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 ガラッ… バン!!

 「康祐く〜ん!」

 「おお! 何だい、瞳ちゃん!」

 「私のために死んで♪」

 グァッシャーーン!!

 ………カランカラン……

 「ちょっ、ちょっと待て!! 本気で殺す気か!!」

 「そのつもり♪」

 「ま、待て!潤!! と、とりあえず、落ち着いて話し合おう!!」

 「ほう……。 今更、何を話し合うと? じゃあ説明してもらおうか! 俺が体育から戻ると服が無くなっていて、代わりにこの女装セットが置いてあった。なぜだ!!」

 「さ、さぁ…。 なんでだろうな………(汗)」

 「とぼけるなーーー!! お前が服を持って立ち去るのを見たという証言はとってある!! 撲殺、絞殺、刺殺、自殺……さぁ、選べ!!」

 「わ、わかった!俺が悪かった! だが、これには理由があるんだ!とりあえず話を聞いてくれ!」

 「…しかたない。 遺言くらいは聞いてやろう。」

 「全く…。吹っ飛んだのが椅子だけだったからよかったけど…。俺やPCに当たっていたらどうするつもりだ!」

 「お前には当てるつもりでいた。それに、あんな旧式、一台くらい壊れたって別にかまわん。」

 「いや、お前はかまわんだろうけど……。 だいたいその右手のバットはどこから持ってきたんだよ!」

 「廊下にいた野球部に頼んだら、喜んで貸してくれたぞ。 で、何だ?話というのは?」

 「…それよりお前、その格好なんだから、女声で話せよ。」

 「…わかったよ!」

 「それで話というのはな…。 実は、インターネット上にホームページを作ったんだ。そこに俺達の歌を載せて、いろんな人に聞いてもらおうと思うんだ。」

 「なるほどな。 …で、何でそれが、俺の女装に繋がるんだ…(怒)」

 「まぁ、待て!話は最後まで聞け! この間から練習している曲があるだろう。あれには、女のパートがあるんだ。だから、お前の男声と女声を、PCで合成してみたいんだ。」

 「へー!そりゃおもしろそうだな!」

 「な!おもしろそうだろ? HP作り、協力してくれるか?」

 「まぁ、それくらいならかまわんぞ。」

 「そうか!協力してくれるか!! では、みなさん!お願いしまーす!!」

 ぞろぞろぞろぞろ……

 「な、なんだ?この人たちは……?」

 「紹介しよう!この人たちは、新聞部のみなさん&演劇部メイク担当のみなさんだ!」

 「はじめまして、瞳ちゃん! 新聞部部長の宮沢です!よろしくね!」

 「な、なんで新聞部のみなさんがここに……?」

 「それは、HPに瞳ちゃんの写真を使いたいからだ! さっき言ったよな!協力してくれるって。」

 「そりゃ同意はしたが…。」

 「では、みなさん! この男っぽいやつを、女にしてやってください!!」

 「まっかせなさーーーい!! じゃあ、瞳ちゃんを連れて!いくわよ!!」

 「なーぜーだーーーー!!」




The voice of ours

作者 : 水無月

ACT . 3  Talent scout






 学園祭が終わって数日が経つ。

 俺はちゃんと男として生活している。 文句あるか!俺は男だ!!

 だが、周囲はそう認めていないようで…。 他クラスや他学年の生徒たちは、なぜ瞳ちゃんは男装しているんだ!と騒いでいる。かろうじて認めているクラスメート達は、なぜ瞳ちゃんは男なんだ!と世の不条理を嘆いている。

 もちろん体育などは、至って普通に受けている。 しかし、職員室でも、あの子は本当に男なのか?という話が出ているらしい。先生達まで何を言っているんだ!



 PC室で拉致られた俺は、メイクされ着替えを終え、完璧なまでに準備された撮影セットのある教室へ来ていた。

 新聞部の人たちは、慣れた手つきで照明やカメラのセットをしていく。なぜか部員のほとんどが、嬉々として作業を進めていく。

 「あの〜、みなさん。 私なんか撮ってないで、もっと別のものを撮った方が…。」

 「今、この学校に、瞳ちゃん以上のネタはないの! さぁ!一億三千万人の読者が瞳ちゃんを待ってるわ♪」

 目を輝かせて宮沢先輩が言う。これは、何を言っても聞いてくれそうにないな…。 おそらく、康祐の依頼がなかったとしても、近いうちに俺の写真を撮りにきていただろう。宮沢先輩もけっこうかわいいんだから、自分を載せればいいのに。

 ちなみに、気心の知れた友人の前なら素でいいが、あまり知らない人の前ではこの格好のときは、一人称を『俺』から『私』に変えている。この格好で俺が『俺』と言うと、俺を知らない人間はかなり驚くということがわかった。実際、鏡の前でこの格好のときに『俺』というと、確かにおかしいなと思ってしまう。 最初は抵抗があったが、慣れてしまえば何の問題もなかった。

 「おー! いっそうかわいくなったなぁー!」 「演劇部にほしいわね〜。」 康祐と沙耶香がやってきた。康祐は手にデジカメを持っている。沙耶香も手にカメラ(使い捨てカメラだろうけど)を持っている。その横では新聞部員がせっせと大きなカメラの準備をしている。 おまえらー!何枚撮るつもりだーー!!

