
 驚いたあまり怒り口調になる。
 少し里奈と話した昌武は1人で歩き始める。
「ねえ、どこ行くの?」
「ついてくるなって!」
 里奈が一緒に歩いてくることに異常にまで反応を示した。昌武は変身することを里奈に見られるのだけは嫌だったのだ、しばらく純子のデートも変身してほとんど台無しで気持ちも参っていた。
「いいじゃない」
 そう言い、里奈は昌武の意に反して一緒について行く。
 腕をまわし嬉しそうな顔で昌武を見る里奈にしびれを切らす昌武に変化が起きる。里奈がふと昌武から目をそらしたときだった。
「昌武君?」
 自分にそっくりな女の子を見て里奈は純子と同じく驚きを隠せない。元に戻った昌武に
「どうして?」
「これ、多分」
 自分の携帯を取り出す昌武はストラップを見せる。しかし、このストラップを付けて女姿になったという噂はなく
「これって片思いの人が両思いになれるんじゃ・・・」
「そうだ、けど俺にはもう必要ない」
 ただそうなった理由が知りたい昌武。ストラップを見る里奈は携帯についているプリクラを目にする。もちろんもうそこには里奈が写っているプリクラではなかった。
「もう俺さ、お前にその気はないから」
「それは・・・」
「だったら・・・」
 ストラップを外せと言い出そうとした昌武は言うのをやめる。強く言うと後々何をされるかわかったものではないと自分で判断をしたに違いない。
 結局里奈からストラップを外すという言葉を聞かないまま帰ってきた昌武は自分の部屋で後悔をする。
「なんで、あいつからストラップ・・・何で・・・俺は、俺は! 俺は!!」
今さら悔やんでも仕方ない、せっかく元に戻れたかもしれないのに・・・。

 悔やむ昌武を容赦なく変身させる。
「どうしたの? 大丈夫、昌武君」
「あぁ」
 変身をする昌武の顔は次第に病気にかかったようにやつれていた。すぐ純子は原因がストラップだと気づく。しかし昌武のことを思うと何も言えない純子だった。
 昌武が変身することを知った里奈の態度が一変する。今まで純子がいる校庭には姿を見せることのない里奈が来たのだ。
「お姉ちゃん」
「里奈」
「ちょっといい? 昌武君」
 里奈は昌武を呼び純子のところから離れる。
「何さ、里奈。急に」
「ねえ、今度どこか行こうよ」
「それって俺を」
「もちろん」
 純子に隠れてデートの誘いをする里奈。もちろん正統派の恋愛ということはいえないだろう、それも自分の妹の彼氏になっている事を知って誘うのだから。
「いや、俺には純子がいるし・・・」
「いいんだ、このままで」
「それはな・・・」
「いいんだ、純子の前であんな事があっても」
 昌武は断ろうとするが里奈の言葉に脅されるかのように仕方なく承諾してしまう。
「じゃあ、今度の日曜日ね。詳しいことは金曜日に話すわ」
「あぁ」
 そう言い里奈は嬉しそうに教室に帰っていく。
「何だったの? お姉ちゃん」
「ちょっとな」
 純子にはさすがに正直には言えない。

 週末まで純子に隠し通す昌武で、金曜日の昼飯の時間
「昌武君」
「こんな所まで来なくても教室で話せば・・・」
「だって教室だとみんな聞いてるもん」
「そう言ったってここまで」
 そう思うには不思議ではない、昌武たちの教室より遠いところのトイレの前に呼ばれたのだから気分は良くあるわけではない。
「ところでどこ行くんだ?」
「どこでもいいよ、昌武君と一緒なら・・・」
「え。じゃあ・・・純子の前までこなくても」
 里奈はそう言われても純子の前に行くのには意味がある、昌武と縒りを戻したいのだから・・・。
 デートに行く場所と待ち合わせの場所を決め、また教室に行く里奈は嬉しそうな顔で帰るが、昌武も今まで見せたことのない笑顔で帰る。もう覚悟を決めたのかそれかストラップという弱みを握られているから仕方ないのだろうか。

