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天からの石

第2章

作:奄美平次




 フェレンジュはその日は口を開くことはなかった。
 翌朝もその後も1日の話をフェレンジュと話すが石の話はしなかった。何も前と変わらず永吾の体に入り込むが何か変化が起きそうな雰囲気だった。フェレンジュがなにか夜中にしているようだから。

「何かしてるの、この頃」
「え、なんで?」
「何かコソコソ夜してるから」
気になって仕方なくなり永吾は帰ってすぐフェレンジュに話す。
「明日になるとわかる」
「だからなに?」
「明日になれば・・・」
意味深なことを話すだけのフェレンジュでフェレンジュの言う通り永吾は明日まで待ってみることにした。

 翌日になってフェレンジュは夕方になると言い出した。一体なにが起きるのだろう・・・。仕方なく永吾は学校へ行き
「何かあった? あれから」
「全然進展なし」
「でもまだいるんでしょ?」
「あぁ。何か今日の夕方何か起きるらしい」
真梨江にそのことを話していた。
 授業も終わり駅で待っている真梨江に
「待った? 真梨江」
「ううん。ねえ、今日遅くまでいてもいい?」
「え!?」
会ったとたん真梨江が発した言葉に永吾の表情は凍りつく。
「変なこと考えてるんじゃ・・・」
「違うって」
「フェレンジュ君が何するのか見たいから・・・」
真梨江の頭にはただそれだけだった。
 それを聞き安心した永吾にはまだ気になることがある。電車を降り駅のホームで
「そういえば、真梨江の両親は気にしてないのか?」
永吾がその話をすると真梨江の表情が曇り
「あ、悪いこと言った?」
「ううん。うちの両親高校入る前に事故で死んじゃったの」
「え?それじゃ・・・」
真梨江は永吾のその言葉を聞くと表情がコロッと変わる。
「って嘘」
「何だ、下手な嘘はやめろよ」
「ごめん」
真梨江に両親がいることには変わりない。
「俺が言いたいのは・・・」
「あれも嘘」
「あれって?」
真梨江に聞き出そうとする永吾は真梨江から意外なことを聞く。
「引っ越してきたって言うの」
「え?」
「何か永吾君と一緒にいたくなって、近くに住めばと思って両親に無理矢理1人暮らしさせてもらったの」
それを聞き少し一緒に家に帰った。
「ただいま」
「あ、お帰り」
フェレンジュせわしなく動いている。永吾が帰ってきてからすぐだった。
「来るぞ、ほら」
フェレンジュは真梨江に窓を開けてもらい、外から何かを待っているようだ。
 しばらくたち何やら遠くで光るものを見る永吾でその光が近づいてくるのに気づく。
「え?」
窓の開いた永吾の部屋を目標にして来ていたのだ。
 それはフェレンジュが乗ってきた宇宙船と何も変わらない宇宙船で中には
「お兄ちゃん!」
「お兄ちゃん?!」
永吾たちは驚いた、その宇宙船にはフェレンジュとは全然違う格好をした妹のスローレンヌが乗っていたのだ。
「あの石のことならこいつの方が知ってるから」
「それより何で落としちゃうのよ、まだ拾ってくれたから」
頭ごなしにフェレンジュに怒るスローレンヌである。それを見かねた永吾は
「正確に言うと頭に当たったんだ」
「それも運ね」
素っ気ない反応するスローレンヌだった。
「これからどうするの?」
「ここにいようかな、その石を調べてみたいから」
「え・・・?」
「まだそう詳しいこと知らないから」
「さわりの部分だったらお兄ちゃんより知ってるわよ」
スローレンヌは自信を持って永吾に言う。
 その夜永吾はなかなか眠れなかった。また女の子に乗りうつられるのが嫌なのか。やはり石のことが気になっているのだろうか・・・。それに気づいたスローレンヌは永吾の枕元に行き
「ねえ、そんなに石のこと気になるの?」
「そりゃぁ、自分の体が他人の体に変わるんだもん」
「へぇ〜」
スローレンヌは永吾の話を不思議な気持ちで聞いていた。

