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 「おはよーございまぁ〜す!」

 「おはよー瞳ちゃん!あいたかっ…」


 ガラッ!!


 「……………なんだ、潤か…(涙)」

 「ハッハッハ!潤で悪かったな! …というか、泣くなよ」

 「あーー!!潤、おはよー! TV見たわよ!CDすごい売れてるわねぇ〜」

 「おはよ! 自分でも驚いてるよ。 まさかこんなにも売れるとは…」

 「はーい、静かに! そろそろSHRを始めます!」


 「今日からあなた達は二年生です。今から、それぞれのクラスを言うので始業式の後、教室移動をしてください。 足立くん 八組、伊藤さん 三組……



 …若畑さん 七組、渡辺くん 七組。 以上です。わからなかった人はいますか?」

 「先生!俺、呼ばれてないんですけど…」

 「ふぅ…、あなたね…。 雪野くん…いえ、雪野さん。あなたは始業式の後、校長室まで来なさい」

 「………は?!」




The voice of ours

作者 : 水無月

ACT . 5  Her decision






 俺が何をしたーー〜!!


 四月。春休みもあっという間に終わり、今日は始業式。 めでたく留年することもなく二年生になり、新しいクラスで新学期を迎える今日この日。

 そして、新学期早々、校長室に呼び出される俺…。

 だから、なぜ俺なんだーー! 授業態度も良い…とは言えないけど、まぁ、素直な方だとは思う。

 始業式も終わった今、俺は友達と別れ、一人校長室へ…。

 な、何かマズイ事したっけ…? いや、健二達が飲酒で見つかった時、俺は(たまたまレッスンで)居なかったはずだ!

 俺一人が呼び出されるということは、やっぱり『シオン』のことだろうか?



 いろいろ思索しつつも、校長室に到着。 …さぁ、入るか…。

 コンコン! 「失礼します!」

 中から「どうぞ!」という声を聞き、俺は部屋に入る。校長室の中には、校長らしき人物と、あと新見先生がいた。 校長は、ほとんど白髪のおじさん。う〜ん…間近で見るの、初めてだな。

 「ほう! きみがあの雪野くんだね?」

 あの≠チてなんだ!あの≠チて!!

 「はぁ…。たぶん俺があの$癘ですけど…」

 「そうかそうか! いや〜、よくきてくれた!」

 俺の顔を眺め廻し、ニヤニヤと嬉しそうに頷く校長。 なんだ、いったい?!

 「きみのことは、いろいろと聞いているよ!芸能活動、がんばってくれたまえ!我が校は、きみのことを全面的に支援しよう。 …ところで」

 校長の顔つきが、一変して真面目なものとなった。

 「…今回のことは、きみに本当にすまない思いをさせてしまったと思っている。 申し訳ない」

 真面目に頭を下げる校長。 ? 何を言っているんだ?

 「…あの、校長? それはいったい、つまりどういう…」 な〜んか嫌な予感が…

 「だから、きみはもう隠さなくていい。きみは本来のあるべき姿、そう、 女子生徒 に戻らなければならない!」

 ……………。

 「………は?」



 おいおい!何を言っているんだ?!

 「ちょっと待ってください!俺は…」

 「いや!皆まで言わなくともいい! 全ては我々の責任だ。きみは何も心配しなくていい」

 「今まで、からかったりしてごめんなさい。あなたのお母さんに事情を聞くまで、私達、ちっとも知らなかったわ。 …でも、もうあなたは、女の子に戻らなければいけないわ」 というのは新見先生。 何だー!何だ、事情って!!

 「違う!!俺は、おと…」

 ビシッ!! っと、俺の声を遮るように突き出されたものは、女子のブレザー…。

 「もう我儘はいけませんよ! この制服は、先ほどあなたのお母さんがわざわざ届けてくださったんです。どうか娘をよろしく、と言って…」

 か、母さん!! あんたは息子に何をさせる気だーー!!!

 「大丈夫だ!我々に任せなさい! きみの 女性として生きる権利 を、我々は守ろう!」 なぜか誇らしげに言う校長。

 「違っ〜〜う!!だから!俺は!!!」

 いいかげんにしなさい!!あなたのどこが男よ! 去年、最初に会ったときから、ホントはずっと怪しんでいたのよ!! さぁ!元の声に戻して、早く着替えてらっしゃい!!」

 だあああーーー!!なぜだぁーーー!!!

 無理矢理、新見先生に引っ張られてゆく…。



 そして再び、更衣室の鏡の前には女装した俺…(涙)

 くっそ〜!母さんめ〜〜〜!! ここまでくると、シャレじゃなくなってくるぞ!!

 母さんが先生達にどんな事情を説明したのか知らないが(とゆーか、正直聞きたくない…)、これはもう、俺が何を言っても聞かなさそう…。 俺は、追い詰められていた。

 いっそ、職員室で素っ裸になって主張(←何を?)……………いや、やめておこう…。

 成す術の無い俺は、あきらめて髪を整える。 制服といっしょに渡された鞄には、かつらや化粧品が入っていた。母さん、準備が良すぎるぞ!

 ア〜♪ア〜〜♪ 女声の発声練習。…よし!

