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「やはり、行かれるのですね・・・・・・」
 彼女は男の背中に向かって尋ねた。
「私がけじめをつけねばならんのだ」
 男は軽く振り返って答える。まだ若いながらも少しやつれかかった顔が特徴的な男性だ。そして、その瞳に宿る不気味な光も。
「案ずるな。お前の作りし力、私が取り戻す」
 眼鏡ごしの彼女の瞳に向かって言い放ち、彼は目の前のコクピットに滑り込んだ。
 深緑で覆われた13メートルの巨人が紅き瞳を光らせる。その光は獲物を睨み付ける大蛇の如く鋭く、見るもの全てを石と変えるメデューサの如く邪まに。
「さあ・・・・・・裁きに行こうか、フェンリル!」

 


機動妖精撫子

作:TRACE


 

 102年11月。シンガポール陥落。
 それは今大戦の趨勢が決したことを意味する。
 東南アジアにおける拠点を失ったコスモ同盟軍はなし崩し的に崩壊を始め、既に地球上における戦況は殆ど統合へと傾いていた。そして、それは同時にコスモ帝国本土――月の裏側、ラグランジェ2への侵攻作戦が始まることを意味していた。
 主戦場は宇宙へと還る。「白き流星」セイバークラフトを擁するマキシム少佐のアイネイアスも宇宙へと昇り、いまだ中立を保つ月面地区との交渉に赴くという。
 歴史の流れは、確実に終戦へと動き始めた。
 しかし、まだ地球上での戦いが終わった訳ではない。105独立小隊にもやるべき事が残されている。
「決着」という名の戦争を・・・・・・

 

フライト5.黒い花

 

 スコール。
 赤道付近では御馴染みの天候だ。短期間的に集中豪雨が降り、すぐに快晴となる。だが西暦における環境汚染の影響か、スコールの頻度は例年不規則であった。畳み掛けるようにスコールが押し寄せ水害を起こす年もあれば、逆に干害に悩まされる年も珍しくない。幸い、今年は普通の天候だったようだ。
 だが、この豪雨の中でも、作戦任務をこなす猛者たちがいた。
 どす黒い空を駆ける2つの影。可変後退翼を装備したシルエットは、105隊のテンペストだ。通常ライフル装備の1号機、プラズマランチャー装備の2号機。
「・・・・・・青空が台無しだな」
 キャノピーに襲い掛かる雨粒に、ギアナは小さく舌を打つ。青空どころか視界の確保も一苦労なのだ。
「ま、これもデータ回収のうち」
 ギアナはサブモニターに目を向け、トリガーに手を掛ける。狙いは前を飛ぶ1号機。
 トリガーを引く。いつものような赤いビームは出ない。代わりに銃身から放たれたのは、針ほどの細さの模擬演習用レーザーだ。非常に出力が低いため、装甲を蒸発させるどころか紙を焼くことすら出来ない。
 目の前の1号機は初弾をかわしたようだ。すぐにギアナは武器を機銃に切り替え、演習用のペイント弾を放つ。これも全く当たらない。そうこうしているうち、1号機が急に減速した。減速の遅れた2号機は1号機を追い越してしまい、背後を取られてしまう。
「味なマネしてくれるじゃん、クミコさんよぉ!」
 無駄口とは裏腹に、ギアナの反応は早かった。変形レバーを引いて2号機の脚部を前方に振り、宙返りをするような形で変形を完了する。右手のランチャーは既に後方に狙いを定めていた。トルーパー形態ならではの攻撃法だ。
「もらった!」
 勝利をギアナが確信したその刹那、コクピットに警告音が鳴った。
「いない?まさか!?」
 回避行動が間に合わない。直後、演習プログラムによって自機が撃墜されたことを知らせる旨がサブモニターに表示された。
 狙っていたはずの1号機は後方にはいなかった。2号機の頭上に回りこみ、コクピットを正確に狙ってレーザーを放ったのだ。だが回りこんだ際にすさまじいGが1号機のパイロットを襲ったはずだ。それに耐えたということは・・・・・・
「クスト!クミコさんになるなんて反則だぞ!!」
 ギアナの罵声に答えるように、サブモニターにクストの顔が表示された。
「悪いな」
 彼は素っ気なく言う。
「あれ?」
「『彼女』の力なんて借りてないけど」
 確かに彼はクストのままだった。
 『ナデシコ』だけではない。クスト自身の腕も確実に向上しているのだ。
「何だよ。これじゃあ言い訳できねーじゃねーか」
「悪いな」
「コウサカ中尉、ギアナ中尉」
 二人の会話にオペレーターの声が割り込んできた。演習のデータ回収をしているユイだ。
「帰投時間より早いですが、コウサカ中尉に帰還命令が出たそうです。帰還して下さい」
「了解ぁーい。じゃあギアナ、帰りましょか」
「おうよ」
 クストの声にギアナも頷き、操縦桿を傾けた。キャノピーに叩きつけるスコールの大嵐はじきに止みそうである。

 