 スローレンヌも一緒に住むことになり永吾たちは学校に行った後
「お兄ちゃん、どうするの?」
「なにが?」
「あの人とっても困ってたみたい」
スローレンヌは永吾から聞いた話をフェレンジュにする。
「そうか・・・」
「もう片方ないと、あの人」
「片方はまだ・・・」
元々あの石はもうひとつ同じ大きさの石がある。片方とはあの石とは真逆の反応を示す石でフェレンジュは
「あの石・・・」
「うん、でも今は・・・」
「無理か」
「うん」
スローレンヌに話すがスローレンヌが乗ってきた宇宙船も動かすことができない状態だった。
 夕方になり高校から帰ってくる永吾はすぐスローレンヌの方にきた。
「ねえ、あの話」
永吾はそう言うとスローレンスを手のひらに乗せる。
「あのさ。今日も・・・」
「入れ替わっちゃったんだ」
「うん」
机にスローレンヌを連れていく永吾。スローレンヌはその話を聞き
「実はさ・・・、あの石もうひとつあるの」
「もうひとつって」
石の話を詳しく永吾に話す。さすがにその話を聞いて永吾は驚きを隠せない、すぐに治るのだと思っていたのだろう。
「その石って?」
「遙か彼方に・・・」
「じゃあ?」
今は対処のしようがないことをスローレンヌから聞いて永吾はがっかりするしかなかった。

 石が2つあることを聞きがっかりした顔をした永吾を見て心配なスローレンヌは
「ねえ、ついて行ってもいい?」
「え?」
永吾の胸ポケットにはいる。永吾の高校の制服は今となっては普通になったブレザーだ。
その胸ポケットに入ったスローレンヌは頭をちょこんと出し人形のふりをしている。真梨江以外にはわかるわけなく高校に着く。
 授業が終わり、スローレンヌが一緒にいて母親参観みたいな感じで1日が過ぎた。
「ねえ、あんな感じ? 向こうの授業って」
「そうかな・・・?」
スローレンヌは思い出すように下を向く。
 真梨江もいっしょに話しながら永吾の家に着く。しかし今日は真梨江は家に帰っていき1人で石を見つめ
「この石って青いけど・・・もうひとつって赤かったりする?」
「たぶん・・・」
率直な答えがあるものだとばかり思っていた永吾は少し慌てる。
「だってあなたに青く見えても私たちにはふっつうの石の色だし・・・」
「じゃあ、どうやって?」
「持っている人があなたみたいに変化をしてるから・・・」
スローレンヌたちと根本的に感じ方が違うと感じる永吾。

 スローレンヌが一緒に登校するようになり真梨江は不機嫌な顔で出迎える。
「何かこの頃・・・」
「だっていつも連れてきてるから不安で」
「不安?」
その言葉に永吾は何か頭にひっかかっていた。別にスローレンヌがついてくるだけだから。
 授業が終わり真梨江と家に帰るスローレンヌが
「ねえ、真梨江さん」
「なに?」
「永吾君が変身する人ってどんな人?」
「どんな人って?」
歩いているときに話していて永吾の家に着く。
「そうだ! メモ帳みたいなものある?」
「どうして」
「スローレンヌちゃんに教えてあげないと」
真梨江はそう言うと女の子らしき顔を描く。
「こういう顔の人」
「え、こういう顔の人?」
スローレンヌには見覚えがあるのかフェレンジュを呼ぶ。
「この人って・・・」
「うん」
フェレンジュも表情を変えるのが永吾にもわかった。
「誰?」
「私たちが崇拝している人、これって言い方変かな」
「崇拝?」
なんだか最初はわからなかった真梨江はフェレンジュたちの話を聞き内容を把握する。
「要するにその人が俺の体を?」
「そう。どうして?」
それを聞いて永吾は理解したのか
「もしかして、フェレンジュたち呼びたいんじゃ・・・?」
「でも、フェレンジュ君が来ても永吾君の体に」
永吾の話にも一理あるが真梨江たちが納得することはなかった。しかしスローレンヌの前で初めて女の子に入れ替わる。

 その姿を見たのは、テスト勉強を真梨江としているときだった。ショックを受けたのかスローレンヌは
「私、持ってこようかな。もうひとつ」
「でも、お前の飛行船」
「大丈夫みたい、動くかもしれない」
「そうか?」
フェレンジュの期待も裏腹に宇宙船は動かなかった。そこに永吾が帰ってくる。
「何かあった?」
「なんで」
帰ってくるのになぜか慌てふためく2人に永吾が
「そうだ、スローレンヌ」
「何、永吾君?」
「明日から一緒に来なくていいよ」
「え?」
いつもと違う表情の永吾にスローレンヌは焦るが
「明日からテストだから、変な目で見られるの嫌だから」
「そうね」
テストと聞き安心するスローレンヌだった。

