戻る

スイッチ

作:OLSON

原作:Tactics

男子トイレ編

女子トイレ編






















































戻る

自分の記憶を総動員して、頭の中に屋上へと続く階段を描く。

階段を登リ、冷たい鉄の扉を開こうとすると…

『2つおりげんきん』

……。

『2ツ折リ厳禁』と書かれた札があった。

そう、点字でそう打たれていたのだ。暇でシュールな事をする人もいたものである。
とても折り曲げられそうにない金属扉を開ける。

ここは寒いけど私の好きな場所だ。
扉を閉めて、フェンスにもたれて心地よい風に身を任していると…
扉が開く音と、あの人の足音が聞こえてきた。

浩平「今日も夕焼けだな」

扉が閉まる音がした。浩平君もちゃんと閉めたんだ。

みさき「そっか、今日も夕焼けなんだね」

浩平「80点てとこだな」

みさき「高得点だね」

この人はここで知り合った後輩の男の子だ。
是非とも『ちゃん』付けで呼びたかったな…。

その時……。

「みさきーーーーっ!」

この声はっ!

浩平「…先輩の事呼んでるみたいだけど」

みさき「気のせいだよっ!」

「みさきっ、どこよっ!」

浩平「間違いなく呼び声が聞こえるけど…またか?」

「出てきなさい!」

浩平「…またなのか?」

読まれてる。

みさき「ぷ、プラズマだよっ!」

みさき「えっとえっと……」

みさき「私はいないって言ってね」

そう言って扉の反対側に隠れた。

ばんっ!

轟音と共に扉が開いた。

雪見「今度こそここだと思ったけど、感が鈍ったかな」

雪ちゃん冴えてる、今度もだよ。

雪見「あら? 浩平君じゃない。みさき見なかった?」

浩平君…上手くごまかして〜。

浩平「さっきまでここにいたけど、そこの排水パイプから逃げた」

雪見「何言ってんの、こんな狭い所入れる訳ないじゃない」

浩平「俺もそう思ってた、だが、『ゴキゴキッ!』て肩の関節外してヘビみたいに『ニュルン』と入って行った」

何か酷い事言ってる〜。

雪見「……凄い技身に着けたわね…」

浩平「俺もそう思う、凄く不気味だったぞ」

雪ちゃんは、そのまま戻って行った。

みさき「人を奇人変人大集合みたいに言わないでよ〜」

この可愛くて…ちょっと変な後輩の男の子と知り合って、こんな他愛のないやり取りができるようになっていた。




スイッチ
(男子トイレ偏)
作:OLSON

原作:Tactics





放課後、ある事情により全力疾走する。

雪見「みさきっ! ちゃんと掃除しなさいっ!」

後ろから声が聞こえるが無視する。今日は本当に急用なのだ。

そして角を曲がった瞬間…

何かがごんっ! とぶつかってきて…











………
……


痛い…アニメだったらヒヨコや星が飛んでるのが見える所だけど、現実には何の変哲もない廊下だった。

………

廊下?

まばたきをした。意識的にしたのは久し振りだ。

記憶を再生しているのではなく本当に見えている。

なぜ?

今のショックで見えるようになった!?
でも、私の目は何かの弾みで直るような物ではなかったはずだ。

見える。
なぜ?

と、その時痛みが蘇ってきた。

みさき(低い声)「あいたたた…あれ?」

声が変だ。耳が変になったのか、それともいつの間にか風邪引いたのかな?


ってそれどころじゃない。ぶつかった人に謝らなくちゃ!

そう思い、周りを見回すと…

額に手を当ててうずくまっている綺麗な黒髪の女の人がいる。この人かな?
そうだった。ここの制服ってこんな風だった。

…この人…どこかで会ったような?
お母さんに似ている?
いや、それよりも…

ピンク色の髪の人「ちょっと、みさき、大丈夫?」

雪ちゃんの声がする。と言う事はこのピンク色の髪の人が雪ちゃんなの?
よく見ると小学校の頃の面影がある。

でも、私ではなく黒髪の人に向かって呼びかけていた。
何で黒髪の人を私の名前で呼ぶの?

黒髪の人「深山さん、どうなってます? こんな真っ暗で大丈夫ですか?」

雪見「深山さん…て、どうしたの? みさき?」

また黒髪の人を私の名前で呼んで、肩を揺さぶっている。


その時、赤髪の女の人が駆け寄ってきた。

赤髪の人「浩平、大丈夫? その人にちゃんと謝らないと駄目だよっ!」

その人は私にそう話しかけてきた。
この声…? 終業式の時に浩平君と話してた人? でも何で私の事を浩平って呼ぶの?

黒髪の人「長森か? 一体どうなってるんだ? 真っ暗で何も見えないぞ?」

長森「……?」

怪訝な顔をした。

長森「…え?」

長森「えっと…ごめんなさい。誰ですか?」

黒髪の人「誰って…」

絶望的な表情をしている。この長森って人に自分のことを忘れられてしまったらしい。

でも、そんな事ってあるんだろうか?


雪見「大体真っ暗って、昨日今日見えなくなったわけじゃないでしょう?」

見えなくなったって…?
それって私の事でしょ? どうしちゃったの?


あ…それより謝らなくちゃ!

みさき「あの…済みません。大丈夫ですか?」

雪見「ちょっと…浩平君も、なに他人行儀な事言ってんのよ?」

浩平君って…何で雪ちゃんまで私を浩平って呼ぶの? どうなってるの?