 ユイやマゼンタが監視していたレーダー室へ入ったクストを見るや否や、脇で控えていたミィがドリンクカップを手にクストとギアナの元へ歩み寄った。
「お疲れさま、クスト中尉、ギアナ中尉」
「サンキュー。ミィちゃん」
 カップを受け取ったギアナは早速一気に飲み干した。その傍らで、クストはレーダー室にクボタ大佐がいたことに気付き、すぐに敬礼をする。ギアナも慌てて同じように敬礼。クボタは別にいいといった具合に首を振って応じた。
「コウサカ中尉、君に・・・・・・いや、正確にはコウサカ少尉に伝えることがある」
「私にですか?」
 クボタは頷き、彼に1枚の書類を差し出した。
「コウサカ=クミコ少尉。本日付を持って、貴君を中尉に昇進・・・・・・これは!?」
 読み上げて叫んだクストに、マゼンタは再び頷く。
「シンガポール奪回戦では君が、いや彼女が随分と戦果を上げたからな。これで中尉も戸惑いにくくなっただろう」
「俺たち、いや私たちにはもっと紛らわしくなった気が・・・・・・あ、でもクスト、お前の中のクミコさんにも言っておけよ。いくら中尉でも、先任中尉は俺だからな!小隊の命令権は俺にあるんだからな!!」
「はいはい、小隊長殿」
「そうそう、マゼンタ大尉も我が事のように喜んでたぞ」
「あのお堅いさんが?」
 ギアナが尋ねる。あの痩せぎすの顔で喜んだと言われても、パッとこないのだ。むしろあの薄暗い顔で笑われると、不気味な気さえする。
「あれ?そう言えばマゼンタ大尉とユイは?」
 辺りを見回したクストがミィに尋ねる。先ほどまで演習をオペレートしていたはずのマゼンタとユイの姿がレーダー室に見えないのだ。代わりにロップがレーダーとにらめっこしてデータを整理している。
 ミィは少し考えたのち、
「確か兵站局が何だらかんだらって言ってましたけど・・・・・・」
 ちょうどその時、レーダー室のドアが開かれた。
「「ばんざーい!ばんざーい!!ばんざーい!!!」」
「な、何なの・・・・・・?」
 突然の歓声に唖然としつつクストが振り返ると、そこにはフォークダンスを軽やかに踊る男女のカップル一組。踊りに踊って軽やかに翻る薄汚れた白衣と真っ白な白衣。
「♪愛と勇気は言葉ぁ〜、感じあえれば力ぁ〜(以下省略)」
 何やら歌まで口ずさみ始めた。
「た、大尉、ユイ・・・・・・」
 クストが漏らしたとおり、それは紛れもなくマゼンタとユイだった。しかし軽やかなステップの踏み方といい、顔に浮かぶ屈託のない笑みといい、まるで別人だ。いや、やはり不気味だ。
「二人とも、何でそんなに喜んでるの?」
「おお中尉、お前さんのお陰だ。テンペスト、晴れて制式採用だ!」
 マゼンタは興奮冷めやらぬといった具合に早口で答えた。そして再びユイと一緒に踊り始める。
「私のお陰?」
「そうとも。お前さんの大戦果が上層部の目に留まったのだ。上層部は戦後の空軍主力機の一環として、テンペストの可変コンセプトを採用することにしたそうだ。先ほど、その旨が入ったよ」
「ん?ちょっと待て!」
 そうなるとギアナが黙っていない。マゼンタの発言に荒を見つけ、早速食ってかかった。
「まさかアンタ、自分の機体を制式採用させるため、それだけのためにクストを『ナデシコ』の犠牲に・・・・・・!?」
「よく分かったな」
 いつものようにマゼンタは素っ気なく受け流す。
「このマッドサイエンティストが!ユイちゃん、アンタもなんか言ったらどうだ!?」
 傍らのユイに援護を要請する。だが彼女が援護したのはギアナではなく、マゼンタだった。
「でも、ケイツ曹長も先のシンガポールでは5機撃墜してますよ。真っ先に市街地に突入したのも105隊でしたし、やっぱりテンペストのコンセプトが正しかったってことじゃないでしょうか?」
 ユイの言うとおり、シンガポール奪回戦で真っ先に市街地戦へ突入したのは他でもない105隊だった。戦闘機としての機動性を活かして真っ先に市街地へ飛び込み、あとはトルーパーとして市街地戦を展開して上陸部隊を支援したのだ。その戦いでミィも5機の撃墜スコアを記録している。なおギアナはその戦いの際には体調不良で居残りとなっており、代わりにミィが2号機に、余った3号機に初陣のロップが搭乗していた。
「でも・・・・・・納得いかねぇな。クスト、お前さんはどう思ってんだよ?」
「私?そうねぇ・・・・・・別に何とも思ってないけど・・・・・・」
 彼は人差し指を唇に当てながら曖昧な返事で返した。口調といい仕草といい、非常に女性っぽい。もっとも今の彼は正真正銘の男性である。
 傍らで顔をしかめているミィに気付き、ギアナは呆れの吐息。
「・・・・・・おいクスト。お前さん、今もクミコさんのつもりなのか?」
「え?なんで?」
 だが、クスト本人には自覚がないらしい。クミコとしての日常生活が、クストとしての日常生活を侵食し始めていることを。

 

※      ※      ※

 