 覚悟を決めた俺は、更衣室を出て、再び職員室へ向かう。俺は、新しい自分のクラスを知らなかった。

 それにしても、なぜこんなことになったんだ?今までは、変な目で、怪しまれながらも一応男としての生活を保てていたはず。 母さんはどちらかというと、うまく話を合わせただけって気がするけど…。 疑問に思いながらも、俺は足を進める。

 職員室に入ると、何やら話し込んでいる先生方や校長の姿があった。

 「あの、着替えてきましたけど…」 俺は女声で言う。

 「「おお〜〜!!」」 なぜか歓声があがる。先生方の目線が集中する…。

 「これはすごい!! 噂に勝る姿だな!」 えらく感心したように言う校長。

 「はぁ… それで、俺…私のクラスは…」

 「雪野さん。あなたは二年六組、私のクラスよ!」 新見先生が言う。はぁ、また新見先生か…。

 「もうすぐ新しいクラスでHRを始めるから、教室で待機してて!」

 新見先生に促され、俺は新クラスへ向かおう、と…

 「あー、待ちなさい、雪野さん!」 校長に呼び止められる。 なんだ?校長!

 「実は、うちの娘がファンなんだ。サインをもらえないか?」

 ………。


 (しぶしぶサインも書き)職員室を出ようとするとき、校長がつぶやくのが聞こえた。

 「しかし、まさかあんな生徒がうちの学校にいるとはな…。あの社長さんに言われるまで、全く気づけなかったとは…」

 !!っ そうかそうか!余計な一言を言ったのは、あの社長か!!



 新しい教室へ向かう。

 クラスが変わったばかりということもあって、通り過ぎる廊下や教室は、いつも以上に騒がしい。「そっちのクラスには誰がいるの?」「オレだけクラスが別れた〜!」などという話し声が聞こえてくる。

 そんなこともあって、俺に注意を向けてくる者は特にいなかった。 これなら心配しなくても大丈夫かな?

 二年六組の教室に到着。中を見回すと、見知った顔がちらほらと見える。

 やれやれ、俺はこれから女子として学校生活をせにゃならんのか…。そんなことを鬱気味に考えながら、ドサっと机の上に鞄を置く。

 ふと、前の席の女の子と目が合い……

 「あ〜〜〜!! 雪野瞳だぁー!!!」

 ぎっくぅぅぅーー!!

 教室の中の時間が一瞬だけ止まり… そして、全ての視線が俺に集中する。

 「きゃ〜〜!!『シオン』の雪野瞳だぁ〜!!」
 「本物だぁぁーー!!」
 「サインちょ〜だい!サイン!!」
 「やった〜! 今年は雪野瞳といっしょのクラスだー!!」

 ぎゃーーー!!! 一瞬にして、取り囲まれる俺。


 そして、俺の苦難の学校生活は再び始まった…。




 その日の午後。今日は始業式のみで、午後の授業の無かった俺は、Kプロの社長室に押しかけていた。

 「社長!どーゆーつもりですか!!」

 「雪野君、よく来てくれた。その制服姿も、なかなか似合っているじゃないか。」

 …そう、制服姿、雪野瞳の姿のまま……。

 「……(怒)!! 社長!確かに俺は、瞳での活動の話は了解しましたよ!でも、私生活にまで介入してくるなんて、ひどいじゃないですか!!」

 俺は椅子に座っている社長に、机越しに怒鳴る。俺の声に全く動じることなく、俺をニヤニヤと見ている社長。

 ギロリと社長を睨みつけると、社長はコホンと軽く咳払いをして、視線を逸らす。

 社長は、ゆっくりとその重い腰を上げ、

 「あー… 雪野君。いつものロングのストレートの髪型もいいが、そのセミカットもなかなか似合うではないか。」 こら、社長!話を逸らすな!

 「…社長……」

 「う… いやまて!まず、私の話を聞け!」

 俺の顔に何かただならぬものを感じた社長は、まず俺に横にあるソファーに座るように言い、自分はドカッと腰掛けた。俺も制服のスカートを気にしつつ、ソファーに座る。

 「きみがレッスンへ行くのに、かなり面倒なことをしていると聞いてな…。私も何か力になってあげたい、と、さり気なくあそこの校長に、きみのことを言ってみたのだが…」

 「よけいなお世話だ!!」

 俺の怒鳴り声を聞いて、カラカラと笑う社長。

 くっそ〜! だが、俺はめげずに言い続ける。

 「社長! 俺は、瞳じゃなくて潤です!男です! やっぱり『雪野瞳』としての芸能活動は止めにしましょう!」

 「!!っ なんと!! きみは、世の男性達を泣かせるつもりなのか?!」 泣くのか…?

 「ヤローが泣いたって、別に構いませんよ! それより、潤と瞳は同一人物なんですよ!『シオン』として芸能活動ができるわけが無いじゃないですか!!」

 当然だ! 俺は一人だ。分身でも分裂でもするか、クローンでも準備しないかぎり、そんなことは不可能だ。

 「ワイドショーでも騒がれてますよ! ホントに大丈夫なんですか?もし同一人物だってばれたら、詐欺とかで捕まったりしませんよね…?」

 「フッ… 誰がいつ、雪野瞳が女でないと言った?いつ『シオン』の2人が双子と言った? あれは記者達が勝手に騒いでいるだけだ。我々からは、何も公式発表しておらん。」

 うわっ! 卑怯くせ〜!!

