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Mlchemist(錬金術師)
作:Mist




「も〜 5分」
「兄貴、もう8時だいいかげん起きろよ。遅刻するぞ」
弟はそれだけ言って階段を降りていった。
「えっ 」
僕は頭の上においてあった目覚まし時計を取り、眠気のさめない目で時計を見て驚いた。
「やべぇ」
壁にかけてあるブレザーに着替えると、急いで僕も階段を降りていった。
「あれ、敦(あつし)は?」
「もう学校に出かけたぞ、今日はテストだろ。大丈夫なのか」
父さんがコーヒー片手に、渋い声で言う
「大丈夫だよ!」
軽く洗面所で顔を洗い、寝癖を治していると、家のチャイムが鳴った。
「光(ひかる)、学校行くぞ!」
近所迷惑になりそうな声が、朝からこだまする。
「徹のやつ、声でけぇんだよ。じゃ〜 行ってきます。」

彼の名は、東山 徹(とうやまとおる)身長178cmで、髪の毛を真ん中でわけてある、
体格に似合わず運動からっきしな、万年赤点男である
僕は、相川 光(あいかわひかる)身長160cmで、女顔だし、体つきはちょっと細身の感じだが、
古流武術 矢神流柔術の免許皆伝の腕前である。(はっきり言って、むちゃくちゃ強い) 

昔、不良にからまれていた徹を助けて以来、何故か馬が合いいつでも気軽に話の出来る親友
のような関係になり、もう中学・高校と付き合いが続いている。 

僕は焼けたトーストを取ると、むりやり牛乳で胃に流し込むと、カバンを引っつかんで玄関へと急いだ。

「さっさと行こうぜ。遅刻からさ!」

徹はそう言うと、全力疾走で駆け出した。

なんとか、時間ぎりぎりいっぱいで学校に到着した。

放課後

今日で1学期期末テストが終わり、テストから開放され徹が話し掛けてきた。

「はぁ 今日の物理、間違いなく赤点だよ。」

徹は頭を抱えながら愚痴っていた。
「おまえはいいよな 毎回 学年トップの成績だもんな。俺なんて良くて赤点ギリギリだぜ。」

「おまえが勉強しないからだよ」
僕は、呆れながら言った。

「同じように遊んで、道場通いまでしてるのにお前はいつ勉強してるんだ。」

「時間なんて、いつでも作れるんだよ。お前の要領が悪いんだよ。」
と僕は、さらに呆れながら答えた。
「徹は鉄(担任の先生)に呼ばれてるんだろ、僕は、道場に寄るから、先に帰るよ。」

「はぁ、絶対夏休みの補習の話だよな〜。そうそう明日休みだろ、どこかに遊び行こうぜ」
徹は、いやそうな顔をしながら、僕に聞いてきた。
「分かったよ」

「明日の13時に光の家に行くからな。」

「分かったから、さっさと行け。」
僕は、少し怒り口調で、答える


僕は道場終了後、帰宅途中近道をしようと人気の少なくなった公園に、差し掛かった時、
何か小さな声のような物を聞いたような気がした。

おそるおそる警戒しながら、行って見ると
「物は、持って来ただろうな。」
と、男の低い声が聞こえてきた。
暗い中、目を凝らしながら、黒のコートの男4人と、背は低いが、丸っこい男が何かを取引していた。
二メートル近い巨躯がリーダーであることは、すぐに分かる。

そう 僕は麻薬の取引現場に出くわしてしまったのだ。

だが、あまり興味のない僕は、その場から去ろうとした。

パキ!!!

