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・・・想いを継ぐもの・・・
幼なじみ・FIN
作:kagerou6



「真琴、この後は・・・」俺は学校の帰り道、そう真琴に話掛けていた。

今日は3月1日、卒業式!
俺達は、一つの節目を感じていた。
ほぼ、公認となっていたがやはり少し恥ずかしかったから学校では二人きりになる事は余り無かった。
だが・・・これからはそんな気兼ねをする事も無く会えるのだ!
俺はそんな気持ちで一杯だったのだ。

「私、少し遅れるから・・・」真琴はそう答える。
「どうして?この後は”パルフェ”に集まって・・・」
「ごめんね、お祖父さんを迎えに行かないといけないの」真琴の声は少しだけ沈んでいた。
「真琴のお祖父さん?・・」俺は聞いた・・・真琴が以前言っていた人なのかと・・・
「そ、私があの時言っていた・・・」真琴は恥ずかしそうに話しだす。
俺はそんな真琴の態度が気になりついその事について聞いてしまった。

「真琴は・・・お祖父さんが嫌いなのか?・・・」
俺は真琴の気持ちを考えずについ聞いていた。
真琴は何も答えずに俯いていた。
その時になって俺は”しまった”と思った。

「真琴・・・あのサ・・・」俺は真琴に謝ろうとそう話掛けた。
「ううん・・・違うの・・・洋介のことじゃないの・・・」真琴はなんだか悩んで、やっとそう答えているふうだった。
「どういう事なんだ?・・・真琴、それって・・・」
「あの・・ネ・・・実は・・・」真琴は辛そうに、俺の質問の答えを話し出していた。

お父さんとお母さんの結婚をお祖父さんが反対していた事
お父さんは私が生まれるまで、お祖父さんになにも連絡をしていなかった事
お祖父さんの事は、私が”事故”に会って初めて知った事
その後”お父さんとお祖父さん”がケンカをしていた事・・・私の事で・・・
お父さんの事故の時も会いには来てくれなかった事
お母さんがあんな事になって、初めてあたしに連絡をくれた事

「真琴は会う気が無いのか?・・・」俺は聞いていた。
「・・・少しはね・・・でも、”お母さんが会ったら”って・・言うし・・・」真琴は言葉少なめにそう答えた。
きっと、”真頃の母親は”会わせたくはないのだろう
しかし・・・いつまでも”自分”が側にいる事の出来ない事実を知ってしまったから・・・
そう・・・あの”事故!”の時に・・・
俺は真琴の母親の心が良くわかった。
・・・あの時まで、俺も”真琴のいない事”は考えもつかなかったから・・・
俺は真琴を見つめていた。

「真琴は”自分の家族”は誰だと思うんだ?」俺は真琴を見つめたまま聞いていた。
「・・・お母さんと死んじゃった・・・」真琴はそう言っていた。
「あの・・真琴?俺は思うんだけど・・・・」俺は何とか”あの時”の辛さを真琴に伝えたかった・・・大切な人は”失いかけて判る事を!”・・・気付かせてやりたかった。
「お祖父さんは”真琴”をどんな風に見ていたの?・・・」俺は出来る限り優しく言う。
「それは・・・」真琴は答えあぐねていた。
「多分”真琴”には優しかったんだろ?・・・」俺は付け加えて話した。
真琴は何も言わなかった。
「真琴・・・俺だって”お母さん”だっていつまでもお前の側にいる事は出来ないんだよ・・・」俺はそう言う!・・真琴に気付いて欲しいから・・・
「洋介!なんで・・そんな事・・を・・・」真琴は泣き顔になりながらそう言い出した。
「真琴が大事なんだ・・俺もお母さんも・・・」俺は真琴を見つめたままでそう呟く。
真琴は何も言わなかった。
真琴自身は判っていた事なんだろう・・・でも・・・今までの事を考えると・・・

「真琴、嘘はつかなくて良いんだよ?」俺はそう真琴に言った。
「真琴はいろいろな人の事まで気にしているから・・・」
真琴は何も言わなかった。
「自分の事を考えても良いんだよ?」
「・・洋介・・・」
「この間”ケガ”をしたとき俺に心配をかけまいと嘘をついていたよね・・・」
真琴はまた俯いた。
「お母さんが事故に会った時だって・・・自分一人で・・・」俺は言う事を止めた。
真琴が震えていた事に気がついたから・・・
俺は真琴を静かに優しく抱きしめていた。
そう!真琴のすべてを包むかのように・・・