 戦闘機形態で待機中のテンペスト2号機の背面に、巨大なバックパックが搭載された。大出力のエンジンポッドが2門、右側には大型のキャノン砲が装備されている。機首脇に位置するプラズマ砲も単装砲から連装砲に換装されている。今は見えないが、頭部脇には48ミリのショートキャノンポッドも装備されていた。
「 “グレートテンペスト”なんてとこかな?」
 換装作業を眺めているギアナは上機嫌だ。
 いま2号機に装備されているのはテンペストの戦闘能力を高めるオプション装備で、射撃能力と航続距離を向上させる。ファーター、トルーパー両形態でも有効に使用できるように考慮されており、変形機構にも支障をきたさない。データ回収用にマゼンタが用意した代物である。
 その脇では、クストが1号機のコクピットで黙々と機体の微調整をしていた。トイレ掃除の時間が迫っているせいもある。
「そんなに女っぽくなったかなぁ・・・・・・?」
 独り言をつぶやき、コンソールのキーボードを叩き続ける。ふと隣の2号機を見れば、バックパック主砲の稼動試験をしていた。戦闘機形態とトルーパー形態で射角が変わり、両形態で運用できるらしい。排莢孔の代わりに冷却ダクトがあるところを見ると、大口径プラズマ砲のようだ。
「ナデシコ、君はどう思う?ホントに私、女っぽくなったかなぁ?」
 もちろん「彼女」が答えてくれる訳がない。そもそも「彼女」に語りかけた口調が既に十分女性っぽかったことに、当の彼は全く気付いていなかった。
「そろそろクミコになんなきゃ・・・・・・ヤダなぁ」
 やる気なさそうにぼやき、彼はシートに沈み込んだ。
 ふと、頭の中にあの眼鏡の女性の顔が浮かんだ。なぜこんな時に彼女の顔を思い出したのか、クスト自身にも全く分からなかった。名前さえも知らぬ、彼女のことを。
(彼女は誰なんだろう?)
 だが、その時だった。コクピットの空気が一転する、あの感覚を感じたのだ。
『来ル・・・・・・アノ人ガ来ル・・・・・・』
「ん?」
 妄想を断ち切り、とっさにクストはモニターを確認した。『ナデシコ』は起動していない。そもそも自機の動力炉に火も入れていないし、元からある機体管制用のOSを起動しているだけだ。
(『あの人』・・・・・・?誰のことなの?)
 そんなことを考えていたその時、突如格納庫内に警報が鳴り響いた。
「なに!?」
 慌ててキャノピーを押し開き、格納庫内の状況を確認する。メカニックたちも事態を察していないようで、警報に耳を澄まして呆然と立ち尽くすばかりだった。
「おいクスト!どうなってんだ!?」
 格納庫のスロープからギアナの声がかかる。彼も事情を知らないらしい。
「俺にも分からん!一体何が・・・・・・」
 警報が一時的に途切れる。代わりに、クボタ大佐からの放送が流れた。
「緊急通達。オーディス基地付近に所属不明の機影を確認。機種は不明。かなりの速度でこちらに向かっている。発進が可能な機体は、即座に迎撃に迎え!」
 その放送が終わると、急に格納庫内はあわただしく動き始めた。
「おいビット!俺の2号機は出せるのか!?」
「全回路チェック終了。出れるぞ!」
「ケーブル早く回収しろ!おい、用のない奴はさっさとどけ!!」
「コラ、そっちのケーブルは外さないで!まだ推進剤の積載終わってないんだから!!」
「3号機のランディングギアが不調だ!予備、早く!!」
 クストもすぐに1号機の主動力炉を起動し、パイロットスーツに着替えるためにコクピットから飛び降りた。緊急発進なら着替える暇も惜しんだ方が良いのだろうが、「ナデシコ」起動後のGはパイロットスーツがなければ耐えられない。
 それに、いつもとは違う胸騒ぎがあった。105隊に転属してからの緊急発進自体も初めてだが、それ以上に何かが気を急かせているのだ。
 ロッカールームへ走る時間も惜しむように、クストは壁の通信機を引っ手繰って通信室のユイに繋いだ。
「ユイ、敵影の数は!?」
「敵影は現在一つのみ。機影の進路から見てはぐれた機体という訳ではなさそうです。他の機体が潜伏している可能性もあります」
 ユイの声は打てば響くように返ってくる。彼女も緊急で就いたはずだが、その冷静ぶりはいつもの出撃と同じだ。
「105隊が一番早く出れるそうです。他の部隊は機体の準備が間に合いません」
「分かった。俺たちで足止めする!」
 クストは一声叫び、クミコ用のパイロットスーツに手を伸ばした。

 

 その間も所属不明機は凄まじい速度でオーディスへと向かっていた。
 戦闘機には珍しい彩度の低い深緑色を基調とした塗装、そして翼に該当する部位にはプラズマ砲と一体化した巨大なシールドが設えられ、その速度はテンペストのマッハ2.5を凌駕していた。
 そのキャノピーは装甲で覆われているために中の様子を窺うことは出来ないが、もし内部を見ることが出来るとすれば、シートに座っているのが女性のパイロットだということが分かるはずだ。もっともヘルメットを被っているため、彼女の顔までは分からない。

 