 「それに、きみは今、雪野瞳としてレッスンに通っているのだろう? 更衣室やトイレは、いったいどこを使っているんだ?」

 ギクッ…!

 使っているのは………当然この格好なのだから、使っているのは女子更衣室なわけで……。

 「…もし、きみが男だとばれたら……」

 ギクギクッ!!

 「………(汗)」

 「フッ… もう後戻りはできんぞ!」 勝ち誇ったように言う社長。

 わぁぁ〜〜〜ん!! なぜだぁーーー!!!

 もはや俺に、反論の余地は無かった………。(涙)







 数日後のお昼休み。

 例の避難場所、芸術棟の屋上……

 「瞳ちゃん!! ……ちっ、ここにもいないか…」屋上に飛び込んできた生徒は、意気消沈し戻ってゆく。

 …の、給水棟の上。


 毎日、例のごとく、「シオンだ!」「雪野瞳だ!」と騒がれつづけている俺は、ひたすら逃げ続けていた。

 屋上に来る階段の上にあるこの給水棟は、他からは死角になっている。まぁ、高所恐怖症の人間は、まず上がらないようなところだが。

 いつの間にか、この屋上が雪野瞳の出現場所として、情報が流れていたのだ。 くっそ〜!もう逃げ場所が無いじゃないか!

 …学校やめよかな……。

 俺はもう、本気でそう考えるようになっていた。


 「おい、雪野! ほらよ!買ってきてやったぞ!」

 しばらくして、健二がやってきた。

 「サンキュ!」 と言う俺は女声。

 「…まったく! なんで俺が、お前のパシリをしなければいけないんだ!!」 文句をブツクサ言いながら健二の放り投げたパンと牛乳を、俺は慌てて受けとめる。

 「し、しかたないだろ! 今は買いに行けないんだから…」 俺はコーヒー牛乳のパックにストローを挿しながら、そう言い訳する。

 いや、言い訳じゃないぞ! 今俺が購買へ行ったら、とんでもない騒ぎになる!購買には、他の学年や違う学科の生徒達もいるんだから…。

 「なんで康祐をパシらせないんだ? 今年、雪野と康祐は同じクラスなんだろ?」

 今年、二年六組になった俺は、康祐と同じクラスだ。同じクラスに、俺を男だと認めている人間が一人でもいるのはありがたいが、その一人が康祐じゃ、あんまり救いにならないなぁ。

 ちなみに、あずさと塚原は四組、健二は一組らしい。

 「ああモチロン。昨日までは代わりに買ってきてもらってきてたんだが… 今日はアイツ、休みなんだ。」

 「へー。珍しいこともあるもんだなぁ。」 まったくだ。あの皆勤賞男が…。


 「それにしても、今回はまた、えらい騒ぎだな…」 あきれたように言う健二。

 俺は、もう少し前までは、
「有名人になったら、どうなるんだろう? 街でも女の子達にキャーキャー言われて、サインねだられるんだろうなぁ〜 むふふっ…♪」
程度にしか考えていなかった。

 はっきり言ってそんな生易しいものじゃ無いぞ!!

 俺はデビューしたことを後悔していない。後悔はしていないんだが………。

 「なぁ健二。ノルンは今、どうしてるんだ?」

 「お前… 女声が完全に地声になってるなぁ…(汗)
 ノルンは活動停止中だ。ボーカルがいないんじゃ、どうしようもないな。俺か早川が歌うか、新しいボーカルを探してもいいんだが… お前に比べるとな…」

 そうか…。 みんなにはすまないと思っている。

 「練習はしていないのか?」

 「そういうわけではないんだよな。 康祐が、練習は怠らないようにと言うんだよ。ま、言われなくても練習はするけどさ。」

 それぞれが楽器を弾くのが好きなのだから、練習はやめない。ただ、みんなで合わせたり、そういうのができないのだ。

 最近、健二は、俺なしで一人で別の場所でストリートライブをしているらしい。やっぱり小遣い稼ぎはやめられないらしい。 まぁ、俺と出会うまでも、一人でやってたらしいからなぁ。でも、二人の時より稼ぎがさみしいらしい。

 あずさは今は、この高校のブラスバンド部へ助っ人に行っている。もともとブラバンに入っていたのを、俺たちが引き抜いたのだから、そりゃ呼び戻されるわな…。
…し、仕方ないだろ!あずさほどのドラマーはいないんだから…。 まぁ、本人も乗り気だったんだし。

 塚原は、どうも最近、バイオリンを弾き始めたらしい。 いったい俺が、ギター一つにどれだけの苦労をしているというのに…。まったくもう、これだからセンスのある人間ってのは…。

 「やっぱりまた、みんなでやりたいよなぁ…。 なぁ雪野、『ノルン』はもうやめちまったのか?」

 「そんなことはない! 俺は『シオン』である前に、『ノルン』の雪野潤だ。みんながいいのなら、また俺を入れてくれるか?」 俺は男声で言う。

 「もちろんだ! 学校行事なんかじゃ、またいっしょにやろうな!」

 「…ああ」



 そろそろ休み時間も終わる。

 …さて。また騒がしいあの教室へ戻らないといけないのか…。 そんなことを、鬱気味に考えていると…

 ピリリリリッ〜♪ あ、電話だ!

