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キャリア・デイ 2023
作:Marie





(第1章)

「お姉ちゃん、学校から呼び出しが来ているんだ。悪いけど、行ってくれよ。」
「もう、また何か悪いことをやったんでしょ?あんまり心配かけさせないでよ!」
 美里は笑顔で弟の聖二の頬を軽くひっぱってから、急に真顔になって言った。
「聖二、私たちはたった二人の家族なんだからあんまり無茶しないでね・・・。」
「うん、わかってるよ。でも今回は何も悪いことはやってないんだけどなぁ。」
「たしか新しい校長先生は私の中学時代の恩師の山本先生だったわね。群馬県で始めての女性校長にたっぷりとあなたのことをお願いしてくるわ。」

 二人の両親は1999年の関東大震災で亡くなっていた。姉の美里は大学進学をあきらめて、OLとして働いており、聖二は姉には頭が上がらなかった。
 これまでにも悪い仲間と暴力行為を繰り返して保護者として学校に呼ばれて注意をされたことがあった。美里は聖二が根はすごく優しい性格で、悪い仲間に無理矢理つきあわれていることを知っていた。身体が小柄で気の弱い聖二は、いじめにあうことが多かったので悪い仲間のグループに入らされていたのであった。
 美里は食事が終わり部屋に戻る聖二の姿を見ながら思った。
「聖二、あなたは男の子に生まれないほうがよかったのかも知れないね。女の子に生まれていたら、小柄なボディでみんなから可愛いがってもらえたのに。」

 翌日、美里は会社を早退し聖二の高校の校長室へ呼ばれ恩師と再開していた。

「お久しぶりね、美里さん。ずいぶん綺麗になったわね。」
「先生も相変わらずお若いですよ。先生は私たち女性の鏡です。まだまだ女性の社会進出は遅れていますから先生の活躍を楽しみにしているんですよ。それで弟のことなんですが、今回は何をやったのでしょう?」
「別に何も悪いことはしてないわよ。聖二君の将来について重要なお話があるんです。」
「将来についてですか?まさか、あのキャリア・パスで悪い結果でも出たのですか?」

 美里は穏和な校長の顔が急に曇ったため、不安な気持ちになっていった。

 今年の総選挙で自認党は女性票を獲得するために女性の党首を選出し、見事選挙に大勝していた。女性の代表である泉首相は、青少年の育成に力を入れることを約束していたため斬新な企画を次々と出していた。その目玉が「キャリア・パス」の導入であった。先進国ではすでに採用されており大きな効果を生んでいたが、我が国では人権問題や受け入れ体制の確立が遅れていたためにこの春から試行が始まったばかりであった。

「美里さん、この高校がキャリア・パス試行のモデル校になってることは、ご存じね? このところ就職後に自分の適正に合わない職業を選択したことで悩んで自殺する若者が増えているでしょう?キャリア・パスは膨大なデータと科学的、医学的見地から将来の職業の適正を選ぶから99%以上の確率で信用できるのです。ですからこの結果のとおりに聖二君の将来を方向つけることが彼の幸せにつながるはずよ。」
「はい、確か政令が公布されて、結果に従わないと法律違反になるんでしょう?それでどんな結果が出たのですか?」
「・・・美里さん?気を落ち着けて聞いて下さい。大変な結果が出てしまったの。彼に選択された未来は・・・OLから一般家庭の主婦なのよ・・。」
「えぇ?先生、聖二は男の子なんですよ?なにかの間違いでしょう?」
「私もそう思い、政府のキャリア移行センターに問い合わせてみたの。その結果、間違いはなかったわ。聖二君の深層心理はとても女性的であったの。それに決定的なのは、彼の染色体は”XXXY”という特殊なものであることがわかったのよ。聖二君は、男の子の中に女の子の部分も持っていたの。」
「そんな・・・。じゃあ、聖二はこれから女にならなければならないのですね?」
「聖二君の女性への移行はセンターからすでにプログラムが組まれています。我が高校も聖二くんの女性への移行を全面的に応援します。協力してくれるわね、美里さん?」

 美里は学校からの帰り道に聖二の子供時代のことを思い出していた。
 私とぬいぐるみのとりっこをしたことがあったなぁ。それにお母さんの鏡台からよく口紅を出して遊んでいたこともあった。あの子って、もともと女性的なところがあったのよね・・・。美里はすれ違っていくおしゃれな女子高校生を見て思った。
「聖二ももうすぐあんな風になるのね・・・。人生をやり直すなら早いほうがいいわ。私があなたを可愛い女の子にしてあげるからね・・。」

「聖二、これから写真屋さんで記念写真を撮ってもらおうよ。自分の気に入ったお洋服を着てきなさいよ。」
「えぇ?何で急にそんなこと言い出すの?写真なら家のカメラでセルフタイマーでとればいいじゃない?」
「ううん、やっぱり思い出の写真はプロに撮ってもらおうよ。理由なんかないよ。ただ二人が今生きてる証を残しておきたいのよ。」
「今日のお姉ちゃん、なんだか変だなぁ。まあ、いっか。じゃあ着替えてくるよ。」
 美里は鏡台の前に座り、念入りに化粧を始めた。これから聖二の身に起こる出来事を考えていたら涙が止まらなくなり、マスカラを何回も塗り直していた。
 聖二、あなたの男の子時代の思い出を残しておこうよ。もう貴女は私の弟でなくなるのよ。貴女は私の妹になるんだからね・・・。

