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虹色のイヤリング
作:Marie


 1999年のある日、第4次世界大戦は、勃発した。世界的な不景気に人々は不安感を募らせていた。それに今まではフィクションと思われていたノストラダムスの大予言がここに来て真実味を増していた。中近東のある国がアメリカに宣戦布告をして生物兵器を使ったことがきっかけで、平和のパワーバランスはみごとに崩れ去った。
「もうすぐ生物兵器が打ち込まれる。もう助かる要素はない・・・・」
 北欧のこの国でもデマが流行し、不安に耐えかねた人々が暴徒と化した。
 殺される前にやりたいことをしておこうというパニック状態になっていた・・・。

 高原に住んでいた女子中学校教師の私、ジョンは今日も平穏に授業をしていた。
 まだ教師になり立てで、22歳の若さを生かした元気な授業が人気を集めていた。
 田舎であるここでは、まだ危機感がなかった。それがついに侵略が始まった・・・。
 侵略者の集団は、略奪と殺害を繰り返していた。ついにこの高原にまでやってきた。ジョンは、生徒を連れて山へ逃げた。逃げる途中で見かけたのは、殺されていく老人や男性たちだった。

 ジョンは、山小屋に生徒たちをかくまった。ここには、食料も水もあり当分は生きていけるはずであった。
「いいかい、みんな。若い女性は、殺されることはない。どんな辛いことがあっても 生き抜くんだ。生きていればきっと希望はあるからね。」
「先生は、どうするつもりなの?」
「僕は街へ戻り、連中の目をここから目を離させる。これでお別れだね。」
「先生、また会えますよね・・・。」
「きっと、会えるよ。どんな形になっても生き抜いて見せる。」

 私は、再び街へ帰った。疲れから眠りにつこうとした時に、道路から叫び声と虐殺されている人々の絶叫の音に目覚めた。侵略者は、男たちを殺して、そして女性たちを強姦していた。私は、若い少女が数人の襲撃者によって運び去られていくのを見た。女性は、殺されることがないことに気がついた。

(こうなれば、女に変装するしか生き延びる手段がないみたいだ・・・)
 ジョンは、何件か荒らされた家に入り女性の衣装を捜した。3軒目に若い女性が住んでいたらしい家にぶつかった。金品はなくなっていたが衣服等には手がつけてないようであった。
 女性の服を身につけることは、ジョンにとって屈辱であった。男としては小柄で、
顔立ちもほっそりして女性的であったので、小さい頃から「オンナオトコ」と
バカにされていたため、男性らしさを前に出して人生を歩んできたからであった。

 タンスを開けて下着に手を掛けた。
(女性の下着までつける必要があるの?)
 心の中で迷いが生じた・・。でも、もし見つかったことを考えて、下着もつける
ことにした。女性の下着ってカラフルでいいなぁ。そんなことを考えながら、ブラジャーとショーツを身につけた。次にレースをふんだんに使ったスリップを頭からかぶった。ひざのあたりにナイロンの心地よい感触があった。
(・・僕は、なにを考えているんだ?これは生きるためにしかたなくやってることなんだ。)

 脚のむだ毛を見せないため、黒いタイツをはいてロングのワンピースを着た。
 鏡に映した自分を見て、まだ何かがたりないと思った。
 ロックバンドをやっていたから髪は長かった。でも女らしさに欠けている・・。
 以前に姉がブラッシングで髪のトップの部分にボリュームを出していたことを思い出した。確か、こんな感じだ。前髪をこうおろして、後れ毛を何本か耳の横へ流して・・・。サイドをピンで止めてセットができあがった。
 鏡台の上にあった口紅が目に入った。
(そこまで必要があるの?)
 予想外に綺麗になった自分を見て、もっと綺麗になりたいという欲望があった。
 それで口紅を塗った・・・。鏡の中には見知らぬ女性が立っていた。
 これなら、なんとか敵の目をごまかせるかもしれない・・。
 歩きづらいことを覚悟して、靴箱からパンプスを出してはいてみた。
 さあ、出かけよう。なんとか山の生徒たちを守らなければ・・・。

