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……純粋なあなた……汚れた私……

……悲しき心と無垢な心……

……私はあなたを……

……汚したい……



幽霊屋敷のお姉ちゃん

作:Zyuka


 小さな村のハズレ……小さな湖のほとりに、古びた年代物の屋敷があった……。
 元々はある貴族の別荘だったらしいが、その貴族が没落したからは荒れるにまかされていた……
 いつの頃からか、そこは幽霊屋敷とよばれるようになっていた……



 ある日、金持ちの老婦人がそこを買い取った。
 老婦人は、残り少ない余生を静かに暮らしたいと、1人の執事と、1人の若いメイドと共に、その屋敷に住み始めた。
 人が住み始めても、その屋敷の名称は変わることはなかった。何となく、不気味だからである。
 まあ、大人達は人の住んでるところを幽霊屋敷徒なんか呼べない。その名を口にするのは、その近くを遊び場にしている子どもたちだった……



 屋敷から、メイドが出てくる。
 彼女は、屋敷の庭……というか子どもたちの遊び場と一体になっているところだが……を整理しているのだ。
 まだ年若い、かわいらしいメイドである。
 屋敷の主である老婦人は、滅多に人前に姿を現さない。執事、とよばれている人物もそうだ……。
 屋敷の前で遊んでいる子どもたちが見かけるのは、いつもこのメイドだけだった。
 だから子どもたちは、このメイドのことを『幽霊屋敷のお姉ちゃん』と呼んでいた。



「あっ……」
 メイドの目の前で、一人の男の子が転ぶ。
「何やってんだよー」
 友達らしい、別の子供が呼びかける。
 メイドは、こけた男の子の所まで行って助け起こした。
「あ、ありがと……」
 かわいい男の子だった。
 どこか純粋さを感じさせる、八、九才くらいの子……
「早く行こうぜー」
 友達が呼びかける……
「まってよー」
 男の子は、駆け出していった。



「あの……お姉ちゃん……」
 別の日、その日も庭で作業をしていたメイドは、声をかけられて振り向いた。
 あの男の子だった。
「これ……この間の、お礼……」
 そういって、男の子はメイドに花を一輪、手渡した……
 メイドがそれを受け取ると、男の子はわき目もふらずに走り去っていった。
 それを見送ると、メイドはぽつりと言った。
「あの子に、決めた」
 と…………



 満月……
 屋敷の執事は、庭に当たる場所でじっとそれを見つめていた。
 彼の目が……怪しく、紫色に光る。
 ……そこからあふれ出た光は、やがて彼の身体をおおい、その姿を獣へと変貌させていった。



 その夜、村では大事件が起こった。ある一家が、九才の息子一人を残して、何者かに惨殺されたのだ。
 それは、人間の力ではとうてい行えない、ひどいものだった。
 もちろん、都会から警察が来て、念入りに調べた……
 だが、何も分からなかった。
 もちろん、警察は幽霊屋敷に住んでいる、三人の人物にもあった。
 屋敷の主である老婦人にも……
 最初、警察はこの老婦人が魔女ではないかと疑った。しかし、老婦人は、本当に年老いた老婆だった。老婆は言った。
「もし魔女なら、魔法でいくらでも若い姿を保てるでしょうなぁ」
 警察は、納得した……
 しかしここで、思わぬ話が飛びだした。
 老婆が、家族を亡くし、孤児となった男の子を引き取ろうと言ったのだ。
 屋敷の整理は執事とメイドに任せているが、それでは手の届かないところがある。
 だからその子を小間使いとして引き取ろう、老婆はそういった。
 村でも、その男の子をどうするか迷っていた所だった。
 だから村人達は、男の子を屋敷に引き取ってもらうことにした。



 その夜……屋敷にいつの間にか作られていた、地下室で……
「気がついた?」
 メイドは、男の子をおさえつけながら言った……
「お姉ちゃん……」
 男の子は、恐怖におびえながらメイドを見る。
 これから何がおこるのか、まったく分からない。
 地下室の床には、赤い何かで書かれた、まがまがしい文様が浮かんでいる。
 それが幾重にも重なった、奇々怪々な魔法陣を描いているのだが……男の子にそれが理解できるはずがない……
 地下室には、メイドと男のこのほかに、館の主たる老婆と、執事がいた。それと、大きな鏡……
 男の子は、メイドにおさえられながらも、ちらちらとその鏡を見ている。
 そこには、男の子とメイドと執事は映っているが……老婆の姿は映っていなかった……
「……お姉ちゃん、怖いよ……」
 男の子は恐怖に、一番安心できる存在である、メイドにすがりつく。
「大丈夫よ……」
 メイドは、うっすらと笑いを浮かべている。
「ただ、入れ替わるだけだから。私と、あなたがね……」
「え……?」
 男の子には、その言葉の意味は何も理解できなかっただろう。
「主よ、準備は整いました」
「うむ」
 執事がそういい、老婆が応える。
「な、なに……?」
 男の子は不安と恐怖に、今にも泣き出しそうだ。そんな男の子を、メイドは笑いながらおさえている。