 「そろそろ撮影を始めるわよ!瞳ちゃん、まずここに立って!」 宮沢先輩の指示がとぶ。あきらめて指示に従う。

 俺の気持ちをよそに、撮影は順調に進む。 「瞳ちゃん!顔が硬いわよ!もっと笑って!」 素直に笑えるかー!

 撮影したポイントの足元に、康祐がチョークで印をつけていたのが気になった。



 …そして……。

 や……やっと終わった………。つ、疲れた……。

 こいつらいったい何枚撮る気だー! 途中、お色直しを何度かさせられた。

 「康祐。このチョークの印は何なんだ?」 撮影中、気になっていたことを康祐に聞く。

 「これはな、男の潤の立ち位置だ!」

 「………は?」

 「これから男の姿に戻って、この印の位置に合わせて撮影をするんだ。それをあとで、瞳ちゃんの写った写真と合成をする。 どうだ!おもしろいだろう! 現実には絶対ありえない、潤と瞳ちゃんのツーショットだ!」

 「わぁ!おもしろそうね! やってみましょう♪」 即、同意する宮沢先輩。

 「というわけで、瞳ちゃん。早く男になるわよ!」 沙耶香と演劇部メイク担当に連れていかれる。

 ……………。 これって、撮影はまだ続くってことなのか………(涙)。

 「男の瞳ちゃんもいいわね。」 「そうね。でも、うまく隠さないと女ってばれちゃうわね。」 「靴底の高いシークレットシューズで、身長をもっと高くしてみましょう。その方が、いい絵になりそうだわ♪」 あぁ。この人達、完全に俺を女だと思い込んでる……(涙)。

 結局、女の時ほどは時間はかからずに、なんとか撮影は終わった…。







 期末テストの終わった十二月の初頭。 冷たい風を感じ、マフラーを引き寄せる。今年の冬もそろそろ雪が降り出しそうだ。

 今日は練習の日ではないので、今は康祐と下校途中。

 昨日でいやなテストも終わり、これからパーっと遊びたい気分だ。 一つ言っておくが、俺は成績は別に悪い方ではない。上の下といったところか。康祐には勝てないが、健二やあずさぐらいには勝てる。

 「雪野。例のHP、ついに完成したぞ! どうだ、見てみるか?」

 先ほども言ったが、昨日までテストだった。学園祭が終わると、溜まっていた勉強を急がせるように、すぐに期末テストになる。この間の撮影はテスト期間に入る直前だったので、新聞部の新聞も完成していないらしかった。 康祐…お前はいったい、いつの間に作ったんだ!(後日、テストの結果を聞いて、さらに驚くこととなった。)

 そんな話をしながら校門を出ていく。 そのとき、突然二人に声がかけられた。

 「君達は『ノルン』の二人だね?」



 学校近くのとある喫茶店。 俺と健二は、Kプロダクションを名乗る二人の男と対峙していた。

 一人は、偉そうにふんぞり返っている中年の男。剥げた頭が涼しそうだ。 こいつは気に入らないな。名前は…こいつは、チャイコフスキー(←意味不明)でいいだろう。

 もう一人はまだ若い、気の弱そうな青年だ。名前は若林慎也(わかばやししんや)と名乗った。

 「瀬木康祐です。一応ノルンのリーダーです。」 「雪野潤です。」 無難にあいさつをしておく。

 「うむ。 率直に言おう。 君達、プロになってみる気はないか?」

 「!!っ で、デビュー…ですか……?」 チャイコフスキーの言葉に驚く二人。

 「この間の学園祭を、うちの社長が見に行っていたんだよ。娘が出るとか言ってね。 そのとき、たまたま聞いた君達の歌を、社長がとても気に入ってね。うちからデビューさせてみないかと言われて、スカウトに来たんだ。」

 「そういうことだ。 どうだ?君達にとって悪い話じゃないだろう。」 若林さんの説明に頷くチャイコフスキー。

 「実は社長が気に入ったチームがもう一組あるんだけどね…」

 「ふん!あんな小娘たちのどこがいいんだか。 私は君達に期待しているよ。」

 二人の言葉に、俺と康祐は考え込んでしまう…。

 「…そうですね……しばらく考えさせてください。」 康祐がそう返事をする。

 「…まぁいいだろう。 連絡は後日する。 若林!いくぞ!」  「ああ!待ってくださいよ!」

 Kプロダクションの二人は帰っていった。

 「デ、デビューか………!康祐、どうする?」 俺は少なからず興奮していた。俺達がデビューできるなんて!!

