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企みのストラップ

第1章 偶然
作:奄美平次





 しばらくテスト週間で頭が疲れていた新藤昌武は友人の今村と街へ遊びに行っていた。
「昨日まであんなに一生懸命に勉強したことないな」
「それでお前はいいのか」
 あまりにも大学受験を控えているとは思えない昌武の言葉を聞いた今村に不安がよぎる。
 そんな話をしながら昌武たちが大通りを歩いていると店の向こうで男が黒髪で今時の髪型の女子高生らしき女の子と何やらしているのを見かける。
 その店に近づくように歩いていた昌武たちにその男の声が聞こえる。
「姉ちゃん、頼むよ、どこか俺たちとどこか行こうぜ。なあ」
「私、友達が待っているから」
 断る女の子に執拗に迫る男を見る昌武は沸々とこみ上げるものを感じる。その昌武の表情に気づいたのか今村は
「おい、やめとけ。いくらお前でもかなう相手じゃ・・・」
 止めようと腕を掴むが、もう遅かった。昌武は気づくと男の前にいた。
「友達なんかほっといて俺と遊ぼうぜ」
「いや」
 一言言い女の子は逃げるが、逃げる女の子の腕を掴み
「俺がこんなに言っても聞かないんだったら仕方ないな」
 無理矢理女の子を引っ張ってどこか行こうとした男の左腕が昌武の体に当たる。
「どけや、お前! 邪魔だ」
 男は昌武に怒鳴るが、昌武はその怒鳴る声も聞こえなく男にボディーアタックを食らわしていた。
「なにや、兄ちゃん。俺らとやる気かい」
「だったらどうなん」
 男は見えていた1人だけではなく奥に1人いて挑発的にもとれる言葉に昌武を殴ろうとしたがボディーアタックを食らい倒れている男につまずき、その間に昌武は
「さあ、行こう。友達待ってるんでしょ」
 女の子の手を取り、場所を急いで離れる。
「待てや、おい」
 男らも後ろから追いかけてきている。
「そういえば、1人で商店街を・・・」
「いや、友人と」
 周りを見渡すがどこにも今村の姿はなかった。
「あいつ・・・」
 昌武が今村のことを思い出しているそんな最中急いで走っていた女の子が
「痛い!」
 ちょっとした段差につまずき、前を走っていた昌武は慌てて男が来る距離を見て女の子の方へ行く。
「大丈夫?」
「えぇ」
 女の子はそう言い走ろうとするが足をひねったのかなかなか走れず後ろから追いかけている男たちが追いつこうとしていた。
「ちょっといい?」
「え?」
「あっちの人と俺とどっちがいい?」
 強引な言い方をして昌武は女の子をお姫様だっこして走り始めた。
「しっかり掴んでいてよ」
「うん」
 昌武は女の子を抱いたまま後ろを気にしながら袋小路になった商店街の道を走る。
「もうここまで来られれば・・・奴らも」
「どうも」
 何とか男たちの気配も感じず昌武の体から降りた女の子はまだ足を引きずるように歩いている。
「ねえ、俺の行きつけにしている接骨院すぐそこだから。教えてあげるよ」
「え、私大丈夫ですから」
 そう言い女の子はそのまま商店街の方に歩いていった。それを見た昌武はすかさず彼女に肩を貸す。
「すぐそこだから」
 昌武はすぐそばにある接骨院に連れていく間
「名前は?」
「純子・・・宮川純子・・・」
 足の痛さを耐えながらも昌武に名前を教える純子を接骨院に連れていった。

 純子と知り合い、その接骨院の前を通るたびに純子のことを思い出す昌武だった。
 そこに通院しに純子を見かけ昌武は接骨院の帰りの純子と話し、仲良くなったのもそうだが日に日に純子の足が良くなっていることを知り嬉しくなったある日の昼
「今日は何にしようかな・・・?」
 昌武はいつものように高校の売店に行き昼飯を買いに来ている。
「おばちゃん、チョコパンとコーヒー」
 その売店はいつも昼飯を買いに来る男子学生でいっぱいだった。
 昌武も売店で昼飯を買い、午後の授業も終わり商店街を通る昌武に今村が通りかかり
「何か買いに行くのか、新藤」
「いや、別に」
「買い食いする金もないだろ」
 昌武は商店街を通らずに帰ることはできるが時々商店街を通って帰るのだった。この頃の昌武はそれだけじゃなかった。接骨院に通う純子に会うつもりだろう。
 そんな昌武は意外なところで純子に出会うのだった。