 若林さんからだ。携帯を取り出し、電話に出る。

 「はい、もしもし?」

 『もしもし、雪野くん? へ〜、めずらしいね。女声で電話に出るなんて』 おっとしまった!つい…。

 「あーあー、もしもし。で、若林さん、何ですか?」

 『おいおい!わざわざ、男声に戻さなくてもいいじゃないか…。
 それでね、雪野くん。そっち今、お昼休みぐらい? 悪いんだけどさー、今から事務所の方に来てくれないかなー?』 何!今から?!

 やった〜! これで、午後の授業をサボる理由ができたぞ!

 「いいですよ!全然かまいませんよ! ……はい。 はい、わかりましたー。それじゃ!」 ポチッとな。健二の視線を感じつつも、電話を終える。

 「なんだよ、雪野!午後の授業、サボるつもりか?」

 「ふ… 否!これはサボリではない! 立派な理由のある早退だ!」

 「誇って言うことじゃないだろう…。 いいなぁ〜。俺もサボろうかなぁ〜」

 恨めしそうに俺を見ている健二を残し、俺は一足先に、屋上を後にした。



 ちなみにその日の午後、健二はその屋上で、昼寝をして過ごしたらしい。(笑)





 事務所の一室。一応、来客用の部屋のようで、イスとテーブルが置いてあり、よく打ち合わせもここでする。う〜ん、社長室もこれぐらいきちんと整っていれば、見栄えもいいんだけどなぁ。

 とりあえず俺は、若林さんに向かい合うようにイスに座る。

 「来てくれてありがとう、雪野くん!さっそくだけど…」 …って、ちょっとまて!

 俺は若林さんを静止し…、

 「………なんでここに、康祐がいるんだ?」

 若林さんの隣に、さも平然と座っている康祐に向かって問う。

 「…ん、俺か?」

 「康祐!お前学校サボって、こんなとこで何やってんだ?!」

 「はっはっはっ!実はな…」

 「あのね、きみのデビューシングルの『蒼の願い』。 あれの作詞作曲が康祐くんだから、それの印税とかについてちょっとね…」 若林さんが説明する。

 ん…?そういえば…。 目の前のテーブルの上にあった俺のCDを手に取る。ジャケットの裏には、端の方に小さく、『 作詞・作曲 : 瀬木 康祐 』と…。 うわ!いつの間に…!!

 「う…。おい雪野!そんな目で見るな!! いいじゃないか!あれだけ売れてるんだ、少しぐらい売上を俺にくれたって…」

 「あほか!誰がやるか!! いいか!この売上はな、将来、俺が楽して老後を暮らせるよう……!」 康祐へ反撃!

 「お前は、もう老後の人生を考えているのか?(汗)」

 「いいんだ!俺はもう、人生に疲れたんだ!!」 特にここ数日で…。

 …と、何も言わずに俺と康祐の言い争いを見ていた若林さんが、

 「雪野くん!おばあちゃんになるにはまだ早いよ?」

 「!!っ (怒) 誰がおばあちゃんだ!誰が!!」 思わず、男声で言い返す。

 ぐはっ!! 思わぬカウンターをくらった…。

 まったく…。この人はなんでもない顔をして、さらっととんでもないことを言う…。



 若林さんにそう言わせた俺の格好――制服のスカートと肩にかかる髪をはらい、若林さんに向き直る。

 「それで、若林さん。今日の話というのは?」

 俺は若林さんに向かって改めて問う。もはや、女声であることに誰もつっこまないのがちょっぴり悲しい…。 ちなみに、先の言い争いも女声…。

 「うん。きみにも印税の話とかあるんだけど…。 今日は康祐くんもいるからね…。実は、君たち二人に、また次の曲を作ってもらいたいんだ。」

 おー!早くもセカンドシングルですか!

 「ファーストシングルは今のところ順調に売れてるから、この調子で頼むよ! 実は、他の作曲家の方に依頼しようとしてたんだけど、君たちの曲もなかなかのセンスがあるからね。次も任せてみよう、そういうことになったんだ。」

 おおー!そうなのか! 俺たちの歌が認められたというのはかなり嬉しい。思わず、康祐と顔を見合わせる。

 「雪野くん、康祐くん。やってくれるかい?」

 「「はい!がんばります!」」



 その後、若林さんが部屋を出ていってから…

 「…なぁ、康祐。 お前、芸能活動、嫌じゃなかったのか? だったら、なんでこの仕事受けたんだ?」

 俺は康祐に聞いてみる。

 「何言ってんだ雪野!! 俺たちの歌が、世間に認められたんだぞ!! あんなこと言われて黙って引き下がれるか!!」

 ま、そりゃそうだ。 珍しく興奮したように、康祐が言う。

 「それにな。俺は別に、これを生涯の仕事、としたわけじゃないぞ!どっちかと言えば、バイト感覚に近いな。だから、今の俺には願っても無いことなんだ。」

 さようで…。お前は、アルバイトでいったいいくら稼ぐつもりだ?

