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再会ピック 第3章

作:奄美平次




 千郷と話すことができた秀忠は、それでよかったのか表情はまだ優れない。
「どうした? 武村」
「いや・・・」
仕事中も秀忠は、千郷のことで頭の中がいっぱいだった。
「なにかあったのか?」
「え・・・?」
秀忠の異変に気づいた前島が仕事中だったが、その合間を見て声をかけてきたのだ。
「あのさ・・・この前さ」
秀忠は、この前の話とその経緯を前島に話す。
「なんで・・・あいつが来たんだろう・・・」
「元カノ?」
「あぁ、やっぱりあのギター持ってるからか・・・」
「そうかな、でも・・・なんか別な理由が・・・」
千郷の事を相談する秀忠に、前島はしばらく考える。
「前島さん? どうしたの?」
「あ、恭子ちゃん」
「考え事してたみたいけど・・・」
そこへ休み時間で、店にやってきた恭子が悩んでいる前島を見つける。
「武村の元カノの話を・・・」
「千郷さんの・・・」
「あぁ、千郷のことを話してたんだ・・・」
「秀忠さん」
恭子もその中に入り、3人でしばらく考えていた。
「そろそろ仕事しなくちゃ・・・」
「ばれるとうるさいからな、サボってるの」
仕事に戻ろうとする前島を見て、秀忠も仕事をする。
「じゃあ、私も帰るかな・・・」
その2人を見る恭子は、そのまま店を後にしようとする。
「あれ、なにか買いに来たんじゃ・・・?」
「うん、でも前島さんの顔を見たら忘れちゃった」
「そんな・・・」
「忘れさせるぐらいな顔するなよ」
「そんな顔してた?」
「うん、困った顔」
恭子はそう言うと買う物を思い出したのか、恭子は選び始める。
「なあ、恭子ちゃんとはどうなんだ?」
「別にどうって事は・・・」
「見せないだけじゃ・・・絶対内に何かあると俺は思うよ」
「そうか」
前島は秀忠に忠告をするように話す。
「元カノが目の前にいるんだから、お前の中に迷いがあるんじゃないかって思うのも普通じゃないか?」
「それは・・・でも何にも変わらない・・・」
秀忠は前島の話を聞いて、自信がないのか言葉に力がなくなる。
 仕事も終わり、秀忠は恭子といつものように帰る。
「ねえ、なにかあったの?」
「え?」
前島に言われたことが頭から離れない秀忠は考えていた。
「なあ、恭子?」
「なに?」
「千郷が俺のこと・・・まだ思っていたら・・・」
秀忠は言葉を選びながら恭子に話す。恭子は突然なことで戸惑う。
「そんなこと・・・ありえるかもしれないけど・・・私秀忠さんを信じてるから・・・」
恭子の言葉を聞いて、気持ちが引き締まる思いがする秀忠で、いつもの帰り道も、ひと味違う気持ちだった。

 しばらく前島の言葉が離れない秀忠は迷う。前島が言っていたことで目が覚めたのだろうか。
(どうなんだろう、恭子の本音。それと・・・千郷の気持ち)
そう思うばかりで現実はどうなのだろう・・・。決して良くするも悪くするのも秀忠次第なのだが秀忠は、なぜだが悪い方、悪い方へ考えがいってしまう。
 どう考えても答えが見つかるわけがない、どちらとも本音を聞いたわけではないのだから。

