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 唐突だが、「魔法」の存在を信じたことはあるか?
 俺は信じている。というのも俺の家、つまり俺の家系は「魔法使い・魔女」の末裔らしいからだ。
 そんなバカな、という意見ももっともだろう。実際、俺も中学生の頃にコイツを聞かされたときは、いつものバカ両親の与太話と思い全く相手にはしなかった。
 その後、俺の尻のあたりで何故かバクハツが起きてお気に入りのGパンを一枚ダメにされて以来、信じざるを得なかったというわけだ。
 とはいうものの、俺はその「まほー」と言うものを全く扱えないし、使おうと思った試しもない。
 両親も、あの「Gパンが突然爆発」事件以来、「魔法」の「ま」の字も見せないし、「魔力」というものの存在すら感じ取れない。
 そのおかげかどうかは知らないが、俺は至ってフツーの高校生活を送らせてもらっている。
 今の目下の悩みは、「彼女がいない」ということだけだろうか。
 自分では至って普通に接しているつもりだが、同級生は何故か一歩引いた視点で俺のことを見ている気がする。
 その事を友人に相談してみた所、「お前無愛想なんだよ。無口だし、何考えてるか分かんねートコあるしよ」との事だ。
 つまり、俺が「普通に接している」と思っていたのが、「威圧感を与えながら迫りくる猛獣」のような印象を与えているらしかった。
 と言っても、コレばかりは生来の性格なのだから直しようがない、と半ば諦めている。
 そんな訳で、斎木竜矢、17歳、高校二年生。
「自分を理解してくれる女性が欲しい」と思いながら、帰宅路を深い溜息をつきながら歩を進めるのだった。


MAGICAL TWINS

作:MUCK

〜第1回〜
「自分自身と同棲生活!?」

「ただいま」
 竜矢は自宅の玄関のドアを開き、誰に話し掛けるでもなくそう言った。
「あらあら、お帰りりゅーちゃん。晩御飯、出来てるわよ?」
 廊下の奥から、パタパタとスリッパを鳴らしながら姿を現す女性。
 斎木恭香。竜矢の母親である。
「母さん……いい加減その『りゅーちゃん』ての、やめてくれないか」
「あら。だってりゅーちゃんは母さんの大事な息子ですもの」
「………」
 そう返されては、竜矢も反論出来なくなってしまう。
「あれ、ねぇ、俺のことは?」
 母親の背中から、ひょこっと首を出す少年。
「……達矢か」
「おぅ。兄貴、お帰り」
 この少年は、現在中学三年生になる竜矢の弟、斎木達矢である。
「たっちゃんももちろん、愛してるわよ? さ、食事にしましょう」
「ほいほい。兄貴もさ、そろそろ彼女家に連れて来る位の甲斐性持てよな? じゃないと、いつまでたっても俺『義弟』になれないしさ」
「………」
 思うところはあるのだが、あえて反論はしない竜矢だった。
 





 斎木家。午後11時28分、斎木竜矢の自室。
(彼女連れてくる位の甲斐性持てよな?)
 竜矢の頭の内には、帰宅時に弟から言われた科白が渦巻いていた。
「……彼女…か……」
 連れてきたいのはやまやまだが、今の現状では絶望的と言う他なかった。
「俺だって……な……」
 だが、仮に連れてきたところで、自分の家系の特殊さをその女性に理解してもらえるだろうか?
 両親は魔法が使えます、と伝えたところで、失笑を漏らすか、悪くすれば気違い扱いされて終わりだ。
 家系は魔女の一族です、と仮に信じてもらえても、両親が実践でもしてしまえば、その力に畏怖を抱き結局は離れて行ってしまうだろう。
 それが、竜矢が無意識の内に女性に積極的になれない要因の一つであった。
 もっとも、一番の原因は「性格」というのもあるだろうが。
「俺の全てを理解してくれる女性……か。そんな人でもいればなぁ……」
 実際には到底有り得ない夢物語を描きながら、床に就く竜矢だった。