 かぁ……!!

 突如、老婆の瞳が紅色に染まる。とたんに床に描かれた魔法陣も輝きだした。
「う、うわ……!!」
 男の子は感じた。赤い光が、彼を包み込んでゆくのを。
 自分と、お姉ちゃんを包み込み、そして……そして自分の、何かと何かを引き離そうとしているのを・・・
「うわあ!!」
 理解できない。叫んでいるのが、二つに分けられた自分の内、どちらか一方だけなのか、それとも両方なのか……?
「フフフ……」
 近くで笑い声が聞こえる。
「お姉ちゃん!?」
 男の子は、その笑い声の方を見た。
 お姉ちゃんがいた。……お姉ちゃんも、赤い光の中で、二つに分かれていた。
「あなたは、こっちに行くのよ」
 二人のお姉ちゃんの内、片一方が、もう片一方のメイドを指さす。
 男の子は、その指に導かれるように、メイドの体の中に吸い込まれていった。
「フフフ……」
 そして今度はメイドが、男の子の身体に入っていく。
 すると、突如として光は消え去ったのだった。



「ふえーん」
 メイドが、目から涙を流して、ぺたんと座り込む。
「怖かったよ、お姉ちゃん……何がおこったのぉ……?」
 涙目で、きょろきょろと、メイドは“お姉ちゃん”を捜した。
 いない……
「フフフ……」
 そんな笑い声を聞いて、メイドは顔を上げた。
 そこには、満面に笑みを浮かべた、一人の男の子がいた。
「……え……ぼ、ぼく……?」
 そう、そこにいた男の子は、自分そっくりだ。
 ぱっと鏡を見る。
「え、う、うそぉ……」
 そこには、老婆の他に、座っている自分の姿もなかった。
 自分は……立って笑っている。泣いて座っているのは、メイドのお姉ちゃんだ……
「何これ……ぼく、お姉ちゃんになっちゃったの……?」
 メイドは……いや、メイドの身体に入れられた男の子は、自分の身体をよく見る。それはどう見ても、九才の男の子の身体ではなかった。ハイティーンの女性の身体、メイド服着用である。
「な……にがおきたの……?」

 がぶっ!!

 突然、老婆が動き、メイドの喉元に牙を押しつけた。
「あ……うっ!!」
 痛みは……ない。妙な快感が、メイドの身体に、そして男の子の精神にそそぎ込まれる。
「ああ、うん、や、やめて……頭が、ぼぅっとしてくる……」

 ごくごく、ごくごく……

 老婆の喉元が上下する。吸血、しているのだ。
「そう、主は吸血鬼なの」
 男の子の身体を持った、メイドが語り出す。
「それも、ちょっと特殊なね……」
 吸血されているメイドは、聞いているのかいないのか、目をかつての自分に向けてじっと見つめる。その瞳から、急速に光が失われていく。
「偏食吸血鬼って、聞いたこと無いかしら? ある特定の人間の生き血しかすえない、そんな特殊な吸血鬼のことを。主は、まさにそれなの……それも、その中でも特異な存在に、値するのよ。なぜなら……」
「男の心を持った、おなごからしか血をすえんのじゃ」
 そう言って、老婆はメイド(心は男の子)の喉元から口を話した。
「ふぅー、ひさびさに満足のいく食事じゃったわい。後二ケ月もこれを繰り返せば、往年の力が復活することじゃろう。……さすれば、そなたにも永遠の命を授けてやれるぞ」
「有り難うございます、主よ……」
 男の子の身体に入った、メイドは、深々と老婆に頭を下げる。