黒髪の人「浩平君って、それは俺ですよ?」

雪見「………」

雪見「…成る程、人格が入れ替わったって言うギャグなのね。体張るのはいいけど、つまんないわよ?」

黒髪の人&みさき「人格が入れ替わった!?」

黒髪の人「って事は…俺、みさき先輩になってるんですか?」

みさき「私、浩平君になってるの?」

雪見「演技は上手いけどつまんないって。滑ったギャグを意地張って続けても傷が深くなるだけよ?」

黒髪の人&みさき「演技なんかしてないよ!」

雪見「ちょっと…大丈夫? 頭…」

雪見「あ、思いっきりぶつけてたわね…」

黒髪の人&みさき「そうじゃなくって!」

………
……


雪見「非現実的だけど…確かにそう信じるしかないわね」

長森「そうだね…」

人目につくとまずいので空き教室に隠れることにした。

ふたりは私たちの説明を半信半疑で聞いていたが、恐る恐る椅子に座る私になった浩平君を見て納得した。

スカートの裾が椅子の背もたれに引っかかってめくれ上がり、パンツが丸見えになっていることにも気付かず股を広げて座っている私になった浩平君の姿は、あまりにも説得力がありすぎた。

今日、私はピンク色のパンツ履いてたんだ……。

もしかしたら…私も時々こんな醜態を見せていたのかも知れない。
そう思うと顔から火が出る思いだった。

長森さんが顔を赤らめながらスカートを元に戻してくれた。
この人は浩平君の幼なじみらしい。
別に折原浩平と言う人間の事を忘れていた訳ではなく、私になってしまった事に気付かなかっただけだった。
まあ、普通はそうだよね…。

その事を知って、私になってしまった浩平君は安心したようだ…が。

雪見「さっきから二人ともそわそわしてるけど、どうしたの?」

どうしたって…

私には掃除をサボる正当な急用が…

そう言えば、私が浩平君になってからも続いている下腹部の緊張感は…?

……!

浩平&みさき「…トイレ?」

長森「は、早くしないと体に悪いよっ!」

雪見「えーと…今は浩平君がみさきで、みさきが浩平君な訳だから…」

浩平「…俺が女子トイレ?」

みさき「…私が男子トイレ?」

長森「…って事になるね…」

雪見「恥かしがってる場合じゃないでしょ! みさき、今は目が見えるから一人で大丈夫よね?」

みさき「う、うん、行ってくるよ。その…緊急事態だから気にしなくて…いいよ…」

浩平「わ、わかった…けど、その…」

みさき「…どうしたの?」

浩平「その…女の体でトイレ行った事ないから、どんな風にすればいいか分からなくて」

みさき「ふ、普通で…いいと思うよ?」

別に何か注意する事はないと思うけど…?

それから私になった浩平君は雪ちゃんと長森さんに手を引かれて女子トイレに向かった。

みさき「大丈夫かな……?」

て、それどころじゃない、私も急がなきゃ。

しかし……何か……走りづらい……。

 

みさき「きゃ!」

角を曲がった時、背の低い女の子とぶつかりそうになった。

女の子「………」

女の子「……」

女の子「…」

物静かな子…どこかで会ったような?

女の子はスケッチブックを取り出した。

『あのね』

『こんにちは』

…何で筆談するのかな?

あ、この子が澪ちゃんなんだ。可愛い。

みさき「こんにちは、澪ちゃん」

澪「………?」

怪訝な顔をしている。

『何か変なの』

あ…今、私は浩平君なんだ。私と入れ替わった事に気付いたのかな?
でも何で顔赤くしてるんだろう?

澪「………!」

更に、何かに気付いたのか益々顔を赤らめてうつむいた。

…澪ちゃんも浩平君の事が好きなのかな?

 

…澪ちゃん…も?

も…って、私は…私は…浩平君の事が…?

あ…
スケッチブックに何か書いている。

えっと…えっと…どうしよう?
何て書いたんだろう…?

…?

『トイレなの?』

あ、そうだった!

みさき「ま、また今度ゆっくりお話しようね」

澪「………」

うんっうんっ!
澪ちゃんは思い切り頷いていた。

 

私はふたたび駆け出した。

そして、男子トイレの前に立つ。ここから先は私の記憶にはない。
でも今は目が見えるからなんとかなる。

と、思うけど……やっぱり私は女の子だから入りづらいよ〜!

でもそんな乙女の恥じらいを膀胱は許してくれなかった。

みさき「……!!」

意を決して中に入る、右手に陶器の塊が並んでいる。

これが男の人が立ってする…アレなのね?

でも立ってするなんてどうやれば良いのか…自信ないよ〜!


と、その時…

男「よう、折原。どうした? 顔色悪いな?」

……この人、浩平君のお友達? 
男の人がそばにいるのにおしっこなんてできないよ〜!

男「そっか、腹痛か。大変だな」

みさき「そ、そうなの!」

そう言って左の個室に入る。
そうだ…ここで座ってするなら問題ないよね…
そう思ってズボンのホックやベルトを外して…

かちゃかちゃ

パンツを下ろして…

するっ



ぽろん

ぷらぷら

……………………!?

これって、確か…小さい頃…お父さんと一緒に…お風呂入った時に見たような…?