「俺は真琴のそんな所が好きなんだ!でも・・・」
「でも?・・・」真琴は俺に抱かれたままで顔も見せずに呟いた。
「真琴が・・・俺は真琴の”喜んでいる”姿を見たいんだ・・・」
「私の・・・”喜んでいる”?・・姿・・・洋介・・・」
「そうだよ・・・俺は”好きな人が喜んでいる”のを見たいんだよ・・・」
「・・・洋介・・・」真琴はまた抱きついていた手に力を入れていた。
今度は俺がされるままでいた。

「判ったわ・・洋介・・・」
「真琴?」
「私は”お祖父さん”に会ってくる・・・」
「ソレがいいよ・・・真琴」俺はそう呟く。
そして真琴を包んでいた手を解き放つ・・・
真琴は俺を見つめていた。
しっかりとした”自分”の目で!
俺は何も言わずに頷いた。
真琴の決心を変えないために・・・
自分の決心を変えないために・・・
俺は頷いた。

真琴は駅に向かい離れていった。
俺はそんな真琴を目で送っていると、いきなり真琴は振り向き大声で叫び始めた!

「デモね・・・私の一番”大切な人!”は貴方だから・・・」

今度は俺が俯く事になった!
俺はそのまま真琴が見えなくなるまでいたが、”パルフェ”に向かって歩き出した。
真琴が来る事を確信したから・・・


「洋介・・遅か・・・ねえ真琴は?・・・」店に入るなり千絵が俺に向かい言い出す。
「なんだよ?ソレは・・・俺一人じゃおかしいか・・・」
「そうじゃないけどネ・・・やっぱり・・・」
「やっぱり・・・なんだよ!」
「真琴が一緒じゃないと・・・さ・・・」
「真琴が一緒じゃないと?」
「変!」来ていた皆が合唱した!
俺はガックリした振りをしていた。
・・・ま、”一緒なら一緒で”好き勝手言うはずだし・・・俺はそう思っていたから・・・

ソレからしばらく俺は皆の玩具だった!
”真琴はどうやって騙したの?”だの
”どこまでいったの?”だの
”真琴は何ヶ月?”だの・・・
俺は笑いながらはぐらかすしか無かった・・・


「ごめんね皆・・・」真琴はそう言って店に入ってきた。
「遅いぞ真琴!・・・ほら、洋介すっかりすねてて・・・」千絵が笑いながら俺を指差す。
俺はつられ、ついブスとした顔を見せる。
そんな俺に真琴は驚いたのか、なんだか落ち着かない。
「・・・ウソ・・・」そんな真琴を見て千絵が一言言うと、ソレを待っていたかのように皆が笑い出した。

「あ・・・千絵・・・」ここに来て真琴にもやっと判ったようだ。
千絵を睨むように見つめている。
「真琴にはそんな顔を似合わないわよ・・・ネ!洋介・・・」千絵は笑いながら俺に振る。
俺は何も言わずに頷いた。

「じゃあ、遅れてきた責任を取って・・・石川さん一言・・・」いきなり委員長が言い出した。
真琴は驚き、廻りを見渡し最後に俺を見つめた。
真琴は静かに話出した。


「じゃあ・・今度は成人式の時にでも・・・」委員長がそう言って”集まり”を締めていた。
俺はそんな話などには興味が無かった。
さっきの真琴の事だけを考えていたから・・・
「洋介・・・この後は・・・」
俺は首を振り真琴を見つめた。
「そうか・・・じゃ・・・またな!」そう言って皆が帰っていく。
俺は皆がいなくなるのを、真琴と待っていた・・・

「ごめんね・・・洋介」話始めたのは真琴だった。
俺は真琴を見つめたまま聞いているだけだった。
お祖父さんが倒れてしまった事
そのお祖父さんが私をうわごとのように呼んでいる事
私が・・・お祖父さんについていたい事など・・・
俺はただ聞いていた。

「あの・・・・」真琴はまだ続けようとしていたが、俺は真琴を止めた。
「判ったよ、真琴・・・」俺はそう言って真琴に笑った。
「大切な家族なんだから仕方ないさ・・・」
「・・・洋介・・・」
「真琴がそう思うならついていてあげな・・・」
「ごめんね・・・」
俺達は店を出て駅へと向かった。