「ミィ、該当機種はまだ分かんないのか!?」
 サブモニターに向かって怒鳴ったクストに、モニター上のミィは文字通り困惑した表情を浮かべた。もちろんクストとしては彼女に対して怒っていた訳ではないのだが、逸る気持ちを抑えきれないのだ。
「・・・・・・いや、ごめんミィ。該当機種は?」
「ダメです。おそらく新型機かと・・・・・・」
 そんな頼りない声に混じって、突如女性の声が割り込んできた。
「墜ちろ、統合のヒツジめ!」
「!?」
 クストは我が耳を疑った。今の声音は間違いなく自分の・・・・・・。
「クスト、いやクミコさん、何言ってんだ!?」
「俺じゃないよ!」
「ん?まだクストのまま?じゃあこの声は・・・・・・?」
 そうなのである。通信回線に「クミコの」声が紛れ込んできたのだ。しかしクストはまだクミコではない。
「どうやら所属不明機ってのは・・・・・・ずいぶん厄介な奴らしいな・・・・・・」
 その割にクストの声は冷静だ。
 もともと「ナデシコ」は敵の機体から回収したOSである。敵であるコスモ軍が「ナデシコ」搭載機を投入してくるのは当然の事であるし、そうなれば「ナデシコ」搭載機同士が交戦する機会が訪れることも察しがついていた。
 目の前から光芒が迸る。105隊は散開してビームを回避した。
(だが・・・・・・違う!「あの人」はコイツのことじゃない!!)
 それは直感だ。
『アノ人ガ来ル・・・・・・!』
「ナデシコ・・・・・・!?」

 

NADESICO

 

モニターにあの文字列が表示された。直後、急に胸が息苦しくなる。
(「ナデシコ」が勝手に・・・・・・!?)
 頭の中が妙に重い。吐き気さえしてきた。今までに「ナデシコ」を起動したことは何度もあったが、こんなに気分が悪くなったのは初めてだ。生理的な嫌悪感、とでも言えばいいのだろうか。
「・・・・・・!?」
 いつの間にかクストの身体はクミコのものに変わっていた。だが、胸の中に残る嘔吐感は全く消えない。むしろ悪化したような気さえする。こんな感覚も初めてだ。
『偽りの者め、そこにいたか!』
 クミコの脳裏に“声”が飛び込んできた。“声”ではあったが、いま目の前にいるもう一人の「クミコ」とは比べ物にならないほどの気迫と存在感だ。
 ・・・・・・間違いない。その“声”の主こそ、「ナデシコ」の言う「アノ人」のことだ。
「ギアナ、ミィ!」
「クスト中尉?」
「そこのクミコはお前たちに任せる!」
「お、おい、言ってる意味が・・・・・・?」
「俺は奴を叩く!」
 鋭い口調で言い放ちざま、クミコはスロットルを全開まで押しやった。自分の、そして「ナデシコ」の直感が察知した場所に向かうため。
「クスト!?」
「中尉!?」
 だが、二人の声は迫ってきた敵機に遮られた。
 深緑の敵機は2号機3号機とすれ違い、再び旋回する。そしてエンジンブロックを伸ばし、格納していた腕部を展開し、機首を折り・・・・・・鋼鉄の巨人が目覚めた。
「アイツも可変機!?」
「ギアナ中尉!?」
「くそっ!クストの奴、こんな奴放っといてどこに行きやがった!?」
 毒気付きながらも、既にギアナはトリガーに手を掛けていた。相手が何者であろうと、目の前の敵にはトリガーを引くことに変わりはない。
「・・・・・・ミィ、遅れるなよ。喰らえぇぇッ!!」

 

「来たか・・・・・・」
 クミコはコクピットの中で小さくつぶやいた。
 いや、着ているパイロットスーツが違う。顔は紛れもなくクミコと非常に似ているが、髪は少しだけ長いし、薄笑いを浮かべた表情などは完全に別人だ。そもそも彼女が搭乗しているのはテンペスト1号機ではなかった。
 FT−01フェンリル。彼女・・・・・・正確には、彼、自身が設計した、可変型トルーパーだ。エンジンブロックでもある太い脚部とは対照的に、腕はずいぶんか細く、両肩には巨大な盾のようなプラズマ砲が装着されている。そして沈むような深緑の機体塗装から浮き出たように、バイザー越しに赤々と光るカメラアイ。
 その「クミコ」は、空中に静止する自機のコクピットで正面をじっと見据えていた。肉眼でもレーダーでも何も見えない。だがそんな物以上に正確な存在が、今の彼女にはある。
「『ナデシコ』の力・・・・・・返してもらおうか!」
 彼女は虚空に目掛けてランチャーを放った。

 

「プラズマ砲!?」
 クミコは1号機を急旋回させてビームを回避した。流れ弾にしてはあまりに正確すぎる射撃だった。こんな芸当が出来る相手など一つしかない。
 既に“敵”の位置は頭の中で把握している。クミコもすぐにトリガーを引いた。
「貴様か。『ナデシコ』を盗んだ者は!」
 その直後、自分の声が飛び込んできた。“声”ではない。汎用回線を通じて直接聞こえる声だ。
「我が名はブランド=スティグマ。『ナデシコ』の生みの親だ!」
「なに!?」
 クミコが叫んだ瞬間、再びビームが襲ってきた。今度は回避が間に合わず、主翼の後縁の一部が溶解する。動揺した一瞬のスキを突かれた。
(生みの親だと!?)
 相手が直接通信を交わしにきたという点も十分に驚きだが、何よりクミコが驚愕したのはその発言だった。
 いや、今は戦闘の最中だ。一瞬でも躊躇いを持てば、そのスキに付け込まれる。だから彼女は言い返した。
「何を言っている!?」
「ナデシコは私一人のものだ!貴様に使う資格などない!!」
「資格も何もあるものかッ!」
 1号機はトルーパー形態に変形し、背中の巨大剣“ストームブリンガー”を抜き放つ。フェンリルもプラズマセイバーを抜いて応じた。
 巨大剣とプラズマセイバーの刃が激突し、雷鳴にも似た閃光が迸る。
『ヤメテ・・・・・・!』
 二人の「クミコ」の間に、あの“声”が響く。
(コイツが「ナデシコ」を苦しめているのか!?)
 鍔迫り合いを演じながら、クミコはあの時、「彼女」と逢ったあの時の“声”を思い出した。

