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二度目の幼なじみ
作:yukikaze


・・・・神様お願いです。洋介を助けてください。・・・・
誠は神社の前でお願いをしていた。
それは雪につつまれたクリスマスのことだった。

幼なじみの鈴木洋介が、塾で倒れて一週間が、経っていた。
原因不明の病気で入院した洋介に誠は毎日お見舞いにいった。
洋介の為に何一つできない誠は公園脇の神社をおもいだした。
病院の帰りに神社の前にきて・・・・神様お願いです・・・・
誠はそれから毎日お願いにきていた。


「・・・・・・・」
ふと見上げると、誠の前に女の人が立っていた。
その人は何も言わず、何やら誠に差し出した。
「これは・・・・」それは小さなお守りであった。
誠が顔を上げるともう女の人はいなくなっていた。
不思議に思いながらも
・・・・これを洋介へ届ければ・・・・
誠はそう理解した。


そのまま洋介の病室へ行きベッドにお守りを結びながら
・・・・また、一緒に遊ぼうね・・・・洋介
それは誠の願いであった。「ここは、?」洋介は目を開けた。今までの事を聞いた洋介はお守りに目をとめた。・・・・誰かがここで僕を励ましてくれていた気がする・・・・・


「あー、話がまとまんねー・・・・」
「部長、〆切まで後5日ちゃんと守ってくださいね」副部長の斉藤千絵が部長の鈴木洋介に言った
「誰だよ、テーマ決めたの」洋介は機嫌が悪い。
「先輩たちが安心できる様にいろいろな話を作ろうって行ったのは部長ですよ?忘れたな!!」周りの目が殺気立っている。
「それが何で神様が出てくる話になっちゃったかなー」
「だいたい、部長に似合うのは悪魔でしょ!」「いや、宇宙人!」部員は容赦がない。
「悪魔でも宇宙人でもいいから〆切は守ってくださいね。当然みんなも。」
千絵の一言でそのまま部活は終わりになった。

「でも、洋介この続きどうするの?」 帰り道、千絵が洋介に話し掛けてきた。千絵は何やら気になって仕方ないらしい
「別に」洋介は散々に言われたことを気にしているのか答えになっていない。
「ねえ、誠って子このまま元通りもなんだし病気になっちゃうとか事故に遭うとか・・・・そんな続きなんでしょ?」
「おまえは何を期待している?」洋介は千絵の言葉を聞きながらつぶやいた。
「やっぱ、なにかないとねー」「そーだよねー」うちの部員はこんなときまとまりが好い。
「判ったョ、この後はみんなが驚くような展開を〆切までに考えてくるから安心しろ。」洋介はそう宣言した
「まー〆切さえ守ってくれたら」なぜか今回は早かった千絵がそう言った。普段遅くて言われっぱなしをここで晴らしたいらしい。


ベッドに寝そべり読み返していた洋介はこのまま書き続ける気でいた。幼なじみの思い出を残したいと思ったからだ。


洋介には小さい頃幼なじみがいた。いつも一緒で「マーくん」(あいつは「ヨーちゃん」ていってた)とよんでた。小学校夏休み、病気で動けなかったときマーくんは引っ越していった。お菓子とおもちゃを残して・・・・マーくんはお父さんの仕事の都合で引っ越したと後で母から聞いた。
「マーくんに会えないのヤダ!」そう言う俺に母はお菓子とおもちゃを渡しながら「洋介、マーくんとマーくんのママからよ」母は言った。
「今までありがとうって、僕の代わりにって」母はそういった
「・・・マーくん、マーくんバイバイ・・・いままでありがとう」洋介の初めての別れだった。

