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狩人 - 決戦【終局】 -
作:DEKOI


<<12:七王降臨>>

 その町に男が来たのは観光の為であった。
 昼間はなんともなく、教会や王宮を観光して楽しんでいた。
 だが夜になった途端、町は異様な状況になった。突然この町の住人達が手に手に棍棒やナイフ、銃等といった武器を持って行進を始めたのだ。その間誰一人として喋ろうとせずもくもくと歩いているのを見て、男は恐怖にかられた。
 大行進の後、男が昼間に観光した教会の方で激しい銃撃が鳴り響いた。男は警察に電話をかけたが通じなかった。
 3時間以上経過すると、銃撃は収まった。終わったのかと思ってほっとして窓から外を見た。そこで男は信じられない光景を目にした。
 教会があったとおもわしき場所を中心に上空の雲が凄まじい勢いで回転しているのだ。暗闇の中を目をこらしてみると、竜巻が発生しているのがわかる。しかもかなり異常な竜巻だ。通常は遠目から見れば竜巻は上の方が広がって見えるはずなのに、現在起こっている竜巻は下が広がって上が尻つぼみに縮んでいるのだ。
 男はそのあまりに異常過ぎる光景を見て呆然としていた。知らずうちに、神に祈りを捧げていた。
 
 
 エッジは廊下を駆けぬけていると、不意に強烈な悪寒を感じた。周囲を取り巻く瘴気が急速に増加してきている。
 まさか魔界の門が開こうとしているのか? エッジは不安になって思った。足取りも更に速くなる。
 扉が見えてきた。その扉はわずかに開いていた。隙間からムッとするような瘴気が漏れてくる。
 エッジは躊躇せずに扉を大きく開いた。扉の向こう側は漆黒の部屋が広がっていた。部屋の床に描かれた逆五芒星が白く不気味に輝いている。
 部屋の中には3人いた。1人は純白の髪の毛に猛禽類の目、上下を黒の服で身を包み日本刀と思わしき剣を握っている男。蘇芳だ。彼だけが立っていた。
 残りの2人は折り重なるようにして倒れていた。上にいるのはは180cmぐらいの身長の年老いた男だ。エッジが蘇芳に聞いた話通りならば確かヴァンドルの筈だ。下の方にいるのは黒いローブを被った160cmほどの老人だった。ヴァンドルは老人の胸を貫いた状態で倒れていた。
「坂上、どうなったんだ?」
 エッジは未だに立ち尽くしている蘇芳に声をかけた。蘇芳はエッジの問いかけを聞いてエッジの方を向いた。その顔は苦渋に満ちている。
「エッジさん・・・・、やられました。あと少しで儀式を止めれたのに、ヴァンドルは自分の魂を捧げる事で儀式を完遂してしまいました。」
「自らの魂を生け贄にしたのか。それは、止めようがなかったな・・・・。」
 エッジも悔しそうに倒れている人物を見つめた。恐らく下にいる方が本物のヴァンドルだったのだろう。エッジにもその事が予測できた。だが今となってはもう関係ないが。
 エッジは気持ちを切り替える事にした。最早、門の解放は避けれないだろう、ならばやる事はただ1つのみ。
 まだ少々落ち込んでいるような蘇芳の方を見ると、エッジは叱咤するかのように声をかけた。
「坂上、呆けている場合ではないぞ。これからでてくる七王を倒して『魔界』に送り返す必要がある。門が開くこの場所は『人間界』と『魔界』の法則が入り交じっている筈だ。本来『人間界』の物理法則が通じない七王でもここならば通じるだろう。」
 エッジは凄まじい勢いで増していく瘴気に顔を歪めながらも蘇芳に言った。
 それを聞いて蘇芳も頭を縦に振る。
「ええ、私もその事を考えていました。ここならば七王に対しても攻撃が通じる筈・・・逆にいえば逃がしてしまったら一貫の終わりですね。」
「そうだ。坂上、勝つぞ。それしか世界を守る手段はない。」
「そうですね。」
 蘇芳は再度、頭を縦に振った。
 蘇芳とエッジは隣あって立った。そして遂に部屋に描かれている逆五芒星の中心の空間が微妙にねじれ始めた。
 空間のねじれから凄まじいプレッシャーが放たれている。まだ完全に異界へと通じる門が開かれていないにも関わらず、魂を震わすようなプレッシャーだ。
 2人は心に緊張が走る。お互い思い思いに構えた。
 その緊迫した雰囲気の中、扉の方から足音が聞こえてきた。なんとなくタ○ちゃんの足音のようにも聞こえる。
 扉をくぐり抜けて1つの小さな影が室内に入ってきた。
「タルか。」
 エッジは空間のねじれを見据えたまま、その人影に対して声をかけた。
「うん、兄ちゃん、加勢にきたよ。・・・これは『ゲート』だね。と、いう事は儀式はもう終わってしまったんだね。」
「そうだ。これから七王がこの場所にでてくる。俺と蘇芳が接近戦を挑む、タルは援護にまわってくれ。」
 エッジはタルに指示をだした。タルは無言で頷くと棍棒を両手に持って魔法の準備に取りかかる。
 ねじれはさらに巨大になった。そして、遂に空間に『穴』が開いた。
「来るぞ!」
 エッジは叫んだ。蘇芳とタルは緊張した感じで構えた。
 そして、「ソレ」遂にこの世に現われた。
 
 空間の『穴』から現われた者。それは巨大な存在だった。身長は4m近いだろうか。その姿は漆黒の身体を持った筋肉質の巨漢の漢を連想させた。全身はうねるような太い触手に覆われており、肘や膝や肩に太く鋭い刺が生え、頭には4本の硬そうな触手が角のように生えている。頑固でいかめつい漢の顔をしており、他の箇所と違って目だけが白く輝いている。
 漢はしばらく呆然と佇んでいた。それからして漢はゆっくりと蘇芳達の方を向いた。それだけで魂を揺さ振るようなプレッシャーを蘇芳達に襲いかかった。
「我の名はグリード。魔王なり。」
 漢は自らの事を名乗った。太く、低い声だ。それでいて魂を揺さ振るような緊迫したものが含まれている。
「我をこの地に呼んだ者の願いを聞き入れ、この世界に滅びをもたらす為に参上した。」
 3人はグッとした表情でグリードを睨んだ。襲い来るプレッシャーを気合で弾き返す。
「汝等はあの者の魂が消え去る前に言っていた我を止めようとする者達か?」
 グリードは白く輝く瞳で蘇芳達を見下ろした。睨み返しながら蘇芳は頭を縦に振った。
「そうだ、グリード。私達はこの世界を守るつもりだ。お前がこのまま『魔界』に戻らずにこの世界に災いをもたらすのならば、力づくでお前を『魔界』に叩き戻す。」
 グリードはゆっくりと周りを見渡した。それから納得したかのように鷹揚に頷いた。
「どうやらこの場所は我の居た世界とこの世界が入り交じっているようだな。この場所ならばこの世界の攻撃も確かに我に通じるだろう。だが・・・」
 蘇芳達を再度見下ろすグリード。その目には感情らしき物は何1つ映っていない。
「汝等如きに魔王である我を倒せると思うのか?」
「やる前から諦める気などないさ。この世界を守る為ならば、必ずお前を倒してみせる!」
 グリードの問いかけに蘇芳は力強く答えた。その目には強く、熱い勇気が見て取れる。
 蘇芳の言葉を聞いてグリードは頷いた。その口にわずかに笑みが浮んでいる気がするのは気のせいだろうか。
「確かに。奇跡は事を始めぬ限り絶対に起こりはしないのだからな。」
 グリードの右手に黒い闇が集まった。闇は瞬時にある物を形作った。それは全長3mはあろうかと思えるいびつに歪んだ巨大な黒い斧のように見えた。
「ならば始めよう。この世界に住む勇気を秘めたる者達よ、世界を救いたくば我を倒してみせよ!」
 グリードは大きく蘇芳達に向けて一歩足を踏み出した。蘇芳達も臨戦態勢に写る。
 
