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未来から来た女
作:Marie



「ジュンちゃん、ずいぶん髪が伸びたわね。この前床屋さんに行ったばかりじゃない?」
「うん、成長期だから伸びるのが早いんだよ・・」
 ジュンは、自分の変化を母に悟られないように今晩も髪をカットしようと思った。

 ジュンは、美しい母の由美枝との二人暮らしであった。小さいころに両親は離婚し、由美枝は、女手一つでジュンを育てていた。今は、総合病院の婦長をしている。
 勤務が変則であるため、どうしてもすれ違いが多かった。

 このところ、家に帰ってもジュンはほとんど部屋から出てこない。
 顔を合わせても不機嫌そうな顔をして会話もなかった。
 その日、由美枝はたまにはゆっくり親子で話し合おうと早めにお店を切りあげ、自宅に戻った。ちょうどジュンが入浴から出てくるところであった。
「ジュンちゃん、今帰ったわよ。たまには、いっしょに御夕飯食べましょう。」
 その声に驚いたように、バスタオルを胸に巻いたジュンが振り向いた。
 ジュンは、なぜか真っ赤になって部屋へ走り去った。
 由美枝は、その時目を疑った。ジュンの胸が膨らんでいる・・・。

 ジュンは、自分の部屋の鏡に映る膨らんだ胸を見ながら、先日会った女性のことを思い出していた。
「あれからだ、僕の身体が変わってきたのは・・・」

 高校の帰りに渋谷の街をうろついていたら、ある女性に声をかけられた。
 その女性は特に美人という訳ではなかった。でも、その個性的な顔立ちは妙に心が惹かれてしまった。
 まるで以前から知っているような・・。

 その女性は純子と名乗った。趣味が合い話が弾んだ。その後、心の底から欲望が湧きだしてきた。
(この人を抱いてみたい・・)

「あのう、どこかで二人きりでゆっくり休みませんか?」
 彼女は、いたずらっぽく微笑んで二人はラブホテルに入った。
(こんなにうまく行くなんて・・・ラッキー!)

 部屋に入り純子は、バッグから変わったタバコを出した。
「ねえ、吸ってごらんよ。すごくハイな気分になれるよ。」
 一種のドラッグだと思い、試してみた。火を付けると甘い香りがあたりに漂った。
 次の瞬間、目のくらむような快感がジュンの身体を貫いた。

 まるで身体中が性感帯になってしまったような・・。
 ジュンは、女性を抱くのが始めてではなかった。しかし、彼女はまるで自分の身体を知り尽くしているような錯覚を覚えるほど、ジュンの急所をせめてきた。
「あああーん。」
 乳首をなめられ、下腹部をなでられて、あまりの快感に女の子のように泣き声を出していた。ジュンは、彼女とのセックスを堪能した・・。

 別れ際に彼女に言った。「ねえ、また会えるかな?」
「事情があってしばらくは会うことはできないの。でもいつか私にきっと会うことができるわ。その時にこの手紙を読んでね。さようなら。」
 そう言って彼女は一通の手紙を渡して去っていった。

 それから一週間くらいして、ジュンの身体に変化が起きてきた。髪の伸びるスピードが異常に早くなった。身体が全体的に華奢な体型に変化している。
 ウエストも細くなりズボンが緩くなっていた。そして・・・胸が思春期の女の子のように膨らんできた。

 ジュンの膨らんだ胸を見た翌日、由美枝は病院が休みだった。
「ジュンちゃん、朝御飯よ。」
 返事がないので、部屋へ行きいきなりドアを開けた。
 びっくりした表情のジュンの胸は、セーターからはっきりと胸の膨らみが確認できた。
「ねえ、その胸はいったいどうしたの?」
「・・・少し前から、膨らんできたんだ。恥ずかしくって、もう外に出られない。」
「ちょっと見せてごらん。お母さんは看護婦だから、いいでしょ?」
 しばらくしてから観念してゆっくり、セーターをめくった。
 そこには、中学生の女の子のような膨らみかけた乳房があった。
「ねえ、一度お医者様に見てもらいましょう。」