 翌朝。
 ピピピピ、ピピピピという無機的な電子音が竜矢をまどろみに引きずりこんだ。
(……朝か…)
 眠りから目覚めさせる、という意味ではもっともその存在意義のある「目覚し時計」の電子音を止めようと竜矢は手を伸ばした。
「………?」
 竜矢の手に慣れない感触が伝わった。
 擬音にするならば、むにゅ。といったところだろうか。
(柔らかい……?)
 抵抗のないような、押し返してくるような、ふわふわのような、それでいてしっとりしているような。
 竜矢はその不可解な物の正体を突き止めるべく、朦朧とした頭を回転させ、掌をせわしなく動かしてみる。
「…ん……ぅ…」
 耳元で、聞き覚えのないソプラノの声が響く。
 不思議に思い、すっ、と視線を少し上にあげる。
 目の前には、見知らぬ女性の顔があった。
 竜矢のオペレーティング・システムは完全に再起動した。
 つまり、目が覚めた。
(なんでっ…!? 誰だ、この女のコ!?? いや、それより俺が今まで触っていたのはっ……!!)
 視線を少し下にさげた。
 そこには、健全な青少年ならば垂涎ものの物体を掴んでいる自分の手があった。
「うっ…うわぁぁああぁあぁぁあああっ!?
「うるせーな、兄貴、いつまで目覚まし鳴らしてんだよっ……!?」
 斎木竜矢の弟、斎木達矢。現在中学三年生。
 彼が見たのは、自分の兄が見知らぬ女性と一緒のベッドに入っている光景だった。
 時間が止まったような気がした。

 10秒経過。

 20秒経過。

「たっ、大変だ! 母さん! 兄貴が、女連れこんでるぅっ!
「あっ!? おいっ! 達矢っ!!」
 竜矢の手は空しく空を掴んだ。
 ぽかん、と途方に暮れる竜矢。
「……はっ、お、おい! 起きろ、あんた!」
 竜矢は自分の目の前の少女を覚醒さすべく、がくがくと前後に揺らす。
「……なんだよ…? 気持ち良く寝てたのに……?」
 その端麗な容姿とは裏腹に、男言葉の少女は、上半身を起こした。
「い……!?」
 竜矢の目に飛びこんできたのは、一糸纏わぬ少女の姿だった。
「ば、バカ!! 服着ろ、早く!!」
「え……?」
 竜矢の言葉が信じられないといった感じの少女は、怪訝顔で視線を落とした。
「な……なんだよこれぇ!?」
「は?」
 少女は、どう見ても自分の身体を視点に入れて「なにこれ」と叫んでいる
 竜矢が呆けてる間に、少女は自分の股間のあたりをまさぐった。
「な……無い! オレのアレが……! ないっ!?」
「落ちつけよ! 一体何がねーんだよ!?」
 竜矢はガッ! と少女の両肩を掴む。
 少女はハッ、と目の前を見た。
 まるで今初めて竜矢の存在を認識したかのような態度をとる少女は驚きに目を見開いている。
「?」
 少女はぺたぺたと竜矢の顔を両手で触っている。
 次の瞬間、竜矢は信じられない言葉を耳にした。
「お…オレがいる……?」
「えっ?」
 バタンっ!
 その時、部屋のドアが勢い良く開け放たれた。
「りゅーちゃんっ!? アナタ女のコ部屋に連れこんだって……!」
「か、母さんっ! これは……」
「でかしたわ」
 竜矢の上を極楽トンボが飛んだ。
「母さん?」
「あぁ…! 1mmの女っ気もなかったりゅーちゃんが女の子を部屋に連れこむだなんて…!」
「母さん……?」
 完全に自分の世界へ逝っている。
「しかも一緒のベッドで寝てるだなんて! 孫の顔を見れる日も近いかしらっ!?」
「母さん!!」
 その時、部屋に怒号が響いた。
 しかし、その発言は竜矢でも、達矢でも、ましてや母親の恭香でもなかった。
「アンタ……?」
 竜矢の隣にいる少女だった。
 そして、次に彼女が発した言葉は、この場にいる全員の思考能力を停止させるのに充分な衝撃を持っていた。
「母さん……オ、オレ……女になっちまった……」
 こうして、斎木家の時間はしばらくの間止まってしまったのだった。