 迷う秀忠を見て、貞子はその訳を知っているが言い出すことができない。いつもの朝飯の時、秀忠を貞子がなにか言いたそうな顔で見る。
「どうした? 貞子」
「べつに・・・」
「何か言いたいんじゃ・・・」
「ううん」
「そうか?」
貞子を疑うが、一緒にいる妹を信じない兄はどこにもいない。貞子もそんな秀忠を心配そうに見つめる。
 朝飯を食べ終えた秀忠は音響の部屋に入る。ただ入るだけだったのか、秀忠はギターを持とうとはしない。
「どうすれば・・・本音を・・・聞き出せるのか・・・恭子の・・・」
秀忠はため息をつき、ただそれだけを口にするだけだった。
「聞いてみれば? 恭子さんに」
「貞子」
そんな秀忠が気になっていたのか、貞子は音響の部屋に入ってくる。
「千郷さんだって、それ気にしてるんじゃない」
「そうか?」
「あまりにもお兄ちゃんが正直に言わないから、なにも言えないんじゃないの、千郷さんだって」
「そんなこと・・・」
秀忠は自分への思いはあるが、気持ちはないと高をくくる。
「じゃあ、代わってあげる。千郷さんと」
「なんで」
貞子は秀忠が持っているギターとあの歪なピックを手にし、ギターを弾く。
「私だって弾けるのよ」
「おい」
秀忠は、さほど千郷に会うのが嫌なのか貞子の演奏を止める。演奏をし始めてスッと千郷に入れ替わると思った貞子だが、貞子は千郷と入れ替われない。
「貞子、あ、ここにいたんだ」
「孝治・・・」
そこへデートの向かえに来た孝治が部屋に入ってくる。
「何してるの、秀兄」
「千郷さんが恭子さんのこと気にしてるか聞こうと」
「姉ちゃんが、秀兄の今の彼女のこと・・・」
「うん」
「じゃあ、俺が変わるよ。姉ちゃんと」
孝治はそう言うと貞子からギターを受け取り、孝治は弾き始める。
「貞子、秀兄と姉ちゃんだけにしてあげなよ」
「え?」
「二人っきりの方が・・・話しやすいんじゃないか?」
「わかった」
貞子が部屋を出て、しばらくし千郷に入れ替わる。
「秀君、なにか用?」
「あ、千郷。いや・・・」
孝治から入れ替わった千郷の顔を見たとたん、動揺をしてるのか秀忠はなかなか話そうとしない。
「どうしたの? 用がないんだったら帰るよ」
「あのさ・・・千郷?」
秀忠は『帰る』という言葉を聞いて、言い出す気になったのか口を開く。
「あのさ、まだ俺のこと・・・気にしてる?」
「気にしてるって?」 
「あの時と同じ・・・気持ち・・・っていうのか」
「それは、まだあるって言えばあるのかな。だって好きだったんだもん」
千郷の口から久しぶりに聞く言葉に、秀忠は驚く。
「え?」
「でもね・・・私、秀君に謝りたい。だって私をずっと忘れようとしないんだもん。別に悪い意味じゃないけど、多分その気持ちがあの部分弾けなくしてるんだと思う。もういるんでしょ、彼女」
「あぁ、いる」
「やっぱり・・・だったらいいじゃない。その子のこと考えてあげれば・・・すぐ忘れろって言っても無理だけど」
そう話す千郷を見て、秀忠は弾きたくてたまらないままやめてしまうしかなかった千郷の思いを思い出す。
「なあ、弾きたくないか? あの場所で・・・」
「あの場所って?」
「お前が弾きたがっていた駅前に」
「え、どうして?」
突然、そう話す秀忠に千郷は戸惑う。
「なぜ、急に?」
「これしか考えられないから、俺のところに来る理由が・・・」
「それは・・・・・」
秀忠の言葉を聞いて、千郷は言葉を濁す。
「他の理由って言ったら思いつくのはお前のギターを持っていることだけだし・・・」
「でも、私・・・」
千郷と話す秀忠はあることを気づく、それは千郷がいる時間だ。ある時はすぐ入れ替わり、またある時はずっと居座るようにいて、それが千郷自身でできることなのかと言うこと。
「なあ、時間って関係ないのか?」
「時間?」
「あぁ、お前がこっちに居られる時間。誰かの体に入れる時間」
「多分、相手に嫌がれるか自分で帰ろうとすれば・・・その時の雰囲気で」
「その間なら・・・」
最初、秀忠の言っていることがわからなかった千郷も気づき、秀忠がなにを言おうとしているか千郷はわかった。
「なあ、孝治が最初にいて途中で入れ替わるってのは?」
「孝ちゃんと?」
「あぁ、孝治はいいと言ってくれてるんだ」
しかし、すぐ千郷は『うん』とは言わなかった。
「ねえ、秀君の彼女ってギター弾けるの?」
「いや」
「じゃあ、私が教えてあげようかな?」
千郷の突然の話に、秀忠は少し驚く。
「え?」
「秀君の彼女に会いたいもん」
「彼女に?」
「うん」
千郷は嬉しそうな顔を浮かべる。
「会ってるよ、千郷」
「え、誰?」
「ほら、覚えていない?」
秀忠は千郷に恭子と写っている写真を見せる。
「そういえば、久しぶりにあの曲を聴いたときに・・・」
それは普通のピックを失い、 あのピックを使い初めて千郷と入れ替わった時のことだ。
「その時に確か会ってると・・・」
「うん、思い出した」
恭子の姿をはっきりと思いだした千郷は安心した様子で秀忠を見つめる。
「ねえ、聞いてみてよ。孝ちゃんでもいいけど・・・後のこと考えたら孝ちゃんよりその彼女がいいと思う」
「え?」
「あの曲弾いて欲しいの、秀君に」
それは秀忠も同じ思いだが、千郷の考えは秀忠とは少し違う考えだ。
「お前はどうなんだ?」
「え?」
「お前は表に出たくないのか?」
「だって・・・」
秀忠に問いただされ、千郷の表情が曇る。
「なあ、お前の願い事って俺に彼女ができることだけか」
「そうじゃ・・・」
「それにやり残したことのひとつなんじゃ・・・お前の。俺といつまでもいたいというのもそうなんだろうけど、あの曲を弾けなかったというのがやり残したことの一番なんじゃ・・・」
「秀君・・・」
「なあ、恭子が弾けるようになることよりあそこでお前が弾いてくれる方が俺にはいいのかもしれない」
「え・・・」
そう話した秀忠は、悲しそうな顔に変わる。
「お前が来る度に思うんだ、この状態が続いてもいいのかなって」
「え・・・」
秀忠の言葉にただ驚くばかりの千郷。
「お前はやり残したことがあって俺の体を使ってやりたいことをやり遂げたいんじゃないかなとも考えるようになってたんだけど、だけどやっぱりお前がそんな気持ちだったら・・・」
「秀君」
「なあ、あそこで弾いておしまいにしようぜ」
「え・・・?」
「俺にはもう彼女が・・・だからさ彼女に悪い思いさせたくないし・・・今日は」
「わかった」
千郷はそう言うと帰っていった。孝治の体に戻り、貞子も入ってくる。
「どうたった?」
「あぁ。やっぱり駅前で弾けなかったことが」
「そう」
貞子はそれを聞くと、少し安心した顔を秀忠に見せる。