「しばらくは会えないけど・・・」駅で真琴は俺にポツリ呟いた。
「心配するな・・・」俺はそう答える。
「いつでも俺は真琴の所に行くから・・・」俺はそう言う。
ベルが鳴りドアがしまって電車が走り出した。
俺はそのドアを見つめていた。


俺はバイトをしながら、受験勉強をしながら・・・脚本を書きながら真琴の帰りを待っていた。
幸い、大学の近くにバイト先が見つかった事も有り、そこで暇な時間には脚本を書きながらバイトを続けていた。
「いらっしゃ・・・あ・・俊さん・・・」俺は客の顔を見てそう呟く。
「・・・洋介、しっかりやってるか・・・」俺に向かって話掛ける真琴のいとこの俊さん。
俺はこの人からいろいろ真琴の事を聞いていた。
「真琴は元気でしたか?・・・」俺はコーヒーを置きながらそう話掛ける。
「ああ・・元気だったよ・・・」コーヒーを飲みながらそう言う俊。
「俊さん・・・なにか?」俺はいつもと違う様子につい話掛けた。

「実は君の事で・・・」いつもと違う・・・そう劇の直前の厳しい顔で俺を見つめていた。
「俺が何か・・・」俺はそんな俊さんの驚き、ただ立ちすくんでいた。
「今度の演劇祭でまた君の脚本を使いたいのだが・・・」俊さんは真剣な顔で俺に言う。
「ちょっと、俊さん・・・」いきなりの事に俺は驚いていた。
以前は”高校の演劇部の脚本”と”大学の演劇部”の関係があったから出来た事では無かったのか?・・・
そんな俺に気付き俊さんは笑った。
「なに・・今度は”ウチの脚本担当”になればいい・・・」
「ですが俺は・・・」・・・学生では・・・そう続けようとした。

「大丈夫だよ、君の事は・・・」俊さんは笑った。
「何がですか?」俺はそんな俊さんについていけず聞き返す。
「”君のファン”がイイって言ってるんだ・・・」
「俺の・・・ファン?・・・」あまりの単語に俺は聞き返した。
「ウチの学長!・・・忘れたか?あの時送っていった・・・」
「あの時の・・・」俺はひとりの人を思い浮かべた。

「でも、今俺は・・・」ちらちら後を見ながらそう返事をする。
「ソレは大丈夫・・・マスター・・・ちょっと・・・」俊さんはそう笑ってマスターに声をかける。
「マスター・・・洋介、貸してくんない?」と・・・
「俊・・・高いぞ!」マスターは笑って言う。
俺はそんな会話についていけなかった。
「演劇祭特別入場券・・・」俊さんは一枚のチケットを取り出す。
「ソレだけか・・・俊?」
「学祭入場券!」
「・・・・・」
「去年の演劇祭ビデオ!」
「・・アレか?・・・」
「そう・・・アレ!」
「判った・・・コーヒー毎日飲みの来いよ!」
「部員を連れてね・・・・」俊さんは笑った。

「あ、マスター・・・」俊さんは俺を連れて店を出て行こうとドアを開け、何を思いついたかいきなり振り向きそう言い出した。
「なんだ?俊・・・」マスターは奪い取った?チケットを見ながら俊さんに返事をしている。
「アレの脚本・・・」俊さんはそこでいったん話を切る。
「アレの脚本?が・・・」マスターはそう言われて、俊さんを見上げた。
「書いたのは・・・洋介なんだよ」笑って呟いた。
マスターが驚き、俊さんと俺を見つめた。
俊さんはドアを閉めた。


「なんですか?さっきの話は・・・」俺は歩きながら俊さんに話掛けた。
「あのマスター・・昔ウチのOBで大の演劇好きなんだ・・・」俊さんは笑う。
「だからか・・・」俺はつい独り言を言っていた。
「ん?・・洋介・・・」
「俺が暇な時脚本書いていても、何も言わなかったから・・・」
「マスターらしいや・・・・」俊さんは笑った。
「でも、・・どうして”俺”の事なんかを・・・」
「あの時の演劇祭のチケットを送ったんだ、マスターに・・・」
「そうでしたか・・・・」
「その後も”ビデオを取ったのか”とか”脚本くれ”とかでさ・・・」
「気に入ってくれていたんですね・・・」
「でも、洋介が脚本書いていたとは知らなかったみたいだな・・・」
「普通はいないですから、脚本書く人間は・・・」俺は笑った。
俊さんも笑った。
俺は俊さんに連れられて学長の所に行った。