 接骨院の近くを通るが純子に会わなくなってすぐだった。いつものように昌武は売店に昼飯を買いに行った。
「おばちゃん、パンちょうだい?」
 売店で男の声が響く中、昌武が昼飯のパンを買って帰ろうとしたとたん聞いたことがある声が聞こえまさかと思うが気にもしなかった昌武はそのまま廊下を歩いていた。
「昌武君?」
 呼び止められその声の主がそこにいた。
「里奈」
「やっぱり、良かった。違ってたらどうしようかと思った」
 声の主は同級生の宮川里奈だった。昌武にはそれ以上の関係と言ってもいいのだろうか。昌武の初めて付き合っていた彼女なのだから。しかし四月になる前になぜか2人は破局を迎えたのだ。
「なあ、ボチボチやめないか? こういうの」
「どうして?」
 そう感じるのも無理はない、別れてからも高校で会うのはともかくこうやって時々2人で昼飯を食べているのだから。
「なあ、好みの男って現れないのか」
「え?」
 昌武は昼飯を食べながら里奈にストレートに話す。
「ここにいるじゃん、縒りを戻そうか」
「俺は絶対嫌だ」
「昌武君は好きな女の子いないの?」
 里奈に言われふと純子の顔が浮かべる。
「いるの、その顔を見ると」
「いいや、別に」
 里奈と話しながら昌武はふと疑問が1つ浮かぶ。
「なあ、里奈って宮川だろ」
「何、今更言ってるの?」
「この前、ちょっとチンピラに絡まれている女の子を助けたらその子も宮川って言ってたんだ」
 昌武は純子を助けたときの話を里奈に聞かせていた。そんなときだった。
「お姉ちゃん!」
 遠くにある階段から女の子がそう呼ぶ声が聞こえてきた。昌武には聞き覚えがある声で屋上にいるのは里奈と昌武だけで
「やっぱりここに」
「純子、どうしたの」
「お姉ちゃん、忘れてるんだから」
 里奈にそう近づいてきたのはさっきまで話に出てきた純子だった。
「え・・・?」
「あれ」
 純子も昌武に気づいたのか驚いた表情を見える。
「姉妹・・・?」
「うん」
 昌武は驚いて言葉にならない。
 3人で話しているうちに始まりのチャイムが鳴り急いで教室に戻った。
 授業を終え、帰ろうとしている昌武は校門の手前で
「あ、純子ちゃん」
「昌武君」
 純子に会い、一緒に帰っていた。
「足、もう大丈夫?」
「うん、大丈夫。驚いちゃった」
「里奈といたことだったら俺も驚いた」
「それよりお姉ちゃんと付き合ってたなんて・・・」
「それは過去のこと・・・」
 帰り道の話で昌武が一番ドキドキし昌武は家に帰った。

 里奈が言った言葉が気になる昌武だが、それ以上に妹の純子がすっごく気になっている。
「今度どこか行こうか」
「え、私と・・・?」
「もちろん」
 朝、高校に行く途中から純子と話す昌武はデートに誘うが純子はなかなか信じようとしなかった。
 昼飯を食べに里奈が来る前に教室を出た昌武はすぐ廊下で
「純子ちゃん」
「昌武君、何?」
 急に声をかけられ純子は何がなんだか把握できず
「お昼まだだよね」
「うん」
 昌武は純子とグランドの方へ行く。
「あれ、屋上行かないの?」
「屋上行く階段通るとあいつに会うから・・・」
「お姉ちゃん?」
 そうだって言わんばかりの顔を純子に見せる昌武に
「お姉ちゃんとはどこか行くことあるの?」
「別れた後はあまりないな、こっちから振ったんだから仕方ないよ」
 その言葉を聞いて安心した顔を昌武に見せ、しばらくし気づいたのか純子は
「じゃあ、私を誘ったのは・・・?」
「本気で。マジで誘ってみたんだけど」
 誤解が解け、昌武は純子とデートに行くことになった。

