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ミイラの呪い 第2章
作:奄美平次




 恒利は中国人系の女の子に変身するようになり、次第に変身するのがデートの時にかかわらず平日にも女性は邪魔するかのように恒利の体に入り込み始める。
「お兄ちゃん、朝だよ」
いつもだったら時間通り、部屋から出てくるはずの恒利が時間を過ぎても出てこないことに不安になった恵里は部屋の外から声をかける。しかし、恒利に反応はない。
「開けるよ・・・」
恐る恐るドアを開け、中に入る恵里の目に飛びこんできたのは、恒利のパジャマを着てベッドに座っている女性だ。もちろん、恒利が変身した姿だが恵里はそれを知らない。
「お兄ちゃんは・・・?」
女性に問いかける恵里に女性は素直に答える。
「恵里か?」
話し方で恒利とわかって恵里は安心した。
「どうしたの?」
恵里にイタリアでのことと今までの経緯を話す。
「そうなんだ」
半信半疑で聞いている恵里の前で、恒利は元の姿に戻る。
「今、何時だ?」
「もう7時まわってるよ」
「30分か・・・」
恒利は急いで着替え、すぐ出勤をする。
 急いで仕事の方へ気持ちを切り替える恒利
(とうとう平日に・・・)
だが、頭の中には朝、変身したことが残り不安になりながら美幸に会う。
「どうしたの?」
「いや」
恒利の表情を見て、すぐ美幸はあのことだと察する。
「じゃあ、ランチの時に話そう」
「あぁ」
ビルの中に入り、お互いの会社に行く2人だが恒利は気が重い。
(仕事中に変身しないか・・・?)
会社に行き、自分のデスクについても恒利はそればかりが頭にある。
 仕事をしている恒利は異変に気づく。
(変身してるな・・・やばっ・・・)
パソコンで書類を作っている最中、あの女性にまた変身していた。
 その姿のまま、仕事をしている恒利に、周りの同僚は一切その変化に気づかない。
(誰も声をかけるなよ・・・)
同僚が声をかけてこないか心配になるが、書類が入ったファイルが壁になって同僚たちから見えにくくなっていた。
 昼になり、ランチを食べに1階に降りる。
「恒利さん」
途中の階で美幸がエレベーターの中に来る。
「あれ、下でじゃ・・・」
「降りるのに時間あるし、外で話すより二人っきりで話した方が・・・」
「だけど・・・」
エレベーターには恒利と美幸の2人しかいない。
「ねえ、もしかして恒利さん、変身した?」
「え!?」
「二人っきりだから言えばいいよ」
異常な恒利の驚きに美幸は確信を持つ。
 ランチを食べに喫茶店に入った2人。
「変身したの?」
「あぁ。今朝起きてすぐに、そのまま戻るのを待ってたら妹が入ってきて見られた」
「そう」
「まぁ、話を聞いて納得はしてたけど・・・」
朝の話を話す恒利がまだ話し足りないと感じる美幸。
「まだ、なにかあるの?」
「え?」
はっきり言ってほしい美幸だが、恒利ははっきりしない。
「隠さなくていいよ」
「あぁ、さっきも変身してたんだ」
「周りの人は?」
「気づいていない・・・かな? 書類があって見えにくいと思う」
「そう、大変ね」
ランチを食べ終えた2人は、恒利の変身の話ばかりしていた。
「隠さなくて、ちゃんと話して」
美幸の言葉で気が楽になる恒利だった。
 ランチを食べ、会社に戻った恒利に同僚の1人が駆け寄る。
「渡辺、お前の仕事を女の子がやってたぞ」
「え」
恒利は自分からは見えていないと思って仕事をしていた。しかし、同僚たちに変身した姿を見られていて恒利はすごく驚く。
「なんか不思議なんだよな・・・あとから渡辺の方を見たらお前が仕事してるし、その女の子がお前のスーツ着てるし」
「そうなんだ」
仕事をしていた女の子が、変身してた自分だと明かそうとしない恒利。
 仕事が終わり、その帰り恒之は早速、美幸に話す。
「バレてたみたい・・・」
「え? 恒利さんだってことも・・・」
「いや、そこまでは。ただ変身して仕事しているところを見られただけ・・・」
「まだ安心だね」
「さぁな、今でも最悪だぞ」
「なんで?」
変身していない美幸はさっぱりわからない。
「俺が他の従業員を勝手に雇って、その人にやらせてるように見えてるんだぞ」
「そうだね・・・・・・」
「言う覚悟をして、変身しなきゃな」
そう美幸に話し、恒利は覚悟を決める。
 