「鈴木君、また会えて嬉しいよ!」俺を見るなり学長がそう話し掛けてきた。
「このたびは有難うございます・・・」俺は当たり障りのない返事しか出来ないでいた。
学長は笑いながら俺に椅子を勧めた。

「もう聞いているとは思うが、また脚本を書いて欲しい・・・」いきなり言い出す学長!
俺は驚きながらも頷いた。
「有難う、鈴木君・・・」学長はそう言いながら俺にパスを差し出す。
「念の為に用意した・・・・持っていてくれ」
「判りました・・・」俺は受け取り返事をした。

「後、どれくらいなんですか?」俺はそう二人に話掛けた・・・時間が気になったから・・・
「1ヶ月・・・」俊さんは言った。
「1ヶ月なんですか・・・」俺はそれを聞いて驚いた。
これでは新しい話などは・・・練習も・・・俺は二人を見つめた。

「今更なんですが・・どうして・・・急に・・」俺は言った。
「・・・スマナイ・・・」俊さんは話出した。
「スマナイって・・・俊さん?いったい・・・」
「前回の演劇祭の時、ウチの評価が割れてね・・・」俊さんはそう演劇祭のことを話出した。
「”評価”ってそれはいったい・・・」俺は俊さんに聞いた。
「演劇祭での審査員の評論サ・・・」
「私はそんな”評価”よりも”皆の歓声”があった事で満足していたから気にして無かったんだよ・・・」学長はそう続けた。
「しかし・・気にするものがいてね・・・”同じのを使うのかと”・・・」
「そんな人達の説得に時間が掛かったんだ・・・」
「・・・それが脚本が決まらなかった原因なんだ・・・」俊さんはため息をついた。


「洋介には迷惑をかける事になるが・・・頑張ってもらいたい」俊さんはそう行って俺の方に手を置いた。
俺は頷いた。

「また、脚本を担当してくれる鈴木君です・・・」俊さんはそう言ってまた俺を部員の前に連れていき紹介してくれた。
「鈴木です、また宜しくお願いします」俺はそう行って頭を下げる。
「また頼むよ・・・」そう俺に声が掛かる。
俺は声のほうに顔を向けた。

「何を驚いている?鈴木君・・・」また同じ声がする。
「それは・・・」俺は答えられずにいた。
「ここにいるのは”君の事”を理解しているものばかりだよ」声は言う。
「君の実力は”皆が一番知っている”って事さ」俺の隣で俊さんは笑った。

「ま、自己紹介はこれくらいで始めよう!」俊の声が飛び出す。
皆が俺の脇を通るたびに声を掛けていってくれる。
今回、俺はすんなり受け入れらた。

「時間が無いので、あまり長い脚本は出来ませんが・・・」俺はそう言っていくつかの提案を皆にした。

「・・・新しい話は”恋人の別離と再会”をメインにしようと考えています」俺はそう説明する。
「大まかなところとしてはいくつかの日常的な所、そして事件と結末です」
「事件は・・別離ですか?」部員から質問が聞こえる。
「いえ・・別離による”発狂”です・・・」俺は答えた。
「”発狂”が大げさなら”苦悩”とでもしますか・・・」
何も質問は続かなかった。
「引き裂かれた事による”主役の苦悩”を表現できれば”再会の喜び”を最大級で引き出せ、”テーマ”に気づいてくれると考えているからなんですが・・・」
「”テーマ”はなんです?・・・」
「それは・・・”最愛”」俺はテレながらいった。
「なるほどね・・君の恋人は・・・・離れているのか?」いきなり言われ、俺は返事が出来なかった。
「・・・今の”君の気持ち”が素直に脚本になるといいね・・・」
俺は書き始めた。


真琴と再会した時のことを
悩んでいたことを
事件のあった事を
そして、自分の思いのことを

俺は書きながら気付いていた。
どれほど”彼女”が自分の側にいてくれて事に
どれほど”心”を寄せていてくれた事に
俺は気付いた。

いつまでも心配かけるな
あいつを安心させてやれ


俺はそんな”ウチ”の声を聞いて俯いてしまった。


最初のパートを書き上げ、俊さんに手渡しながら俺は真琴の事を聞いた。
「なにも・・・」俊さんはあっけなく言っただけだった。
俺に気を使ってそう言っているのか、それとも本当にそうなのかは判らない!
ただ、俊さんが気を使ってくれている事は感じていた。
俺はそれ以上の事を聞かずに脚本を書き続けた。

