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少女の時
作:T・H






<第1話>


俺の名前は原田 徹。T高に通う高校2年生。部活はテニス部に所属している。
現在は春休み中。もうすぐで俺は高3となる。
現在の時刻は夜中の2時。俺は今、趣味のインターネットでチャットをしていた。
そして、俺はこれからチャットの相手から不思議な話を聞くこととなる。
実は今、チャットの相手と世の中の不思議なできごとについて話していたのだが…。
チャットの相手は、このような発言を出した。
「ある小説によると、突然目が覚めると自分の性別が変わっているという話をよんだことがある。そもそもそれにはちゃんと理由があり、確か人間には人それぞれ生命力と魂の強さというのがあるらしくて、魂の強さの数値がみたないと生命力は危なくなってしまうらしい。そして、その小説の場合、主人公の高校生の男の子から魂をその女の子の身体に移動したのだけど、魂には相性というものもあるらしくて、その男の子の相性は、ちょうどその女の子の魂の代わりにその女の子の身体の生命力を回復してくれるだとかみたいなことだったらしい。そして、最低でも1年くらいはその男の子の魂が女の子の身体に入っていないとその女の子は本当は死んでしまっていただとか。でも、男の子の魂が入っている間その女の子の魂はどこにいっちゃうんだろうねー?」
「それは不思議ですね。実際に体験した人とかはいるのですか?」
俺はチャットの相手に聞き返してみた。
「実際にはいないらしいけど、近い将来本当に体験する人がでてくるんじゃないかなー?意外と今日の朝くらいに体験する人がでてきたりして?」
「え〜っ、さすがにそれはないんじゃないですかねー?」
「う〜ん、そうだね、あはははは…」
俺はチャットの人から聞いた話をかなり不思議に思っていた。現実でこんなことが起こったらどうなるんだろう?
などと考えていると、チャットの相手が
「あ、もうそろそろ落ちますね」
「あ、はい〜。また機会があったらチャットしましょうね!」
「う〜ん、そうですね…でも、直接話ができるかも…」
「そうだったらいいかもしれませんね」
「…そうだね、では落ちますね」
そうしてチャットの相手は落ちていった。
俺ももうチャット相手がいなくなったので、インターネットを切断し、PCの電源を落とした。
今日は朝からテニスの部活がある。部活に響くからそろそろ寝るかな?
俺は時計が2時15分を回ったくらいで就寝した。



ん?ここは…?俺は気がつくと、全然知らない場所にいた。やけに女の子っぽい部屋みたいである。
俺は知らない部屋のベッドで寝ていたのだ。とりあえず起き上がって、周りを見渡して見る。
すると、目の前に1人の少女が現れた。俺は突然の少女の出現で驚きながらも、
「ごめんなさい!気がついたらここで寝ていたんです!」
とりあえず自分が、勝手に人の部屋に入ってしまったことに謝った。
目の前に現れた少女は多分この部屋の人だろう、と判断したので誤ったのだが…
何かおかしな事に気付いた。俺がさっき謝った時に発した声、それは明らかに俺の声ではなかった。
小学校高学年生か中学1年生か、そのくらいの年齢くらいの女の子の声だったのだ。
今俺が喋ったはずなのに、目の前の少女が喋った言葉を聞いたのかな?と思ったが…次に、
「あのー?ここはきみの部屋かなー?」
と尋ねてみた。確かに、俺が喋った時目の前の少女が喋っていた。
だが…何故俺が喋った時に目の前の少女が喋ったのかに気付いた。
自分の周りには縁があった。なんと、目の前には鏡があったのだ。
鏡に写っていたから、目の前の少女は同時に喋り出したのか!なんだ!そういうことか…。
でも、何で鏡には俺の姿が写っていないんだ!?
と思って自分の身体を見下ろした時、俺は気付いてしまったのだ。
『俺の身体がおかしい』と言うことに。
具体的におかしかった個所は3箇所。1つ目は俺の発した声が高いと言うこと。
2つ目は、俺はピンクのパジャマを着ていたと言うこと。
3つ目は、男である俺の胸に、あるはずもない2つの膨らみがあったと言うこと。
確実に俺の身体はおかしかった。そして、その後4つ目の異変に気付く。
いつも朝は生理現象によってだと思われるのだが、俺の又にあるものは必ず膨らんでいる。
なのに、今日はそれが見当たらないのだ。一応手で確認してみたのだが…なくなっていた。
こういう状況になっている以上、結論は1つしか出てこなかった。
『俺が女の子になっている…』
何故こうなってしまったのか、俺はわからなかったが…何故か無償に恐怖と不安が湧いてきて、
「何故俺が女の子なんだぁ〜〜〜っ!!!」
気がついた時には叫び声ともどなり声とも言えない大声をあげていたのだった…。



…さっきのは一体!?現在の時刻は7時ちょうど近く。俺は目を覚ました。
カーテンから朝の光が入り込んでくる。ということは…さっきのは全て夢!?
また新たに意識が目覚めたということは、さっきの出来事は全部夢だと判断した。
ふ〜っ…夜中にチャットであのような話を聞いたためにこんな夢を見てしまったのだろうか?
などと思いつつも、とりあえず俺はパジャマを着替えるために起き上がる。
何だか頭がボーッとする。まだ起きたてで寝ぼけているようだ。
そして、俺はタンスに手をやったのだが…なんだかタンスのデザインがいつもと違うような気がする。
まだ寝ぼけているせいでそう見えるだけかな?俺はそのように思ったので、
気にせずに体育着が入っているはずの1番上のタンスをあけた。
そこには、ちゃんと体育着が入っていた。…何故か俺の小学校時の体育着が。
俺はもう校3なので高校の体育着しか入っていないはずである。だが、俺はまたしても
まだ寝ぼけているせいで高校の体育着が小学校の頃のものに見えるのだろう、
などと思い、構わずその体育着を着た。その時は、特に何も考えていなかったので、
自分の着ていたパジャマは直接目で確認することなく脱いでいた。
次に、タンスから体育着の下を探した。そして、体育着の下が見つかった。
見つかったので手にとったが…俺が手に持っていたのは何故かブルマーだった。
男であるはずの俺がブルマーなど持っている訳がない。それに、俺は女装の
趣味などと言うものも持っていない。なので、やはり寝ぼけているせいだろう、
と思ってしまい、俺は構わず手に持っていたブルマーを穿いてしまった。
そして、クローゼットへと向かい、部活用のテニス着を出した。
…何故かテニス着のデザインもいつもと違うように見えたのだが、俺は構わず着た。
そして、今度はテニス着の下のズボンを穿く。だが、俺がズボンだと思って
穿いていたものは、テニス用の白いスカートであった。
俺はさっきも言ったように女装の趣味など持っていないので女子用のテニス着、
つまりテニスのスカートなどを持っているはずがない。
やはりこれも、まだ寝ぼけているせいでズボンがスカートに見えるだけだ、と思ってしまった。
実際本当に俺はこの時点ではまだ本当に寝ぼけていたのだが…とりあえず着替えが済んだので下に行く。
部屋のドアを開けて…俺の部屋ってこういうドアだったかな?
と思いながらも階段を下りる。何だか階段の段数までもが違っているような気がした。
全ては俺が寝ぼけているせいでそう思えるだけだ、とやはり思ったのだが…
階段を下りてすぐの部屋に入るとリビングに着いた。そのリビングに誰かがいた。
俺は、母さんがいるのかな?と思った。いつも通り母さんにあいさつする。
「母さん、おはよー」
「あ、あかね?今起きたの?」
へ?ちょっと待てよ!母さん?あかねって誰ですか?
だが、母さんは今俺に向かってあかねと言ってきていたと判断する。
その時、母さんにあいさつするために始めて起きてから声を発した俺は、
自分の声がかなり高くなっている…恐らく女の子の声になっていると言うことに気付く。
そして俺は自分の身体を見下ろしてみる…この時点で、俺は完全に目が覚めた。
「俺が女の子になってるぅ〜!?」
俺は叫び声ともどなり声ともいえない大声をあげた。
俺が見たものは、自分の前にある大きな2つの膨らみ、自分の現在の格好、
要するに女子のテニス着を着ている自分。(特に目に入ったのがスカート)
それを見た時にさっきの声のこともあり…気がついたら大声をあげていたのだ。
変な夢を見たこともあり、すぐこのような状況で自分が女の子になっていることに気付けた。
でも…今俺が女の子になっていると言うことは…さっきの夢は予知夢!?
「?あかね???どうしたの!?急に大声なんかだして?」
よく見たらこれは俺の母さんではなかった。とりあえずここでは知らない女性と言っておくとする。
俺の知らない女性は、どうしたの!?と俺に聞いてきた。
俺は今自分が女の子になっていることから、今の俺はあかねという子になっている、
ということも何とか即断できた。
「えっ…だ、だって〜…」
俺は何か言い返そうとしたが、何も言葉が思い浮かばなかった。
知らない女性は、俺の大声があまりにもでかかったため、何て言葉を言っていたかまでは
わかっていないらしい。なので、『俺が女の子になってる』と言う部分は伝わっていないのだ。
「あかね?どこか調子でも悪いの!?部活休む?」
「えっ…調子は…えーっと…特に問題ないです…」
本当は俺自身に問題ありまくりなのだが…何故かそのように答えてしまった。
「そう、じゃあテニスの部活がんばるためにまずは朝ご飯食べてね」
「は…はい」
俺は朝ご飯を食べながらしばらく考えた。何故自分が起きたら、俺はあかねと言う子になっていたのか?
もしかしてこれって…夜中にチャットで聞いた話が実際に俺自身に起こっているとか!?
…まさかな。でも…じゃあなんで俺はあかねちゃんって言う子になってしまったのだろう?
…しばらく考えても結論は出なかった。そしてしばらくすると階段から足音が聞えた。
足音はどんどん近づいてリビング直前で一旦止まったかと思うと、
「おはよう」
と声がした。男性の声だった。
そして、その男性は俺が今座っている前の席に座って朝ご飯に手をつけだした。
「あかね、おはよう」
「え…えっ?えっ?…お、おはよう…」
あいさつを返すにも一苦労した。知らない人にいきなりあいさつされて、
普通に返せと言う方がむしろ無理であろう…。
ともかくこの状態ではまずい、と俺は思った。なので、今同じリビングにいる知らない女性と、
男性の人に今の俺の状態を話すことにした。
多分この人達は今俺がなっているあかねちゃんの両親だと思う。
なので、この子の両親に話せば何かわかるかもしれない、と思ったのだ。
俺はとりあえず話を切り出そうとしたが…切り出すきっかけがない。
逆に、知らない人たちに話を自分から切り出せって方が無理だろう…。
「あかね?さっきから下向いたままご飯食べててどうしたんだ?何だかあかねらしくないぞ?」
突然この子の父さん(だと思う人)が俺に話し掛けてきた。
ちょうどあかねらしくないぞ?と言ってくれたので、これで話を切り出せそうだ。
「…実はそうなんです。あかねらしくないのは当然です…俺はあかねって人ではないのだから…」


