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イマジン  by Reika Marie


(CHAPTER-4)

数日後、純はやっと上半身だけ置きあがれるようになった。
なんだか妙な気分だ。以前と違う胸の重量感、股間の無力感、顔に巻かれた包帯。
「純、ご機嫌はどうかしら?」
つきそいの美穂に聞かれた純はハスキーなかすれた声でつぶやいた。
「最悪だよ・・・。バケツでビールを飲んで二日酔いが抜けないような感じかな?」
 頭は痛いし吐き気もする。身体中が痛いよ。自分の身体ではないみたいだ。」
「勇敢な王子様から美しいお姫様に生まれ変わるんだもの、少しは我慢しなさい。
 お医者はあなたが回復するまで一週間程度は必要だと言っていたわ。
 それから私たちは家に戻り、女同士として新しい生活を始めましょうね。」

次の朝、医者や看護婦たちが純を取り巻いていた。
「これから貴女の胸と股間、それに顔の包帯を外します。」
数分後、医師の内診が済み手術は完璧に成功したことを伝えてくれた。
純は胸が解放されると膨らんだ乳房に手をあててみた。ぐにゃっとした感触は
今までにないものだった。それは女らしく感じやすい女性の乳房になっていたのだ。
中年の看護婦は純の胸を見ながら言った。
「すごく素敵な形をしてるじゃない?私の中学生の娘より大きいわ。」
純は恥ずかしくて真っ赤になりうつむいていた。

午後になり美穂がやってきた。
「美穂、看護婦さんは僕に鏡を見せてくれないんだよ。変な顔になっちゃったのかな・・。」
「さっき、ナースステーションに顔を出した時に言われたわ。
 まだ手術をした時の顔の腫れが引いていないので今日は鏡を見せないほうが
 いいって言われたわ。明日になれば腫れも退くそうよ。」
3時を過ぎたころ、十朱女医がやってきた。手には奇妙なプラスチックの棒を持っていた。

「美穂さん、良いときに来てくれたわね?これからいっしょに話を聞いてちょうだい。」
十朱女医はベッドの回りのカーテンを引いて外から見えないように気を使ったあとに
純の股間を露わにした。純はまだ生まれ変わった新しい股間を見る勇気はなかった。
「純さん、とっても綺麗な形になってるわよ。
 今日からあなたにしてもらうことがあるの。恥ずかしくてもやらないとダメよ。」
十朱女医は張り形のようなものにゼリーを塗って純の股間に挿入した。
あまりの痛さに純は呻き声を発してしまった。
「あなたはこれから半年、毎日2度はこの作業を行って下さい。
 これをしないと膣が癒着してしまう可能性があるのです。」
 さあ、自分でやってみなさい?」

純は屈辱に震えながらプラスチックの棒を前後させた。
「この作業は最初の時、非常に痛みを伴います。でもあなたがこれから
 セックスの時にオーガニズムを感じるためには必要なのよ。」
「僕にはオーガズムなんて必要ないです・・。」
「そんな駄々をこねては行けないわ。もっと素直になりなさい?」
十朱女医は装置を抜き取り、足を開いて純に生まれ変わった股間を見るように言った。
ゆっくりと視線を降ろすとそこには柔らかくて優しい花びらが裂け目を囲んでいた。
純はショックで思わず目をつぶってしまった。
剃毛された股間はまるで幼女のようになってしまったのだ。

「ねえ、純さん?そろそろ気持ちを切り替えてもらわないと困るわ。
 もう身体は女性になったのだから気持ちも少しづつ女性になっていかないとね。
 気持ちを切り替えるために名前も変えたほうがいいでしょう?
 あとでお母さんと相談しておきなさい。」
十朱女医が部屋から出ていったあとに純は沈黙してしまった。
恥ずかしい部分を美穂に見られてしまったからだ。
美穂はなんとか純を元気付けようと思った。
「なんでそんなに恥ずかしがる必要があるの?純の股間についてるものはあたしと同じなのよ?
 異性に見せびらかすわけじゃないでしょう?あたしたちは女同士になったのよ。」
「ごめん、美穂。しばらく僕を一人にしてくれないか?」
「ええ、わかったわ。夕方になったらお母様が着替えを持って来て下さるそうよ。
 それまでに気持ちを切り替えておいてね?」
純は放心状態で頭を縦に振った。