 由美枝はいやがるジュンをつれて、総合病院に行き検査をすることになった。
 上は身体の線がわからない大きめのトレーナーを着たが、ジーンズのお尻はなめらかな曲線を隠せなかった。
 病院で診察が始まった。ジュンは、検査のため薄い白衣に着替えて検査室へ行った。
 そこには、若い看護婦の美由紀がいた。
「あ、婦長さん。可愛いお嬢さんですね。」
「・・あのう、息子なの・・。」
 美由紀は、目を丸くして黙ってしまった。
 検査は、尿の採取から血液採取、口の中の粘膜をメスで切りとったりと入念に行われた。検査の結果がでるのは、一週間後であった。
 ジュンは、ほとんど部屋から出ることはなかった。

 検査結果がわかる日は、ちょうど由美枝の非番の日であった。
 病院では、担当の医師が緊張した顔で部屋で待っていた。
「お宅の息子さんのことなんですが、・・・ホルモンのバランスが崩れています。
 じつは、息子さんから採取した血液を一週間培養してみたのです。
 すると、信じられないことですが、男性ホルモンが急激に減っていき
 女性ホルモンがそれに変わって増えています。」
「そんな、信じられません。」
「特殊なウイルスのような物でしょう。こんな例はまだ聞いたことがない。」
「どうしましょう?このまま放っておくと・・」
「たぶん、この勢いでいくと数ヶ月で女性に変身するでしょうね。現代の医学ではどうすることもできません。」
 由美枝は、放心状態になり、うなだれて病院を去った。その姿を先日の若い看護婦が陰から見ていたことには気がつかなかった。

 ジュンの女性化は進んでいった。今では着られる服も少なくなっていた。
 伸びている髪ももう面倒で切っていない。おかげで胸にかかるくらいまで伸びていた。膨らんでいる胸はもう乳房と呼べるくらい大きくなっていた。乳首の先が下着にこすれて痛く感じる。もうどこにも出かけることは出来ない・・。
 ずっと部屋に閉じこもったきりであった。

 由美枝が病院で気落ちしてると、先日の看護婦が声をかけてきた。
「婦長、あの可愛らしい息子さんは、あれからいかがですか?
 実は、あの時に先生との話を偶然聞いてしまったのです。」
「え、そう・・。ねえ美由紀さん、力になってくれない?」

 その日、由美枝は美由紀を連れて家に帰った。
「ジュンちゃん、あなたにお客さんよ」
 美由紀は、ジュンの部屋になかば、強引に入った。ジュンはベッドの中から出なかった。
「初めまして、ジュンちゃん。あなたのことはお母様から聞いています。ちょっとお話したいの。顔を見せてくれない?」
 ジュンは、ゆっくり起きあがった。先日見たときとはまったく別人になっていた。
 もうほとんど、女の子になっていた。

「ねえ、ジュンちゃん。女の子になるってすごく不安だと思うの。
 でもね、おしゃれが出来たり、男の人に甘えたりけっこういいものよ。
 女の子になるのがいやなの?」
「そんな・・・。急に女になれって言っても無理だよ・・。」
「その姿ではもう、男の子として生きていくのは無理よ。このままずっと部屋の中で一生を過ごすつもりなの?あたしが手伝ってあげる。」
 美由紀はそう言って、急に自分の服を脱ぎ始めた。そして下着姿になった。

「ねえ、見て。女の子は、乳房があるでしょう? 何も付けないと恥ずかしいし乳首がこすれて痛いはずよ。あたしみたいにブラジャーをつけましょう。」
 美由紀は自分の付けていたブラジャーを外し、ジュンに差し出した。
「さあ、付けてごらん。あたしが手伝ってあげる。」
 ジュンは、美由紀の言うがままにブラの紐に腕を通した。
「いい? こうやって腕を通したら背中のホックを止めるの。慣れないうちは、前でホックを止めてから背中に回してもいいのよ。」