<第2話>


俺が話を切り出した時、確実に一瞬時が止まったように見えた。
「あかね!父さんたちをからかうのはよしなさい!お前があかねじゃないはずがないだろう!」
「そ…そうだよね〜」
この子の両親は2人して言ってきた。う〜ん、信じ込ませるのは難しいみたいだ。
そこで、俺は本来のあるべき姿の俺を自己紹介することにした。
「まあ信じろって方が無理だと思いますが…俺はあかねではなく、本当は原田 徹って言う名前の高校2年生なんです。今年で3年生になりますけど」
「…原田 徹?誰だね?それは!?」
…ダメだ。まるで信じてくれていない。とりあえず、俺はこれから自分の家に戻る事にした。
俺があかねちゃんになっているなら家には俺になってしまったあかねちゃんがいるかもしれない、
そう思ってそれを確認しようと思って本来の俺の家に戻る事にした。
「とりあえず俺は原田 徹の家、自分の家に戻ります。信じてもらえなくても結構ですけど…でも本当のことなんです」
「…よくわからないけど、じゃあうちのあかねにはその、原田 徹って人が入っているって言うの?」
「まあ、自分でもよくわからないけどそうみたいです」
「…なんか信じられないけど、仮にそれが本当だったとしたらうちのあかねはどこに行ったって言うんだ!?」
「それは…はっきりはわかりませんが、俺があかねって子になっているのだからそのあかねって子は原田 徹、つまり俺になっているのでは、と思います。なので、それを確認するということもあるので、とりあえず自分の家へ行ってみます」
そう言って俺はリビングをあとにした。



家を出て表札を見てみる。すると、そこには河村と書いてあった。
どうやら今の俺、この子の本当の名前は『河村 あかね』というようだ。
あかねちゃんの家をあとにした俺は、俺の家へと向かう。
でも…ここって何処なのだろう?俺は現在地がわからなかったが…しばらく行くと、
いつも高校を行く道に立っている看板が目に入った。
なーんだ。ここは本来の俺んちの結構近くだったんだ〜。
そして、しばらく後。俺んちに着いた。とりあえずインターホンを鳴らす。
しばらく待つ。すると…ドアから出てきたのはすっごく見慣れた顔だった。
俺、原田 徹が出てきたのである。やっぱり今俺の中には誰かが入っているんだ。
「きみは、河村 あかねちゃんだね!まあとりあえず上がってよ!」
原田 徹は、あかねちゃんの姿をしている俺に言った。
あれ?俺の中に入っているのはあかねちゃんじゃないのかなー?
とりあえず俺は自分ちにあがった。
「まあとりあえず話のできる部屋にでも、こっちね〜!」
…何故俺が俺に自分の家を案内されなくてはならないのだ…。
とりあえず和室に入った。なにやら話をするようだが…。
「きみは、誰?あかねちゃん…じゃないよね?」
俺は、目の前の俺に聞いてみた。
「そう、あかねちゃんじゃないよ。何故こうなったのか、それはこれから俺が説明するね」
この口調は…俺自身から発せられているけど、俺ではない。
やはり誰かがこの中に入っているのはわかったが…誰なんだ?
「まず、俺が誰なのか?を話そう」
どうやら今俺の中に居るやつは全てを知ってるようである。ここは話を聞くことにした。
「俺は、今は原田 徹の姿を借りているけど、元はこの世の人間じゃないんだ」
「え?じゃあそれって?宇宙人?」
「違うよ〜。そうじゃなくってね、俺は別世界からきた人間なんだ」
「べつせかい?」
「うん、別世界っていうのは、う〜ん、何て言うのかなー…別の世界としかいいようはないね」
「で、きみは何だか俺が本当はあかねちゃんじゃないってこと知ってるようだけど?」
「知ってるも何も原田 徹をあかねちゃんに移動したのは俺だもん!」
「なに〜っ!」
「まあまあ落ち着いて!だからこれから全てを話すんでしょ!」
「あ…そうだね」
「きみは、夜中のチャットのことは覚えてる?」
「え?まあ覚えているけど」
「あの時のチャットの相手って、誰だかわかる?」
「相手ねー…もしかして!きみ?」
「ピンポンピンポ〜ン!大正解〜!きみにチャットであのような話をしたのも、実際にきみ自身にそのようなことをこれから起こさせるという予告みたいなもんだったんだよ!それに予告は夢でもしたけど」
「夢?あの予知夢のこと?」
「そう、で、これから何できみを移動したかを話そうと思うけど…チャットで言ったから大体わかるかな?」
「と言う事は…あかねちゃんの生命力は魂の数値が満たないために低くなっていて、俺の魂はあかねちゃんの身体と相性が良くて、俺の魂が入ることによりあかねちゃんの生命力を回復してくれる、ついでに言うとそのままにしておけばあかねちゃんは死んでしまっていた、ということか?」
「ピンポンピンポ〜ン!大正解〜!!」
「…でも、俺じゃなきゃダメだったのか!?俺以外にも相性いいやつはいるんじゃないのか?」
「家が結構近かったからベストかなー?って思ってね。原田 徹を選んだのさ」
「そいえば、チャットでは魂はどこにいっちゃうんだろうねー?って言ってたけど、あかねちゃんの魂は何処に行ったの?」
「ああ、それなら今は別世界に居るよ!このような特別な理由で抜かれた魂は別世界に行くようになってるんだ!心配しなくても大丈夫!生命力を回復させればちゃんと戻ってくるから!」
「…生命力が回復するまでは…やっぱ俺があかねちゃんの代わりをするんだよなー?」
「もちろん、そだけどー」
「じゃあさー、俺はいつまで、ようするにあかねちゃんの生命力はいつになったら回復するのかなー?」
「う〜ん…1年、かな?」
「なに〜っ!1年も俺があかねちゃんの代わりをしなけりゃならないのか〜!」
「ま!がんばれや!それと、他の奴には正体ばらすなよな!ばらしても平気なのは、俺以外には原田 徹の家族とあかねちゃんちの家族にだけくらいかな?まあ、あかねちゃんの両親には俺がメール入れとくからよ!アドは調べたから大丈夫!それと、原田 徹の家族には俺から話しておいたから!そこらへんは心配せずにまかせといて!」
「…まかせていいのかなー?」
まあとりあえず何故俺はあかねちゃんになってるのか、ってことはわかったが…俺、原田 徹としての
高校生活はどうなるんだ〜!?
「あ、それと高校はまかせとけ!俺がきみの代わりに原田 徹として行っておくから!」
「…俺は、やっぱあかねちゃんとして小学校に通うことになるのかな?」
「そうだな!でも、あかねちゃんは今年で中学生だぞ〜!」
「中学か〜…もしかしてT中?」
「そだよ〜!」
「おもいっきし母校じゃん!」
「まあ、あかねちゃんが戻ってきた時のために友達とかは作っておいてやれよ〜!」
「あ、そいえばさ、もし他の奴らに正体ばれたらどうなるの?」
「そうなったら原田 徹はずっと元に戻れず、あかねちゃんも戻れなくなる」
「マジ!?それって俺自身に戻って俺の人生を歩むって意味では命がけじゃんかよ!もしバレたら俺はずっとあかねちゃんなのかよ!?」
「そだよー。でも、命がけなのはあかねちゃんの方も同じだと思うけどなー。きみに全てをまかせているようなもんだし!」
「…まかされても困るんだけどなー。てか今日って4月7日だよね?とりあえず明日から俺はあかねちゃんとして中学校行くの?」
「そだよー。それとさ、なるべく正体バラしていないやつの前ではあかねちゃんらしく女言葉使うようにしろよ〜!ボロがでちまうからね」
「うっ…女言葉…それはちょっときつい」
俺がそう言った直後、2階からドタバタ降りてくる足音が聞えてきた。
「お兄ちゃん!」
弟の広樹が和室に入ってきた。
「あれ?弟にも俺の今の状況は話したのかな?」
「ああ、話したぞ!だから別に隠さなくても平気だから!」
「ねえねえ、この子本当にお兄ちゃんなのー?」
「そうだよー!この子がきみのお兄ちゃんさ!」
「…なんだか女の子になってる時にお兄ちゃんって言われるのも…」
「そんなに屈辱か?」
「…………」
「でも、お兄ちゃんT中に通うことになるんだって〜?じゃあ僕と同じ学年だ〜!」
「えっ?あ〜!そいえば広樹も今年で中1か〜!」
「まあ兄弟でがんばってくれや!」
「…マジっすか?」
「マジっすよ!」
「これからあかねちゃんとして1年間生きていくことになった原田 徹は、なんと弟と同級生、しかも同じ中学校に通うこととなった。果たしてどうなるのか?次回へ続く〜!」
「おい!そこ〜!勝手に結論まとめるんじゃねー!しかも次回って何だ!?第1章は10話まであるんだろ〜!?」
「そうなん?まあ一気に10話行くかはT・Hのがんばり次第だな!」
「…ともかく10話はあるって!よって!まだ次回じゃないです…」
「お兄ちゃんと同じ学校か〜…なんだか貴重な体験って感じ?」
「…おいおい、貴重なのかよ?」
「だってさ、この世に双子以外で他に兄と同級生なんて人いると思う?」
「…でも今は中身は兄ちゃんでも、外見はあかねちゃんなんだから、広樹も気をつけろよ…」
「わ〜かってるって!」


