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悪魔を呼んでみよう!
作:Datta 原案:DEKOI

 
 「・・・・と、言うわけで今後の召喚後の行動には今までよりも真剣に対応するように。」
 
 我は部下共に向かってこれからについての心構えを説いた。
 おっと失礼。我は悪魔である。名前は・・・・・えーっと、色々あるんだけど確か有名なのが1個あった気が。
 なんだっけ?う〜む、こう喉元まででかかっているのに出て来ないのは何とももやもやとした物を胸に感じさせて、あ、思い出した。
 我の名前はアモンである。はっきり言っておくが人間と合体して意識乗っ取られたり、「デビール」という掛け声とともに強大化したり、頭に羽根を生やした両性具有の堕天使に愛されたり、デビルウイングが超音波だったりデビルビームが超音波だったり、悪魔の力を手に入れた正義のヒーローだったりとかはしないので念の為。
 第一からして我のいつも普通にとっている姿は大蛇の尾をもつ狼なんだがなぁ。人間に近い姿を取る時も頭がカラスなのに。何で頭に黒い尖った翼を生やしてさらに黒い翼を背中から生やしている姿だと思われてんだろう?不思議だなぁ。まあ、どうでもいいか。人間が我の姿の事をどう思ってようが。
 あ、あと補足しておくけど我はソロモン王という男が根性いれて召喚したバエル殿やベリアル殿を筆頭にした72体の悪魔の1体の方なんで。エジプトって国でえらい昔に崇められてたアモン、別名アメンラーとは別物だからね。一応あっちは神でこっちは悪魔なんだから。いっしょにして欲しくないです、お互いにとっても。
 
 我は悪魔だっつうのはさっき言ったよね。悪魔ってのは人間達が「地獄」だの「魔界」だの言う所に住んでる者の事だ。面倒だからこの場所の言い方を「地獄」で統一させてもらおう。
 で、この地獄って言う所には生前に悪いことをした人間の魂がくる場所でもある。ちなみに生前に善いことしたからって天国いける訳ではない。速やかに転生できたり神や天使って存在に「昇神」できるだけである。まぁ善いことしておいて損は無いはずだから生きてるうちに善行にはげんどきや。
 じゃあ悪いことをしていたらどうなっちゃうかと言うと前述通りここ地獄に堕ちてきて自分の魂にへばり付いていしまっている悪い物を取り除く、すなわち魂の浄化をする為に修行をつまなくてはならない。そうしないと、何時までたっても転生できないから。
 ちなみに悪い物と言うのは人間達が言う所の「業(カルマ)」とか「罪」とか「悪徳」とか「邪気」とかまあそんな物だ。ちなみに我は「罪」と呼んでおる。
 更にちなみに言うなら地獄に西洋東洋宗教の垣根はない。ごっちゃまぜの混沌とした世界だと思っていい。第一さあ、我の家の隣に住んでるの中国神話で有名な蚩尤(しゆう)なんだよ?あんまり複雑に考えると貴公達の頭がパニクると思うんで止めときなさい。
 えっと、話が脱線したね。話を戻すけど悪魔ってぇのは地獄に堕ちて来た人間の魂の浄化の手助けをするのが本来の仕事だったりする。一番手っ取り早い浄化方法が肉体労働で我らがするのが現場監督でさぼってたりすると体育会系のノリで手え出したりするから『地獄で悪魔は人間を拷問している』って言われてるそうだけど、そんな事はないぞぉ。
 でも、人間の殆どがこの仕事について知らない。どちらかと言えば魔方陣から呼び出されて願いをかなえるって方がよく知っているのではないかな。こっちの方が我々にとってはアルバイトに当たるんだけどね。
 