 遂に世界の未来を決める、決戦が始まった。
 
 
<<13:「狩人」 対 七王>>
 
 開始はタルの魔法からだった。唱えておいた魔法を解き放つ。
物理防御膜(プロテクト・ヴェール)!
 対象者に物理的な攻撃から身を守る膜を張る防御魔法だ。物理防御壁(プロテクト・ウォール)よりも防御力は劣るが持続時間が高く、多人数にいっぺんにかける事ができるので長期戦に向いた魔法だ。
 エッジとタル、そして蘇芳の周りに青白い薄い膜が纏わりついた。
 それを確認するとタルは次に行う魔法に向けて呪文を唱え始める。
 蘇芳とエッジは同時にグリードに向けて突進した。
 グリードは2人に向けて斧を振り下ろした。その鈍重そうな見かけから想像できないほど鋭い一閃だ。
 上から襲い来る斧を蘇芳は剣を巨大化して受け止めた。凄まじい加重が剣越しに襲いかかる。蘇芳は念力を発動させて堪えた。
 エッジは蘇芳が受け止める事によって止まった斧の上に乗っかると、その上をグリードに向けて器用に走り出した。
 グリードはエッジを蚊を払うかのように左腕を振るった。その行為をすんでで躱すとエッジは跳び上がり、グリードの顔面に蹴りを叩き込んだ。
 グリードの巨体がわずかに後退する。しかしすぐに体勢を整えると空中で体勢を崩しているエッジめがけて鉄拳を叩き込んだ。
 エッジは掌打をグリードの拳にかまして威力を削いだ。それにも関わらずエッジは吹っ飛ばされると壁に強く叩きつけられた。
 蘇芳は斧をはじき返そうと念力を放出した。すこし、斧が浮かび上がった所を横に倒れ込むようにして急いでその場から逃げだす。
 そこにグリードの蹴りが襲ってきた。なんとかガードするもエッジと同じように大きく吹っ飛ばされる。床に叩き付けられてしまう。
 グリードは床に倒れた蘇芳に斧を振るおうと、斧を持ち上げた。そこに援護の為のタルの魔法が飛んでくる。
振動弾(シェイク・ブリット)!」
 不可視の弾丸がグリードの顔に炸裂した。ほんの一瞬、グリードの動きが止まる。その隙に蘇芳は跳ねるようにして立ち上がった。
 グリードの斧が蘇芳めがけて振り下ろされる。その攻撃を蘇芳はバク転して華麗に避けた。
 蘇芳は剣を構え直した。エッジも戦線に復帰する。
 各々グリードをじっと見ると、申し合せたかのように同時に突進した。
 タルは2人を援護する為に呪文を唱えようとした。その時、扉の方から1つの人影が現われた。
「うわ! 何なんだよ、あいつは?」
 人影はグリードは見て驚きの声をあげた。その人影は右手に金色のキテレツな強大な手っ甲を装着しており、更には巨大なハンマーを持っている。
「井上さん、あれが七王だよ。今のオイラ達の目的はアイツを倒す事! 兄ちゃんと坂上の援護をして!」
 佳枝は唖然と巨人を見ていたが、タルの言葉を聞いて我に帰った。
「そ、そうなのか? わかった、蘇芳さんの援護に入る!」
 佳枝はそう言うとハンマーの柄の先端をグリードに向けた。
「マー○・キャノン!」
 叫びと共にハンマーについている引き金を引き絞った。柄の先端から赤いビームが発射され、グリードに直撃した。しかしグリードには蚊に刺された程にも効いてないようだ。
 グリードは斧を大きく薙ぎ払った。斧には誰も当らなかったがその為に生じた旋風が部屋にいる全員に襲う。強風をあおわれただけで、ダメージはないが一瞬全員の動きが止まる。
 グリードは素早く左手に青紫色の球体を生み出した。雷の属性を持っているのかバチバチと音をたてている。その球体を一番近くにいた蘇芳めがけて投げつける。動きが止められていた蘇芳は球体を直撃してしまった。全身に青紫の稲褄が走る。
「うおおおぉぉぉ!」
 身体を貫くような衝撃に思わず悲鳴をあげる。それでも何とか立っているのは彼の意志の強さ故か。
 そこに無慈悲なる斧が振るわれようとした。感電しているせいで蘇芳は避けたくても身体が動いてくれない。
「蘇芳さん!」
 佳枝は叫ぶとハンマーを持って駆け寄ろうとした。だがどうやっても今からでは間にあいそうもない。佳枝の脳裏に最悪の出来事が映し出される。その想像に彼女は心中で絶叫をあげていた。
 その時、佳枝の後ろから何かが飛んできた。液体状のそれはグリードの顔にへばりついた。そのせいでグリードは目測を誤り蘇芳から微妙にずれた所に斧を振り下ろしてしまう。
「ふう、なんとか間にあいましたね。」
 佳枝が後ろを振り向くとそこには右手から血を流しているクロードが立っていた。クロードは部屋に入るや否や蘇芳が危険な状況になっているのを見て、咄嗟に手から血を飛ばして彼の危機を救ったのだ。
 グリードの斧が誤爆したのを見てエッジはグリードの懐に入った。そして今度は巨大な足めがけて掌打を叩き込んだ。
 鋭い痛みを感じてグリードは一歩後ろに後ずさった。足元に小さな者がいるのを確認すると、それを踏み潰そうとグリードは足を振り上げた。
 そこに扉の方から素早くグリードに向けて何者かが走りこんできた。そして残った足めがけて持っている斧を叩き込む。
 グラリと大きく揺れて見当違いの所に足を下ろすグリード。その隙にエッジはグリードから間合いを取った。そして同じように間合いを取った人影に顔を向ける。
「ミーナか。」
「はい。」
 エッジの言葉にミーナは斧を構えたまま答えた。
 グリードは息を吸い込むと口をすぼめてミーナめがけて大きく息を吐き出した。その風には何故か何本もの細い雷が含まれており、ミーナの身体を貫く。
「きゃああああ!」
 全身を走る衝撃と巻き起こされた突風のせいでミーナは吹き飛び、床に倒れた。グリードはそれを確認すると今度は左手に再び青紫色の球体を生み出してミーナに投げつけた。
 ミーナに球体が激突しようとした刹那に、赤い影が彼女をさらって球体から回避させた。
「サンキュー、バイザさん。」
 ミーナは自分を救ってくれた影、バイザにお礼を言った。バイザはミーナを床に降ろすとグリードの方を向く。
「七王グリード・・・・、召喚されていたのね。」
 バイザは驚愕したかのような声で呟いた。それを聞いて蘇芳が頷く。
 バイザは内心びくついていた。彼女はかつては同じ七王であるプライドに仕えていた事があった。それゆえに七王の実力がどれほどの物か詳しく理解しているつもりだからだ。
 果たしてこれだけの人数であの七王を倒せるだろうか? 彼女の心に疑心暗鬼が浮んできた。
 しかし、彼女はあえてそれを無視する事にした。どっちにしろ今ここでグリードを倒さなければこの世界に明日はない。ならば例え無茶とわかっていてもやるしかないのだ。バイザはあえて開き直ってグリードを睨みつけた。
 グリードはドンドン敵の数が増えてきているのにちょっと困惑していた。だが自分の前に立ちふさがる者なのならば排除するだけだ。そう判断すると斧を力強く握り締めて今度はエッジに向けて叩き降ろした。
 エッジは素早く斧を避けた。だがグリードの手にはあの球体が発生していた。斧による攻撃はプラフで左手の球体で動きを止め、再度斧で攻撃をしかける。グリードはこのわずかの間に本当の強敵はこの妖精と白髪の青年だけだという事に気がついていた。この2人さえ何とかしてしまえば後は何とかなると判断して2人を潰しにかかったのだ。
 球体がエッジに向けて放たれようとした、まさにその時グリードの身体を地面から突然出現した4つの黒い刃を貫いた。
 それなりのダメージは受け、グリードは集中が解けてしまい、そのせいで左手の球体が消え去ってしまう。
「ふう、どうやら私が来たのは正解だったようね。」
 扉のほうから女性の声が流れてきた。皆が扉の方を向くと、そこには漆黒の禍禍しい鎧を着て大鎌を持った女性が立っていた。
「ミランダ・・・・!」
 佳枝は嬉しそうにその女性に声をかけた。女性はチッチッチッと指を振るとたしなめるかのように佳枝を見つめた。
「今の私の名前はラウリーよ。まあ自己紹介してなかったんだからしょうがないかもしれないけど、よろしくね。」
 ラウリーは自己紹介をするとグリードの方を向いて鎌を構えた。
 グリードは唸りながら目の前にいる者達を見渡した。そろいも揃ったものだ。グリードは危うく感心しかけた。
「揃った、な。」
 エッジはポツリと呟いた。
「うん、そうだね。」
 タルは明るく答えた。
「へへへ、本当の事言ったら結構怖いんだけどね。」
 佳枝は軽口を叩くかのようにぼやいた。
「でも、世界を守る為には、やらないといけないんですよね。」
 クロードは佳枝の言葉を引き継いで内心を語る。
「七王との戦い。危険な事くらいわかっているわ。」
 ミーナはグリードを睨み付けながらボソリと言う。
「でも。世界を守る為には絶対に勝たないといけない。」
 バイザもグリードの方を見たまま独白する。
「この世界を守る為に。」
 ラウリーは鎌を構えたままグリードに接近しつつ声をだす。
「七王グリード。貴様を「狩る」!」
 蘇芳が宣言した。
 
