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狩人 - 決戦【中編−上】 -
作:DEKOI

 

<<4:バイザ>>
 
 階段を降り続けてから10分が経過した。まだ先が見えない。
 先頭を走っているのは何故か佳枝だ。彼女は必死になって階段を降りていた。
 階段の上の方からはさっきから大きな音がしていた。だがもう遠くなってしまった為かもう音は聞こえない。
 1秒でも早く目的を達成させてミランダの加勢に行きたい。佳枝はそう思いながら階段を降り続けていた。
 そうしている時に、唐突にバイザが声をあげた。
「1つ、言っておきたい事があるんだけど、いいかしら。」
 全員の目がバイザに向かう。その間も彼等は駆け降り続けていた。
 バイザは口が本来あるところに手をやると、まるで咳き込むような真似をした。そして皆の方を見る。
「私達の最終目的はわかっているわよね?」
「この先にいると思われるヴァンドルを探し出して、七王召喚の儀式を止めるんですよね。」
 クロードがバイザの質問に答えた。バイザはそれを聞いて深く頷いた。
「恐らく、ヴァンドルって奴はこの地下施設の一番奥まった所にいると思うわ。」
「まぁ、悪人と一番触れて欲しく無い物は一番奥に隠すのが常套手段ですからね。」
 ミーナが軽口で答える。
「そこに行き着くまでの間に当然のように障害がかかってくると思うわ。特に前、蘇芳が剣と契約を行う時に私とクロードと戦った『黄のランラ』とか名乗っていた自分の意志で動くリビング・アーマーがいたわ。そいつは『アガルガン親衛隊』とか言っていたから、恐らく、そういったものがあと何体かいると推測できるわ。」
「そいつは強かったの?」
 タルがバイザに質問する。バイザは頷いた。
「瞬間移動能力を持っていたわ。不意打ちを食らったからとはいえ、私とクロードでは勝てなかったわね。恐らくは残りの奴も同レベルだと思うわ。」
 気まずい沈黙が辺りを包む。階段を降りる足音だけが響き渡る。
 ちなみにランラは剣と契約を果たした蘇芳の手によって身体を両断され、作成者であるヴァンドル本人によって壊されているのだが、彼等には知りようがない。
「それを踏まえたうえで言うわ。私達の目的はヴァンドルを探し出し、倒す事。それもすでに儀式が始まっている事からして一刻も早く倒す必要があると思うの。だからもし親衛隊が襲ってきたら、誰かが盾になって、他の人を先に進めるようにして欲しいの。」
「それはすなわち、その人に捨て石になれ、て言っているんですか?」
 蘇芳がバイザに非難するように問い詰める。だがバイザはキッパリと頷いた。
「そうよ、できれば蘇芳かエッジ、最低どっちか1人でもヴァンドルの元まで送り届けれれば上出来ね。他の人達はあえて、その為の捨て石になって欲しいの。」
「そんな事・・・」
「わかりました。」
 蘇芳が言おうとした事を、クロードは塞いだ。真っ直ぐにバイザを見つめている。
「蘇芳さんか、エッジさんをヴァンドルの元まで送り届けるんですね。その為なら私は捨て石役を引き受けます。」
 クロードはきっぱりと言いきった。その顔には強い決意が見て取れる。
 タルも頷いた。ミーナも同様に。そして佳枝も。
 頷いた者達の顔には全員強い意志が見えた。
 佳枝はチラリと上を向いた。そして軽く笑う。
「ミランダだって、私達の為に捨て石役を引き受けているんですからね。私だって、負けてられませんよ。」
 蘇芳はエッジの方を見た。エッジは蘇芳の方を見ると軽く頷いた。
 すこしの間悲しそうな顔をしたが、蘇芳は顔を上げると強く頷いた。
「そして、どうやら第一の捨て石が必要になりそうね。」
 バイザはそう呟くと、足を止めた。皆も足を止める。
 階段の下の方から足音が聞こえてくる。そして鉄と鉄がふれあう音も。
 現われたのはオレンジ色の鉄製と思われる鎧だった。全体的に線が細く、ひょろ長い。顔の箇所に目と鼻がくっついている。オレンジ色の細身の男性像のように見えなくもない。
 バイザは一歩他の者よりも下に降りた。鎧と対峙する。
「アガルガン親衛隊ね。」
「左様。我が名はアガルガン親衛隊の一騎、橙のボクボ。我が主、ヴァンドル様より汝等の相手をする事を仰せつかった。」
 バイザは翼をわずかに広げた。尻尾がピンと上を向く。両手に紫色の光が宿る。
「こいつの相手は私がするわ。他の人達は先に行って。」
「汝だけで我を止めれると思っているのか?」
「やってみなくちゃわからないでしょ?」
「確かに・・・・。ならば参るぞ!」
 次の瞬間にはボクボはバイザの右側に現われた。バイザは右手を大きく振るう。だがボクボは瞬時にその場からかき消えると天井を蹴ってバイザの背後を取る。
 ボクボの手刀がバイザを貫こうとする。だがバイザは翼を大きく広げてその攻撃を受ける前にボクボの身体を跳ね飛ばす。
 ボクボはすぐさま体勢を整えると凄まじいスピードでバイザに接近する。バイザもそれに合せてカウンターパンチを放つ。
 両者の攻撃が同時に当った。バイザは大きく吹っ飛び、壁に激突する。ボクボは吹っ飛びはしなかったが、大きくふらつく。
「く・・・精神を直接破壊する攻撃か。なかなかこたえるな。」
「あんたの能力は高速移動って訳ね。ある意味瞬間移動よりもやっかいかもね。」
 バイザとボクボは体勢を整えるとお互いに向き合い、構える。
「先程は失礼した、汝を戦士と認めよう。」
「あんたこそやるね、ボクボ。・・・・皆、ここは任せて先に行って。」
 エッジは頷くと階段の下に向けて走り出した。他の者もそれにつづく。
 足音はどんどん小さくなっていった。そしてやがて聞こえなくなる。
「どうやら行ったようだな・・・。元七王の側近であったといわれている魔族バイザ。汝を全力を持って倒させてもらおう。」
「アガルガン親衛隊の一騎、橙のボクボ。・・・・アンタを『狩る』。」
 赤と橙が交差した。
 