 
 さてここで願い事をかなえるという事について説明しておこう。神も悪魔も願い事をかなえるという行為その物については同じなのだ。だけどやり方がちょっと違う。
 神は人間達の信仰心等といった祈りの力を集めて奇跡という名を借りて人間達の願い事をかなえる。この為に人間達は特に何か代償を払うことなく-----いや、既に祈りって力を神に捧げているんだけどね、お金とか肉体労働といった物理的な代償を負うことなく願いをかなえて貰える訳だ。ただしあくまで「奇跡」って名を借りての物だから融通が利かない。別の言い方すると本心から望んだ物とはちょっと違う形でかなえられてしまう事がある。更に願いをかなえる神がいくら強い力を持っていても祈りの力が足りなくちゃ何にもできないのが実情だ。だから人間の中には「お百度参り」とか「水ごり」等して自分を追い詰めて祈りを捧げる奴がいるらしいけど、はっきしいってあんま意味ないんだよね、あれ。確かに極限状態でだす祈りのほうが力が強いけど、大体の神はその祈りの力で弱ったその人の体を治そうとするそうだし。本末転倒になる可能性、高いよ。やるんだったらネチネチと毎日流れ星に願いを言うような感じでお祈りした方が効果的だそうだよ。知り合いの死神がそう言ってたし。
 
 対して悪魔は魔方陣とかから呼び出されて、俗に言えば君達人間がいる世界に「召喚」されてから願い事をかなえる。具体的に言えば、まず人間が悪魔を召喚する。召喚された悪魔は人間のかなえて貰いたい願いを聞き、それが自分の力で解決できる問題だと判断した後、望みをかなえる代りに人間の方に見返りを要求する。そして相違の合意の元、契約を結んでから願い事をかなえるのだ。直接要望を言ってもらえるから神よりも希望通りの内容で願い事をかなえる事ができるのが特徴だと言っていいだろう。更に悪魔は願い事をかなえる際に悪魔本人が持つ魔力・・・・と言ってもよくわからないか、まぁとにかく悪魔本人の力を使ってが願い事をかなえるんだ。だから神と違って『祈りの力が足りないから無理だぴょーん』とか言う事はほとんどない。中には召喚された悪魔が力不足で願い事をかなえられないケースがあるそうだけどその時は大体上司がでてきて何とかするから問題はないだろうね。
 
 さて、今までの説明を聞けば何となく分かると思うだろうけれど、我々悪魔にとって願い事をかなえると言う事はいわば「労働」である。だからもちろん代価として「報酬」を貰うのがスジって物だろう。その「報酬」こそ、お分かりの通り「魂」である。正確に言うならば「寿命」なんだけどね。本来人間には我々悪魔が言う所の「限界生存年齢」という無事故無病気五体満足心身健康状態でいたならば最大ここまで生きていけるよ、って言う魂の量が生まれた時点で予め各自持っている。我々悪魔は願い事をかなえる代償として魂をちょっと貰うことになっている。え、何で魂をだって?うーん、そう言っても一応神々とそうしていいよって契約結んでるし、人間の魂は我々の魔力を高める効果持ってるし・・・・まぁ細かい事は気にしないで欲しい。ちなみに「魂」を取るって言ってもはっきし言ってあんまり取らないぞ。過去数千年の間でも確か最大で5年取ったのが最大の大口だったそうだし。確かチンギなんたらとかいう奴だったかな、その人間って。
 ところがだ、大した量じゃないにも関わらず、どうも「魂を貰う」という語感が悪いのか頼んでくる願い事が邪悪の象徴として見られている筈の悪魔たる我々ですら耳を塞ぎたくなるような酷い内容ばっかり。誰かを呪え殺せあいつが不幸になれ戦争を起こして俺が武器を売ってゲハゲハetc、etc。まぁ召喚された身なんだからそんな願い事でもかなえるけどさあ、そんな事してると罪をガンガン背負って死後には地獄に急降下するのが確定するのくらい分からないのかね?「生きてるうちに好きなことをやるんだぁ」と言って散々悪事を働いた奴に限って死んでからいざ地獄に来ると「俺は何で生きてた時にあんな事をしたんだ」って後悔しまくるんだもんなぁ。人間ってのはどうもよく分からん。
 
 まあ、とにもかくにも。実は悪魔に願い事を頼めば結構お手軽かつ安価でかなえて貰えるのが分かったと思う。でもやっぱちょっとお手軽すぎるんでないかいと神の方からクレームが来たんで一応召喚の儀式を行う際には様々な制約をおいて置いてそう簡単には呼び出せないようにしてある。特に我のように高位の悪魔だとある程度の因果律にも手出しできちゃうから、我クラス以上の悪魔の召喚に関する事にはもうガッチガチに制限をかけまくってそう簡単に呼び出させないようにしている・・・・・いや、いたんだけどね。
 