・・・マーくん・・・さよならをいえなかったよなー、今は何をしてるのかなー

元気になった洋介は誠の家に遊びに行くと誠が病気と知らされた。
「洋介ちゃん」誠の母親が呼び止めた。「これからも誠の友達でいてくれる?」洋介は「?」首をかしげながら誠の母を見上げた
「誠は、誠は・・・・」言葉を詰まらせた母親に洋介は「おばさん、マーくん元気になるよ」そう言った、言うしかなかった。
洋介はその夜夢を見ていた。誰かが神社にお願いにかよっているゆめだ。・・・アレはマーくんだ・・・。
「・・・・神様お願いです、ヨーちゃんを元気にしてください・・・・」マーくんが僕の為に!!
・・・マーくん・・・、洋介は目を開けた。・・・僕が元気になったのは、マーくんが病気なのは。・・・
洋介は今理解した、いや感じ取った。誠の気持ちを、今何をすべきかを・・・今度は僕が・・・
神様、僕は元気になりました。今度は誠を助けてください。お願いします


やっぱりパターンかな、、、原稿を見ながら洋介は思った。
誠は洋介を助けたせいで病気になった、誠が助かれば自分が病気になる、でも誠を・・。そんな気持ちをうまく・・・

・・・神様マーくんが病気になったのは僕にせいですか・・・僕の変わりにマーくんが病気になるなんて・・・マーくんを元気にしてください・・

うーん、ちょっと感じが違うか・・・

神様お願いです、僕の大切なマーくんを元気にしてください、神様、神様・・・

「おまえの大切なものを一つもらうよ」

洋介は、はっとして周りを見回した。
「神様?神様ですか?」

「・・・・・・・・・」

「お願いです、マーくんをマーくんを元気にしてください!」

「おまえの大切なものをもらうよ」

「マーくんがマーくんが元気になれば!」

「・・・・・・・・・・・・」

「神様?神様!!」洋介は叫びながら周りを見回した。もう何も聞こえなかった。
翌日、洋介はマーくんの家に見舞いに行った。昨日の事が気がかりであったのだ。
「洋介ちゃん・・・」母親が笑顔で洋介を迎えた。洋介は誘われるままに家に入っていった。
「マーくんは、マーくんは、おばさん?」「昨夜熱が下がってね、今朝目を開けたの、お医者様もびっくりしていたけどもう大丈夫って。」

やった、神様ありがとう

「今お菓子を造ったところなの、洋介ちゃんも一緒にどう?」僕はハイと答えた。
「君、だれ?」マーくんの言葉に洋介はたじろいだ。
「え!」「ほら、ヨーちゃんよ・・・」洋介と、母親は声を上げた。
「だれ?、ヨーちゃんて」誠は洋介のことを見ながら聞いてきた。それは、初めて見る顔であった。
「マーくん、僕だよ洋介だよ!!」洋介は誠の肩に手を置き言った。
「なれなれしいな、君はいったい?ママだれなの?」誠は洋介の手を払いのけながら言った。
・・・・マーくん、僕のことがわからない!・・・・

「洋介ちゃんちょっと」「おばさん・・・・」洋介は誠の背を向けながら部屋を後にした。
「マーくんが・・・・」洋介は誠に・・・だれ?・・・・といわれたのがショックだった
「・・・洋介ちゃんの事、覚えたないのは病気のせいかも知れない・・・」ポツリ母親は洋介に言った。

「・・・・大切なものをもらうよ・・・・」

・・・マーくんの中から僕はなくなっちゃったんだ・・・洋介は確信した。
「おばさんマーくん、僕のこと忘れたみたい!でも、僕は今でもマーくんのことを忘れてません」
「洋介ちゃん・・・」母親は洋介に頷いた。そして
「洋介ちゃんありがとう・・・・これからも誠をよろしくね」 いきなり洋介に抱きついた母親はそう洋介につぶやいた。
マーくんはマーくんさ、僕はいつでもまーくんの友達だよ・・・洋介は母親に抱かれたままそう心の中でつぶやいた。
そして「これからマーくんと友達になります」洋介はつぶやいた

今までの大切な友達が僕を忘れても友達だ。過去をなくしても、まだこれからがある。又初めから友達になればいい!!