 数日後、美里のもとに電話が入った。キャリア移行センターの職員からであった。
 夕方、仕事を終わってから待ち合わせの喫茶店に行くと、温厚な中年の男性と気むずかしそうな女性が待っていた。男は橋詰 勲と書かれた名刺を差し出した。
「聖二君のお姉さんですね?今回の女性への移行は法律で定められた義務なのです。これから彼が女性になるための段取りをお話しします。まず、第一段階として睾丸の摘出手術をするために入院してもらいます。その際に体内の男性ホルモンを女性ホルモンに入れ替える作業を行います。また体内に女性ホルモンである高濃度のエストロゲンのカプセルを埋め込み女性化を促進します。だいたい3ヶ月くらいで女らしい肉体に変化するでしょう。」

 センターの職員の男性は一方的に話しを進めていた。
「聖二君を入院させるために一時的に身体に痛みを覚えさせる特殊な薬を用意しました。明日の朝、この薬を飲み物に入れて飲ませて下さい。夕方頃になると急な腹痛が起こるはずです。手術の準備はしておきますので必ず飲ませてくださいね。彼の女性化が進んだ時点で女性の性器への整形を行います。その後、性別再判定を受けてもらい、戸籍を女性に変更します。」
「そんな上辺だけの手術で弟は幸せになれるのでしょうか?女性の幸せは子供を産んで育てることです。性器の形を変えただけでは、かたわな存在でしょう?」
「お姉さん、今の医療は急激に発達しております。アメリカの医療メーカーから人工子宮を取り寄せて彼の体内に埋め込めば妊娠も出産も可能です。それからこちらにいらっしゃる女性は、男性を女性に移行させる専門のカウンセラーの方です。女性の仕草を身につけることから化粧の指導までお願いしてあります。」

 紹介された女性は、態度が横柄で美里を見下ろすようにしていた。
「私は今まで何人もの男性を女性に替えてきた実績があります。弟さんを寮に入れて徹底的に男であったことを忘れさせてあげましょう。多少、厳しい指導をすることもありますが終わる頃には、誰にでも従順な女性に替えてあげますわよ。」
 美里は、冷酷そうな女性カウンセラーの態度が気にいらなかった。
「手術の件は、わかりました。ただし、カウンセラーの方にはお引きとり願います。聖二は私の大事な家族です。私の手で女性に移行させます。」
 美里の言葉にカウンセラーは、怒り出して立ち上がった。
「そんな、素人が簡単に出来ることと思っているの?やれるものならやってみな!」
 カウンセラーは汚い言葉を残して店から出ていった。
「・・・ごめんなさい、橋詰さん。でもあんな人に大事な弟をまかせられません。」
「じつは、私もあの人は嫌いなんですよ。センターからビジネスとして雇われている人で本人の意志を無視して強制的に女らしさをたたき込むんです。ですからどの子もみんな萎縮しちゃってね、それを従順になったと思いこんでいるです。性転換は大変デリケートなものですからもっと神経を使ってもらいたいですよ。」
「では私がやっても法律違反にならないのですね?」
「ええ、よろしいでしょう。私もお手伝いさせてもらいますよ。私の子供も以前に同じような経験を持っていますから。」
「え?橋詰さんの子供も・・・性転換されたのですか?」
「ええ、何年か前に環境ホルモンというやつにやられましてね、香織っていうんです。今では元気に女性として暮らしていますよ。じゃあ、明日の朝の薬をお忘れなく。」


(第2章)

 美里は次の朝、野菜ジュースに橋詰からもらった薬を溶かして聖二に飲ませることに成功した。後ろめたさから無理に明るく振る舞うことにした。
「ねえ、聖二は相変わらずガールフレンドはいないんでしょう? あたしが替わりになってあげようか? こんな美人の彼女を連れて歩いたらきっとみんなから嫉妬されるよ。今日は土曜でお休みだからあたしと出かける?」
「お姉ちゃん、よく言うよ。じつはね、今まで内緒にしていたんだけど彼女が出来たんだよ。うちのクラスの博美って子なんだ。クラス委員でメガネをかけた地味なインテリ女なんだけど、前にいじめられそうになったときに助けてもらっちゃってね、それ以来時々放課後によく話しをしてるんだ。彼女も僕と同じゲームマニアなんだよ。」
「あら、女の子に助けてもらったの?しょうがない子ね。」
「今日、これから始めて外でデートするんだよ。」
「え?・・・・あまり遅くならないうちに帰って来るのよ、いいわね?」
 美里は、薬の効き目がおよそ8時間後に効果を発揮することを聞いていたので早くデートから帰ってくることを祈っていた。

 待ち合わせは駅の南口であった。聖二は広場の噴水の前に腰掛けて博美を待っていた。
「お待たせ、聖二くん。」
 聖二が振り向くとそこには、見たこともない美少女が立っていた。
「・・・博美さんなの?まるで別人だよ。」
 博美は学校での地味な姿とは替わり、前髪をおろしたストレートのヘアー、メガネはカラーコンタクト、そしてうっすらと化粧もしていた。
「聖二君、女の子って変わるのよ。少しは見られる顔になったでしょう?」
「少しどころか、こんな可愛い女の子だとは思わなかったよ。」
「うふふ、うれしい。さあ、早く行かないと映画が始めるよ。」

 映画は「ロミオとジュリエット」のリメイクであった。
 映画が終わり、場内が明るくなると博美は聖二の顔から涙があふれていることに気がついた。
「聖二君って涙もろいのね。」
「かっこ悪いところ見られちゃったね。もっと男らしくしようと思うんだけどね、つい主人公の気持ちになっちゃって・・。」
「無理に男らしくする必要はないわよ。私、素直な聖二くんのこと好きだよ・・。」