 デート当日はあっという間にくる。ウキウキの昌武を見て
「兄貴、どこか行くのか?」
「ちょっとな」
 弟の裕弥は気になったのか
「いつものあの彼女?」
「いつものってあいつとは別れた」
「え、もう」
 裕弥が驚くのは仕方がない。裕弥が里奈に最後にあったのは別れ話になってからなのだから。
 純子の待ち合わせの店に急いで昌武は行く。その店はいつも通る商店街の入り口にあるパン屋だ。純子が男たちと絡まれていた方と逆の入り口で
「こんな所にあるなんて」
「俺が中学の時からあるよ、ここに」
「そうなんだ」
 パン屋に入って昼飯のパンを買っていく2人だった。
「あそこでもう買ってもいい?」
「うん。もうすぐお昼だし」
 昌武は自分の携帯で時間を確認すると昼前である。
 しばらく周りのカップルに会わせ、純子と歩いていた。しばらくし地下街に入り、純子の表情が一新する。目の前のブティックが目的だろう、純子は昌武から離れねえ、ねえねえ見て見てと言っているように見える昌武は
「何、何かある」
「これってどう?」
 純子の指さすものを見て、少し頭をひねる。純子が見ていたのはショーウインドウから見えるショルダーバックだった。
「これ?」
「かわいいでしょ」
「あぁ」
 昌武がそう言うと純子の表情がいつもの様子に戻る。
「いつもこうだった?」
「え・・・?」
「お姉ちゃんと」
 里奈とのことを忘れたかった昌武はムッとした。そのことに純子はすぐ気づく。
「ごめん。そんなに怒らないで」
「そんな、怒ってないから」
「そう」
 昌武は純子を気遣いすぐ機嫌を直す。買うつもりではないがその店に入り徘徊してすぐ出てきた。
 見てたバッグの値段が高くてがっかりする純子を見て
「付き合って頃、あんなの見てたら下手したら買わされてたかも」
「え」
 今まで純子の前で昌武が自分から里奈の話をすることは滅多になかった。それだけ付き合ってた頃がいやだったのだろうか。
「そんなにお姉ちゃん、私と違う?」
「あぁ」
 昌武はそう言うと純子の手に気づく。
 待ち合わせの店で買った焼きたてのパンが入ったパン屋の紙袋があった。焼きたてで温かいパンも冷たくなり始めていた。
「あそこで食べようか」
 外に出て歩いていた昌武は近くにある公園に連れていく。
「食べよう、もう冷たくなってる」
「うん」
 紙袋を開け、昌武は冷め始めたパンを2人で食べている
「おいしい?」
「うん、おいしいよ」
「そう」
 冷めているカレーパンは昌武はさほどおいしく感じなかった。なぜかそのカレーパンをおいしく食べる純子がここにいる。別に気にしてないのか話をしないまま昼飯のパンを食べ終えた。
 しばらくカップルのように歩く昌武たちは待ち合わせの店に来ていた。
「楽しかった、今日はありがとう」
「そう?」
「うん、じゃあ明日」
 嬉しそうに笑顔で純子と別れる昌武であった。

 デートの後からまた里奈の時と同じ気持ちに悩まされる。
「どした? そんな顔をして・・・」
「なにが・・・」
 今村が昌武の表情で何かかぎつけたのか昌武に言う。
「もしかして、この前の女の子と何か・・・」
「お・ま・え・・・そういえば、あの時よく逃げたな」
「だって」
 純子と初めてあったときに話を今村にされ、ふと思い出した昌武は問いただしていた。そのまま機嫌が悪いまま昌武は家に帰った。