みさき「って…

きゃああああああああああぁ!!」

これって…これって…これって…
男の人の…男の人の…男の人の…

でも、そんな乙女の恥じらいを、またも膀胱は許してくれなかった。

気にしないようにしながら膀胱括約筋を緩め…ようとして脳裏にある映像が浮かんだ。

子供の頃、庭に水を撒こうとしたが手を滑らせてホースを落としてしまった。
ホースは水の反動で右へ左へと蛇のように激しく暴れ回り、私はびしょ濡れになってしまった。
コレ…も、ちゃんと手で押さえてないと大変な事になるのかな…?

でも、でも、でも〜!

そんな乙女の恥じらいを、またまた膀胱は許してくれなかった。

みさき「う〜…ご、ごめんね。浩平君」

意を決してコレを押さえる。

ぶにゃ…

うわ〜! 柔らかくって生暖かい〜!

そんな乙女の恥じらいを、やっぱり膀胱は許してくれなかった。

恐る恐る膀胱括約筋を緩めると…
指先に、案の定おしっこの反動を感じた。
我ながら的確な判断…だったけど…
だけど…凄い物触ってる〜!

やがて、おしっこの勢いは弱まり、止まった。

みさき「ふぅ…とにかく終わった」

 

取り合えず拭いたら…

みさき「ん!」

……

何? 今の…?
くすぐったさと痛みを混ぜたような感覚が先端から背筋に電流のように駆け抜けた。

もう一度、恐る恐る拭くと…

みさき「ん…」

………

みさき「まただ…一体何?」

男の人って…おしっこして拭く度にこんな感覚に耐えてるんだろうか?
『ん…』てならないようにする方法があるのかな?
それとも(普通は)生まれた頃からこうだから慣れっこなんだろうか?
男の子暦わずか数十分の私には到底解らなかった。
でも、立ってする所には紙のホルダーはなかったような気がする。

その時…脳裏に、お母さんに教わったり性教育の本で得た知識が浮かび上がった。
私は発育が良かったので学校で教わる前にお母さんから一通りの事は聞いていた。
恥かしかったけど大事な事だし、学校では目が見えなくなってから教えていたから、そのままではさっぱり訳が解らなかっただろう。
だけど…コレが…入るの…?

あれ? 何か…大きくなってきた…

え? え? え?
ちょっと、やだ、何これ?
ど、ど、どうすればいいの〜!?

………
……


全員「はあ〜」

私達は屋上に隠れている。
トイレで大騒ぎしてしまい、変な噂が立つかも知れない。
その上、今の私達の奇妙なやり取りが人目についたら余計に薪をくべる事になりそうだ。

それにしても、何かお腹が張っている感じがする。
これは胸焼け? それとも満腹感って物かな?
こんなんで晩御飯食べられるのかな?

色々有り過ぎて全員疲れ切っていた。

でも、嬉しかった。


友達の顔。

居心地のいい屋上。

オレンジ色に染まっていく町並み。

そして夕日。

景色って、こんなに綺麗だったんだ…。
落ち着いたら、見るもの全てが新鮮で、素晴らしかった。

 

浩平「済みません先輩、色々とんでもない事して…」

とんでもない事って何だろう…? 私も…凄い事になってしまったけど。

みさき「仕方ないよ、…お、お互いさまだし、私も見えなくなったばかりの時は良く怪我したから」

確かスカートのポケットに絆創膏を入れてたはずだ。
私になった浩平君のスカートのポケットから取り出し、怪我をした指の傷口に巻きつけた。

長森「これから、どうしよう?」

みさき「このままって訳には行かないよね…」

それぞれの家族に、どう説明したらいいんだろう?
それに男の子のままってのはちょっと…

浩平君は深刻に考え事をしている。突然私と入れ替わってしまったのだから当然だろう。
表情がほころんだ。何かいい事でも思いついたんだろうか?
顔が赤くなった。何を考えているんだろう…?
あ、落ちこんだ。どうしたのかな?

雪見「ぶつかって入れ替わった訳だからまたぶつかってみたら?」

浩平「そんなマンガみたいに上手く行くかよ?」

みさき「今の状況だってマンガみたいなものだよ?」

浩平「そうだな…じゃ、試してみるか?」

みさき「うん。それじゃ、痛いけど我慢してね」

長森「…なんかHだよ…」

私になった浩平君の肩に手を添えて…

ごんっ!

