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イマジン  by Reika Marie


(CHAPTER-10)

「ねえ、早く鏡を見せてよ。生まれ変わった僕がどれだけ綺麗になったか見たいんだ。」
「いいわ。スリッパを脱いでハイヒールにはきかえなさい。
 このハイヒールはシンデレラの靴よ。
 これをはいた瞬間に王子さまはお姫様に生まれ変わるのよ。」
純子がストッキングに包まれた足をハイヒールに滑りこませた瞬間に全身鏡に
かけられていたカバーが外された。
純子はドキドキしながら鑑の前に立った。
「ええ?うそ・・・。これが女になった僕?」
純子はあまりにもキュートな娘になった自分の姿に見とれてうっとりしていた。
心の奥底から陶酔感に包まれていたのだ。

「ねえ、純子?こんな可愛いお姫様が僕って自分のことを呼ぶのはおかしいわ。
 もうおんな言葉をお使いなさい?女の子は自分のことをあたしって言うのよ。」
ずっと我慢していた。のどの奥まで何度も出かかってきたのを抑えていた。
でももういいよね?もう自分を男の世界から解放してあげよう。
僕は・・・あたしは女の世界の仲間入りをしたんだわ。あたしはもう女よ。
「あたし・・・あたし、こんなに綺麗になれるなんて思わなかった・・わ。
 素敵・・。あたし・・・女になれてうれしい。」
「明日からは素直にスカートをはく気になったでしょう?」
「ええ、もちろんよ。あたし、ずっとはきたいのを我慢していたの・・。」

うっとりして鏡を見つめる純子の指に美穂はマニキュアを塗ってあげた。
それはドレスにあわせた真っ赤なマニキュアだった。
「綺麗よ、純子。貴女を見た男の子はきっと夢中になるわ。女になれてよかったね。」
「ええ、ありがとう、美穂・・。」
「さあ、お母さまたちが待っているわ。レストランに行きましょう?」
純子は化粧道具を詰めたポーチを持って初めてのハイヒールで歩き出した。
「ハイヒールって歩きづらいのね・・。」
「すぐに慣れるわよ。気を付けないとがに股になるわよ?
 つま先に重心をかけるように歩いてご覧なさい?」
慣れないハイヒールで歩くことは純子を自然とおしとやかに変えていった。

美穂に手を引かれ和やかに談笑している智恵子の前に歩み出た純子は
ドレスのスカートの裾を持って挨拶した。
「お母さん、あたし・・・今日から女になります。
 ふつつかな娘ですけどこれからよろしくお願いいます・・・。」
智恵子はしばらく純子の姿に見とれてから満足そうな微笑みを浮かべた。
「純子、とっても綺麗よ。美穂ちゃんには悪いけど世界一の美少女になったわ。
 どう、始めて着たドレスの感触は?」
「このドレスはすごいミニでしょう?むき出しになった足を他の人から
 見られているようで、ちょっと恥ずかしいわ・・・。」
「その恥じらいが女らしさを生むのよ。高倉さん、あたしの娘は綺麗でしょう?」
あまりに艶やかに変身してしまった純子を見て高倉はしばらく唖然としていた。

「・・・ああ、とっても素敵だ。まだ信じられないよ。
 始めて防衛隊にやってきた時は負けん気の強い男の子だったのに・・・。
 それがこんな素敵なお嬢さんになってしまうんだ、人生ってわからないものだ。」
「教官・・なんだかこんな姿で教官と呼ぶのは照れちゃうわ。
 高倉のおじさま、あたしは女になってやっとわかったの。
 あたしはずっとこんな世界にあこがれていたみたい。
 綺麗に着飾って優しい娘になることをどこかで望んでいたのかもしれない。
 でも男に生まれたからには女々しいことっていけないことだと思っていたのね。
 だから必要以上に男っぽく振る舞っていたみたい。
 これからはもう自分の欲求には逆らわないことにしたの。
 あたしは女になれて幸せです・・・。」
純子はいつのまにか涙ぐんでいた。
高倉は純子の手を握りしめて何度もうなずいていた。
智恵子も美穂ももらい泣きしながら純子が女になれたことを心から祝っていた。

やがて智恵子は涙を拭い一同に言った。
「さあ、今夜は純子の娘デビューのお祝いよ。湿っぽくならないで
 楽しくお食事をいただきましょう。純子、高倉さんにお酌しておあげ。」
「はーい、お母さん。おじさま、どうぞ。」
純子はなれない手つきでお酌をしながら、今後はこんな光景が増えることを
予感した。男性なら誰でも若い女性にお酌してもらうことはうれしいのだ。