「小技なんてどうせ通用するような相手じゃないわ! 玉砕覚悟でそれぞれの最大の攻撃力を持った技を一気に叩き込むのよ!」
 バイザは全員に向けて声を荒げながら言った。それを聞いて他の者達は一斉に頷く。
「じゃあまず私から!」
 ミーナは元気よく声をあげると斧を振りかぶった。斧の刃のまわりに白い光が纏わりついてくる。
 グリードはその光景を見てミーナめがけて斧を振るおうとした。しかしエッジや蘇芳が間にはいり、攻撃を防ぐ。
 白い光が爆発的に輝くとミーナはグリードめがけて突撃した。あと1mほどといった所でジャンプする。
 4mもあるグリードよりも高く、ミーナは跳んだ。そして身体をを思いっきりふんぞり返すとグリードの右肩めがけて斧を力一杯振り下ろす。
 
「奥義、インパクトジェンター!」
 
 右肩に斧が当ると同時に白い光が一際強く輝いた。斧は刀身を右肩に大きくめり込ませて黒い血を吹き出させた。
「ぬおおぉぉ?」
 右肩に走った激痛にグリードは思わず苦痛の声をあげた。右肩にぶら下がっている女を見つめると、握り潰そうと左手を伸ばす。
 ミーナは急いで斧から手を放すと床に落下した。床に下り立つと同時に走ってその場から離れる。
 右肩に注意を払ったのを好機と見て、バイザは左手からグリードに向けて接近した。翼をはためかして天井近くまで飛び上がる。そしてグリードの真上まで飛んだ。
 両手に紫の光を灯す。両手を目の前で組むと力を入れた。紫の光は重ね合わさり、まるで剣のように1mほど前方に向かって伸びた。
 両手を組んだままバイザはグリードに向けて落下した。その事にやっと気付いたグリードは思わず見上げてしまう。
 
「サイコ・ブレイド!」
 
 バイザはグリードの首の盆の辺りに光の剣を叩き込んだ。紫光がグリードの全身を覆う。
「うおおおおぉぉぉぉぉ!?」
 強烈な衝撃と喪失感がグリードに襲いかかった。思わず膝をつきかける。
 しかしグリードは気を奮い立たせるとバイザを左手でアッパー気味にぶん殴った。バイザは天井に叩きつけられると、今度は自由落下で持って落ちていき、床に強く落ちる。
「う、ううう・・・。」
 バイザはその一撃で意識を失いかねないほどのダメージを負った。立ち上がろうとしても立ち上がれない。
 グリードはバイザめがけて足を踏み下ろそうとする。そこに1人の少女が駆け込んできた。クロードだ。
 クロードは両手の爪をグリードに向けた。そして今まさに踏み降ろされようとしている足めがけて照準を合わせると大きく声をあげた。
 
「必殺! ブラッド・ジュット・カッター!!」
 
 爪を吹き飛ばしながら凄まじい勢いで血が吹き出した。血流はグリードの足に直撃して、貫通した。合計10個の穴がグリードの足に作られた。ウォーター・ジェット・カッターの要領で血を勢いよく噴出させて何もかもを切り貫く刃にしたのだ。
 グリードは激痛の為にあさっての方向に足を降ろしてしまう。その隙にミーナは倒れているバイザを抱え込んで離れる。
「なめるなあぁぁぁぁ!」
 グリードは斧を振り上げると床に叩き落とした。床全体に青白い雷撃が走り、全員に稲妻が襲う。
「うわああああ!」
「きゃああああ!」
 全身に強烈な衝撃を受けて皆、悲鳴をあげる。
 グリードは傷ついた足で何とか体勢を整えると武器をなくしたミーナとまだまともに動けないバイザに向かって、青紫色の球体を叩き込もうとした。
 だがグリードに対する次の攻撃は既に近くまで来ていた。
 佳枝は手っ甲から出てきた光の釘を手に取った。
 そしてグリードの死角から接近するとジャンプした。狙いは斧を持っている右手。
「おおおおお、ハ○マー・ヘル!」
 釘を右手に突き刺すと佳枝はハンマーを釘に叩き込んだ。光の釘が大きくめり込む。
 ハンマーの一部が変形する。その形はくぎ抜きのような形をしていた。
 くぎ抜きを釘の頭にひっかけると佳枝は力一杯引き抜いた。
「ハ○マー・ヘル・ア○ド・ヘ○ン!!」
 右手の肉を引き裂きながら光の釘は抜けた。多量の黒い血が傷口から吹き出す。
「うおおおおぉぉぉ!?」
 苦痛の叫びが響き渡る。だが佳枝の攻撃はまだ終わっていない。
 佳枝はハンマーを振りかぶった。一回おもいっきり息を吸い込むと大声で叫ぶ。
 
「光になれえぇぇぇぇぇぇ!!!!」
 
 叫びと共にハンマーはグリードの右手めがけて叩き付けた。
 グリードの右手に強烈な衝撃が加えられ、右手が粒子と化した。持っていた斧が床に落ちる。
「ぐわあぁぁぁぁぁ!!」
 始めてはっきりと、グリードは悲鳴をあげた。右手を押さえてよろめく。
 その隙を見逃さずに次の攻撃が繰り出された。
禁断の核よ、我の仇なす意志に、我が怒りを具現して其の者を打ち倒す絶大なりし破壊の鉄槌となれ!
 タルは長い長い呪文の終わりに、最後の呪文の言葉を紡ぎ出した。
 棍棒をグリードに向ける。そして大きく、起動の呪文を叫んだ。
 
禁断の力を持ちて、今! 極大核熱爆発(メガ・フレア)!!!!
 