 秀忠は千郷と話し結論は出なかったが、秀忠にはやることがまだあった。恭子のことだ。
「後は恭子の本音か・・・」
そう思うと秀忠は気が重くなるのだった。
 しばらくし気持ちが落ち着いた秀忠は、いつもの会社の帰り道で恭子に話しかける。
「なあ、恭子?」
「なに? 秀忠さん」
「あのさ、俺に対してのお前の気持ちって」
「変わらないよ、秀忠さん次第」
「そうか、それはそうだけど。あいつと会ってから・・・俺への気持ちに変化」
秀忠は恭子から本音を聞き出そうとする。
「それはあの話を聞かなければ・・・」
「え?」
「あの話、秀忠さんがしてくれてなかったら多分別れてたかもしれない・・・」
「そうか・・・」
恭子のその言葉で、秀忠は恭子の気持ちを知る。
「別に気にしてないんだ、恭子は」
「それは死んじゃった人を気にしてても、仕方がないじゃない」
「そうだな」
「ねえ、秀忠さん?」
恭子は秀忠が弾いている曲が気になる。
「それとあの曲を弾くから、千郷さんも気になるんじゃ・・・」
「あの曲、とても弾きやすいから、手慣らしに」
「それより、秀忠さん?」
「なに?」
「あの曲、千郷さん弾けないのかな・・・駅前で」
「あぁ、やっぱりそう思うか恭子も」
恭子も秀忠と同じ考えでどう千郷を説得するか、その話をずっとしていた。

