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これは夢オチ

第5話:「注文の多い料理人」

Zyuka





「……だめだわ」
「なぜだあああああああああっ!?」

 あるホテルに勤めている料理人がいた。彼の料理は男性客には評判はよかったが、なぜか女性客にはいまいちだった……



「君は、女性の気持ちっていうのが理解できてないんじゃないかね?」
 彼の上司である、料理長はこう言った。
「女性の気持ち……」
 彼は悩んだ。そして、悩んだ末に……



『ユイムっ! 出てこい!!』
『な、なに……?』
 ナイトメア・ユイム。彼女は突然、ある男の夢のなかに引き込まれた。
『何でもいい、とにかく俺を女にしろっ!!』
『――? あなた、誰?』
『俺は料理人の真具値志有無 太助!! 女の気持ちを知り、女に受ける料理を作るため、女になりたい!!』
 ……ちなみに、真具値志有無とは、「まぐねしうむ」と読みます。
『え、ええーと、太助さん……あなた、どーしてわたしのことを?』
『うむ、夢のなかに出てくるユイムという女に頼めば、女になる夢を見られると、あるお得意さまから聞いたのだ!!』
 確かに、強い意志をもって眠りにつくと、その担当のナイトメアを呼び出せるという。
 しかし、本人を名指しするということは、その存在を知っていなければできないことだ。
『……そのお得意さまって?』
『三王子 昴君だ!!』
『み、三王子って……トラブルTSの――?』
『うむ!!』
 ……説明、する必要はないかもしれない。「T・M・T・T・S」でも読んでください。
『彼に聞いた通りだ。ユイム、お前は男を女にすることができるのだな?』
『夢の中だけ、だけどね。現実にTSしたいのなら、華○ちゃんに頼んだ方がいいよ』
『まあ、それはおいといてだ!! とにかくまず、俺を女にしてくれ!!』
『はいはい……』

 ピュポッ――!!

 料理人は、かわいいウエイトレスの姿になった。
『ようし、この姿で料理してみる!! ……キッチンはないの!?』
『キッチン、ね』
 ユイムが手を一振りすると、その場がにかわいいキッチンセットが姿を現す。
『便利な物ねぇ。……じゃ、次は食材をお願い』
『はいはい――』
 種種多様な食材が、まな板の上にぱっと出てくる。
『……だめだわ。この食材』
『へ?』
『食材には鮮度が重要なのよ!! これらはその鮮度がわからない!!』
『細かすぎるわよ!!』
 それでもまあ、彼女(?)のイメージから作り上げた「新鮮な食材」を出現させる。
 そして彼女は料理を作り始めた。
『……胸がじゃまで作りづらいわ――』
 そんなことをぼやきなから、小さくなった手で食材を切り分けてゆく。
 ついで、下ごしらえ。パパパッと軽くいためて、そして味見――
『……味がしないわ』
『ここ夢の中だもん、五感なんてある分けないわ』
『じゃあ、五感を感じられるようにして!!』
『無茶言わないでよ!!』
『……道理で包丁で手を切ったとき、痛くなかったのね!!』
『その時点で気づいてよ!! それに何でいつの間にか女言葉になってるの!?』
『……そういえば。でも、食べたときの女性の気持ちが分かればそれでいいわけだから、別に料理作ってるときに女になる必要はないわけだ……』
『……』
『この夢、何か意味あったの?』
『……』
『まあ、いいか。キッチンと食材、そして料理人がそろっているんだから、料理を続けましょっ!』
 そうして彼女は、再び料理を始めた。
『私の苦労って、いったい……?』

 トントン…… 『――ん?』

 誰かが、夢の扉をたたいている……
『誰かな?』

 キイ……

 ユイムはとまどいながら扉を開けた…………そしてっ!

『きゃああああああああ!!』



『ユイム、大変だ!! このあたりにバグの大群が出現したらしい!!』
 ユイムの同僚、ナイトメアのシーム君が、ユイムの夢の中に駆け込んできた。
 バグとは、第4話でも出てきた、夢を食らう生物のことだ。
『早く避難しないと夢を食らいつくされるぞ!!』
『……わかってるわ』
『わかってるなら早く――』
 と、そのときシームは気づいた。
 ユイムがあまりに落ち着いているのと、彼女の作った夢の世界でくつろいでいる大量のバグがいることに……
『こ、これは……?』
『なんか、あきれちゃったのよね……』



『ハイハーイ、お待たせしましたーっ!!』
 一人のウエイトレスが料理を作り、それをバグのいるテーブルに運んでゆく。
 バグたちはそれらを、ぱくぱく食っていた……
『やっぱり、料理は食べてもらわないと意味がないわね。夢でも現実でも、それは変わらないわ』
 何の解決にもならない夢だったが、どうやら彼は料理人として一皮むけたようだった。



終了!

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