 グリードの全身を青白い光が包むこんだ。完全に包み込むと、凄まじい大爆発が光の内側で発生した。
「ぐわああああああ!!」
 グリードは全身をあぶる核の炎に絶叫を放った。爆発が収まるとそこにはあちこちを焼け焦がしたグリードが立っていた。
「ぐぅ、おわぁぁぁぁ!!」
 グリードは吼えると全身から白い光を放った。それは部屋の壁を破壊し、全員に凄まじい衝撃を与える。
「くぅ! まだよ、今度は私の番!」
 ラウリーは倒れそうになるのを我慢して鎌を構えた。
「きなさい怨霊悪霊ども! 私の力となれ!」
 ラウリーの叫びと共に彼女の全身に漆黒の闇が纏わりついた。大量の悪霊怨霊達がラウリーの中に入り込む。
 鎌の穂先を頭の上に掲げる。ラウリーは体内に取り込んだ悪霊達の力を鎌の穂先の一点に注ぎ込んだ。
 
「滅殺技! クロス・リーバー!!」
 
 鎌を振り下ろした。鎌から黒い帯が2本放たれた。帯はしゃくとり虫のように蠕動を行い、互いに交差しながらグリードに襲いかかった。
 帯はグリードの腹部に直撃するとそのまま貫通した。2つの大穴が腹にでき、黒血が吹き出す。
 とうとうグリードは膝をついた。だがまだ諦めようとしない。左手に球体を生み出そうとする。
「無駄だ。」
 エッジはそう呟くと右手前に突き出すようにして構えた。
 
 "我は天空と大地の狭間に在りし者、父なる天の怒り、母なる地の慈愛を持ちて、我、求め訴えたり"
 
 エッジは音もなくグリードに接近した。その右手にあの『零』が出現し始める。
 
 "我が望みしその意志に"
 
 エッジは跳び上がった。そして右手を大きく振りかぶる。
 
 "終焉なる美、「滅美」を刻まん!! "
 
 エッジはグリードの左肩から右脇腹に向けて『零』を振るった。その軌道にあわせてグリードの肉体が「消え去る」。エッジが床におりたった後には、グリードの巨体に斜めに走る大きな穴が開いた。穴から血が吹き出す。
「坂上!」
 エッジは叫んだ。
「我が名は坂上 蘇芳。力無き者を守りし刃なり!」
 大口上をあげながら蘇芳は剣を横に振った。柄が伸び、鍔が分解して大きく広がる。刀身がうねりをあげながら巨大化していった。最終的には蘇芳の手の中に、横幅1m、長さは5mにも及ぶ巨大な剣が出現した。
「届け! 雲耀の速さまで!!」
 蘇芳は示現流特有の構え、「トンボ」に剣を構える。
 
「はあぁぁぁぁぁぁ、チェェェストオォォォォォォォ!!」
 
 裂帛の気が蘇芳の口から放たれた。そして縦一文字に剣を叩き降ろす。
 剣はグリードの身体を右肩から一直線に叩き切った。大衝撃が巻き起こり、グリードの右半身を消し飛ばした。
「オ、オオッ・・・」
 グリードが完全に膝をついた。
「やった、の?」
 佳枝は戸惑いながらも声をあげた。
 するとグリードの周囲の空間が歪み、穴が開き始めた。それに合せてグリードの身体が薄らいでいく。
「『魔界』に戻るのか。」
 誰からともなく、安堵の声があがった。張り詰めていた緊張がわずかにゆらぐ。
 だが、まだ終わっていなかった。
「くくくくく、素晴らしいぞ、エッジと蘇芳とやら。お前達は我が作りし真の決戦の場に召喚してやろう!」
 空間のねじれから2本の黒く太い糸が出現した。その糸はエッジと蘇芳に絡み付く。
「何!?」
「こ、これは!?」
 次の瞬間、蘇芳とエッジは空間の穴に引きずり込まれた。
「兄ちゃん!」
「蘇芳さん!」
 残った者達が叫んだ。だがその時には蘇芳もエッジも、そしてグリードもこの場から姿を消していた。
 