 「そうだな……。考えたこともなかったな…。」 割と冷静な康祐。

 残された名刺を前に、二人は、それぞれの思うことを考えていた。







 数日後………。 今日はノルンの練習日。

 そして、今日は女装姿だ。 女のパートを練習するときは、いつも女装して(させられて)やっていた。

 「それにしても、あの写真。よく撮れてるわねー!HPも見たけど、なかなか様になってるじゃない!」

 「そうね! でも、あれが男とは…。 本物の女としては、何だか複雑だわ…。」

 塚原とあずさが、それぞれ感想を言う。 例の新聞は、昨日から張り出されていた。あれだけ、いやがっていたはずなのに、なかなかきれいに撮れていて、自分でも驚きだ。 おかげで、また学校中が大騒ぎだ。 新聞にHPアドレスを載せたらしく、来訪者数は着々と増えているらしい。

 「新聞もいいけど。 デビュー…、どうするんだ?」 真剣な面持ちで、康祐がみんなに尋ねる。

 「デビューできるなんていいじゃない!やってみましょうよ!!」 「そうか!ついに俺も、テレビに映るんだな!!」

 嬉しそうに返事をするのは、あずさと健二。

 「俺もやってみたいな!!」 女声で、俺も返事をする。

 「そうか……。実は、俺はあまり、したくないんだけどな…。」 康祐はそう返事をする。

 「え〜〜!なんでーーー!! せっかくなんだから、やってみましょうよ!!」

 「俺は、音楽は好きだし、こうやってみんなでバンドするのは楽しいよ。でも、デビューまでは考えたことがない。それで俺が食っていけるとは思わないしな。 あくまで、俺は音楽を趣味として楽しんでいきたいんだ。」 反論するあずさに、康祐はそう言った。

 「…実は私も、デビューはしたくないな…。」 意外にも、そう言ったのは塚原だった。

 「え〜〜!!萌ちゃんまで! なんで〜〜!!」

 「うん、ちょっとね…。 私も、音楽は趣味として楽しみたいな。」

 「ふ〜ん、そんなものなのかな。」 いつもと、どことなく様子の違う塚原に、あずさはそう言うしかなかった。

 「それより、そろそろ歌の録音を始めよう。」

 例の歌は、瞳ちゃんバージョンを録音して、合成して完成する。潤の方はすでに録音は終わっている。 録音といっても、所詮は学校の支給品での録音なので、たいして音質はよくない。まぁ、それでも十分だろう。



 「瞳ちゃん! いっしょに帰りましょ!」

 というわけで、今は塚原と下校途中。ただし、女装姿で…。 俺としては男に戻りたいんだけどな…。女装姿で、抵抗なく外を出歩ける自分が悲しい…。 ちなみに、あずさは寄る所があるとかで、今はいない。

 「なぁ、塚原。 なんでデビューがいやなんだ?」

 「うん。ちょっとね…。」 塚原は、どうやらこの話題に触れられたくないらしい。俺はそれ以上何も言えなかった。

 しばらく歩いていると、突然、後ろから声がかけられた。

 「雪野瞳さんと塚原萌さん、ですね?」

 そこにいたのは、チャイコフスキーと若林さんだった。



 「塚原萌です。」 「あ…、雪野瞳です。」

 名乗る二人に、こちらも名乗る。初対面ではない俺は、慌てて言葉を返す。 相手は俺を初対面の人間として見ている。当然と言えば当然だが。俺も初対面のように振舞う。

 そのとき、二人を見ていた俺の眼が若林さんと合ってしまった。

 「あれ? 瞳ちゃん、君とは一度、どこかで会ったかな?」

 「い、いえ。 気のせいだと思います。」

 「う〜ん、そうか……。 それに、塚原さん。僕は君を、何かで昔、見たような気がするんだけど…?」

 「気のせいですよ。 それで、私たちに話というのは…?」 塚原が聞き返す。

 「うむ。 率直に言おう。 君達、プロになってみる気はないか?」 この間と、全く同じ口調で言うチャイコフスキー。

 「塚原さんは、ノルンのメンバーでもあったよね?話は聞いてると思うんだけど、うちの社長が君達を気に入ってしまってね。どうかな?」 若林さんが言う。

 「デビューですか……。」

 「そうですね……。」 塚原を見ると、そちらも、なんとも言えない顔でいる。

 「この話は今のところ、ノルンの他のメンバーにはないしょにしていてね。君達がなかなかつかまらなくて焦っていたんだよ。瞳ちゃんは全然見かけないし、塚原さんはいつもノルンの誰かといっしょだったからね。声がかけれなかったんだよ。瞳ちゃんに至っては、本当にこの学校の生徒かどうか、心配になっていたところだよ。」

 当たり前だ。俺は男として塚原たちといたのだから、俺たちがつかまらなくて当然である。 それにしても、ずっとチャンスを窺っていたとは。 朝、SHRで先生の言っていた、最近、学校周辺をうろついている不審な人間とは、もしかすると、この二人だったのかもしれない。

 「私としては、あの青臭いガキどもは気にいらん!しばらく待ってくれと言っていたが、あのガキどもはすぐ飛びついてくるだろう。 私としては、君達に期待しているよ。美しいお嬢さん方。」