暗転。

………
……









浩平&みさき「あいたたた…」

浩平「お、見える、見える! 成功だ!」

みさき「あ、真っ暗だ、元に戻れたんだ」

 
真っ暗になってしまった。

突然何かが覆い被さってきた、どうやら抱きしめられたらしい。

みさき「こ、浩平君…恥かしいよ…」

浩平「今、気付いたんだ。こうしてみさき先輩の顔を見られることがどれほど嬉しいかって…綺麗だ、先輩」

みさき「……」

私の顔を見る事ができて嬉しい? 私が綺麗? そう言ってくれるのは嬉しいけど…だけど…


雪見「わぁ、浩平君だいた〜ん♪」

真っ暗になってしまった。

長森「あはは…あてられちゃうね〜」

喜ばなくてはいけない、元に戻れたんだから。
あれは浩平君の体で、これが私の体なんだもの。


みさき「……」

闇…

 
雪見「…みさき、どうしたの?」

もう何も見えない。

 
みさき「…何でもない、元に戻れて良かったよ」

浩平「……!」

浩平「俺って最低だ…」

どうやら戻った事を心底済まなく思ってるらしい。

 
みさき「気にしなくていいよ、元々浩平君の体なんだから」

見続けたかった…この世界を見続けたかった…


みさき「ほんの一時だけでも、二度と見られない筈だった物を色々見られたんだもの」

でも、あれは浩平君の体だから、ちゃんと返さなくてはならない。

 
みさき「それだけで充分幸せだよ」

駄目、泣いちゃ駄目…浩平君を苦しめたら駄目…


みさき「それ以上望んだら…ばちが…当たる…よ…」

頬に熱い物を感じる…駄目だった…ごめんね、浩平君…

………
……


沈黙が続く、誰も何も言えないんだろう。

みさき「浩平君?」

何か、言わなきゃ、このままじゃみんな辛すぎるよ…

みさき「さっきからどうしたの? 何か考えこんでたみたいだけど?」

浩平「いや、な、何でもない」

長森「いつのまにか真っ暗だね、そろそろ帰ろうか」

相当時間がたっていたようだ。

いい加減寒いので校舎の中に戻る。

 
雪見「足元が危ないから明かり点けましょ」

それから帰ろうとしたら…

浩平「そうだ!スイッチだ!」

3人娘「……?」

浩平「じっとして、痛いけど我慢して」

みさき「え? え? え?」

突然、私の肩に手が添えられて…

ごんっ!

………
……


 

 

 


光。

廊下。

そして…額に手を当ててうずくまるお母さんに似た黒髪の人。

 
浩平&みさき「あいたたた…」

浩平「…おっ、真っ暗だ、成功成功」

みさき「見える…でも、どう言う事?」

浩平「ずっとこのままって訳にはいかないけどさ、時々交代してみない?」

みさき「交代って…いいの?」

浩平「いいよ、俺の目を使って色々な物を見てくれよ」

浩平「そうしておけば、自分のこの体に戻っても、これまでよりもっと色々な事ができるようになるんじゃないか?」

みさき「え? それって…」

みさき「でも…悪いよ、ただでさえ色々迷惑かけてるのに自分のハンデまで押付けられないよ」

浩平「もし、本当にそう思ってるなら、俺…怒るぞ」

みさき「浩平君……」

浩平「俺、先輩の事好きだ! だから力になりたい、自分でそう望んだんだ。それなのに変に気なんか遣わないでくれ」

みさき「……見えないのって、本当に大変なんだよ? それでもいいの?」

浩平「覚悟してる。きっと、先輩みたいに乗り越えて見せる」

みさき「……辛いよ?」

浩平「くどいぞ」

みさき「………………私になってる時に、私の体に変なことしない?約束できる?」

浩平「……………………………………約束する」

みさき「今の間は?」

そりゃあ、私だって…その…

浩平「約束する」

みさき「ありがとう…」

嬉しくて、思わず浩平君に飛びついた。

私に光をくれた大切な人。

浩平「えっと…みさき先輩?」

…変な感じ、自分で自分を抱きしめてるんだもんね…

浩平「…こう言う事は自分の体でやろうな」

みさき「そうだね……」

………
……


深山雪見の日記

あれからも、みさきは変わっていない

浩平君の体を使って目が見えている時も、みさきの体で目が見えていない時とあまり変わらない
始めは、体を貸してくれている浩平君に気を使っているのかと思っていたけど…
良く見てみると、浩平君の体を使ってるみさきは他の男の子より活発だった。

そして、浩平君と会う前と変わらないように見える。と、言う事は…

昔から、みさきは男顔負けの元気さだったのだ。

みさきにとって、目が見えるかそうでないかは問題ではない。
それだけ強い人間なのだと思う。

私はそんなみさきの親友である事を誇りに思う。

 

 

ただ…最近、浩平君の体で行動するみさきを見て『ドキドキ』する事がある。
浩平君そのものを見たときはそんな事はなかったのだが。

みさきはあくまでも親友だ。決してそんな趣味はない。

無いんだからね!

絶対、

多分、

きっと…


END


あとがき
みさきIn浩平Body偏です。
2001 01/25に
来栖川DNMLホテル http://www.geocities.co.jp/Playtown-Denei/9199/に投稿したDNMLをHTML化

戻る


□ 感想はこちらに □

戻る





















































戻る


屋上へ向かう階段を登ると…

『2ツ折リ厳禁』

と書かれたシュールな札があった。

面白い! やらいでか!

という衝動をこらえ、とても折り曲げられそうにない金属扉を開ける。


浩平「今日も夕焼けだな」

みさき「そっか、今日も夕焼けなんだね」

浩平「80点てとこだな」

みさき「高得点だね」


その時……

「みさきーーーーっ!」

先輩は右へ左へと踊るようにあたふた慌て始めた。

浩平「…先輩の事呼んでるみたいだけど」

みさき「気のせいだよっ!」

「みさきっ、どこよっ!」

浩平「間違いなく呼び声が聞こえるけど…またか?」

「出てきなさい!」

浩平「…またなのか?」

みさき「ぷ、プラズマだよっ!」

どんなプラズマだ…?

みさき「えっとえっと……」

みさき「私はいないって言ってね」

そう言って扉の反対側に隠れた。


ばんっ!

