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天からの石

第3章 別離

作:奄美平次




 スローレンヌが帰っていき早く持って帰ってきてくれる事を永吾は期待をしている。真梨江とのデートでも頻繁に女の人と入れ替わってしまうが、なかなかフェレンジュの宇宙船に連絡が入らない。
 そんな中、フェレンジュは永吾の机の写真立てを見る。
「あれ、これって真梨江じゃ・・・」
「あっ!」
永吾は写真立てを急に倒す。
「どうした? 永吾」
「なんでもない」
「じゃあ、何で倒す」
永吾の表情は優れない。
「何かあったのか」
「実はさ・・・」
永吾はフェレンジュに相手の話をする。
「あの子、俺の幼なじみなんだ」
「幼なじみ」
「あぁ。俺のことすっごく慕っていてくれて・・・」
「じゃあ、彼女って・・・・・・事?」
相手の話をする永吾の顔はいつも見せる永吾の顔ではなかった。
「付き合ってはなかったけど、仲良くていつも一緒に帰っていた。卓球始めたのもその子とこの前みたいに遊んでたからなんだ」
「その子は今・・・」
フェレンジュがその子のことを詳しく聞こうとするが永吾の表情はなお暗くなる。
「その子・・・俺が高校に入ったときに交通事故に遭って・・・1ヶ月後に死んじゃったんだ」
その子の話をしている永吾の目にはうっすら涙を浮かべていた。
「今じゃ、真梨江がいるじゃない」
「あぁ、もう女の子とは・・・・と思ったんだけど、真梨江を見かけてからそんなこと関係なくなっちゃったんだ」
涙目でそう話す永吾。

 しばらく永吾たちが授業を受けている間家で留守番をしているフェレンジュは今までスローレンヌがいたからなのか
「まだかな・・・早く帰ってこい、永吾」
机の上をうろちょろしてただそれだけを呟いていた。
 夕方になり、永吾が真梨江を連れて帰ってくる。
「あ、お帰り。遅いぞ、永吾」
「いつも通りだよ」
「もうスローレンヌちゃんがいなくて寂しいんじゃ・・・」
「そうじゃない・・・」
真梨江に言われ少し照れるフェレンジュはすぐ真梨江の方へ行く。
「ねえ、真梨江?」
「ん? 何、フェレンジュ君」
「あのさ・・・」
真梨江を机に連れていき写真立てを見せる。
「真梨江、これ知ってた?」
「うん、知ってるわよ。永吾君の幼なじみの子でしょ」
「え・・・?」
真梨江に隠している永吾は少し驚いていた。
「どうして」
「さつきちゃんに聞いたの、あまりにも隠そうとしてないから言うの待ってたけどなんにも言わなかったから」
「そうか」
「でも気にしてないから、永吾君が元の体になってくれればいいから」
真梨江の最後の言葉にフェレンジュは笑っているわけにはいかなかった。

 そんなつまらない日が続いたフェレンジュもしばらくして永吾たちと一緒に行くことにした。
「何かすっごく嬉しそうだね、フェレンジュ君」
「だって家にいても暇なんだもん」
フェレンジュは嬉しそうな顔で永吾について行った。
 1日の授業が終わる永吾にフェレンジュが小声で
「いつもこうなのか?」
「あぁ。スローレンヌはあんまり気にしてなかったけど」
周りに気づかれないように話し、真梨江に会う。
「どうしたの?フェレンジュ君」
「明日は真梨江の高校に行こうかな」
「いいわよ」
それを聞きフェレンジュは真梨江の高校に行くことに決めた。
 家に帰り、フェレンジュと二人っきりになった永吾は
「いいよな、お前は」
「どして」
「あそこ、女子校だから俺なんか近づけないんだよな」
「そうか」
女子校にもぐり込めるフェレンジュが羨ましいようだ。

 翌日、近くの駅で待ち合わせた真梨江の肩に乗り
「おいおい、フェレンジュ。気にしろよ」
「誰も見てないだろ」
「そんなこと言っても・・・」
フェレンジュの行動を怪訝な気持ちで見つめる永吾だった。
 電車で気づかれずいつもの分かれ道で
「じゃあ、頼むわ。真梨江」
「わかってる」
永吾は心配そうな顔で真梨江と別れる。
 永吾は授業中もフェレンジュのことが気になって仕方がない。
「何やってるんだろう、フェレンジュ」
永吾がそう思っている中、真梨江の教室では
「この子が、彼氏の・・・」
「うん」
「かわいい〜」
真梨江の友人が机の上にいるフェレンジュの頭を撫でる。
「くすぐったいよ〜」
照れくさくなったフェレンジュはその手をどけようとする。
 授業が終わり、いつものように教室を後にする永吾。今日の永吾は何か違った、ずっとフェレンジュのことが気になって忘れるために授業をまじめに受けていた。今までなかったことだ。
「あ、永吾君」
「どうだった」
永吾が最初に聞くのはやはりフェレンジュのことだった。

