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これは夢オチ

第8話:「夢魔法戦隊ドリームウィッチーズ!」

Zyuka





「……みんなっ、集まってくれてありがとうっ」
「当然でしょ、リンム! ……あたしたち、友達じゃない」
「そうです。夢をうまく作れない時は協力し合う――これは私たちナイトメアのルールですわ」
「ほんとにありがとうユイム、メグム…………それからシーム――」
「……俺は来たくなかったんだっ!!」
「ウソでしょっ? 私たち同世代でしょ。……協力してくれるよね、シーム君♪」
「そうですよ、あなたは優しい方ですものね」

 シームは縄でぐるぐる巻きにされ、ユイムとメグムに引っ立てられていた。
 そんな彼のありさまを見れば、ここまでに何があったのか…………容易に想像がつく。

「本当に助かります! 今回の夢、人数をそろえなきゃならないんで」
「えっと……確か、リンムの担当夢は――」
「『魔女』だろっ」
「違いますよ。魔法少女系の夢を製作するのが、私の役目なんです」

 そう。「魔法少女」の夢を作るのが、リンムの役目だ。

「それで今回の夢は、魔法少女の戦隊物なんです。だから私一人じゃなかなか難しくて――」
「だからなんで俺を巻き込むっ!? 女のナイトメアなら何人でもいるだろうが!! リリムとか、ランムとか、チャムとか……」
「作者が設定を考えていない仲間を呼んだって、何の役にも立たないでしょ。……ここは新キャラのために、今までに登場した私たちが力を貸してあげないと!」
「うう……っ」



「――と言うわけで、今回作る夢を見るのは、手機塔 奈人。28歳、職業は漫画家」

 後ろでさるぐつわをはめられむ〜む〜唸ってるシームを無視して、リンムが説明を始めた。

「……漫画家?」
「ええ。この間最終回になった『ラムカム・ポンッパー』の作者さんです。……新作のアイデアに詰まっているらしいので、ヒントとなる夢を作ってくれ――という依頼が来ていたんです」
「それが、魔法少女の戦隊物?」
「ええ。……とりあえず赤、青、黄、桃、白の五人の物語になります。もちろんリーダー役の赤は、手機塔がやることになります」
「――で、後の色を私たちがやるわけね」
「お、俺は青をやる!!」

 後ろから、大声が上がる。

「えーっ、青は私がやろうと思っていたんだけど……」

 リンムが、そうつぶやく。

「何言ってるんだ!? 後の色――黄、桃、白なんて、完璧に女の色だろ!! 俺は青っ。……絶対に、青っ!!」
「……仕方ないな。じゃ、私は桃色にするわ。……で、ユイムちゃんは黄色、メグムちゃんは白ね」
「オッケー!」「わかりましたわ」
「……つまり、最初の予定では俺は桃色だったのか――」
「じゃ、まずはリハーサルをしてみましょう」
「ちょっと待ってくれ。戦隊物ってことは、敵役もいるんだよな?」
「ええ。でも、今回それにはそんなに力入れてないんです。……夢を見る方の希望が、“主人公キャラクターのヒントが欲しい” ってものでしたから」
「……俺、敵役をするってわけにはいかないのかな?」
「人数少ないんでしょ! いい加減あきらめなさいよ」

 シームの最後の抵抗も、ユイムにあっさりと否定される。

「じゃ、さっそくリハーサルをしましょう! この看板が、手機塔の代わりです」

 そこには赤い魔法少女の服を来た女性の姿が描かれていた。

「……手機塔奈人、あんたも気の毒だな……こんなかっこにされて――」
「そう? 私が作ったTS夢の出演者たちって、けっこう喜んでいたよ」



 リハーサルを経て、ついに本番が始まった。



「ウイッチレぇぇッドっ!!」

 奈人演じるレッドが大声で叫び、ポーズをきめた。
 現実では男だが、この夢の中では女――でも、彼はそのことにまったく違和感を持っていないようだ。

「ウイッチピンクぅ!」

 リンムがリハーサルで見せたポーズをとる。

「ウイッチイエローっ!」

 続いてユイムもポーズをきめる。

「ウイッチホワイト!」

 そしてメグム。最後は……

「…………」
「ちょっとシームっ、早くセリフを言いなさいよ!」
「…………ウイッチブルー……」

 涙目になりながら、シームはボソッとつぶやいた。
 ……もちろんその姿は、可愛らしい少女のそれになっている。

「みんなそろって、夢魔法戦隊ドリームウィッチーズ!!」

 奈人がそうまとめると、後ろで爆発が起きる。

「……いくぞ! 悪の帝国ドンデモイイドの悪人たちめ!!」
「ねえリンム……ドンデモイイドって?」
「さあ、あの人が勝手に考えたんじゃない?」
「それにしても、よく動く人ですね……」

 そう、奈人は良く動いた。ナイトメア四人を、圧倒するほどに――

「うおおおおお!!」

 彼――というか彼女、ウイッチレッドの指さすドンデモイイド帝国の “悪人” たちというのは、実はベニヤ板に描かれただけの、ただの絵だったりする。
 しかし彼女は、あたかもそれが「本物の敵」であるかのように、攻撃魔法をかけ、蹴り、壊し、どんどんテンションを上げていった……



「ううう……」
「すごいねえ、人間っていうのは――」



 手機塔奈人は、そこで目を覚ました。
 ……というわけで、夢は終わったのだった。



「ううう……」
「ま、よかったんじゃない?」
「そうですよ」
「良くない……なんだったんだっ!? あの格好はっ!?」

 シームが叫ぶ。
 今回、三人が着ていたコスチュームは、全てリンムが作ったものだった。
 彼女の技術は確かだった。そのため、五人の格好は結構凝ったものであった。
 そして、もともと彼女が演じようと思っていた「ウイッチブルー」は、それ以上に凝った衣装になっていた。

「あんなかっこになるんだったら、おとなしく桃色を選んでいたらよかった……」

 シームはそうつぶやき、だうううっと涙を流した……



 この後、手機塔奈人の新作「魔女っ子戦隊マジカルウイッチーズ」は、前作「ラムカム・ポンッパー」以上のヒット作となったという。
 しかしそれは別の物語。……作者の気まぐれが起こったら、語るとしよう。


終わり

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