 「…雪野。お前はもう、将来もずっと、歌手として生きてくつもりなのか…?」

 ………そういえばそうだな…。

 「さぁ…、どうだろうな……。始めたばかりだから、どうなのかよくわからないけど…。 …でも、大学は行ってみたいよな。」

 「ふ〜ん。」

 俺は自分の将来を決めかねている。 まぁ、このぐらいの年頃の子なら、誰でも悩んでいることだろう。 今は、「なるようになるさ!」でも、いづれは決めなければいけないこと…。







 騒がしい学校生活はそれほど改善することもなく、4月の末。

 それでも、少しは学校やクラスの熱も冷めてきたかな? 学校にレッスンにと、俺は忙しい毎日を送る。

 そして、俺は今日再び、Kプロ社長室を訪れていた。 何やら、重要な話があるらしいとのこと…。 ちなみに、今日はちゃんと男の格好だぞ!


 「CD発売から一ヶ月と半月。『シオン』は現在、なかなかの売れ行きを見せている。」 社長が言う。

 フッ…!どうだ、社長! 何かと、社長に押し込められている俺。 これなら文句は言わせないぞ!

 「だが……」

 いつになく、真剣な物腰の社長。 だが…?

 「…だが、私に言わせると、まだまだだな。」

 ビキッ!(←何かがキレる音)

 なんだと!オリコン一位でも、まだまだだと?!

 「ミリオンヒットのなかなか出ないと言われるこの不景気な世の中。オリコン一位ぐらいでは、まだまだだ! 特にきみの場合は、その話題性で売りあげたのだからな。 見なさい!ここひと月ほどの、最新のオリコンチャートだ!」

 そう言って、俺は社長からある用紙を渡された。その用紙は、『シオン』のCDの売上をグラフにしたものだった。第一週初登場一位で、第二週、第三週と……あれ?

 なんと、そのCDの売上は、第三週目あたりからガクッとおちていた。

 「まぁ、話題性だけではそんなものだろう。販売枚数を見てみなさい。ミリオンヒットとは程遠い。 それでは本当の大ヒットとは言えんぞ!」

 ぐっ…!! 言っていることが本当のことなので、何も言い返すことができない。

 俺が少し落ち込んだ様子を見せると、フッ…と。 あれ?社長、笑った…?

 「だからと言って、普通はここまで一気に売上が落ちることなんてまず無い! …雪野くんは安心したまえ。これには原因がある。こちらのミスだ…」

 珍しく、社長が苦々しい顔で話す。

 「…原因はこれだ。」

 と言って社長が取り出したのは、一枚のCD。 あ!これは…!

 「きみも知っているだろう…。 『キズナ』だ。」

―――キズナ
 うちとは違う事務所所属で、つい最近デビューしたグループだ。やたらと、うちのクラスの女子が「このグループもいいよね〜」と話していたので、よく覚えている。(← ※ 外見上は、俺もクラスの女子…)

 たしか、男女二人のユニットで、その二人は……

 「何やらすごい新人がいると、業界で噂されていたんだが…。 やられたよ。まさか、本当の兄妹とはな…」

 そう… 俺とは違い、本物の兄妹ユニットだ。

 「きみも彼らの歌を聞いただろう。…彼らの実力は本物だ。 ひと月ほど前にデビューし、それより少し前にデビューした『シオン』の勢いを、全て持っていかれてしまった。」

 社長の横に控えていた秘書の女の人から、もう一枚の用紙を受け取る。そこには、調べ上げられた『キズナ』のCD売上がグラフにしてある。『シオン』のグラフに重ねると……げ!見事に『シオン』売上が取られてる…。

 「彼らは間違いなく、今一番勢いのある新人だ。テレビやラジオにも多く出演し、積極的な活動を進めている。きみとは…『シオン』とは違ってね…」

 現在『シオン』は、ほとんど活動できないでいる。 …って、そりゃ当たり前か。

 「社長…。 元はと言えば、社長が変なこと言い出すから、こうなったんじゃないですか!」 俺は、社長をジト目で見る。

 そうだ!そもそも、全部社長が悪いんじゃないか! 社長が、潤と瞳の双子ユニットでいこう、なんて言い出すから…。

 「ま、まぁ待て! 大丈夫だ、こちらにも策はある。向こうと違って、こちらの『シオン』は、まだプロフィールさえ明かしていない。それを使って、再び、もう一度だけ話題性を呼び寄せられるだろう。心配するな!」

 おいおい! 心配するなって言われても…。

 「そのことは、我々に任せておきなさい!(ニヤリ) きみは、次の曲作りに専念してくれたまえ!」

 社長…。何を根拠にそんな自身マンマンに……。


 「ところで。雪野くん、レッスンの方はどうだ?」

 「ほとんど休みもなく、毎日がんばってますよ…」

 くっそ〜!社長も、とんでもないとこを進めてくれたものだ!(紹介してくれたのは、早乙女先生なんだけど…)

 あの天童先生のスパルタは、只者じゃないぞ!! とゆーか早乙女先生と違って、スパルタしてるって自覚が無い分、かなりタチが悪い。笑顔で迫ってくるんだもんなぁ…。

 流石は、ネクロマンサー系列…としか言いようが……(汗)

 「そうかそうか! うわっはっはっはっ!!!」

 俺の疲れた表情を見て、大げさに笑う社長。 人事だと思って…!