すべての脚本が出来上がった時、演劇祭まで後2週間を切っていた。
俺は遅くなった脚本を配りながら皆に謝る。
「ご苦労様・・・」一言だけで誰からも何も言われなかった。
「練習時間を取れなくして・・・」俺は皆に言いながら頭を下げた。

「君はせいじゃないよ・・・」一人の部員から返事があった。
「元々脚本を頼んだのが遅かったからなんだ・・・」俊さんがそう言った。
その部員は頷いた。
「これからは俺達がどれだけ鈴木君の努力に答えられるかなんだ・・・」
「気になった事があったらすぐ言ってくれ・・・」またさっきの部員が言う。
「よし・・本はすべて出来上がった・・・後少し頑張るぞ!」俊さんは皆に向かって言った。

俺は脚本が出来た事にホッとしていた。
やはり気が張っていたのだ。
俺は講堂をでた。
「ご苦労様・・・」いきなり声が掛かった・・・まるで待っていたかのように・・・
俺は振りかえった。

「短い時間で良くやってくれましたね」学長が笑って立っていた。
「どうにか・・・出来ました」俺はそう答えた。
「これから追い込みも有るだろうから、今は休めば良い・・・」学長はそう俺に言う。
俺は頷き側を離れた。

・・・今ごろ真琴はどうしているかな・・・
俺はあの時の真琴の事を思い出していたから。
・・・早く帰って来れると良いな・・・
・・・これが終わったら真琴に会いに・・・いあや・・・迷惑か・・・
俺は自問自答していた。

「洋介、ご苦労様・・・」後ろから声が掛かった。
俊さんがコーヒーを持って立っていた。
「ほら・・・マスターが持ってきてくれたぞ・・・」俊さんは俺にカップを渡してくれた。
俺は久しぶりにコーヒーを味わって飲んでいた。
「心配か・・・洋介?」
「・・・ええ、まだいくつか・・・」
「真琴の事だ・・・」
俺は何も言えなかった。

「真琴は心配ないさ・・・」俊さんはそう呟いた。
「・・・真琴の事で何かあったらすぐに知らせるから・・・」
「俊さん・・・」
「”すぐにでも会いたい”か?洋介・・・」俊さんは笑った。
言い当てられ俺は何も言わずに誤魔化すしかなかった。


大会はY県の会場に集まって行われる為、前日から会場入りする事になった。
本来、脚本を書き終えた俺は行く事は無いはずなのだが学長の提案により同行が決まった。
会場についた俺は今更ながら規模の大きさに驚かされ圧倒された。

「山口君・・・今回はどうだね?」会場に着いた俊さんに質問が掛けられる。
俊さんは留学中に何度か”スカウト”され今回の大会でも何人かのスカウトが見に来ているらしかった。
「いつも通りですよ・・・皆さん」俊さんは軽く答えている。
「いろいろ有ったみたいですが・・・」
「いえ・・いつもの事で・・・」
「脚本はできたのですか?・・・」
「ま・・・面白いのがね・・・」
「期待できそうですか?・・・」
「それは観ていただいてから・・・皆さんが感じてくださいよ」
俊さんはそのままどこかに歩いていった。
残された俺達はホテルに向かった。

しばらくしてホテルに着いた俊さんは俺を見つけるなり近づいてきた。
「どうかしたのですか?俊さん」俺は様子がおかしい事に気付きそう話掛けた。
「洋介・・・気をつけたほうが良いぞ」いきなり言い出した。
「何にです?・・・俊さん」
「さっきのヤツらだ・・・どうやらお前の事をかぎまわっているらしい・・・」
「どうして・・・俺なんかを・・・」
「脚本だよ・・・前回の・・・」
「アレが何か・・・」俺は原因が”脚本”と聞いて意味がわからず聞き返した。
「今、お前は注目されている”脚本家”なんだ!」俊さんはあっさり言う。
「俺・・がですか・・・」言われた事につい聞き返す俺!
「アレだけ”感情を込めて書けるやつは誰なんだ”ってさっき聞かれたよ・・・」俊さんは笑った。
俺は笑えなかった。

「洋介・・今お前の一番大事な事を忘れるなよ」俊さんは言い出し俺の肩に手を置いた。
「大事な事ですか?・・・」
「一時的に流される事も有るから・・・”一番大事”な事を忘れるな・・・」俊さんはそう言う。
俺はただ頷いた。

翌日、時間になり俺達の番になった。
俺は脇から劇を見つめていた。
”脚本家”としてではなく・・・”想い”を書いたものとして・・・
・・・今ここに真琴がいれば・・・俺は観ながらそう感じていた。