 
<<14:最終決戦>>
 
 蘇芳は気がつくと平原に立っていた。
 奇妙な平原だ。空は青いが雲1つとしてみる事ができない。地面は茶色の土がむき出しになっているが、草一本どころか石1つも落ちていない。
「なんだ? この妙な場所は?」
 蘇芳は辺りを見渡した、するとすぐ横にエッジが出現した。歩いて現われたのではない。空間からいきなり唐突に出現したのだ。
「エッジさん。」
「ん? 坂上か。・・・どうやら、かなり妙な所に案内されたようだな。」
 エッジは辺りを見渡しながらボソリと呟いた。
「しかし何なんだ、ここは? どうも『人間界』でもなければ『魔界』でもない。そして『妖精界』でもないようだが?」
 エッジは顎に手をかけながら首をかしげた。珍しい事に困惑の表情が浮んでいる。
 蘇芳も辺りをキョロキョロと見渡した。こんな状況など始めての体験なのだからしょうが無いかもしれない。
「ここは『人間界』と『魔界』、そして『神界』と『妖精界』の狭間の空間だ。その何もなく、全てがある空間に我が仮的に『世界』を作ったのだ。我等の決戦の地として。」
 いきなり声が蘇芳達の横手から聞こえてきた。驚いて振り向くとそこには右半身を失ったグリードが立っていた。
「グリード・・・・!!」
「お前達は強い。恐らく各世界において最強の戦士の1人であろう。我がこの地に汝等を呼んだのは、汝等を打ち倒しその魂を得る為だ。」
「・・・なに?」
 エッジは片眉だけを器用に持ち上げた。蘇芳もキツメの目で睨み付ける。
「汝等の魂を取り込めれば我は他の七王を超えた存在に昇華できるだろう。その為に我はこの地に汝等を呼び寄せたのだ。この空間に『世界』を作って。」
「勝手な事を言ってくれるな・・・! だが満身創痍であるお前に私達が倒せると思っているのか?」
 蘇芳は剣を構えながらグリードに声をかけた。対してグリードは器用に肩を竦めてみせた。
「確かに、今の我では汝等に勝てるか微妙だろう。それに勝手に呼び付けて戦え、と言うのも勝手な言い草ではあろうな。だから我も汝等に対してある事を示す。我の真の名前は『マモン』だ。」
 それを聞いてエッジは愕然とした表情になった。あまりの事に声を失っている。
「貴様、正気か? 魔族にとって真の名を明かす事は・・・・」
「そう、我等魔族にとって真の名は絶対に隠匿せねばならない事。本来魔族は不死なる存在。真の名を知られぬ限り戦いに敗れ、肉体を完全に滅びようともいずれは完全に同じ存在として復活できる。だが真の名を知る者に倒された時はその魔族は未来永劫、絶対に復活できない。」
 蘇芳もグリード、いやさマモンの言葉を聞いて愕然とした。
「我は今、汝等に真の名を明かした。それは同時に汝等は我に完全なる滅びを与える資格を得た事になる。もし、我を倒せたならば、汝等は有史史上誰も達成できなかった、魔王を滅ぼした者達デモン・スレイヤーとなるだろう。そして我は真の名を明かした以上、汝等を絶対に倒さなければならなくなった。汝等は既に我の存在を脅かす存在になったのだからな。最早、我に後はない。」
 蘇芳は驚愕の目でマモンを見ながら思わず呟いた。
「自らを背水の陣に追い込んだというのか・・・・!」
「そして殆どの魔族は知らぬ事だがな。魔族は真の名を明かした者のみ、真の姿になる事ができる。『人間界』風に言うならばリミッターを解除できる・・・・と言った感じか。傷ついた我では汝等2人と戦うのは苦であろう。だが真の姿を現し、真の力を発揮できれば汝等にも勝てる筈・・・!」
 マモンの言葉を聞いてエッジと蘇芳は後ろに飛び退いた。
 マモンの身体に青紫色の雷光が瞬く。大きく腕を上げ、身体全体を仰ぎ見上げるようにする。
 巨体から強烈な、今までにない強烈なプレッシャーがほとばしる。
「さあ我自身も知らなかった、我が真の姿、いまこそ現われよ!!」
 マモンの身体が青紫色に激しく輝いた。雷がすぐそこに落ちたような轟音が轟く。
 蘇芳とエッジは戦闘状態にはいったまま、その様子を凝視する。
 白い煙が周囲に立ち込め、視界を遮る。さっきの轟音が嘘のように静かになる。
「ふむ、これが我の真の姿か。」
 そのような声が煙に中から聞こえてきた。その声は聞いて思わず蘇芳とエッジは顔を見合わす。
「今のは・・・・」
「少女の、声?」
 そう、煙の中から聞こえてきたのはまだあどけなさが抜け切れていない、鈴を転がしたような可愛らしい少女の声だった。
 煙が晴れてきた。そして徐々にマモンの姿が見え始める。
 煙が晴れた所に立っていたのは、身長165cmくらいの日焼けしたように黒い肌を持った細身の人物であった。まるで何本もの紐を強引に服に見せかけてようとしばりつけたかのように、黒く太い触手が胸や股間といった各所に巻き付いている。すらりとした足や簡単に折れてしまいそうな程細い腕等がむきだしになっていてなんか妙に卑猥な感じが与える。髪はショートでまとめられており、顔は燐とした瞳にすらりとした鼻筋、蕾のような口と清純そうな乙女の連想させた。その乙女の顔にはまるで蛮族が戦化粧をしているかのように目を通して白い縦線がくっきりと入っている。そして胸がほんのわずかにだが膨らみをみせていた。
 呆然と蘇芳とエッジは変わり果てたマモンの姿を見ていた。身長4m以上の大男がいきなり160cmちょっとのか弱そうな少女になったのだから驚くのもしかたがないが。
 2人の間抜けな姿を見て、マモンは苦笑を浮かべた。その笑みもなんだが初々しい。
「真に高位な魔族は性という概念を超越している、真の姿がこのようになるのもまた充分あり得る事だ。」
 尊大にマモンは2人に説明した。言葉使いは変わっていないが声自体は少女のようになっていて妙にしっくりこない。
 マモンは両手を握ったり開いたりを繰り返した。そして何かに満足したかのように1回大きく頷く。蘇芳達の方を見ると不敵に笑った。
「これが真の姿の我か。確かに力がみなぎってくる、これなら汝等を倒す事もできるだろう。」
 マモンの右手に闇が現われた。それは広がったり形を変えたりすると黒い、いびつな形をした斧に変貌した。
 その光景を見て、一旦解除していた構えを再度取り直す蘇芳とエッジ。目も真剣な物に変わっている。
「我を倒せば我が作ったこの『世界』は崩壊し、汝等の元の世界に戻れる。言いかえれば我を倒さぬ限り元の世界に戻れはしない。・・・全力でかかってこい。我も、全力を持って汝等を倒す。」
「エッジさん、わかっていますね。」
「ああ、見た目はどうあれ奴は七王の1人に間違いはない。そいつが全力で戦うと言ってきたのだ。こちらも全力で戦うぞ。」
 エッジの声を聞いてマモンは自嘲気味に笑った。どこか照れているようにも見える。
「すまぬな、我の我侭につきあってもらって。」
「かまいやしない。お前を倒さない限り、あの世界が本当の意味で救われた事にはならない。ある意味、好都合だ。」
 蘇芳は正眼に剣を構え直した。鋭い目でマモンを睨む。マモンも斧を腰だめに構えた。
「我の名はマモン。七つの大罪、「貪欲」を司りし者。」
「俺の名はエッジ=バーラング。今は亡き愛した人に、弱き人々を救う事を誓った『盾』だ。」
「我が名は坂上 蘇芳。力無き者を守りし、『刃』なり。・・・・・魔王マモン、貴様を、「狩る」。」
 お互いに名乗りをあげた。凍てつくような緊張が辺りを覆う。
「さあ、始めよう。」
 魔王は、言った。
 
 
 魔王と蘇芳は同時に跳び出した。互いに接近しあいお互いの武器を交じあわせる。
 武器をぶつけあい、躱し、牽制し、押え込む。お互いに凄まじいスピードで場所を変えたり入れ替えたりして戦いを繰り広げた。
 蘇芳の横薙ぎの一閃が魔王を捕らえかけた。しかし剣が触れる直前に魔王に姿がかき消える。直後、魔王の姿は蘇芳のすぐ後ろに出現した。斧を振り上げ、隙ができた蘇芳の背中めがけて叩き降ろそうとした。
 だがそこにエッジが援護に入った。掌打を魔王の腹に打ち込もうとする。それに気付いた魔王は斧の軌道を変えてエッジを迎撃する。
 今度はエッジと魔王が戦い始めた。凄まじい勢いで乱舞する斧をエッジは紙一重で躱していく。嵐のように繰り出される拳撃や蹴撃を魔王は体捌きと斧によって防御した。
 斧の横振りの一撃をエッジを捕らえかけた。エッジは瞬時に腕に「気」を張り巡らせ、同時に斧の攻撃とは逆方向に跳ぶ。
 エッジの腕に斧が当った。だが張り巡らせた「気」と素早いスウェー行動によってほんのわずか、斧が腕にめり込むだけであった。それでも完全には衝撃を消しきれずにエッジの身体は大きく吹っ飛ばされた。地面に叩きつけられる。
 迎撃しようとエッジに迫る魔王。その直線上に蘇芳が立ちはだかった。魔王に一突き入れようとする。魔王は慌てて急停止をすると蘇芳の突きを身体を捩って躱す。
 蘇芳と魔王の戦いが再開された。互いの力が、技が、熱く交差しあう。
 蘇芳の剣と魔王の斧が組み合った時に、突如としてお互いの空間の間に青紫色の10cm程の大きさの球体が出現した。球体は蘇芳に向かって飛んでいく。
 爆発。蘇芳の身体が後ろに大きく吹き飛び、後ろ向きに地面に倒れた。
 だが球体を生み出して蘇芳にぶつけた張本人である魔王は驚愕の目を浮かべていた。蘇芳は魔王の斧との交差を外すと、剣の柄で球体を叩き潰し、同時に後ろに自発的に跳んで爆風から身を躱したからだ。恐らくほとんど負傷らしいのはしていないだろう。とんでもない反射神経だ。
 隙がわずかに生まれた魔王にエッジは後ろにまわり込むと膝を裏側から突ついた。俗に言う「膝カックン」をしたのだ。その意表をついた行動に魔王の膝がカクンと下がる。今度は表にまわるとエッジは下がった魔王の上半身の腹部めがけて廻し蹴りを叩き込む。
 慌てて瞬間移動を発動させて魔王はエッジの攻撃を避ける。5mほど離れた所に出現すると急いで体勢を整えた。その間に蘇芳は倒れた状態から跳ね起きていた。
 魔王に蘇芳とエッジは同時に襲いかかる。その攻撃を同時に受け止める魔王。
 蘇芳と魔王の剣戟が続く。不意に蘇芳の身体が下に沈みこんだ。蘇芳の背中からエッジは飛び出すと魔王の顔面めがけて蹴りを放った。
 魔王は斧を軌道を強引に修正すると、エッジの蹴りを受け止めた。次の瞬間、魔王は腹に強烈な衝撃を打ち込まれていた。蘇芳が左手で魔王の肝臓らへんを思いっきり殴ったからだ。しかも念力の「爆発」付きの強烈な一撃だ。魔王は腹が抉り取られたかのような錯覚に襲われた。
 思わず魔王は身体を下に沈めてしまう。エッジは器械体操の按摩をするかのように蘇芳の頭に手をつけて回転すると、踵落しと魔王の頭に叩き込んだ。
 今度は頭に強烈な一撃を食らい、魔王は後ろによろめいた。そこに蘇芳の剣とエッジの拳が容赦なく迫る。必死になって意識をつなぐと瞬間移動をしてその場を離れた。2人から10mほど離れた所に出現し、思わず息をつく。蘇芳達も一旦息をついた。
 
