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秘密結社の暗躍が事象を加速させていく


第2宮家

第七章 破壊工作

作:starbow


玉司宮は、神社の空間が保持している記憶の中で体験したことを長官にはなにも言わなかった。
ただ一言、
「疲れました。今日は、これで終わりにします。」
とだけ言った。しかし、その奥底に秘めた意思はまったく別であった。


***


そのころ、放たれた刺客は、破壊工作を行っていった。

一ヶ月前:
 まず、あらかじめ確保しておいたルートを使って、第二宮家の女官募集に応募した。女性顔負けのメークだね、あんたは。

3週間前:
 上手く、女官に採用されて、掃除係となった。しめしめ。

2週間前:
 これ幸いとあちらこちらに、極小の爆弾をばら撒いていった。こそこそ。

1週間前:
 最後の詰めとして、寝室のくずかごを温度センサー付きの爆弾の詰め合わせと摩り替えておいた。
 開かずの間は、入ることができなかったのでそのままにしておいた。

あいにく、玉司宮が元伊勢に出かけており、だれにも気付かれないで、物事を進め終えてしまい、少し拍子抜けしていた。
「なんだい、首領がいっていたようなことはなにもおきなかったぞ。誰だい、そんなオカルトめいたことを吹聴したやつは。
あとは、仕上げをごろうじろか。」
刺客は、鼻歌交じりで、見せ掛けの役に徹していた。

だがしかし、ものごとは、ヨウ君には筒抜けだった。しかし、物事が慌ただしくて、そのままにしてしまっていた。
(後で、こやつを片付けてやるか。)


***


元伊勢から戻ってきてからずっと玉司宮は、一人、寝室にこもっていた。正確には、こもっているふりをして、研究所にいたのであった。
記憶のジグソーパスルを一枚ずつ解くように、ソファーに寝転がりながら、考え込んでいた。
「神社の空間の記憶のシーンはアマテラスのことだった訳で。」
「ふむふむ」
「そうすると、わたしは、アマテラスということ?」
「そうですね。」
ヨウ君は、気のない返事をした。
「そして、これがリング。リングがアマテラスの記憶を呼び戻す。」
「そうですね。」
「しかし、アマテラスの病状を悪化させると。」
「。。」
「しかし、この世を救うにはそれしかない。」
「残念ながら。」
「解除するとなにが起こるのかな?ヨウ君知っている?」
「ある程度は。」
「そして、もう一つのリングはどこ?」
「それは探さないと。。。(じつは知っているんだけどもね。)」
「そうだとすると、早く探さないといけないじゃない!」
そういうと、玉司宮は、ソファーから起き上がり言った。
「ヨウ君、ちょっと向こうにもどるからね。」
「あの。今行くと!。。」
「なに?」
そういうと、玉司宮は、さっさと祭壇のある場所に行き、空間を接続すると開かずの間に進んだ。
しかし、物事はシンクロするものだ。
ちょうど、玉司宮が寝室に戻ってきたとき、刺客が細工した爆発がおきた。

ドカドカ。ガッシャン!

玉司宮は、無意識にバリアを張ったのだが、今の彼女には荷が重かった。
そうこうしてる内に、気を失ってしまった。

ますます、激しく爆発音が立て続けにあがった。

ボーン!バン!ガラガラ!

何かに引火したのか、火の手が建物から上がってきた。

ボワー!!!!ヒューン!!

建物は、次々と炎上し、火の手は収まる気配を見せなかった。
ちょうど外との会合から返ってきた長官は、炎上する宮家の建物の前で叫んでいた。
「まだなかに、宮様がおられます。だれか、救助してください。」
悲嘆にくれる長官を尻目に、火の手はますます激しさを増していた。
結局、火の手は12時間燃え続けた。だれもが、絶望的な考えのなか、長官だけは、必死に玉司宮を探し回っていた。
「宮様、どこにおられますか?返事してください。」
あたりは、静寂であった。しかし、かすかに、赤ん坊の泣き声が聞こえてきた。ちょうど、宮様の寝室のあたりだった。
「あ、この子は。」
長官は、赤ん坊の指にはまっているリングを見つけて、叫んだ。
「宮様、このようなお姿になって。」
何故、という考えは、長官の頭には浮かばなかった。
「私めが、御育て申し上げます。」
すると、そこに、一人の男性があらわれた。そして、手にもったコンパスを揺らして長官にかざしながら言った。
「玉司宮は、怪我をされて極秘に入院された。その子は、わたしのものだ。そうだな。よいな、いまのことは全て忘れろ。」
長官は、こっくりと頷き、抱きかかえていた赤ん坊を手渡した。そして、その場に立ちつくした。
男は、祭壇のあった場所にいくと、空間を接続し、研究所へと戻っていった。


