戻る


ミイラの呪い 第1章
作:奄美平次




 イタリア村に行った後、美幸はイタリアに行くために旅行代理店に行きイタリア旅行のパンフレットを持ってくる。
「いつにしよう・・・?」
平日の昼は忙しくない限り、一緒にランチを食べる恒利たち。
「いつって、もう連休も・・・」
「今月の月末に、週末含めて3連休あるよ」
「あった?」
美幸は手帳に付いているカレンダーを恒利に見せる。日付を見ると9月だ。
「ほら、今月最後に」
「月末か・・・」
恒利は考え込む。
「少し考えさせて」
「いいよ」
このあと、仕事が終わろうと家に帰ろうとイタリアに行く日を決めない限り、恒利の頭の中から不安として残る。
「今月の末か・・・」
自分の部屋でベッドに横になってカレンダーを見る。
「金あるかな・・・行けるくらいの・・・」
旅行代金が気になってパンフレットを見直す恒利は驚く。
「なんだ、これくらいなら・・・」
安心した恒利は美幸に電話をかける。
「今月末に行こうか?」
「いいの?」
「あぁ」
電話の向こうで嬉しそうな声を出して喜ぶ美幸。

 そうこうしているうちに月日は流れ、連休前になる。
「出張?」
「旅行、2泊3日でイタリアに行ってくる」
「いいな」
旅行の準備をしている恒利を羨ましく恵里は見ている。
「連休、彼氏とどこかに行ってこいよ」
「そうだね・・・」
「いるのか、彼氏?」
「いるはずないでしょ」
「本当か?」
「しつこいよ」
「そうか」
恒利の準備は夜遅くまでかかった。
 翌朝、目覚ましの代わりに美幸からのメールで目を覚ました。
『今日から楽しみだね(^0^)』
絵文字付きで嬉しさが伝わるメールで、恒利は急いでトランクを持って家を出る。
 私鉄の駅で美幸と待ち合わせ、電車で空港に向かう。
「楽しみだね」
「そうだな」
電車の中ではもちろん、イタリアの話で持ちきりだった。
 空港に着き、恒利たちはイタリア行きの飛行機を待った。
「そういえば、なんでイタリアなんだ?」
「もうすぐトリノがあるじゃない、冬季オリンピック」
「それで」
「そう。それより、恒利さん?」
「なに?」
「あのサイトってもう退会した?」
「あ、そういえばまだ・・・」
「旅行から帰ってきてからでも」
「そうだな」
しばらくし、イタリア行きの飛行機に乗り日本を離れた。
 飛行機に乗って何時間か経ち、夜のイタリアの空港へ降り立つ。
「イタリアに着いたぁ」
空港で入国手続きを済ませた恒利たちはホテルへと向かい、そこで朝を迎える。

 朝になり、目を覚ます恒利だが元気はない。
「もう朝か・・・」
「そうみたい」
「今日、どうする?」
「まだ寝てよう、時差ぼけしてるし・・・」
「そうだな」
恒利たちは昼過ぎまでベッドで横になっていた。
 昼近くになり、備え付けのテレビを付ける美幸。
「恒利さんっ! ちょっと見てこれ」
「なに」
「このニュース」
テレビには現地のイタリアで起きたニュースが映っている。
「これなんだろう?」
「なに?」
美幸の問いかけに恒利はベッドから降り、美幸の元へ行く。
「これってミイラかな?」
「そうだよ、きっと」
「ねえ、この人たちなんだろう」
日本語で書かれていなく、イタリア語すらわからない2人。
「どうかしました?」
「あ」
声をかけてきたのは日本語がわかるホテルの従業員だった。
「この人たちって?」
美幸は従業員にニュースの内容を聞く。
「このミイラのことを調べたり、観察しようとした人たち」
「それで、どうなったんですか?」
「死んでしまいました、原因不明だけど」
「そうですか」
このニュースを見た恒利は、意外な場所でそのミイラを見ることになる。
 ニュースを見て、すぐ美幸は恒利の腕を引っ張る。
「ねえ、どこか行こう」
「そうだな」
ホテルを出て、2人は出かけていく。
 2人は商店街みたいなところへ行く。
「なにか食べよう?」
「そうだな」
恒利も美幸も腹は減っていた。
 食事を済ませた恒利たちはまた歩き出す。しばらくし美術館らしき建物を見つけた恒利たちだが、その建物には誰も入ろうとしない。
「なんだろう、あの建物」
「行ってみよう」
建物に近づくが建物の近くに人の気配すらしない
「なにやってるんだろう・・・?」
恐る恐るその建物に入ってみる2人、いろんな絵画が置いてある美術館だった。
「美術館になぜ人が・・・」
「不思議ね・・・」
2人は奥の方に足を運ぶ。
「これって・・・」
「そういえば・・・」
「さっきニュースでやってたミイラじゃない」
「そうだよ」
ミイラを眺めている恒利に予期しない出来事が起きる。
 その夜のことだった。美幸は歩き疲れたのか夕食をそこそこにベッドに横になるとすぐ寝てしまう。
「俺も疲れたから寝ようか」
恒利もベッドに横になって床につく。
 眠り付いたはずの恒利は目を覚ます。
「なんだ・・・一体あの子は?」
夢に出てきた女の子は恒利が知らない女の子だ。
「何か言ってたな・・・」
美幸を起こさぬようにまた横になる。