 

『助ケテ・・・・・・』

 

(プログラムが苦しむものなのか・・・・・・?)
 普通に考えれば答えは明白だった。プログラムが自分の意思で苦しみ、助けを求めることなどありえない。仮にあったとしても、その行為自体がプログラムされたものに他ならないのだ。
 だが「ナデシコ」は何かが違うのだ。何が違うのかはクミコ自身分からないが、少なくとも単なる「マシン」ではないような気がするのだ。
 だが、だとしたら一体何に苦しんでいるのか?何から助けて欲しいのだろうか?
「!?」
 思考はそこまでだった。フェンリルがセイバーを打ち払い、テンペストは大きくバランスを崩される。脆弱な腕にもかかわらず、フェンリルのパワーはテンペストを凌駕していた。
 だが、腰部のプラズマ砲はフェンリルの胴体を捕捉している。モニター上の赤い十字がコクピットと思しき一点に止まった。
「ロックオン・・・・・・捉えた!」
『ダメッ!!』
「え?」
 操縦桿を握る手が勝手に傾いた。モニターの赤い十時が目の前のフェンリルから逸れる。迸った光芒はフェンリルを掠ることなく空を切った。
「腕が勝手に!?」
「馬鹿が!言った筈だ、貴様にナデシコを操る資格はない!!」
 フェンリルがプラズマ砲を放つ。困惑していたクミコは回避もままならず、スネに至近弾を喰らってしまった。白い装甲の表面が溶解し、どす黒い金属肌がむき出しになる。いくら超高速のプラズマ波でも、普通ならよほどの至近戦でない限り直撃を喰らう事はまずない。だがこの場合、相手があまりに「普通」ではないのだ。
「射撃戦がダメなら・・・・・・」
 大型ヒートソードを両の手で構え、一気に斬りかかる。フェンリルもプラズマセイバーで的確に受け止め、再び鍔迫り合いになる。クミコはその間に左腕のトンファー・プラズマストライカーを展開した。柄に添えていた左手を離し、大きく振り上げる。
 狙いは頭部だ。
『ヤメテ!』
「!?」
 クミコは再び愕然とした。
 またもや腕が勝手にあらぬ方向へ逸れ、トンファーはあさっての虚空を切り裂く。
「なぜだ!?」
 コクピットの中でクミコは身じろぎする。だが、まるで金縛りにでもかかったかのように身体が言う事を聞かない。思考を身体が拒絶しているかのようだった。
「なぜ!?」
 クミコはもう一度叫んだ。
(「ナデシコ」を苦しめているのはそいつじゃないのか!?)
「貴様に『ナデシコ』の何が分かる!?」
 目の前のフェンリルが左腕を振り上げ、テンペストに振り下ろす。もろに喰らったテンペストはバランスを崩し、一瞬失速しそうになる。コクピットのクミコも衝撃に襲われ、シートのヘッドレストに頭をぶつけた。
「ッ!」
 額から血が流れた。意識も一瞬吹っ飛ぶ。ヘルメットを被っていないのが仇になったが、ヘルメットをつけていても衝撃を軽減できずに脳震盪を起こしただろう。
 だが、フェンリルからの第二撃はなかった。いまの攻撃のショックで、左腕のマニピュレーターが壊れたのだ。
「ちッ、こんな時に」
 その好機をクミコは逃さなかった。頭を振って意識をハッキリさせ、再びトンファーを振るう。間合いが近すぎたため頭部やコクピットを狙うことは出来なかったが、胴体を殴りつけたことで僅かだが時間を稼げた。
「今度こそ!」
 自動追尾のミサイルを全弾放つ。ミサイルはそれぞれ複雑な軌道を描きながらも、フェンリルに向かって突進していった。
『ダメッ!!』
「なに!?」
 だが、ミサイルはフェンリルを避けるかのような軌道を描いて散っていく。やがて推進剤が尽き、よろよろと落下していった。
 落下したミサイルの爆風に照らされ、深緑の機体が迫ってくる。赤いカメラアイと相まって、クミコにはその姿が死神に見えた。
(やられる!?)
 そう確信した瞬間、テンペストの右腕が肩口から吹き飛んだ。ヒートソードを握り締めたままの右腕が重力に従い落下していく。さらにフェンリルは肩のシールドで体当たりを喰らわした。クミコは再びシートに激しく打ち付けられる。ハーネスが肩に食い込み、苦痛な呻き声を漏らした。
(なぜだ!?奴も「ナデシコ」を使っているはずなのに、なぜ!?)
「生みの親である私を『ナデシコ』が撃つ訳があるまい」
 クミコの声と姿をしたブランドが嘲笑うかのように言い放つ。
(そうなのか?本当に・・・・・・それだけ、なのか!?)
 そこから先は考えられなかった。プラズマセイバーが振るわれ、白い装甲に黒い傷を穿つ。操縦桿を操って剣戟から逃れようとしたクミコは、目の前に機銃の銃口を見た。
「そろそろ裁かれてもらおうか」
 ブランドは冷笑さえ浮かべながら言い放ち、トリガーを引いた。
「!!」
 コンマ数秒のタイムラグで、クミコは残った左腕でコクピットをかばう。機銃の口径は20ミリ。大口径という訳ではないが、この至近距離ではトルーパー相手でも十分な威力だ。左腕の小型シールドは見る見るうちにひしゃげていき、機体への直撃弾も増えてくる。その影響で幾つかの電気系統がいかれたらしく、コンソールの幾つかから火花が走った。
 それでも、コクピットへの直撃だけは必死に防いでいた。
「まだ墜ちんか?頑丈な機体だ」
「くっ・・・・・・回避を・・・・・・」
 度重なる振動で何度もコクピットに打ち付けられ、クミコの全身は傷だらけになっていた。意識も既に朦朧としている。そして何より「ナデシコ」の挙動による精神的なダメージも大きかった。
「終わりだ・・・・・・」
 とどめとばかりにフェンリルがセイバーの切っ先をテンペストのコクピットに向け、俊足で繰り出す。狙いは僅かに逸れた。切っ先はコクピットの代わりに右胸を貫き、串刺しにする。無意識のうちにクミコが操縦桿を傾けていなければ、数万度のプラズマに焼かれて原子の塵と化していただろう。
 貫かれた傷口で小さな爆発が起こる。致命傷ではなかったが、爆発の余波はコクピットに及んだ。右側のサブモニターが粉々に砕け、激しく火を吹く。破片の幾つかはクミコの身体に食い込んだ。
 再び衝撃でシートに叩きつけられ、クミコはついに意識を失った。操縦桿を握る手から力が抜け、骨を抜かれたかのようにだらりと垂れ下がる。
 テンペストの命を繋いでいたスラスターの炎が消えた。
 落下を始めたテンペストのコクピットに向け、銃口が鈍く光る。
「今度こそさらばだ・・・・・・」
『待ッテ!』
「案ずるな。私が撃つのはお前ではない。お前を惑わす愚か者を撃つのだ」
 説得するような口調とは裏腹に、彼女の――彼の唇は酷薄に歪んでいた。ロックオン。何の戸惑いもなくトリガーを引く。