 ふら……がしっ。

 吸血され、力を失ったメイドの身体を、執事が押さえる。
「ひょひょひょ……お前達、その身体には十分な食事と休養を与えるのじゃぞ。次の夜もまた、吸血をせねばならぬのだからなぁ……」
 そう言う老婆の顔は、幾分生気が戻ってきたようだ。
「心得ております」
 男の子の身体のメイドが、再び頭を下げる。
「うむ。では、儂は寝るからな……」
 そう言って、老婆は消えていった。
「…………」
 それを見ながら、少年の頭でメイドは考えた。

(一回の吸血で、ほぼ一年くらい若返る。二ケ月……六十日くらい立てば、あの方は20代前後まで若返ることができるだろう。その時、私はあの方の力であの方と同じ吸血鬼となり、永遠の命を得る……)

 その時……

(私はあの身体に戻るのかしら? それとも、この身体のまま吸血鬼になるのかしら?)

 どちらでもいいような感じが、その時はした。
 メイドの身体を持った男の子は、執事に運ばれて浴槽の方へ行く途中だった。
 大事な主の食料だ。清潔にしておくにこしたことはない。
 ついでに、この身体もきれいにしておこう。男の子の身体を持つメイドは、すっと立ち上がった。



「うえーん、もう食べられないよお」
 かわいらしい泣き声が、屋敷の食堂から聞こえてくる。
「だめよ! ちゃんと食べて主様のために血を作るのよ!」
「だってえぇ……」
「あーもお! 聞き分けのない子ねぇ!!」
 その光景は、ちょっと異様なものだった。
 椅子に縛り付けられたメイド姿の少女が、小さな男の子に料理を食べさせられているのだから。
 ちなみに、この料理を作ったのは、執事だったりする。

(料理好きの狼男……モデルはもちろんスタ○オー○ャンのテ○ィーク)

「うえーん、ピーマンは嫌いだよぉ」
「わがまま言わないの!!」
「ふえーん!」
 メイドの身体に入っている男の子は、いやいやと首を振る。
「聞き分けのない子ねぇ…………そうだ」
 男の子の身体の入っているメイドは、何を思ったのかフランクフルトを手に取る。
「上のお口が食べられないっていうんなら、下のお口に食べてもらうわよ」
「へ……下のお口?」
「そうよ!!」
 男の子の身体は、メイド服のスカートをばっとめくり、その奥にある“下のお口”にフランクフルトを差し込んだ。
「ふ、ふぎゃあぁ!?」
 メイドの身体の男の子はもだえた。……じわっと生暖かい液体が出てくる。
「あーあ、お漏らししちゃったわ。悪い子ねぇ……」
「え、え……えぐっ」
 メイド姿の男の子は、泣きかけてる。
「お漏らしした悪い子にはお仕置きをしなくてはいけません。……お尻ペンペン、百回!!」
「お、お尻ペンペン…………」
 メイドの瞳から、大粒の涙がこぼれ落ちる。
「そうよ。……でも、叩くのは下のお尻じゃないわ。上のお尻よ」
「上のお尻?」
「そうよ!!」
 そう言って男の子の身体を持つメイドは、メイドの身体を持つ男の子の“上のお尻”を叩き始める。
「ふぎゃ……ふぎゃぁん!!」
 上のお尻、すなわちおっぱいを叩かれ、メイドの身体の男の子は奇声を上げて泣くしかなかった…………



……純粋なあなた……汚れた私……

……悲しき心と無垢な心……

……私はあなたを……

……汚したい……



END


あとがき


 精神交換系ヴァンパイアストーリー。これがメタモル・ヴァンパイアで言っていた、もう一つのほうです。

「へぇこれがぁ。それにしてもこれ、わざわざ吸血鬼をからます必要はなかったんじゃないのか?」

 ま、吸血鬼物を得意としているZyukaとしては、前二作で吸血シーンがなかったのは物足りなかったからな。それにこの話、元々は男の心を持つ女の血しか吸えないと言う、偏食吸血鬼というアイディアから構築した話だから。

「なーる……正しく言えば、吸血鬼物しかアイディアがない作者の言い訳ともとれるわけだな」

 う……うるさい!! そもそも君は誰だ。

「俺? 俺は七大カルマ能力者が一つ、黄のカルマを持つウィザード……」

 あ、ちょうど時間となりました。それでは皆様、ごきげんよう!!

「あ、こらぁ!! 勝手に終わるな!! ちゃんと俺の紹介もしろ!! 俺だけじゃない!! 弟のもだ!! そして、次回作は俺を書け!! わかったなぁ!!」



 お後がよろしいようで……

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