 強い。それが魔王の感想だった。この2人は本当に強い。個人個人でもかなりの実力なのに組み合わさると半端ではない。そして魔王はある思いにも囚われていた。「怖い」。そう、魔王は恐怖していた。今まではいずれ復活できるという思いを持って戦っていたから命を惜しむという感情など、全くなかったのだ。
 だが現在の状況は違う。この2人に倒されると自分は本当に「死んで」しまう。実際に体験してみてそれは途方もなく恐ろしい事だと今更ながら魔王は気付いた。
 目の前の2人はこのような極限状況を幾度となく体験し、くぐり抜けてきたのだろう。魔王は何故自分と同格であるプライドが『妖精界』の者達に敗れ去ったのか理解した。自分やプライドの方が戦闘を経験してきた時間は2人よりも遥かに長いだろう。だが戦闘の経験の質は全く違う。命を賭けた状況と命を賭けていない状況ではここまで戦いの状態が一変するとは、魔王も気がついていなかった。
 だが、いやだからこそ負ける訳にはいかない。自分は魔王なのだ、その誇りが魔王を支えていた。この者達を倒して、魂を内に取り込めば必ずや他の七王達を凌駕する存在になれる筈だ。その力を持って『魔界』を制圧し、ゆくゆくは再度『人間界』に侵攻し、『妖精界』も占領してあの忌々しい神々が住む『神界』を攻める。魔王は己が司る「貪欲」な欲望の為にも、負けるつもりはなかった。
 魔王は勝負にでた。斧を水平に構えて気をこめる。口から奇怪な呪が流れ出してきた。斧に青紫の稲妻が幾筋も走る。額に汗が滲み出る。
 蘇芳とエッジは魔王から強烈な「気」が放たれ始めているのを見て、身体に緊張が走った。魔王が一気に勝負をかけてきたのがわかったからだ。
 魔王は斧の柄を両手に持って頭上に振り上げた。そして叫びと共に力一杯振り下ろした。

「雷怨!」
 
 青紫の稲妻が迸った。稲妻は形を変えるとライオンの形に変貌した。四肢で大地を踏み締め、全身を放電させながら蘇芳達に襲いかかる。
 エッジは雷ライオンにいきなり突撃した。右手を広げて前に突き出す。
「でろ・・・・『零』!」
 エッジの右手に漆黒の球体が現われた。『零』と雷ライオンが激突する。雷ライオンはあっさりと「消え」去った。
 だが雷ライオンのすぐ後ろから魔王が走り込んできていた。斧を下手に持ってライオンを消した状態のまま硬直しているエッジに襲いかかる、はずであった。
 蘇芳はエッジの肩を掴むと力一杯横に押し、自分の身体を魔王に突進させた。エッジの盾になるつもりなのだ。
 魔王は笑った。その愚かな行為を嘲て。
「馬鹿な奴、死ねぇ!」
 魔王は斧を振った。数瞬の違いもなく斧が5斬分、一気に蘇芳の身体に襲いかかった。
 蘇芳の身体に5つの斬撃が刻まれた。大きく傷ができ、血が大量に迸る。
「坂上!」
 エッジは蘇芳を見て思わず叫んだ。エッジの目から見ても致命傷クラスの傷だ。魔王も蘇芳の姿を見て勝利を確信した。
 しかし、蘇芳はただの人間ではなかった。
「オオオオオオオ!!!」
 口から凄まじい気迫が放たれる。次の瞬間、傷が塞がり、血の放出が止まった。筋肉と気迫と根性で強引に傷口をしめて出血を止めたのだ。
 魔王はあまりにもとんでもない状況に愕然とする。
「な、そんな非常識な!」
 思わず抗議の声を荒げる魔王。だが蘇芳はその事に全く意にもかいさず、剣を持っていない左手で拳を作る。
 上半身を思いっきり捻る。そして存分に力を溜めると一気に解放した。
「ドオオォリャアァァァァ!!」
 怒号と共に鉄拳を振るう。未だに呆気に取られていた魔王の顔面を拳が捕らえた。インパクトと共に念力を「大爆発」させた。
 鼻と口から血を出しながら魔王は後ろに吹っ飛んだ。200m以上飛び続け、地面に何回か縦回転しながら転がってやっと止まる。
 魔王はよろよろと立ち上がった。まだ衝撃が抜け切れていない。
 その時、魔王の上に影ができた。見上げると小さな人影が上から降ってくる。
「終わりだマモン、奥義、九梵殺!」
 エッジは声をあげながら上空から魔王を強襲する。
「臨!」
 エッジの鉄拳が魔王の腹にめり込む。
「兵!」
 続けざまに顎に爪先蹴りが叩き込まれる。
「闘!」
 胸に肘打ちを打ち込む。
「者!」
 背中にまわると背骨めがけて掌打を叩き込む。
「階!」
 後頭部に蹴りを食らわせる。
「陣!」
 前にまわると腹部に手刀をめり込ませる。
「列!」
 心臓めがけて拳をくりだす。
「在!」
 顔面に脛蹴りをかませる。
「前!」
 頭頂を手刀で叩いた。
 この9動作をわずか3秒で終わらせたエッジは、魔王の腹に右の手の平を添えた。
 
「・・・・・・掌握!」
 
 手の平から「気」が迸る。筆舌しがたい衝撃が魔王の体内に生じ、暴れまわった。魔王の口から血が大量に吐き出される。
「く、あ、あああ。」
 それでも何とか斧を掴むとエッジに向けて振り下ろそうとした。
 しかし、エッジは止めの一撃を今まさに放とうとしていた。右手を腰だめに握っている。手からは黄金の輝きが放たれている。
「光龍昇破ぁ!」
 エッジはアッパー状に拳を突き出した。黄金の輝きがまるで火山が噴火したかのように猛然と噴き出し、魔王の身体を貫いた 。
 その一撃で魔王は後ろに吹き飛び、地面に倒れた。斧も手放してしまう。
 ビクビクと震えていたが何とか上半身を起こす。頭を上げ、前を見る。
 目の前に、蘇芳が迫ってきていた。右手の剣は既に巨大化している。
 魔王は恐慌状態に陥った。まさか、自分は負けるのか。いや死んでしまうのか。そんな思いが沸き起こる。
 嫌だ、死にたくない。散々他人の命を奪ってきていたにも関わらず、魔王は自らの死に脅えた。
 蘇芳の剣が上段にまで上がり、構えられた。それを見て魔王に胸にある物がよぎった。それは「絶望」という始めて味わう物だった。