 「悪魔召喚プログラム」
 
 我がその名前を聞いたときは何なんだそりゃ、と思ったもんさ。ところが部下から実情を聞いてみるとマジで顎が外れそうなほどびっくりしてしまったよ。
 この「悪魔召喚プログラム」やら、「ぱそこん」とやらの中で起動して願い事を入力すると、内容を打ち込んだ人物の思いの力に応じた力を持った悪魔が召喚する事ができる代物なんだそうだ。すなわち思いが強ければ我のような高位の悪魔はもちろん、アーリマン様やルシフェル様といった魔王クラスの悪魔も簡単に召喚できてしまうそうだ。実際、蝿王ベルゼブブ様がその「悪魔召喚プログラム」を使うことで召喚された事あったそうだし。一応あの方、位でいえば2番目くらいにえらいんだぞ?
 しかもこの「悪魔召喚プログラム」、「いんたーねっと」という場所から無料で簡単に「だうんろーど」できるらしい。何のことだが良く分からないが、ようするに条件さえそろえば赤ん坊だって「悪魔召喚プログラム」が入手できるそうなのだ。誰だそんな性質の悪い物を配っている奴は。
 
 と、いう訳で誰にでもお手軽に悪魔が召喚できる時代が到来してしまった訳で・・・・いいのかねぇ、そんな時代の到来。この事によって悪魔の上層部は大騒ぎになってしまった。だって、自分達が簡単に召喚されるようじゃ人間の世界に大きな影響を引き起こす事件の当事者になりかねないからだ。そんな面倒なこと、誰だって嫌だよね。更に悪いことに口やかましい神々もこの事についてクレームをつけてきた。クレームつけてる暇でもあるんだったらとっとと託宣って形で「悪魔召喚プログラム」を取り締まるように言えよな。人間の世界に対する影響力ならあんさん等の方が強いだろうが。
 そういえばこのところ「まんがか」や「らいたあ」という職業の者達から「締め切りに間に合わないから手伝ってください」とか「ネタをください」とかいう願いが殺到しているそうだが何のことやら。こういった類の輩に召喚を受けた者は大概精も根も尽き果てたようになるそうだから余程の大事なのだろう。
 そういえばほんの少し前に親交関係が深くて同じ爵位を持つバルバトスが召喚されて「お化け屋敷の出し物として手伝ってください」って言われたそうだけどこれも何の事やら。何か帰ってきたら心底情けなそうな顔してたなぁ。
 結局今のところは強力な力を持った悪魔の召喚は数件を除いては免れているので、大きな影響はでていない。けれども何か本気でどうしようもなくくっだらない願いが多いのも確かなそうなんで、人間に無意味な召喚を自粛するよう訴えようという事が先日上層部で決定した。
 具体的には『悪魔と契約すると魂の一部が奪われます』、『悪魔と契約すると寿命が縮まります』、『目的を自分の力で達成する事こそ真の達成感が得られる物です』、『他力本願はやめて自ら努力するよう心がけましょう』等etc、etc。こんな事を召喚を受けた時点で人間に説明して契約を結ばせないようにしようという事になった訳だ。邪悪の根源たる『悪魔』が言う台詞じゃないよねぇ。でもしょうがないよ、このままじゃ地獄での本業に支障がでかねないしね。
 