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



「これですべてそろったな」原稿をまとめながら洋介が言った。
「後は製本をするだけだから今日はここまでにしよう」「はーい」部員が声をそろえて答えた。皆が満足感と疲れでいっぱいだった。

「ねえ洋介?」戸締りをしながら千絵が洋介に声をかけてきた。
「今は部長!何だ千絵?」洋介が答えた。
「・・・昔何かあったの」千絵がいきなり洋介に向かい話し掛けてきた。
「何が」
「だって幼なじみに思い入れが有り過ぎよ、あの話」
「そーか?」
「そーよ!」
洋介は仕方無しに話し出した、マーくんとの事を
「昔、幼なじみとサヨナラした事を思い出しながらアレを書いたんだ。俺が病気のときお菓子とおもちゃを残してあいつはいなくなっていた・・・・ただそれだけだよ」
「それって」
「小学生のときサ」
「それよりも,文化祭まで日が無いぞ。レイアウトやら表紙や・・・決め事は未だあるからな!」
「うちの文集,結構ファンが多いから、仕方ないね。」




「ねえ部長?」「なに、副部長?」洋介は千絵にそう答えた。
「なにそれ」千絵が目を剥き洋介に詰め寄った。
「おまえが『部長』って言うとき、ろくな事がないからな」洋介はさらりと言いきった。
「ひどーい」
千絵に体を向け「で、なに?」洋介は問い掛けた。
「あの文集まだ残ってる?」
「文集ってこの間の?」洋介は椅子を座りなおし千絵に聞いた。
「そう,アレ」千絵がばつ悪そうに答えた。
「もう無い」洋介はきっぱり答えた。
「無いの,一つも?」千絵は泣きそうな顔で再度洋介に聞き返した。
「無い、お前だって『全部がこんなに早く終わるなんて・・・』て、言ってたろ。」
「・・・そうだっけ・・・」千絵はうなだれつぶやいた
「・・・まあ原本はあるが・・・」洋介は小さくつぶやいた。千絵が聞こえるくらいの声で
「お願い,それちょうだい!」千絵はいきなり洋介にすがりながら言った。
「理由も無くやるわけにはいかないが・・・」洋介は千絵を椅子に座らせ答えた。
「・・・・あの文集がどうしてもほしいのよ・・・・」
「お前も持ってるだろ?部員なんだから」
「もうひとつ欲しいの!」
「・・・あの文集100部しか造らなかったでしょ。・・・」千絵はポツリポツリ話し出した。
「それがどうしたのか例年そのくらい造るだけだぜ。?」洋介は千絵が何故そんなことを言い出すのか判らなかった。
「・・・友達に渡したいの・・・・」
「?千絵,どうした変だぞ。ま,変といえば今回おまえが一番に出来上がったし・・」
「アレ・・・友達といっしょに書いたの・・・」千絵は消えそうな声でつぶやいた。
「どーゆー事だ千絵?」
「実は教室で原稿をどうするか悩んでいて、その子・・石川真琴って言うんだけど・・がそれを見てて『千絵どうしたの?』『話が出来ないヨー』なんて話してて・・・」
「で、真琴の家にお邪魔して二人でいろいろ書いてそれで出来たの」
「真琴も喜んでくれて『文化祭で配るのを楽しみにしてるね』って言ってたのに、でも貰えなかったって残念そうにしてて」
「副部長 斉藤千絵!」
「ハ,ハイ。」千絵は顔を上げた。
「理由はわかった。石川さんの為に欲しいんだな。・・・製本マスターから印刷するか・・・・」
「?」千絵が,何でという顔をして洋介に聞いた。
「原本は顧問が保管しているが、パソコンの中にもレイアウトを作った時の製本コピーが入っているからプリントアウトすれば一応形にはなる。千絵・・・これでいいな!」洋介は千絵にそう言った。
「洋介、ありがとう」珍しく千絵は素直に答えた。