「チェストオォォォォォ−−−−!!!」

 蘇芳の口から裂帛の気合が放たれた。剣が振り下ろされる。
「うわあぁぁぁぁぁ!」
 魔王は思わず、目を閉じて頭を手で抱え込んだ。

 辺りはシンと静まり返っていた。
 魔王は手で頭を抱え込んだままガクガクと震えていた。
 しばらくして、止めの一撃がまだこない事に魔王はやっと気がついた。
 そろそろと閉じていた目を開いてみる。すると目の前に巨大な剣が文字通り紙一重の所で止まっていた。
「うわ、うわあぁぁぁ。」
 恥も外聞もなく、魔王は腰を下ろしたまま手を使って後ろに下がった。
 その光景を見て、蘇芳は剣を降ろした。見る見るうちに剣が収縮していく。そして1mほどの大きさになると、蘇芳は鞘に剣を収めた。
 魔王は何が起こっているのかわからなかった。呆然と蘇芳を見る。
「な、何故、我を殺さないのだ?」
「殺されたかったのですか?」
 魔王の問いに蘇芳は質問で返した。それを聞いて魔王は黙り込む。
「貴方の負けですよ、マモン。それはもう充分に理解できている筈でしょう。」
 蘇芳はジッと魔王を見つめた。その目には優しい物になっていた。
「我は・・・魔王だぞ。お前達の世界に災いをもたらそうとした者なのに、何故殺さない?」
「と、言いましても未だに腰が抜けてて顔が涙まみれになっている女の子を斬る趣味は私にはないんですがね。」
 蘇芳の言葉に魔王の顔が真っ赤になる。確かに何故だか知らないが未だに立ち上がれない。目からもなんか変な水が流れている事に今更ながら気付いた。
「殺さないですむんなら、誰も殺したくないんですよ、私は。」
 蘇芳は笑いながら魔王に声をかけた。その笑みは何とも悲しげだ。
「本当の事言えば、ヴァンドルにだって生きていて欲しかった。地下施設にいた斬ってしまった人も、本音言えば斬りたくなんてなかった。生きていれば、やり直すチャンスなんて幾らでもあるからね。死んでは、やり直せないのだから。」
 魔王は呆然と蘇芳を見続けた。その姿からは最早戦う意志は見て取れない。
「貴方はヴァンドルがいなかったらあの世界に来る事はできなかったのでしょう? でしたら『魔界』に帰ってくれませんか。開いてしまった魔界の門はこっちで閉じておきますのでね。」
「・・・我の真の名を知ってしまった汝等を、そのまま帰すと思っているのか?」
「大丈夫ですよ。私は少なくとも言う気はないし、エッジさんはそんな物、わざわざ言いたがる人ではないでしょうしね。」
 蘇芳の言葉にエッジは憮然とした顔をした。まあ確かにその通りだから反論できないのだが。
「我は・・・・」
 ふらふらと立ち上がる魔王。その顔は打ちひしがれている。
 呆然と下を向いたまま立ち尽くしている。しばらくすると、ふっと笑みを、自嘲的な笑みを浮かべた。
「負けた、な。殺された方がまだマシかもしれん。こんな思いをする事になるんだったらな。」
 ふっきれたように、魔王は顔をあげた。蘇芳はその様子をじっと見詰めている。
「我はもうあの世界には手をださぬ。少なくともお前達が生きている間はな。この作った『世界』も消して、お前達も元の世界に戻そう。敗者は潔くなくてはならないからな。」
 そしてにっこりと笑った。少女の顔にその笑みはとても似合っていた。
「では、さらばだ。恐らく2度と会う時はないだろう。」
 魔王は後ろを向いて歩き出した。その後ろ姿に蘇芳はにこやかに笑いかけながら声をかける。
「もしも、もう一度会えたら、今度は友達になってくれませんか?」
「『友達』・・・・?」
 魔王は立ち止まるといかぶしげな表情を浮かべて振返った。
「始めて聞く言葉だな。だが・・・」
 魔王はフッと笑った。頬が少し赤らんでいる。
「暖かい言葉だな。お前のような奴とならば、その『友達』とやらになってもいいかもしれぬな。」
「ええ、ぜひともなりましょう。」
「さらばだ。坂上蘇芳、エッジ=バーラング。我に「敗北」を刻んだ者達よ。汝等と戦えた事、我は生涯忘れはせぬ。」
 そう言うと、魔王は姿を消した。

 エッジはトコトコと蘇芳の所まで歩いてくると呆れ返ったような顔で蘇芳を見上げた。
「全くもって、七王を滅ぼせる機会をみすみす逃す馬鹿がいるとは、思わなかったぞ。あげくの果てに『友達になろう』なんて言うとはな。」
「でも、貴方も止めなかったですよね?」
 エッジに対して蘇芳は笑いながら答えた。
 エッジは仏頂面で目をそらす。
「まあな。確かに殺さないですむのならそれに越した事はないからな。」
 そこまで言うと、エッジは苦笑した。
「ふん、お前のような超がつく程のお人好し、600年以上生きたが始めて見たよ。まあそんな所があの娘達が惚れている所なんだろうがな。」
「はい? 惚れているって何の事ですか?」
 不思議そうにエッジに質問する蘇芳。エッジは心底呆れたように蘇芳を見つめた。溜息を一回つくとパタパタと手を振る。
「ああ、まぁその事はあの娘達の問題だ。俺達には関係ないよ。」
 そしてエッジは蘇芳の横に立つと、笑いながら蘇芳の背中に手をまわしてポンッと叩いた。
「帰ろうぜ。俺達の『世界』によ。」
「ええ、帰りましょう。」
 蘇芳も笑って答えた。


<<15:「狩人」>>

 ラウリーは墓の前に立っていた。母の、自らの手で殺めてしまった母親の墓だ。
「あの力が世界の平和の役にたったわ。あんなおぞましい力なのに人を救えるのね。全く、世の中ってよくわからないわ。」
 墓前に花を添えながらラウリーは亡き母に向かって声をかけ続けた。
「『ミランダ』って名前、返すわね。これからはラウリーって名前を使いながらあの力を人に役立つ為に使うわ。でも母さん、この力は私の代で終わらせるわ。いいでしょう?」
『好きにしなさい。貴方が決めた事なんだから。』
 ラウリーはそんな声を聞いたような気がした。彼女は目を閉じながらにっこりと微笑んだ。


「これで楽になる筈ですよ。」
 伊藤の姿になったバイザは患者に笑いながら言った。
「先生、ありがとうございます。」
「いえいえ、魔医者として当然の事をしたまでです。それでは経過を見たいので明日もきますね。」
 バイザは鞄を持つと玄関にでた。そこに患者の子供がたっていた。
 子供はバイザの裾をいきなり掴んだ。
「うん? どうかしたのかい?」
「先生。母さんを助けてくれて、ありがとう。」
 バイザはニッコリと笑うと子供の頭をなでた。
「私は病気を治しただけだよ。それよりももっといい特効薬を教えてあげるよ。君の顔を母さんに見せにいってごらん、もっと母さんは元気になるよ。」
 子供はジッとバイザを見つめていたが、笑って頷いた。
「そう、その笑顔だよ。さあ母さんの所にいってきなさい。」
「うん!」
 子供はトコトコと母親の元に向かった。
 バイザはその様子を笑いながら見送った。


「行ってきまーす!」
 佳枝はパンを口にくわえたまま玄関からとびだした。
「もう、もうちょっと早く起きればいいのに、困った子でちゅね。」
 俊三は困ったような顔をして我が子を見送った。その後テチテチとリビングに向かうと、ソファーに座った。
「マスター。お茶が沸いたです。」
 黒くて丸い物体がお茶を持って俊三に近づいてきた。
「ありがとうでしゅ。ポケット。」
「いえいえ、お気になさらずに。」
 俊三はお茶をズズズッと啜った。そして一息つくとポケットの方を見る。
「でもアナタが壊れたと知った時の佳枝ちゃんの慌て方は凄かったんでしゅよ。泣きながら『こいつを治して』ってアタチに突っかかってきたんでちゅから。」
「そうでしたか。ご迷惑をおかけしたのです。」
「アナタを治す費用を使ったら男に戻る為に用意した貯蓄がスッカラカンになっちゃうのに。それを言っても佳枝ちゃんはいいからアナタを治せって言ったんでしゅから、アタチもびっくりでちゅよ。」
 ポケットは全身を小刻みに揺らした。それをいかぶしげに俊三は見る。
「どうちたんですか?」
「うふふふふふ。嬉しくて、笑っているんです。これは間違っていないですよね?」
「ええ、もちろんでちゅ。」
 俊三は慈しむように笑いかけた。