<第3話>


そして、俺はその後あかねちゃんの家に戻った。
「…お邪魔します」
今俺はあかねちゃんであっても、中身は原田 徹の意思なので、一応お邪魔しますと言ってから入った。
そして、とりあえずリビングに戻ったのだが…リビングに行くとあかねちゃんの
両親は少し驚いたような顔で俺を見てきて、
「…あなたは本当に原田 徹って人なのね?」
「さっき原田 徹の姿を借りてるって人からメールがきたんだ。これでだいたい事情はわかったから」
…なんだか両親はもうすっかり信じているようだ。さっきまで全然信じていなかったのに、
俺の中に居るやつは一体メールになんて書いてこんなにすんなり信じさせたのだろうか…?
と言っても、今はそんなことはどうでもよかった。ともかくあかねちゃんの両親には
信じてもらえないと色々と困ると思っていたので、とりあえず一安心。
「じゃあ明日からは家でも学校でもあかねってことで頼みますね」
「それに、きみにあかねの命がかかっているってことも聞いたから…すまないね」
「はぁ…でも、なんかもう俺がやるしかないみたいだし…しょうがないですよ」
何だか今とてつもなく重大な任務を背負っているような気分だ。
とりあえず、1年間俺があかねちゃんとして生活することに変わりはない。
あかねちゃんの命のため…そして自分の元の身体に戻るためにも、俺があかねちゃんになるしかないのだ。
でも…弟と同じ中学校でしかも同級生って言うのはなー…正直かなり驚いてしまった。
これからはきっと弟の前でもあかねちゃんとして振舞わなければならないのだろうなー…。
…俺の高3としての人生はもうあきらめるしかないのだろう…。
でも、中1に逆戻り、しかも女の子として生活することになるとは…。
確かにこんな状況になっているのは世界に俺1人しかいないのかもしれない。



「じゃ、行ってきますね」
次の日、俺は朝ご飯も食べ終わって支度も完了したので、学校へと向かった。
現在の俺の格好は、女子の制服に女子のカバン。まさか男である俺が人生の中で
女子の制服を着ることになるだなんて思ってもいなかった…。
何度も言うが俺には女装の趣味などないので…。
俺は家をあとにした。そして、一緒に行く相手も特にいないので無言のまま学校に向かう。
「あかねちゃ〜ん!」
しばらく行ったところで、突然誰かに声をかけられた。
振り向くと、そこには弟の広樹がいた。周りに…何人か人がいる。
となると…今俺はあかねちゃんとして振舞わなければならないのか…。
そういえばよく知らないけど…弟って女の子には弱いタイプなのかな?強いタイプなのかな?
俺は、弟はどちらのタイプか試してみることにした。
「おはよ☆広樹くぅ〜ん!」
俺は自分では恥ずかしいと思いながらも、ウィンクをしながらいかにも
女の子らしい仕草、そしてかわいい声で言ってみた。
「…………」
広樹からの反応がない。広樹は…女の子には強いタイプなのかな?そう思った時、
「…あ、あかねちゃん…」
広樹から心臓の高鳴る音が聞えてきた。広樹は今の俺の仕草に戸惑ったようだ。
「あ…あかねちゃん…かわいい!」
「お…おい、広樹…大丈夫か?ほんの冗談だって…」
「冗談でもいいよ!あかねちゃんかわいいよ〜!惚れちゃいそう!」
「お…おい、中身は俺だってわかってるんだろ?」
「別に中身が何でもいいよ!あかねちゃ〜ん!彼女になって〜!」
「うわぁ〜っ!じょ、冗談じゃね〜よ!」
弟は…ものすごく女の子に弱かったみたいだ…。俺がちょっと冗談でやったことなのに、
今はこんな状況になってしまっている。今にも俺に抱きついてきそうな弟から逃げるために、
俺は走り出した。おもいっきし弟から逃げる。
「あかねちゃ〜ん!待ってよ〜!」
俺はともかく全力で走った。…でも、何故かすぐ疲れてきた。今は女の子の身体だからなのか?
そして、俺が走って角を曲がろうとした時、
『ゴチ〜ン!!!』突然角で誰かにぶつかった。
「イタタタタ…ご、ごめん…」
「わ…私の方こそ…イタタタタ」
私?ということはぶつかった相手は恐らく女の子だ。
「き、きみ、大丈夫…?ごめんね、俺の不注意のせいで」
「だ、大丈夫…痛いけど」
そしてしばらくして痛みはお互いおさまった。
「あれ?きみは俺と同じ制服着ているってことは…」
「もしかしてあなたも新入生?私も今年T中に通う新入生だよ!」
「そうなんだー、じゃあこれからまたどっかで会うかもね?」
「うん…ねえ、あなたって、女の子なのに自分のこと『俺』って言うの?」
「へ?俺が女の子!?…なんだよね…」
「???」
俺はこの子と会話していたらすっかり自分の今の状況を忘れてしまっていた。
さっきはこの子と自分の制服が同じだと気付き、自分の着ている女子の制服を
見たにも関わらず、忘れていたとは…。
「なんだかあなたっておもしろいね?あ…いきなり初対面でそんなこと言ったら失礼よね?ごめんなさい…」
「えっ…べ、別にいいけど…」
「そいえばさ、あなたは名前何て言うの?私は石田 香澄。よろしくね!」
「俺の名前はね、原田…じゃなくって!あかね!河村 あかねって言うの」
「へぇ〜っ、あかねちゃんかー。何だかいい名前だね!でも本当に面白いね!女の子なのに自分のことを俺って言うんだもんねー」
「えっ…あ、こ、これはね、ちょっとしたアニメの影響であってね…普段は私って言うけどたまーに影響で俺って言っちゃうんだ…ただそれだけのことだよ…」
俺は咄嗟に理由を作った。もちろん、本当はまったくのウソであるが…。
「そうなんだ〜。あ、せっかくこうしてここで会ったのも何かの運命かもしれないし、一緒に学校行っちゃわない?」
「う、うん、そうしようか?」
「うん!そうする〜」
こうして俺は香澄ちゃんと一緒に学校に行くことにした。その時、
「あかねちゃ〜ん!やっと見つけた〜☆」
「げっ…ひ、広樹…」
「あかねちゃん?どうしたの?知り合い?」
「え?知り合いって言うか…ちょ、ちょっとね」
あとで聞いた話だが、広樹は走って逃げた俺を見失ったらしく、しばらく探していたらしい。
で、今やっと俺を見つけた、ということみたいだ。
「あかねちゃん、その子誰?」
「えっ、この子はね…ちょっとここで知り合ってね」
「私は石田 香澄って言うの!あなたも新入生だよね?」
「そうだよ〜、あ、ちなみに僕の名前は原田 広樹」
「じゃあまたどっかで会うことになるかもね!よろしくね」
「うん、よろしく〜」
「ところでさ、あかねちゃんと広樹君ってどんな関係なの?もしかして彼氏彼女とか?」
「え?違うよ〜、広樹とは単なる兄弟だよ」
「えっ?兄弟?苗字が違うのに?」
…おとといまで男だった人が急に女の子を演じると言うのはやはり難しすぎる。
どうしてもつい原田 徹としての立場で喋ってしまう…。
「実はね、今のはあかねちゃん風のジョークなんだよ!あかねちゃんジョークってやつ!」
お、広樹、ナイスフォロー!サンキュー。
「あかねちゃんジョーク?アメリカンジョークのパクり?やっぱりあかねちゃんっておもしろいね!」
…これで俺は香澄ちゃんに完全におもしろいやつだと思われてしまったみたいだ…。
俺は構わないけどあかねちゃんが戻ってきたら、あかねちゃんは自分は知らないうちに
おもしろいやつだと思われているってことになってしまうのか…。
…ま、いいか。なんとかなるかな〜。
「ところで、香澄ちゃんってどのあたりに住んでいるの?」
俺は考えていてもしょうがないので香澄ちゃんと話し込むことにした。
「私?私はね〜、この近くにある本屋の近くかな?」
「え?じゃあもしかして家近いかも?」
「あかねちゃんも本屋の近く?」
「うん。実はそうなの」
「へぇ〜、広樹君は?」
「僕んちも本屋の近くだよ〜」
「そうなんだー」
そのご、広樹が俺に耳打ちで言ってきた。
「お兄ちゃん、もしかしてあかねちゃんちじゃなくて本来の自分の家のこと言ったの?」
「…そいえば今俺はあかねちゃんちで暮らしてるんだった…でもあかねちゃんちも一応本屋には近いって」
「さっきから2人とも何話してるの?」
「えっ、あ、別に…何でもないよ!」
「そうそう!何でもないよ!」
「ふ〜ん、そっかー」
そして、話をしながら歩いているうちにいつの間にか学校に着いていた。
学校の校庭に行くと、なにやら人が集まっている。俺と広樹、香澄ちゃんも
人の集まりのところへ行って見る。
そこには、新入生のクラス名簿が貼りだされていた。
俺は何組だろう?自分の名前を探してみる。しかし、名前は見つからない。
「あかねちゃん何組?私も広樹君も2組だよ〜!」
「えっ、それがね、何故か名前が見つからない…おかしいなー、原田 徹って名前が出ていない」
「そうなの?じゃあ私も探してみるよ…ところでさ、原田 徹って誰?」
しまった〜!…まただ。どうしても本来の自分の立場で喋ってしまったり
ものを考えたりしてしまう。今もあかねではなく徹の名前を探していたし…。
「香澄ちゃ〜ん!今のもあかねちゃん風ジョークだよ!だからあんま気にすることはないよ!」
「へぇ〜!そうなの〜!やっぱあかねちゃんっておもしろ〜い!」
…広樹のおかげで何とか誤魔化せたが…俺はまたおもしろいやつと思われてしまったのか…。
「でもさー、原田 徹って本当に誰なの?原田君と同じ苗字だよねー?」
「あー、原田 徹は僕のお兄ちゃんだよ!」
「へぇ〜っ、そっかー。原田君ってお兄ちゃんいたんだー!」
とりあえず俺は今度は河村 あかねの名で探してみた。そしたら、ちゃんと出ていた。
えーっと…俺も2組かー…弟と同じクラスだなんて…。でもしょうがないか。