 覚悟を決めた恒利だが、会社で仕事中に変身することもなく時間だけが過ぎていく。
「そういえば、何で恒利さんに・・・」
「そうだな・・・」
「どうしたらわかるんだろう・・・」
デートの最中、ふと気になっていたことを美幸が話し出す。
「あの女の子に聞いてみたいな」
「え? なんで」
「だって、恒利さんが元気であの女の子になるんだったら、その子に何で恒利さんを選んだか聞いてみたいじゃない」
「そうか?」
その美幸の言葉を聞いてなのか、恒利の体に異常が起きる。
 デートからいくらか日にちが経ったある朝、いつものように恒利は美幸と通勤する。
「なんか起きるのか?」
「なんで?」
「あの女の子が夢の中に出てこない・・・」
「よかったんじゃない」
あのデートの夜から女の子が恒利の夢に出てこなくなった。
 会社に行った恒利はその夢のことで不安になっていた。
(何が起きるんだろう・・・)
だが、その日は何も起こらず1日が過ぎていった。
 それからしばらく同じような日が続いたある日、恒利は美幸とランチを食べていた。
「なんか不安でさ・・・」
「変身は?」
「とりあえず、仕事中はしてない」
食後の話はやはり、恒利の変身の話だ。そんな話をしている時だった。
「うっ」
「どうしたの!?」
急に恒利は胸の辺りを押さえ、倒れ込む。
 喫茶店から救急車で病院に運ばれる。
「あれ、ここは?」
「よかった、気がついた」
付き添いで一緒に救急車に乗ってずっと恒利についていた。
「俺、どうしたんだ?」
「驚いたわよ、急に倒れるんだから・・・」
「そうだ、なんか急に苦しくなるかな」
恒利はすぐ異変に気づく。
「仕事は、どうした?」
「それどころじゃないもん、目の前で倒れて仕事なんかできないじゃない」
「そうだよな、ごめん」
2人の様子を見て、病室に医者が来る。
「気づかれたようですね」
「はい」
「大丈夫ですか?」
「今はもう・・・」
恒利の表情を見て、医者は安心する。
「日頃の疲れもあると思うから、当分の間、入院してればいいよ」
医者はそう言い残し、病室を出て行く。
 夕方過ぎになり、噂を聞きつけた同僚がやってくる。
「仕事ばかりで疲れてたんだろ」
体のことを気遣う言葉が恒利の前を飛び交う。
「お兄ちゃん、どうしたの」
「恵里」
「じゃあ、俺たちは・・・」
同僚たちは帰っていき、病室は恒利とずっと一緒にいる美幸とさっき来た恵里の3人だけになった。
「美幸さんに倒れたって言うから、仕事が終わって急いできたわ」
「ごめん、急に」
「なにがあったの?」
「それが・・・」
なぜ苦しくなって倒れたか想像できない恒利は説明できない。
「もしかして・・・お兄ちゃんが見たミイラの呪いなんじゃ・・・」
「え?」
「今までは、いつ本格的に呪っていいか待ち望んでお兄ちゃんを変身させてて・・・」
「じゃあ、もう俺はこの体には・・・」
「それは・・・」
恵里の言っていることに恒利は驚く。
「でも、そういうことかもしれない。夢に出てこなくなったってことは」
「そうか?・・・」
「だって、変身してた時間がだんだん延びてきたのもそう言うことかもしれないよ」
「俺の体に狙いを定めてたってことか・・・」
「もしかして、ここで変身するかわからないから。明日、来たときに先生に話しておくわ」
「そうだな」
しばらく病院で暮らす日々が続く恒利だった。
 