 通りにでると男性の死体がそこら中に転がっていた。なんで男であるだけで殺されなくっちゃならないの? なれないパンプスをはいてるうちに、自然に小さな歩幅で内股になって歩いていた。

 通りを何本か抜けたところで鮮烈なライトが自分に向けられて照らされた。
「おぉ、若い女だ!」
 ジョンは銃を持った男たちに拉致されて、車に連れ込まれた。何とか射殺されることは、逃れられたらしい。車は、山の方へ走り出した。こっちの方向だと生徒たちが危険だ・・・。

「この先には野生の狼がいて危険です。違う道をお通りなさい。この道を降りた所にホテルがあります。私を好きにしていいですよ。」
 できる限り女らしく言ってみた。
 説得は通じて、侵略者たちを山から引き返すことに成功した。

 何キロか走った所で車が止められた。ホテルの前であった。
「へへへ、姉ちゃん。アジトに行く前に楽しんで行こうぜ。交代で可愛がってやる」
 ジョンは、一人の男にホテルへ連れ込まれた。そして肩をつかまれころがされてワンピースを引き裂かれてた。ショーツをはぎ取られて、股間が露わになった。

「こ、こいつ、男だ!ふざけやがって。この野郎!」
 男は、ナイフを取り出してジョンの股間にあるモノを切り取った・・・。
 ジョンは、そのナイフを股間から抜き取り相手のノドをかききった。
(このままでは殺される・・・)
 ジョンは、家具の後ろに隠れた。しばらくして侵略者の仲間が探しに来た。
「おい、こいつ死んでるぜ・・・。さっきのワンピースを来ていた女を捜せ!」
 息を殺して見守っていたがなんとか隠し通すことができた。
 男たちはあきらめて、悪態をつきながら去っていった。
 ジョンの股間からは真っ赤な血が噴き出していた。
(僕は・・僕は、このまま死ぬのか? 女に生まれていればこんな目に会わなくてすんだのに。神様、なんで俺を女として産んでくれなかったのさ?)
 ふらふら街をさまよいながら、教会の前に出た。
 ドアを何回かノックしているうちに、意識がなくなった。

 目がさめるとベッドの上で毛布に包まれている自分に気がついた。
 部屋に美しい女性が入ってきた。
「私はシスター・ジェーンです。あなたは、教会の前で倒れていたところを助けられました。股間の出血ももう止まりましたよ。」
「ありがとう、シスター。僕の股間は、どんな状態でしたか?」
「もう、男性として生きていくことは無理でしょう。」
「そうですか・・・。」ジョンは、うなだれた。
「いいですか、もうあなたには選択の余地はありません。男でいてもまた彼らに見つかればきっと殺されるでしょう。あなたは女性として生まれかわる必要があります。それがあなたの運命です。」
「でも僕は、ペニスを失っただけで身体は男のままです。もう終わりですね・・。」
「この教会には、代々受け継がれた秘法があります。これまでにも正義のために闘って追われている男性を女性に変えて生き延びさせたことがありました。あなたにその気があればその秘法を使ってあげます。」
「・・・もう選択の余地がないって言ってましたね。あなたにおまかせします。」
「それでは、北へ向かいなさい。ここから北に30Km離れた島にその秘法を使える女性がおります。そこであなたは女性に変身するのです。」

 シスターとはいろんな話しをした。シスターには死に別れた妹がおり、私はその妹に面影が似ているらしく、とても親切にしてくれた。
 体力が回復した一週間後、私はシスターの衣装を着せられて海辺へ行った。
 途中、侵略者の集団にすれ違ったが教会関係者には、手を出さない規律があったので何事もなく通り過ぎていった。
 船に乗り込み島へ向かう前にシスターが言った。
「ここから先は、あなた一人で行くのです。これをおつけなさい。この虹色に輝くイヤリングは美を司る女神のものとされています。片方をつけて旅立つと、きっと残りのイヤリングをつけるために無事に戻って来られるという言い伝えがあります。女神様はきっと貴女をお守りしてくれるでしょう。美しい女性として帰ってくるのですよ。」
「ありがとう、シスター。きっと貴女の期待にかなうよう努力いたします。」
 私は、シスターからもらったイヤリングを右の耳に付けたあと、紹介状を受け取り、北に向かって船をこぎ始めた。