立場を考えろ、部外者にアイデアを貰うなんてしかも一緒に書くなんて・・・・・


「・・・こんにちは・・・」部室の前で声がしてドアが開かれた。
「あのー千絵います?」その子は洋介に向かいそう聞いてきた
「千絵?、じゃあ君が石川さん?」ドアの所に立つ彼女にそう洋介は聞き返した。
「ハイ,石川です・・・」ドアの所で返事をしたまま入ってこない。
「千絵は顧問から呼ばれていないけど、部室で待っていてほしいといってたよ。どうぞ入って」洋介はそう声をかけた。
「・・・それじゃ・・・」石川真琴は部室に入ってきた

・・・・あっ、いいにおい、・・・どこかで嗅いだような・・・

「プリントアウトは終わっているけどまだまとまっていないんだ。だから・・・」洋介は(千絵、早く戻って来い!)と思いつつ印刷された紙をA5サイズに切りまとめていた
「石川さんも話を作るのがすきなの?・・・・」洋介は間が持たずい聞いてみた。
「え・」真琴は急な問いかけに洋介を見つめた。
「ほら,あれだけの話が書けるなんてすごいと思ってさ、千絵より丁寧だし・・・・」
真琴はなにも答えなかった。
ふと、自分の顔を見ている真琴に気づき「もうすぐ千絵もくると思うから・・・」と振り向き声をかけた。
「あ、あの・・・・また来ます!」真琴はいきなり部室を出ていった。


「洋介!、真琴に何したの!」千絵が怒りながら洋介に詰め寄った。
「何って言われても」 (俺にもわからないんだよ)そう言うしかない洋介だった。
「今,真琴にあって『ごめん遅れて,今から行こう』誘ったけどうつむいたまま帰っちゃって」千絵の声はだんだんに大きくなった。
「あなたが何かしたとしか思えない!」
「千絵誤解だって、あの子来て直ぐ帰っちゃったんだぜ。」洋介の言葉は何故か説得力があった。
「ほんとに?」「ほんと、ほんと。俺だって千絵が居ないからかと思ってたんだ」
「じゃあ変ねー」千絵は椅子に座り考え込んだ。
・・てっきり洋介が・・・つぶやく千絵に俺は「何言ってんだ」そう怒鳴った。
「ほら、真琴ってかわいいし・・・洋介もねー」千絵は洋介を見つめ言った。
「ふー」ため息をつく洋介に千絵は椅子を立ち
「真琴に聞いてくる」そう言い出ていった。

はー、アクティブな奴・・・しかし千絵の話だとあの子にあれだけ肩入れする理由が変だよな?
千絵、まだ何か隠してるな!

「帰ったって・・・」千絵は部室に戻ってきた。
「そうか、・・・・で千絵に聞きたいことがあるんだが・・・」洋介は静かに千絵に言った。
「お前,言ったよなあの子にアイデア貰ったからって、一緒に書いたからって、でもさっきのお前の行動といい、あの子が文集を欲しがる理由は何だ!」
・・あっ・・と言って千絵は黙ってしまった。
「・・・千絵・・・・ほんとはどういう理由なんだ?」洋介は千絵に向き合い問い掛けた。
「真琴は・・・学校辞めちゃうの・・・・・」千絵は決心して洋介に答えた。
「去年から真琴の母さん事故で入院してて、ボーとしたまま良くならなくて今度おじいさんの所へ行くことになったって」
「それが,文集とどんな関係があるんだ」
「真琴はここを離れたくないのよ!」
「前に言ってた・・・もう引越しは、あんな思いはヤダって、・・・」千絵は言った。
「あたしもわかるよ,友達居なくなるし一人ぼっちな気がして新しい学校には行くにくいし・・・」
「でも,真琴それだけじゃ無いのよ!・・・・まだ何も言ってないのに、・・・・またサヨナラが言えないなんて・・・っていってたから・・」
「真琴離れたくない人がいるのよ、でも・・・・それで何かその人に残したくて、あたしにいってきて・・・・」
「千絵、じゃあお前はその為に・・・・そうだったのか。・・・」洋介は千絵の真意を知った。
「文集に自分のいた事を残しておいて,もしかしたらあたしの事をと思ったのか・・・」
「真琴は・・・真琴はきっとその人が好きなのよ。」
・・・・・・・・・・
千絵はすべてを洋介にさらしてしまった。

