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 俺は「あんた」だ。これはあんたが体験していることなんだ。
 このときもひどい目にあったぜ……




『Maid of Fire』

作:城弾





 朝日が俺の頬をくすぐる。
 半分寝ていて半分起きているこの心地よい時間。だが、女の足音が近づいてくる。
 多分……と言うまでもない。住み込みのメイドの真彩香だろう。ん……? それにしちゃ足音が早すぎるな。ベッドまで一直線だ。
 頬をくすぐるのが朝日だけではなくなった。髪の毛だ。
 真彩香……いつから香水を…………俺はまだ、まどろみの中にいた。
 それが『命取り』だった。
 匂いがますます近づく。いい加減に変に思って瞼を半分あけると髪の毛を二つに分けたメイドが……真彩香じゃない!?
 こいつは……だが、考えているうちにその女が唇を重ねてきた。
 ポジションとしては俺が下になっている。のどに何かを流し込まれる。
 『口移し』!? 俺は相手が女ということも関係なしに思い切り突き飛ばした。だがその拍子に、流し込まれた液体を飲んでしまった。
 どろりとしたいやな感触だ。薬くさい……薬?
「いったーいっ。……何すんのようっ!? 女の子にはもっと優しくしなさいよね」
 ツーテールのメイドが甲高い声で抗議したが、聞く耳持たず。
「『何をする』だ? それはこっちのせりふだ。松戸教授のところのメイド兼助手のあんたが俺に何を――」
「ああっ小夜子さんっ、そうですよ……用事があるというからお通ししたら、いきなりキスなんて……びっくりしましたぁ」
 部屋の入り口で、真彩香が両手をあごに当てて驚いていた。
「決まってんじゃない? 実験よ、実験。わが尊敬する……いいえ、愛するプロフェッサーの崇高な実験に選ばれたのよ。光栄に思いなさい」
 小夜子――幸島小夜子は無意味に胸を反らして高飛車に言い放つ。
「あのマッドサイエンテストの実験なんてろくなもんじゃない……その実験は阻止させてもらうぜ」
「いいえ。もう始まっているわ」
 歩み寄ろうとした俺に見えるように、何かのリモコンのスイッチを入れる。
 突っかかるつもりだった俺は、突然の違和感にうずくまった。「な――なんだ? 体が……」
 床に手をついた俺は変なものを見つけた。独身である俺の左手薬指にリングがはまっている。
 デザインとしては女物か? それがピリッと帯電したかと思いきや、信じられないことにその径が一回り縮んだ。
 そして俺の指に食い込み……はしなかった。指も同時に縮んだ。
 熱い。……体中が熱い。
 頭がむずがゆいと思ったら、いきなり髪の毛が伸びてきた。
 飲まされたのが「毛はえ薬」なら別にかまいやしないが、気になるのはこの髪質。
 まるで女の……いや、パジャマの襟元から見える俺の胸が、焼いた餅のようにどんどん膨らんでいく。
「ま、まさかっ!?」
 俺は必死で体制を立て直すと、パジャマの上を脱ぎ捨てた。
 間違いない。ウエストも縮んで……くびれていく。
 肩幅は格段に狭くなり、腕も細く。マッチョとまでは言わないが、そこそこあった筋肉は影も形もなくなり、代わりに白い柔肌が。
 そして体毛のほとんどが枯葉のように抜け落ち、つるつるすべすべの肌に変わる。
「そんな……」
 下半身はどうだ…………ないっ! なくなっているっ!!
 脚も恐ろしく細くなっているのに、尻はでかく……間違いない。認めたくはないが…………
「あららー、ずいぶんかわいくなったわねぇ。……真彩香、鏡見せてあげなよ」
 素直に手鏡をよこす真彩香。のぞき込んだそこには美少女の顔が映っていた。