 映画が終わり二人はファーストフードレストランで軽い食事をしていた。
「ねえ、聖二君はファイナルファンタジー10はもうクリアしたの?」
「ああ、最後の親ボスがすごく強くてね、パーティのレベルをあげてやっとクリアしたよ。」
「私、取れないアイテムがあるの。教えてくれない?」
 二人は博美の家に向い、部屋でゲームを始めた。
 熱中しているうちに時間はすでに16時を回っていた。
「う・・・、なんだよ、この痛みは?」
 聖二は突然、お腹を押さえて悶え始めた。博美は家族が外出していたので気が動転していた。とりあえず、聖二の家に電話してみた。
「あのう、私、聖二君の同級生の博美といいます。さっきから聖二君がお腹が痛いって苦しんでいるんです。これから救急車を呼びますから。」
「博美さん、救急車の行き先は霧雨総合病院にしてちょうだい!私もすぐに行きます。」

 15分後、先に病院についた美里は入り口で聖二を待っていた。横にはすでに待機していた橋詰がいた。
「こんなことになるならデートになんか行かさなければよかったわ・・・。」
「お姉さん、心配しなくても大丈夫です。あの薬は一時的に盲腸と同じ症状を持たせる安全なものですから。・・あ、救急車が来たようですね。」
 担架に乗せられて、聖二は地下の緊急処置室へ運ばれた。
 美里は無事に処置が済むことを祈りながら、動揺している博美と手術室の前で待っていた。
「博美さん、今日はありがとう。あの子にとって始めてのデートだったのよ。いい思い出を作れてよかったわ。もう2度と男の子としてデートは出来ないからね。」
「お姉さん、それってどういう意味ですか?」
「聖二は今、女の子にかわる最初のステップの手術を受けているの。」

 美里は驚いている博美に今までのいきさつをすべて話した。
「そんな、聖二君があたしと同じ女の子になるなんて・・・。信じられない。」
 ショックを受けていた博美は、これは夢ではなく現実の世界の出来事であることに気がつき、やがて落ち着きを取り戻していた。

「博美ちゃん、お願い。聖二の力になってあげてほしいの。あの子の女性への移行を手伝ってほしいのよ。あの子は、貴女のことを同級生なのにまるで年上の女性のように甘えていたみたい。聖二を女の子にしてあげて欲しいのよ。」
「もう戻れないんですね?中途半端な女になるなんて可哀想・・・・。じゃあ、学校では私が面倒を見てあげます。家ではお姉さんが移行の手伝いをしてあげて下さい。二人で力をあわせればきっとステキなレディになれますよね。」
「博美ちゃん、ありがとう。」

 窓の外の夜空に一筋の流れ星が消えていった。その瞬間、聖二の股間からレーザーメスで睾丸が切り離された。
 聖二は女の子に生まれ変わる第一歩を踏み出した。


(第3章)

 次の日の朝、聖二は麻酔からさめて股間が包帯で巻かれていたことに気がついた。
 股間から伸びている管の先についた採尿のボトルを交換に来た看護婦は優しく聖二に話しかけた。
「あら、やっと気がついたわね。手術は無事に成功したわよ。」
「看護婦さん、僕は盲腸でも取ったのですか?」
「まあ、盲腸みたいなものよね。あと3ヶ月もすれば貴女も私たちの仲間になるのね。あ、余分なこと言っちゃったみたいね・・・。」
 聖二は看護婦の言葉に首を傾げていた。

 聖二の睾丸摘出および女性ホルモン調達システムの組み込みは、聖二の身体が女らしく変化してくるまでは黙っていることになっていた。股間には患部の保護と言う名目で特殊なプロテクターをつけられていたので聖二がそのことに気がつくことはなかったのであった。

 やがて元気な姿で退院し学校にも再び通いだした。
 3週間を過ぎたころから聖二の肉体に変化が現れてきた。
「お姉ちゃん、僕の髪はこのところ伸びるのが早くなったよ。成長期だからかな?そろそろ床屋に行かないとね。」
「あら、ダメよ。お医者さまから手術のあとはしばらく髪を切ってはダメって言われているのよ。」
「なんで手術に関係あるのかな?なんか変だな・・」
 美里は心の中で思っていた。
(聖二、女の子はやっぱり髪が長いほうが可愛いわ。女性ホルモンの影響でもっと髪の伸びるスピードは早くなるはずよ。早く肩まで伸びるといいわね・・。)

 それから1週間もすると聖二は自分の身体が変わって行くことに気がついていた。
 体育の授業の時に同級生から身体が以前より華奢になっていることを指摘された。
「手術の後遺症」とその場は逃げていたが自分でもそのことは気がついていた。
 もともとヒゲは薄い方であったが以前は朝起きたときに電気カミソリをあてていた。それがこのところひげ剃りを忘れてしまうほど生えてこなくなっていた。
 それに昨日から胸が変にむず痒い気がしていた。トイレに入った時にTシャツの中に手を入れてさわってみると、ぐにゃっとした奇妙な感覚がした。これはいったい・・・。

 聖二は家で入浴時の時に鏡に自分の肉体を映していた。明らかに胸が膨らんできていた。
 変化はそれだけではなかった。指が前より細くなり肩幅も狭くなっている。
 ウエストも下着が落ちそうなくらい細くなっている。それにくらべお尻は丸く大きくなっているのであった。
「お姉ちゃんは、手術の後遺症と言ってるけど・・・僕は・・・まるで女に変わっているようだ。」
 ショックで肩をおとしていた聖二の姿をドアの陰から見ていた美里は、そっとその場を離れて博美の家に電話していた。
「博美ちゃん、貴女の出番よ。聖二の身体は第2段階に入ったらしいの。あとでブラジャーを用意しておくから聖二につけてあげてちょうだいね・・。」