 それからフェレンジュは毎日真梨江の高校に行くようになる。でもやはり入れ替わることにはかわりはない。早くスローレンヌが戻ってこないかと心配になる永吾で真梨江も同じ気持ちだった。
「ねえ、フェレンジュ君?」
「なに?」
「スローレンヌちゃん、いつ戻ってくる?」
真梨江は行く途中でフェレンジュに聞く。
「もうすぐ来るって昨日の夜遅くに」
「永吾君は、それ?」
「言わないでって。何か企んでるんだと思う、あいつなりに」
「じゃあ」
悪い予感がした真梨江の声は少し涙声に変わる。
「それは違うと思う」
「え・・・?」
真梨江は何も聞かないまま教室に入る。
 永吾はいつものようにフェレンジュのことを心配していた。
「あいつ、大丈夫かな」
「大丈夫よ・・・・・・」
どこからか声が聞こえ、空耳だと思い永吾は授業に集中する。
 空耳に悩まされながらも授業を聞いていた永吾が外に行こうとした。
「私も連れてって」
授業中に聞こえた声が耳元で聞こえ、声の聞こえた方を永吾は向く。
「スローレンヌ!」
「ただいま、永吾君」
そこにはスローレンヌがいたのだ。
 スローレンヌが来て安心した永吾は授業中
「そういえば、宇宙船は?」
「うん、ここ」
スローレンヌの宇宙船は永吾のかばんの上に置いてあった。
「どうやって?」
「空を彷徨って学校にいるかと思ったからそーっと教室に入って気づかれないようにかばんの上に」
「ありがとう」
「永吾君」
笑顔で最後の授業を終える。
 授業が終わり教室を後にする永吾は
「あ、そうだ。聞きたいことがあるんだ」
「なに?」
スローレンヌをポケットに入れたまま普通に話す。
「あの石って結局なに? フェレンジュが持っていたみたいだけど」
「あ、あの石・・・実はあれ私たちの・・・」
スローレンヌから肝心なことを言いかけたときに真梨江に会う。
「スローレンヌ」
「お兄ちゃん、どうしてそこに」
「家にいても暇だから、こうやって・・・」
スローレンヌにも意外なことだと思ったのだろう。家にいると思って学校に先回りしたつもりだったからだ。真梨江と会い、永吾はいつものように帰っていった。
 家に帰り、永吾はすぐスローレンヌに
「あのさ、さっきの続きなんだけど・・・」
「なんだった? 永吾君、お兄ちゃんに会って忘れちゃった」
「石の・・・」
「ちょっと待って」
石の話を聞こうとしスローレンヌは宇宙船の中に入った。
「これでしょ」
「うん、ところでこれなに?」
向こうから持ってきた石を見て永吾は核心をつく話をする。
「これ、私たちの星の宝石って言っていいかな」
「宝石?」
「ここみたいに人が身に着けるようなことはしないけど・・・」
宝石と聞き、少しだけ驚きを隠せない永吾は
「じゃあ、どうやって・・・?」
「神社に奉ったり・・・占うときに使ったり」
「水晶みたいじゃない・・・占いの人が持っているイメージあるじゃない」
真梨江の話を聞いて永吾は納得をする。しばらくし真梨江は家に帰っていった。
「後は、結果か」
「そうね、治るといいね」
「どう違うの?」
取りに行く前から永吾は気になっていたことをスローレンヌに聞く。
「持っていると悪いことが起きる石とその逆で持っていると幸せになる石」
「じゃあ、フェレンジュが持っていたのは?」
「お兄ちゃんが持っていたのは前の方、なぜか持ってはいけないほうを持っていたらしい」
「それだけ・・・?」
違いを聞いた永吾だが納得できない。
「どうして・・・スローレンヌたちが崇拝してる人が俺の体を・・・?」
「あっちに行ってよく聞いたら、この石をその人が作ったって」
「もしかして神話の世界の人?」
「えぇ、たぶん私たち以外の人が持っていたから私たちを捜しに永吾君の体を・・・」
「そう」
「ごめんなさい、知っているって言ってて全然知らなくて・・・」
スローレンヌはそう話すうちに落ち込んでしまう。
「別にそう落ち込まないでよ、後は結果だから」
落ち込むスローレンヌを励ます永吾。