『どわーっはははっ。実験は成功のようじゃな、小夜子』
 突然この場に松戸教授が姿をあらわした。いわゆるホログラフィってやつだ。
 伸び放題の白髪頭とひげ、黒いマント……と見事にマッドサイエンテストのパターンを踏んでいる。おまけに声が八〇見乗児そのまんま。
「教授……はい、それはもう大成功です。ですから……あの――」
『わかっておるわ。今夜はたっぷりかわいがってやるわい』
「きゃーっ♪」
 何か妙な交渉をした後で、勝手に盛り上がっている。
「……説明しろっ」
『安心せい。実験がうまく行けばちゃんと24時間で男に戻れるわい。おまえに飲ませたのはDNAに働きかけ、一時的に性別を変える薬じゃ。
 そのリングとセットでの、そこからの信号で体を変化させるのじゃ。段階を踏んで女に変えてそして男に戻す……じゃからそのリングを無理に抜くと戻るものも戻れなくなるぞ。まぁそれほどの器量良しなら人生を女でやり直しても問題はなかろうがな。
 しかしずいぶん若い姿になったもんじゃな。高校生くらいか? 好事家も多いからなぁ。一時的に別の人間になれるというのは高く売れそうじゃの。
 ……それでまた研究資金を稼いでくれるわ。では明日のこの時間にまた会おう』
 言いたい放題に言うと、教授(のホログラフィ)は姿をかき消した。
「それじゃお嬢ちゃん、しばらくの女子高生ライフを楽しみなさい。じゃあね〜っ」
 これまたさっさと消える小夜子。勝手なやつらばかりだ。八つ辺り承知で真彩香に怒鳴る。
「なんであんなやつを家に入れたんだっ!?」
「えーっ、だって小夜子さんお友達だし……それにしてもご主人様、すっごくかわいい声ですね」
 声だけだと十代前半で通じる少女声だ。
 改めて鏡を見る。今度は姿見だ。男物のトランクスを着けたままの少女が映っていた。
 確かに十代の少女にしか見えない。体型が変わったんでトランクスがずり落ちそうだ。
 サイズの点でもいつもの男物は着られそうにない。24時間経たないと戻れないなら仕方ない。
「真彩香、服を貸してくれ」



 結局下着から取り替える羽目になった。ショーツはまあいい。問題は胸のほうだ。
 くそっ、ブラジャーをはずすのはもちろん、着けてやったこともあるが……まさか自前の胸に当てることになるとは。
 確かにめったにできる経験じゃないがな。
「それじゃホックをはめますよ」
 真彩香のブラジャーを借りたが胸の形は千差万別。どうも背がちぢんだ分が胸と尻に集まった気が……
「痛い痛い痛いっ。絞め殺されるぅぅぅ」
 う、お約束……となるとこの後は――
「うわぁー、ご主人様グラマーでうらやましいですぅ」
 よかった。普通の感覚してなくてよかった。
 とりあえず胸の先端にバンソウコウを当てて、きつめのTシャツを着て胸を固定することにした。
「後でちゃんと買って来ましょうね」
「いらん、今日だけの処置だ。さて、服だが――」
 いくら今日だけといえどスカートは抵抗がある。
 だから唯一真彩香の持っているジーンズを借りたが……どうしても閉められない。
「うわぁ、ご主人様って安産型のお尻ですね。これならいい子が生めそうですね」
「恐ろしいことを言わないでくれ」
 いくらやっても入らない。観念して尻のサイズの関係ないスカートにした。
 ところが真彩香の持っているのは片っ端からミニ。膝頭どころか太ももが見える。
 こんなの履いたら……家から出ないならいいかもしれないが、こんな「女らしさ」を思い切り演出したものは履きたくない。
「ロングスカートはないのか?」
「わたしロングはそんなに好きじゃなくて……あ、このメイド服の換えなら――」
 つまりミニスカがイヤなら、メイド姿になるのか…………二択か。



ミニスカートをはくなら○ メイド服着用なら●



この物語はあなた方読者の決定にゆだねられる。結末を決めるのはあなただ・・・





後書き

 これはかなり変則的な展開です。
 何しろ次の展開を読み手にまかせてしまうのですから。

 もともとはお友達のホームページの、二択で遊ぶコーナーで以前に出したものの第二段で出したら見事に大こけ。
 どうも『自分』が女の子になっちゃう展開がイヤだったようです。客層を間違えました。

 そこで、もしかしたらこちらの皆さんなら乗ってくれるかな――と考えてこちらに出してみました。
 掲載から一週間で出た結果に従い、次を執筆します。
 主人公が完全に女になる展開に誘導するもよし。元に戻るようにするもよしというわけです。

 ちなみに『仮面ライダー龍騎スペシャル』とは……すいません、ラスト一行だけぱくりました。

 タイトルの方は同名の曲を捩っただけで、本当は『Made of Fire』が正解ですね。

 それでは、

「掲載一週間後の24:00までで、感想掲示板での投票が多かった方に進む。同点の場合は作者の一存で決定」

 ……ということで、よろしくお願いいたします。

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