 我は一応40の軍団を率いており、位でいえば侯爵にあたる悪魔である。ぶっちゃげ結構えらいのだ。よってそれなりの数の部下もいる訳で。でも下の奴らに限って勝手なことするし上も結構無茶なこと言うし・・・・・人間の世界でいう「ちゅうかんかんりしょく」って役職にあたる存在らしい、我は。
 まあともかく、冒頭の話にやっと戻るが我は数いる部下の中でも頭をはってる奴等を集めて今後の召喚を受けた後の対応について説明し終えた。どうやら結構無茶な願いを迫ってくる人間も多いらしくこの説明に対しては部下達も納得しているようだ。
 我は会合を解散させるとモアモアの実をすり潰してお湯でこし出した物-----人間の世界では確か「こーひー」と言うらしいが-----を口に含んだ。口内に苦い味が広がり、それが我の緊張した気持ちを何故か解きほぐす。我は床に腹ばいになりながら今後の事について思案し始めた。悪魔と契約した奴は大概地獄に堕ちてしまう。これは契約をする際に望む願い事が自分勝手で一人よがりで他人の迷惑考えない物の為だ。結果罪を背負ってしまって地獄に堕ちるキッカケになってしまうのだ。
 そして現在、悪魔との契約が容易になってしまった為、地獄にやってくる人間が加速的に増えるだろう。そして我々悪魔による補助があるとはいえ魂の浄化には時間がかかる。結果として地獄を出て行く人数より入ってくる人数が増えればこのままでは地獄が満杯になってしまう恐れがでてくるだろう。そうなると神々からクレームが山のように飛んでくるだろうし我々悪魔の仕事も洒落にならないほど忙しくなるだろうからはっきりいって面白い事態にはどう転んでもなりようがないだろう。
 そのような事態を避けるには・・・・我々悪魔としても人間の召喚を止めるように働きかけるだけでなく、願いをかなえる際に人間が罪を被らないようにある程度考慮したかなえ方をするべきではなかろうか?
 ふむ、悪い考えではあるまい。ここは一つ部下達に言ってみて実践さしてみおおおおおおぉぉ?我の周りに光がまとわりだしたぞ?何なんだこりは?
 ・・・・あ、そうか。久しく受けていなかったから忘れていたが、我が召喚されようとしているのか。こりゃ丁度いいや。今思いついたことを実践してみ〜〜よ〜〜う〜〜〜。
 
 
 ふと気がつくと我はさっきとは全然違う場所にいた。「じゃぱん」とういう国の住居の間取りで言う所の6畳程の大きさの部屋だ。あんまり広くは無いな。夜中なのか真っ暗だ。我は首をぐるりとめぐらしてみた。前召喚された時は確かやたらと広い石つくりの広間の床にでっけえ魔方陣描いて、我自身ちっとも欲しくも無いのみ生贄として若い娘がどがどが殺されておったがどうやらそういったものはないようだ。その代わりなのか壁になんか露出の激しい服を着た若い娘が笑いながらへばりついておるが疲れないのかね?机とおぼしき物の上に光る数字が箱の中で浮かんでる。およそ300年ほど召喚されていなかったがどうやら世界観が大きく変わってるようだな。我ほど明晰な頭の持ち主ならこの程度の物を見ただけでもすぐ解るってものだ。
 我は首を正面に戻した。我の視線の先には少年が変な鉄板を持って我の方を見ている。恐らくあの鉄板が「ぱそこん」という物なのだろう。と、いう事はあの少年が我の召喚者か。
 年齢は12歳から14歳の間くらい・・・面倒だな、ちょっと少年の頭の中を探らせて貰おう。
 ふむ、名前は「井上 順司」、「じゃぱにぃず」か。年齢は16歳。見た目よりも年食ってるな。どうでもいいけど気弱そうな少年だなぁ。まぁ「じゃぱにぃず」は年がわかり辛いそうだけどね。線は決して細くはないんだけどなんだが表情が自信がなさげっていうかなんつうか。サド属性の人間が見たら確実に苛めてきそうだな。
 おっと、そんな事はどうでもいいか。とりあえずこの少年を説得して我と契約を結ばせなうように・・・・普通は逆だよなぁ。
 コホン。我は少年をジット見つめると声高に喋りだした。
 
 「汝が我を召喚した者か?」
 
 そんな事は我自身がよくわかっているんだけどここは威厳を醸しだして威圧的に言うというのが我等悪魔の通説である。こうやって相手をびびらせればこっちの意見が通りやすくなるからである。んだけど、何か間違ってる気がしなくもないな。
 少年は我を怯えた目で見ながらまるで壊れたカラクリ人形のように何度も頭を縦に振った。うむ、どうやらビビっているようだな。
 
 「我の名はアモン。ソロモンなる王が召喚せし72の悪魔の1体にして、40の軍団からなる悪霊を支配する侯爵の位を持つ者。我にかかれば過去と未来に関する事、全てを聞く事ができるできよう。また友との間に険悪なる心を生じさせ、またそれを収める力も持つ者なり。」
 
 こんな力を持つせいで、我のあだ名が「覗き魔アモン」とか「雨降って地固めのアモンさん」とかだったりするんだが誰がわざわざ言ってやるかい、チクショウ。
 我は更に威圧する為に口から少量だが焔を吐いてみせた。ついでに尾っぽの大蛇を動かして威嚇させた。少年の目に宿る恐怖心が更に深くなる。びびってるびびってる。・・・・びびらせ過ぎたかな?
 