 初めて着けたブラジャーは、自分の胸に吸い付くような気がするほどフィットした。動いても乳房がじゃまにならないし、乳首もこすれて痛くなることはない。
 何よりもレースを使ったブラジャーのデザインが気に入った。
「上が女の子で下がトランクスでは変ね。はい、ショーツもおはきなさい。」
 ジュンは、照れながら後ろ向きではいてみた。肌触りがいい・・・。
「はい、スリップも着ようね。頭からかぶってごらん」
 膝の上でこすれるナイロンの感触にうっとりしてしまった。
「まんざらでもないようね。また明日も来て上げるね。」
 美由紀は、鏡の前で自分に見とれているジュンを後に部屋を出て行った。
 そこには、由美枝が立っていた。
「美由紀さん、ありがとう。どうやら、やっと心を開いてくれたみたいね。」
「婦長、これも看護婦のつとめですよ。」
 笑いながら、美由紀は帰っていった。

 そのころTVにニュースでは、巨大な彗星が地球に向かっていることを告げていた。
「婦長、その後ジュン君は、いかがですか?」
 由美枝は、先日の担当の医師から声をかけられた。
「ええ、お陰様で最近は、女になることをやっと決心したみたいです。」
「おそらく女性ホルモンがそろそろ脳に回ってきているはずです。
 急に女らしくなってくるはずですよ」

 ジュンは、変わっていった。以前は、過激なアクション映画が好きだったのに、最近は恋愛映画が好きになってきた。そして、主人公の女性になって涙を流すこともあった。食べ物も前は口にしなかった甘い物が好きになっていた。
 女性週刊誌のお化粧特集に目が止まった。
 ブスな女の子がお化粧で美少女に変わる写真にひかれた。
(ふーん、お化粧っておもしろそうね・・・)

 ある日、由美枝が早く帰ってきた。
「ジュンちゃん、お話があるの。あなた、最近女っぽくなってきたわね?」
 ジュンは、内股で座っていた自分に気がつき、わざとあぐらをかいた。
 最近、自然としぐさが女っぽくなっていた・・・。
「そろそろ外にお出かけたいでしょう? おしゃれしてみたくない?」
「そんなこといやだよ・・。」
 ジュンは、自分の声が高くなっているのに気がついた。まるで女の子のように。
「女の生活って、なかなかいいものよ。きっと気にいるとおもうわ。」
「・・・・・。」
 由美枝は、心の中でささやいた。
(ジュンちゃん、あなたをとびっきりの美しいレディにしてあげるわ)

 ジュンは、ひさしぶりに外出した。体型のわからないゆったりとした服を着ていた。でも服の下には、ブラジャーでつつまれた乳房があった。

 家に帰ると、驚いた。自分の部屋がまるで別の部屋になっていた。
 ピンクの壁紙、ブラウスやミニ・スカートが入っているドレッサー、お化粧道具がたくさん入った鏡台・・。まるで女の子の部屋に変わっていたのだった。
 ジュンは、その優しい雰囲気の部屋が好きになった。

 ジュンは、ずっとタンスを見つめていた。あの中におしゃれなブラウスやスカートが入っている。・・・身につけてみたい。
 でも・・。鏡の前で迷っていると、後ろに由美枝が立っていた。
「女の子になる決心がついたかしら?」
「そんな・・、まだ女になるって決めたわけじゃないよ・・。」
「いいのよ。ちょっとここにお座りなさい。」
 ジュンは、ふてくれされた顔で鏡台の前に座った。でも心はわくわくしていた。

 由美枝はお化粧を始めた。ジュンはいつのまにか女の子のように脚をそろえて座っていた。まず、ファンデーションが塗られた。とてもいい匂いでうっとりした。眉をカットして細く仕上げ、眉ずみで長く描き足した。
 ピンクのアイ・シャドウをつけ、まつげをビューラーでカールさせたあと、マスカラをたっぷりつけた。口紅は可憐なピンクだった。
 薄化粧であったが初々しい少女らしさをかもしだしていた。
 最後に髪をブラッシングし分け目を変え、髪に髪飾りをつけてくれた。
「さあ、鏡をみて・・。」
 ジュンは、ゆっくり振り向いた。