 次の日の放課後、聖二はデパートに寄り大量のサラシを買い自分の胸に巻きつけて胸の膨らみを隠す努力を始めた。入浴の時はドアに鍵をかけて姉に見られないように気を使い、学校の体育の時間は体調の不良を訴えて休むようになっていた。
 ある日、博美は美里から食事に招待されたということで、聖二の家に遊びに来た。
 その日の美里はニットシャツで自分の胸の膨らみを意識して強調していた。
 夕食の時に美里はワインを出して二人にも勧めた。
「ねえ、お姉さん、あたし始めてのワインで酔ってしまったみたい。少し休んでいっていいですか?」
「ええ、明日は学校もお休みだし今夜は泊まっていくといいわ。貴女の家に電話しておいてあげるね。じゃあ、あたしの部屋にお布団をしいてあげる。」
 自分の肉体の変化が気になる聖二は口数が少ないままであった。
 夕食後、交代で入浴が済み聖二は部屋に戻り鏡の前に立っていた。
 また胸が大きくなっている。先ほど階段を上がって来るときには胸が揺れていた。
 少女のように膨らんだ胸を見て、聖二はため息を漏らしていた。
 するとドアが突然開き、博美が笑顔で立っていた。

 聖二はあわてて胸を押さえてその場にしゃがみ込んでしまった。
「聖二くん、突然ドアを開けてごめんね。ねえ、あたし見ちゃったわよ。あなたの胸の膨らみを・・・。」
 聖二は恥ずかしさから泣き出してしまった。
「ねえ、聖二君?あなたって女の子になるみたいなのよ。」
 博美は気をつかって部屋の電気を落とし、窓から差し込んでくる月の明かりだけになった。そして、うずくまって泣いている聖二を優しく起こしてベッドの上に座らせた。
 聖二の胸の先にはキュートなピンク色をした乳首が上を向いていた。
 博美は聖二の身体を引き寄せて髪を撫でながらこれまでのいきさつを話しはじめた。

「そんな・・。僕の股間にはもう睾丸がなくなっているの?それに女性ホルモンのカプセルが埋め込まれているんだって?そんなこと信じられないよ!」
「聖二君、もうあなたは戻れないのよ。このままでは男でもない、女でもない中途半端な身体になってしまうわ。私はそんなのいやよ。もうこうなったら聖二君に女の子になってもらいたいの。私と同じ女の子にね。」
「女になんかなるのはいやだよ・・・。僕は、僕は・・・」
「そんなに女になるのがいやなの?」
 博美は立ち上がり自分の着ている服を脱ぎだして聖二の見ている前で裸になった。
「ねえ、見て。女って男より綺麗でしょう?このおっぱいもこのお尻もステキでしょう?あなたもこんな身体が欲しくない?今よりずっと綺麗になれるのよ?」
 月明かりに照らされた博美のボディのシルエットは美しかった。

「さあ、あたしの身体に触れてみて。女の身体を・・・。」
 博美は聖二の手を取り、自分の乳房をさわらさせた。聖二はゆっくりと手を動かして女性のしっとりした肌触りを手の平に感じていた。聖二の手は博美によって下腹部の秘められた場所へ移動し、指先で女性の部分を感じていた。
「どう?女の身体って素敵でしょう?あなたもこんな身体になれるのよ・・・。」

 聖二は自分のために裸にまでなってくれた博美に感謝して気持ちが揺らいできた。
「あたしと同じになりたくない?あたしと同じ女の子になりたくないの?」
「自分でもわからなくなってきたんだ。こんなに膨らんだこの胸も最初はイヤでたまらない気持ちだった。でも最近はなんだか愛おしくなってきてる。お風呂で洗う時にぷるぷる揺れるんだ。恥ずかしい気持ちだけでなく、うれしい気持ちが芽生えて来てね。僕って恥ずかしいだろう?」
「そんなことないわよ。きっと女性ホルモンが少しづつ脳に回ってきたのよ。これから少しづつ心の中も女の子になっていくそうよ。」

 博美は立ち上がり、持ってきた紙袋の中からブラジャーを取り出した。
「聖二君、女の子が胸を露わにしてると恥ずかしいでしょう?さあ、ブラジャーをつけようね。このブラはお姉さんがあなたのために買ってきてくれたつけ始めのブラなの。胸の成長を妨げないようにカップが入っていないの。それに背中にホックがないからつけるのも簡単よ。」
「僕がブラジャーを・・・。ねえ、つけないとダメなの?」
 博美は聖二の膨らみはじめた乳房をそっと撫でまわした。そして指先で上を向いてる乳首をもてあそんだ。」
「ああん、やめてよ。くすぐったいよ・・。」
「ね?女の子の胸の先はとても敏感なのよ。それに動いた時に胸が揺れるのをしっかりとホールドしてくれるの。さあ、両手をあげてごらん?あたしがつけてあげるよ・・。」
 聖二は博美の誘導に任されるままに頭からトレーニングブラをかぶせられた。
 そして肩紐の位置を調節してから乳房をブラの中に押し込んでもらった。
「どう、気分は?」
「なんだかホッとしたような不思議な感じがするよ・・・。」
「もうすぐ薄着の季節になるから、脇の下の毛も処理しないとね。」
 聖二は心臓がどきどきしている自分に気がついていた。
「さあ、聖二君、いっしょに眠りましょう。私たちは夢の世界で妖精になるの。」