食事の途中、美穂は純子をトイレに誘った。
純子の化粧がはげかかっていたので直させてあげようとの配慮だった。
ホテルの婦人化粧室はとても豪華だった。金色に光る流し台、
品のいい薄いピンク色のタイルには薔薇の絵が描かれていた。
「ねえ、美穂?あたし今夜はお姫様になった気分よ?」
「ええ、今夜だけはお姫様の座をあなたに譲ってあげる。
 でも日本に帰ったら今度は女としてのライバルよ。
 さあ、お化粧を直しなさい。せっかくの美少女が台無しになるわよ?」

純子は化粧ポーチからコンパクトを取りだし、なれない手つきでファンデーションを
肌に伸ばしていった。その仕草はとても女らしいものであった。
紅筆にとった赤いルージュを塗りながら唇を開いたりすぼめたりすることは
女でなければ出来ない作業であった。
純子は女の世界の素晴らしさに感激した。
こんなに素敵な世界なら女として産んでもらいたかったとさえ思った。

その夜は純子にとって一生忘れられない素晴らしい夜となった。
ついにこの香港で純子は「おんな」になれたのだ。
純子は男であった時の記憶をすべてを捨て去り女になりきる覚悟をした。

次の朝はホテルの窓辺から差し込む朝日で目が覚めた。
ネグリジェ姿でトイレに行き、座って用足しを済ませた。そして洗面所で顔を洗った。
基礎化粧品で整った肌はつるつるに変わっている。
前日に美穂から巻いてもらったカーラーが髪に巻かれていた。
眉もほとんどない素顔は純子は自分が女であることを感じさせていた。

(CHAPTER-11)

先に起きていた美穂は純子を鏡台の前に呼んだ。
「今日からお化粧の練習をしましょう。早く自分一人で出来るようにならないとね?」
純子は鏡台の前に座り髪をヘアバンドでアップにまとめた。
コットンにとった化粧水を顔にこまめにパッティングする指先はなまめかしい。
美穂から教わった「女らしく見えるポーズ」である膝をぴったりとつけて横に流して
座る姿は女の上品さがにじみ出ていた。

純子はファンデーションを顔に塗りながら、鏡の中の自分が美しく変わっていく姿に
うっとりしていた。お化粧って楽しい。これからは毎日出来るんだわ・・。
純子は念入りなアイメイクを済ませ口紅に取りかかった。
唇を軽く開けて紅筆にとった赤いルージュを外側から丁寧に輪郭を描き、
続いて唇の内側を赤く埋めていった。口紅は最も女らしいアイテムだ。
純子は口紅を塗るたびに女になっていく自分に喜びを感じていた。
美穂の丁寧なアドバイスを聞きながら純子はなんとか一人でお化粧を終了した。

純子は前髪につけてあったカーラーを外し、髪を根本から毛先に向かって入念に
ブラッシングしていった。内巻きにカールされた髪は女らしい魅力をアップさせた。
純子は美穂の出してくれた服に着替え始めた。
今日の衣装はパフスリーブで胸元にレースを使い女らしさを強調したブラウス、
それに赤いミニのフレアースカートだった。
スカートに足を通し腰まで上げて後ろでホックを閉じる。
「あたしはスカートをはけるようになったのね・・。」

純子は全身鏡の前に立って自分の姿をチェックした。
ブラウスから胸元のブラジャーが透けて見える。
その下には思春期の女の子のように膨らんでいる乳房があった。
赤いミニスカートは座ると太ももが露わになる。
パンティストッキングのナイロンの感触は心をときめかせる。
そのつま先には美穂に塗ってもらった赤いペディキュアが光っている。
耳元には可愛いイヤリングがついている。
全身鏡に美しく装った自分を映し、おかしい所がないかおしゃれのチェックをした。
スカートのウエストの位置を直しパンティストッキングのつま先のねじれも直した。
純子はしなやかな髪を書きあげてうっとりしながら鏡の中の女性に微笑んでいた。
「美穂、女ってステキ。あたし、女になれて幸せよ・・。」
「朝食をいただきに行きましょう、もうお母さんたちが待ってるわよ。」

ミニスカートをはいて歩くことはとても新鮮だ。
男の時のズボンと違いすごく軽いのだ。まるで何もはいてないような錯覚さえ覚える。
かかとの高いサンダルも自然に足取りが軽くなっていくようであった。

ホテルのレストランで智恵子たちと合流した。
「ねえ、お母さん?あたし今日は始めて自分でお化粧したのよ?
 どう、うまく出来てるでしょう?」
うれしそうに話す純子の姿を見て母はにっこり笑った。
「ええ、なかなかお上手よ。でもよく見ると肌にむらがあるわよ?
 毎日お化粧していくうちにきっとなれるわよ。」
「おじさま、あたしのミニスカート姿はいかが?」
高倉は横に座った純子の露わになった太ももを見て一瞬どきっとした。
脂肪が乗り切った白い足はとても魅力的なのだ。
「ああ・・・でも若い女の子はあまり肌を晒すんじゃないよ・・。」
「まあ、おじさまったらまるでお父さんみたい・・・。」
高倉は明らかに照れているように見えた。