 しばらく悩んでいた。しかし昌武がいくら考えても答えに出てこない。当たり前だ、里奈の時もそうだったのだから。
「そういえば気になる人っているの? 昌武君って」
「え・・・?」
「なに?」
 朝、高校に行く途中純子も気になっていたのか昌武にそう話し、気になる本人がそばにいる昌武は言葉が出てこない。夕方、一緒に帰っている昌武は
「純子ちゃんって気になっている人っている?」
「え・・・?」
「俺さ、純子ちゃんのこと、あの時から気になっていた」
 あの時とは男たちから純子を助けたときだ。
「だから付き合って欲しい」
「え、でも・・・」
 純子の言葉を聞き、昌武は断られると思い不安になる。
「私でいいの。お姉ちゃんとは違うわよ」
「あぁ」
「じゃあ」
「今度どこか行こう」
「うん」
 純子は昌武と付き合うことになる。

 純子と付き合うようになってしばらくし純子と登校している最中
「そういえば、もうすぐでしょ」
「え、何が?」
「誕生日よ。忘れてるの、お姉ちゃんから聞いたのよ」
 純子からそれを聞き昌武は思い出していた。
 昼前の授業が終わる。昌武は終わると誰よりも早く教室を飛び出す。
「純子」
「あ、昌武君」
 付き合う前からグラウンドで昼飯を純子と食べる昌武で
「そうだ、誕生日お祝いしてあげようか」
「え? いいよ、俺は・・・」
 嫌な顔を見せ断ろうとする昌武に
「別に昼間に行くから、そんなに気にしなくても」
「でも・・・」
 昌武は自分の家で祝ってもらうのを執拗に断るが純子は
「じゃあ、私が必死に考えたプレゼントあげない!」
「なに」
 純子が言ったことに気がそそられた昌武は気になっていた。だが純子はプレゼントなんか買っても作ってもいない。ただ昌武の家に行ってみたかっただけだ、まだ付き合うようになって昌武は一度も純子を連れていったことはなかったからだ。

 純子が家に来ることには納得した昌武を見て週末、プレゼントを買いに出かける純子に
「純子、どこか行くの?」
「ちょっとね」
 里奈が声をかけ笑顔で返してくる純子を見て
「もしかして・・・」
「その・・・」
 昌武のプレゼントだと気づくと一緒に出かける里奈。
 里奈と商店街に来た純子は周りを歩いている男子が気になるようだ。
「昌武君、いないよね」
「いないわよ、何気にしてるのよ。行くわよ」
 商店街の路地をいっぽん入った山へと続く道を里奈は進む。
「待ってよ、お姉ちゃん」
 里奈は何を急いでいるのか足早に道の奥へと歩いていく。
 急坂になり、つらくなったのか里奈が
「呪ってやる」
 そう呟くのを横で歩いている純子にも聞こえていた。だがその言葉が後々昌武に及ぼすこととは純子は気づかない。
 坂の曲がり角で里奈の足が止まる。
「お姉ちゃん、どこよ」
「ここよ」
 純子が後ろを振り返るといつもの商店街が小さく見えている。
  里奈が選んだ店は携帯電話のストラップやキーホルダーなんかの小物が置いてある。
「何にしようかな?」
 純子はいろいろと並べてあるストラップの中から選ぼうとしているとき、奥の方で探していた里奈が純子の方にくる。
「ねえ、これなんかどう?」
「え、なに?」
 里奈が持ってきたのは妙な色が付いた石のストラップだった。その石に目がいった純子を見て
「この石ね、恋を成就してくれるって」
「え、そうなの?」
 里奈が言ったことを純子は信じてそのストラップを受け取る。しかしそのストラップは里奈が言うような効果はなく、いうならその逆の効果が出る石だった、里奈はそれを知った上で純子に勧めたのだろう。
 それを確認しないまま、里奈を信じてストラップをプレゼント用の包装をしてもらいウキウキの気分で店を出る純子と正反対に里奈は昌武への思いが耐えきれないのか帰りの表情は行きとは違ったように純子には見えた。
「お姉ちゃん、何か隠してない?」
「ううん、隠してないよ」
 その言葉を聞いた純子だが素直に受け取れなかった、昌武に何か起きるか心配になったからだ。
 坂を下り、商店街を通り家に帰る。
「これ、これで昌武君と・・・・?」
 純子は喜ぶが里奈のあの表情を見て少し不安になり
「もしかして、お姉ちゃん昌武君のことを・・・」
 そっと口にした言葉にゾッとくる純子だった。それからすぐ昌武の誕生日にはまだ一週間近くある。