 

『ダメェェ――ッ!!』

 

 輝く光の矢はテンペストのコクピットに向かって躊躇いもなく一直線に伸び――虚空を貫いた。
「まだ動けるのか?」
 ブランドが呻いたとおり、目の前のテンペストは済んでのところで機体を捻り、放たれたビームを回避したのだ。満足に稼動しないスラスターを懸命にふかし、かろうじて失速を免れる。
「だが、もはや虫の息・・・・・・」
 全身の装甲が爆ぜたテンペストは戦闘機に変形し、フェンリルに向かって突き進んでくる。戦闘機形態なら失った右腕もさほど関係しないが、機体のダメージが蓄積されている影響で運動性は皆無に等しかった。
 ブランドは再びテンペストのコクピットに照準を合わせる。
「今度は外さん・・・・・・」
 だが、トリガーを引こうとした刹那、ブランドの腕があらぬ方向へ逸れた。
「なっ!?」
 光の弾丸は正反対の方向へ飛んでいく。
「なぜだ?ナデシコ、なぜ奴をかばう!?」
 ブランドが呻いた時、不意に通信機から男の声が飛び込んできた。
「クミコさんっ!!」
 叫びとともに、ビームが幾本も飛んできた。単純な連射ではなく、微妙に照準をずらしてある。そのことからもパイロットの技量の高さが窺い知れた。
 だがブランドは意にも介さず、全ての攻撃を見切った。
「・・・・・・馬鹿が!」
 だが、彼女にトリガーは引けなかった。コンソールパネルに点滅するレッドランプの存在に気付いたからだ。
「稼動限界?調子に乗りすぎたか・・・・・・」
 苦々しげにブランドはつぶやき、自機を再び変形させて撤退した。眉間によった皺の割には、思い切りのいい引き際だった。
 それから間もなくして、その空域に1機の戦闘機が到着した。XF−14ミーティア。統合軍の攻撃型主力空軍機だ。主翼には「103」の部隊マーキングと「阮(グエン)」の名前がある。機首付近には星(撃墜スコア)が幾つか描かれていた。
 コクピットに収まっているのはグエンだった。彼は緊急発進し、急遽駆け付けたのである。交信に使っていた微弱電波の中に、確かにクミコの声があったのだ。
 彼はすぐに、目の前のテンペストに向かって通信を送った。
「クミコさん!そこの1号機に乗ってるの、クミコさんですよね!?大丈夫ですか!?」
「・・・・・・」
 返事はなかった。代わりにテンペストは機体を捻り、グエンのミーティアと編隊飛行を取るような態勢を取る。
「クミコさん・・・・・・」
 グエンは隣に並んだ1号機を見つめた。装甲の大半は傷つき、一部欠損した部位もある。動作も鈍いが、動いていること自体が不思議なくらいだ。だが、中のパイロットが健全なのかは分からない。

 