 「大丈夫だ。彼女に任せておけば、問題無い! がんばってくれたまえ」 社長は、俺をなだめるように言う。

 「学校の方はどうだ?」 再び俺に質問する社長。

 「…どうもこうも、最悪ですよ!!」

 まったく…! いったい誰のせいでこんなことになったのか…。

 「わっはっはっ!! そうかそうか!!」 先ほどと、同じように笑う社長。 …? なんだいったい?

 「そうかそうか!それは、すまないことをした。」 社長が、ぜんっぜ〜んすまなくなさそうな顔で言う。 ……!!(怒)

 「学校生活は大変だろう! …だがな、きみにもこれからは本格的に芸能活動をしてもらわなくてはならん。だから…どうだろうか?そろそろ、選択する時じゃないのかね…?」

 顔を変え、真剣な面持ちで俺に向かって問う社長。 ………社長 何が言いたい…?!

 「あー つまりだ…。 雪野君、きみにはこれからは、学校をやめてもらい、本格的に芸能活動に勤しんでもらいたい、そういうことだ。」

 !!っ 何だって?! 俺は社長を見る。

 その時、俺は、社長の瞳の中にある社長の思惑が見て取ることができた…。


 ……コイツは金になる…(ニヤリ)


 だぁーーー!!結局はそういうことかぁーーー!! 校長に変な情報を流したのも、結局、俺に働かせるためかーーー!!!」

 「う……(汗) な、何を言う!人聞きの悪い…!! ただ、その方がきみのためになる、と…!」

 何を勝手にそんな…!!

 「きみの親御さんも言っておられたぞ! 芸能活動に専念してほしい。学校をやめることになってもそれは仕方ないことだと…」

 何ー!母さんはすでに、了承済みかーー!!

 「気兼ねなく地方ロケにも行かせることができるし…! どうだ?悪くはなかろう!」

 くっそー! どいつもこいつも、俺を金の道具にして…!!

 「社長!俺は、学校やめませんよ!!俺は、学校生活も芸能活動も、両方やっていきます!!」

 少し前までは、確かに俺も、学校をやめようかどうしようか悩んでいたのも事実だ。

 だが…。 俺は、学校をやめない!

 あんな学校生活だが、俺は学校が好きだ!授業が嫌だったりテストが嫌だったりするけど…。それでも俺は、学校をやめない。


 ………学校をやめてしまえば、俺は『ノルンの雪野潤』ではなくなってしまうから…。



 「社長!俺は、学校やめませんよ!」

 俺の顔を見て、再び社長はニヤリと笑った。

 「ふ… やはりそうか…。 なんとなく、そんな気はしていたんだが…。
 わかった、いいだろう。きみのやりたいようにやりなさい!

 …だがな!だからと言って、仕事を減らすようなことはしないぞ。少しでも手を抜くようなことがあれば、すぐにでも学校をやめさせるか…それとも、即刻、芸能界から出てってもらうぞ。いいな!」

 おお!やってやろうじゃないか!!

 俺はその時、初めてこの社長が、本当の大物に見えた気がした。


 「ふっふっふっ! きみは、このデビューシングルで、オリコン一位を取った。

 …だがな。私に言わせれば、これぐらいは、当然売り上げてもらわなくてはならんのだよ。 きみは、この私が目をつけたのだからな!

 今のこの不景気な時代、この程度の売上で満足してもらっては困る。 雪野くん、きみには期待しているよ…(ニヤリ)」

 ぐっ…! な、何なんだ、この社長は!!

 一応、俺は期待されているのだろう…。…だが。 …だが、な〜んか鼻に付く言い方だな……。

 いいだろう!そんなこと、言われなくたってやってやる!!

 俺はそう、改めて決意をした…。








 「ただいまー」

 ふー。今日もレッスンを終え、ただ今帰宅。

 「おかえりー、瞳。 瞳、聞いて!今日、駅前のデパートでバーゲンがあってね…!」

 リビングに入るなり、いきなり上機嫌で話し掛けてくる母さん。 …母さん、俺は疲れてるんだ…。

 「母さん。俺は、瞳じゃなくて、潤……」

 「それでね!! せっかくだから、私のだけじゃなくて瞳にも……!!」 ああー!!俺の話は完全に無視かっ!!



 「…母さん。社長から話を聞いたよ。 俺を働かせたいんだってな!」

 俺の一言に、固まる母さん。

 「………(汗)」

 まったく!息子に限りなく犯罪に近いことまでさせて…!何考えてるんだよ!