クラスの確認も終わったので、早速3人は2組へと向かった。ドアを開けてみると、
知らないやつばっかり…って、当たり前だよな。
他にも友達、ちゃんとできるかなー?中身に俺が入ってる以上、ボロを出さないようにするので
精一杯だとしたら、友達なんてまともに作れるだろうか…?
まあ俺自身としては友達できなくてもいいけど、それじゃああかねちゃんが戻ってきた時かわいそうだ。
でも、とりあえずもう香澄ちゃんとは友達になれたみたいだ。
一応今は広樹とも友達ってことになっているみたいだが…というよりそうしておかないとまずいだろう…。
俺の席は、ちょうど窓際のところだった。日差しが微妙に机に当たる。
で、俺の隣は誰だったかと言うと…なんで弟なんだよ!いきなり広樹が隣かよ…。
ついでに言うと、香澄ちゃんは俺の後ろの席だった。
室内にいる生徒のほとんどはお喋りをしていたが、俺はそのまま席でHRが始まるのを待っていた。
そういえば香澄ちゃんも席にいるままだが、喋る相手はいないのかなー?
そしてしばらくして、先生が入ってくる。生徒が皆同時に着席する。
「今日からこのクラスの担任になる高橋だ!みんな!よろしくな!」
…なんかおもいっきし知ってる先生なんすけど。この先生は3年間ずっと俺の担任だった…。
そして、今度はあかねちゃんとしてではあるが、またこの先生が担任になるとは…。
「とりあえずまずは入学式があるから、全員体育館へ移動だ!」
すると、生徒たちは一目散に廊下に並んだ。始めは先生の指示に従って、
とりあえず席に座っている順に並び出す。
そして、1年2組ご一行は体育館へと向かった。


<第4話>


体育館に着くと、既に他の何組かが先に整列していた。
2組も先生の指示に従い、整列をする。整列が終わると、前から順に座る。
広樹は男子の列に居るから、今は遠くにいるけど、香澄ちゃんは今俺の後ろにいる。
…なんだか女の子の列の中に並ぶと言うのも落ち着かないものだ。
本当は男である俺からとっては、もちろん女の子の列の中に並ぶのなんて初めてだ。
でも…そのうち慣れる…かなー?今はやはり落ち着かない。
「ねえねえ、そいえばあかねちゃんって4月に引っ越してきた転校生だったの?」
「え?そうなの?どうだろう?俺は知らないけど…そ!そう!転校生なの!…」
またまた普通に原田 徹としての立場で答えてしまった。すぐ言葉を修正したが、
香澄ちゃんが一体どう反応することだか…。
「やっぱり〜?どうりで周りであかねちゃんの名前が聞えると思ったよ!」
…あれ?意外と普通の反応だったな。何故だろう?…まっ、どうでもいっかー。
「あれ?そいえばさっきなんでどうだろうって言ったの?」
…もしかして香澄ちゃんって結構鈍いのかな?とりあえず何か言い分けしないと…。
「あ、今のもあかねちゃんジョークってやつだよ…」
「あかねちゃんってやっぱり…」
えっ?やっぱりって何がですか!?もしかして俺のことバレた…?
「やっぱり!おもしろいね〜!あかねちゃん」
…なんだ。ビックリしたけど、そういうことか。案外心配しなくても大丈夫なのかも?
でも、やはり今みたいに反応されると正体がバレたんじゃないかな?と思ってひやひやする。
ふと気付けば、もう少しで入学式が始まる。そいえばこの学校の校長、
話の内容がくだらないくせにやけに話がばか長いんだよなー…。
はっきり言ってだるいし!…でも、またあの長話を聞かなくちゃならないのか…。
俺は耳元で小さな声で香澄ちゃんに言った。
「ねえねえ知ってる?この学校の校長っていっつも話の内容はくだらないくせにばか長いくらい話が長いんだよー」
「へぇー、そうなんだー…でも、何であかねちゃんがそのこと知ってるの?あかねちゃんも新入生だよね?」
「あ…そ、それはね、近所の高校生が言ってたんだよ!T中の校長の話は長いって…」
危ない危ない。何故かつい原田 徹の立場で喋っちゃうんだよなー…。
「え〜、生徒一同静かにしてください」
教頭の先生がマイクで全校生徒に呼びかけた。
「ただいまより、平成14年度、入学式を始めます」
どうやら入学式が始まるようだ。
「始めに、校長先生のお言葉」
教頭が言うと、マイク権を校長へと移した。
「えー、全校生徒のみなさん、おはようございます。本日は入学式と言うことで、輝かしい中学校生活のスタートであって…」
ついに校長のばか長い話が始まった…。そいえば俺の入学式の時も同じこと言ってたなー。
そして45分後。
「…であるので、これからは気を引き締めてわが中学の生徒として、学問に励んでください。以上」
…やっと校長の長話が終わった。…俺のときと校長まったく同じこと言ってたな…。
あまりに、何故か覚えていた校長の言葉がどんどん発せられていたので、まるで校長は
台本でも読んで練習したのではないか?と疑いたくなるくらい俺のときと言葉が同じだった。
周りを見ると、校長の話があまりにも長すぎるせいなのか、入学式早々から
寝ている入学生も何人か居る…。
そして、その後はPTAのあいさつなどもあったが、校長の話の長さと比べるとすごくあっという間だった。