 翌朝、目を覚ます恒利の頭には夢に出てきた女の子がある。
「どうしたの?」
「夜中、変な夢見た」
「どんな・・・」
「中国人みたいなアジア系の女の子が俺に何か言ってた」
「どんな?」
「よくわからなかった」
美幸に夢の話をしていると、ミイラのことを教えてくれた従業員がやってくる。
「いたいた」
「どうしました?」
「あなたたち、あの美術館に行ってたでしょ」
「はい」
「もしかして、例のミイラを見てはいないでしょうね」
「見ましたけど、それが?」
従業員はガッカリした表情を見せる。
「あなたの彼氏の命はもうないでしょう」
「え?」
美幸は突然の従業員の言葉に耳を疑う。しかし、恒利たちは帰国する。
「どうなるんだろう・・・」
「さぁ・・・」
「さぁって恒利さん、死んじゃうかもしれないんだよ」
「だから? まだ死ぬと決まったわけじゃないんだし」
恒利はそう言い、帰り支度をする。
 美幸も帰り支度を終え、ホテルをチェックアウトし空港へ向かう。
「楽しかったな」
「うん」
行く前と全然違う美幸の表情。
「どうした?」
「ううん、なんでもない」
日本に帰る飛行機の中で恒利に異変が起きる。それは目に見える異変だった。
「あれ?」
今まで寝てた美幸は恒利と手を繋ごうと恒利の手を触るが恒利の手ではない、恒利より小さく女性の手の大きさだ。
「恒利さん?」
目を開けて恒利の方を見る美幸は周りを見わたす。 もちろん、恒利はどこにもいない。
恒利がいるはずの席にはなぜか恒利の服を着た女性が眠っている。
「これって恒利さんが言ってた・・・」
ふと恒利が朝言ってた事を思い出す美幸。
 しばらくし、日本が近づいた頃には美幸の横は女性から恒利に戻っていた。
「やっと日本に着いたぁ」
目を覚ました恒利は背伸びをする。
 空港で入国手続きをし、恒利は久しぶりの我が家に帰った。

 イタリアから帰ってきた後も以前とあの女性は恒利の夢に出てくる。しかしまだ帰国の時のように変身はしない。
「またあの子が出てくるんだ」
「そうなんだ」
通勤の途中、いつものように会社に行く間だけ話し、会社に行く。まだ美幸は恒之に機内で起きたことを話せないでいた。
(どうしよう・・・もし仕事中に)
美幸は恒利がいつあの女の子に変身してしまうのか心配だった。
 昼過ぎにいつもの場所で待っている美幸。
「行こうか?」
「うん」
やっぱりあのことが気になる美幸は迷っていた。
「どうかした?」
「え?」
「腕組んで歩かないのか? この頃、腕組まないけど」
「うん、そうだね」
恒利に言われ、美幸は思い出したように装い腕を組む。
(あぶない、あぶない)
いつものように喫茶店に入り、ランチを食べる2人。
 ランチを食べているときも恒利の気持ちを損ねたくない美幸は機内のことは話せなかった。・
「そういえばさ・・・」
「え、なに?」
「あの女の子さ、なんか俺に訴えてた気がする」
「どういう事・・・?」
「日本語じゃないと思うけど、『私を彼氏に会わせて』みたいな」
女の子が出てくる夢を見るのは恒利で、美幸の見る夢には出ては来ない。
 仕事が終わり、美幸はいつものように恒利と一緒に帰る
「イタリアから帰り・・・」
「なに?」
意を決して美幸は機内で起きたことを恒利に話す。
「そうなのか?」
恒利は驚いて荒れることはなく、平然とした表情だった。
「これだと・・・」
「なに?」
「あそこで言ってたことわかるな」
恒利はイタリアで見たミイラのニュースのことを話す。
「どうして・・・」
「相手探しているなら、西洋人より東洋人の方がいいんじゃ」
「どういうこと?」
美幸は恒利の話を部分的しか理解できない。
「遺伝子的にあうんじゃ・・・だから変身するようなことはともかく拒絶することなかったから、死ななかったんじゃ」
「そういえば、死んじゃうんじゃないかって言ってたね」
「だから、心配しすぎなんだよ」
何も根拠はなかったが、美幸は恒利が言いたいことはわかった。
「言ってよかった」
「何で黙ってた、言ってくれたらすぐすっきりしたのに」
「だって」
美幸とそう言いながら駅のホームで別れる。
 平然を装っていた恒利は、自宅へ帰ってきて自分の部屋に入ったとたん、がっくりと肩を落とし愕然とする。
(あの子に変身してたのか・・・)
不安が恒利の頭をよぎる。
(もし、仕事中に変身してたら・・・)
自分が変身することを知り、その事が長い悩みになる恒利だった。