純は窓際に飾られている花を見てとても綺麗であると思った。
部屋の中が殺風景なので美穂が持ってきてくれたクマのぬいぐるみが可愛いと思った。
それは以前とは違う感情なのだ。可愛い物、綺麗な物がとても愛おしく思える。
見る物すべてが新鮮なのだ。それは女性ホルモンの投与によって感情が少しづつ
女性的になってきたことの証明だった。

美穂に入院生活が退屈なので週刊誌を買って来てもらったことを思い出した。
袋を開けるとそれは女性誌だった。苦笑いを浮かべながら読み始めた純は
次第に女性の華やかな生活にあこがれのような気持ちが芽生えてきた。
お化粧の特集記事には特に興味を示した。今までは考えたこともなかったことだ。
女の生活って思ったより悪くなさそうだね・・・。

夕日が部屋に射し込むころ、純の病室に花を手にした訪問者がやってきた。
「純、見舞いにきてやったぞ。」
「・・・中井。」
それは同じ防衛隊の中井だった。中井と純はライバル関係にあり
ずっとエース・パイロットの座を競いあってきたのだ。
「どんないい女になったか期待してきたけど前よりブスなツラしてるな。
 そんな顔では厚化粧でごまかさないと男から声をかけてもらえないぜ。」
純は抜糸したばかりで紫色に腫れ上がった顔を中井に見られたことが悔しかった。

「戦争のヒーローも女になっては台無しだよな。上官は人を見る目がない。
 前からお前より俺の方が腕がいいと思っていたぜ。
 今回の出撃は俺に行かせれば良かったんだ。俺だったらお前のように敵の攻撃を食らったりしない。
 いいか、純?今後は俺がエース・パイロットだ。もう女になったお前には出番はなさそうだからな・・。」
「中井、わざわざそんなことを言いに来たのか?帰ってくれ!」
「そんな、女みたいにヒステリーを起こすなよ?もっとももうお前は女だったな、ははは!」
純を舐めるように見つめた中井は嘲笑しながら部屋から去っていった。
純は悔しくて中井が見舞いに持ってきた花を放り捨てた。

(CHAPTER-5)

母の智恵子がやってきた時、純は悔しさに耐えていた。
「どうしたの、純ちゃん?」
純は震えているだけで黙っていたままだった。
智恵子は投げ捨ててあった花を拾い花瓶にしてくれた。
純のベッドに腰をかけた智恵子は優しく肩を抱いた。
「純ちゃん、お花に罪はないでしょう?こんなことをしては可哀想よ。
 ねえ、いつまで強がっているの?悔しいことがあったらお母さんに話してごらんなさい?
 もうあなたは女になったのだから甘えてくれてもいいんじゃないの?」
純は小さな声でつぶやいた。
「僕は・・どうやって甘えたらいいか知らないんだ。」
「そうだったわね。ずっと男らしく育てられたから甘えたことがなかったのね。
 可哀想なことをしちゃったわ。甘えるっていうことはね・・・自分がしたいことを
 我慢しないで相手にぶつけていいの。純ちゃんは今、何をしたい?」

純はためらったあと、そっと母に言った。
「お母さんの胸の中で泣いてみたいよ・・。」
「いいのよ、さあおいで?」
智恵子は純の身体を優しく包み込んでくれた。子供の頃に感じた母の懐かしい香りがした。
「・・・お母さん!」
純は母の胸に顔を埋めて泣き出した。

「ねえ、お母さん。さっきね、防衛隊のライバルがやってきたんだ。
 女になったことで僕をさんざん侮辱されちゃったよ。なんで女であることは差別されなければいけないの?
 それに僕のことをブスって言ったんだよ?そんなに僕はひどい顔になっちゃったの?」

「純、心配しないでいいの。お母さんがあなたの顔を前より綺麗にしてあげたくて
 お顔を何ヶ所かいじってもらったの。まだ腫れがひいていないだけよ。
 きっと明日になれば可愛い顔に生まれ変わっているはずよ。」
「お母さん、僕はいつか綺麗になってあいつを見返してやりたい・・・。」
「ええ、これからお化粧を覚えてもっと綺麗になりましょうね。」
純はそれから今日あったいくつもの屈辱的な出来事についてすべてを語った。
グチはいつまでも続いたが母は親身になって話を聞いてくれた。