「千絵はその子に文集をやったのか?」
「・・・・渡してない・・・・」
「何故」
「自分が持っていても仕方ないから・・・・それに読んでもらえるから・・・・って言って。」
「じゃあ文集が欲しくなったのは自分の為か」
「文集の何かが気になったんだな・・・・・欲しがった理由は。」
「そーいえば文化祭で配り終わってから真琴が展示場に来て、貼りだした文集を読んでて・・・・『千絵,文集まだある?』って急に言ったのよね・・・」

「千絵、その子とどんな事書いたんだ・・・・。」
「二人で書いたのは、病気の友達の為に幼なじみが毎晩教会でお祈りをしていたら神様が来て薬をくれて・・・・こんな話よ。それが」

「洋介?、ねー洋介!」千絵は洋介が考え込んでいるのに気づき声をかけてきた。
「あ、あァ千絵、真琴って子相手に言えない理由なんだと思う。?」洋介は千絵に聞いた
「さあ」
「その子って変わっているのか?」少し憮然としながら続ける洋介。
「真琴?、真琴は・・・いやし系かな一緒にいるととても落ち着くの、そんな子よ」千絵の返事はそっけない。
「じゃあ、嫌われているわけでもなさそうだな」
「人に言えない何かがって雰囲気でもないし・・・・」
「そーか」
「そーよ・・・・普通の子よ。」
「よっぽどあたしのほうが普通じゃないもん・・・・真琴と違って料理全滅だし・・・・」
「ほー面白い事を・・・あれそー言えば」
「何、何か思いついた?」千絵は洋介の考えが気になり近づいた。
「お前の原稿いいにおいがしてたろ、それがふと思い出してな」洋介はそう言った。
「・・・・アレは真琴のとこで・・・」ばつ悪そうに千絵は話をしたが洋介はさえぎった。
「あの子料理造るのが好きなのか?」
「何でもお母さんに教わったって・・・・、言ってたけど、」
「そーか・・・・まあ詮索はここまでにして帰るか?」洋介は話題を変えた。考えをまとめるのに一人きりになりたかったのだ。
「そーね、じゃまた明日にでも考えよ」千絵は帰り支度をはじめた。

・・・・・真琴って子、そんな思いをあの話に・・・・
・・・・・でも読んでいて文集が欲しくなった、何故・・・・
・・・・そんな気持ちの人が、気になる作品か・・・
・・・・今回文集そんなことを書いていたのは・・・
・・・・あの子のあのにおい・・・・

「母さん」洋介は母親に尋ねた。
「あの,マーくんの名前なんて言ってたっけ」
「マーくん?、山口さんとこの誠くん?」懐かしそうに母は答えた。
「どうしたの,急にマーくんの事」
「ん,ちょっと。マーくんの事思い出してさ・・どうしてるかナって」
「そう。洋介,マーくんといつも一緒だったものね。・・・もう十年にもなるかしら。」
洋介と母は昔を思い出していた。
「洋介、いつもお菓子貰ってきてたものね。」笑いながら母は言った。
「そーだっけ」・・・お菓子か・・・
「でも、あなただって三時にはマーくんいつも連れて来てたのよ?」母はおかしそうに洋介に言った。
「マーくんとこのお菓子手作りでおいしかったじゃない。でも『うちのママのジュース美味しいんだ』っていってね。」
「あの頃うちはアイスティを入れてたけどお前はジュースだと思ってて・・・」

・・・・アイスティー・・・・か

「でね。山口の奥さんも一緒に来た事があって・・・そのとき母さんもお菓子を教わったの。」
ん・・・じゃあ母さんあのお菓子を造れるのか・・・
「で、母さん美味しい紅茶の入れ方を教えたのね。」
「母さん」洋介は話を止めた。
「なに、洋介」
「あのお菓子今でも出来る・・・?」
「出来るわよ・・・それが」急な事に母はいぶかしんだ。
「ちょっと気になった事があってさ」
「いいわよ、二三日したら造っておいてあげる。」母はそう言った。