 スローレンヌから石をもらって初めてのデートに行く永吾。
(大丈夫かな? 信じるしかないな・・・)
「どうしたの? 永吾君」
「なんでもない」
そういう永吾の顔を見て真梨江は永吾の迷いを察したのかしばらく話さなかった。
 そのまま話さないわけにはいけなく真梨江は渋々
「ねえ、あれからどう?」
「あれから?」
元気のない声で永吾は話す。
「どうしたの?今日変だよ」
もちろん真梨江は訳を知っている。仕方なく永吾に聞いてみるみたいだ。
「ちょっとな」
「何よ! 言って」
それを聞くと永吾は真梨江にスローレンヌから聞いた話を全部話す。
「じゃあ、あの人ってフェレンジュ君を・・・」
「俺が言ってたことが当たっていたらしい」
「じゃあ、スローレンヌちゃんに持っていってもらえば・・・」
「でも、持っていってもらっても何が起きるかわからないし・・・」
「わからなかったじゃない、やってみないと」
その話の最中だった。永吾が例の女の人と入れ替わったのだ。しかし今まで様子が違う。
「フェレンジュは?・・・スローレンヌは?・・・どこに?」
女の人は永吾の言う通りフェレンジュたちを探していた。
 何かあるかわからなかった真梨江は永吾の携帯をフェレンジュに渡していた。
「フェレンジュ君、ちょっときて」
「うん、わかった」
「ついでにスローレンヌちゃんもいたら」
真梨江はフェレンジュと話し、フェレンジュを待ちに女性と安全な場所に連れていく。
 スローレンヌが戻って自分の宇宙船を直したフェレンジュはいち早く真梨江のところへ急いだ。
「どうした、真梨江?」
「あの人がフェレンジュ君たちを・・・」
そう言い一緒にいたスローレンヌも手のひらに乗せ、その人に会わせる真梨江。それに気づいた女性はフェレンジュたちを見る。
「なに? ねえ・・・?」
「ちょっと顔を近づけないで、あとで話すから」
スローレンヌに言われ少し3人だけにする。
 話はすぐ終わる。話を終えると女性はどこかへ行ったのか永吾の姿に戻る。
「何かあったのか? フェレンジュもいて・・・」
「ちょっといいか? 永吾」
入れ替わったことには気づいていた永吾だがフェレンジュに言われることに少し緊張していた。
「スローレンヌが持ってきた石と俺が落とした石を別の場所に置いて欲しいって」
「それだけ・・・?」
あっけないフェレンジュの言葉に不安になる永吾。

 それから石を別々の場所に置くが、なぜかあの女性は現れる。
「なあ、フェレンジュ?」
「なに」
「お前が言った通りにしたけど、俺の体・・・」
さすがに聞き間違えていたのかとフェレンジュも動揺を隠せない。
「もしかして、別の場所って遠いところって・・・事かな?」
真梨江は頭に浮かんだ考えをそのまま話す。
「だけど・・・・それってどこ?」
「私の部屋ってそうじゃ・・・」
そっけなく言う真梨江にフェレンジュは少し頭を抱えるが
「そうか・・・こんな近くじゃ、石たちがけんかするんだ・・・」
「けんか・・・?」
「石同士の力が反発しあうんじゃない?」
何を言っているかさっぱりわからない永吾を見てスローレンヌが
「永吾君とさつきちゃんの部屋と一緒だよ」
永吾はまだ納得できない。
「え、うち?」
「永吾君の部屋とさつきちゃんの部屋って離れているでしょ」
「あぁ」
「それといっしょ、良い悪いの両方が一緒の場所にいたら全然効き目がないと思うの」
「そうか」
納得した永吾はスローレンヌが持ってきた方の石を真梨江に渡す。
「良くなるといいね」
「あぁ、当たっていればね」
真梨江は石を持ち、家に帰った。

 石を真梨江に渡してしばらくしたデートの日
「これ、私が持っていていいのかな?」
「それはこれからわかるんじゃ・・・」
デートの日だけ現れる女性に気づいていた永吾は堂々としていた。
 真梨江が心配する中、別に入れ替わることはなく、初めてデートした日みたいな気持ちで駅を出る。
「やっぱり信じてよかったじゃない」
真梨江は安心して笑顔になる。
 それから一切女性は永吾の体を介して現れることはなかった。