智恵子は純の髪をさすりながら優しく言ってくれた。
「純ちゃん、女性は感情的な生き物なの。あなたの身体の中にはお母さんと同じ
 女性ホルモンが流れ出しているのよ。もう感情を抑えないで泣きたいときには
 泣いてもいいのよ。素直になっていいの。」
「ありがとう、お母さん。言いたいことを全部吐き出したら気が楽になったよ。」

それから智恵子はまだ入浴の出来ない純の身体を濡れたタオルで拭いてくれた。
純はもう母の前では恥ずかしがらないで素直に自分の女らしく変わったボディを
晒していた。乳房を拭かれるときも照れることはなかった。
「あたしにも娘がいたらって思ったことがあるの。
 厳しく育てられた純とはほとんど会話がなかったでしょう?
 これからは母と娘になるんだから何でも気楽に話してちょうだいね。」
「うん、お母さん。こちらこそ人には言えない悩みごとを相談させてもらうよ。」

身体を吹き終えた智恵子は持ってきた紙袋から女性用の下着を取りだした。
「お母さん、それを僕がつけるの・・・?」
「そうよ、看護婦さんから今夜から普通の格好にして良いと言われていたの。
智恵子は最初の袋を開けてペアのブラジャーとパンティを手に取った。
「いやだよ・・・僕はそんな下着はつけたくないよ・・・。」
「この下着はあなたが新しい人生を送るためには身につけなければならないものよ。
 それにブラジャーはあなたのまだ感じやすい胸を心地よくサポートしてくれるわ。
 さっき身体を拭いていた時に感じていたでしょう?」
純はうつむいてうなずいた。

純は嫌がりながら母に薄いラベンダー色のショーツをはかしてもらいヒップの上に滑らせた。
その感触は非常に柔らかくて軽くとても心地良いものだった。
次のデリケートな下着であるブラジャーはショーツと色で出来ていた。
智恵子は戸惑う純にブラジャーのつけかたを教えてくれた。
「最初に後ろ向きにブラジャーをつけるの。背中のベルトのホックを締めたら
 ぐるっとそれを回転させるの。そして肩紐に腕を通してカップの中に乳房を入れて、
 最後に肩紐の長さを調整するのよ。」
大きく膨らんだ乳房をブラジャーは優しく包み込んでくれた。
「なんだか締め付けられるようで変な気分だよ・・・。」
「すぐになれるわよ。レディはブラジャーなしでは外を歩けないわよ。」

智恵子は次に純の頭から白いスリップをかぶせてくれた。
裾にレースを使ったとってももキュートなデザインであった。
Aラインを描くシルエットは女性特有の線を持っている。
始めてつけたナイロンの下着は純の肌にとても心地よかった。
裾にあしらわれたレースは動くたびに腿を優しく撫でていてくれる。
細い肩紐は純のボディをきゃしゃでか弱い女性に変えてしまった。

「さあ、パジャマを着てちょうだい。可愛いでしょう、これ?」
それは水色の水玉模様が入った女の子っぽいデザインであった。
襟元と袖口には小さなフリルが入っていた。
「お母さん、ちょっとそれは・・・・。」
「あたしは娘が出来たらこんな可愛いパジャマを着せてあげたいと思っていたの。
 お願い、お母さんに着せて見せてよ。」
純はふてくされたそぶりを見せて嫌々がって身につけた。
しかし心の中では不思議なときめきがあった。
「・・どぅ、お母さん。やっぱりおかしいでしょう?」
「すごく可愛いわよ。やっぱりお母さんの思った通りだわ。
 あなたには少し子供っぽいデザインのほうがお似合いなのよ。」
純は今まで自分が可愛いなんて言われたことがなかったのでドキドキしていた。