しかし、その際に小枝を踏んでしまった。

「誰だ! そこにいるのは?」

取引をしていた者、全員がこちらに振り向いた。

「ちっ 気付かれた!」
僕は、意を決して木陰から飛び出した。

その瞬間、取り巻きの一人に蹴りをかます。派手な音を立てて黒コートのひとりが勢い良く吹き飛ぶ。

「何!」

その次に、その隣の黒コートたちを一気に蹴散らす。あっという間に巨漢の男と丸っこい男だけになった。

僕が飛び出たのは、どんな状況でも負けない自信があったからだ。

しかし、巨躯に黒のコートの男は不適な笑みを浮かべている。

「お前一人か?」

巨躯に黒のコートの男が聞いてくるが、僕には答える気などなかった。

攻撃に移ろうとした瞬間、僕は、後ろに人がいた事に全然気付かなかった。
気配がまったくなかったのだ。
ドカッ 
僕の後頭部に衝撃が走った。
「しまった!!」


「見られていたとはな、もっと慎重にやれ。」
細身の男だが、眼光は鋭い。
「兄貴 すまねー! こいつどうします、殺りますか。」
巨躯の男が、懐からナイフを取り出した。
「いや、今、ここでは証拠は残したくない!
ここは新しい毒物を使う。ちょうどいい試作品の新薬を使う。これは死体から毒物が検出されない
優れものだ。こいつには少し実験台になってもらう」
兄貴と呼ばれた男が、笑みを浮かべながら言う

「いっ・・たい・・何を・・するつもり・・だ」
薄れそうな意識の中、僕は弱弱しい声を出した。

「ほぉ まだ意識があるのか たいしたもんだ。」

「君は見てはいけないものを見てしまったんだ。」
細身の男は言うと、僕の髪を掴み、僕に毒物を飲ませると、黒コート達は、どこかに消えていった。

熱い 体が燃えているように熱い!!!

体の奥からの焼けるような熱さに耐え切れず、僕は意識を失った。 


「―っ、う・・・ん ハッ」
固く閉じていた目をこじ開けるようにして、僕は目覚めた。
僕は、一瞬自分がどこにいるのか解らなかったが、ここが学校の保険室であることに気が付いた。
体になにやら違和感を感じたが、とりあえずは無視して、昨日のことを思い出そうとした。

「とりあえず、助かったんだ。」
安堵し、僕は腕時計の時計を見ようとした。
すると長い髪が光の視界に映った
「えっ なんだこの髪」
かわいらしい少女のような高い声が聞こえた。
よくよく見ると髪を掴む、鍛え上げられいたはずの腕も、ひとまわり細くなっていた。

僕は、壁にかけてある鏡の前に向かう。
そこには、腰まである長い黒髪の、もともと女顔ではあったが、さらに可愛い女の子の顔と、
ブレザーの胸の部分がはち切れんばかりに膨らんでいる。

「あ 光君 起きたんだ!」
水島(みずしま)先生が保健室に入ってきた。

水島 彩(みずしまあや)科学と保険の先生である。美人なんだが少しいやな趣味があり、
科学の実験が大好きらしい。

「ここは、どうして、僕はここに? それに僕はいったい?」
僕は、困惑気味になって、水島先生に尋ねる。
「それはね ここにあなたを運んだの私ですもの それにしても光君、可愛くなったわね〜」


僕は、水島先生に昨日の経緯を話した。

「大変だったわね」
「信じてくれるんですか?」
「あなたの目が嘘を言ってないもの、人は、目だけは嘘はつけないものよ。それにねあなたを見つけたとき、
生きてるように見えなかったもの。」
水島先生は、たばこに火をつけながら答える。
「昔ヨーロッパに言った時にね、死んだ人間でも生き返る妙薬をある人から貰ったの、名前なんだったかな!忘れちゃった。
強力な副作用があるらしいから、今まで使えなかったのよね。いちかばちかと思って使ってみたんだけど、
まさか性転換するとは思わなかったけど!」

「治せないんですか!」
僕は、ゆっくりと口を開いた。

「あの妙薬はもう無いもの、はっきり言って今の段階では治せないと思うわ!」
水島先生は、考え込む様な仕草をしてから答える。

「そんな!」
そんな水島先生の言葉に、僕は絶望的な声を上げる。

「そんなにめげない、可愛くなったんだから、女の子としての楽しみもあるわよ。私はもう帰るけど、
家には連絡入れてあるから、一旦家に帰りなさい。それから一応下着は替えてあるけど、
ブラぐらいは買っておきなさい。」
吸い終わった煙草を始末すると、そう言って水島先生は保健室から出ていった。

こうして、これから僕は女の子として、人生を歩むことになった。

「帰りにでも、ランジェリーショップにでも寄るか。
そう言えば、徹が昼から来るって、言ってたな。どうしようか?」
と僕は、独り言を言いながら、帰路についた。

その後、光使われたこの妙薬が、一悶着を起こすきっかけになるのだがそれはまだ、先の話である。


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