それから三日後
「千絵,頼みがあるんだけど・・・」
「何、洋介」
「あの,これを・・・」
話が終わらないうちに千絵は
「・・・このにおい・・・これお菓子!」いきなり洋介の手から袋をとって
「ありがとう洋介、遠慮なくいただ・・・」
「待て,千絵早まるな」洋介は千絵から袋を取り返した。
「なんでー,私にくれたんじゃないの?」千絵はいきなりお預けで機嫌が悪い。
「これをあの子に渡して欲しいんだ。」
「あの子って,真琴。なんでー」
「この間のお詫びとか言ってさ」・・・こいつ感がいいから気をつけないと・・・
「へんなのー、洋介悪くないジャン」
「お前だ,お前・・・。おまえが居なかったからだろ」
「・・・そーゆー事ね・・・。で,私にお見舞いに行けと?」洋介何を考えてる?
「お前だってあの子に何かしてあげたいんだろ。じゃあ頼むよ」


「洋介、あのお菓子・・・」
「千絵どうだった」
「ねー,あのお菓子っていったいなんなの」千絵が洋介に詰め寄った。
「何なのといわれても・・」
「真琴に『お見舞いに私も行っていいかな』っていって一緒に出かけたの。で病室で真琴がお茶を入れてくれて一緒にお菓子食べてそしたら・・・」
「そしたら急に真琴が泣き出しちゃって・・・・・これ母さんのお菓子だって・・・・」
「で,私居られなくなっちゃってでてきたの・・・」千絵は思い出していたのか涙ぐんでいた。
「・・・あの子はそんな事・・・・」
「なんで、洋介の家に真琴のお母さんのお菓子があるの?ねー洋介」千絵は洋介に聞きたくて詰め寄ってきた。
・・・・・まさかと思ったがあいつは・・・・
洋介は千絵の問いかけを聞きながらそう確信していた。

「洋介、真琴が来てるわよ。」千絵が後ろから声をかけてきた
・・・アレ・・・この間から避けてたのに
「あの,鈴木くん。千絵から聞いたのあのお菓子鈴木くんからだって・・」真琴は何か言いにくそうに話をしていた。
「それが?」何を言いたいのか気が付いたが真琴に言って欲しかった。
「実は私の母は・・・」真琴は小さな声で話し出した。
「でね,あのお菓子のレシ・・・」洋介は真琴を止めた。
「千絵,俺は石川さんを送ってくるから部室頼むな!」
「鈴木くん,私困・・・」 真琴がしゃべらないうちに『・・・これから付き合ってくれ・・・』洋介はつぶやき連れ出した。


「母さん,お客さん」洋介は真琴を家に連れていった。
リビングに通された真琴に、話を洋介から聞いた母が声をかけてきた。
「・・・それじゃあお母様の為に・・・」
「・・ハイ・・」
「早く良くなられるといいですわね。じゃあはじめましょうか」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「出来たわよ,洋介」台所からいいにおいが漂ってきた。
「せっかくだからお茶にしよう」洋介はアイスティーを入れた。
「まァ、珍しい・・・・洋介がいれてくれるなんて」
「まあまあ、さッ試食試食」
お菓子を食べアイスティーを飲みながら洋介は真琴を見つめていた。・・・・・もし、真琴がこれに反応したら・・・・・・
アイスティーを口に含んだ真琴は一瞬懐かしそうな顔を見せた。しかし直ぐに「美味しいです」と話し掛けその表情を消し去った。
「せっかく美味しく出来たんだもの。このままお母様の所へ届けましょ」いきなり母は言い出した。
「母さん」「困ります」二人は声を上げた
「どうして・・・いいじゃない、お菓子は作り立てがおいしいのよ。」お構いなしに真琴を車に押し込んだ。
「母さん俺も」水筒を抱えた洋介が入りこんできた。
動き出した車の中で洋介は「・・・母さん病人の顔を見ても驚かないでくれ・・」ポツリつぶやいた。
その言葉にいきなり「降ろしてください」真琴は叫んだ。
「どうして?」洋介は真琴を見つめた。
「あたし,あたし・・・」真琴の目には涙が浮かんでいた。
いきなり洋介は真琴を抱きしめ・・・もういいんだ,我慢しなくて・・・そうつぶやき真琴の髪を撫でていた。
「ヨーちゃん」それが真琴の返事であった。