 テスト期間中、永吾について行くことをしないスローレンヌは自分の宇宙船を直していた。
「なあ、スローレンヌ?」
「なに? お兄ちゃん」
「たまには休憩してこれ見ろよ」
そう言いフェレンジュはスローレンヌを自分の宇宙船に連れていく。
「なあ、面白いだろ」
「うん。でも私こっちの方がいい」
宇宙船の中には永吾たちが見ているテレビ番組がやっている。フェレンジュが見せた関西弁の番組より九州の博多弁を話す番組の方がスローレンヌは好きなようだ。しばらくお互いの宇宙船でその番組を見ている2人のいる部屋のドアが開く。
「ただいま」
テストが終わり永吾が帰ってきたのだ。
「お帰り」
「あ、スローレンヌ」
浮かない顔の永吾を見てフェレンジュが
「どや?」
「フェレンジュ、今日のテストが・・・」
「そんなのよか、後は結果、結果ばい」
フェレンジュの関西弁には聞き慣れていたがスローレンヌの聞き慣れない言葉に永吾は驚く。
「どうしたの? その言葉」
「あ、ごめん。驚いた」
スローレンヌから宇宙船の中の話を聞き、謎が解ける。
「なんだ。それでフェレンジュが関西弁を」
「あぁ。ほとんど同じ宇宙船だから・・・」
「じゃあ、残る謎はこの石か」
「そうね」
石を見ながら永吾は2人の宇宙船を見比べていた。
「なあ、フェレンジュ」
「なに?」
「部品も一緒なんだろ」
「あぁ」
フェレンジュを机に連れてくる。
「こうしたら・・・?」
「そんな事したら俺の宇宙船が・・・」
「後からスローレンヌに持ってきてもらえればいいじゃない」
永吾の考えに納得はしなかったフェレンジュだが永吾の考えをしたくないわけではなかった。

 テストも最後の日を迎え、永吾にもうっすら笑顔が見え始める。永吾も登校しまたいつものようにスローレンヌと二人っきりになったフェレンジュは
「あの石、取りに行こうかな」
「え、お兄ちゃんが」
突然の話にスローレンヌは驚く。
「それだったら私が行くわよ」
「でもお前永吾の・・・」
「あれだったらお兄ちゃんにだっていいのよ、それに私・・・」
何か隠しているように見えたフェレンジュは
「お前」
「別にそんなんじゃないわよ、ただあの子とうまくいって欲しいの。ただでさえあの石で遮られてると思うの、だから・・・」
「わかった」
「でもまだ先になるから、永吾君には」
「あぁ」
その日からスローレンヌの宇宙船を直す事にした2人だが、直すといってもフェレンジュの部品で補うだけなのだが・・・。

