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Mlchemist(錬金術師)
第3話
作:Mist



光サイド



今日は、僕が女になって最初の登校日。当然のごとく眠れるわけも無く、その前日は、ずっと寝床で朝が来るのを待っていた。
いくら光といえどやはり不安と言うものは存在している。

学校には、かつらを被り、さらしを巻いて、ずっと女だったことを隠して登校していたというかなり無理のある設定で水島先生が説明していたらしい。
確かに、うちの高校には、水泳は無いがそれでも無理があると思う。
しかも、どうやったのか戸籍まで変更していた。

朝6時の携帯のアラームが鳴り、仕方なく僕は、眠たい気持ちを押し殺し、少し早い朝食を食べることにした。
「姉貴、おはよう」
階段から誰かが降りる音がし、敦が眠そうな顔をしながら、階段を降りてきた。いつの間にか兄貴から姉貴になっている。

「敦、おはよう」
既に諦めてはいたが、もう僕が男だったという認識はこの家には無い。

僕は、朝食のパンを食べ終わると、学校の用意をするため階段を上がり、自分の部屋に行く。
壁に掛けてある女物のブレザーを着る。そして洗面所で顔を洗い、化粧をして目の前の鏡を見ると、そこには化粧する前の顔より更に一段と可愛い顔をした女の子がいる。

洗面所を出て、一旦リビングに戻ろうと一階の廊下を通る時、僕は、起きてきた父さんと母さんに、一階の廊下で鉢合わせした。
その女物のブレザーを着た僕の姿を見て、二人とも目の色を変える。

「やっぱり私の娘だわーっ。可愛いわ」
「光、パパと呼んでくれないか!ずっと、娘にそう言われるのが夢だったんだ。」

父さんは言いわめきながら後ろから僕に抱き付いて来た。自分の子供でなければ完全にセクハラである。その瞬間、当然のごとく、僕に投げ飛ばされ、父さんは廊下の壁に埋まっている。
「女の子がそんなことするものではありません。」
と母さんは叱咤するが、僕としてはそんなことをされたのではたまったものではない。

「母さん、父さんも娘、欲しかったんだよ!うおーっ光」
父さんは何時復活したのか僕の後ろに立って、必死にそんなことを叫んでいる。
何故か、両親とも朝からハイテンションある。

両親とそうこうしている内に、時間は8時を指していた。僕は、助けてと学校に行こうとしていた敦に視線を送る

「姉貴も大変だな!じゃ 行ってくるよ。」
と言いながら敦はそそくさと玄関を出ていった。
僕は、敦に「裏切り者」と思いつつも、家のチャイムが鳴った時に両親から逃れると、

「じゃ、私も学校に行ってきます。」
と言い、徹と学校に向かった。昨日今日ではやはり女言葉を使うのはまだ少し違和感があった。

僕が、学校に着いてクラスに入るといきなりクラス中の男子が大騒ぎになる。どうやらまだ生徒には知らされているわけではなかったらしい。
即にクラスに行かず、職員室に寄ってから来るべきだったと後悔しつつも、もう後の祭りなので、そのまま自分の席に座る。

「もしかして、相川君!」
僕が、入った時転校生だと思ったようだったが、僕が座った席と顔を確認して隣の女生徒が聞いてきた。
その言葉を聞いたクラスメート中に又、どよめきが走る。何時の間にか、僕の周りに男女にかかわらず集まってくる。
僕は、こうなる事を朝から想像していた事なので、動揺はしないが、前が見えないほど人が集まってくると流石にあつかましいことこの上ない。

「ホントに相川か!」
「相川君は、男じゃないの?なんでそんな格好してるの!」
「お前、可愛いな!」

特に、前の席の実(みのる)は相当興味があるらしくしつこく聞いてくる。
僕は、嫌気が差し「助けろ」と徹にサインを送るが、徹は「自分で何とかしろ」と言わんばかりに手を×印にする。