 ストラップの石を確かめず里奈の言ったことを信じ昌武の誕生日がくる。
 ちょうど誕生日が土曜日で休みだった昌武たちはいつものように商店街の入り口で
「待った?」
「ううん」
 昌武は純子が来るのを待っていた。
 昌武の家に行くまで純子は嬉しそうなのか心なし早足で歩いていていつものように歩く昌武は少し遅れて歩くようになる。
「純子、早くない? 今日」
「そう? だって嬉しいんだもん」
 嬉しそうに話し純子たちはしばらくし昌武の家に着いた。
 家には入れたことが嬉しいのかより一層嬉しそうな笑顔を見せる純子に
「そんなに嬉しいのか、俺の家に来て」
「だって」
 そういい昌武と部屋に入り、純子はなぜか部屋の周りを見渡している。
「里奈の物だったらどこにもないよ」
「え? そう」
 里奈との思い出を純子は気にしていたのだろう。しかし里奈との思い出の品々は昌武が里奈と別れたときにあっさりと処分していたのだ。
 がっかりしたのかと思うと純子はすぐ目の前にある机にケーキの入った箱を置く。
「そうだよね、さあ食べよ」
「なに?」
「ケーキ買ってきた、ショートだけど」
 嬉しそうな顔でケーキを出す純子。
「あ、お皿いるね」
「あぁ。そういえば・・・」
 皿を持ってこようとする昌武を見て
「いい、私とってくる」
「いいよ、座ってて」
 純子も座っているわけ日もいかず、昌武と一緒に取りに行く。
「1人で良かったのに・・・」
「今日、昌武君の誕生日なんだから」
「そう言ったって」
 キッチンから皿を部屋に持っていく2人。
 ケーキを食べる純子はふと何か思い出す。
「そうだ! これプレゼント」
「なに?」
 それはもちろん里奈が持ってきたあのストラップだ。後々困るとは知らず昌武は包みを広げ笑顔を見せる。
「これ?」
「そうだよ」
 昌武はストラップを見て一緒ついている石が気になる。
「この石って何?」
「その石ね・・・」
 純子は里奈が言ったことを信じ、そのまま昌武に話す。
「恋愛成就?」
「うん、そうだって」
 今までそんなことを気にしたことがない昌武は動揺を隠せない。
 ストラップを純子がいる間、携帯電話に付けようとはしなかった昌武だが
(純子がくれたんだから・・・・・・恋愛成就だってさ)
 そう思い、携帯電話にストラップを付け里奈の思惑にまんまとはまってしまった。

 里奈の思惑はすぐには起きなくジワジワと昌武の身に迫っていた。
「何かこの頃里奈が夢の中に出てくるんだ」
「お姉ちゃんが・・・?」
「この頃とくに」
 純子は何か昌武に心の変化があったのかと思う。
「お姉ちゃんと何か・・・?」
「いや、なにも」
「ほんと?」
 昌武を疑ったことがなかった純子もそう聞いては疑ってかかるしかなかった。

 しばらく夢の中に里奈が現れ続けたある日、里奈が夢の中で
「昌武君、私楽しみなんだ・・・」
「何が?」
「それはね・・・」
 話の内容を聞く前に目が覚める。
「なんじゃこれ!!」
ふ と昌武が朝目を覚ますと自分の体の変化に気づく。
「どうして・・・!? なんで・・・?」
 そう呟き、女の体を見つめる。その女の子はどことなく誰かに似ていた。
「純子・・・? いや違う・・・」
 顔を鏡に映し見つめる昌武だが、まさかと思うだけで言葉にできない。
 しばらくし女の体から戻った昌武は安心し登校をする。
「どうかしたの?」
「べつに」
 元に戻ってもさえない顔の昌武を見て純子は不思議がる。
 教室に入り昌武の気持ちはずっとうわの空で授業を受けている。
「どうしたんだ、新藤?」
「いや、べつに」
 浮かない顔の昌武を見て今村は心配になったのか心配そうな声で話しかけてきた。
 昼飯の時間もいつもは我先とすぐ動く昌武はずっと座ったままだった。
「おい、新藤! 彼女が来てるぞ!」
「そうか。行くか」
 今村はそういうと昌武の元に行く。
「彼女が待ってるぞ」
「あぁ」
 昌武はしばらく動こうとしなかったが選ろうかに待っている純子の方へ行った。
「どうかしたの? 今日」
「ちょっとな」
「そう言ったってわかんない」
「それでいい」
 突然のことで何を話していいかわからない昌武の気分はその日ずっと優れなかった。昌武はそう言う日々を過ごすことになる。