 斎木家。午前6時38分、リビング。
「きつい。胸が苦しい」
 件の少女は竜矢の私服を借り、竜矢と仲良く正座している。
「我慢しろよ。あのままでいるわけにゃいかねぇだろ」
「何だよ、無理やり着せたくせに」
「何をぉ!?」
「はいはい、ケンカしないの。それで、こっちのりゅーちゃん?」
 恭香は、女性の方の竜矢(仮)に話しかけた。
「何、母さん」
「アナタ、こう言ったわね?『女になった』って」
「あぁ。朝起きたら、こうなってて、コイツがいて……」
『コイツ』呼ばわりされて竜矢は少々気分を害したが、話がややこしくなるので黙っておいた。
「ふ〜ん。で、こっちのりゅーちゃん?」
 と、恭香は男性の方の竜矢に話しかける。
「アナタ、全く身に覚えはない訳ね? 昨日のうちにこのコ連れこんで、いや〜んなコトしたとか」
「す、するわけないだろ!?」
 竜矢は真っ赤になって否定した。
 竜矢(仮)の方は、明後日の方を向いて聞こえない振りをしている。
「……そうねぇ、龍人さんは、どう思います?」
 ソファーに超然と座り、威厳を醸し出してるっぽい斎木家の長、斎木龍人は重い口を開いた。
「竜矢」
 視線は男性の竜矢だ。
「でかしたぞ」
 リビングに極楽トンボが飛んだ。
「た・つ・ひ・と・さぁ〜ん?」
「冗談だ」
「……似たもの夫婦」
 リビングの隅に立っている達矢はそう呟いた。
「…竜矢。これは憶測に過ぎんが……」
 恭香に2,3発ボコられた龍人が、威厳40%カット位で語り始めた。
「これは恐らく、魔法だ」
「魔法?」
「ああ。魔法による人体精製の可能性がある」
「なるほど。それなら辻褄が合うわ。人体精製はかなり高位の魔術士でないと扱えないし、成功したとしてもこんなにキレイな身体は滅多に創れないし」
 竜矢(仮)は複雑な顔つきをしている。
「まてよ、母さん。オレ、『魔法』なんて使えないぞ? 魔力だってカケラもないし」
「あら? りゅーちゃんにだって魔力はあるわよ? あなたが気付いてないだけ。それも莫大な魔力がね」
 恭香はとたんに真剣な顔つきになった。
「どういうことだ?」
「最初、あなたが生まれた時、わたしたちはあなたの中に魔力の一片も感じられなかったわ」
 今語られる衝撃の真実。
「その時はそれでも良いと思った。この子が、『魔術』なんて物に縁が無いなら。普通の人間としての人生を送ることができるのなら、って」
「「母さん……」」
 二人の竜矢が全く同じタイミングで言葉を発した。
「でも、暫くして、あなたにほんの小さな魔力があることに気付いた。その時は、私達の魔力があなたに残留した物だと思った」
 竜矢は父親を見た。
 龍人は腕を組んだまま微動だにしない。
「でも違った。あなたの魔力は、日に日に巨きく強力なものになっていったわ」
「そこで私達は、恭香…母さんと二人で相談し、お前が大きく、分別のつく人間になるまで、この事は決して口外しないと決めたのだ」
 斎木家に沈黙が流れた。
「で…でも、俺は魔力なんて物は感じ取れないし、だいいち……」
「竜矢」
 龍人が立ち上がった。
「今からお前の周囲の魔力を一時的に消す。心してかかれ」
 龍人は竜矢に掌を向けた。
「? ……くぅっ!!」
 竜矢は自分の身体が吹き飛ばされるような感覚を覚えた。
「お、おい…! 大丈夫かよ?」
 少女の竜矢(仮)は、いきなりぐらついた竜矢の身を案じた。
「どうだ、竜矢」
「……感覚が鋭くなった感じ…。俺の中から、何かが湧き出してくるみたいだ……」
「りゅーちゃん、これは視える?」
 恭香はすっ、と手をかざした。
「光、の渦みたいな物が見える」
  「それが『魔力』、だ。厳密に言えば、精神力を具現化したものだがな」
「精神…? 具現化……?」
 竜矢は父親に疑問の言葉を返した。
 少女の竜矢も何がなんだか、という感じで龍人を見ている。
「そうだ。もともと魔法というものは、『無から有を生み出す』ものだ。例えば、頭に林檎を思い浮かべるとする」
「はあ」
