戻る


Mlchemist(錬金術師)
第2話
作:Mist




僕は、帰宅途中に、ランジェリーショップに寄って、下着を購入した。

「光(ひかる)が女の子になったとは先生から聞いたときは、信じられなかったけど、ホントに可愛くなったわね!」
母さんは、きらきらと目を輝かせている。

「先生にも言われたよそれ。」
僕は、うんざりしたような感じで答える。

「でも 母さん夢だったの! 結婚したら女の子がほしいと思ってたの。 こんな形で、かなったんだもの。先生には感謝しないとね!」
母さんは、実は物凄く女の子が欲しかったらしい。

「つやのある綺麗な髪ね〜。うらやましいわ。」
母さんは、僕の髪を触りながら、感嘆に浸っている。

「そう言えば、これから13時に、徹(とおる)が来るから!」

「徹君が、どうするの?」
母さんが聞いてくる。

「別に、このまま行くけど」

「だめよ、光ちゃんは女の子なんだから。身だしなみぐらいは整えなさい。」
母さんは、僕をもう完全に女の子扱いしている。

「昨日まで、男だったんだから、服なんてあるわけ無いだろ!」

「それもそうね! 」

母さんは、そう言うと隣の部屋のタンスから、白のワンピースやフリフリのスカートなどを引っ張り出してきた。

「母さんが昔使ってた奴だけど、サイズ合うかしら!」

僕は、母さんに強引に化粧をさせられた後、白のワンピースに着替える。
正直、僕は母さんがこんなの着ていた姿は想像がつかない。

「バッチリね!捨てないで取っておくものね。制服も揃えないといけないし、明日、服買いに行きましょうね!」
母さんは、完全にうきうきモードに入ってる。

「次は、これ その次は!」
完全におもちゃである。

「そう言えば、敦(あつし)は!」
この地獄から逃れるようと、僕は敦の話題を出した。

「今日は、バレーの練習試合らしいからいないわよ。父さんは泊り込みでゴルフだし!敦、帰ってきたら驚くわよ!」
そりゃそうでしょう自分の兄貴がいきなり女になっていたら。

「そうそう、その言葉使いも治さないとね。女らしい言葉使いも教えてあげる。化粧の仕方もね!」





そうこうしているうちに、ピンポーンと家のチャイムが鳴る。
もう13時を回っていた。

「おーい、光」
徹の毎度お馴染みの大きな声がこだまする。

「あー 今行く。」
と言いながら、僕が玄関に行こうとしたら、母さんから 「日焼け防止に、これ持って行きなさい」と、どこで買ったのかピンクリボンの付いた麦わら帽子をわたされた。

「光、ロード・オブ・ザ・リング おごるから見に行こうぜ。えっ、なんだその髪、その服、女装か!」
僕は、徹がそう思うのも当然かなと思いつつも

「な訳ないだろ。全部本物だよ。昨日知らない間にこうなったんだよ。」
深く説明しても、徹に理解できる訳が無いため、こう答える。
それに、徹は、人が答えにくそうな事は深くは追求してこない。僕は徹のこういう所を気に入っている。

「でも、可愛くなったな!」
徹は、僕の顔を見ながら頬を赤く染めている。

「行くんだろ!さっさと行くぞ。」
今日、昨日と何度も聞いている言葉なので、僕は、うっとうしくなって徹の言葉をさえぎった。 
帰ってきた後の父さんと敦にも、言われたのは言うまでもない。

徹は、映画の券を買いに受付に行っている。

麦わら帽子を取って徹を待っていると、さっきから通りかかる男が必ず僕の顔に視線を移す。
「僕の顔に何かついているのかな?」と思っていると、

「光ちゃん、もてもてね」
と不意に後ろから女の人の声が聞こえた。

「あっ 水島先生」

「光ちゃん、体の調子はどう!痛いとこない?」 
水島先生は、心配してくれている。

「とりあえず、無いですよ。それに水島先生、光ちゃんは止めて下さい。」
僕は、そう答えた後、水島先生の言葉で、男の視線の意味に気が付いた。

「いいじゃないの、可愛いんだから!そう、それならいいわ。あっ ちょうどいいわ、 学校で渡すつもりだったけど、今、渡しておくわ。」
と鞄から、青いカプセルを取り出した。

「これは、いったい」
僕は、水島先生に質問する。

「必ず、飲みなさい。一日に1錠よ。絶対よ。じゃ、先生はちょっと調べ者があるから。」
とだけ言って、水島先生は去っていった。

これから先、僕は半身半疑ながらも僕はこの薬を飲み続けた。
後々、これを飲み続けたか、飲まなかったかで僕の明暗がハッキリと別れることになる。

その後、僕は徹が呼んでるのを見て、映画館に入った。


映画の帰りに、突然、クレープ屋を見て、「クレープが食べたくない」と徹が言い出した。

「買ってくるから、そこの公園で待ってってよ。」
と徹は言い、クレープを買いに行った。

噴水の前のベンチに座っていると、光の周りに鳥がどこからともなく集まってくる。
白のワンピースを着て、噴水の前で、鳥とたわむれている光の姿は、まさに天使の様な美しさであった。