「お待たせー。待ったぁクロード?」
 佳枝は待ち合わせ時間ギリギリに待ち合わせ場所についた。
「うーうん。10分しか待ってないよ。」
 クロードは笑いながら佳枝に答えた。
「そう、よかった。じゃあプティックに行こう!」
「うん。」
 クロードと佳枝は並んで歩き始めた。
 佳枝は歩きながら頭の後ろに腕を組み、口をとんがらした。
「あーあ。あの戦い以来、蘇芳さん、またどっかいっちゃったんだもんなー。全く、今どこにいるんだろう?」
 クロードは満面ににやけた笑みを浮かべた。何だか勝ち誇っているようにも見える。
「な、何だよ、いきなり笑い出して。」
「へ、へ、へ〜ん。やっぱり私の方が1歩リード見たいね〜〜☆」
 クロードは携帯電話を取り出すとメモリダイヤルの欄を表示して佳枝に見せた。
 佳枝が目をこらして見るとそこにははっきりと『坂上 蘇芳』という名前の欄ができている。佳枝の目が丸くなる。
「ナ、何よこれ!? 貴方もしかして蘇芳さんの携帯の番号、」
「知ってるよ〜、ついでにメールアドレスも教えてもらっちゃった♪ 時折連絡取りあってんだよ〜ん☆」
 佳枝はクロードに突っかかった。クロードは器用に躱し続ける。
「ずるーい! 俺にも番号教えてよ〜〜。」
「やーよ。直接教えてもらいなさい。」
「それができれば苦労はないよ〜。ね〜教えてってばー!!」
「だーめ。」
 2人の少女は笑いながら道を歩き続けた。




クロードちゃん♪(illust by MONDO)

ヨーミンちゃん♪(illust by MONDO)






 『妖精界』にある都市の1つマーサーズにて巫女王セラはある人物と向かい合っていた。
「ありがとうございます、エッジ。どうやら七王の世界進出を止めてくれたようですね。」
 エッジは仏頂面でセラにパタパタと手を振った。
「俺1人の成果じゃないよ。タルやミーナ、そして『人間界』の人達と力をあわせて始めてできた事さ。」
「ですが貴方の力も必要だったのでしょう? ですから私は貴方にお礼を言う義務があります。」
 セラはエッジに笑いかけながら言った。
 それに対してエッジは苦笑した。それを見てセラは目を丸くする。
「エッジ・・・今、貴方笑いませんでした?」
「んん? ああ、まあな。あの戦いでやっと踏ん切りがつけれたよ。ニアラもいつまでも俺が引きずっていたら辛いだろうしな。・・・今も俺にとって、心から愛する事ができる人物はあいつだけさ。でも、過去はやり直せないんだから、だったら少しくらい心の負担を減らして前向きになった方が、アイツも喜ぶだろうしな。」
「そうですね。エッジ、これからは時折あの子の墓参り、来て下さいよ。」
「ああ、今までほったらかしにしてたんだ。年に一回くらいは来るさ。」
 セラの言葉にエッジは肩を竦めながら答えた。
「何か問題があったらいつでも言ってくれ。すぐに駆けつけるからよ。」
「わかりましたわ。頼りにしていますわよ。」
「でも、できる限り自分で努力してからにしてくれよ。俺の身体は1つしかないんでね。」
 エッジはそう言うと、笑った。
 
 
 彼女は脅えていた。現在起こっている状況に。
 誰か助けて欲しい。私をこの地獄から救って欲しい。
 彼女は切にそう願った。
 突然、ドアのインターホンが鳴った。彼女は廊下を通ってドアの前に立った。
「はい。」
「失礼します。」
 ドアの向こう側から声が聞こえてきた。低いがよく響く、男性の声だ。
 彼女はドアを開けた。ドアの向こう側には1人の人物がたっていた。
 身長170cmくらいか。純白と形容していい白髪。目は猛禽類のように鋭い。その男性は上下に真っ黒な服を着ていた。腰のベルトに1本の刀がさしてある。
 男性は笑いながら彼女に声をかけた。
「失礼します。狩りをする者がきました。」
 
 
 この世には人知のしれないものが『ある』。
 霊といわれるものが。化物といわれるものが。魑魅魍魎といわれるものが。悪魔といわれるものが。神と呼ばれるものが。
 また魔法といわれるものが、魔法としか思えないほど進んだ科学が。
 
  それは確かに『ある』のだ。
 「それら」は人間の前に殆ど現れない。だが人間に「彼ら」が牙むいた時、人間に太刀打ちできる術はない。
 だが、「それら」を「狩る」事を目的とした「者」もまた、確かに『いる』のだ。

 その事知る者は、彼等を尊敬と畏怖をこめて「狩人」と呼ぶ。

 「狩人」達の戦いは終わらない。



 <あとがき>という名の戯れ言
 
 DEKOIです。決戦最終章、− 決戦【終局】 − をお届けします。
 
 遂に終わりました。この話にて狩人「ヴァンドル」編を完結させて頂きます。
 
 ・・・なんですって? なんか変な事を言ってないかですって?
 
 わかりましたもう一度言います。この話にて狩人という作品の「ヴァンドル」編を完結させて頂きます。
 
 更にわかり易く言うならば第1部完です。ようするに第2部も考えている訳で。
 
 あーでもここまでよく書き上げたもんです。えーっと22作品。3/17に一作目が掲載されたからおよそ2ヶ月で22作品書いたという訳で。・・・・ちょっと異常かなぁ??
 
 皆様この駄文作家の作品をお読み下さいましてありがとうございます。一応の完結を締めくくれましたのも皆様のおかげでございます。本当にありがとうございました。
 
 あ、さて。実はここでちょっと変な事をさせて頂きます。名づけて
 
 

〜〜〜〜 DEKOIの今後はどうしたらいいでしょうかアンケート 〜〜〜〜

 
 ハイ。今後私はどんな事をしたらいいか皆様に聞いてみたいのでアンケートを取らせて頂きます。
 
 以下の項目から選んで下さいませ。
 
 
 1:「狩人」第2部(旧ver)
 この場合は第1部のキャラが新たに活躍する話です。この場合だとあの三角関係の結論やあまり活躍しなかったキャラが主役になったりするお話が中心になります。
 
 2:「狩人」第2部(新ver)
 この場合は第1部のキャラの他に他のキャラが活躍する話になる予定です。新たなキャラと第1部のキャラの混合して戦う話が中心になる予定です。
 
 3:完全な新作
 「狩人」の世界と少し関わりあいますが、「狩人」とは全く別の物語です。殺伐とした「狩人」と違ってホンワカとした作品に・・・なるといいなあ(遠い目)。
 
 4:1.2.3全部
 『死ね』っていってませんか?
 
 5:才能がないから断筆しろ
 いい機会かも・・・・(ォィ)。
 
 6:その他
 その他にご意見がございましたらお書き下さい。
 
 
 上記を選択して感想提示版に記述して下さい。それを参考に今後の活動を決めていこうと思います。
 
 とりあえず、「狩人」の短編を2本ほどあげてから色々考えようと思います。
 
 それでは皆様、「狩人」をお読み下さいましてありがとうございました。
 
 またこのような挨拶ができますように切に願いつつ、筆を置かせて頂きます。それでは皆さん、またお会いしましょう。
 
 by DEKOI

第一部完結記念ボーナストラックはこちら


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