「頭に思い浮かべた林檎というのは、『物質的には存在しない』が、『精神的には存在している』」
「意味分からない」
「つまり、頭に物質を思い浮かべるだけでその物質はこの世界に『存在している』ということになるのだ」
 やはり竜矢と竜矢(仮)には理解できなかった。
「魔法は、『精神の存在を物質的に具現化させる』というものだ。我々魔術師は、その技術を無意識の内に習得している」
 言うが早いか、龍人の掌から林檎が生み出された。
「えっ……!!」
「すげえ……!」
 少女の竜矢と弟の達矢は感嘆の声を漏らした。
「父さん。俺にも、出来るのか…?」
 龍人はタバコを一本咥え、パチン、と指を鳴らすと、ポッ、とタバコに火が灯った。
 肺に紫煙を満たし、白い煙を吐き出すと、灰皿にタバコを押し付けた。
 そして新しいタバコを一本取りだし、口に含む一歩手前でこう言った。
「やってみろ」
「俺が……? ど、どうやって」
「信じるんだ。『それはそこに有る』という確固たる信念。その揺るぎ無い強い想いこそが、『無から有を生み出す』のだ」
「…………」
 竜矢は目を閉じた。
(信じる…信じる…! 『そこに炎はある』……! ある…!)
 カッ! っと目を見開く竜矢。
「うおおおおおっ!」
 ズドォン!
 龍人の顔の周囲30cm辺りに小さな爆発が起きた。
「で……出来た…?」
「上出来だ。今度は……手加減…制御方法……覚えないと…な……」
 そうして、龍人はころり。と床に伏した。
 ちなみにタバコは跡形もなく吹き飛んでいる。
「あらあら、油断するからですよ。龍人さん」
 恭香は龍人の首筋に手をあてると、す、と目を閉じた。
 すると、10秒も経たないうちに龍人の目に光が戻った。
「魔術、ってのはそんなコトも出来るのか」
「そうよ? 覚えると色々便利、ってとこかしら」
「ねぇ、母さん。オレにも“魔法”って使えるのか?」
 少女の竜矢が身を乗り出す。
「うーん、多分無理ね」
「どうして?」
「りゅーちゃんから創造された存在のアナタには、精神力を魔力に変換する技術は持っていても、絶対的な魔力が足りないと思うから」
「うむ。だが、魔力を受け渡すことなら出来る」
 いつのまにか復活していた龍人が会話に加わる。
「そうね。りゅーちゃん、『アナタの中に私達の魔力が残留したと勘違いした』って話はしたわね?」
「あぁ」
「つまりはそういうことなのよ」
「話が飛躍してよくわからないよ」
「その…二人が密着した状態でなら、多少であれば受け渡しは出来るわ」
 竜矢と少女の竜矢は顔を見合わせた。
「もっと効率の良いやり方は……キス、かしらね。更に効率の良いやり方はここでは言えない話になっちゃうけど。聞きたい?」
 二人は仲良く首を横に振った。
「まぁ、そういうことね。それが出来ないんだったら、りゅーちゃん。あなたがしっかりその娘を護ってあげるのよ」
「母さん!?」
「あら。創造主がその創造物を庇護下に入れるのは当然の事でしょう? それとも、りゅーちゃんにはそんな甲斐性もないのかなぁ?」
「か、甲斐性……」
「それより、オレはこれからどうすればいいんだ? 男には戻れるのか?」
「それは創造主のりゅーちゃん次第ね。それに、男に戻すのはいいけど、そうなったらあなた死ぬわよ?」
「へっ!?」
「あなたを男に戻すとなると、因果を遡って『竜矢の創造した女』を『竜矢の創造した男』に書き換えなければならないから。そうなると、アナタの存在は抹消されて、替わりに新しい存在が生まれるけど」
 少女の竜矢は口を大きく開けて「そんなバカな」の表情を作っている。
「まぁ、“因果律操作”なんてもの、りゅーちゃんに扱えるとは思えないけど。現時点であなたが男のコに戻れる確率は……」
 ごくり、と少女の竜矢は喉を鳴らし、真摯な眼差しで恭香を見つめる。
 竜矢は、これはこれで可愛いかもしれない、なんて感情を抱いていた。
「そうね。0.000000001%くらい……オーナインね、まさに」
 がっくりとうなだれる少女の竜矢。
「ま、これも運命だと思って諦めなさい。意外と楽しいわよ〜? 女のコの生活も」