俺はそのとき”自分を見つめる眼”に気付く事は無かった。

劇は終わった。
俊さん達は舞台袖で一礼して降りてくる。
俺はそんな皆に頭を下げていた。
「有難うございました」と・・・
俺達は楽屋に下がった。

「どうした?洋介・・・」メイクを落とし着替えていた俊さんが俺に話掛けて来た。
「いえ・・別に・・・」・・まさか”真琴がいてくれれば”と思ってたとは言えない。
「良い事があるよ洋介!」そんな俺を見て笑いながら俊さんはいった。
「良い事ですか?俊さん」俺は振る向き聞き返す。
「そ!・・・もうすぐ判るよ!」

”鈴木さんに面会です”楽屋に連絡が入った。
俺は廻りを見たが”鈴木”は俺しかいなかった。
「私が鈴木ですが・・・」俺はそう言ってドアを開けた。

目の前には真琴が立っていた。
・・・真琴・・・どうして・・ここに・・・俺は驚き、目の前の真琴から目を離すことが出来なかった。
「どうして・・・ここに・・・」俺の声は震えたまま、やっとそう聞いていた。
「お兄ちゃんが・・・」真琴はそう言った。
「お兄ちゃんて・・・俊さん?」
俺の返事に頷く真琴。
「お兄ちゃんからお祖父さんに連絡があってネ・・・」真琴は話出した。
「そうしたらお祖父さんが”行こう”って・・・」
「・・・真琴・・・」
「”お前の大切な人のところへ”って・・・お祖父さんは笑いながら・・・」
「そうだったんだ・・・」俺はやっとあの時の俊さんの笑い顔の意味がわかった。
・・・知っていたんだものな・・・
俺は俊さんを振りかえると、学長と一緒に手を振っている。
俺は改めて二人に頭を下げた。

「洋介・・こっちに来て・・・」真琴は俺の手を取って引っ張っていく。
俺はその温もりを感じながらついて行くだけだった。
「お祖父さん・・・」真琴は一人の老人に声を掛けた。
「君が鈴木君かい?」老人は、俺を見上げ呟いた。
「ハイ・・・」俺はそう返事をしただけだった。

「ワシはアレを観るまでな・・・」老人は独り言のように言い出した。
「誰よりも真琴の事を考えていると思っとった」
「だが・・アレは・・・」
「君が書いたんだって?」
「ハイ・・・そうです」俺は答えた。
「やはりな・・・”真琴”を大事にしている気持ちが滲んでいたよ・・・」老人は笑った。
穏やかな笑顔だった。

「真琴の事が好きかい?」いきなり言われて俺は驚いたが”ハイ”と返事をした。
「そうか・・」老人は空を見上げていた。
「誠司よ・・・ワシの心配事は無くなったよ・・・」一人老人は呟き、眼を静かに閉じた。

「誠司って・・・」俺は真琴に聞いた。
「ウチのお父さんの名前・・・」真琴はそう呟く。
「お祖父さんはお父さんのことずっと気にしていたんだね」
「私は・・・気付いてなかった」真琴は泣き出し、老人に抱き付いていた。
そんな真琴を老人は優しく髪を撫でていた。
しばらくそのままでいたがいつのまにか老人の手が止まっていた。

お祖父さん?」真琴は驚き声を掛ける。
穏やかな笑顔をしたままで老人は息を引き取っていた。
真琴はまた老人に泣きついていた。


「真琴・・俺はこれから”二人”の分まで真琴を守るよ・・・」俺はお墓に手を合わせながら言った。
「洋介・・・」
「お祖父さんとお父さんの分まで・・・」
「・・・・・」
「ずっと・・・真琴の事を・・・二人に負けないくらい・・・」
俺は真琴の手を取った。

「空から見ていてください・・・真琴はずっと俺が守ります」
俺は空に向かって叫んだ!
二人に負けないくらいの想いを伝える為に


「真琴・・・行くぞ!」俺は真琴の手を握り締めた。
もう離さない意志を伝える為に・・・
二人で歩いていく為に・・・








おひさしぶり・・・駄文作家kagerou6です

やっとデビュー作”幼なじみ”完結編できました!・・・気になっていた方遅れて済みませんm(__)m
何とか真琴を巡る人達の想いを伝える事が出来たと感じています
長くなりましたがつたない物語にお付き合いいただき感謝しております




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