二人は真琴に連れられて病室は入っていった。
そして,顔を見たとき二人は息を呑んだ。
「洋介、どうゆう事」母は洋介に聞いてきた。
「・・・・後で話すよ。でも・・・・」何やら洋介は水筒を取り出していた。
「?」 二人の視線を集めながら,洋介はグラスにアイスティーを入れお菓子を準備した。
「これをおふくろさんに・・・」洋介はそう言って真琴に差し出した。
・・・・これはさっきの・・・・真琴は洋介を見つめ頷いた。
「俺と母さんからのお見舞いだ。じゃあ」渋る母を洋介は連れ出した。
「洋介・・・あの子はあの・・・・」母の問いかけに洋介は無言で答えた
「そうだったの」「ああ、一人で悩んでいた・・・・」二人は病室に向き直し・・・・どうか・・・・目を閉じた。
・・・あのアイスティーとあのお菓子だったら・・・

・・・ガチャン・・・・ 病室でグラスが割れる音に、二人は急いで中に戻っていった。
そこには泣きながら抱き合う二人がいた。

・・・・良かったねマーくん・・・

二人の再会の邪魔をすべきではないと洋介は母と静かに病院を後にした。
車の中で洋介は今までのことを母に話した。今日真琴を家につれていった理由も。


数日後靴箱に手紙が入っていた。真琴からだった。
"この間はありがとう,母が会いたがっています。・・・"と,最後にTELNoが書いてあった。


洋介は母を連れ真琴の家に出かけた。十年ぶりの再会を楽しんでいる親を見ながら俺達は家を出た、真琴に誘われて。

真琴は駅に向かい歩き出した。ポツリポツリ話をしながら
六年前事故で入院してそのとき女だってわかった事、
三年前事故で父をなくした事、
そして去年母が事故に遭った事

「あの時のままだなー」それは二人が遊んだ公園だった。真琴は洋介の家の近くに来ていた。
「ごめんね今まで避けてて・・・・」後ろから真琴は声をかけてきた。
「去年の文化祭で文集を配っていたときに、なんとなくあなただってわかったの」真琴はつぶやいた。
「でも、今あたしこんなだし・・・声かけられなくて。」真琴は椅子に座りながらそうつぶやいた。
「でも母が入院しておじちゃん家に行くことになって・・・」
「また何も言わずに離れたくなくて、でも言えなくて・・・それで・・・。」
「それで文集に・・・」洋介は真琴の隣に座って肩に手を廻した。
「うん、千絵が何とかしてやるって・・・・」真琴は顔を向け答えた。
「千絵、あたしの事何も聞かないでくれて、・・・でもねあの時」
「あの時?」洋介は聞きなおした。
「あの時、あの文集を読んで・・・・まだあたし・・・・・・僕を忘れてないんだって気づいて、・・・・」
「誠・・・・」洋介は真琴を見つめていた。
「・・・・・文集だけで良かったんだけど・・・・でも」
「でも,千絵の持ってきたお菓子を食べたときびっくりしたの。あなたがこれをよこしたって・・・・」
「もしかして・・・・そう思ったら我慢できなくて・・・・」
「もっと早くに気づいてやれば・・・真琴も悩まなかったのにな・・・ごめんナ。」
「うん、でもいいの。洋介とおばさんのおかげで母さん元気になったから」そう言って真琴は涙を拭き晴れやかな顔を向けた。
「これでサヨナラを言わなくてすむから」
「そうか、良かったな」洋介は真琴の顔を見てそうつぶやくだけだった。
「これからもよろしくね。」「こちらこそ」


二人は同じ様に晴れやかな空を眺めていた。

 

 


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