(第4章)

 次の朝、食事をとりながら美里は聖二のシャツの背中にブラジャーの線を見つけ、博美にウインクした。博美は笑顔で合図を返していた。
「ねえ、聖二?あこがれの彼女といっしょに一晩を過ごした感想は?」
「うん?何もなかったよ。だって・・・。」
 博美がためらってる聖二の言葉を遮って言った。
「聖二くんは、素直でいい子よ。とっても可愛いわ。」
 聖二は姉がもう一人増えたような気がした。

 その日、聖二は休日だったので部屋の掃除や姉の洗濯物の手伝いをした。
 最初は違和感があったブラジャーがつけていることによって、とても動きやすいことに気がついていた。美里は今まで自分の下着を聖二に見せることはなかったが今日はブラもパンティも聖二に洗濯を手伝ってもらっていた。
「聖二、ランジェリーは直接洗濯機に入れると生地が傷むから、ランジェリーネットに入れてから洗うのよ。」
「お姉ちゃん、女性の下着って手触りがいいんだね。」
「そうよ、男の野暮ったい下着から比べるとおしゃれでしょう?もうすぐあなたにもパンティをはかせてあげるからね。」
 聖二は何気なく言った姉の言葉に真っ赤になって照れていた。

 学校へ行くときもすでにブラジャーは、はずせなくなっていた。厚手のYシャツを着てなんとかごまかしていたが隠し通せるのはもう何日もないようであった。
 放課後になり、校長室に呼ばれていた。
「聖二君、お姉さんから経過の報告を受けています。今回の出来事はあなたの意志を無視して将来を決めてしまって可哀想な気がするわ。でもね、女性として生きることもそんな悪いものじゃないのよ。昔に比べて女性の地位は向上してきているし、あとは本人の努力しだいなの。女性としての立場に甘えている人もいるけど、あなたには積極的な女性になってもらいたいの。今はブラは着けてるのね?」
「はい、トレーニング用のものを・・・。」
「これからもっと身体が女らしくなり、誰から見ても女の子に見えるようになったら女子の制服で登校してもらうわ。名前も女性のものに替えて女子生徒としてあなたを扱います。」

 数日後、学校を早退し姉に連れられて病院へ行った。
 手術後からずっと装着していた股間のプロテクターがはずされた。
 予想はしていたが、あまりに変わった自分の股間を見てショックを受けていた。
 睾丸を包んでいた部分はたるんで肌に貼り付いており、人並みのサイズを持っていた男性器も幼稚園の男の子くらいのサイズに変わっていた。

 病院を後にした二人は、デパートの下着売場に来ていた。女性用の下着売場の華やかさに聖二はとまどっていた。
「聖二、今夜からあなたはパンティをお履きなさい。最初はおへそのところまである地味なものがいいわね。それにブラジャーもなれて来たはずだからカップのブラを買って行きましょうね。スリップは可愛いものがいいかしら?」
「お姉ちゃん、こんな下着を着けるなんて・・・。」
「もう覚悟は出来てるでしょう?気持ちを早く切り合えることね。ほら、この下着はこの間、博美ちゃんが着けていたのと同じよ。」
 美里は店員からメジャーを借りて、聖二と試着室に入りサイズを計ったのちにいくつかのブラを持ってきて聖二の胸に合わせてみた。
「ブラはね、少し大きめなものを選ぶのよ。まわりに流れている脂肪をカップに押し込んで谷間を作るの。着けるときはね、ちょっと前かがみになってお着けなさい。じゃあ、外で待ってるからね。」

 聖二は女性の下着売場の試着室にいる自分の存在にすっかりときめいていた。
 密閉されたこの世界で鏡に映る自分はさなぎを脱皮して美しい蝶に変わろうとしていた。ピンクのスリップを身につけてその可愛らしさにうっとりとした。
「ねえ、お姉ちゃん、どう?」
 試着室のカーテンを開けて姉に見てもらおうとした時に、前を歩いていた少年と目があってしまった。その少年は、同じクラスの竹内 豊であった・・・。
「お前・・、聖二じゃないか・・。」
 見られた恥ずかしさにあわててカーテンを閉めてそこにしゃがみこんでしまった。
 雰囲気を察した美里は、聖二の気まずい気持ちをフォローした。
「あら、竹内さんの息子さんでしょう?私、銀行でOLやってる聖二の姉です。前にお父様といっしょに見えたことがあったわね。今日はプレゼントでも買いに来たの?」
「ええ、母の誕生日になにか買ってあげようとうろついていたら、下着売場に迷い込んでしまったんです。」

 会話を聞きながら、女性の下着を手に持って聖二は試着室を出た。
 うつむいてる聖二を見て、豊は気持ちを察して無理に笑顔で話しかけた。
「聖二、ちょっとお姉さんに買い物の手伝いを頼んでいいかな?何をプレゼントしていいかわからないから、お姉さんに選んでもらおうと思ってね・・。」
 聖二の下着をレジで精算し、3人は豊のプレゼントを選ぶためにデパートの中をハシゴし結局、美里の見立てたスカーフを買った。
「ねえ、豊君?いっしょにお食事でもいかが?」
 美里の誘いを快く受けた豊はレストランにいっしょについていくことにした。