「こんな身体になってはパイロットの仕事はもう出来そうもないよね。
 あんな荒々しい仕事は二度としたくない。防衛隊をやめてお母さんのそばで
 働きたいけどいいかな?綺麗なお花に囲まれて仕事がしてみたいんだ。」
「ええ、いいわよ。お母さんも純をそばに置いて女らしいしつけをしてあげたいわ。
 美穂ちゃんといっしょに女同士で楽しくお仕事をしましょうね。」
「お母さんと話をしていると女になることへの不安が消えていくよ。
 今までこんなにお話をしたことはなかったよね。
 女になって気がついたんだけれど、お母さんって・・綺麗だね。」
「気がつくのが遅いわよ。それだけでも女になった甲斐があるわ。」
いつのまにか母と純との会話は、母と娘のようなものになっていた。
とても和やかで楽しい気分だ。女性がおしゃべりに夢中になるのもわかる気がした。

やがて母が帰る時間になった。帰り際に母は思い出した。
「ねえ、純。美穂さんから新しい名前を付けることを聞いたわ。
 あなたが生まれる時に男の子なら純、女の子なら純子にするつもりだったの。
 地味な名前だし安易なようだけど純子っていう名前にしてくれないかしら?
 きっと天国のお父さんも喜んでくれると思うの。」
「純子・・。お母さんがいいなら僕はかまわないよ。
 ねえ、お願い。こうやってお母さんに甘えていることを美穂にはまだ黙っていて欲しいんだ・・。」
「ええ、いいわよ。お休みなさい、純子。」
「はい、お母さん・・。」
純は女性名の純子と呼ばれて照れてしまった。これから自分は純子と呼ばれるんだ。
生まれて始めて甘えることを知った純はその晩うれしさを隠せなかった。

(CHAPTER-6)

明け方近くになり純子はトイレに行きたくなり目がさめてしまった。
部屋の中で済ませるのはいやだった。それに昨夜まで感じていた顔の痛みも
今では感じなくなっていたので気分もいい。純子は外のトイレに向かった。

気がつくと男子トイレに入ってパジャマの股間を探っていた。
しかし、そこにはつかめるものは何もないのだ。
以前の習慣がまだ抜けない純子は照れ笑いを浮かべながら隣の婦人用トイレに移った。
そこの壁には男子用トイレのブルーのタイルとは違ってピンク色のタイルが貼られていた。
純子にとって新鮮な気がした。これからはピンク色に縁がありそうだね・・。
しゃがんで用を足すことは複雑な気分だった。自分の尿がどこに飛んでいくのか
検討もつかない。終わった後にペーパーでふき取ることもまだ違和感が残る。

用を済ませた純子は流しで手を洗っている時に、ふと目の前の鏡を見た。
「これは・・・誰?この女の子は・・僕?」
鏡の中には別人のように変わってしまった自分がいた。
奥二重気味の目は今ではパッチリとした二重瞼に変わっていた。
ふっくらとした頬、鋭角ぎみになったあごのライン、そして小さくなった唇。
一週間前までは戦闘的な23歳の男性だったのに、今では18歳くらいの
キュートな娘のようになってしまったのだ。それは純子にとって強烈なショックだった。

「勇敢な王子様から美しいお姫様に生まれ変わるんだもの、少しは我慢しなさい。」
純子は手術を終えたばかりの時に美穂から言われた言葉を思い出していた。
美穂の言ったとおりだった。自分は本当にお姫様になってしまったみたい。
純子は鏡から少し下がって新しいボディの全体を見ることにした。
背中のラインは緩いカーブを描いており、妙にヒップの大きさが気になった。
純子は鏡の前で前髪を降ろしてみた。
すると男っぽい眉が消えてもっとフェミニンな顔立ちになった。
純子は新しい自分の姿に見とれていつまでも鏡の前から離れることが出来なかった。

朝の診察になり十朱女医が若い看護婦のありさを連れてやってきた。
ありさは純が性転換手術を受けてからずっと看護をしてくれており、
まだ20歳になったばかりの元気な女の子だ。
十朱女医は顔の腫れがひいた純子の顔を見てうれしそうに微笑んだ。
「思った通りだわ。すごく可愛いお顔になったじゃない?
 これならきっと男性からもてるわよ。うれしいでしょう?」
「はい・・・。自分でも驚いています・・。」
「純子ちゃんという名前に決まったのね。女らしくて清楚な素敵な名前じゃない?
 昨日、お母様が帰る時にナースステーションに寄って教えてくれたのよ。」
ありさはベッドの後ろにあるネームプレートを新しい名前に交換した。
そこには「浅香 純子(FEMALE)」と書かれていた。
純子の胸には感慨深いものがこみ上げてきた。
「ありささんはこれで夜勤が終わりでしょう?
 帰る前に純子ちゃんの身だしなみを整えてあげてちょうだい。」
「はい、先生。あたしにまかせてください!」