***


研究所に戻ると、男は、赤ん坊を祭壇の真ん中に寝かせ、コンパスを振った。
空間に六芒星が浮かび、すっと祭壇の床に結界が展開された。

 われ、全能なる神アマテラスに仕えるミカエル、アマテラスの代を再生させたまえ。

 この代の元となりしものからいまいちど、おこしたまえ。
 メルコス、コメアレス、カマケルトス、アラパケラ!

 その御名は尊いもの。その身は、光あるもの。
 ソイ、フェーリアルアサス、コラリエンシス!

 天地、空時、アルファは、オメガであり、はじめはおわりである。
 ノルス、コイ、アグアペア、カマエルタリウス、アザレイア!

 四神は、その願いを聞きたまう。
 アグリアル、コリエリ、オーパリシス!


そういいながら、男は、手にもったコンパスを操作し、祭壇の周りをまわり続けた。

すると、祭壇が薄く光り始めた。そして、その周りにフィールドが展開されてき、みるみるうちに祭壇を包み込んだ。
ちょうど、ゆりかごのように。
そして、時計の針を進めるがごとく、赤ん坊はどんどん成長していった。
赤ん坊は、幼児に。
幼児は、少女に。
少女は、乙女に。
見る間に成長し、玉司宮は、元の体に戻っていった。
しばらくして、玉司宮が喋った。
「あれ、いつの間にここに戻ったのかしら?」
そして、あたりをきょろきょろ見回した。
すると、祭壇の外に男がいることに気が付いた。そして、自分が裸であることも。
きゃー、あなたは誰。どこからここに入ってきたのよ!」
その言葉使いは、紛れも無く女性のものであった。
「わたしは、ミカエルであり、ヨウ君でもあります。」
「え!」
玉司宮は、元伊勢での記憶を探りながら言った。
「あのミカエル?!」
「そうです。昔からあなた様に仕えてきたミカエルです。」
そういいながら、ミカエルは、手持ちの計器でフィールドの測定を始めた。
「(おかしいな。シンクロ率が上がっている。なぜだ。対策は万全のはずなのに!)」
「どうしたの、ミカエル?」
「いえ。なんでもありません。代の再生作業で疲れているだけです。(やばいぞこれは。)」
「そうですか。体を大事にしてくださいね。」
「はい、大丈夫です。(しくしく!)」
「わたしも休むとします。非常に疲れている感じがします。それではおやすみなさい。」
そういうと、玉司宮は、研究所の寝室に優雅に歩いていった。
後に残されたミカエルは、深刻そうに頭を抱えていた。
「なぜだ!わたしの仕事は、完璧なはずだ。」
そして、計器の数字を見直していた。
「あ、これだ!わたしとしたことが。再生のときに、元の素材のイントロンが一部混入していたんだ。どうしよう。早く、解除リングを探さないと、不完全な解除状態になってしまう!」
そう呟くと、解除リングの所在を示すインジケータの位置を見つめた。
「ほほう。上に戻ってきているか。(それは、好都合だ。さっさと片付けてしまおう。)」
ミカエルは、計器を操作し、T氏(P)の呼び出しを行った。


***


T氏(P)は、いらだっていた。
何故だか判らないが、玉司宮の病状が非常に気になっていた。
佐野さんに似ているからか、それとも、別の原因なのか。
遺跡で出会ってから、気にはなっていたが、爆発事件の報道のあと、急に苛立ちが抑えられなくなった。
「ストレスかな?最近休みもなく働いていたからな。」
そう独り言を言っていた。
そのとき、急にあたりが霞がかってきた。
昼間なのに、T氏(P)には何も見えなくなっていた。
まるで、異性人に誘拐されて、吸い込まれるように。
そうするうちに、すっと姿は掻き消えた。誰もいなかったがごとく。


***

おまけ

あの刺客は、どうなったかって。
それはですね、ミカエルの怒りの餌食となって、入れ替わりとして迷子の女の子にされてしまいました。
かわいそうですが、致し方ありませんね。

「首領ちゃま、どこにいっちゃいましたか。えーん。」

首領の所に辿り着けることを祈ってあげてください。


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