「楽しくないっ」
 頬を膨らませて反論する少女の竜矢。
「それよりさぁ」
 リビングの隅から声が聞こえた。
 達矢だ。
「どうすんの? 家に置いとくのかよ? 俺は大賛成だけど」
 恭香はハッ、っと目を見開いた。
「そう…そうよ! 新しい家族が増えたのよ! 何を今まで真面目ぶってたのかしらっ!?」
「真面目…ぶる?」
 竜矢はこうなった時の母親が途方もないパワーを発揮する事を経験上知っていた。
 そうなった時の被害者は大抵竜矢である。
「まずは女の子のりゅーちゃんの私物を買い揃えないとね〜♪ その次は……☆」
 予感的中! といった感じの竜矢(仮)。
 男の方の竜矢は、
「(こんなときに不謹慎だが…自分が二人いるってのは良いかもしれない)」
 被害拡散、という意味だ。
「けど母さん、いつまでも“女の方の兄貴”じゃ、不便じゃない?」
 意気揚々と達矢が提案をする。
「名前………」
「そ。で、俺さっきから考えがあるんだけど、いい?」
 沈黙。
 達矢はそれを肯定と受け取った。
「ルカ、なんてのはどうかな?」
「ルカ……この娘の名前?」
「うん。瑠璃の瑠に中華の華。瑠華。」
「瑠華。斎木瑠華。うん、るぅちゃんね?」
「るぅちゃん……」
 少女の竜矢(瑠華)は、未だに現実味のない、といった様子で達矢と恭香を交互に見た。
「ま、そういうことで。宜しく頼むぜ? 瑠華ねーちゃん?」
「ね、ねね姉ちゃん?」
「瑠華兄貴、とでも呼んで欲しい?」
 瑠華兄貴。
 語感からとってもイヤ〜な感じがした。
「………好きにしろ」
 嘆息。
 諦めた口調の瑠華がうなだれる。
「しっかし、見れば見るほどイイ女の子ね〜? りゅーちゃんのいいところと、女の子のいいところを足したような感じかしら」
 いいところ、というのは外見のことである。内面はそのまま竜矢だからだ。
 瑠香はポッ、っと赤くなった。 「さて、お次はりゅーちゃん、アナタね」
「俺?」
「解放された魔力の制御。それが出来ないと日常生活にかなりの支障がでるわ。その辺は龍人さんに指導してもらうとして」
 龍人の眼が妖しく光った。
 ぞっ…と何かが背中を走った。
「りゅーちゃん。あなた、どんな“まほー”使ってみたい?」
「どんな…って」
「女の子の服が透けちゃう魔法とか」
「達矢っ!」
「ま、一口に魔法と言ってもいろんなのがあるけどね」
「例えば?」
「それは知らないわよ。だって、あなたが創るんですもの」
「俺が?」
 創る、という単語の意味は知っているが、恭香の真意までは知らない竜矢が聞き返した。
「言ったでしょ? 魔法とは『無から有を生みだす』ものだって。まぁ、どうしても分からない、っていうなら」
 恭香は本棚に向かうと、本を数十冊取り出した。
「ハイ。これを読んで勉強しなさい」
 もちろん、“魔法”にテキストなんてあるわけがない。
 竜矢が手に取っているのは、文庫サイズのファンタジー小説だった。
「文庫本……?」
「これを読破すれば、少しはイメージ固まるんじゃない? そしてっ! るぅちゃんっ!」
「はっ、はいっ!?」
 背筋を思いっきり伸ばして固まる瑠華。
「あした、あなたの服とか私物を買いに行くわよ。りゅーちゃんも一緒についてくること!」
「えぇ、俺も!?」
「さぁ、明日っから忙しくなるわよ〜!!」
 反論は許されないらしい。
 竜矢と瑠華。
 こうして、お互いの奇妙な生活が幕を開けてしまったのだった。


 つづく。(予定)

 あとがき。

 どうも、新参者のmuckと申します。

 結構、予定より長くなってしまいました。しかも「斎木家」と「魔術」の説明に大分文字数取られてしまいました。

 未熟ですね。はい。精進します。

 初めてのTS(一応)小説ということで、これからお約束とかも入れていきたいと思います〜。

 どうぞ、これから宜しくお願いします。

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