轟音と共に扉が開いた。

深山「今度こそここだと思ったけど、感が鈍ったかな」

冴えている。今度もである。

深山「あら? 浩平君じゃない。みさき見なかった?」

浩平「さっきまでここにいたけど、そこの排水パイプから逃げた」

深山「何言ってんの。こんな狭い所入れる訳ないじゃない」

浩平「俺もそう思ってた、だが、『ゴキゴキッ!』て肩の関節外してヘビみたいに『ニュルン』と入って行った」

深山「……凄い技身に着けたわね…」

浩平「俺もそう思う、凄く不気味だったぞ」

深山さんは、そのまま脱力して去って行った。

みさき「人を奇人変人大集合みたいに言わないでよ〜」


この可愛らしく、そして強い先輩と知り合い、こんな他愛のないやり取りができるようになっていた。


スイッチ
(女子トイレ偏)
作:OLSON

原作:Tactics


物理の教師が公式を板書している。
かつかつと黒板にチョークが打ちつけられる音だけが響く中、俺はシャープペンを持つ手を止めたまま拳を握り締めていた。
硬い椅子の上に力を入れて座り、身体中に珠のような汗を浮かべ、身体の中から這い出そうとする『アレ』を必死に押さえようとしている。
全身が震え汗が流れ続ける。


教師「重力加速度が…」

今は6時間目。
今日は担任が病欠でHRはない。


教師「厚さ3ナノメートルのディラックの海が…」

だから授業が終われば、もう俺を阻む物はない。


…クックックッ。
…いつまでそうしてるつもりだい?

息を殺した笑い声が頭の中に響き渡った。

…無駄。
…無駄だ。
…無駄なんだよ。
…俺を押さえつける事なんてできやしない。

ほんの僅かでも気を抜けば『アレ』は理性という名の檻を破り、すぐにも飛び出してしまうだろう。
指の爪がシャーペンに食いこんだ。
負けるわけにはいかない。


…ククク、本当はお前だって気付いてるんだろう?
…もう限界にきてるってことを。
…もうこれ以上、我慢できないってことを。
…さあ、解き放て。
…自由にしてくれ。
…教室があの場所に、廊下があの場所になるだけだ。
…だったら苦しむだけ損じゃないか?
…なあ?

駄目だ。
駄目だ、駄目だ、駄目だ!
なんとしても『アレ』を自由にさせてはならない!
俺にできる、唯一の抵抗…それは、○○という名の檻に『アレ』を閉じ込めておくこと…

…そう、パンパンに膨れた、今にも破裂しそうな檻に…


教師「では動摩擦係数のμについては来週行う」

繭「みゅー?」

寝ぼけた繭に爆笑が起こるが、俺には苦笑する余裕もない。


放課後だ!
放課後はまだか!
放課後になれば俺が勝つ。
放課後だッ!
放課後はまだか!
ホウカゴだあッ!
ホウカゴおッ!
放課後ッ!
放課後!放課後!
放課後!放課後!放課後!放課後!放課後!放課後!放課後!放課後!放課後!放課後!放課後!放課後!放課後!放課後!放課後!放課後!放課後!放課後!!
放課後はまだかあぁーッ!

6時間目終了のチャイムが鳴った、放課後だ!
教師がぱたんと出席簿を閉じて背中を向けた瞬間…
すでに荷物をしまっておいた鞄を引っ掴み立ちあがる。
俺は猛然とダッシュしてそのまま後ろのドアから外に出た。
そして、しかるべき場所で衝動を解き放つべく駆け出した。


長森「浩平っ! ちゃんと掃除しないと駄目だよっ!」

後ろから長森の声が聞こえるが無視する。今日は本当に急用なのだ。

俺は人通りのまばらな廊下をひた走る。
直線コースを一気に加速しながら必死で走る。
そして直線後のコーナー。
靴のグリップの限界すれすれの走りをしながら、スピードを殺さぬようアウトから攻める。

浩平(間に合った…)

そう思った。

そして角を曲がり、目的地を視界に収めた瞬間。
何かがごんっ! とぶつかってきて視界が突然暗くなり…





視界は暗いままだった。

………
……




真っ暗闇だ。なぜだ?
気絶して夜になるまで放って置かれたのか? なんて薄情な!
しかし…夜でも月明かりで何か見えるだろうし非常口の表示だって有るはずだ。



なぜ?


と、その時痛みが蘇ってきた。

浩平(高い声)「いてててて…あれ?」

声が変だ。耳が変になったのか、それとも放って置かれて風邪引いたか?
でも風邪で声が高くなるなんておかしい。


深山「ちょっと、みさき、大丈夫?」

深山さんがみさき先輩を呼ぶ声がする。近くにみさき先輩もいるのか?

浩平「深山さん、どうなってます? こんな真っ暗で大丈夫ですか?」

深山「深山さん…て、どうしたの? みさき?」

その声の後、肩に何かが触れた。
そして揺さぶられる。
先輩を呼びながら、なぜ俺が揺さぶられる?


長森「浩平、大丈夫? その人にちゃんと謝らないと駄目だよっ!」

浩平「長森か? 一体どうなってるんだ? 真っ暗で何も見えないぞ?」

長森「……?」

長森「…え?」

長森「えっと…ごめんなさい。誰…ですか?」

……!

浩平「誰って…」

背筋が凍った。

さっき俺の名前口にしたよな? なのになぜ…

もしかして…もう『盟約の日』が来たのか?


深山「大体真っ暗って、昨日今日見えなくなったわけじゃないでしょう?」

見えなくなったって…?

男「あの…済みません、大丈夫ですか?」

この男の声…どこかで聞いたような?