 さすがに反対すると思われた父さんは、俺の(瞳の)制服姿を一目見て、
 「ああ…出会った頃の母さんにそっくりだ……」
 と、一言呟いたきり、沈黙してしまった…。 父さん!あんたはそれでいいのか!!

 母さんは俺に向き直り、

 「…潤、よく聞いて。
 この不景気な世の中。 お父さんの会社は、経営も苦しいらしく、お父さんのボーナスは今年もまた減ったわ…。」

 あ、母さんの目が、すっごい切なそう。

 「だから、ホントはあなたの高校の授業料もキビシイの…。 仕方なく、私とお父さんは、可愛い息子を奉公に出させるしか……」

 ほー…

 「じゃあ、その無駄とも思えるような、その瞳用の大量の服は何?」 俺は、母さんが今日買ってきたと思われる、その袋を指さす。

 「(ぎくっ!!) ……………(汗汗)」

 母さんの目があさっての方向を向きながら、再び固まる。

 「………」

 「………」

 「うふ♪ 可愛い年頃の娘には、お金がかかるのよ!」

 「うがぁーーー!!いい年こいて、『うふ♪』とか笑うなーーー!!
 あんたは結局、息子に女装させて楽しんでるだけじゃねーかーーー!!!」

 「まぁいやだわ!人を頭っから疑うようなことを! そんなんじゃ、人間不信になるわよ?」

 「誰のせいだ!誰のー!!!」

 くっそ〜! 俺は絶対、高校やめないぞ!

 もっと稼いで早く独立してやるぅ〜〜〜!!


 俺は、固く心に誓った。










 「―――というわけなのよ! どう思う?」 俺は、親や社長のことを、綾根と香奈枝に話す。

 と言っても、俺を男だと知らない二人には、全体の三割ほどしか言えないが。



 レッスンの合間。休憩中は、ダンス場の端に床に座って雑談。

 …ちなみに、もちろん、大っぴらに足を組んで男座りをするわけにもいかないので、そこはもちっとおしとやかに。(笑)



 「きゃはは! つまり瞳は『お金のなる木』ってわけね!」 おい!綾根! それって何気にヒドくないか?

 「でもいいなぁ〜。 それでも瞳は、高校は行くんでしょ? 私、もう高校は行ってないから。 うらやましいな〜」 香奈枝が懐かしそうに話す。

 「う〜ん…。妙に騒がれなければいいんだけどね…」

 「大丈夫よ!そのうち冷めるから。(笑)」 あっけらかんと話す綾根。

 綾根も今、高校に通い続けている。親に、高校をきちんと卒業することを条件に、芸能活動を認めてもらったらしい。単位を一つでも落とすと、ダンスはやめさせられてしまうのだとか。

 「いいわねー、瞳のとこは。親は、結局は瞳のやりたいようにやらせてくれてるんでしょ?」

 「ちゃんと娘の気持ちを、わかってくれてるんだね〜」

 「……うちの親(母さん)に限ってそれは無い!」

 何かをはげしく勘違いしている香奈枝に、悲しく訂正する。 さっきの俺の話から、どうやってそういう結論になるんだ?

 「私のうちはさ〜、親が両方とも芸能関係者だから、なんか必然的にそうなっちゃたのよね。私も好きだから別にいいんだけどさ〜」 香奈枝が言う。

 まぁ、それぞれに事情があるらしい。 そういうのを考えてみると、うちってまだ恵まれて……………ないな。(涙)

 ってゆーか、どこに女装を強要する親がいるんだよ!!

 「社長さんにも、期待されてるんでしょ!よかったじゃないの!」

 「うん… でも、いったい何をさせられるんだか…」

 「瞳の場合、CMとかライブとかじゃないの? …あ、そうそう!聞いて! 私、またCMの出演、決まったよ〜」

 「へー!香奈枝、やるじゃないの!」

 香奈枝は、すでに二・三のCMに出演しており、今はお昼ごろのドラマに出演している。 本人としては、TV女優より舞台役者になりたいらしいが。
「やっぱりあの舞台の感触は、TVの撮影とは違うのよ!」と香奈枝。
気持ちわかるな〜!やっぱ、生のライブの方がいいよな!

 はたして、今の『シオン』にできるのだろうか…?

 ちなみに綾根も今、とあるTV番組にレギュラー出演している。 綾根はキャラ的に、深夜、なのだそうだ。(笑)


 「そういえば、知ってる? 今日ここに、新しい子が入るんだって!」 綾根が言う。

 「…また新たな犠牲者が……」 ぼそり。

 「あははっ! 瞳、そんなこと言わないの!」

 「ハハハ……天童先生が十〜分すごいってことは、よ〜くわかっております」

 すごいにはすごいんだけど、教えてもらってるって言うよりは、いじめられてるって気もしなくも……。

 「瞳は先生お気に入りだからね!」

 気に入られたくなんかないやい!