 翌日、昼過ぎになり恒利の手元には病院食が来る。
(美幸はランチどうしてるんだ?)
恒利が美幸のことを考えて食べていると、入り口の方でビニール袋が見える。
「やっぱり来ちゃった」
「美幸」
どうやら恒利と食べる気なんだろう、美幸の手にはコンビニの袋をぶら下げている。
「さっき先生に会って」
「あれを」
「うん」
病棟に来る前に恒利を診てくれた先生に会った美幸は、恒利の変身のことを話していた。
「そうなんですか・・・」
「どうすることもできなくて・・・」
「とりあえず、検査をしてみましょう。何か変化が見つかるといいですが・・・」
検査をすることが決まり、それを恒利に話す。
「それって1ヶ月近くいろってことじゃ・・・」
「そういることじゃないと思う・・・」
「どっちにしろ、ここにいる間は仕事ができないからいいか」
最初は戸惑っていた恒利も仕事ができないことに気づき、検査をする気になる。
 
 美幸が変身の話をした次の日から検査が始まる。別に血液検査以外、痛いと感じるわけでもなく時間だけが過ぎる。
「なにかわかるのか?」
「わかればいいじゃない」
仕事が終わるとすぐ恒利のところへ駆けつけている。
「検査も明日で終わりか・・・」
「そうなんだ」
検査が終わると言うことを聞き、美幸は嬉しそうな顔をして帰っていった。
 その夜、面会時間も終わり看護師が見回りを終えたあと、看護師以外誰もが寝静まった頃だった。
 ガラガラガラガラ。どこからかドアが開く音が聞こえる。それは恒利が寝ている病室だ。
誰か出てくる・・・よく見ると恒利が変身する女の子だ。だが、様子が違う。周りを気にしているのかキョロキョロして病室の廊下を歩いていく。
 しばらく歩いて階段のとこまで来たところで女の子に異変が起きる。
(俺、どうしてここに・・・)
女の子の意識が恒利に変わる。変身していたことに気づいた恒利は慌てて病室に戻る。
(俺、どうしたんだ・・・たしか寝てたよな?)
自分で動いていた記憶がない恒利は不安で仕方がない。
 
 その不安のまま、恒利は翌朝を迎える。
(結局何だったんだ?)
最後の検査を受け、検査を受け終えたら昼が過ぎていた。
「じゃあ、明日から一緒に・・・」
「あぁ」
昼休みで美幸が来ていて、恒利の退院を喜ぶが夜中の変身で素直に喜べない。
「どうしたの?」
「あのさ、まだはっきりしたわけじゃないけど」
「なにかあったの?」
恒利は夜中のことを美幸に話し始める。
「え? じゃあ、意識なかったの?」
「あぁ、気づいたら階段まで来てた・・・」
「寝ぼけてたんじゃ・・・」
「気づいたら変身してた・・・気づかれるとやばいから慌てて部屋に帰ったよ」
「そう・・・」
その後も変身することなく、恒利は退院をした。
 
 退院をしてからというもの、今まで来たことのないような同僚まで恒利に声をかける。
「仕事、あんまりやりすぎるなよ」
「あぁ」
「でも、渡辺があんなかわいい彼女連れてるなんて」
「かわいい?」
「あぁ」
同僚に美幸との話に花を咲かせていた。
 しかし、あの女の子の意識がいつ恒利の体に入り込むかはわからない。
 