朝食が終わった一同は観光巡りに出かけることになった。
ホテルを出るときにフロントのキーを渡しながら、フロント係のローリーは
昨日見た素敵な男の子の姿を探した。
「あのう、ジュンさんは今日はお出かけしないのですか?」
美穂は悪戯っぽい笑顔を浮かべて純子を指した。
「ここにいるでしょう?」
ミニスカートをはいて綺麗にお化粧した美少女が首を横に曲げて挨拶した。
ローリーは「美少年JUN」の一晩の変貌に驚いていた。
かっての戦場の勇士はいまではミニスカートをはいたキュートな美少女になっていたのだ。

4人は仲良く香港観光を楽しんだ。観光、グルメ、ショッピングと三拍子そろった
ここホンコンは短期間では遊びきれないほど魅力的な場所だ。
オーブンホーガーデン、レパルスベイと言った名所を訪ねてから飲茶の昼食、
しばらくショッピングを楽しんでからスターフェリーに乗船し香港島に向かう。
2階建ての路面電車に乗りきらびやかなネイザンロードを車中から楽しんだ。

純子は自分が少し前までは男性であったことを忘れかけていた。
この香港では自分を知ってる人はいないので思い切って若い女性になりきることが
できたのだ。母や美穂から女らしいしぐさを少しずつ教え込まれていく。
女のように歩き、女のように話をして、女のように行動をすることを学んでいった。
若い娘としてショッピングや観光巡りをすることはとても素晴らしいことだった。

夜は水上レストランで豪華な海鮮料理を楽しんだ。
純子と美穂は仲良しの姉妹のように窓辺で綺麗な夜景に見とれていた。
そんな姿を見つめていた智恵子は高倉に言った。
「あの子がこんなにうれしそうにはしゃぐ姿を見るのは初めてです。
 男っぽい子だと思っていたのにあの子には女の心が宿っていたのかしら?」
「今まで無理に男らしく振る舞って来たことの反動でしょう。
 心の中に秘めていた女の部分をずっと押さえて生きてきたのでしょうね。
 自らに厳しくしてきたことからやっと解放されたのです。
 異国であるこの地を変身の場所に選んだことは正解です。
 これが日本では周囲に気を使いあそこまで女らしくなれなかったでしょう。
 純子はやっと本当の自分を見つけたのではないでしょうか?
 あの姿こそあの子がずっと心の中で望んでいた世界なんですよ。」
「こんなことならあの子を女の子に産んであげればよかったわね・・。」
「純子はまだ若いからきっとやり直しが効きます。
 これから我々で優しく見守ってあげましょう。」

智恵子は高倉が「我々」と言った言葉に気がついた。
「高倉さん。これからも時々会って下さいますか?
 あの子は父親に甘えたことがないのです。もしよろしければ
 父親代わりになってあの子の頼りになってくださいませんか?」
「・・・はい、いいですよ。」
高倉は言葉の裏に智恵子が自分を慕っていることを感じていた。
高倉も智恵子の品のある女らしさに惹かれていたのだ。
 

(CHAPTER-12)

次の日は一日ショッピングに明け暮れた。
有名なショッピング・ゾーンである「ハリウッドストリート」「キャッツストリート」
それからブランド品にあふれた「ランドマーク」「ペダーヒル」・・。
「プラネットハリウッド」でのカリフォルニア料理の昼食を挟んで
午後はファクトリーアウトレットでシルク製品を、そして化粧品の
ディスカウントショップ「ササ・コスメティック」・・・。

純子は以前はなぜ女性がショッピングを楽しいと思うのか理解が出来なかった。
美穂に連れ歩かされた男性時代は待っている時間が惜しいような気もした。
それが女になった今ではやっと理解出来る。
綺麗な物、可愛い物、いろんなおしゃれな物を身につけてみて鏡に映る自分を見て
ショッピングを楽しんだ。ブランド品のバッグも買ってもらい上機嫌だ。
その日の夕食は北京ダックを含む北京料理を堪能した。
滅多に飲まないアルコールに酔ってしまた純子は高倉の首に腕を回して甘えていた。
「ねえ、おじさま?あたしたちって家族みたいだね?
 あたしみたいな可愛い娘が欲しくない?」
純子の胸元から甘い香水の香りが高倉の鼻腔をついた。
「大人をあんまりからかうんじゃないよ・・。」

純子の言うとおり旅の終わりの頃には4人は同じ家族のような錯覚を覚えるほど、
仲良くなっていたのだ。母と高倉とはとても親密な感じになっている。
純子は高倉が新しいお父さんになってもいいとさえ思ってしまった。
きっと天国のお父さんも親友の高倉さんなら許してくれるよね?