「ぬおおおおっ!この偽クミコさんめ!!」
 戦闘はまだ続いていた。
 ギアナは新兵器の大口径プラズマ砲をはじめとした全砲門を乱射する。だが、深緑の機体にはかすりもしない。
 フェンリルの背後を取ったミィが弾幕で足止めをする。だがフェンリルは逆に突っ込んできた。セイバーを手にして、3号機を寸断すべく迫る。だが、2号機の全弾射撃がそれを許さない。その間にミィは安全な間合いまで逃れた。
「ギアナ、やっぱりこの動き・・・・・・!」
「ああ、クミコさんに良く似てる。やっぱりあの機体にも『ナデシコ』が・・・・・・」
 二人は内心驚きつつも、状況を冷静に分析するだけの余裕は残されていた。
 だが、目の前の敵機は急に向きを反転した。そのまま躊躇いもせずにその場を後にする。いままでの猛攻振りとは裏腹の、やけに鮮やかな引き下がり方だった。
「引いていく・・・・・・?」
「なんでだ?」
 二人は追うことも忘れて、ただ呆然とするのみだった。

 

 

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メカニック解説
(設定協力:深山さん)

 

コスモ同盟軍 可変型試作トルーパー
FT−01 フェンリル

 

 FT−01フェンリルの開発コンセプトは、ある意味でXTF−05テンペストとは対照的である。テンペストが高い安定性をウリにしているのに対し、フェンリルはその過剰ともいえる運動性と火力に重点を置いた機体となっている。可変機構もテンペストに比べて幾分簡略化されており、1機当たりの生産コストが少ないとも言われる。
 ただし、本編でも描かれている通り、機体バランスを意図的に崩した本機の操縦系には非常にクセがあり、稼働時間や航続距離も極端に短かった。また腕部構造の脆弱さも問題であった。機体コードFT−01も、開発者であるブランド少佐自身がつけたもので制式番号ではない。機体バランスの悪い本機を、コスモ軍は制式採用しなかったのである。
 そもそもフェンリルは、ブランド少佐が文字通り全知全霊を傾けて開発に執着しているOS「ナデシコ」の運用を前提として開発されたようなもので、そのためには稼働時間が短くろうと問題ではなかったようである。稼動時間内に敵を殲滅するという自信なのか、稼働時間が問題にならない独自のシステムの用意があるのか、あるいはそれ以外なのかは現時点では判然としない。だが、このフェンリルが、トルーパー開発者としてのブランド少佐の「真髄」であり「限界」でもあったことは確かなようだ。

 

身長(トルーパー形態):13.5m/重量:標準17.3t/スラスター推力:33000kg/ジェネレーター出力:21000kW/最大速度:マッハ2.62/航続距離:1100km/上昇限度:推定23200m

 


 

ここで唐突ではあるが、宇宙暦における年表を掲載する。本作の閲覧にあたり参考程度にご参照いただければ幸いである。
(年表協力:深山秋水)敬称略

 

宇宙暦公式年表

(一部未確認または非公式の事項あり)

 

21世紀中頃
地球人口、爆発的な増加により200億人を突破。破局的な食糧危機に陥る。

国際統合政府、国際連合に替わり発足。
宇宙開発計画「ジェネシス」・惑星移民計画発表。

宇宙暦元年
地球衛星軌道上のL1宙域にて最初の移民基地“アーク”完成、「メイフラワー」と命名。
宇宙移民開始を記念して、元号を「宇宙暦」に移行。

9年
月の裏側、L2宙域に惑星移民の最前線アーク群「コスモ」建造。

11年
第一次アーク戦争
新造アーク群の利権を巡る統合政府内の派閥抗争。成立間もない統合軍の仲介により短期間で集結。

 29年
惑星移民計画頓挫。各アーク群が移民先そのものとなる。
第二次宇宙移民ラッシュ到来。

41年
第二次アーク戦争
反統合国家が建造中のL3アークを武力制圧。史上初の宇宙戦闘「サラミス宙域戦」。統合軍が鎮圧し早期解決。

45年
地球圏での反統合組織ほぼ壊滅。統合政府、戦乱の終結を宣言。

50年代
安定期。右肩上がりの経済成長を記録。

62年
10月  株価大暴落。地球圏規模の破局的な恐慌が発生。

この頃から、統合政府のアーク群に対する政策が重圧化。

82年
4月  L2コスモアーク群にて極右政党・コスモス党が結成。勢力を徐々に拡大。

92年
3月  コスモス党、L2政権の第一党となる。
雇用対策・福祉事業など諸政策により、L2の経済は安定化。
コスモアーク群、秘密裡に軍隊を保有
タクティカルトルーパー、兵器として完成。T−03Cジップとしてコスモ軍で使用開始。

94年
1月  コスモス党の独裁体制確立。コスモス党首・ニカ=マルツがL2市民の圧倒的支持により総統に就任。

94年7月6日
エスペランサの悪夢(エスペランサ事件)
新造アーク群のL5エスペランサにて活発化した反統合運動の鎮圧を名目に、統合宇宙軍シノハラ少将が独断でL5への核攻撃を断行。L5は壊滅、住民は全員死亡。

95年
統合政府、L2コスモアーク群に経済制裁発動(実質的効果なし)