 不安の中、美幸と休みにいつものように一緒に遊びに行く。
「そういえば、いい映画あるんだけど・・・」
「それはいいんだけど・・」
恒利は映画を見てるうちに変身することを相当気にしているのだろう・・・。
「その時はその時よ」
「そうか?」
美幸は恒利と見たいがために何とか説得をする。
(やっぱり、この映画は恒利さんと見たいし・・・)
美幸は恒利の腕を引っ張りながら映画館の方へ歩く。その時だった。
「恒利さん・・・?」
恒利が変身し、美幸は恒利に声をかけるがその声に反応するどころか、周りをキョロキョロしている。
「どうしたの?」
「・・・・・・」
変身した恒利は訳もわからない言葉を発しながら、逆方向へ歩いていく。
「どこ行くの! 行くのはこっちよ!!」
強引に腕を引っ張ると女の子の意識が恒利に戻る。
「おいおい、引っ張るなよ」
しばらくし恒利の変身してた体も戻り、2人は映画館へ行く。
 
 恒利は映画の内容がわからず、ただ無意識にまた変身していたことに何も言えない。
「まだ、あの時の・・・」
「ちょっとな・・・何か言ってなかったか?」
デートの最中に変身し、横を歩いていた美幸だが今思い出しても何を言っていたかわからない。
「どうなんだろう・・・」
「?」
「迷ってたみたいだけど・・・」
「え?」
ただ自分がどこにいるのかわからなくなっているように見えた美幸。
「そうか・・・」
「迷子みたいにキョロキョロしてた・・・」
「中国人なのか?」
「多分ね」
「じゃあ、中国語話してるかも・・・」
「そうだね」
その後、美幸は女の子の声を録音する為にレコーダーを買う。
 
 しばらくし、恒利が変身しキョロキョロしている女の子の声を録音することに成功する。
「これをどうするか・・・」
自分の部屋で考え事をしている美幸の背後に誰かの気配が忍び寄る。
「何やってるんだ?」
「え? あ、お兄ちゃん。お帰り」
「飯の準備はしてあるけど、キッチンにいなくて声かけても出てこないから、入ってきた」
「ごめん」
食事をしにキッチンに行く美幸。
「そういうことか・・・」
「中国語わかる人いない? お兄ちゃんの知り合いの人で」
「いるじゃないか、何度中国へ出張してると思う」
「え?」
偶然美幸の兄、隆一は出張で中国に行くことがあり、美幸は女の子の声を隆一に聞いてもらう。
「へぇ・・・」
「わかるの・・・ねえ?」
「いや、ちょっと」
女の子の声を聞いた隆一は首をかしげる。
「わからないか・・・」
「これ借りてっていいか?」
「え、いいけど」
「わかりそうな奴に聞いてみる」
「ありがとう」
何とか美幸は女の子が言ってることを知ることができそうだ。
 
 美幸がレコーダーを隆一に渡して、レコーダーが帰ってきたのは一週間が経ってからだった。
「ずいぶん、手間かかったぞ。訳してもらうのに」
「ありがとう」
「ミイラだけにとっても昔の言葉だったらしいぞ」
「あとで見るね」
「あぁ」
食事を終えた美幸は急いで部屋に戻り、隆一からもらったメモを見る。
「なんだ、こんな事・・・」
隆一からもらったメモにはただ、『あなたは誰? ここはどこ? 今は?』と書いてあり、女の子はその言葉を繰り返していた。
「ねえ・・・」
「なんだ?」
「私も中国語を習った方が・・・」
「そうした方がいいかもな、駅前留学くらいは」
「そうだね」
「そんな余裕あるのか?」
「なんとかする」
美幸は中国語を習いに行く。
 
 美幸は習いに行くようになって、変身したときの女の子が何を言っているかわかるようになってきた。
「いつもなにやってるんだ?」
「え?」
「それ」
ランチの間もテキストを持ち込むぐらい美幸は中国語の習得に熱心だった。
「中国語習い始めたの、あの時に必要だし・・・」
「え?」
「この前、話してた言葉を兄に調べてもらったら古い中国語だって」
「やっぱり・・・」
「だから、中国語を」
「そうか」
自分の為に習い始めた美幸をただ陰から応援するしかない恒利だった。
 だが、美幸が中国語を習い始めたおかげで、女の子が現れる理由が明らかになる。




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