「えっ? 信じられない・・。これがわたし?」
 少女のように口に手をあててつぶやいた。そこには、可憐な少女がいた。
「どう? 素敵でしょ? さあ、これに着替えて。」
 黒のパンスト、白いブラウス、キュートなフレアーのミニスカートがあった。
(もう、後悔しない。わたし、もう女の子になる・・)

 ジュンは、しばらく鏡の中の可愛い少女に見とれていた。
(この美少女は、私なんだ・・・)
「ステキよ、ジュンちゃん。あなたは私の娘になるの。もう男の言葉はやめて、おんな言葉で話す習慣をつけるのよ。」
「そんな急に言われても・・無理よ。僕・・あたし・・まだ無理よ・・・」
「いいわ。そのうち身体の中からおんな言葉が自然に出てくるからね。」

 数日後、下腹部からの痛みがあった。トイレに駆け込むと下着が真っ赤になっていた。ついに生理が始まったらしい。
(そんな・・・生理になるなんて・・。もう男には戻れないみたいだなぁ・・)

 ジュンは、すっかり女の生活が気に入り始めていた。母の家事や洗濯の手伝いをすることがいやではなかった。
(私って、もともと女の生活が合っていたのかな・・・)
 今夜はスカート姿にフリフリのエプロンを着けて料理の手伝いをしていた。
「ジュンちゃん、その野菜、刻んでおいてね。」
「はーい、ママ。」
「もうすっかり女の子ね。」
「あら、あたしったら・・・・」
 自然に女言葉が出てくる自分に気がついた。
(もう意地を張るのはやめよう。むりして男でいる必要なんかないのよね。)

「ねえ、ジュンちゃん? ここに住んでいると昔のことが思い出されていやでしょう? ここを引っ越ししましょう。顔を少し整形して名前も変えて一から出直すの。」
「はい、わかったわ。ママ」

 顔の整形手術は順調に終わった。医師にはできれば男の子時代のイメージを残した個性的な顔にしてくれと頼んであった。これから顔の包帯が取られることになっていた。
(いよいよ新しい人生の始まりだわ・・・)

「さあ、鏡を見てご覧なさい、お嬢さん」
 ジュンは、ゆっくり目を開けた。
(ええっ? この顔は・・・)
 鏡の中には、以前に渋谷でセックスをしたあの「純子」の顔があった。

 ジュンは、バッグの中に純子からもらった手紙があったことを思い出した。
 封を開け読み始めると・・・衝撃が身体の中を走った。
「この手紙を読んでるということは、今病院のベッドの上ね。
 驚いたでしょう?私は、貴女。貴女は私なの。信じられないかも知れないけど
 私は、未来からあなたに会いに来たの。あなたを女に変えるために。

 もうすぐ彗星が地球にやってくるわ。その彗星には、凶悪な地球外人類が住んでいて、地球上の若い女の子以外はみんな殺される運命なの。あたしは生き残った少女たちといっしょにその敵と戦っているのよ。この勝負はどっちが勝つかわからない。
 ただ気がかりなのは、男の子がいなくなって、子供が産めないの。
 子孫を残さないとせっかく戦いに勝っても無意味なのよ。
 あと一年後にタイムマシンが完成するはずよ。それであたしは男の時代のあなたの精子をもらって妊娠した。そして強力な性転換ホルモン剤を服用させてあなたを女の子に変えたというわけよ。今、あなたの、そして私の子供は一歳になって私の母乳で育てています。これから大変な世の中になるわ。エックスデイがくるまではお母さんを大切にしてあげてね。」

 私は、自分で自分の子供を産む運命なのだ。お母さんといっしょにいられるのもあとわずかなんだ・・・。それまで娘として思いっきり甘えてあげよう。
 そして親孝行してあげるんだ。ジュンは、ベッドの横に書かれた名前を書き換えた。
 ジュンから純子に。


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