 それから朝になると女の体になり、次第に暗い顔を純子にも見せる昌武。
「どうした?」
「ちょっとな」
「それじゃ・・・」
「いいの」
 困った顔をして昌武は純子まで困らせる。
 昼飯になるまでどうしようか、昌武は迷っていた。
「今日話してみるか」
 そう思い、チャイムが鳴ると気持ちを落ち着かせて廊下に出る。
「どうしたの、ずっと私の顔を見て」
「そうか」
「うん、さっきから」
いつ純子に話そうかタイミングを計ろうとするたびに純子と目が合う。
「この頃、昌武君って変ね」
「実はさ、俺・・・」
純子に朝方のことを話そうとする昌武に
「やっぱり何かあったの?」
「あぁ。俺、この頃里奈が出てくるより自分が女の体になってるんだ」
「えっ? えぇぇーっ!」
突然の告白に純子は信じようとはしなかった。
「何か里奈が言い残して、それから一切出てこないんだ、夢の中に」
「何か言ってたの?」
「たしか・・・」
昌武は里奈が夢の中で話していたことを思い出す。
「私楽しみなんだ・・・って」
「それだけ・・・」
「あぁ」
2人で昼飯の時間が終わるまで悩んでいた。
 昼の授業の間も昌武の頭にはその悩みが大半を占めていた。授業が終わり、昌武が校門で純子を待っていると
「待った?」
「いや」
純子もなぜか浮かない顔をしている。
 その表情の意味をしばらくしてわかる。デートの最中純子の前で変身したのだ。
「昌武君?」
「何? 純子」
純子の前には自分とよく似た女の子に昌武がいる。
 純子が驚いているうちに昌武は男の体に戻る。
「昌武君・・・」
「純子・・・」
「この事・・・?」
 女の姿を見てさすがに信じるしかなかった純子は
「あれさ、多分」
 申し訳なさそうに昌武に話す。
「たぶん、あの石かな?」
「え、あの石ってストラップに付いている?」
「うん」
 プレゼントを買いに行くときに里奈と一緒に買いに行ったことを話した。
「そうなんだ、でもそれだけで・・・」
「それ実は私が選んだんじゃないの」
「誰・・・店の人なんでしょ」
「お姉ちゃん」
 戸惑う昌武は純子とその店に行く。
 商店街に戻り、店へと続く坂道を上がりその店に行く。
「ここ」
 中に入りストラップが置いてある場所に行き、純子がその時の状況を昌武に話す。
 その話を聞いて昌武は同じストラップが置いてある場所を探した。
「ねえ、昌武君来て!」
「何? 純子」
 純子は昌武と同じストラップがある場所を見つけて驚いていた。そこには
「片思いの相手と両思いになる石」
そう書いてあった、その下には
「あなたも持つと効果抜群!!」
とも書いてあった。
「もしかして・・・?」
「あり得る、あいつのことだったら・・・」
 里奈の顔を浮かべる2人は翌日里奈に話してみることに決める。

 原因がわかった昌武だが、ストラップを捨てることだけはしなく女の体になることに迷いながらもそっちを昌武は選ぶ。
「捨ててもいいのよ」
「いい、これでいいんだ」
 純子もそれを気にして仕方がない。
 その日の昼、里奈と屋上に行く昌武。
「どうして、こんなの純子に・・・?」
「だって私のこと忘れて欲しくないもん」
 その言葉に驚きを隠せない昌武は
「俺ら、もう付き合ってる訳じゃないんだし・・・」
「でも・・・」
 そう言う昌武の気持ちを知ってのことか里奈は納得しようとはしなかった。

つづく

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