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ミイラの呪い 最終章
作:奄美平次




 凛々が恒利の体から離れ、2人の守護霊として見守るようになった。
「大丈夫だよ・・・」
「そうか?」
しかし、恒利には不安が残っていた。別に美幸のことが嫌いになったわけではないが、いつ凛々が勘違いをして自分の体を奪うのではないか、心配で仕方ない。
「どうしたの?」
「まだ信じられない・・・こんなに二人っきりでいられるのは」
いつも肝心なときに凛々が邪魔をし、時間が短く感じていた恒利はようやく普通の恋愛ができる。
 美幸の支えもあり2年が経ち、”結婚”の2文字を意識し始めたある日、恒利は1人で指輪を見ていた。
(どれがいいのかな・・・?)
恒利は指輪を見ながら迷うが、従業員に相談しながら婚約指輪を買う。
「あとはプロポーズか・・・」
そう思いながら、恒利は気持ちを整え美幸の好きそうなレストランに予約を入れる。

 恒利は次の休みに美幸をデートに誘う。
「なあ、今夜レストラン予約したから」
「どうかしたの?」
「ちょっとな」
昼過ぎから街中を歩きながらも時間はあっという間に夕方になった。
「そろそろか・・・」
「うん」
美幸も何があるのか、ドキドキしながら恒利が予約したレストランについていく。
「予約した渡辺ですが・・・」
「お待ちしていました、こちらへ」
予約席に通され、料理を待つ2人。
「この頃、来ないな」
「誰?」
「凛々さ、守護霊になってくれたのか?」
その事がずっと気になっていた恒利。
「そうね、あの言葉さえなかったら乗り越えられなかったと思うな」
「あの言葉・・・まさか?」
恒利が最後に凛々が言った言葉を忘れるわけがない被害に遭うのは恒利本人なのだから。
 料理を食べ、レストランを出た恒利は指輪を渡すタイミングを図っていた。しばらくし道端のベンチに気づく。
「あそこで休憩しないか?」
「そうね」
ベンチに腰掛け、遠くを見る美幸に。
「これ」
「なに?」
恒利は指輪の入った箱を美幸に渡す。
「なに、これ高かったんじゃ」
「婚約指輪、俺と結婚してほしい」
「え」
一瞬驚いた美幸の返事は即答だった。
「はい、喜んで」
それから2人の結婚準備が始まる。

 新居も会社の入っているビルから近いところのマンションを買い、2人で住み始める。
「結納も終わったし、あとは・・・」
「あぁ」
あとは挙式のことを考えるだけだ。
「誰を呼ぼうか、大体はわかっているんだけど」
「あぁ、うちもそう多くないし」
「会社の人とか」
「あぁ」
2人は来てくれる人数と名前を書き出す。
「大体こんなものか」
「そうね」
招待状を作り、送る2人。
 招待状を送り、返事を待つ美幸の夢に凛々が現れる。
「嬉しそうだけど、なにかあった?」
「えっ?」
「あなたを見ることがなくなってわからないけど、本当に嬉しそうだから」
守護霊になって表に現れることがなくなり、凛々は何があったのか把握できなく迷っているようだ
「うん、結婚するの」
「え、例の彼と?」
「もちろん」
「いいな、私たちも祝福しちゃダメかな? あの人も一緒に」
「えっ・・・それは私1人じゃ・・・」
美幸が困っているところでその夢は終わる。
 どう恒利に話していいか迷っている美幸。
「話さないよりは、ましか・・・」
自分がまた変身するのかと悩む恒利を心配する美幸は家に帰り、夕食の時に夢の話をする。
「ねえ、驚かないで聞いて」
「なに?」
「凛々が夢に出てきたのよ、今日の夢に」
「何か言ってたのか?」
「うん・・・」
話しかけた美幸だが、本題にはいると心配なのか黙り込んでしまう。
「なにかあったのか?」
「うん、私たちの結婚を祝福したいって」
「それって一瞬ってことか?」
「それは、ただ祝福したいって言われただけなんだけど・・・」
「詳しくは言ってなかったのか?」
「うん、返事に困っていたら夢から覚めてた」
恒利もどう言っていいか困ってしまう。
「俺の体を使うことないだろう」
「多分。今度聞いてみる、夢の中に出てきたら」
「俺の体を使わなきゃ、祝福されてもいいかな」
「わかった」
「別に招待状を今さら作らなくても」
「私たちをいつも見ているんだし・・・」
安心をして美幸は床についた。

 恒利に相談したもの、なかなか夢に凛々が現れない。
「どうすれば・・・」
いつまで悩んでも仕方がない、式を挙げる日が来るのだから。
 凛々が夢に出てきたのは挙式の2日前の夜だった。
「どうだった?」
「もう遅いよ、明後日なんだけど来てくれる?」
「一緒に祝福してもいいの?」
「彼の体を使わなければ」
「もちろん」
凛々は誘われたのがそんなに嬉しいのか、嬉しそうに美幸に話す。
「どうやって祝福を?」
「そこら辺にいる男性の体を使うわ、あの人と一緒に」
「わかった」
眠りから覚めた美幸はなんだか気持ちは晴れやかだった。
 トントントン・・・。朝食を作っている美幸の音が聞こえたのか休みで寝ているはずの恒利が起きてくる。
「起こしちゃった?」
「やけにいい音してるから」
「ごめん」
「なにかあったのか?」
「あ・と・で」
恒利は着替えに戻り、朝食を一緒に食べる。
「さっきの話なんだけどさ」
「うん、凛々が一緒に祝福してくれるって」
「俺の体を使ったら、意味ないぞ」
「わかってる、他の人の体を使うって」
「そうか」
少し嬉しそうな顔を美幸に見せる恒利。
「間に合うのか? 夢の中だぞ」
「そうね・・・」
恒利が変身したわけではなく、美幸の夢に出てきただけで何の根拠もない。
「でも、何かが起きる前には絶対、夢の中に出てくるじゃない」
「だけど・・・」
「それに出席するとは言っても席があるわけでもないし、いいじゃない」
「明日だし」
「そうだね」
挙式を翌日に控え、凛々のことを焦って考えても仕方ないことは2人もわかっているから翌日の挙式のことを気にしている。