 「今汝が我を呼び出す際に用いたと思われる物の為、我等悪魔はひっきりなしで召喚されていてとても忙しい。そこで寛大にして寛容なる心を持つ我は汝に好機を与えようと思う。もし汝が我を速やかに送還する気があるのならば、汝の魂を奪うことなく立ち去るがいかがなものかな?」
 
 つうかそうしてくれ。我自身はっきし言って願いをかなえる為とはいえ他人の魂の一部を奪うってのは結構気が引けるんだから。
 ところが。我が悲痛かつ真剣そのものの心の叫びは叶えられなかった。我の「頼むからとっととお家に帰してぷりーず(意訳)」という言葉をきいた途端に少年の目から恐怖が消えたからだ。
 あー、こりゃダメだな。どうやらあっちは意地でも願いをかなえて貰いたいんだろうなぁ。そういや「悪魔召喚プログラム」って召喚者の思いが強ければ強いほど高位の悪魔を呼び出せる仕組みになってるんだったっけ。一応爵位で言えば上から2番目の侯爵の位を持っていて、その中でも5本指の実力を持つ我を呼び出したんだよね、この少年。と、いう事は我を呼び出せるくらいこの子の願いをかなえて欲しいという気持ちが強いって意味なんだよねぇ。それだけ何かにでも追い詰められているのかね?
 
 「あの、貴方は悪魔さんなんですよね?」
 
 少年は蚊の鳴くような小さな声で我に声をかけてきた。我が地獄耳だからよかったけど、そうじゃなかったら聞こえなかったかも。ちなみに「でびるいやー」だからじゃないからね。念のために。
 
 「ああ、そうだよ。我は確かに君が呼び出した悪魔だよ。第一からしてこんな姿してしゃべる生物が君の世界に普通はいないだろ?」
 
 さっきまでの威圧的な態度を崩して我はざっくばらんに少年に話しかけた。ちなみに我の今の姿は尾が大蛇になっている体長2m近い大きな黒い狼だ。そんな生物、君達見たことないだろう?そんな生物がベラベラしゃべっているのだ。もうそんな奴は悪魔以外に考えられないだろうに。
 ちなみに少年よ、悪魔に「さん」づけなんてせんでエエ。本当は違うけど君達人間の間では「悪魔は邪悪」って事に一応なっているだろう?そんな存在に「さん」付けなんて、悪魔たる我からしてもあんまりいい事だとは思えんぞ。
 
 「ところで井上君。本当の話だけど我と契約は止めた方がいいと思うのだが。君のように若い者が悪魔に魂を売ってまで願いをかなえるという安直な方法を取ると言うのは、あまり頂けないのではないのかなと思ったりなんかしたりなんてするんじゃないのかなあと年長者たる者からしてもやっぱり少し足らずたりとも思ったりなんてしたりなんかしたりして。」
 
 うーむ、何を言っているんだろう、我は。なんせ人間に正しい行動をするよう説得するなんて事、生まれてこの方やったことないからなぁ。つうか何で悪魔が清く正しい人の道を説かなくちゃならんのだ?誰だ「悪魔召喚プログラム」ってのを作った奴は、でてこーい。
 でも少年は我の何を言っているのかはよく解らなかったかもしれないけど真摯な説得に対して首を横に振った。ああ、やっぱりダメなのね。
 
 「実はどうしても何とかして欲しいことがあるんです。」
 
 ハイ、そうでしょう。じゃなかったら我クラスの悪魔がここにはおらんだろうし。
 
 「実は僕には愛児園の頃から付き合いがあるお隣に住んでいる子がいるんです。」
 
 ほう、んでもってその子が実は女の子でしかも勝ち気な子でさらに君をいじめるというベタな展開だったりしてな。はっはっはっは。
 
 「実はその子は、男勝りな子で僕をいじめるんです。」
 
 その通りだった。
 
 「それも毎日執拗に・・・・。それもただのいじめじゃなくて僕の持ち物を勝手に捨てたりとか物をぶつけたりとかといった凄く陰険な手口で・・・。もうこんな事うんざりなんです。」
 