 島に着いて、いくつかの森を抜けてやっと教会を見つけた。何匹もの鹿が教会の回りを歩き回っていた。ここで・・・女になるのか・・・。
 覚悟をしてドアをノックした。ドアが空くときっと若い時はさぞかし美しかったと思われるおばあさんが出てきた。シスターからもらった紹介状を見ると、にっこり笑って家の中に通された。

「いらっしゃい、ジョン。長旅で疲れたでしょう?
 さあ、ここでゆっくりくつろぎなさい。」
 お茶が出されて、おばあさんが話し始めた。彼女はマリアという名前であった。
「ねえ、マリア。僕の身体を女性に変身させることが出来るのですか?」
「はい、ジョン。表にいた鹿をごらんになったでしょう?
 妊娠した雌鹿の尿の中には遺伝子レベルからの変換を伴う強烈なホルモンが入ってるの。ここで毎日それを摂取しているうちに貴女は女性になることが出来ます。ただ姿だけ女性になっても生きていくことは出来ません。
 心の中から自分を女らしく変えて行かなければ行けないの。いいわね。」
「はい。やってみます。もうどっちみち男には戻れない身体ですからね・・・。」

 次の日から3度の食事の時に雌鹿の尿が入ったジュースを飲まされた。味はすごく悪かったが、そのうちに慣れてきた。昼間は料理や家事をしっかりと仕込まれて夜は、女性としての生き方について教わる毎日が続いた。いつの間にか、言葉使いや仕草もフェミニンなものに変わっていった。

 ある日、朝起きた時から胸がくすぐったい感じがした。
 服を脱いでみると胸が腫れていていた。まるで思春期を迎えた少女の胸のようであった。あわててマリアの所へ行って報告した。
「マリア。私の胸が膨らんできました。」
マリアは私の服を脱がして全身を眺めた。そして言った。
「おめでとう、ジョン。身体の変化が始まりましたね。
 今日からブラジャーをおつけなさい。」
「ブラジャーを?ちょっとはずかしいな・・・」
 マリアから肩紐を通されて初めてのブラジャーを経験した。
「これからは、人前に出るときはブラジャーなしでは出られませんよ。」
「はい、わかりました、マリア」
 セーターを着てみると、胸が膨らんでいるのが目立った。ジョンはうれしかった。

 それから何日が過ぎて、ジョンの身体は急速に女性化していった。顔つきもふっくらとして今では、元男性であると気づくものはいないだろう。
 日が立つに連れて、身長も体重も落ちていった。太かった指はいまではほっそりとして、ウエストも抱きしめると壊れそうなくらい華奢になっていた。顔つきも子供っぽくなってきていることに気がついた。
「ジョン?この秘法は、若返りの秘法とも呼ばれているの。男性と女性の平均寿命は女性のほうが長生きであることは知ってるわね。あなたはこれから15歳くらいのの少女に変わるのよ。」

 毎日、女性としての心得を学んでいった私は、今では以前に男として暮らしていたことを忘れかけていた。我がままな性格も、人に尽くしたいと思うようになっていた。(女性であるって素晴らしい・・・)

 身体の変化は完全に転換を終了していた。下腹部にはくっきりと縦に割れ目が出来ていた。その花びらからは、月に一度真っ赤な血が流れるようになっていた。
 胸も乳房と呼べるくらい大きくなっていた。

 ある日、マリアから美顔の術を施すことを言われた。
「ジョン。今日は、あなたの顔を色白に変えます。女は色白が好まれるもの。
 ウグイスの糞から取られる液体を顔に塗りますよ。」
 ジョンは、奇妙な感触の液体を塗られた。夜中に顔が痛くて起きあがった。
 鏡を見ると真っ赤に顔が腫れ上がっていてみにくい顔になっていた。
「そんな・・・綺麗になれるはずなのに・・・・」
 ジョンは、悔しくて涙が止まらなかった。綺麗になりたい・・・。

 次ぐ日の朝には、その腫れは引いて、かさぶたのようになっていた。
 マリアはゆっくりそのかさぶたのような皮膜をはがした。
 するとその下には、色白の肌が現れてきた。