しばらくして、僕が、「徹の奴 遅いな」と思い始めていた時、
突然、バサッバサッ と音を立て、一斉に、鳥達が飛び立つ。

「ねえ〜ねえ〜かっのじょ〜っ、いまひっとり〜っ?」

いきなり声をかけられて、振り向いて相手を見た。

「え…………っ!」
 
へらへらといかにもスケベそうな笑いを浮かべながら、ど金髪に髪を染めた奴と、スキンヘッドのいかにも不良と言うようなの三人組が近づいて来た。

「何、何か用!」
僕は、何故かこいつらの笑いに背筋が寒くなるのを感じ、少し威圧的な声で、言う

「よかったらさー、ボクらとカラオケ行かな〜いっ?」
いくらなんでも、目の前の男達が何を求めているのかは多いに想像がつく。

「行きません。」
僕は、立ち上がり、この場を去ろうとする。

「そんなこと言わずにさ〜っ?」

「そんなスケベそうな顔で、女の子が誘えると思ってるの、出直して来なさい。」
僕は、手をしっしっと振りながら言う。

気付かなかったが、この時、僕は、どう言う訳か、女言葉になっていた。

「このアマ!下手に出てればいい気になりやがって。」

金髪の男は、そう言って僕の肩に手をかける。
その瞬間、金髪の男は、宙に投げ飛ばされ噴水の水の中に落ちる。

「何っ」

不良たちが、この一瞬の出来事に動揺した瞬間、僕は、一番前にいた背の低い男に蹴りを出そうとして、 今日はスカートであることを思い出し、やめる。
こいつらに下着を見せてやる義理は無い。
僕は、仕方なしに、背の低い男の鳩尾に肘を入れる。

「この」

と後ろから向かってくるはげ頭の大男の拳を、ミリ単位でかわすと足を払う。
はげ頭の大男が、体制を崩しこける瞬間に、延髄に手刀をいれる。

僕は、すこしやり過ぎたかな? と思い、自分の携帯で救急車を呼ぶ。

「とりあえず、これで大丈夫かな!それにしてもスカートは動きにくいな!」

と言いながら、僕はやけに遅い徹を迎えに、クレープ屋に向かった。

その日帰った後、母さんに朝まで強引に女の子の言葉使いについて、レクチャーさせられたのは言うまでもない。




その夜、学校の実験室に、水島先生の姿があった。

「これは、あまりにもブラックボックスが多すぎるわ。急がないといけないのに!」
と水島先生は真剣な表情で頭を抱えながら考え込んでいた。




その頃、イギリスからある男が帰国した。この男こそ、この物語のもう一人の主人公である。 その男の名は、神城 修二(かみしろしゅうじ)年は17歳、身長170cmと高い方ではではない。 が、眼光はやけに鋭い。

空港でタクシーを捕まえて、姉の家に向かう。

そこには、サングラスを掛けたど派手な女が修二を待っていた。
彼女の名前は、神城 令子(かみしろれいこ)修二の姉である。

「あっ、令姉、ふう!やっと着いたよ!」
修二は、疲れた表情しながら言う。

「大きくなったわね。2年前まではこんなに小さかったのに!」
令姉は、手を胸あたりに置く。

「2年も立てば、背も伸びるさ。」
と言いながら、令姉の家に入る。

「一応、ただいまかな!」
と言いながら、リビングのソファーに腰掛ける。

令姉はキッチンに行き、コーヒーを入れる。

「で早速聞くけど、帰ってきた理由は、何!」
令姉は、急に真剣な表情になって聞いてくる。

「教授が、亡くなりました。いや、奴らに殺されました。奴らはエリクサー(賢者の石)を狙ってます。」
修二は、コーヒーを口をつけ、話始める。

「そうー。でも、あれは、まだ未完成品でしょ。」
令姉は何とも言えない表情で答える。

「いや、教授は、失われた錬金術の粋を極めた幻の妙薬エリクサーの再現に成功させていたんです。 エリクサーは、たとえどんな病気だろうと、怪我だろうと、治すことができる、例え死んだとしても 3日以内なら再生できる。しかも、未完成品にはあった副作用もない。」

「どんなに金を積んでも、ほしい人はいっぱいいるでしょうからね!」

「だけど完成品の作成方法が記された教授の手帳は奴らに奪われました。」
修二も、不意に真剣な表情になる。

「奪われたーっ」
令姉は大きな声をあげる。

「正確には、俺が駆けつけた時には、奪われた後だったんです。でも、大丈夫ですよ。奴らには あの手帳は読めません。俺にも読めませんが、あれがどうやって作られているのかは知りませんが、 あの手帳は、エリクサーを使った人物しか読めないんです。」
修二は、コーヒーを飲みながら、淡々と話す。

「出来あがったエリクサーは、どこにあるの。」

「奴らが日本に向かったという情報がありました。だから、出来あがったエリクサーは、教授が多分、 殺される前に処分していると思います。でなければ、わざわざ日本まで来たりはしないと思う。それに、 素直に渡すような人ではありませんから。」

「なぜ、奴らが日本に向かうの!」
令姉は、疑問に思い質問して来る。

「教授は、日本人の誰かに、未完成品のエリクサーを渡しているらしいんです。」

「という事は、奴らは、その人を探すでしょうね。」

「だから、俺は日本に帰ってきたんです。その人を守り、手帳を取り返すために。それに、幸いにも奴らは、 まだ俺達の存在を知らない。」

「それに、未完成品のエリクサーは、確かにその時は治るが、それは完全に治るわけじゃない。 半年後には、細胞が破綻をきたし、死にいたる。所詮、その場しのぎに過ぎないんです。 だから、奴らも急いでその人を探している。」

「でも、その人が使用して、もう亡くなっているという可能性もあるわよ?」

「確かにその可能性もあるけど、使用してない又は、使用してまだ、生きている可能性だってある。もしそうなら 急がないと手遅れになる。もしかしたら、相手の動向を探っているだけの時間は無いかもしれない。」

修二は、もう中身の無くなったコーヒーカップを見ながらそう答えた。


たが、光は、まだその事実を知らないのである。
タイムリミットまで、あと半年である。


戻る

□ 感想はこちらに □