深山「ちょっと…浩平君も、なに他人行儀な事言ってんのよ?」

浩平「浩平君って、それは俺ですよ?」


深山「………」

深山「…成る程、人格が入れ替わったって言うギャグなのね。体張るのはいいけど、つまんないわよ?」

浩平&男「人格が入れ替わった!?」

浩平「って事は…俺、みさき先輩になってるんですか?」

男「私、浩平君になってるの?」

深山「演技は上手いけどつまんないって。滑ったギャグを意地張って続けても傷が深くなるだけよ?」
浩平&男「演技なんかしてないよ!」

深山「ちょっと…大丈夫? 頭…」

深山「あ…! 思いっきりぶつけてたわね…」

浩平&男「そうじゃなくって!」

………
……


今、俺達は空き教室にいる…らしい。
人目があるところでこの奇妙な会話を続けるのはまずいからだろう。

手探りで椅子を見つけ出し、座った。

う〜む…スカートって奴はスースーして落ち着かん…
腰に巻いた布の下はいきなりパンツだもんな…。

深山「非現実的だけど…確かにそう信じるしかないわね」

長森「そうだね…」


長森は俺になったみさき先輩と深山さんに自己紹介した。

誰も折原浩平と言う人間の事を忘れてはいなかった。
『盟約の日』がまだまだ先だと知って安心…は、できなかった。

深山「さっきから二人ともそわそわしてるけど、どうしたの?」

どうしたって…

俺には掃除をサボる正当な急用が…

そう言えば、俺がみさき先輩になってからも続いている下腹部の緊張感は…

……!

浩平&みさき「…トイレ?」

長森「は、早くしないと体に悪いよっ!」

深山「えーと…今は浩平君がみさきで、みさきが浩平君な訳だから…」

浩平「…俺が女子トイレ?」

みさき「…私が男子トイレ?」

長森「…って事になるね…」

深山「恥かしがってる場合じゃないでしょ! みさき、今は目が見えるから一人で大丈夫よね?」

みさき「う、うん、行ってくるよ。その…緊急事態だから気にしなくて…いいよ…」

浩平「わ、わかった。けど、その…」

みさき「…どうしたの?」

浩平「その…女の体でトイレ行った事なんてないから、どんな風にすればいいか分からなくて」

みさき「ふ、普通で…いいと思うよ?」

普通と言われても…

しかし、聞き直す間もなく、深山さんと長森に強引に秘密の花園へと引きずられて行った。
手を掴まれて驚いた時と段差につまづいた時は危機一髪であった。


長森「着いたよ。ここは個室の前、後は一人でできるよね?」

浩平「あ、ああ…」

手に扉の感触がある。後は男子トイレと同じだろう。

下腹部の圧迫感が猛烈な波となって襲いかかる。

浩平「お、おお…」

膀胱括約筋を大活躍させながら必死で手探りして便器の位置を確認する、洋式だった。


前のチャックを開けてブツを取り出そうとして…

………

無い。

チャックも、長年慣れ親しんだ突起も…。

…あ。俺、先輩と入れ替わったんだっけ。

えっと…俺は今、みさき先輩で女なんだから、座ってするんだよな…?

スカート履いてるから…
えっと…どうやって脱ぐんだ?

そんな趣味はないから目が見えてる時に履いた事も脱いだ事もなかった。
脱がした事もなかった。

長森は…脱がしたのはパンツか。
めくるの通り越してとんでもない事しちまったな…。

浩平「あ、捲くりゃいいのか」

(1部省略)

浩平「ふう、間に合った…」

その時俺は気付いた。
俺は…パンツを下した…って言うか先輩のパンツ脱がした!?

済みません、先輩…まだ手も繋いでないのにとんでもない事を…


と、その時壁の向こうから俺(らしい)の声で悲鳴が聞こえた。

無理もない、中身は女の子だもんな…
んでもって、数年振りに目が見えるようになったばかりであんな物を見てしまったんだもんな…

でも先輩…俺の声で騒がないで下さい…変な噂が…


長森「浩平っ! 時間かかってるけど大丈夫?」

げ、長森…こんな所で俺の名前を呼ばないでくれ〜! 益々変な噂が…

早く出なくては! でも、今は女だから…拭かなきゃ駄目か?

………

浩平「痛っ!」

慌てて手探りで紙を探したのがまずかった。
ホルダーの金具で右手の指を切ってしまったようだ。

長森「浩平っ! どうしたの? 浩平っ!」

長森…頼むから俺の名前を連呼しないでくれ〜!


切った指は心臓の鼓動に合わせて痛みが脈打っている。
…が、見えないので出血の度合いは解らない。

…出血!?

もし、このまま元に戻れなくて、俺が生理になっちまったらどうすりゃいいんだ!?

