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Wizard(魔法使い)
プロローグ
作:MIST




八月になり、台風のシーズンが訪れようとしている。
家の外を眺めると、全てを飲み込むような深い闇のような夜の中、風が全てを吹き飛ばそうと荒れ狂い、空からは針のような雨が地面を突き刺しそうな勢いで打ち付けている。
天気予報士が言うには、夜中には通り過ぎるらしい。この状態では、どれだけの被害が出るのか予想すら出来ないだろう。

そのような暴風雨の中、一人の黒いフードを被った老人が、座る場所すらない円錐形のタワーの頂上に立っていた。何かを探しているかのようにキョロキョロと辺りを見渡している。ものすごい風が吹いているはずなのに、フードは少しも揺れていない。急に、その老人は、紅い目を大きく開くとタワーの上から飛び降りていった。


「はぁ〜、帰れないよ。」
准は、大きくため息をついた。
僕の名は、矢川 准(やがわ じゅん)、海相高等学校に通う18歳の男子生徒である。
校風が自由なこともあり僕は、髪を背中まで伸ばし首のあたりで縛っている。身長は160cmで男にしてはかなり小さい方である。体つきは少し細身の感じをうけ、見た感じの通り気が弱い性格をしている。

「さっさと帰らね〜からだよ!」
ため息をついた准を見ていた和彦が呆れたような声をあげた。
南 和彦(みなみ かずひこ)、准の小学校からの友人である。准と違いかなり能天気な性格をしている。
准は、今日が夏休みの最終日だったこともあり、友達の和彦の家に遊びに来ていた。
実際は、夏休み前半で終わらせた准の宿題を、和彦が写す為であるが毎年のことなのであまり准は気にしていない。

「今日は泊まってくか!?」
少々、心配した和彦が准に泊まるように声を掛けた。
「いや、いいよ。」
しかし、気の弱い准は、泊まるのはさすがに悪いと感じ暴風雨の中、帰るほうを選択することにした。だが、この時准は死んでも泊まって帰るべきだったことを思い知ることになる。


准は、家に帰るには、このビルの建築現場を通るのが一番速い。どうしても早く帰りたかった准は、このビルの建築現場を通る事にした。

ここは、昔和彦と遊びに行ったこともある場所だった。昨年までは、綺麗な空き地でおさないころは、野球とかをして夜中まで遊んでいたものだった。
『この辺も変わったな』と准は感じながら建築現場を通り過ぎようとした。
その時、突然、准の髪が舞い上がりものすごい突風が通り過ぎた。持っていた傘も、一瞬に飛んでいってしまった。
准は、飛んでいった傘の方向を雨に打たれながら少し見ていたが、早く帰ろうと歩き出した瞬間、頭上から『ガラララッ』と鈍い金属音が聞こえてきた。
見上げると、細長い赤い鉄の塊が何本も自分に向かって落下している。准が、それを理解するよりも速くその鉄骨は大きな音をたて、准の体を押しつぶしていた。
その准の姿を、一人の黒いフードを被った老人が遠くから紅い目を光らせながら眺めていた。

「うぅ〜〜んっ」
准は暫くの間気を失っていた。先ほどの轟音はもう聞こえてはいない。どういう訳かあれほど吹いていた風の音すら聞こえていない。
暫くは、自分に起こったことが理解できていなかった准だが、風に倒れた鉄骨に押しつぶされたことを思い出した。が、痛い場所は一つも無く、冷たく降って来る雨の感触もなかった。不思議に思い目を開けてみると、レンガで覆われた小さな小部屋に准は寝かされていた。

「気が付いたかね!」
まだ、准は目の焦点が完全には合ってないのか、何処から声が聞こえたのか分からなかった。暫くして目の前に黒いフードを被った老人が怪しげな黒い本を読みながら笑み浮かべ椅子に腰掛けているのが分かるようになった。
「ここは、一体」
准は、工事現場にいたはずの自分が何故ここにいるのか理解できていなかった。

「それに、鉄骨に・・・・・」
と、体を押しつぶされたような感覚は残っているのだが、とりあえず5体は繋がっていることは分かる。准は自分の姿を確認しようと動かそうとするのだが体がだるく指一本動かすことが出来ない。それに、少しでも気を抜くと意識が飛んでしまいそうである。

「動かさんほうがえぇ・・!さっきまで死んでおったのじゃからの〜!」
そう言うと黒いフードの老人は、側にあった杖を取り椅子から立ち上がると准の方に寄ってきた。

「死んでいた・・・・・・?」
准は、近づいてくる老人の言った内容がまったく理解できなかった。それも当然である。死んだ人間が生き返るわけが無いのだから。

「そうじゃよ!お主はさっきまで死んでおったよ。どうやらうまくいったようじゃのう!見事に再生しとるわい」
老人は、毛布に包まれた准の体を見ながら笑みを浮かべていた。

「一体何が・・・・」
と聞き返したのだが、限界だった准が覚えていたのはここまでだった。准が自分に何があったのかを理解したのは次の日のことだった。




(あとがき)

少々、魔法使いシリーズに挑戦してみました。
誤字脱字がいろいろあると思います。勘弁してください。
Mlchemist(錬金術師) のほうは暫く停滞しております。申し訳ございません。
新作はなるべく速くUPしたいと思います。


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