100年4月3日
第三次アーク大戦勃発
コスモ帝国、統合政府に対し独立を宣言。宣戦布告と同時にL1宙域を占拠。
コスモ帝国に協力して統合政府内の地方軍閥が次々と蜂起。
6月11日  シドン宙域戦。統合軍艦隊大敗。
8月  軍事協定「コスモ同盟」成立。

101年
両軍ともに戦力衰微。戦局は膠着状態に陥る。
9月  統合軍、トルーパー開発と量産を目的とした「セイバープロジェクト」を発動。

102年
1月  セイバー計画に基づき、統合軍初のトルーパーXTX−01セイバークラフト1号機ロールアウト。各種運用試験開始。
同時期にT−03ジップのレプリカ生産開始、実戦投入。
4月3日  エディルネ大攻防戦。統合軍「ギリシアの炎」作戦発案。トルーパーの集中運用により、数日間の激戦の末、統合軍の勝利に終わる。
9月18日  旧ドイツ地区サブハム基地をコスモ軍部隊が急襲。XTX−01三号機実戦投入。
  25日  コンスタンツの戦い。統合軍のメンタル研究所・コンスタンツ研究所を襲撃。同研究所の被検体ヌーベル=オルレアン、統合軍アイネイアス艦隊に保護される。
11月  コスモ同盟軍、シンガポールを筆頭とする東南アジア占領地区を放棄。
12月下旬  月面にてコスモ帝国親衛隊アルスタイン長官と、アイネイアス艦長マキシム少佐が秘密裡に和平交渉。

103年
1月12日  クーデターによりシノハラ大将、統合軍の提督に就任。コスモ同盟軍殲滅作戦「ソドムの雷」発案。地球圏規模の大演説。
1月下旬  マルツ総帥、地球降下作戦「ノア」を自ら強行するもシノハラ艦隊の迎撃により降下部隊は全滅。マルツ総帥は捕虜となる。
2月10日  軍事裁判によりニカ=マルツ、内乱罪の即時判決。数日後、公開処刑。
3月  シノハラのL2攻撃部隊、参謀本部ジュネーブにてコスモ親衛隊・アイネイアス連合軍の奇襲により敗北。シノハラ大将戦死。「ソドムの雷」失敗。XTX−01νの参戦は未確認。
4月12日  L3アーク「ヘブンズゲート」にて、統合政府代表マキシム少佐とコスモ共和国代表アルスタイン長官による終戦協定締結。
第三次アーク大戦終結。

 

 


 

 

(今回の自爆オマケ)

 

「あ、あの、少佐・・・・・・」
 前を歩く男の背中に向かって、彼女は尋ねた。青みがかった銀色の髪が美しい女性だ。
「自分は・・・・・・いつになったら、元に戻れるのですか?」
「む、言ってなかったか。私の管制用以外はコンバートシステムが不完全でな。12時間の間、その姿で辛抱してくれ」
「じ、12時間もですか!?」
 情けない大声を上げる彼女にも振り向かず、男は自室へと去っていった。
「ブランド少佐ぁ〜ッ!!」
 彼女の魂の叫びもむなしく、扉がバタンと閉ざされた。
「そんな・・・・・・12時間も、こんな格好しなきゃなんないの?」
 と、彼女の肩にポンと触れるものがあった。
「ようマックス!お嬢様似で、チョー清楚な女の子だな!!」
「俺を『女の子』なんて言うな!俺は男だッ!!」
「ふふふ、あと12時間もあるのか。なら、今夜は俺のベッドで付き合え」
「ば、馬鹿、正気かウォン!?俺は男だぞ!!」
「どう見ても女だぞ。お嬢様を誘うのは無理だから、お前で我慢するのだ。うん、決定」
「勝手に決めるな!あ、コラ、だ、誰か、た、助けてぇぇ――――っ!!!」
 輝く晴れ渡った星空に、彼女の悲鳴が響き渡った。

 

 その数日後、コスモ同盟軍の基地から一人の下士官が失踪したそうである。下士官の名はマクシミリアン=フラップ軍曹。現場司令官は、彼を作戦行動中のMIA(戦闘行動中行方不明)として処理し、彼の名を軍籍名簿から削除した。フラップ軍曹は数日前から極度の男性不信症に陥っていたとの報告があり、失踪の原因もこの辺にあると思われる。
 さらにその数日後、テオドール=ウォン曹長も基地から失踪した。失踪の動機は不明だが、行方不明になる直前に正体不明の銀髪の白人女性が目撃されており、その女性が一連の失踪事件の鍵を握っていると思われる。もっとも、単にウォン曹長が銀髪の女性に魅かれて駆け落ちしたという可能性も納得できなくもないが・・・・・・。
 なお、この件に対し当局のインタビューに応じてくれた士官P氏は「このような失踪騒ぎは今後も続くだろう」という意味深なコメントを残している。なお、その数日後、P氏もまた基地から失踪・行方不明となった事を付け加えておこう。

 


・・・・・・というわけで、コスモ軍のクミコさんも大変なのです(爆)。

 

どーでもいい余談: 「動物のお医者さん」原作を知ってるTRACEとしては(年齢いくつだよ俺)ハスキーのチョビが悪魔的に滅茶苦茶可愛すぎるぞ(♀だしぃ)!アイフルCMのチワワくぅーちゃん(そういう名前らしい)も滅茶苦茶可愛いぞ!!うおおおお!!!イヌ飼いてぇ──!!!!(なんかちょっと企んでるTRACE)

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