目を覚まし、すぐ恒利の頭をよぎるのは変身することだった。
(今日は、社内で事務処理か・・・)
自分のスケジュールを確認して、恒利は部屋を出る。
「おはよう、お兄ちゃん」
「おはよう」
朝食を食べ、電車の時間に間に合うように家を出る。
 ラッシュ時の満員電車に乗り、会社へ行く恒利はふと外の風景に目をやる。
「もう山の方は紅くなってるな」
もう10月で紅葉も恒利のいる街へと降りてきていた。
「今年は美幸と一緒に・・・」
紅葉した木々の中を美幸と一緒に歩く姿を想像する。
 美幸に会った最初の言葉もこれだった。
「もう真っ赤だね」
「あぁ」
美幸はそう明るく話し、今までと変わらず腕を組んで歩く。
(迷っている場合じゃないな)
美幸を見るとそう思える恒利。
 美幸に会い、忘れてるつもりだった恒利だが自分のデスクに行くと不安が頭をよぎる。
(そういえば、仕事中に・・・)
いつ変身するか不安になり仕事にならない。
 昼間に美幸とランチを食べに行くが、表情は暗い。
「どうしたの?」
「いや・・・」
「やっぱり言わないほうが・・・」
恒利の表情を見た美幸は自分が言ったことを後悔する。
 ランチを食べに行った恒利はその間、言葉少なめにランチを食べていた。

 恒利の心配とは裏腹に一向に平日は変身しない。
「ねえ、今度の休み行こうよ」
「え?」
「紅葉のライトアップ」
美幸も恒利と紅葉を見に行くことを楽しみにしている。
「そうだな」
「夜だし、いいじゃない」
変身することを考えて夜にする美幸に促され、恒利も覚悟を決める。
(1人じゃないんだし・・・)
「わかった」
「じゃあ、いいのね」
「あぁ」
紅葉を見るのは人が多くいる週末の夜にする2人。
変身することが確実に恒利たちを悩ませるその日が来る。
「たまには車もいいね」
「あぁ、遠出もできるし」
恒利たちは車を走らせ、街中を離れた紅葉スポットに行く。
「やっぱり、多いね」
「そうだな」
2人は散策路を歩きながら、ライトアップされた紅葉を見る。
「昼と違うな」
「そうだね」
下からライトに照らされ、昼間の日光より紅葉がとても紅く見える。
 ライトの光に誘われるように先へ先へ行く美幸は恒利の腕をつかむ。
「すごい人だね」
「あぁ、考えることは一緒」
「そう?」
美幸が恒利と組んでいた腕が離れそうになる。
「恒利さん?」
美幸がよくよく腕をまた組もうとつかむ恒利の腕が細い。
「どうかした?」
恒利は美幸に反応したが、起きたときに変身したのが初めてで恒利には変身した自覚はまだない。
「これ・・・」
美幸は恒利につかんだ腕を見せる。
「え?」
実際変身して恒利はそれ以上言葉が出ない。
 美幸は女の子に変身した恒利と紅葉見物する。しばらくし恒利の体が元に戻る。
「恒利さん!」
「あっ」
元に戻ったことがわかり、また美幸は腕を組む。
 この日を境に変身することが確実に恒利たちを悩ませる。

 紅葉狩りに行った後、休みの日に限って次第に変身するようになる。美幸とのデートを邪魔をするかのように。
「どうしてだろう、急に・・・」
「潜伏期間って奴じゃないか?」
「え?」
「すぐああなるより、時間置いてああなる方が効果あるんじゃないか?」
「そうかな?」
通勤中で『変身する』と言うことをあからさまにしたくない恒利は『ああなる』という言葉に代えて話し、実際見ている美幸も恒利の言葉でわかる。
 またしばらく日が経ち、美幸は恒利が変身する回数は変わらないが、あることに気づく。それはランチを食べているときだった。
「ねえ」
「なに?」
「この頃、恒利さん変身する時間・・・」
「俺の変身する時間」
「長くなってない?」
「そうか?」
変身している間の時間が長くなっていることだ。
「どういうことだ・・・?」
「さぁ?」
その意味を知らない恒利にさらなる悲劇が起きる。
 



戻る

□ 感想はこちらに □