 「誰にでも言うんだな、チャイコフスキー!」 俺は思わず、男声で呟いていた。

 ビクッと驚くチャイコフスキーと若林さん。恐る恐る辺りを見回して、おかしいなという顔をしている。

 「あれ?今、男の人の声が聞こえたような気がしたんだけど…。 瞳ちゃん、そこに今、誰かいなかった?」

 「いいえ、知りませんわ♪」 尋ねる若林さんに、そう答えておく。

 「……で、どうなんだ?悪い話ではないだろう?」 先ほどの動揺を必死で隠しながら、チャイコフスキーが言う。

 「………この話、お断りさせてもらいます!」 俺はそう答えた。

 チャイコフスキーと若林さんはかなり驚いている。おそらく、このデビューの話をして、即日で断った人間はいないのだろう。 横にいる塚原も、かなり驚いているようだ。

 「ま、まぁ、そう言わずに…。 とりあえず、しばらく考えてみてくれないか?」

 二人は名刺を残して去っていった。

 そしてその後、俺たちも喫茶店を出た。



 「ねぇ、雪野。どうしてすぐ断ったの?」

 「どうしてって。 俺は男なんだぞ!こんな姿でデビューできるか! それに、あのはげが気に入らない!!」

 「でも、もったいないわよねー。」

 「お前だって、デビューはしたくないんだろ?」

 「うん。 でも、ソロでいいから雪野には歌ってほしいなぁ。」

 「じゃあ、ノルンとしていっしょにやろう! それだったら、いいじゃないか!」

 「そうするなら、私はノルンを抜けるわ。」

 「そうか…。 じゃあ、デビューは無理だな。塚原が抜けたらノルンがノルンじゃなくなってしまう。」 今のノルンからは、誰が抜けてもノルンではなくなってしまうだろう。

 「ごめんね! だから、雪野だけでもソロでやってみたら?雪野の声だったら、絶対大丈夫よ!」

 「いやだね! 一人でやってもなぁ。やっぱり、みんなでするのが楽しいよ!」

 塚原にはそう言ったが、少し未練もある。もっと大勢の前で歌ってみたいとも思う。でもなぁ…。







 さらに二日後………。

 今、学校のPC室で、完成した例の歌を聴いている。

 「どうだ!なかなかすごいだろう! 幻の、潤と瞳ちゃんのデュオだ!!」 得意げな康祐。

 こうやって自分の声を聞くのも、女声を聞くのも初めてだ。俺ってこんな声で話してたんだ……(汗)。男声と女声は、はっきり言って別人だ。

 「予想以上の出来になった! ただ、音質が悪いのが少し気になるけどな。」

 「それはしかたないさ。 本物のスタジオとか借りれたらいいんだけどなぁ。」 所詮、一介の高校生ではここまでが限界だろう。 …デビューか………。

 その歌は翌日から、放送部の行っているお昼の放送で流され、大反響となった。



 その日の放課後………。

 俺と康祐は、再び、Kプロの二人と向かい合っていた。

 「で、きみたち。 結論は出たのかい?」

 「申し訳ありませんが、この話はお断りします。」

 これが、俺たち、ノルンの結論だった。名残惜しい気もするけどな…。 Kプロの二人もかなり驚いているようだ。

 「き、きみたち…。 本当にいいのかい…?」 若林さんが俺たちに、再び聞き直す。

 「はい。 みんなで決めたことです。」

 「ふん! 所詮、ガキはガキだな!」 チャイコフスキーはそう言い残し、去っていった。



 「あれ? 若林さんは行かなくていいんですか?」

 「うん。今日は少し、個人的に話がしたくてね…。 まさか断られるとは思ってもみなかったけどね。 普通、プロになれるって聞いて断る子は、そうはいないよ。」

 「それで、話というのは…?」

 「…実は、僕も昔、この高校でバンドをやっていたんだよ。」

 「へー!そうだったんですか!」

 「うん。僕も君達と同じように、あの部屋で練習して、あの学園祭のステージで歌ったんだ。残念ながら、スカウトの声はかからなかったけどね…。 ところで、演劇部の早乙女先生、まだいる?」

 で、でたな!ネクロマンサー! どうやら若林さんも、早乙女先生にしごかれた口らしい。 話が合うだけに、会話は盛り上がる。

 「この高校出身だから、この間も社長の案内を任されて、君達のステージが見れたんだ。 歌すごかったよ。昔の僕らとは比べものにならないくらいね…。 でも…だからこそ、どうしてスカウト断ったんだい?」

 「そのことはいいじゃないですか。 俺たち自身が決めたことです。」

 「なんだかなぁ〜。 もったいないなぁ〜〜。」

 若林さんは昔、歌で食べていきたいと考えていたらしい。でも自分の歌じゃだめだと悟り、諦めたそうだ。でも、音楽から離れられず、今の仕事に就いたらしい。

 「今の仕事も楽しいんだけどなぁ。 ただ、今の上司が性質悪くてね。」

 「ホントに!あのチャイコフスキーは気に入らないな!!」

 「チャイコフスキー? あはは!たしかにチャイコフスキーだ!!」

 う〜む。この若林さんとは、気が合いそうだ。

 「それにしてもなぁ…。 この話はホントはしちゃいけないんだけどね。 実はもう一組、スカウトしているんだよ。君達の後に歌っていた、雪野瞳さんと塚原萌さんだよ。」

 ドキッ!っとした。 隣の康祐が、ちらりと俺を見る。

 「でもね…、話をしたその日に断られたよ。一応、考えてみてくれって頼んだんだけど…。 たぶんまた、断られちゃうだろうけどね。 どうして今の子はそうなんだろうなぁ。歌で食っていきたいとは思わないのかなぁー。」