1年2組一同は、教室へと戻ってきた。そして、先生がくるまでの間、
生徒はそれぞれグループを作るみたいな感じでお喋りを始めた。
…やっぱり香澄ちゃんは席に座っているままで、友達とお喋りする気配がない。
同情って訳ではないが…何だか寂しそうに見えたので、俺が話し相手になってあげようかな?
「ねえ、香澄ちゃん。香澄ちゃんは誰か友達と話さないの?」
「えっ?友達かー…私は特に仲良い友達このクラスにはいないし…」
「ああ、そういうことだったんだね。でもさー、1人だけ席ついてるのも空しくない?」
「そうだねー…あかねちゃん話し相手になってよ!」
「あ、ああ。別に構わないけど」
「そいえばさ、あかねちゃんって転校生ってのはわかったけど、何処からきたの?」
「え?さ、さあ?何処からきたんだろう…?」
「えっ?あかねちゃん自分のことなのに何で?」
「いや、自分のことじゃないんだよねー…な!んなわけないよね!」
…だめだ〜!俺があかねちゃんを演じるなんて無理に決まっている。
これで原田 徹として喋ってしまったのは何回目になることやら…。
「…あかねちゃんジョーク?」
「そ、そう!あかねちゃんジョークってやつだよ!…」
「あかねちゃんやっぱおもしろいよ〜!かなり気にいっちゃった!」
…これであかねちゃんジョークが出てきて香澄ちゃんにおもしろいと言われたのも
一体何回目になることやら…。ともかく気をつけてあかねちゃんを演じないと…。
確かボロがでないようにするには…女言葉を遣うしかないのか…。
でも、女言葉を遣っていれば気持ちもあかねちゃんになれるかなー?
…しょうがないけど、女言葉でなるべく振舞ってみるかな…。
「でさー、あかねちゃん?本当に何処からきたの?」
「…さあ?何処なんでしょうねー…?」
「本当に何処なのー?」
と、その時、ドアの開く音が聞こえた。
「みんなー、席につけー」
先生が教室に入ってきた。
「じゃ、あかねちゃん、あとで教えてね!」
ふぅ…なんとかこの場は先生によりしのげたけど…何処か適当に
考えておかなくっちゃなー…。
それにしても広樹のやつめ、さっきからずっと俺の話を楽しく聞いてるだけでよー…。
席隣なら香澄ちゃんにだって声届くんだからフォローしろっつんだよ…。
「えー、では、今日は初日と言う事もあって、もうすぐ学校は終わるけど、その前に自己紹介してもらうか」
ええ〜っ!?じこしょうかい〜?…俺はあかねちゃんの事なんか詳しく知らないし…
担任が担任だから原田 徹の内容で言うと危なそうだし…。どうしよう。
まさかいきなり初日で自己紹介がくるとは…。
と、とりあえず、適当に何か考えとかないと…。
えっと、趣味は…何か女の子らしい趣味は…料理ぐらいしか思いつかない。
しょうがない。趣味は料理でいこう。などと考えていたら、
「次、河村」
もう順番が回ってきていた。どうやら順番は窓際の席の方からだったみたいだ。
とりあえず前に出る。自己紹介は…他の人の聞いてなかったけど、
始めに名前から言えばいいんかな?
「えーっと、河村 あかねです。趣味は料理で…と、ともかく!よろしくお願いします」
俺の自己紹介は、何だか変な自己紹介になってしまった。
これで何とかなると思ったが…
「河村は何か特技とかはあるか?」
先生が聞いてきた。…そいえばこの先生、色々聞いてくるのが好きみたいなんだよなー…。
「と、特技ですか!?特技はー…えーっとー…そのー…あ、あかねちゃんジョークです!…」
さっきの香澄ちゃんとの会話を思い浮かべたので、あかねちゃんジョークぐらいしか思いつかなかった…。
「ほう、ジョークかー。それはおもしろそうだな!先生もジョークは好きだぞー!」
…確かにこの先生、よくジョーク言ってたな…。
「あと、河村はS町から転校してきたらしいな!S町はどうだったか?」
…初めて聞く名前だなー。あかねちゃんはS町ってとこからきたのかー。
「え、えーっと、そ、その、よかったです…」
「おう!そうだよな!S町はいつもにぎやかだもんな!河村、ありがと、次、石田」
ふぅ…なんとか切り抜けたぞー。次は香澄ちゃんの番かー。
香澄ちゃんとはこれから付き合いが結構あるかもしれないから、よく聞いておこうかな。
「えーっと、石田 香澄といいます。趣味は色々あります。部活はテニス部にする予定です」
「おう!石田、先生は女子テニスの顧問だから!テニス部入るならがんばれよ!」
「あ、はい」
なに〜っ!?先生…男子テニス部の顧問だったのにいつの間にか女子担当に変わったんだか…。
「よし!石田、ありがと、次…」
そうして自己紹介は続いた。そいえば今の俺はあかねちゃんなのだから、部活も俺の意志ではなく、
あかねちゃんの意思で決めた方がいいんだろうなー?
あかねちゃん、何部に入るつもりだったんだろう?そいえば俺があかねちゃんになってしまった日、
俺は女子のテニス着を着たんだよなー。ということは、多分小学校でもテニスを
やっていたのだろう。ということは、もしかして俺はテニス部に入ればいいのかな?
まあ、詳しくは俺をあかねちゃんに移したやつにでも聞いてみようかなー?
多分知っていると思うし。
俺はずっと考え事をしていたのだが…何だか誰かの視線を感じるような気がする。
視線のほうへ向くと、知らない女子が俺の方を見ていた。
「次、秋山」
俺を見ていた女子は前へ出た。どうやら秋山って言う名前のようだ。
「秋山 希です。特技は何となくです。よろしくお願いします」
「おう!秋山、なんとなくって何だ?」
「はい、何となくは何となくですけどー」
「そうか。秋山、ありがと、次…」
そうして秋山さんは席へ戻って行ったが、何だか戻る途中また俺のことを
見ていたような気がした。気のせいなのだろうか?
…ってか、なんとなくって一体本当になんなんだ!?



そして今日の日程は終わり放課後。
「あかねちゃん!一緒に帰ろ〜!」
声をかけて来たのは香澄ちゃんだ。
「うん、じゃ、一緒に帰ろうっか!」
そしてしばらく歩く。
「あかねちゃんちって、本屋の近くだったよね?」
歩きながら、香澄ちゃんが聞いてきた。
「えっ?そうだよ!」
そして、それから数分歩いたが、すると後ろから突然
「あかねちゃん!」
俺はいきなり後ろから声をかけられて、驚いた。振り向いたら、弟がいた。
なんだ。広樹かー。ビックリさせんなよなー!
「なーに、原田君?」
俺はわざとらしく言った。
「いや、別に用はないよ!」
広樹が言った。こいつめ〜、ただ呼んだだけか〜!!!
香澄ちゃんが聞いてきた。
「そいえばあかねちゃんってさ、原田君と仲いいの?」
「え、まあねー、小さい頃からいつも一緒だったからねー」
「え、小さい頃からいつも一緒?」
…ヤバい。今俺はあかねちゃんだったんだ。俺は適当に言い訳を考えた。
「私は実はねー、まだ幼稚園くらいの時はこっちに住んでたんだー。その時原田君とは同じ幼稚園で幼馴染だったんだよー。小学校に入る前に急に転校しちゃったんだけど、またこっちに戻ってきたって訳。元から私の親と原田君の親が仲良かったっていうのもあって、小さい頃からいつも一緒に遊んでたの!ね、原田君?」
俺は広樹に振った。
「えっ?、あ、ああ、そうだったね!あかねちゃんとは小さい頃毎日のように遊んでいたんだよー!」
「へぇ〜っ、そうなんだー」
香澄ちゃんが言った。ふう、何とか誤魔化せた。しかし、この調子だといつかはボロが出そうだ…。
「あかねちゃんはこの角曲がるの?」
「いや、私はこっちだよー!」
「じゃ、ここでばいばいだね!そうだ!これからは一緒に学校に行かなーい?」
「え、別にいいけどー」
俺は答えた。
「あかねちゃん、じゃーねー!ばいば〜い」
「ばいば〜い」
ふう、香澄ちゃんはよく喋る子だなー。などと考えていると、広樹が俺に言ってきた。
「友達できて良かったね!あかねちゃん!」
「ったく、うるせーよ」
俺は広樹に少し怒った口調で言った。
「第一俺はお前の兄でも、いまは他人同士ってことになってるんだぞ!女子と一緒に帰ってるところにお前が来たら色々と勘違いされるだろ!」
「別に大丈夫だよー」
…一体何を根拠にって言うんだ?
「うちはこっちだもんね!じゃあねー!」
弟がやっと帰った。そして、俺はあかねちゃんちに帰った。


<第5話>


4月9日。俺があかねちゃんとして学校に通うようになってから2日目。
目覚ましの音と共に起き上がる。そして、俺は伸びをする。
俺はあかねちゃんになっていても、相変わらず起きたばかりは寝ぼけていた。
今日も寝ぼけている。頭の中では何も考えていない状態だ。
ベッドから降りて、女子の制服に着替える。…やっぱりまだ慣れないなー。
実際この世に元から居る真の女の子の存在が、不思議に感じてくる。
何で本物の女の子は平気でスカートとかを穿けるのだろう?
それとも、逆に女の子が男の子になったらやっぱ俺みたいに戸惑うのかな?
「あかね〜、起きた〜?」
突然下からあかねちゃんの母さんの声が聞えてきた。
「もう起きました〜」
俺はドアを開けて、あかねちゃんの母さんに聞えるように言った。
その後は、下で朝食を済ませ、学校へ向かった。



「あかねちゃん!おはよ〜!」
「あ、香澄ちゃん」
途中で香澄ちゃんに会った。そいえばこれから毎日学校行こうって言ってたなー。
「昨日と同じくらいの時間に家を出てよかったー。ちょうど時間が合ってたね!」
「うん、そだねー」
「でも、これからはさー、時間決めて本屋の前で待ってればいいかな?」
「それでいいよー」
「じゃ、次からはそうしようね!」
「とりあえず俺と香澄ちゃんはそのまま学校を目指して歩き出す。
「あかねちゃ〜ん☆」
突然後ろから誰かの声がした。予想はついたが一応後ろを向いてみる。
後ろにいたのは広樹だ。…ちょっとからかってやるか。
「原田くぅ〜ん☆おはよ〜う☆」
俺はとても女の子らしいしぐさで言ってみた。…自分でも恥ずかしかったが。
『ドキッ…』
弟は驚いたようだ。でも何か忘れているような気がする…。
「あ…あ…あかねちゃ〜ん☆」
そ、そういえば!忘れてた〜!昨日も俺が今日みたいなことやったら
広樹が壊れた(?)んだった!
「あかねちゃんかわいいよ〜ぅ!彼女になって〜!」
く、くそう…今は香澄ちゃんも一緒だから広樹を荒っぽくまくこともできない…。
広樹はかなり俺にすりよってきている。
「ちょ、ちょっと〜…か、香澄ちゃん!何とかしてくんない!?」
「まかせといて!広樹君!そのまま押してあかねちゃんをGETだ〜☆」
「………って!香澄ちゃん!違うでしょ!」
「香澄ちゃ〜ん!応援ありがと〜!」
広樹は更にすりよってきた。あまりにも広樹は俺にすりよってきたので、
広樹の指が俺の乳首に触れた。
「ヒャア!」
…な、何?今の感覚は一体何だったんだ!?広樹の指が俺の乳首に触れた途端、
何だか今まで感じたこともない変な感覚に一瞬襲われた。
そして、俺はおもわず声をあげてしまっていた。
「あかねちゃん?どうしたの!?」
広樹が聞いてきた。…やっと正気に戻ったようだな。
「べ、別に…」
…俺自身も知らなかったが、女の子の体ってかなり敏感で、たかが少し乳首に
触れただけでもこんなに感じるみたいだ…。
「あー…広樹君あと少しだったのに惜しかったねー」
「香澄ちゃん!違うでしょ!」



そうこうしているうちにいつの間にか学校に着いた。
早速教室へと向かう。3人とも同じクラスなので、3人で1−2を目指す。
そして、俺たちは教室に入ったが…何だか誰かの目線を感じる気がする。
何となく目線の気配でたどって見ると、秋山さんが俺のほうを見ていた。
秋山さん、俺に何か言いたいことでもあるんすか?
どうも気になるので、昼休みにでも秋山さんと話をしてみて聞いてみようかな?