保健体育やエロ本の質問コーナーで得た知識を総動員したが…
何がどうなって、どう処置すればいいのか? 具体的かつ実践的な事は今一つよく解らなかった。
どうやら、肝心な事は小学校の頃に男女別になった時に教えていたらしい。

生理用品の説明書きを読めば解るかもしれない…が、今は目が見えない。
誰かに読んで…貰う訳にもいかない。
大体、図が無いとよく解らん。
かと言って、誰かに手取り足取り腰取り教えて貰う訳にもいかない。

…そう言えば、目が見えない人への性教育ってどうやるんだ?
こう言う事は図がないとよく解らない。
かと言って、教師が小学生の子供に手取り足取り腰取り教えたら大問題だ。
大体それはもう犯罪である。

って、俺は何て失礼な事を…
余計な事だよな…

いや、性の知識だって大事だ。
特別扱いはいけないし、障害者の性をタブー視するなど持っての外だ。
大体今の俺は思いっきり当事者である。
だがしかし…う〜む…。


長森「浩平っ! 返事してよ!」

浩平「大丈夫だっつーの!」

そうだ。俺は今、女だから声だって女だ。
息潜めてる必要はなかったか。


とにかく早く出なくては! そう思い、急いで拭くと…

浩平「んっ…!」

強烈なくすぐったさと痛みを混ぜたような感覚が股間から背筋に電流のように駆け抜け、体が勝手に跳ね上がった。
真っ暗な視界にチカチカと火花が飛ぶ。

……

浩平「はふぅ…」

強張っていた体が弛緩する。
 
長森「浩平っ! 大丈夫? 気分悪いの?」

浩平「だぁっ! 聞き耳たてるな! 頼むからあっち行ってくれ!」

長森「あ、ご、ごめん!」

深山「そ、そりゃあ…恥ずかしいわよね.…」

足音が遠ざかってゆく。
 

浩平「…何だったんだ? さっきの…?」

ごくりとつばを飲み込み、恐る恐る股間に手を伸ばすと…

浩平「く…」

前ほどではないが強烈な刺激が走り、のけぞる。

まただ…一体何だ?

その時、脳裏に保健体育やエロ本の質問コーナーの図解が浮かび上がった。

俺が触ったのは…先輩の…
まずは胸から触って気分を盛り上げておくべきだったな…

って、違ーう!
お、俺は何て事を!

でも、おしっこ出る所はやっぱりあそこだから…?

…結論は一つだった。
…何度考え直しても同じ結論にたどり着いた。
そんな自分のスケベさに呆れた。

女の子って…おしっこして拭く度にこんな感覚に耐えてるんだろうか?
『んっ…』てならないようにする方法があるのか?
それとも(普通は)生まれた時からこうだから慣れっこなんだろうか?
女の子暦わずか数十分の俺には到底解らなかった。

しかし拭かない訳にはいかないので、時折襲いかかる『んっ…』を堪えながら拭いた。
きちんと拭けているか不安だが目が見えないから解らない。
って言うか見えたとしても見たらまずい。
かと言って手探りしよう物なら、また『んっ…』となってしまう。
これ以上やったら違う物で濡れてしまうかも知れない。

って、違ーーーう! 俺は先輩の体に何て事を…
お、落ち着け、落ち着け…

血の染みは落ちないらしいので切った手は使えず片手でパンツを上げた。
女物のパンツなんか履いて、はみ出していないか不安になった…
が、そもそも今の俺には、はみ出す物などない事に気付き苦笑した。


………
……


全員「はあ〜」

ちと寒いが俺達は屋上にいるようだ。
トイレで大騒ぎしてしまい、変な噂が立つかも知れない。
その上、今の俺達の奇妙なやり取りが人目についたら余計に薪をくべる事になりそうだ。

………

猛烈に空腹感がする。
カツカレー2、3皿は食べられそうだ。
普通(?)でもこうなのだから本当に腹が減ったらあれだけの食欲も頷ける。

色々有り過ぎて全員疲れ切っていた。

浩平「済みません先輩、色々とんでもない事して…」

みさき「仕方ないよ、…お、お互いさまだし、私も見えなくなったばかりの時は良く怪我したから」

………!

いきなり誰かに腰のあたりをまさぐられた。
背筋がぞくりとして声も出せなかった。
痴漢に遭った女性が何も言えない理由が分かったような気がした。

…と、思ったら切った右手に暖かい感触がした。

そして傷口に何かが巻かれた、絆創膏か?

多分この体の持ち主であるみさき先輩が巻いてくれたんだろう。
優しいな.…先輩の手…って、自分の手か。


長森「これから、どうしよう?」

みさき「このままって訳には行かないよね…」

そうだよな…俺ん家はともかく、みさき先輩の家ではな…家族にどう説明した物か。

それに女の体でどう生きていけばいいのかさっぱり解らない。
下着の着け方とか身だしなみとか分からない事だらけだ。
体とか髪の毛はどう洗えばいいんだろう?
髪の毛まで石鹸でガシガシ洗ったらまずいだろうし、女の肌はデリケートだっていうからあかすりでこすったらやばいか?
大体、敏感な所はどうすりゃいい? 大事な所だから清潔にしなきゃまずいよなぁ…でもなぁ…
女って大変だな…?

