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悪魔を呼んでみよう! 2(序章)
作:DEKOI

 我輩は悪魔である。名前は立派についている。
 我輩の名前はベルゼブル、又はベルゼビュートである。名前の意味は「蠅の王」である。
 現在悪魔をしている我輩だが、昔はシリア人やペリシア人の間では蠅を殺す神として崇拝されていたものだ。
 ところがイエスの教えってうモノが入ったせいで我輩は蠅の姿をした邪神として軽蔑されるようになってしまったのだ。えらい迷惑である。
 そんな我輩は魔神達の君主の1人として地獄では敬われている。ようするに結構えらいのだ。
 『失楽園』という作品では我輩はサタン殿の次の権力と力を持っていると言われており、悪魔学者の間では地獄の最高君主であるとされているが、実際の我輩の立場は地獄の一仕事場の現場監督である。
 そこ、ずっこけるでない。一仕事場と言ったが、貴行等が住む人間の世界でいうならば会社の社長もしくは会長といった立場なのだ。しかも結構おおきな会社の。
 だから我輩はそれなりにえらいのが分かってもらえただろうか。だからそこ、疑いの目で我輩を見るな。
 
 ちょっとここで専門的なお話をしよう。舞台設定とも言うがな。
 地獄とは悪徳とか罪とか業とか言われているようするに「悪いもの」を背負ってしまった人間達の魂を浄化する場所なのだ。そして我輩たち悪魔とはその浄化のお手伝いをする存在なのだ。だから決して邪悪な存在ではない。そこの所を理解して欲しい。
 そして我輩たち悪魔はときおり人間が住む世界・・・我輩は『人間界』と呼んでおるが・・・に魔法陣を介して呼びだされて願いを叶える時がある。
 もちろん願いをかなえる代価はもらうがな。いくらなんでもタダで願いを叶えてもらおうなんて都合が言いことなんて、貴行ら人間の間でもありえないだろう?等価の代価を払ってこそ褒賞はもらえるのだ。それが世の理だろう。
 そして我輩たち悪魔を呼び出す利点は通常では叶えられない事も実現可能にするからである。本来なら凄まじい代価を払って実現可能な事もちょっと魂を売れば簡単お手軽に願いが叶うのだ。これも我輩ら悪魔が人間よりも高次の存在だからできるのである。ちっとは尊敬の目で我輩らを見てくれるとありがたい。
 まあ問題点をあげると、願いがかなうかどうかは悪魔の実力次第であるのだがな。世界制服の夢をかなえてもらいたくても、魔道士達の使い魔になる程度の下っぱではどだい無理ってものである。そんな現実離れした願い事をかなえるには我輩のように因果律に干渉できるくらいの実力の持ち主でないとダメダメなのだ。
 じゃあ我輩クラスの悪魔を呼びだせばどんな願いも叶うだろうだろうって?ところが世の中はそう上手くいかないものだ。そのような事をされたら人間界の秩序や世界原理といったものが根底からくつがえされてしまう。我らこそは世界の秩序を守る者であると豪語している神々がそのような事されたら困るとクレームをつけてきているのだ。それにそんなに沢山よばれたら我輩も疲れるし。その他にも諸氏事情色々あるが、力が強い悪魔はそう簡単には呼びだせないようになっていたのだ、つい最近までは。
 貴兄達は『悪魔召喚プログラム』というのをご存知であろうか?知らない人はインターネットで調べてみるといい。必ず検索できるはずだ。
 この『悪魔召喚プログラム』略して『アクぷろ』は悪魔召喚の儀式の際に本来いろいろと面倒な手続きをすべて取っ払って誰でも自由に悪魔を召喚できるようにする画期的な物なのだ。
 更に召還者の願いの強さに応じて呼びだす悪魔を自動的に選択してくれるサービス機能付きなのだ。だから例えば悪魔ってどんなのだろう、見てみたいな程度の軽い願いなら最下級の悪魔が、死んだ家族を蘇らせてくれといった風な己の命を投げ出しても叶えたい願いなら我輩のような超強力な悪魔が呼びだされるのだ。
 まあ現在の悪魔召還事情については少しはご理解していただいたと思う。そして我輩は今現在、召喚されて人間界に来ていたりする訳であったりするのだ。
 