僕は、説明する事も出来ないのでどうしようかと思っていると、ホームルームのチャイムが鳴り、相変わらずの青のジャージ姿で鉄(担任の先生)がクラスに入ってきた。出席簿をトントンと鳴らしながら、出席を取る。
そして、鉄がクラスメイトに僕についての説明をした。

今まで、僕は道場の関係で男のフリをしていたと言う設定になっていた。どこで調べたのか、
矢神流柔術は女性が学ぶことは許されていない道場だと言うことを水島先生は知っていたらしい。
そう、こうなってしまった以上、道場も止めないと行けないのだ。

ホームルームが終わってからも、今日一日クラス中大騒ぎだった。
僕は、今日一日疲れる一日を送った。


僕は、疲れる一日を毎日のように送りながら、女になったあの日から、
1週間が過ぎたある日。

僕は、学校の帰る途中に今日の夕食の材料を買いに、スーパーに寄った。
その帰り、スーパーの角を曲がろうとして、僕は何かにぶつかった。
「キャッ」
僕は、女らしい声をあげ、その場に倒れた。「だんだん僕も女らしくなっていっているな!」
と思いながら、見上げると

「すまない。」
自分と同じ位の年齢の、黒髪の男が、こぼれた野菜を拾って、謝って来た。
だが、僕は、この男に何か只ならぬ普通とは違う気配を感じていた。というよりいる気配がない。

「いえ、こちらこそ、すいません!ありがとうございました。」
と謝り、僕はこぼれた野菜を受け取り、袋に入れ直すと急いで家に帰った。

この出会いが、この男が、自分に密接な関わりを持つことになる。


家に帰り、僕は夕食の仕度をする。
道場が無い日は、僕が夕食を作っていたので、食事を作るのは気にはならないが、
ただあの日から僕がずっと作っているような気がする。


「姉貴、今日は何!」
敦が階段から降りてきて、夕食の中身を聞いてくた。

「カレイの煮付け と 豚汁 に ワカメの酢の物かな」(ちなみに作者の好きなもの)
家族は洋食派だか、僕は完全に和食派である。
僕が作るのだから当然、食べたい物を作る。

「えー、また、和食かよ!」
敦からいつものような愚痴がこぼれる。僕も敦が、肉が好きなのは僕も知っている。が、
文句を言われるとたまったものではない。

「いやなら、自分で作りなさい。」
僕は敦に対して、ほんの少しだけ文句を言うと、

「作れねーもん!まぁ うまいからいいや!」
敦は、そう言いながら僕の用意した夕食を食べ始めた。


その夜、僕は、食器の片づけを終了させ、寝る前に自分の部屋のベランダで星を眺めていた。
僕は、何故か夕方会った自分と同じくらい年齢の少年が気になっていた。 『少なくとも自分と同じ、いやそれ以上の実力を持っている』というのが気配で分かる。 だが、どうしても僕には悪い人間には思えなかった。



修二サイド


「ミナ」
ミナの胸には、大きなナイフが刺さっている。もう助からないのは、誰の目からも分かる。

「ごめん・・ね・・。約束・・はたせ・・そうにな・・いね。」
ミナの目から一筋の涙が漏れる。

「もういい、ミナ」
冷たくなっていくミナを抱きながら。俺は、泣いていた。

修二は、目を覚ました。
「また、この夢か!」

守り切れなかった少女、自分が一人の少女すら守ることが出来ないと知ったあの日から
修二は、強くなりたいと思うようになった。

修二の職業は、依頼された物を遺跡から発掘される前に取ってくるのが仕事だ。
教授にも依頼された事もあると言うか一番多かったのは教授だった。


「随分うなされてたみたいね、はいコーヒー。で、どうやって探す気なの!」
令姉は、修二がうなされていたことを心配してコーヒーを入れながら聞いてきた。 教授のことは知ってはいたが、修二が、この2年間どんな人生を歩んできたか全然知らない。ただその雰囲気から普通の今の学生達と同じようなことをしていたとは思えない。 しかし今、修二がしようとしていることを出来る限り聞いてあげたいと思っていた。