そしてあっという間に昼休み。俺は秋山さんの席に行った。
「あ、秋山さん、何だかいつも俺、じゃなくて!私のこと見てるみたいだけど、何か言いたいことでもあるのかな?」
俺は秋山さんに話し掛けて、直接聞いてみた。
「…あかねちゃんってさ、何か今非常にすごい秘密を隠しているでしょ?」
「なっ…秘密って何の事!?」
まさか!俺の正体がバレたんじゃないだろうなー!?
「やっぱりビンゴ?」
「わ、私はー、秘密なんて1つもないよ〜!」
「じゃあ何でさっき焦ったの?」
「えっ…そ、それは…」
い…言い返せない。
「やっぱ何か秘密あるんだね?」
「…そ、そうだけど…」
俺はしょうがなく白状した。
「…まさかとは思うけど、秘密の内容までは知らないよね?」
「そこまでは知らないよ〜!」
…ほっ。俺の正体は別にバレていなかったのか。
「で、でもさ、秋山さんは何で秘密あるってことわかったの?」
「それはね〜、ただなんとなくだけどさ〜!」
な…なんとなくですか…。
「初めてあかねちゃんを見た時、これは何か秘密を持ってそうな子だなーって言うんでしばらく観察して見てたの!」
「それで俺のこと何度も見てきてたんだね」
「うん、そだよー!…あかねちゃんって実は男の子?」
何〜っ!!…バレたのか!?
「えっ!?…な、何で私が男の子なわけあるの!?どう見たって女の子でしょ!?」
「そだよね〜!あかねちゃんが男の子な訳ないよね〜!あかねちゃん今自分を『俺』って言ったから何となく聞いてみたんだけどね!」
な…なんとなくですか…。
てゆーか俺、また自分を『俺』って言っちゃった…。
今はやっぱ立場的に私って言わないとまずいよなー…。
「あかねちゃんっていつもあの子と一緒に居るみたいだね?名前何て言うんだっけ?」
「えっ?それって香澄ちゃんのこと?」
「そうそう!香澄ちゃん!あの子にはさ、あかねちゃん気をつけた方がいいよ〜!あんま一緒に居すぎるとあかねちゃんの秘密バレるよ〜!」
「えっ!?な、何で!?」
「う〜ん!強いて言えば〜、なんとなくだね!」
な…なんとなくですか…。
てか秋山さんって占い師でもないのに、本当に香澄ちゃんと一緒に居すぎると俺の秘密、
実は中身は原田 徹であるってことがバレるのか〜!?
なんだか信じられね〜なー。ま、どうせ、んなことあるわけないか。
秋山さんはなんとなくで言っていることだし。
そいえば、秋山さんが昨日特技で言ってたなんとなくってこの事だったのか?
「…ねえ、秋山さんのなんとなくって結構当たるかなー?」
「そうねー、10回に9回くらいだけしか当たんないみたいだけどー」
10回に9回『だけ』!?それってよく当たるだろ〜!
「あ!今日あかねちゃんは帰り道で交通事故に遭いそうになるみたい。気をつけてね!」
「そ、そなの!?」
「なんとなくだけどね!でも、遭いそうになるだけで、実際に遭う訳じゃないから平気だろうけどさ!」
…やっぱりなんとなくなのか〜!どこまでもなんとなくな野朗だ!
もう俺内部でこいつのあだ名を、なんとなくさんってつけたいくらいなんとなくな野朗だ!
「あ、そろそろ時間なるね!私は席に戻るよ」
時計を見たらもうチャイムの鳴る3分前だった。
「うんうん!」
そして、俺は席に戻ろうとした時、
「あかねちゃん!」
なんとなくさん…じゃなかった。秋山さんに名前を呼ばれた。
「な、何?」
「これからもよろしくね〜!」
「うん、こっちこそよろしくね〜!」
もう俺も普通に反応を返すくらいには慣れて来たみたいだ。
今だってちゃんと普通によろしくって返せたし。
そして、俺は自分の席へと戻った。そして3分後。
「キーンコーンカーンコーン」
俺の耳にはチャイムの音が鳴り渡っていた。


<第6話>


帰り道。俺は香澄ちゃんと下校していた。
「へぇ〜、秋山さんかー。どんな感じの人だった?」
俺は香澄ちゃんに、今日秋山さんと話をしてみたという事を話していた。
「うん、秋山さんねー、すぐ何となくって言うんだけどー、私は秋山さんの何となくによると帰り道交通事故に遭いそうになるだとか…」
でも、もし本当に事故に遭ってしまったら大変だよな。元々今の身体は
俺のものではなくあかねちゃんの身体だからなー…。
あ、でも遭いそうになるだけで遭うわけではないって言っていたか。
「あかねちゃん!香澄ちゃん!」
突然後ろから声が聞えた。振り向くと広樹がいた。
「あ、原田君」
「広樹君も今帰り?」
「そだよー」
「じゃ、一緒に帰る?」
「もっちろん!喜んで!」
…広樹の女ッたらしめが…でも、今は立場的に人のこと言えないよな。
しばらく歩いていると、広樹は少しペースを落としていた。
ちょうど俺らから少し離れて歩いている。
「…原田君どうしたの?」
「えっ…べ、別に!何でもないよ…ははっ…」
…広樹は何かを隠しているような気がする。
「…そう?本当に?」
俺はしつこく聞いて見た。が、
「何でもないってばー」
広樹は何かを言う気配はなかった。
なので俺はまた前を向いて香澄ちゃんと歩き出す。
すると…何だか下半身に視線を感じる気がする。下半身と言っても
色んな部分があるが、ちょうどおしりの当たりである。
視線の気配のする後ろを振り向くと、
「…な!何?」
広樹しかいなかった。広樹は何かに焦ったように反応した。
…もしかして視線は広樹か?
とりあえずまた前を向いて歩き出すと…やはり視線を感じる。
「そいえばあかねちゃんさー、やけにスカート短いね?パンツ見えそう…」
突然香澄ちゃんが言ってきた。えっ?スカートが短い…!?
…それで広樹が見ていたのかもしれない。はぁ〜っ、すぐこういうものや
女子のスカートの中とかを見たがるから男って言うのはやなんだよなー。
はっきり言って女の敵みたいなものだよなー…って!俺だって本来は男だった。
何俺も俺で本当の女の子みたいなこと考えているんだろう…。
…なんだか少し暑い。今はまだ4月だけど…実は今日は部活を見学して
まわったあとなのだ。そのせいで暑いのかなー?
汗でブラジャーが胸にぴったりくっ付こうとする。…なんだか気持ち悪い。
俺はブラジャーと胸のくっ付き具合を直そうとして胸に手をやった。
その時、手で胸の近くに付いているポケットからお守りを落としてしまった。
あかねちゃんは、詳しくは知らないが小学校の頃から必ずお守りを
服のポケットにしまっていたらしい。なので、今は俺があかねちゃんなのだから、
俺もそのようにしていた。俺はその落としてしまったお守りを拾うためにかがんだ。
「よいしょっと…」
出す気はないのに、つい声に出してしまう…。
…何か今後ろからものすごく強い視線を感じた。後ろを振り向くと、
やっぱり広樹しかいないが、広樹の顔はすごく赤くなっていた。
「み…見えちゃった…あかねちゃんの…見えちゃった…」
広樹は赤くなりながら言った。見えたって一体何が…あっ!
「あかねちゃん…スカート短いってこと忘れていたでしょ…」
広樹はずっと後ろに居たのだから、恐らく俺がかがんだ時に
スカートの中身…あかねちゃんのパンツが広樹の目に届いたのだろう…。
そう思った瞬間、俺も突然顔が赤くなってきた。
「は…原田君…み、見た!?」
「…見えちゃった…てへ」
広樹はベロを出すような言い方をした。俺はすごく恥ずかしかった。
本当は男でも、今はあかねちゃん、女の子になっている以上、
こういうことになるとやはり男の気持ちより女の子の気持ち、
男の人に見られて恥ずかしいと言う気持ちの方が優先に出てしまうようだ…。
その証拠として、俺も突然顔が赤くなってしまったのだから…。
「い…いや〜〜〜っ!!!」
俺は自分でもあげるつもりはなかったのに、悲鳴らしき声をあげてしまい、
その場から逃げるように走っていった。やはり女の子の気持ちが優先されるようだ…。
「あかねちゃん!?待って〜!」
香澄ちゃんが呼び止めるが、俺は走っているままだ。
ちょうど角に差し掛かるところだが、今の俺は頭の中が恥ずかしさでいっぱいだった。
なので、角だと言う事も頭の中にはまわらなかった。
俺は現在走っているので、そのまま角に突っ込もうとする。その時、
『キキーッ!!!』
大きな音がした。車が急ブレーキをかけたのだ。俺はその音で我に返った。
車のブレーキ音がした方向を見てみると、俺のちょうど手前で車が静止していた。
『あ!今日あかねちゃんは帰り道で交通事故に遭いそうになるみたい。気をつけてね!』
突然思い出すかのように、その時秋山さんが今日言った言葉が思い浮かんだ。
…秋山さんの何となく、当たってる…。本当に事故に遭いそうになったし…。
俺はとりあえずその場から立ち上がった。どうやら俺は、自分でも気付かなかったが、
車のブレーキ音に驚いてしりもちをついていたようだ。
その直後、車からドライバーの人が出てきた。
「き、きみ!大丈夫…あっ…」
車から出てきたのは俺の父さん、要するに原田 徹の父さんであった。
もちろん、俺の父さんも俺が今あかねちゃんだと言うことは知っている。
あかねちゃんの姿の時にも何度か父さんには会っている。
「と、父さん!」
俺は自分がひかれそうになった車のドライバーが何と父さんだったので、
驚いてつい名前を呼んでしまった。
「この人あかねちゃんのお父さん?」
…いつの間にか香澄ちゃんが追いついていた。広樹も一緒だ。
「あれ?広樹じゃないか!今帰りか?」
父さんは広樹に言った。
「うん、今帰りだけどー」
すると香澄ちゃんが、
「あれ?今あかねちゃんこの人にお父さんって言ってなかった?」
…しまった。今は広樹の父さんで、俺があかねちゃんである以上
一応立場的に俺の父さんではないんだ…。
「広樹君の父さんなのに何であかねちゃんのお父さんなの?」
実はあかねちゃんは、もう俺、原田 徹の父さんの顔を知っていた。
なので、あかねちゃんである俺が父さんって呼んだことに疑問をもったらしい…。
「あ!あかねちゃんジョークだよ!香澄ちゃん…」
「…な〜んだ!あかねちゃんジョークかー。一瞬ビックリしちゃった!」
…俺もビックリしましたよ…。
「広樹どうする?今から家に向かうから車乗って行くか?」
「うん。ということで!お2人さ〜ん!じゃ〜ね〜!!!」
「広樹君また明日〜!!!」
「じゃ…じゃね…」
…危なかったなー。まさかあそこで父さんに急に会うとは。
でも、父さんも事情は知っているから香澄ちゃんに本当のことは言わないだろうけど。
その頃車の中では、
「徹は大変そうだな〜。ちゃんとそれなりにやっているのか?」
「うん、それに学校でも僕が一緒だから何とかなるよ!」
「そっかー、でもあかねちゃんってかわいくない?」
「父さんもそう思う?かわいいよね!」
「いっそあかねちゃんの姿のままでいいからうちでそのまま暮らしてもらうか?」
「僕も本当はそうして欲しいけど…でも学校で会えるからいいや!」
広樹はどうやら俺のことをお兄ちゃんと言うより、段々あかねちゃんとして
とらえてきたようだ…。中身は俺でも、確かに見た目はあかねちゃんではあるが…。