楽しかった観光旅行も終わり一同は帰路につくこととなった。
日本に帰る飛行機に乗るときはパスポートの顔写真とあまりにも違ってしまうため
純子は化粧を落とし最後の男の姿となった。
しかし、女っぽい仕草はもう抜けないようで他から見ると少々不自然な感じもした。
それほど純子は香港で内なる女性に目覚めてしまったようだ。
空港を出るときには「早くスカート姿に戻りたい」と子供っぽいダダをこねて
一同を笑わせていた。
日本に戻ったら純子は花屋の娘として新しいスタートを切ることになったのだ。

楽しかった旅を終えて家についた純子と智恵子はしばらくの間、荷物の整理をした。
作業も終わり一段落すると智恵子は純子の手を引いて部屋に連れていった。
「さあ、着がえましょう。早く男の服を脱いで女の子に戻りたいでしょう?」
純子はにっこり笑って背広を脱ぎ捨てた。それはもう2度と着ることのない男の服だった。

母はタンスの中からピンクのギンガムチェックのワンピースを取りだして純子に着せた。
膝上20cm以上あるミニのスカート丈はしゃがむと下着が見えそうなくらい短かった。
智恵子に渡されたピンク色のハイソックスをつけて鏡を見た純子はつぶやいた。
「お母さん、このお洋服は子供っぽいんじゃない?あたしは23歳なんだよ?」
「純子、ここへお座りなさい。」
智恵子は鏡台の前に純子を座らせて髪をとかし始めた。

「あなたは女の一番楽しい時期である少女時代を経験していないでしょう?
 これから女の人生を歩んでいくためには娘時代からやり直すのが一番よ。
 あなたは女の子なのに女らしいしつけを何も受けていない。
 今日からしばらくはお母さんがあなたに女の子としての教育をしてあげる。」
智恵子は純子の前髪を何本か降ろして残りの髪を両サイドにまとめてゴムで結び
耳の上に二つのおさげを作った。結び目には可愛い赤いリボンをつけてくれた。
「お化粧はあまり濃いと不自然だからマツゲのカールとリップだけでいいわね?」
智恵子は手際よく清楚な化粧を純子の顔に施してあげた。
「どう、純子。とっても可愛いわよ。」

鏡の中の純子はまるでおしゃまな小学生の女の子のように見えた。
顔を動かすたびに耳元のおさげが優しく揺れた。
「お母さん・・・。あたしはお母さんの娘としてやりなおすのね。」
純子はうれしさで母の胸の中に飛び込んで甘えていた。

純子は花柄のエプロンを身につけて台所に立っていた。
母の最初の授業はお料理だ。純子は始めて握った包丁を相手に苦戦していた。
「お母さん、包丁を使うのは飛行機の操作より難しいよ・・。」
「あせらなくても良いの。あなたはまだ女の子になったばかりですものね。」
純子は積極的に女の子としての自分を受け入れる気になった。
普通の女の子なら子供の時から母親に女性的なことを教わっているはずだ。
出来ることなら小学校の女の子になって家庭科の授業を受けてみたいとさえ思った。

次の日は裁縫の練習だった。ボタンつけ一つ出来ない純子に母は裁縫の基礎から
教え込んでいた。純子は針と糸を使いこなすことに悪戦苦闘した。
小学生の女の子がやるようなレベルのことをさせられるのは23歳の純子にとって
屈辱であるはずだった。
しかし智恵子から子供っぽい装いをさせられると抵抗する気にはなれなかった。
今日はピンクの水玉のエプロンドレスを着せられていたのだ。
髪型は昨日と同じ前髪を降ろした二つのおさげだった。
純子はこのヘアスタイルが気に入ってしまったのだ。

美穂が店にやってきた時はミシンかけの練習の途中だった。
「あ・・・美穂ちゃん。あたしのこんな格好を見て笑わないでね・・。」
「純子ちゃん、とっても可愛いわよ。」
美穂は以前の男らしい婚約者が今は幼い少女のような服装で一生懸命女性になろうと
している姿を見ていじらしいと思った。純子が男性時代には何度か甘えさせてもらった。
これからは私がこの人を甘えさせてあげよう・・・。
「純子ちゃん、お母さんが忙しい時はあたしが手伝ってあげるよ。」
それからは時間が出来ると美穂はまるで年下の妹のように優しく純子に女の子になる
授業の先生役を買ってでてくれた。掃除や洗濯するときも付きっきりでアドバイスしてくれたのだ。

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