 里奈とのデートの日はすぐ来る。しかし昌武には嬉しそうな気持ちではなかったが
「待ったぁ」
 待ち合わせの駅前に里奈が来る前には来ていた。
「いつもこうなの?」
「なにが」
「純子と待ち合わせても、早いの?」
 初めて純子とデートしたときのことを思い出し、笑う昌武に
「どうかしたの?」
「いや、同じこと言うんだから。やっぱり姉妹なんだな」
「純子も同じこと?」
「あぁ」
 少し慣れてきたのか昌武は付き合ってた頃に戻る。しかしその最中にも女姿に変身する昌武は動揺しているのを隠し
「なあ、腹減ってないか」
「うん、少し・・・昌武君は?」
「腹と背中がくっつきそう・・・」
「もぉ、むちゃくちゃ昌武君」
 2人の中にも笑顔も戻り
「まさか、昌武君が女の子にね」
「それはな・・・」
 変身の話を里奈にされ、昌武は落ち込む。
「ごめん、そういえば私だった原因・・・」
「あぁ、お前がまだ」
「それよりきいた、この噂」
「え? なに」
 里奈の前で変身してから変わった噂が流れるようになった、昌武と同じようにそのストラップを付けた彼氏が彼女の前で女の子になると言う噂だ。
「たぶん、その噂本当だったら、俺と同じ境遇だよ」
「どんな?」
「お前と純子の三角関係、俺のとっては。相手によって違うけど」
「それはそうだけど」
 昌武と話しているうちに表情を変える里奈を見る。
「なあ、どうかした?」
「ううん、そういえばそうだね」
「なにが?」
「純子がいるんだよね」
 何か昌武に確認をし始める里奈。
「あぁ。なあ里奈?」
「なに」
「ストラップ・・・・・・外してくれないか・・・頼む」
 純子にも気にさせてばかりで悪いと思っていた昌武はそう切り出す。
「うん、わかった」
「じゃあ・・・」
「でもすぐじゃなくていいでしょ」
「え?」
 外すと言った里奈の昌武へのお願いを聞いて昌武の表情は凍りつく。
「どうかした? 昌武君」
「お前、鬼やな」
「え?」
 昌武の言った鬼という言葉にはいろんな意味を含んでいた。そう話すと昌武は口を閉ざした。
 しばらく話さない昌武に嫌気がさしたのか
「どうしたの? さっきから」
「どう思ってる、あれから俺がこうなってさ申し訳ない?」
 それに答えるように昌武は口を開く。
「それは昌武君には・・・」
「俺じゃなくて・・・なあ」
「だれに?」
 目の前で目の当たりしてまだ話をそらそうとする里奈にとうとう昌武の堪忍袋の緒が切れた。
「じゅ・ん・こ! 自分の妹が俺と付き合っているのにそれを横取りしようってしてるんだぞ!」
「でも・・・」
「もういい!」
 里奈の携帯電話を奪おうと手を伸ばす昌武に必死に渡すまいとする里奈。それを一部始終見ている人がいる。それが純子だと2人は気がつくはずがない。

 その後、機嫌悪く家に帰ってきた昌武は翌日純子に会うまでその機嫌は直らなかった。
「どうしたの? 裕弥君と何かあった」
 純子に昌武は里奈と喧嘩したことなど言えない。
「べつに、裕弥とは何も・・・」
「そう」
 昌武の原因が前日に起きた事を知っている純子だがすぐ核心をつく話をしない。昌武と距離ができてしまうかと思ったのだろうか・・・。しかし里奈が昌武から離れない限り不満も増えていくのだった。

 昼飯の時間になり、純子は昌武と一緒にいるがやはり前日のことが気になるのか
「どうかした、さっきから全然食べて・・・」
「うん」
 昼飯をあまり食べていなく元気も朝よりない。
「あのさ、昨日・・・」
 耐えきられなくなった純子は昌武に話しかける。
「昨日・・・何かあった?」
「お姉ちゃんとどこか行ったの?」
「え、別にそこら辺を一緒の歩いただけ」
 それを聞いた純子の表情が変わる。
「お姉ちゃんのこと、まだ気になるの?」
「え? 気になるってそれは・・・」
 純子の表情に戸惑いはっきり言えない昌武に
「私の姉だから、前の彼女だから?」
「いや・・・」
 純子は悩みの種であるストラップをすっかり忘れ昌武を責め続ける。
「俺だって」
「なに?」
「俺だってこんな体もう嫌だ!」
 昌武の必死な顔を見て純子は我に返る。
「ごめん、昌武君」
「ううん、俺も悪いんだから」
 そう言い、すぐ純子の機嫌が直り
「だけど、お姉ちゃんだったら私に任せて」
「手強いぞ、この頃のあいつは」
「それは昌武君にだけ・・・」
「そうか?」
 純子に相談しストラップの事は純子に協力してもらうことにする昌武だった。

 しかしそう簡単に里奈も納得するはずがない。
「でもどうして・・・外さないの?」
「それは純子と同じ気持ちだから」
「私と?」
 素朴な疑問を昌武に投げかける。
「俺は里奈にくらがえる気はないから、純子がこれからもずっと好きだから・・・」
「えっ?」
 突然の言葉に純子は顔を赤らめる。
「だからさ、別にあまり心配しなくも・・・」
「でも・・・」
「それは里奈と一緒にいたら少し心配するだろうけど、向こうが外すタイミングを窺ってるだけだから」
「そう」
 2人は互いにできた絆を確かめ合うように話をする。
 だが里奈はそんなこと関係ないように
「ねえ、どこか行こう」
「どして?」
 昌武にどこか行こうと誘いかけてくる。頭にストラップがよぎって仕方ない昌武は目の前で外させるため約束をするのだった。
「いつまで続くの?」
「それは・・・」
 純子の切ない気持ちをわからないわけではない昌武だったが、純子の気持ちを考えると昌武は言葉が出なかった。
 それからしばらく昌武は里奈ともデートをする日が続いた。

 つづく

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