そうだ! 俺は今、女なんだから女子更衣室も、銭湯の女湯も入り放題だ!
ラッキ〜! ふ…ふふふふふふふ…

…ってこの学校には更衣室はないか。
大体、目が見えないから意味ねぇ…。

とほほ…どうしたもんかなぁ…。


深山「ぶつかって入れ替わった訳だから又ぶつかってみたら?」

浩平「そんなマンガみたいに上手く行くかよ?」

みさき「今の状況だってマンガみたいなものだよ?」

浩平「そうだな…じゃ、試してみるか?」

みさき「うん、それじゃ、痛いけど我慢してね」

長森「なんかHだよ…」

そして何かが頭に『ごんっ!』とぶつかってきて…











………
……


光。

出会った思い出の場所である屋上。

そして…額に手を当ててうずくまる女の子。

浩平&みさき「あいたたた…」

浩平(低い声)「お、見える、見える! 成功だ!」

みさき(高い声)「あ、真っ暗だ、元に戻れたんだ」


思わず俺はみさき先輩を抱きしめていた。

可愛らしく、そして強い先輩。

何よりも見たいと思っていた、先輩の顔。

みさき「こ、浩平君…恥かしいよ…」

浩平「今、気付いたんだ、こうしてみさき先輩の顔を見られることがどれほど嬉しいかって、…綺麗だ、先輩…」

みさき「……」

深山「わぁ、浩平君だいた〜ん♪」

長森「あはは…あてられちゃうね〜」

みさき「……」

深山「…みさき、どうしたの?」

みさき「…何でもないよ、元に戻れて良かった」

浩平「……!」


自分の愚かさと思いやりのなさを心底後悔した。

数年振りにみさき先輩に光が戻ったのだ。

それなのに俺は、自分が元に戻る事ばかり考えて…
元に戻って…
いや、元に戻して…
暗闇の中に先輩を突き落として…

それなのに、こんなに喜んでいた。

浩平「俺って最低だ…」

罵ってくれていい、それだけの事をしてしまったんだ


みさき「気にしなくていいよ、元々浩平君の体なんだから」

みさき「ほんの一時だけでも、二度と見られない筈だった物を色々見られたんだもの」

みさき「それだけで充分幸せだよ」

みさき「それ以上望んだら…ばちが…当たる…よ…」


俺がみさき先輩の体でトイレに行くときは、猛烈な尿意で、それどころではなかったが…

冷静になったらとたんに恐くなった。

闇、闇、闇、真っ暗闇。

ドアを手探りするのも、空けて一歩踏み出す事も、踏み出した足が床に着くまでの時間も…
そして長森が手を握った瞬間も…
何もかもが恐かった。
動けなかった。

元に戻れた今はこれまで通りに全てを見られる。

しかし、元に戻れず、このまま闇が途切れる事がなくて、このままずっと闇をさまよう事になったら、俺はどうするんだろう?

…結論は一つだった。
…何度考え直しても同じ結論にたどり着いた。
そんな自分の弱さが嫌でならなかった。

先輩はどうだったんだろう?


みさき「浩平君?」

みさき「さっきからどうしたの? 何か考えこんでたみたいだけど?」

浩平「いや、な、何でもない」

長森「いつのまにか真っ暗だね、そろそろ帰ろうか」

まだ俺達は屋上にいた。

校舎に入り…

深山「足元が危ないから明かり点けましょ」

俺達はスイッチをオンにするだけで光を取り戻せる……だけど、先輩は…
いつまでもそのままの先輩は…

……スイッチ!?

浩平「そうだ! スイッチだ!」

3人娘「……?」

浩平「じっとして、痛いけど我慢して」

みさき「え? え? え?」

先輩の肩に手を添えて…

ごんっ!





………
……


浩平&みさき「あいたたた…」

暗闇

浩平(高い声)「…おっ、真っ暗だ、成功成功」

みさき(低い声)「見える…でも、どう言う事?」

浩平「ずっとこのままって訳にはいかないけどさ、時々交代してみない?」

みさき「交代って…いいの?」

浩平「いいよ、俺の目を使って色々な物を見てくれよ」

浩平「そうしておけば、自分のこの体に戻っても、これまでよりもっと色々な事ができるようになるんじゃないか?」

みさき「え? それって…」

みさき「でも…悪いよ、ただでさえ色々迷惑かけてるのに自分のハンデまで押し付けられないよ」

浩平「もし、本当にそう思ってるなら、俺…怒るぞ」

みさき「浩平君……」

浩平「俺、先輩の事好きだ! だから力になりたい。自分でそう望んだんだ、それなのに変に気なんか遣わないでくれ」

みさき「……見えないのって、本当に大変なんだよ? それでもいいの?」

浩平「覚悟してる。きっと、先輩みたいに乗り越えて見せる」

みさき「……辛いよ?」

浩平「くどいぞ」

みさき「………………私になってる時に、私の体に変なことしない? 約束できる?」

浩平「…………………………………………約束する」

『済みません、既にしてしまいました』…とは、口が裂けても言えない。

みさき「…今の間は?」

浩平「約束する」

みさき「ありがとう…」

そして、衝撃と暖かい感触。抱きしめられたようだ。


浩平「えっと…みさき先輩?」

嬉しい…ような気がするが、自分に抱きしめられてもなあ…。

浩平「…こう言う事は自分の体でやろうな」

みさき「そうだね……」

俺はここに残る。
先輩の目になるためにここに残る。
先輩は内臓を吐き出すような苦しみを乗り越えて、この世界を選んだんだ。
たとえ、『えいえん』に旅立っても…戻ってくる。



長森 瑞佳の日記

あれから浩平は変わった。
みさき先輩に体を貸している時も、本当に自分の体の時もずいぶんとしっかりとしている。
浩平には、ちゃんと面倒見てくれる人がいないと心配だと思っていたんだけど…
自分が誰かを支えるようになったら変わったみたい。

これで私も安心できるかな…。

でも少し寂しいかな…?

END



あとがき
浩平InみさきBody偏です。
2001 01/25に
来栖川DNMLホテル http://www.geocities.co.jp/Playtown-Denei/9199/に投稿したDNMLをHTML化、

戻る


□ 感想はこちらに □