 「でも、どんな子かな〜? 瞳の時は、ホント手強いのが来たな…って感じだったけど」

 「あの〜 それってどーゆー…(汗)」

 「なんか、今度も歌手志望らしいわよ!」

 へー。じゃあ、やってくるのは、俺の商売敵ってわけだ。

 数ヶ月前、俺が入って以来、他には誰も入っていない。 この天童さんの教室は、けっこう大物が出ると有名らしく、なかなか紹介がつかないらしい。 う〜ん、早乙女先生に感謝感謝。 …………素直に喜べない。(涙)



 その時、バン!と入り口が開き、俺たちは扉の方へ目を向ける。天童先生が戻ってきたのか、と思いきや…。

 入ってきたのは、見慣れない女の子だった。

 この子が新しくやってきた子かな? 年は俺たちと同じくらいだろうか。背は少し低め。 何かを探すように、教室(ダンス場)内を見渡している。

 ふと、俺と眼が合い…

 …げげっ!近づいてきた!!

 ヤだなぁ…、間違いなく俺を見てるよ…!

 「フフン! あなたが、『シオン』の雪野瞳ね!!」

 俺をビシッ!っと指差し含み笑い…。

 「はぁ…」 俺は思わず、気の抜けた返事を返す。

 「あたしは、『キズナ』の松岡秋菜(まつおかあきな)よ!! 雪野瞳!あんたには、負けないわよ!!」

 「………はぁ?」


 そうか! どっかで見たことある顔だな…と思えば、どうやらテレビで何度か見ていたらしい。

 「『神秘のベールに包まれた謎の双子』とか、何とか騒がれてるらしいけど…! いい?本当の歌姫は、このあたしよ!!

 ………。

 「…とかって言われちゃってますけど。瞳、どう?」

 「は、はぁ……」

 香奈枝に言われ、乾いた笑いを浮かべる俺。

 う〜ん…何なんだろうなぁ〜、この子は……。 突然のことに、ちょっと困惑気味。 俺は別に、歌姫になりたいわけじゃ……。

 「松岡秋菜…。 …秋菜……。 ………って、あーーーー〜!!!

 後ろで、何かぶつぶつと言いながら考え込んでいた綾根が、突然、秋菜という女の子に向かって大声で指を差す。 なんだ〜?

 一瞬、ビクッ!っと驚いたように見えた秋菜も、綾根の顔を見て…、

 あーーー〜!!! 吉住綾根!! なんでアンタがこんなところに!!!」

 「それはこっちのセリフよ!! ………ま、まさか!今日から入る、新しい子って……」

 「……そのまさか、よ…!!」 驚愕の色が二人を包む。

 楽しそうな(笑)二人の様子に、俺と香奈枝はきょとんと眺めるのみ…。

 「あ、綾根。この子と知り合い?」 香奈枝が、恐る恐る尋ねる。

 「……あ、秋菜とは、小学生の頃、同じダンス教室に通っていたのよ…。 中学に入って、やっと顔を見なくなったと思ったら…。 まさか、こんなところで…。」 苦渋の顔を浮かべる綾根。 何やら、この二人には深〜い因縁があるらしい。


 「は〜い!みなさ〜ん!集まってくださ〜い!!」

 開きっぱなしのドアから入ってきた天童先生は、みんなに召集を掛ける。

 「この子が今日からいっしょに練習することになった、松岡秋菜さんです。」

 「秋菜です。どうかよろしく……!」 と言いつつ、明らかにその視線は、綾根とその横にいる俺に敵意の視線を送ってくる…。(汗) 綾根は、睨み返しているようだが。

 「秋菜さんは、…そうですね。ではまず、こちらに来てダンスを見せてもらえますか?」

 天童先生がそう言うと、秋菜はニヤリと笑って…、

 「先生!あたしは、幼い頃からずっとダンスやバレエをやってきたのよ! ダンスなら…!」

 「はいはい! ではまず、こちらに来て……」

 秋菜のセリフを聞き終わらぬままに、天童先生は秋菜を引っ張って、なぜか隣の部屋へ入ってゆく。

 「………あれ?なんで隣の部屋に? 別にここでやってもいいんじゃ…?」

 「…?何を? 私の時も瞳の時も、とくに何もやってないんだけど…」

 不思議そうに呟く俺と香奈枝に、綾根が重い口を開く。

 「………向こうでアレをするの。 …そう、ダンス経験者だけにする能力検査。」

 …なんか綾根、嬉しそうだ……。

 「何をするの?」

 「…うん。 天童先生独特の検査方法で、先生によれば、アレを一通りやればその子の技量が全てわかるらしいわ…(天童先生だけに)」

 「ふ〜ん。 ……………だから、アレって何?」



 数秒後、隣の部屋からは、何とも言えぬ秋菜の悲鳴が聞こえ始めた…。

 ああ… ここにまた犠牲者が一人…。(笑)







〜あとがき〜

 読んでいただけて、本当にありがとうございます。

 今回書くはずだった社長の企画は、たいしたネタでもないのに次回に引き伸ばしてしまいました…
 はっきり言って、期待しないでください(汗

 雪野も学校をやめてしまってはおもしろくない!と、通い続けさせましたが…。 この主人公、我儘ですね〜(笑

 またキャラが増えてしまいましたが、本編で特に重要なキャラはあと『キズナ』兄で終わりですので。

 次回より、本編はますます芸能界中心となっていきますが。

 それではまた…

   水無月
     (第四話後半をちょっと急ぎすぎたと反省しつつ…)


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