 「そうだったんですか…。」 適当に相槌をうつ。 康祐は微妙な顔をしている。

 「君達もその瞳ちゃん達も歌うまいのに。もったいないなぁ。 雪野くん。きみ一人でソロとしてやってみない?」

 「ソロで…ですか? いや…、俺はいいです。」

 「ホントにいいの?  …そういえば、雪野くん。 瞳ちゃんも雪野だったよな。 顔も似てるし…。 双子か何か?」

 「いえ……いや、そうです。」 どうしようかな?妹にでもしとけばいいかな?

 「ふーん。 君達のどちらかは拾えると思ってたんだけどなぁ〜。 ねぇ、君から瞳ちゃんだけでも説得してくれないかな?」

 「無理でしょうけど…。まぁ、説得はしてみます。」 俺はそう答えた。俺が言っているんだから、無理なものは無理だが。

 俺と康祐は席を立った。

 「若林さん。このHPを覗いてみてください。 おもしろいものが聞けますよ。」 帰り際に、康祐は若林さんにHPのアドレスを教えていた。



 「お前、瞳ちゃんとしてもスカウト受けてたんだな。」

 「ああ…。」

 「………なぁ雪野。 お前だけでもソロとしてデビューしてみないか?」

 「何言ってんだよ。俺はそんなつもりはない。」

 「…俺達のことは気にしなくていい! だけど雪野、お前は違う!! ここで足を止めたらだめだ!」

 「………」

 「俺がバンドを始めたのはな、俺がお前の声に惚れたからだ。他のみんなもそうだと思う。 だから、俺達がここで、お前の足を引き止めていてはだめなんだ。」

 「俺は…!」

 「俺達のことは気にするな! 悔しいけど、お前には歌の才能があるよ。 大丈夫だ!お前ならできるよ!」

 「………」







 期末テストが終わると、あっという間に冬休みになる。

 一学期、三学期だとスポーツ大会などがあるのだが、二学期にはない。ただし、年末ということもあって、学校でも家でも掃除などが忙しくなる。

 俺達バンドにはないのだが、演劇部にはクリスマス公演もあるらしく、練習に忙しいようだ。 さて、今年のクリスマスは何をしようかな?

 授業も、十二月の真ん中を過ぎると、もう残すは午前授業だけとなる。クラブに入っていない俺達は、練習のない日は暇になる。

 「この公園、懐かしいわね。」

 「ああ…。 ここはあの頃から変わらないな。」

 「うん。 でも、ここも春には取り壊しになるんだって…。」

 俺とあずさは、小さい頃よく遊んだ公園にきていた。二人はブランコに座って、昔を思い出していた。

 「潤、よく言ってたわよね〜。 あの砂山の上に立って、『俺は歌手になる!俺の歌声を世界中に轟かすんだ!!』って。 きゃはは!!潤ってかわいかったわよねー♪」

 「///(赤面)/// む、昔のことだろ! 第一、そこで気持ちよく歌ってたのを、後ろから蹴り倒してたのはどこのだれだよ!」

 「だって、潤見てると、何かいたずらしたくなるじゃない!」 そんな理由で、俺は蹴られ続けていたのか…(涙)。

 「………」

 「…ねぇ、潤。」

 「………なんだよ。」

 「…これでいいの……?」

 「何がだよ。」

 「……スカウト、断っちゃって本当にいいの?」

 「………いいんだよ。 みんなで決めたことだしな。」

 「よくないよ! プロになることは、潤の夢だったんじゃないの? このまま終わっちゃっていいの?」

 「………」

 「私たちのことはいいんだよ。 私は潤がうらやましいよ。 私もこんな歌が歌えたらなって思う。私がスカウトされたら、デビューしてみたいなって思う。 だれだって一度は夢見ることだよ。 それが、今、出来るんだから、このチャンスを逃したらだめだよ!」

 「………」

 「……あ…。 雪だ……。」

 「………」

 「……いつまでも隠してないで、自分の気持ちをはっきりさせなさい! …私たちは応援してるから。」

 「………」

 あずさは帰っていった。

 雪の降る公園は、いっそう静けさを増していた。







 今、再び俺は、瞳として塚原といっしょに、Kプロの二人と向き合っている。

 そして、俺は口を開いた。

 「………申し訳ありませんが、この話は…」

 「ちょ、ちょっと待ってくれよ!瞳ちゃん! あのHP見せてもらったけど、すごいじゃないか! 僕個人としては、君には歌ってほしいんだ!できれば、潤君もいっしょに! なんとか考え直してくれないかな?」

 「そうよ!雪野! やめちゃっていいの?」

 若林さんと塚原が俺に言う。

 ………

 ………

 …俺は………

 「………あの。 …俺、やりたいです! 俺……私で、いいですか……?」

 「ああ!やってくれるんだね、瞳ちゃん! 君なら大丈夫だよ!」

 「はい!」



 「がんばってね!雪野!」

 「あれ?塚原さんもいっしょじゃないのかい?」

 「私はやりません。 若林さん、雪野をお願いします。」 塚原はもともと、俺だけをデビューさせたかったようだ…。 ………。

 「そうか…。残念だなぁ…。 じゃあ、瞳ちゃん!よろしくね!」

 「ふん! やっと決まったか。」 チャイコフスキーが口をはさむ。やっぱりこいつは気に入らないな!