 結局そこでどうするか決まるわけでもなく、休みの日に恭子は秀忠と音響の部屋にいた。
「千郷さんに聞いてみようよ、ねえ」
「そうだな」
恭子が千郷と話すため、秀忠があのピックを使いギターを弾き始める。
「なに?」
「千郷さん」
「秀君の彼女さん?」
「うん。ねえ、話しよう」
千郷と入れ替わり、恭子は千郷に話しかける。
「そういえば、年聞いてもいい?」
「え?」
恭子は死んだ千郷に不思議と年を聞く、とても不自然な気がするが恭子は正気だ。
「20歳(はたち)」
返ってきた言葉は、もちろん千郷が死んだときの年だ。それは今から二年前のことだと、秀忠から聞いている恭子は納得をする。
「ねえ、なにがしたいの?」
「うん、あのね、千郷さん?」
あの話をする恭子に千郷は気づく。
「あの話? 秀君がよく言ってる、私がやり残した駅前で弾きたいって・・・」
「うん、千郷さんはどうなの?」
恭子は秀忠をいつも見ているせいかやっぱり気になる。
「やっぱり・・・私はいい。私・・・死んじゃった身よ、なにができるの?」
「やってみなくちゃわからないわよ」
「でも、そんなことやらなくても・・・」
千郷の気持ちは一応わかる恭子だったが、千郷のネガティブな答え方に恭子は腑に落ちない。
「ねえ、いつもそう思ってるの? 千郷さん」
「えぇ」
突如そこにデートから帰ってきた貞子と孝治が入ってくる。
「お姉ちゃんって変わったね」
「そうね、孝治」
「貞子ちゃん、孝ちゃん・・・」
「うん、お兄ちゃんとここで一緒に弾いてたときの千郷さんの言葉と違う・・・」
「そう?」
貞子は黙っていたわけではないが我慢できずに千郷との思い出を話し出す。
「お兄ちゃんが聞いたらどうなるかな?」
「うん、秀忠さんあなたのギター大事にしてるし、ほんとあなたの話をするとき悲しそうな顔をするのに・・・」
「ただ、思い出して悲しくなるだけよ・・・」
「姉ちゃん!」
話を聞いていて千郷の態度に耐えきれなくなった孝治は千郷のほおをたたく。
「ごめん・・・・・・秀兄」
そっと口に出したのは秀忠の名だった、孝治には秀忠に気持ちがわかるのだろう・・・。
「だって秀君、私のこと・・・」
たたかれた痛さと孝治の気持ちで涙声になる。
「違うよ・・・千郷さん、お兄ちゃんずっと忘れようとしてた・・・でも忘れられなかった今まで・・・」
「え・・・」
貞子の言葉を聞き驚く千郷。
「うん、俺もそう思う、だって秀兄この頃になって弾きだしたんだから」
孝治も今まで見ていた秀忠の変化を話し出す。
「そういえば、恭子さんが来なかったら弾かなかったと思う。お兄ちゃんが女の子を連れてきても長続きしなかった、多分あの千郷さんの話をした後だと思う・・・」
「うん、私も弾いてるだけだったり、あの話だけ聞いてたら別れてたかな」
「恭子さん・・・」
「誤解する人も多いだろうな、元カノの思い出引きずってるって思う人が。俺も姉ちゃんのこと知らない女の子だったらそう思うかも、貞子に悪いけど」
「孝治」
その後も千郷を説得するように千郷が嫌がらない程度に話す3人だった。
 しばらくし千郷が帰り、秀忠が戻ってくる。
「どうだった? 恭子」
「うん、やっぱりだめ」
「でも、くり返すといいかもしれないよ」
「そうか」
そう聞いて安心する秀忠だった。