 食事をしながら、美里はキャリア・パスの結果から聖二が女性に移行することになったことを説明していた。
「そんな事情があったのか・・・。お前も大変なことになったなぁ。俺なんか、ボクサーになりたいっていう希望が叶えられてね、トレーニングを始めているんだ。これからまたいじめられるようなことがあれば、俺が助けてやるから安心していいよ。」
「ありがとう、豊くん・・・。」
「豊くんは格好いいから、女の子にもてるんですって?聖二も女の子になったら豊君のガールフレンドにしてもらいなさいよ?」
「お姉ちゃん、なんてこというの・・・。」
 真っ赤になって照れてる聖二の恥じらった姿を見て、豊は聖二のことを可愛いと思いはじめていた。豊の目には先ほどの下着姿の聖二が焼き付いていた。


 (第5章)

「聖二、もう朝よ。まだ寝ているの?早く起きてきなさいよ。」
 美里は聖二から返事がないので部屋へ行ってみるとベッドの上に座り、うなだれていた。
 Aカップのブラジャーにピンクのスリップ姿の聖二のまわりには、ズボンやYシャツがいくつも散らばっていた。
「どうしたの?そんな肩を落として?」
「お姉ちゃん、もう着る服がないんだよ。Aカップのブラになったら、Yシャツのボタンが締まらないんだ。それにズボンも履けなくなってる・・。」
 着実に女らしい身体に変わっていった聖二は、ウエストの位置が以前よりも高くなりしかも細くなっていた。大きく丸みを帯びたお尻とのバランスが崩れているため男性のズボンはもう履けなくなくなっていた。
「そうなの?昨日、今まで履いていたゆるいサイズのズボンはクリーニングに出しちゃったの。困ったわね・・。ちょっと待っていてね。」
 階段を下りていった美里は、どこかに電話をしていた。
 話しが終わり聖二の部屋に戻ってきた美里は優しい笑顔で聖二に言った。
「今ね、校長先生にお電話したの。男の子の服が着られないって言ったら運動着姿で登校して来なさいっておっしゃったわ。それで博美ちゃんから運動着を借りることにしたの。学校へ行く途中に寄ってくれることになったからね。」

 しばらくして博美が大きなバッグを持って現れた。
「聖二君、私のジャージよ。さあ、早く着替えないと遅刻しちゃうよ。」
 Tシャツに赤いスラックス型の女子の運動着に着替えた聖二はもう女らしくなったボディを隠せなかった。背中にはブラジャーの線がくっきりと映っていた。
 学校に着いて席に座るとすぐにいじめのグループが寄ってきた。
「聖二、おまえ男のクセにブラジャーをしているのか?このオカマ野郎!」
 それから聖二を誹謗する言葉を面白がって言われ、聖二は屈辱で涙を流し始めた。
 博美がいじめグループを止めようと立ち上がる前に、豊がグループのリーダーである木村 卓二の前に立ちふさがった。
「お前ら、いい加減でいじめるのは止せよ。きっと聖二だって事情があるんだ。同じクラスの仲間じゃないか?」
「何だと、竹内?すこしくらい女から持てるからっていい格好するんじゃねえ!」
 木村が殴りかかると、簡単にかわした竹内は木村の顔面にストレートのパンチを打ち込んだ。そして倒れた木村の胸ぐらをつかんで顔を近づけて言った。
「今度、聖二をいじめたらこんなもんじゃ済ませないぞ!」
「わかったよ・・。ボクシングをやってるお前のパンチを何度もくらったら俺の格好いい顔が台無しだからな。」
 鼻血を出しながら、木村は豊にわびを入れて席に戻りいじめグループも解散していった。
「ありがとう、竹内くん。」
 以前よりハイトーンな声に変わった聖二が涙ぐんでお礼を言うと、竹内は自分のハンカチをだしてそっと聖二に渡した。
「聖二、涙をふきなよ。」

 始業時間になり、校長がクラスにやってきて説明を始めた。
「みなさん、聖二君はキャリア・パスの結果、女性に変身する運命となりました。これは法律で決められた義務なのです。まったく違う人生を歩むことになった聖二君はとてもつらい立場なのです。新学期からは女子生徒として扱います。みなさんも聖二君が女の子になることを応援してあげて下さいね。」
 校長が帰ったあと、クラスの女子が聖二のまわりに集まってきた。
「聖二君、そんな事情だとは知らなかったよ。これからは同じ女の子だもの、仲良くやろうね。わからないことがあったら何でも聞いてよね。」
「聖二君、こんどいっしょに駅前のカラオケに行こうよ。」
「私、編み物を教えてあげる。」
「メイクの道具の安いお店を知ってるから、あとで連れていってあげるね。」
 女子生徒たちの優しい言葉を後ろで聞いていた博美はほっとしていた。

 授業が終わり休み時間がきて聖二はトイレに行くと、まわりの女子が手を引いて女子の方へ連れていってくれた。
「聖二君、もう女子のトイレを使ったほうがいいよ。さあ、こっちよ。」
 聖二は始めてしゃがんで排泄することになった。ジャージをおろしてパンティをめくり慣れない格好で排泄を始めた。今では性器が小さくなって男子用のトイレを使うのに不自由な状態になっていたので、好都合であった。
 クラスの席に戻ると女子生徒が集まり何か話しをしていた。
 やがて博美がみんなの代表として聖二に話し始めた。
「ねえ、聖二君。みんなで貴女の女の子の名前を考えたの。いろんな名前が出たけど結局ね、”聖子”がいちばんいいんじゃないかって。安易な名前の付け方だけど、女の子らしい可愛い名前でしょう?」
「僕・・・聖子?うん、たしかに可愛い名前だね、ありがとう。」