「とりあえずは、情報を探ってみる。この日本であった出来事などをね。そして裏の情報を」
「情報屋を使うって事」
「あぁ、例の物も仕入れてもらってるし、受け取りに行かないとね。」

「私の方からも警察に寄せられている情報を調べておくわ。」
令姉は警察の本庁に勤めている。ちなみに修二の職業がばれるとクビになる。

修二は、昼間に家を出て酒場の店長のところに向かう。

「オーナー、」
以前、日本で仕事をした時に、この店のオーナーにお世話になった事がある。
裏の顔として、情報屋をしている。

「例の品届いてますよ。勘弁してくださいよ。本来はこんなことしないんですよ。」
オーナーが答える。

「すいません、ありがとう」
修二はそう言いながら、オーナーからずっしりと重いバックを受け取った。 中には、サイレンサーと一丁の銃とその弾一式とその他の道具が入っている。 どれも日本に持ち込めないものばかりである
そう修二は、武器の使い方と火薬の使い方は超一流なのだ。

「それと、何も聞かず細川運搬会社を探ってくれないか?」
細川運搬会社は、表向きはただの貿易会社だが、裏で世界の政界を担っていると言われている、「シャドー」との繋がりがあると言われている。

「シャドー」世界一の犯罪組織であり、戦争が行われる所に必ず現れ、絶対に証拠を残さず尻尾を掴ませない所からこう呼ばれる。正式名称を知る者はいない。

そう「シャドー」こそ、今、修二が敵にしようとしている組織なのだ。

「細川運搬ですか?と言うことはシャドー関係ですね。分かりました。」
オーナーは何も聞かずに、そうとだけ答えた。
情報屋は信用が命だから必要以上のことは聞かない。

「頼みます。」
修二は、そう言って酒場を出ていった。


それから時間が経ち、修二が帰国してから一週間が過ぎたある日、オーナーに呼ばれ昼の酒場に向かった。
「今回は、細川運搬にシャドーが接触したと言う情報は無かったですね。」

「そうか」

「それと、ある羽芝機械研究所がここ2・3日の内に、リストラを決行しているのです。」

「この不景気の時代、どこでもリストラはあるだろう。」
修二はいまいち納得いかない表情をしている。

「しかし、その後海外から大量の研究員を雇ってるんです。しかも、 今までは人口頭脳ばかり研究をしていたはずなのに、急にウィルスや薬物研究者ばかりを」
オーナーはそう言うとケースから白いリストを取り出した。

「そう言う事か、分かった。もし何かほかの情報があったら教えてくれ。今回もいつもの所に振り込んでおくから」
修二はそれを受け取ると、酒場から出ていった。


その帰り、「羽芝機械研究所か」と考え事をしながら歩いていると、

「キャッ!」
修二は、スーパーの角を曲がろうとして何か柔らかい物とぶつかった。まったく気付かなかったため、何とぶつかったのかと思い見ると、
それは、自分と同じ位の年齢の少女だった。

「すまない!」
修二はこぼれた野菜を拾い、謝る。何故か、少女が怪訝そうに、見ていたが

「いえ、こちらこそ、すいません!ありがとうございました。」
と少女は謝り、野菜を受け取り去っていった。

修二は去ろうとして、彼女が生徒手帳を落とした事に気が付いた。
届けようとしたが、もう彼女を見つけることは出来なかった。


今は小さな出会いではあるが、その後、二人はお互いを意識するようになる。
タイムリミットまで後5ヶ月と3週間

後書き
だんだん光ちゃんは、精神的にも女性化して行きます。そして、戦う事は出来なくなっていきます。
その為に、修二君を登場させました。修二君には、これからアクションを演じてもらいます。
周りの人達は、何とかして、光ちゃんを救おうとします、
特に、光ちゃんの運命は修二君と水島先生にかかっています。
今回は水島先生は登場しませんでしたが、水島先生のストーリーも作ろうかなと思っています。


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