 
<<5:ミーナ=ガトルズ>>
 
 長い長い階段も、やっと終わりが見えてきた。恐らく20分は降り続けていた。
 階段の先はどうやらそこそこの広さを持った広場になっているようだ。
 そこにお約束のように待ち構えている物が一体あった。
 緑色の大きな甲冑だ。高さは3m近くあるのではないだろうか。横幅も2m近くある。
 腕の太さは大の男の腰よりも太いのではないのだろうか。
 身体のバランスは妙で、足がやたらと短くて腕が長い。なんとなくゴリラを連想させる。
 そして甲冑の両手は巨大な鎖でつながれている直径1m以上はありそうな鉄の玉になっている。
「来た、俺、アガルガン、親衛隊、一騎、緑、ウロウ。」
 緑色の甲冑はたどたどしい口調で名乗った。あんまり頭が良くなさそうな感じがしてくる。
「俺、お前達、戦う。いくぞ。」
 ウロウと名乗った甲冑は左腕を振り上げた。鉄球が音を立てながら空を舞い、蘇芳達めがけて凄まじい勢いで飛んでいく。
 蘇芳達は思い思いに跳んで鉄球を躱した。鉄球は壁にめり込み、大穴を作り出す。
 ウロウは鉄球を引き戻すと、今度はミーナめがけて右手の鉄球を投げた。
 ミーナは素早く鉄球を避けた。そして背負っていたポール・アックスを手に持つと鉄球につながっている鎖めがけて力いっぱいアックスを振り下ろした。
 鉄と鉄が激しくぶつかりあう音が響く。鎖にはわずかに傷がついたようだが切断するにはいたらなかった。
 その間にウロウは左手の鉄球をミーナめがけて投げつけた。ミーナもそれに気付いて急いで身体を倒れ込むようにして鉄球攻撃を避ける。
 壁に再度大穴ができる。ミーナが身体を起こしている隙にウロウは両手の鉄球を引き戻していた。
 ウロウは右肩をミーナに向けるといきなり突進した。そのスピードは外見から想像できないほど素早い。
「おどろおぉぉぉぉぉ!?」
 変な悲鳴をあげながらもミーナは横っ跳びをしてウロウの突進を間一髪で避けた。
 ウロウの右半身が壁に埋まる。瓦礫が辺りに撒き散らされる。
 ウロウが身体を壁からひっぺがえしている隙にミーナも体勢を立て直した。
 ミーナとウロウが対峙する。お互いに睨み合う形になる。
「お前、なか、なか、できる。」
「あんたもね。想像しているよりも強いようだね。」
 ミーナはふてぶてしく笑いながらウロウを挑発した。
 ミーナは気付いていた。ウロウがミーナを攻撃している隙にさっさと他の者達が先に進んだ事に。
 ちょっと薄情なんでないんかい、と心の片隅で思ったがその考えはとりあえず無視した。
『私の役目はこいつを引き受けるって事だね。いいじゃん、やってやろうじゃないの。』
 ミーナはポール・アックスを握っている手に力をこめた。どの方向にも素早く動けるように爪先だちになり、足のスタンスを広げた。
 ウロウの両腕が持ち上がる。そして鉄球が放たれた。
 ミーナはその攻撃を避けるとウロウめがけて突撃した。



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