 当日になり、式場に恒利たちはいち早く行かなくてはならない。
「いよいよだな」
「うん」
式場に来る人を待っている2人だった。ふと凛々のことを思い出す美幸。
「ねえ、もう誰かの体を使っていたり・・・」
「まさか」
心配になって入り口の方に行く恒利を呼ぶ声が聞こえる。
「恒ちゃん!」
「あぁ、佑ちゃん」
恒利を呼んだのは恒利の従兄弟の佑輔だった。
「誰? 恒利さん」
「会ったことないか?俺の従兄弟、伯父さんの代理で来てくれた」
「きれいな彼女見つけたんだね」
その後も続々と恒利たちの前に親族たちが集まる。
 着替える為、一度親族や友人から離れる。
「ねえ、凛々いなかったね」
「そうだな」
急いで着替えている2人の頭の中には凛々がどこにどうやって現れて祝福してくれるのかだった。
 真っ白のウエディングドレスに着替えた美幸と真っ白のスーツに着替えた恒利は記念写真を親族と撮り、親族紹介が始まる。
 親族紹介も終わり、挙式が始まり美幸が父親にエスコートされ、バージンロードを歩いてくる。指輪の交換をし誓いのキスをしたときだった。
「この人の体を借りて・・・」
「じゃあ」
凛々は旦那と一緒に親族の体を使って、挙式を見る。
 美幸は恒利とチャペルから祝いのライスシャワーを浴びながら退場する。その最中に親族席のところに凛々が旦那らしい人と並んで座っていたのに美幸は気づいた。
「ねえ、凛々がいた・・・」
「え、どこに?」
「私の方の席に」
披露宴の準備をしている間、凛々の話ばかりだった。
「まさか、もういるわけないよな」
「まさか・・・ねえ」
そう話しながらも、披露宴が始まる。
 キャンドルサービスでキャンドルに火を灯しながら、どの席に凛々夫婦がいるか確認する恒利たちだが、美幸の方の席にも恒利の方の席にもいない。
 ケーキ入刀が終わり、恒利の同僚が余興で手品を披露したり、美幸の同僚がカラオケを歌ったいるときだった。
「恒利さん?」
「なに」
「あそこ・・・凛々が」
美幸が指を伸ばした先は恒利の親族の席だった。
「あそこにいるのって凛々じゃない?」
凛々を間近で見たことのない恒利に本人かどうかわからない。
「美幸っ! 恒利君っ!」
「お兄ちゃんっ」
「はい、ポーズ!」
隆一が美幸のカメラマン代わりでいろんな所から2人を撮っていた。
「どうかしたか?」
「ううん、例の人が祝福に来てるの」
「例のって、恒利君の体にいたって言う俺たちの先祖・・・」
「一昨日夢に出てきて祝福したいって言うから。いいよって言ったら」
「そうか」
しばらく3人で話しているとそこに恵里がやってくる。
「何話してるの?」
「あそこにいるんだ」
「凛々が旦那連れて・・・」
「え?」
4人で凛々がいる方を見ると恵里が意外な言葉を発する。
「ねえ、凛々さんってうちの祖母ちゃんの若いときに似てない?」
「祖母ちゃんに・・・?」
「うん」
「そうか?」
凛々たちもその雰囲気を感じたのか、恒利たちの方に歩いてくる。
「結婚おめでとう」
「ありがとう」
「うちの旦那、似てるでしょ、少しだけあなたの旦那さんに」
「うん」
確かに凛々の旦那は雰囲気といい、恒利とそっくりだ。先祖と知っているから不思議はない。
「じゃあ、私たちはまた」
「行くか」
「お幸せに・・・」
「うん」
凛々夫婦はそう言うと手を振り、元の親族に体を返す。
「俺たち、どうした?」
「そういえば・・・披露宴が始まってから・・・」
親族は席に座り、美幸はお色直しで会場を出る。
 美幸がお色直しをし、母親に連れられて帰ってきたあと。
「恒ちゃん」
「佑ちゃん」
「はい、ポーズ」
佑輔が写真を撮りに来ていた。
 恒利もお色直しをし 母親に連れられて帰ってくる。
「恥ずかしかったぁ・・・」
「そうかな」
そう話しながらも披露宴最後、美幸の両親への手紙も終わり、披露宴も無事に終わる。
 挙式を終え、市役所に婚姻届を出し恒利は紆余曲折があったが、美幸と結婚をする。

 その後、凛々夫婦も恒利たちを見守り、恒利も凛々に変身することはなかった。

                                   終わり



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