 「それで、話さなければいけないことがあるんですが…。」

 「それなら、これから社長に会ってもらえないかな? HPのことを報告したら、とても君達のことを気に入ってね。是非会ってみたいって。」

 「わかりました。 あ…。あと、それから、潤もやりたいと言っているのですが、いいですか?」

 「もちろんだよ! 君達がやってくれるなら、大歓迎だ! じゃあ、今からいっしょに社長に会ってほしいから、電話で呼んでくれないかな?」

 「わかりました。」

 喫茶店を出て、塚原と別れ、一応電話するふりだけしておく。



 Kプロ本社に到着。

 「さて、潤君が来るまでしばらく待ちますか。」

 「いえ、潤ならもう来てますよ。社長のところへ行きましょう。」

 「? もう来てるの?」

 「行けばわかりますよ。さぁ、行ってください。」

 若林さん達を促し、社長室へ向かう。



 「社長。お連れしました。 失礼します。」

 チャイコフスキーにつづいて社長室に入る。

 「よくきてくれたね。」 社長に出迎えられる。チャイコフスキーよりも若く見える社長。実際の年齢はもっと上なんだろうけど。

 広い社長室は、意外に散らかっていた。デスクは何かの紙で埋まっていた。高級そうな装飾品はあまりなさそうだ。 社長室と言ってもこんなものなのだろうか…。

 自己紹介をして、社長に促されソファーに座らせてもらう。社長とチャイコフスキーも座り、若林さんと秘書の人はソファーの後ろに立っている。

 「学園祭で君の歌を聞かせてもらったよ。すばらしい歌声だったね。是非がんばってくれたまえ。  そう言えば、もう一人はどうしたんだ?」

 「あの〜、それについてお話したいことが…。」 俺はおずおずと口を開く。

 「その前にですね…。私のマネージャーになる人とかは、決まっているのですか?」 俺は尋ねた。

 「当面は、私ということになる。」 「うむ。とりあえずは、彼にやってもらうことになっている。」 チャイコフスキーの言葉に、頷く社長。

 「あの…、マネージャーを若林さんにやってもらうことはできないでしょうか?」 チャイコフスキーはだめだ! 若林さんなら、俺のことをわかってくれそうだ。

 「ふん!あんな若造には無理だ!」 即答するチャイコフスキーに対し、社長は、

 「ふむ。彼か…。 まだ新人だが、問題はないだろう。」

 「社長、待ってください!!」 叫ぶチャイコフスキー。

 「きみは黙っていたまえ! 若林君、やってくれるかい?」

 「ぼ、僕でいいのですか…?」 驚いている若林さん。

 「社長!こいつでは無理です! 私にやらせてください!」

 「黙れ! …なんならきみには、特別休暇を与えてもいいのだがね。」 喚くチャイコフスキーを一喝する社長。 チャイコフスキーめ、いい気味だ。

 「それで、社長と若林さんのお二人だけと、話をしたいのですが…。」 俺は言う。

 「何か大事なことみたいだな…。 いいだろう。 席を外してくれ。」

 苦々しくチャイコフスキーは部屋を出ていった。 秘書の人も退出する。



 「お話したいこととは、雪野潤のことです。」

 「うむ。 彼はどうしたんだ? いっしょに来るのではなかったのか?」

 「雪野潤はここにいます。」 俺は男声で喋った。

 びっくりして俺を見る社長と若林さん。

 俺はかつらをとった。

 「きみは………」 驚いて声も出ない二人。

 「そうです。俺が雪野潤であり、雪野瞳です。」 俺は男声で話し出した。

 驚いている二人に内心、クスクスと笑いながら、俺は説明をした。

 俺が雪野潤であり、雪野瞳は女装姿であること。二ヶ月ほど前に声が戻らなくなり、強制的に女をさせられたこと。学園祭の前には、なんとか元の声に戻ったが、女声も出るために、女装して歌わされたこと。 俺自身に女性化願望がないことを説明しても、なかなか信じてくれなかった。

 説明が終わるころには、社長は大笑いしていた。

 「わっはっは!!きみが男だったとはな!! 私もすっかり騙されていたよ!!」

 「社長!笑い事ではありませんよ! 雪野君は潤としてデビューしたいのかい?瞳としてデビューしたいのかい?」

 「もちろん潤としてですよ! 俺は男です!」 周りがなんと言おうと、俺は男だ!