「どう、ジョン?綺麗な肌に生まれかわったでしょう?」
「私、綺麗ですか・・マリア?」
「ええ、とても綺麗なお嬢さんですよ。」
「お嬢さん・・ですか? わたし・・・女の子に見えますか?」
「もう貴女はどこから見ても女の子です。さあ、今日からスカートをおはきなさい。」
 フレアーの入った女の子らしいロングスカートを渡された。
 私は、ゆっくりはいてみた。今ではほっそりとしたウエストにぴったりであった。「さあ、この鏡台の前に座って」
 マリアは、私のまゆにかみそりを当てた。太めであったまゆは細くアーチ型に変えられた。顔立ちが急に女性の顔になった気がした。
「15歳の女の子にはちょっと早いかも知れないけど、たまには大人っぽくなるのもいいわね。」
 そう言って、薄い色のピンクの口紅を塗ってくれた。
 私は鏡を見ながらうっとりしていた。

 マリアは、長く伸びた髪にブラシをかけながら言った。
「今日から貴女は、女の子のジェニーです。」
 髪をまとめて編み込んで、両方の耳の所にお下げを作ってくれた。
「私は、女の子になれたのですね。ありがとう、マリア」
「素敵な笑顔ですよ、ジェニー。きっと殿方がほっておかないでしょう。」
「まあ、マリアったら。」
 私はマリアに抱きついて頬にキスをした。もうずっと女の子でいられる。
 あの粗暴で野蛮な男でいなくてもいいんだ。これからは優しく可憐な女の子として生きて行けるのね。

 それから数日後、ジェニーとなったあたしは、この島を去ることになった。
「ジェニー。もう貴女には教えることはありません。素敵な伴侶を見つけて幸せな家庭を築くのですよ。」
「マリア。いろいろとありがとう。あたし、きっと幸せになるわ。
 子供が出来たらきっと連れて来るわね。」

 私はゆっくりと船をこぎ始めた。ここにくるときは簡単にこげた船は今ではやっと進むようなスピードであった。
(私には、もうあの時の力がなくなっているのね。だって女の子だもの。
 これからは、力仕事は男性に任せようかしら・・・)

 街に着いて通りを歩き始めた。侵略者たちはもうここを去っていて街は平穏に戻っていた。元通りの静かな街になっていた。
 変わったことと言えば・・・ここを出るときは男だった私が、今では少女となっていることであった。汚れた衣装を交換しなければ・・・。
 ブティックのウインドウに花柄のプリントされた可愛いワンピースがあった。着てみたい・・。私はお財布を握りしめて数分後には、その服に着替えていた。

 教会に着き、ドアをノックした。シスター・ジェーンが顔を見せた。
「何かご用かしら、お嬢さん?」
「私です・・・。もう片方のイヤリングをいただきに来ました。」
「その虹色に輝くイヤリングは・・・あの時のジョンですか?」
「はい、お姉さま。今ではジェニーよ。」
「あら、こんな素敵なお嬢さんになったのね?」
「私、女性になれてよかったわ。シスター、会いたかった。」
「あたしもよ、ジェニー。綺麗になったわね。もうこれからは私の妹よ」
 二人は涙を流しながらいつまでも抱き合っていた。

 私は、それから山小屋にいた昔の教え子の生徒と再開することが出来た。
 あの時の教師ジョンとしてではなくて、「ジョンの妹」のジェニーとして。
 ジェニーとなった私は、女子校へ進学するために教会をあとにした。

 それから数年後、シスター・ジェーンに一通の手紙が届いた。
「シスタージェーン。私のお姉さま。今、私はあれから教え子の生徒たちといっしょに女子高生として過ごしています。お休みの前にはお友だちの家に泊まり込んでパジャマ・パーティーをして楽しい日々を送っています。
 素敵なボーイフレンドも出来ました。今日はこれからデートなの。
 彼のためにちょっぴりお化粧していこうかななんて思っています。
 将来は人を助けるために看護婦になろうと思い、最近勉強を始めました。
 いつかまた会える日を楽しみにしております。
 それではごきげんよう。ジェニー」


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