<第7話>


そして、広樹がいなくなったので俺と香澄ちゃんは2人で帰っていた。
「…あかねちゃん、ちょっと聞きたいことがあるんだけどいいかな?」
「えっ?何?」
「あかねちゃんってさ…本当は…」
「…ほんとうは…?」
ま、まさか正体がバレたんじゃねーだろうな!?
「本当は…広樹君のこと好き?」
「へっ?」
…香澄ちゃんからは俺が広樹を好きなように見えるのか?
「か!香澄ちゃん!な!何で私が広樹君のこと好きな訳!?ん!んな訳ないよ!」
「…じゃあ何であかねちゃんかなり焦っているのかなー?」
「そ…それは…と!ともかく別に好きって訳じゃないからね…」
俺はかなり焦りながら言った。…口が滑ってでも、広樹は弟なんだからって
絶対好きになるはずがないって言えないし…。
「本当に?本当に〜〜〜?」
…香澄ちゃんしつこいよ…。
「本当にぃ〜〜〜〜〜〜〜っ?」
「だ!だから!別に嫌いじゃないけど好きって訳じゃないってば!」
段々俺もむきになってきた。
「じゃあそれなら何であかねちゃん、そんなにむきになるの〜?」
「だ!だって!勘違いされたくないからだよ…」
「ふ〜ん…本当かなー?」
「ほ、本当だとも…」
「ま、いいか!じゃ、今は本当ってことにしといてあげるよ!」
おいおい…今はって何だよ…。そいえば女子って言うのはよく
他人の恋愛に口を入れたがるヤツがよくいるよなー…。
よく、『あたしが結んであげるからまかせといて!』とかって言うヤツいるし…。
もしかして香澄ちゃんもそういうタイプなのか!?…そうかもしれないな…。
…香澄ちゃんって恋愛とか好きそうだしなー…。
俺も勘違いされたら色々やばそうだし…広樹にも勘違いに見られないように
今度にでもよく言っておかないとなー…。
「そいえばあかねちゃんってさ、あれなんでしょ?」
「えっ?あれって?」
「あれはあれだよ!」
「えっ?えっ?あれって何!?」
…あれって何なんだ!?あれって…あれ?何も思いつかない…。
「あかねちゃんさー…」
「な、なに!?」
「…ううん、また今度でいい」
へっ?一体香澄ちゃんは俺に何を言いたいんだ!?
「じゃ、もう私家に着くからさ!じゃーねー!」
「う、うん、また明日」
…んっ?今香澄ちゃんが一瞬ニヤリと表情を浮かべたような気が…。
…気のせいかな?さーってと、俺も家に帰りますか。
そうして俺はあかねちゃんちに帰った。



「ただいま〜」
「おかえりなさ〜い!学校どうだった?」
「まあそれなりにはやっていますので」
帰ってきてすぐあかねちゃんの母さんが話し掛けてきた。
その後、俺は自分の部屋に行った。…要するにあかねちゃんの部屋だ。
そいえば俺はあかねちゃんになってからこの部屋で暮らしているけど、
未だにまだ見ていないところがあった。あかねちゃんの部屋にある
机の引き出しの中である。何が入っているのかなー?などと思い、
試しに1番上の引き出しを開けて見る。
すると、そこには色々な小物らしきものが入っていた。
へぇ〜っ、あかねちゃんこういうのが好きなんだなー。
次に2番目の引き出し。開けると、なかからPSのソフトが出てきた。
…へぇ〜っ、最近は女の子でもゲームするんだなー。
お!音ゲー発見!試しにその音ゲーを手にとる。俺が手に取ったゲームは
DDEだった。DDE…通称、Dance Dance Evolution。
573と言う会社が作っている。ルールとしては、下から上がってくる矢印を
ステップゾーンのタイミングにあわせて踏む。…でも最近のゲーセンのやつだと
リバースと言って、矢印が逆、上から降ってくるのもあるが…。
何故俺はこんなに詳しいのか?実は俺も、よくゲーセンにDDEをやりに
行くからである。自分で言うけど、俺は結構DDEは上手だ。
何しろ踊ろうレベルなら1部除いてクリアできるんだからな。楽チンレベルは
簡単過ぎ出し。とりあえず俺は自分の手にしたDDEのケースを開けて見る。
すると、ソフトの間に1枚の紙切れが挟まっていた。
なになに〜…こ!これは!その紙には、こう書かれていた。

ゲーセンDDE激しいモード専用曲クリアリスト

SA DEEP:AA:47648654点
CANDE☆:AAA:42548754点
MIX300:AA:49879547点
HIGHS ON U:AAA:41876932点
DAVE:AAA:3974837点
LOOKING TO THE SKY:AA:37589642点
DO IT LEFT:AAA:37986548点…

かなり色々書かれていた。何かAAとAAAばっかだし…。
しかも全部激しいモード!?…あかねちゃん、キミは一体何者なんだ…?
すご過ぎる!俺は踊るモードまでしかできないのに…。
…そういえば最近ゲーセン行ってなかったなー。次の休みの日にでも
久々にゲーセンに行こうかなー?…と言っても、今俺はあかねちゃんの身体だった。
それでゲーセンなんか行ったらヤバイかも…でも、よく考えてみれば
紙切れに書いてあった曲は現在ゲーセンでしかできない曲ばっかだし、
きっとあかねちゃんもよくゲーセンに行っていたのだろう。
そいえば前ゲーセンであかねちゃんらしき子がDDEしていたの見たし…。
しかも超うまかった…。それなら別にあかねちゃんの身体のままゲーセンに
行ったって、いたって問題なしだよな。次の日曜日にでもゲーセン行こーっと!