 「なんと!!それはもったいない! 雪野君!きみは瞳ちゃんとしてもデビューしてみなさい!」

 「はい?」

 「いいではないか! あのHPのように、二人のデュオとしてデビューしてみなさい! その方が売れるだろうし、おもしろそうだ!」 社長がとんでもないことを言い出した。

 「しゃ、社長!いくらなんでもそれはまずいのでは…!」

 「ばれなければ問題無い! 大丈夫だ! 君は…いや、君達は間違いなく売れる!!」 社長、何を根拠にそんな自身満々に…。

 「…社長が言うなら、なんとかなるでしょう。 わかりました。やってみましょう!」 若林さんまで、納得してしまう。

 「ほ、本当にやるんですか?」

 「もちろんだ! 雪野君! がんばってくれたまえ!! わっはっはっはっ!!」 有無を言わさず、決められてしまう。

 と、とんでもないことになってしまった………。



 俺は幼い頃から、歌手になることを夢見ていた。 だが、女としてもデビューすることになるなんて……。

 かつらを被りなおし、声を女に戻す。

 「これからのことだが。 まず、あのHPの歌を、ちゃんとしたスタジオで録音してもらおう。なかなかの曲だったから、そのままCD化でいけるだろう。発売は、その歌をしばらくCMなどで流してからだ。 それから、本格的な歌とダンスのレッスンをうけてもらうことになる。詳しくは若林君から聞いてくれ。」

 「あとで、いくつかの資料を渡しておきます。詳しくは後日、きみの家へ伺ったときにお話します。ご両親にも一度、会わなければならないので。」

 「わかりました。」 女声で、返事をする。

 「では、がんばってくれたまえ!  ………それにしても、雪野くん…。 そうしていると、男だとは全く思えん! きみはホントは女なんだろう! バストサイズはいくつなんだい?」

 「俺は男です!! これはパットを入れてるだけです!!」 思わず男声で叫んでいた。何を言い出すんだ!この社長は!!

 「わっはっは!!わかったわかった!! それに、その格好で男声はやめなさい!かわいい顔が台無しだ! わっはっは!!」

 社長に笑われながらも、この日はこれで、Kプロを後にした。 ホントにこの社長達に任せてよかったのだろうか………。




 その日の夜…。

 俺はデビューのことを両親に話した。

 あの母さんはともかくとして、反対するかもと思われた父さんも、笑ってOKを出してくれた。

 ただし、……瞳としてのデビューのことは、話せなかった…。







 後日………。



 俺の親に会うために、社長と若林さんがやってきた。

 普通は、わざわざ社長自らがこんなところへ来るのは、おかしいと思う。 だが、この社長は、自分の気に入った企画は、自分で進めなければ気がすまないらしい。 活動的な社長だなぁ。あの社長室も、納得できる。

 「……というわけで、潤君、そして瞳さんには、我がKプロダクションよりデビューしていただきたいのです。」

 社長の言葉に、母さんは頭を下げ言葉を返す。

 「はい。私達は、潤のやりたいようにやらせてあげようと考えてますので。 どうか潤を、よろしくおねがいしま………ん? 瞳…?」 首を傾げる母さん。 ちなみに、父さんは会社へ行っているので、今はいない。

 「おや? 潤君は、そのことをまだ、話していないようですね。 奥さんは潤君が瞳と名乗っているのをご存知ですね?」

 「はい。」 なんせ母さんは、名付け親である。

 「我々は、潤君としてだけでなく、瞳さんとしての歌声にも将来性を感じ、是非二人にはデュオとして…」

 「………は?」

 意味が分からず、きょとんとしている母さんに、社長は俺のデビュー方針を語っていく。 なぜかその社長の顔は、どことなく楽しそうだ。

 そして、全てを聞き終えた母さんは、

 「まあ! では、はしたない娘ですが、どうかよろしくお願いします(ぺこり)。」

 「いえいえ、こちらこそ(ぺこり)。 物分りのいい奥さんで助かります。」
 物分り良過ぎだーーー!!