 しかしその後もなにをするでもなく秀忠は千郷の作った曲を練習するだけだった。
「ねえ、他の曲弾けないの?」
「なんで今さら・・・」
秀忠の思いとは裏腹に恭子の気持ちは複雑だった。千郷と話して以来秀忠へではなく千郷への思いに変化が起きていた。
「もう、いいじゃない。その曲・・・弾くのは」
「そういう訳にはいかない」
千郷の曲を聴くことも少し嫌になってきた恭子は納得できなかった。
「なんで? もういいじゃない・・・あのピック捨てちゃえば・・・」
「そうかもな。でも・・・俺にはそれだけで終わると思わない・・・」
「どうして・・・?」
恭子の気持ちを察した秀忠は口を開く。
「なあ、孝治が使おうとしたとき気づいたことないか?他の人が現れるんじゃないかって別に関係なかったんだけど」
「そうね、でもそれとは・・・」
「あいつ、お前にギター弾いて欲しいって。」
突然秀忠から言われ恭子は驚く。
「え、私が?」
「たぶん、あいつなりに考えて俺がまだあいつのこと気になるんだって恭子が一緒にいればその気持ちも変わると思ったんじゃないか」
「でも、私そんな才能は・・・」
「やってみないとわからないと思うよ、そんなこと」
急に言われ戸惑う恭子だった。
「俺も最初全然弾けなかったんだ、ほんと」
恭子は秀忠の話を聞いて驚く、最初から弾けるとばかり恭子は思っていたのだ。
「え・・・でも今は・・・」
「あいつが付きっきりで教えてくれたんだ、あいつストリートミュージシャン目指してたんだから」
「千郷さん、じゃあ」
「それじゃなかったら許可なんか取りに行かないよ」
千郷がすっごくあの駅前で弾きたいと言う気持ちがあったと秀忠は打ち明けるついでに
「その場所で俺も一緒に弾くことにするつもりだった・・・でもできなかった・・・あいつが死んで・・・」
「秀忠さん」
そう話す秀忠は達成感が味わえなかった悔しさからなのか秀忠はいつも以上に悲しそうな顔をして話す。
「あいつがいなくなって忘れようとしてた、その悔しさ・・・別に千郷じゃないといけない訳じゃないんだ、ただあのピック使って千郷が入れ替わるようになって思い出したんだ、あいつとの思い出と一緒に」
「秀忠さん、もうやめて! つらくなるだけだよ・・・」
「あぁ」

忠は恭子の一言で我に返る。しばらく秀忠はギターを手にし弾こうとはしなかった。
 夜遅くまで2人は音響の部屋にいるのだった。

 それからも秀忠はあの曲を弾くが恭子は止めようとはしない、それどころか秀忠の気持ちを察するかのように恭子はジッと秀忠を見つめる。
「どうした? この頃」
「ううん、別に」
「そう?」
いつもは秀忠の弾く姿をただ見つめるだけだった恭子はその日は違った。何か考えがある表情を見せている。
「ねえ、私にも弾けるかな?」
「うん、その気持ちがあれば・・・できるよ」
そう話すと秀忠の横に立ち、恭子はギターを手にする。
「ちょっといい?」
「え?」
秀忠は恭子の左手を持ち、指を弦に添える。
「これがAm(エイマイナー)・・・」
「エイマイナー・・・」
「あぁ」
秀忠はそういうとまた恭子の指を使い弦に添える。
「これがCm(シーマイナー)」
「シーマイナー・・・」
秀忠はそのままいつもの曲で使うコードを教えていた。
「これくらいかな? 千郷の曲で使うのは・・・」
「これくらいかなっていくつぐらい?」
「六つかな」
「ちょっと多いよ」
「そうか?」
普段からそれ以上のコードを覚えている秀忠には序の口だ。
「ねえ、どれぐらい」 
「別に数えたことないけど・・・楽譜に書いてあるコードを見て動かしてるからわからない」
「そうなの?」
「ほら、ここにも」
恭子が最初に買ってきた楽譜を開き、秀忠はギターのコードを見せていた。
 それから秀忠と一緒に恭子も練習するようになった。

つづく

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