 その日の夜永吾は喜んでいたのもつかの間
「俺たち帰るから・・・」
「なぜ急に?」
突然フェレンジュたちが帰ると言い出したのだ。別に引き止めるつもりではない永吾だが動揺している。
「お兄ちゃんを早く連れて帰ってこいってお父さんに言われてて・・・」
「そう、いつ?」
「一週間ぐらいかな?少し点検しておきたいし・・・うちの親父うるさいから、宇宙出て故障したなんて言ったら何て言われるか」
自分の家に来て初めてフェレンジュは家族の話をするのを聞いて嬉しくなる永吾だった。

 翌日永吾からその話を聞いた真梨江は驚く素振りを見せない。
「そうなんだ」
「石どうしようか?」
「そうね、どっちにしてもフェレンジュ君が落としたのを持っていることだし返そう」
「わかった」
永吾は家に帰ったら返そうと思っていた。
 授業が終わり家に帰った永吾は早速石を手に取るがなぜか石をずーっと見ている。
「これによく悩まされたな・・・」
今までデートを楽しめたことが少ないことを走馬灯のように思い出していた。
「なに、石見つめてるの?」
「スローレンヌ!」
スローレンヌの顔を見てそっと我に返る永吾。
「どうかした?」
「ずっと永吾君、石見てるから」
「そうだ、これ」
そうスローレンヌに話し永吾は石を渡す。
「なに?」
「それ、持っていって。どっちにしてもフェレンジュの落としたものだから」
「でも・・・」
それっきりスローレンヌは何も言わない。何かあるのかその石のまだ・・・。

 永吾は石を返そうとするがスローレンヌの言葉がどうもひっかかる。どう言おうとしてたのか考えているうちにフェレンジュたちが帰る日の前日になってしまった。
「そうそう、フェレンジュ君?」
念のためか真梨江も永吾の家に来ている。
「何、真梨江?」
「この石、持っていって。私たちもう・・・」
フェレンジュはスローレンヌと話す。それもいつもと違う表情を見せる。
「ねえ、2人ってもう別れるつもり・・・」
「え・・・?」
「持たなくなってもすぐ別れるって訳ではないけど、別に持っていた方がいいよ」
あまりよくわからない永吾たちはどうしていいか戸惑う。
「この石、いろんな願い事を叶えてくれる石なの」
「そうなんだ」
「え、知らなかったの?」
スローレンヌから聞いて真梨江は自分が永吾の家の近くに引っ越してきたことを話す。
「それもその石の効果だよ」
「え?」
「うちの星でこの石売っているときに同じこと聞いてたから」
石の話を最後の日になって詳しく聞いている永吾たちだった。

 翌日、授業が終わるまで帰らないとフェレンジュたちと約束し永吾たちは学校へ行った。
「帰るまでいるかな・・・?」
ふと真梨江が口にした言葉に永吾は少し動揺する。
「いるんじゃない、きっと」
永吾はフェレンジュたちを信じていた。
 その永吾の気持ちを知ってかフェレンジュは昼前には宇宙船を動かそうとしていた。
「顔を見ると帰りにくくなるね」
「でも、まだ動かさなくても」
スローレンヌは永吾たちが帰る前に帰ろうとしている。
 昼も過ぎしばらくすれば永吾たちも帰ってくる時間だがスローレンヌは宇宙船にこもっていた。
「ただいま」
「お帰り、永吾」
「あれ、スローレンヌちゃんは?」
フェレンジュは宇宙船を指さし、自分も宇宙船に乗り込む。その前に
「じゃあ、俺ら帰るわ」
「あぁ」
「元気でね」
「真梨江、人生いいこともあれば悪いこともあるよ」
フェレンジュが動かしたのを聞いてスローレンヌも宇宙船を動かす。スローレンヌは宇宙船を一時止める。
「実らせてよ、永吾君」
「実らせる? 何を」
 スローレンヌが言っていることが全くわからない永吾を見て同じ女性の真梨江は
「もう! 永吾君!」
真梨江の声を聞いて内容を察した永吾は
「あぁ、わかった」
「元気でね」
「うん」
スローレンヌがそう言うとフェレンジュの宇宙船が開いていた窓から発射していき、スローレンヌの宇宙船も続いて発射していった。
「行っちゃったね」
「あぁ」
その窓からずっと2人で空を眺めていた。

 フェレンジュたちが帰ってしばらくし永吾たちはセンター試験を受け、その石に願をかけていたからなのか無事2人とも受験大学に合格し、いつまでも2人は幸せに暮らしていた。

おわり

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