 それからは女子のグループと行動することが多くなり、聖二の気持ちも徐々に女らしく変わっていった。一学期の終業式が終わり、帰る時にはみんなより新学期から女生徒として生まれかわる聖二の姿が楽しみと言われていた。
「貴女は小柄だからきっとスカート姿が似合うよ、聖子ちゃん。」

 夏休みになり、聖二は女子への移行の第3段階に入り女性として生活を始めることになった。姉に連れられて美容院に行き髪型を女の子らしく変えることにした。
 髪を少し茶色に染めて、クセのある髪質にストレートパーマをかけてサラサラのセミロングの髪に生まれかわった。
「美里ちゃん、せっかくだから妹さんの顔にメイクしてあげましょう」
 美里から事情を聞いたなじみの店員である美紀が気を利かせて化粧道具を用意していた。
「お嬢さん、夏休みになったから少しは大人っぽくしても大丈夫でしょう?顔の印象は眉で決まるの。今から眉をトリミングするから我慢してね。」
 美紀は眉ブラシで聖二の眉をとかした後に、ハサミで全体の輪郭を作り、残った毛を毛抜きで抜いていった。そして眉ブラシとハサミで長さを調節しながら緩やかなアーチ型の眉を作っていった。

「ほら、こんなに女っぽくなったでしょう?貴女の顔立ちはもともと女顔だからね。」
 眉が細くなっただけで聖二の顔は一変していた。鏡の中の自分は別人であった。
「じゃあ、メイクを始めるわね。始めてのメイクだからナチュラルに仕上げようね。」
 化粧水をたっぷりとつけてしっとりとした肌にスポンジでリキッドファンデーションが塗られていった。聖二の肌は透明感あふれる美しい肌に変わっていった。
 カットされて薄くなった眉を、グレイの眉ペンシルで輪郭が描かれてた。
 ピンクのアイシャドーがチップにとられてまぶたにぼかし混まれたあと、ビューラーでマツゲを何回もカールしてマスカラをつけた。マツゲが倍くらいの量に増えた気がした。
「ちょっと口を開けて。」
 ピンクのルージュが紅筆に取られて唇の輪郭にそって塗られていった。
 最後に大きなブラシで頬にチークが彩られた。
「ステキよ、聖子ちゃん。」
 美紀の言葉のとおり鏡の中には美少女に生まれかわった自分がいた。
「ほんとに僕なの・・・。こんなに綺麗になれるなんて信じられないよ・・。」
 セミロングの髪の毛先をもてあそびながら、聖子になった聖二はうっとりしていた。

「聖子、貴女にお洋服が買ってあるの。奥で着替えてみよう?」
 奥の部屋に通され、男の服を早く脱ぎたかった。そして朝方、姉からミニ丈のスリップを着けさせられた理由がわかった。姉が用意していた服は、白地に花柄の入ったミニのワンピースであった。
 スリップ姿になった聖二は渡されたワンピースに足を通し、ゆっくりと上に上げていった。姉が後ろのファスナーをあげてホックをした音が聞こえた。
 早く鏡が見たい・・・。ワンピースの裾をひるがえしながら、部屋を出て店の鏡の前に立った。
「わー、聖子ちゃん、可愛いわよ。そのワンピースすごくお似合いよ。」
 美紀の言ったとおり聖二は女の子の聖子になった。
「お姉ちゃん、私・・・・。」
 いつものように自分のことを「僕」と呼べなくなっていた。
「今日から貴女は女の子の聖子よ。もう男の子時代のことは忘れてしまいなさい。ねえ、聖子?女の子になるって悪くないでしょう?これからはいろんなおしゃれが楽しめるのよ。これからもっと綺麗になろうね。」
「私、女になれてよかった・・わ。こんなに綺麗になれるなんてうれしい。私ってバカよね、なんでもっと早く女になろうとしなかったのかしら・・・。」
 なれない女言葉で姉の胸の中で甘えていた。


(第6章)

 聖子に生まれかわった聖二は積極的に家事の手伝いを始めた。料理や洗濯、縫い物なども姉に教わり少しでも同じ年頃の女の子に近づこうとしていた。
 夜になると姉に買ってもらったお化粧の道具を出して、「ティーンのメイク」の本を見ながらいろんなお化粧の練習を始めた。

 今日は、博美が家に遊びにくることになっていた。活発な感じのするキュロットスカートをはいて外で洗濯物を干していると、後ろから博美の声がした。
「ねえ、あなたは・・聖子ちゃん?すごく変わったわね。もうどこから見ても女の子よ。」
「私ね、もう毎日スカートはいてるのよ。洗濯物を干し終わったらコーヒー入れるから部屋で待っててくれない?」
 聖子の部屋に入った博美は部屋の作りが一変していたことに気がついた。
 フリルのついたカーテン、レースのカバーが掛かったベッド。
 そしてテーブルの上に置かれた化粧道具。まったく女の子の部屋であった。