 「ところで社長さん。 瞳を使うのでしたら………ごにょごにょごにょ……」 母さんが社長に話し始めた……。

 「!!っ なんと!! では、………ごにょごにょごにょ……」

 「まあ♪それもそうですね…♪ でしたら、…ごにょごにょ……というのは?」

 「ふむ…。それもおもしろいな……。 奥さん!なかなかやりますな…(ニヤリ)」

 「社長さんこそ…(ニヤリ)」

 「フッフッフッ……!」

 「うふふふふ……!」

 とてつもなくやばめな言葉が交わされたのち、突然に笑い始めた社長と母さん………(汗)。 言葉の内容については、俺の本能が理解を拒絶していた……。

 「わ……若林さん…。 こ、この社長に任せて、ホントに大丈夫なんですか……?」

 「だ…大丈夫だよ……。 …社長はこう見えても、一代であの会社をあそこまで育て上げた人物だからね……。」

 おいていかれた俺と若林さんは、妖しく笑う社長と母さんを、ただ冷や汗を流して見ているしかなかった……。 そして、会話はさらに危険な領域へと進んでゆく……。

 「…フッフッフッ……!」

 「…うふふふふ……!」







 「お前、結局、デビューすることにしたんだな!」

 「ああ。 これは、俺の夢だったからな。」

 ここは、いつもの駅前の広場。健二と俺は、ギターを片手に、通り過ぎてゆく人込みを眺めている。

 デビューが決まって数日が経つが、今のところ、これといった指示もない。年末年始は、他の芸能人達が忙しく、俺のことは年が明けてからのようだ。

 年が明けてしまうと、レッスンやらなにやらで忙しくなりそうだ。だから、こうやって、健二とストリートライブをすることも出来なくなってしまうだろう。

 「なぁ、健二。 お前もいっしょにやってみないか?」 俺は健二に言う。

 「…俺はいいよ。  雪野、お前は一人でいけ! 行けるところまで、いってみろよ!」

 「ああ…。 やるからには、とことんやってみるさ。」

 「……ただな…。 こうやって、雪野といっしょにストリートライブが出来なくなるのは、淋しいな…。」

 「……俺もだよ…。」

 「………」

 「………」

 「そういや、芸名はどうするんだ? 雪野潤、瞳、で、そのままか?」

 「そのつもり。」

 「グループ名は?」

 「…一応考えてある。たいした意味はないけどな。 俺としては、雪野潤の名を世に広げたいんだ。」

 「雪野瞳の名の方が、広まると思うぞ。」

 「………」

 …ざわざわざわ………

 「一度聞いてみたかったんだが…。 健二がギターを始めたキッカケってなんなんだ?」

 「兄貴に教わったんだ。」

 「へー。 お前って兄貴いたっけ?」

 「七年前に死んだのさ。」

 「そうか…。」 『聞いてすまなかった』とは言わない。いや…、健二の顔を見ていると、それを言ってしまう方が失礼な気がした。

 しばらく、会話が途切れてしまった。 寒さが少し増したように感じてしまう。

 通行人を眺める。楽しげなカップル、親子連れが多い。これから、夕食でも食べに行くのだろう。

 そう。今日はクリスマスだ。 うちの父さんと母さんも、息子を放って高級料理を食べに行くと言っていた。まぁ、別にそれはいいんだけどさ。

 しばらくの沈黙を破ったのは、健二だった。

 「ああ!! 男、黒崎健二、十六歳(高一)! クリスマスは、瞳ちゃんのようなかわいい女の子といっしょに過ごしたかったな〜〜! そう、瞳ちゃんのような…!!」

 「………」

 「雪野!今からでも遅くない!! 瞳ちゃんを呼んで(着替えて)こい!!」

 「………(怒)!」

 「お、俺が悪かった!! それだけはやめてくれ!! そのギターには大切な兄貴との思い出が…!!」

 …ざわざわ……コツコツコツ………

 「おお!兄ちゃんたち! 久しぶりだな、最近やってなかったじゃないか!」 いつもの酔っ払いのおっさんがやってきた。

 「おっさん、久しぶり! クリスマスぐらい、お酒を控えろよ。」

 「だれがなんと言おうと、これだけはやめんぞ!! ん? 今日は瞳ちゃんはいないのか?」

 「……年頃の女の子には、彼氏の一人や二人、いるものさ…。」 そう答えておいた。(笑)

 「わっはっはっ!!それもそうだ! まぁいい、また一曲聞かせてくれよ!」

 「よっしゃ!おっけーーー!!」

 じゃら〜〜〜ん♪ 健二のギターの音が、薄暗くなった公園に響く。

 「おっさんには悪いけど、俺たち、今日ここでやるので最後なんだわ。」

 「おや?どうしたんだい? ついにまじめに働く気になったか?」

 「こいつが、妹といっしょにデビューすることになったんだ。」

 「CD出たら、よろしく!」

 「わっはっは! 俺は、レコード以外買ったことないぞ!」

 「では、娘さんにでも宣伝しといてください。」

 「おう!」

 「じゃあ、そろそろ始めようぜ! これが最後だ!」

 「ああ!」

 じゃらら〜〜〜ん♪

 ♪〜〜〜♪〜♪♪〜〜〜〜♪〜

 俺は健二のギターに合わせ、歌い始めた。



 その後俺たちは、クリスマス公演の終わった演劇部やノルンのメンバーたちと、盛大なクリスマスパーティーを行った。







〜あとがき〜

 というわけで、第三話です。いかがでしたか?

 今回は、萌えがちょっと少なかったかな?

 雪野には、デビューしてもらわないとおもしろくないので…(^^;

 いろいろ迷いましたが、雪野には、こんな形でデビューしてもらいます。 この形が、一番おもしろそうなので…♪

 でも、デビューをしてしまうと、ノルンの他のメンバーの出番が減ってしまうので、なんか寂しいです。

 時間があれば、メンバー四人のそれぞれの過去や今の話を、外伝として書いてみたいです。 でも、萌えが無いかな…

 チャイコフスキーについては……なんとなくで分かってもらえれば、それでいいです…(笑)

 こんなことを言っていては、本物のチャイコフスキーに失礼ですね。あの方の曲は、本当にすばらしいものばかりで、私もチャイコの一ファンですので。

 雪野は次回から、デビューに向けて動き始めます。

 ネタが続く限りは、これぐらいのペースで書けると思います。というか、一度手を止めると、数ヶ月時間が空いてしまいそうなので…。

 でわでわ。 水無月でした〜




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