 我輩を呼びだしたのは穴山周三(あなやましゅうぞう)という名の20歳前半の男だ。我輩を呼びだした直後は驚きあわてふためきまくっていた。まあしょうがないかもしれんけどな。我輩の今の姿は全長2mを超すでっかい蠅なんだし。どーでもいいがここは1DKアパートの一室のようなんだが狭いなぁ、もうちっと広いところで召喚しろよ。
 そんな穴山であったが今では落ち着きを取り戻している。
「そんで?貴兄は何をかなえてもらいたんじゃ?」
 我輩はぶっきらぼうな感じで穴山に問いかけた。正直、現場の指示の最中に呼びだされたから内心腹がたっているんだが、まあ一応『召喚者には礼儀を払うべし』っていう暗黙の了解があるから体裁は整えておく。
「ふっ、よくぞ聞いてくれた」
 我輩の問いかけに穴山はふんぞり返りながら立ち上がった。そしてつかつかと横開け式の押入れに歩いていくと力一杯ドアを引きあけた。
 するとドドドドドドドドドドドッと漫画の一コマなら擬音が添えられるんじゃないかと思うくらいの勢いで何かが大量に押入れからあふれ出てきた。
 何じゃこりゃ?我輩はまじまじと思わず見つめるとそれは薄い布でできたもの・・・・ってちょっと待て、これ「ぱんてい」じゃないか?しかもその向こうに転がっているのは「ぶらじゃぁ」だしあっちにあるのは「すとっきんぐ」他にも「があたぁ」やらなにやら。
 押入れより雪崩れ出てきた女性用下着は床を文字通り埋め尽くしておる。ある意味お腹いっぱいの光景・・・って言うのか?何でこんなにたくさんの女物の下着がこんな狭いアパートの一室にあるんじゃい。
 そんな事を我輩が聞いてみると、穴山はさも当然のようにえらっそうに答えた。
「ふっ。これは俺がこの数年の間に秘密裏にゲットしてきた汗と涙の結晶なのだ!」
 ようするに数年間も下着ドロをしているというのだな、このバカチン。
 この時点で我輩の気持ちは思いっきりダウナー状態に陥っているのだがそんな事には気づかずに穴山は言葉を続けた。
「俺は日本中の女の下着を得る為に日夜戦い続けた!だがそんな俺に大きな障害が立ちはだかった!!」
 ああ、そうかい。そりゃ喜ばしいね。
「その名は私立笹木浜女学園!全寮制が引かれ、生徒は勿論、教師も女、清掃員も更には警備員までも女というまさしく女の園なのだ!」
 穴山はグッと拳を握りしめて何かに酔った感じで天井を見上げ始めた。
 対して我輩は人間の姿だったら鼻くそほじって指でとばしてるんじゃないかなというくらいやる気&聞く気0状態になっている。
「俺は幾度となく笹木浜に潜入を試みた!だが難攻不落なあの砦は俺を阻み続けたのだ!!そんなある日、俺は何気なく見ていたネットで『悪魔召喚プログラム』の存在に気づいたのだ!!!」
 ・・・・・オイ、ちょっと待て。もしや、
「それを見て俺は閃いた!悪魔ならあの学園に潜入する願いを叶えてくれるだろうと!と、いう訳であの学園に忍び込む為の能力を俺にくれ!」
 それを聞いて我輩はおもわずズッコケた。
 
 な、なんてあほらしい願い事なんだ。我輩はこれでも数千年の間に幾度か召喚されて願いを聞いてきたがここまでおマヌケなのは聞いたことないぞ。
 つうかこんな願いをいう奴に召喚される我輩っていったい・・・・。正直へこむなぁ。
 まあ『あくプロ』っていうのは召喚者の願いの強さに応じて呼びだす悪魔を選択するそうだから、この男の願いの強さは並大抵のものではないのだろうが、なんだかなぁ。
「さあ俺に素敵な能力をGive me!!」
 うわ、叶えたくねぇ。我輩、自分で言うのもなんだが結構な量の魔力を持っているが、こんな奴の為に使う気はさらさらにないぞ。心底もったいないわい。
 でも叶えないと悪魔の信用問題に関わるからなあ。叶えないといけないのかぶつぶつ・・・・
 ちなみに、既にこの男は下着ドロという窃盗で充分すぎるほど罪を被っている。ほっといても地獄行きは確定だ。自分のやってる事は崇高な事と思っているようだが、他人さまの物に手をつけている時点で問答無用で悪い事だ。我輩の呟きを見ている貴兄らもそんな事はしないように。我輩はただでさえ忙しいんだから。
 どうでもいい事は・・・いやこいつの死後の担当が我輩になったらどうでもよくないが・・・まあその事はこっちに置いておいて。さてどう叶えようか。
 はっきし言ってこんな奴に貴重な魔力を使いたくない。でも願いは叶えなくちゃいけない。なんかいい手はないかなぁ。
 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あ、そういえば。知り合いが天使の作った物を真似て何か作ったってたな。たしかあの用途は。。。。ふむ、使えるかもしれん。
 たしか試作品をもらっていたな、どれ、地獄にある我輩の家から取り寄せよう。この程度のことなら魔力もいらんし。
「では貴兄にこれをやろう。」
 我輩は地獄から取り寄せた物を穴山に手渡した。でっかい蠅が人に物を手渡しする光景は端から見ると変かも知れんが気にしてはいけない。
「???? こりゃファスナーの取っ手じゃないか??」
 穴山は手渡された物を見て素っ頓狂な声をあげおった。まあその通りなんだが。
 疑いの目で我輩を穴山は見ておる。まあ待て、これから使用方法を教えるから。
「それは地獄で作った魔法のアイテムでな。人の背中にそれを付けると背骨に沿ってファスナーができるのだ。そうなった状態でファスナーを開けて中に入り込むことでその人をのっとる事ができるのだ。」
「どういう事だ?」
 我輩の言いたい事が分からんのかこの男は。
「すなわちだ。警備員か清掃員かの背中にそのファスナーの取っ手をつけてその人の身体をのっとれば、お前さんは学園の中を入りたい放題になるじゃないか」
「おお、なるほど!」
 穴山は納得したようだ。願いの内容は『女学園に潜入する手段をよこせ』だからこの手段で間違ってないはずだ。誰だ「悪魔的な姑息な手段だね」って言ったのは。正直のところ我輩もちょっと思っちゃったぞ。
 こうして我輩は穴山の願いをかなえると報酬の魂をもらって地獄に帰ったのであった。
 あの男がこれから渡したアイテムをどのように使おうと我輩の知ったこっちゃないが、できればあの男の死後の担当が我輩でないことだけを切に願いたいな。
 うん?だったら悪事に手を貸さなきゃいいだろうって?しょうがないじゃん、召喚された身では召喚主の命令は聞くことが大前提なんだから。雇用者と雇い主との関係は絶対なのと同じだな。
 第一からして他人の悪事なんて、悪魔が気にするわけないだろう?

(次章に続く)


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