「おまたせ、博美ちゃん。私の焼いた手作りのケーキを食べてみてよ。」
「聖子ちゃん、美味しそうね。じゃあ、いただくわね。」
 博美は聖子の座る姿が足をそろえて膝がくっつていることに気がついた。
「聖子ちゃん、しぐさまで女らしくなったね。もう心の中まで女の子みたいだよ。」
「うん、私って男の子の時にアイドルの川原 朋美のファンだったでしょう?最近はトモちゃんのファッションが気になってね、あんなキャミソールが着てみたいなって。それに昔嫌いだった反村 隆史のこと、最近はいいなぁって思うようになったよ。」
「もう私と同じね。ねえ、今度の夏祭りはいっしょに浴衣を着ていこうよ。聖子ちゃんのお姉さんは裁縫が得意でしょう?あたしバイトが終わったら教わりに来たいの。いっしょに手作りで浴衣をつくってみようよ。」
「えぇ?私なんかに作れるかな・・。でも着てみたいなあ。じゃあ、さっそく生地を買いに行こうよ。わたし、お化粧するから待っててくれる?それにスカートももっとミニにはきかえていきたいの。」
「・・・ずいぶん変わったわね。」

 買い物が終わり、二人が商店街のブティックを眺めていると後ろから声がかけられた。
「博美、こんちは。」
 振り向くと豊が友達といっしょに立っていた。
「ねえ、竹内君。この可愛い女の子誰だと思う?あなたのよく知ってる子よ。」
「えぇ?・・・・・まさか、聖二・・・いや聖子か?」
「・・こんにちは、竹内くん。あたし、変わったでしょう?」
 裾にレースを使ったミニスカートに胸の形がくっきり見えるニットのシャツ、サラサラのセミロングの髪、そしてうっすらと化粧した顔。
 あまりに可愛らしく変身した聖子に、以前デパートで食事の際に言われたガールフレンドにする話を思い出していた。
「ああ、信じられないよ。まったく女の子だ・・。今日は買い物かい?」
「ええ、夏祭りに着ていく浴衣の生地を買いにきたのよ。これから毎晩、自分で縫うつもりなの。」
「そうか、じゃあ、夏祭りはいっしょに行こうか?」

 そして夏祭りの夜がやってきた。薄いブルーの浴衣を姉に着せてもらってから、髪をアップにセットしてもらい聖子は女らしい魅力にあふれていた。
 メイクも夜ということを考えていつもよりも濃いめに仕上げた。
 今夜の唇は赤のルージュをつけていた。
「じゃあ、ゆっくり楽しんでいらっしゃい。豊君とのデート、うまく行くといいね。」
「うん、お姉ちゃん、あたし今夜は甘えちゃうつもり・・。」
「もう、聖子は女の子になったら積極的になったわね。」

 聖子は博美と合流して夏祭りの会場に着いていた。
 すでに豊は友達と待っていた。
「おい、豊。二人とも可愛い子だな?どっちがお前の彼女だい?」
 豊はウインクしながら聖子の手をとった。
「博美、今夜はこいつとつき合ってやってくれ。」
 四人でしばらくいっしょに歩いたあとに、別々に別れて歩き出した。
 聖子はそっと豊の手を握った。豊も握り返してきた。
 二人は会場を離れて河原沿いに歩いて行き川の縁に腰を下ろした。
「ねえ、豊くん?あたし、この間まで男の子だったのよ。手術もすませてないからまだ完全な女の子じゃないの。こんなあたしとつき合ってくれてありがとう。」
「何を言ってるんだい?聖子はもう可愛い女の子だよ。」
「あたし・・・・うれしい・・」
 恥じらいのある微笑みを見せた聖子を豊は愛おしく思った。
 そしてそっと肩を抱き、聖子の唇に自分の唇を重ねていた。
 聖子は、蛍が舞う幻想的な河原で女の子としての喜びを感じていた。

 すっかりと肉体が女性に変わり、あとは新学期が始まる前に残っている性器の手術をすませるだけになっていた。手術の前日になり、橋詰が家にやってきた。
「大変なことになりました。政府のキャリア・パス計画がどうやら中止になりそうなんです。計画を推進してきた政治家が実施のすべてを請け負っているアメリカの企業と癒着して政治資金をもらっていたことが発覚しましてね。今日の国会で追求されました。聖子さんのホルモン調達システムもその企業の製品なんです。その企業は、製品を売るためにキャリア・パスのデータをねつ造していたこともわかりました。それで聖子さんの本当のキャリアデータを持って来ました。政府は現在キャリアを移行中の人は責任を持ってくれるらしいので、今後の選択は本人しだいです。」
 美里は一瞬ショックを受けたが聖子の表情を見て決心が変わってないことがわかった。
「橋詰さん、そのデータは見るつもりはありません。聖子は女になる運命だったのです。聖子、それでいいわね?」
「ええ、お姉ちゃんの言うとおりです。あたしは今回のキャリア・パスで本当の自分を見つけることが出来たの。あたし、ずっと女として生きていきます。」
「そうですか、よかった。じゃあ、明日の手術の準備はもう万全です。幸せになって下さいね、お嬢さん。」

 手術中の病室の廊下で美里と博美は聖子の性別変更手術が終わるのを待っていた。
 今回の手術は日本ではまだ例のない人工子宮の埋め込みも同時に行われることになっており、二人は無事に終わることを祈っていた。
 最初の手術の日と同様に流れ星の多い夜であった。
 最初の流れ星が消えて行くと同時に聖子に残っていた男性の印が切り離された。
 そして最新の医療医術によって聖子の股間は女性のものに変わっていった。

 手術中のランプが消えて医師が出てきた。
「手術は無事に終わりました。妹さんは綺麗な姿に生まれかわりましたよ。」
 美里と博美はその言葉を聞いて抱き合って喜んでいた。

 9月の新学期になり、新品のセーラー服を着た美しい少女が学校へ向かって歩いていた。スカートから伸びた足はまるで天使のように可愛らしく見えた。
 気の弱いいじめられっ子の少年は、自分に自信を持った美しい女性に生まれかわった。

(FIN)

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