 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・えーっと。
 それって『好きな子には照れ隠しの為にいじめてしまう』ってやつでないかい?「魔法基本構成13項目」の8番目の。たしか2番目は『天気のいい日には布団を干す』で9番目は『美形の王子は死体であっても寝てるお姫様を見たらキスをしなくてはならない』だった気が。
 我は思わず尻尾の蛇を使って頭をポリポリと掻いた。つうかどうしろと。いや、この少年が今の状況を何とかしたいってえのはもうわかっているんだけどさ。
 
 「えーっとさぁ、その虐めている子は君に気があるからそうしてるだけなんじゃないの?」
 
 「そんな事ありえませんよ!だとしたらこんな陰湿なことを毎日毎日繰り返すわけないです・・・・。」
 
 少年は手を強く握り締め、目に涙を浮かべながら全身を震わせていた。よっぽど今の状況が辛いんだろう。辛いんだろうけどさあ。
 参ったなぁ。知り合いの神とお茶した時に聞いたんだけど、「いじめ」という行為は虐めてる本人は気がついていないが、虐められている方は精神的にはかなり追い詰めれられてしまうそうだ。それこそ自ら「死」という行動を選んでしまうほどに。所詮親や教師といっても自分をいじめている奴と同じ「他人」である事には変わりはない為に、彼等「いじめられている」者は他者に対して自分の思いをどうしても内に秘めてしまう傾向に陥ってしまうんだとか。そして我を召喚した目の前の少年も同じような状況になっていると推測できる。「自分」しか判断基準が無い為に彼をいじめている女性が何故彼をいじめているのかという心理を理解する事ができないのだろう。
 まあ確かに「いじめ」という行為で「自分は君が好きなんだよ」なんて事、気づかせることなんてまずは不可能だろうけどね。大体そういった愛情表現(・・・っていうのか?)を行った結果はいじめられた方がいじめた方を嫌悪しまくって自然に破局するそうだけど・・・・・その段階に入ってるんだろうなぁ。
 いや、もちろん少年をいじめている少女が彼に好意を持っているって前提での話ではあるけど。でも「幼馴染」の「勝気な女の子」が「幼馴染」の「弱気な男の子」を「毎日」「執拗」に「かなり陰険」に「いじめている」んだろ?こりゃもう女の子が男の子に好意を持ってるに決まっているよなぁ。
 これはやっぱり、「彼女からいじめられないようにしてください」って願いをかなえるのは避けるべきだよねぇ。
 
 「ようするに幼馴染の子からいじめられるのを何とかしたいって事だよね?」
 
 「はい、そうです。」
 
 「いやぁ、でもなぁ。そういった事は親や友人に相談して自分の力で解決するようにする事が大切じゃないかなぁ。悪魔の手を借りてなんて卑怯な事はしない方がいいとぼかぁ思ったりなんかするんだが。」
 
 「わかってます、こんな事いい事じゃないって。」
 
 悪魔の前で悪魔を否定する発言すんなよ・・・・って我がそう誘導してるんだが。
 
 「でも僕には・・・僕にはどうしたらいいのかわからないんです!だから藁をもすがる気持ちで・・・・・」
 
 「いやでも、一回は親御さんと話をしたりとかはした方がいいと思うよ?こういった時は両親に頼る権利は子供は持っているんだし。」
 
 「でも2人とも共働きで殆ど家にいなくて相談したくてもできないんです。」
 
 「だったらさ・・・・」
 
 そんなこんなで2時間経過。我は「人生相談のオジサン」状態になって少年を説得し続けた。本当に悪魔なのかな我。ちょっと自信無くすぞ。
 だが少年は頑なであった。我の説得に心を開かず・・・・ってえ考えてみりゃ喋る狼に説得されるわけねぇような気がしなくもないが・・・・・まぁとにかくもかくもさっきから「女の子の魔手から助けてください」の一点張り。
 こりゃ我の方が折れるしかないかな。まあここまで真剣なんだ、願いをかなえてあげても他の者も文句は言わないだろう。
 