 案の定、墜落したわけではないのでスローレンヌの宇宙船を直す事に時間はかからず、テストも終わりいつもの落ち着きを取り戻す永吾たちで
「ねえ、どこか行こう」
「でも・・・」
しかし永吾はまた入れ替わるかと不安でしかたない。
「フェレンジュ君も行こう、スローレンヌちゃんも」
「え? いいの」
スローレンヌは正直言っていく気にならなかったがフェレンジュは焦れったくなり
「行こう、ほら」
「そう」
フェレンジュに手を引かれていき、残るのは不安な顔をしている永吾だけで
「独りでお留守番してる?」
「それはいや」
そう言い永吾も真梨江と出かけていった。
 スローレンヌは真梨江を警戒したのか真梨江の方には行かず永吾のポケットにいる。久しぶりの繁華街を歩き、町の空気に
「久しぶりだな・・・」
「そうね」
懐かしむ永吾たちにフェレンジュたちは不思議になる。
「どして?」
「どして?ってフェレンジュ君が来て永吾君が・・・」
「置いていくわけには・・・」
何か永吾の雰囲気が変わる。何かフェレンジュが来てから気になる事があるのか・・・。
「なんで」
「だって何かあると嫌じゃない」
「それだけ?」
隠してると思って真梨江は永吾に尋ねる。真梨江の表情を見た永吾は
「だって一番大切な人じゃない、真梨江もそうなんだけど・・・」
「え!?」
「どうした?」
こっそり真梨江に言った言葉がいつもの永吾の言葉に聞こえず顔を赤らめる真梨江だった。
「そんなぁ、フェレンジュがいないと、俺の体どうなっちゃうの?」
「そうね、そうだった」
普段の永吾の言葉を聞いて真梨江は正気に戻った。
 いつもの大通りを歩くときはフェレンジュたちはストラップの人形のように振る舞う。
「なあ、あそこ行こうか」
「そうね」
「あそこって」
フェレンジュたちは当たり前だがもちろん行った事はない。ウキウキしながらフェレンジュたちは店に行った。
 その店は永吾たちが来ないときももちろん繁盛をして内装も模様替えをし来ていたときの面影はどこにもない。
「ここだった?」
「たぶん」
不安になる永吾たちだが卓球台は残っていた。
「よかった」
「やろうか?」
一台だけ空いていた卓球台を借りる。
 しばらく永吾と真梨江が卓球をしていた。それを見てフェレンジュが
「何が楽しいの?」
「やってみればわかるよ」
「でも、この体じゃ・・・」
真梨江に返しながらもフェレンジュと話す永吾もすごかった。しかし、真梨江から帰ってきた球が少し速く
「お兄ちゃん!」
「あぶな・・・い。おっと!」
フェレンジュに当たりそうになり永吾はその球を間一髪打ち返していた。
 少しラリーが続き、さすがの永吾もバテてきている。
「少し休もう」
「そうだね」
卓球台から離れた場所で休憩し永吾たちはジュースを飲む。
「でも、永吾君ってほんとうまいね」
「だって中学、卓球部だもん」
「うっそ〜、聞いてないよ〜」
真梨江は信じられないと言わんばかりの顔をし、永吾を見る。
「言わなかったから」
「言ってよ」
「別に言っても・・・」
一瞬永吾の表情が曇る。
 休憩をしまたしばらく卓球をする。休憩を終え気がつくと警戒心が薄れてきたのかスローレンヌは真梨江の方に行っていた。
 その店を出てすぐ、フェレンジュたちの表情が変わる。
「何かあった? フェレンジュ」
「ううん、何でもない」
フェレンジュはそう言うが表情はさえないままだった。
 遅めに家に帰ってきた永吾ですぐ真梨江も帰る。
「そこまで送るよ」
「うん」
いつもは断る真梨江だが永吾と一緒に家を出る。
「何かあった、真梨江?」
「うん・・・」
表情を見て何かあると思った永吾は
「スローレンヌから?」
帰り仲良く話すようになったスローレンヌが気になっていた。
「ねえ、早く治るといいね。永吾君の体」
「あぁ。でもどうして?」
「スローレンヌちゃん、一度帰って持ってくるって。もう一つの石を」
何も聞いてなかった永吾は驚く。その分喜びも一入だ。
「じゃあ、直ったんだ」
「そうみたい。でも壊れた訳じゃない、すぐに直ったみたいよ」
そう聞く永吾は安心して真梨江に
「いつ行くって?」
「まだそれは聞いてなかった」
「まあいいか」
そう話しているうちに真梨江の家の前にいた。
 真梨江と別れ、家に帰った永吾。
「ねえ、永吾君?」
部屋に入ってすぐスローレンヌが来る。
「帰るんだって、スローレンヌ」
「うん、あんまり永吾君たちに無理させたくないし・・・」
スローレンヌの表情は暗かった。
「戻ってくるのにどれくらい」
「たぶん、1ヶ月ぐらい・・・・・・もっと長いかも、でもちゃんと持ってくるから・・・」
そう言うとスローレンヌは宇宙船の中に入っていった。

 スローレンヌはすぐにでも行きたいと3日後の夕方に出て行くと永吾に言う。
「水曜日に行っちゃうって、スローレンヌ」
「で、いつ帰ってくるの?」
「1ヶ月はかかるって言ってた」
「そうだよね」
行き帰りの話はその話で持ちきりだった。
 永吾と家に帰る途中
「じゃあ」
「真梨江、寄っていかないのか」
「うん、あまり邪魔したくないし・・・」
真梨江は駅から降りるとすぐ自分の家に帰っていった。真梨江はスローレンヌが帰っていくまで永吾の家に寄る事はなかった。
 家に帰り、自分の部屋に入った永吾の手には石がありそれを見つめる永吾だった。
「どうかした? 石を見て」
「ほんと、変わった形してるよな」
さつきから呼ばれるまで見つめていた。

 あっという間に時間が過ぎ水曜日の夕方になる。
「じゃあ、行ってくるわ」
スローレンヌは来たときのように永吾の部屋の窓に宇宙船を持っていく。
「気をつけていけよ」
「うん」
そう言うとすぐ宇宙船に入り発射させた。
「行っちゃったね」
「あぁ」
真梨江はスローレンヌの姿が見えなくなるまで永吾の横で見ていた。
 スローレンヌを見送ると真梨江は帰っていき、永吾は心配なのか机の前に座ったままだった。
 夕食を食べ終え、部屋に戻った永吾はまた石を見ている。
「また何見てるんだ」
「見ればわかるだろ」
「それはそうだけど」
石を見ているときだけは心配している素振りをしない永吾で
「これって不思議だよな」
「お前の体の事か?」
「違う、この石の方」
石を不思議そうな目で見る。
「見た目普通の宝石だけど、光に当てるといろんな色を発するんだ」
「そうか?」
フェレンジュたちには1つの光しか見えないようだ。その話をフェレンジュと寝るまで話していた。

つづく

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