ありさは純子の顔を見つめてから一度部屋から去り、一通りの検診を終えてから
再び戻ってきた。その手には化粧ポーチを持っていた。
「純子ちゃんの眉はまだ男の子のままだよね。もうお肌も落ち着いたようだから
 女らしい眉にしてみようか?綺麗になるためだからちょっと我慢するのよ?」
ありさは毛抜きを使って純子の眉の下側を抜いていった。
それから眉コームと小さなハサミを使って眉の形を整えた。
カットが終わったときには純子の眉はほっそりとした緩いアーチ型に変わっていた。

続いてヘアブラシを取り出して純子の乱れた髪を丁寧にすいていった。
毛先を伸ばして内巻き気味にクセをつけていくと純子の髪は
ボーイッシュな少女のように変わってしまった。
「どう、ずいぶん感じが変わったでしょう?」
サイドテーブルに置かれてあった手鏡をありさから受け取った純子は眉と髪型を
変えただけで表情が一変して女性らしくなってしまったことに驚いてしまった。
「入院患者のお化粧は禁止されているけど、リップくらいならかまわないのよ。
 これをあげるから純子ちゃんが自分でつけてごらんなさい?」
ありさから手渡されたのは、ピンク色のリップクリームだった。

口をゆっくりと開けてどきどきしながら純子はリップを唇にさしていった。
さし終わると純子の唇は薄いピンク色に光っていた。
「とっても素敵よ、純子ちゃん。きっとお母さんや美穂さんが見たら驚くわ。
 なれなれしく純子ちゃんなんて呼んでごめんね?
 だって純子ちゃんはどう見てもあたしより3つも年上には見えないの。
 まだ女子校を出たばかりの初々しい女の子のようなんだもの。」
年下の女性から子供扱いされることは以前なら屈辱だっただろう。
でも今の純子にはとてもうれしく感じていた。
「・・・ありがとう、ありささん。女の子の生活って思ったより楽しそうだね。
 なんだかわくわくしてきちゃった・・・。」
「純子ちゃんはまだ女の子に生まれ変わったばかりだから、きっと毎日が
 刺激的だと思うよ。これからたっぷりおしゃれを楽しんでみなさいよ。」

それから二人は仲良くいろんなおしゃべりをした。
「純子ちゃんは前はパイロットをしていたのだったわね?
 自由に空を飛び回るってきっと素敵なんでしょうね。
 あたしは子供の頃、スチュワーデスにあこがれていたんだよ。
 あんな素敵な制服を着て世界中を飛び回って見たかったんだ。
 でも英語が出来なくて諦めちゃったの。
 純子ちゃんはどんな夢を持っていたの?」
純子は自分の子供時代のどんな夢を持っていたか思い出すことが出来なかった。
物心ついた時には父からスパルタ教育されて防衛隊に入隊を勧めたのも父だった。
もし自分が女の子に生まれていたらどんな夢を持っていただろう?
お父さんは僕をどんな風に育ててくれたのかな?
固い人だったからきっと婦人自衛官や婦人警官だったかな?

ありさとの会話はとても楽しかった。純は自分のことを普通の女の子として
対等に話をしてくれるありさの優しさがうれしかった。
やがてありさは帰る時間になった。純子はもっとおしゃべりをしたかった。
「ねえ、ありさちゃん。これから退院しても時々いっしょにお話してくれる?」
「ええ、純子ちゃんはまだ同性の友達って美穂さんだけでしょう?
 同性の友達は多いほうがいいわ。あたしも女友達になってあげる。」
「ありがとう、ありさちゃん・・・。」
ありさが去った後、純子は再び手鏡に映る自分の顔にうっとりしていた。

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