 「わかったわかった。では君の願いをかなえてあげるよ。で、具体的にどうして欲しいのかね?」
 
 我の願い承諾の言葉を聞いて少年の顔が始めて明るくなった。だが次の瞬間、考え込み始めた。おいおい、どんな願い事なのか考えておいてくれよ。
 
 「えっと・・・、ようするに加奈子ちゃん・・・・・あ、僕をいじめる子の事ですが・・・・・からいじめを受けないようにして欲しいんです。」
 
 うーん、実に抽象的な願い事だなぁ。これはどんな風にかなえたらいいんだろう。
 ようは加奈子という子が少年をいじめられない状況にすればよいのだ。そしてできる事ならこの「井上順司」少年が罪を背負わないように願いをかなえるのが最適なのだ。
 さて、どうすんべ。一番手っ取り早いのはこの子の家族が突然引越しする事になったとかいって、少年と少女を引き離すようにする事だ。
 ところがこの方法、実はかなり周りに影響がでまくる。親が栄転した場合はその会社の同僚に迷惑がかかる(昇進が遅くなるとか等で)事になる為結果少年に罪がふっかかってくる。逆に左遷だと親に迷惑かけたって事でやっぱり罪を背負うことになる。実家の家業を継ぐって方法も実は実家の人に何らかの不都合が発生しなくては普通そんな事にはならないだろうから、結果その人達に迷惑をかけたって事になって罪を背負う事になる。と、いう事でこの手段はできるかぎり止めた方がよいだろう。
 いじめられてる理由の十中八九はいじめている少女が少年に気があるからだろう。と、いう事は少女が少年に気が無いようにすればよいのだ。で、どうすればいいのかっていうと・・・・・。
 
 解決案1:少年に恋人がいる。(問題点)恋人役の女性の感情を強引に捻じ曲げてしまう為、その事で少年が罪を背負う。また恋人がいるからといって少女の気持ちが納まるとは限らない。・・・・・没。
 
 解決案2:少年がボーイズラブである。(問題点)いくらなんでも今の状況を変える為とはいえそんな嗜好になる事、少年が望んでるとは思えない。・・・・・没。
 
 解決案3:少年が実は半陰性で女だった。(問題点)おいおい、いくらなんでも強引すぎるだろ・・・・・あっ!
 
 そこまできて我は一つの妙案が頭の中で閃いた。これなら周りの影響は無いに等しい。ただ、少年が承諾してくれるかどうかだが・・・・・。とりあえず、聞いてみるか。
 
 「あ〜、こんな手があるんだけどやってみる?」
 
 そんでもって我は思いついた方法を言ってみた。・・・・・・・少年はあっさりと承諾してくれた。
 そして我は、その願いを実行した。
 
 今までいた部屋の壁にへばりついていた女性が若々しいかっこいい青年になっている。机の上にはありえない色で着色されているみょーに象徴化している熊や兔の人形が置いてある。ベットの掛け布団もも簡素な物から可愛らしいフリルがついた物に変わっていた。
 そして少年の姿も変わっていた。首筋までもなかった髪の毛が今や緑なす黒髪を背中まで伸ばしている。顔全体もこぶりになった気がする。目は大きめになり、睫毛も伸びている。唇も潤いを増しているようだ。気のせいでなく身体全体がひとまわり小さくなり、線も細くなっていた。そしてつつましげながらも胸は少年の前方に自己主張するようにふっくらと突き出していた。
 少年はか細くしろくなった手をまじまじと見つめ、胸のふくらみを触ったり、頬をさすったりしている。そして最後には股間部に手をやる。そしてあるべき物が消失しているのを確認して、愕然とした表情を浮かべた。
 
 「本当に・・・変わったんだ・・・・。」
 
 少年は呆然と自分の変化についての感想を口にした。
 
 「いや、まぁ。そうしたんだからねぇ。正確にいえば変わったんじゃなくて『とっ替えた』んだけどね。」
 
 我が少年の願いに対してやった事。それは何て事はない、「少年が女性として生まれてきた」という風に因果律をちょっと操作したのだ。その際に意識は「少年が男性として生まれてきた」という状態を一応残したままにしてある。そうしないと報酬もらえないからだけどね。もっとも一週間もすれば男だった時の記憶も自然に女性として生きてきた物に変わるようにしてあるんだけど。
 かなりの変則技だけど、少年がいじめられる原因を根本的に抹消し、かつ少年が罪を被らないようにする為の最適方法ではないかな。少なくとも少年をいじめている少女はこれでをいじめていた意味を無くすはずだし。
 
 「これで少なくとも加奈子って少女が君をいじめる意味はなくなった筈だよ。いきなり生活環境がガラリと変わっちゃったけど・・・・よかったの?」
 
 自分でやった事ながら我は少々不安になった。でも少年は顔に笑みすら浮かべると力強く頷いた。
 
 「いえ、大丈夫です!これであの子にいじめられなくなった筈なんですから。これからは確かに大変かもしれないけど僕・・・ううん、あたし、頑張ります!」
 
 もう自分の事「あたし」っていい始めているよ・・・・。まぁ見た目も美人ではないけど可愛いに分類するくらいにはなってるはずだから大丈夫だろうね。まぁ彼・・・いやさ彼女自身が承諾した事だし我が気にすることないかもしれないね。
 
 「それじゃ報酬として・・・・魂1年分頂くね。」
 
 そして、我はいまや「井上順子」に生まれ変わった少女から報酬を貰うと地獄に帰るのであった。
 
 
 ヤレヤレ。我は溜まった書類に判子を押し終えると床に腹ばいになった。
 我が召喚されてからもう3日がたった。しかし今回の願いはなんつうかいいケースだったのかな?まぁお互い理解しあった結果願いがかなえられ、更に彼、じゃねぇや彼女も罪を背負わないから結構ベストだったのだろう。
 こんな風に契約を結べれば別段問題ないのにねぇ。まぁ確かに今回のかなえ方は我のように強力な悪魔だからできた荒業だったかもしれんけどね。
 はぁ。まあ久しぶりに召喚されたけど納得がいく結果になってよかったよ。こういった面倒なことはあまりした・・・・・・・・・・・・・アレレレレェ??
 ま、また我の周りに光の粒が集まってきたぞ?オイオイまた召喚されるのかよ?一体誰が召喚したん〜だ〜〜〜〜〜〜????
 
 
 我は気がつくと暗い部屋にいた。何か3日前に召喚された部屋に似てるような気が。えーっと、周りの装飾品も女性になったあの少年の物に似ているな。って事はあの元少年の同世代の子が我を召喚したのかな?
 我の前に「しょーとかっと」という髪型の結構細身の女の子が「ぱそこん」を持って立っていた。何となくだが勝気な印象を与える少女なのだが何故かその目は潤みを帯びていた。
 
 「貴方が悪魔なのね?」
 
 少女は我に声をかけてきた。いや、まぁそうだけど。
 すると少女はいきなり膝を床につけて頭を下げた。オイオイ、いきなり何をするんだよ?
 
 「お願い!私どうしたらいいのかわからないの!」
 
 ハイ?何が?
 
 「私、三藤加奈子っていうんだけど、」
 
 ・・・加奈子?・・・・・・どっかで聞いた気が。
 
 「私の昔からの知り合いに井上順司って男の子がいたの。」
 
 ・・・・・・・えっと。まさか。
 
 「前から私、あの子の事が気になってたの。でもいきなり3日前に彼が女の子になったの!しかも他の誰もそのことがおかしいと思ってないらしくて・・・・。お願い!彼を元に戻してあげて!」
 
 うわあぁぁぁぁぁぁぁ。何てこったい!不味い、この子のあの「井上順司」に対する気持ちの強さを少しも考慮してなかったわ。この子の思いが強すぎて因果律を変更したにも関わらずこの子の記憶がのこったままになったんだ。
 えーっと、えーっと。どうしよう?こんな事になるなんて思ってもなかったぞ。
 あーーーーもうっ!どうすればいいんだぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜??????



 <あとがき>という名の戯れ言
 
 始めましてー。このHPで「狩人」って作品を投稿しているDEKOIって奴の弟のDattaっす。
 
 兄のDEKOIはこの半年の間に「鬱病で入院」→「退院したらトラックに轢かれて両手足骨折して入院」「退院したら鬱病が再発してまた入院」と入院ライフを満喫してます。つう訳で只今入院中。アホかあいつは。
 
 実は俺自身はTS関係に全然興味がないんですが、夏目漱石さんが頬を叩くので代りに執筆することになりました。
 
 実は優先的執筆しなくちゃいけないのがあるんですがやる気がしねぇんで今のところパス。とっとと書けと漱石さんが3人程額を叩くのですがどーもやる気が。設定集はもらってるんだけどねぇ。
 
 つう訳でもう一作くらいは俺が担当すると思うんであいつの事も忘れないでやってあげてください。「いつか復帰するぞゴラァ」って言ってますんで。
 
 そんじゃあここらで筆を置かせて貰います。また会える事を願いつつ。
 
 by Datta


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