そして次の日曜日。現在の時刻は午後1時。俺はゲーセンに行こうとしていたのだが…
自分のサイフは自分の家、原田 徹の家だった…。
今日は日曜だし、もし仮に広樹が友達でも連れてきていたらマズそうだし…
となると俺はサイフを取りに行けない。どうする!?俺…。
と、ここで思いついた。今は俺があかねちゃんなんだから、
俺があかねちゃんのサイフを持ち出してもいいのではないだろうか?
…でも、それって窃盗になるのかな…?で!でも!今は俺があかねちゃんなんだ!
あかねちゃんのものをどう使おうと俺の勝手だ!…でいいはずだ。
なので、俺はあかねちゃんのサイフを持ち出してゲーセンに向かった。
まあ金を勝手に使った事がやばいと思ったら、あとで自分ちからサイフ持って来て
あかねちゃんのサイフに戻しておけば大丈夫だろう。



あかねちゃんちも本来の俺んちに近いし、俺はいつものゲーセンに向かった。
一応あかねちゃんちの親に断って、自転車をこいで行く。
自転車で5分くらいして、そのゲーセンに到着した。
早速俺は音ゲーのエリアへと向かう。目的はDDE。
DDEの足コンの上に上がり、コインを投入する。
タイトル画面が表示された。俺はいつも通り踊ろうモードを選ぶ。
そして曲選択画面に入ったが…久々のDDEなので、どの曲にすればいいか迷った。
それなので、ルーレットセレクトをしてみる。要するに、ランダムで曲が決まるやつだ。
そしてルーレット開始してストップボタンで停止。すると…曲はMIX300に止まった。
げげっ!これは俺が唯一踊ろうレベルでもクリアできないMIX300…。
……こうなりゃやけくそだぁ〜っ!どうせゲームオーバーなるなら激しいモードにしてやる!
ということで、俺は激しいモードにして、更にスピード×1.5にリバースをつけた。
要するにEXTRAステージで出る設定と同じにしたのだ。
早速プレイに取り掛かる。俺の場合、激しいレベルだと足も追いつかないし
譜面も読み取れない。なのに何故×1.5にリバースまでつけたんだ…。
せめて激しいモードにするだけにしておけばよかった…。まあいいか。
どうせすぐにゲームオーバーになるんだし。そしてMIX300が始まった。
矢印が上から降ってきた瞬間、俺の頭はいつも通りパニックに…あれ?
ちゃんと読み取れる。しかも足も動く!→↓→↓→↓→↓←↑←↑…どんどん
矢印をちゃんとした方向通りに踏んでいける。まるで楽チンレベルをやっているかの
ように簡単だ…。何故だろう。この曲だけは踊ろうレベルでもクリアできないのに…。
曲が終了した時には、俺は何と1番難しい曲にも構わずフルコンボを取っていた。
……すげー!1番驚いたのはもちろん自分自身だった。
でも一体何故急に…そいえば昨日あかねちゃんのゲームソフトに紙が挟まっていて、
そこにかなりすごい点数の記録がメモってあったんだよなー…。
ってことからあかねちゃんがDDEがすごく上手いのはわかる…。
もしかして!これは俺のプレイではなくあかねちゃんとしての俺のプレイか!?
俺があかねちゃんになっている以上あかねちゃんの能力が使えるのか!?
…と言っても能力とまで言うのはオーバーだろうけど…。
ともかく、今俺はあかねちゃんだからこそあかねちゃんの身体が俺の意思に構わず
足を動かしてくれてフルコンを繋げたんだろう。恐らく。
ということはこれからも色々なことが急に起こってもおかしくはないなー。
などと思っていたら、2曲目を選ぶ時間がタイムアウトになってしまい、さっきプレイした
ためにカーソルが合わさっていたMIX300がまた選ばれてしまった…。
…しかも設定はさっきのまま。×1.5とリバース。そして難易度は激しいモード。
……またMIX300か。どうせいくらなんでも今度はゲームオーバーなるかもね…。
だが、プレイしてみるとまたまたフルコンが繋げてしまった。やはり、俺は今
あかねちゃんの身体である以上、俺にできなかったことでもあかねちゃんができることなら
できるようになっているみたいだ。それなら!今度は俺は矢印完全消失モードと、
消失だから意味ないけど×8、リバースをかけてMIX300の激しいをプレイした。
すると…楽チンモードでさえ消失モードはできないのに、軽々フルコンクリアした。
ということは、あかねちゃんはこれがクリアできると言う事になる。
あかねちゃん!?あなたって一体何者…。こんなにDDEがすごく上手いとは…。
ちなみにDDE地帯のことがよくわからない人はDD○のHPを見てみるといいだろう…。
俺がプレイを終わらせてDDEの足コンから降りると、いつの間にかギャラリーができていた。
今のプレイを多くの人たちに注目されていたみたいだ。俺の時だと、注目されたくても
踊ろうモードまでが限界なので注目されない。でも、今は何だか自分のテクニックを
見せびらかせた気分なので気持ちよかった。
「あかねちゃんすごいね〜!!」
どこからか、突然知っている声が聞えた。
「あかねちゃん!ここ!ここだよ〜!」
結構な人数のギャラリーの中、声が聞える。俺がギャラリーをよけて進むと、
香澄ちゃんがいたのだった。今日の香澄ちゃんは頭にリボンをつけている。
なんだかとてもかわいく見える…。
「香澄ちゃん?こんなところで奇遇だねー」
「うん、香澄もDDEしにきたんだけどー…あかねちゃん上手すぎるね!」
「えっ…そうかなー?」
「上手すぎるって!香澄にもコツとか教えてよ〜!!」
「コツねー…ともかく踏むまくる事!…かな?」
「へぇ〜っ!…って!そんなの当たり前じゃん!」
「そ、そうだね…コツねー…ともかくやり込むしかないかな?」
「やっぱりそれしかないかな〜?」
「うん、それしかない…と思う」
現に俺はやり込んでいるのに激しいがクリアできないけど…。
まあ今は別だけど。そいえば香澄ちゃんってDDE上手いのかなー?
「香澄ちゃんはDDEどのくらい上手いの?ちょっとやってみせてよ!」
「OK!まかせといて〜!」
そして香澄ちゃんはDDEの足コンのとこに上がった。
そしてあっという間にモードセレクト画面。香澄ちゃんは多分楽チンモードあたり
選ぶんじゃないかなー?と思ったが…
「う〜ん、やっぱDDEは激しいだよね〜!」
と言って、少しも迷わずに激しいモードを選んだ。香澄ちゃん!?マジっすか?
そして曲選択画面。香澄ちゃんの1曲目は…。
NORE NORE NOREだ。この曲は家庭用の5thMIXにも先行曲として収録されていて…
って、そんな説明はどうでもいいかな〜。
まあ激しいモードだけど、結構簡単な方な曲だよな。香澄ちゃんはこんなものか。
と思っていたら、
「普通にやってもつまんないよね〜!×3とリバースつけよ〜っと!」
なに〜っ!?リバースとしかも×3!?ほとんどそれって俺には読み取れない…。
曲が始まり、香澄ちゃんはプレイを始めた。×3&リバースにも関わらず、
香澄ちゃんはどんどんコンボを繋いでいく。
結果、香澄ちゃんは惜しくも1回MISSを出したが、あとは全ての矢印を踏んだ。
…香澄ちゃんもすごい。こんなにすごいんじゃコツなんて俺に聞く必要ないんじゃ…?
「はぁ〜っ、残念。1回だけMISSだよ〜」
香澄ちゃんはぼやいたが、気を取り直して2曲目に入った。
香澄ちゃんの2曲目はSA DEEP。この曲は難易度が10と言われている曲だ。
香澄ちゃんこんな難しいのやるの…?
「う〜ん、さすがにリバースはきついかな〜?」
香澄ちゃんはリバースを外して、更にスピードも×3から×2へ変更した。
そして曲が始まった。この曲は難しいけどほぼリズムが一定なので、
タタッタタッタタッタタッタッタッと踏んでいけばOKだ。
…でも、それはすごく疲れるんだけどね。大抵は体力が尽きてゲームオーバー。
でも、それにも構わずプレイ中の香澄ちゃんに疲れの色は無い。
結果、香澄ちゃんはGOODが3個、BOOが4個、MISSが7個あったが、
Bランクでクリアした。この曲は難易度10なので、Bでクリアできれば上出来だ。
…香澄ちゃん余裕で俺より上手だし…。一体あかねちゃんも香澄ちゃんも何者!?
そいえば俺はあることに気付いた。香澄ちゃんがさっきやっていた1曲目の譜面も
今の2曲目の譜面も画面を見ていたらいつも絶対あんなの俺には読み取れないのに
楽勝に読み取る事ができた。やはりこれがあかねちゃんの力なんだろうなー。
そして香澄ちゃんは3曲目にいつの間にか突入していた。香澄ちゃんはMIX300を選んだ。
激しいモードでリバースはなしだけどスピードは×2…。こんなの俺にはできね〜し!
でも香澄ちゃんのプレイ中画面を見ているとやはり譜面は読み取れた。
香澄ちゃんはいい線までいってあと少しでMIX300クリアになりそうだったが、
1番最後のずっと踏みっぱなしにしないとダメな矢印を逃してしまってゲームオーバー。
香澄ちゃん惜しかったなー。でも…本当に香澄ちゃんもすげーなー。
プレイし終わって、香澄ちゃんは俺のところに戻ってきた。
「香澄ちゃん、惜しかったね…」
「あ〜〜〜っ!もうっ!」
「香澄ちゃん?どうしたの!?」
「くやしぃ〜っ!あと少しだったのに〜!」
「あ、そういうことね…まあ香澄ちゃんはよくがんばったよ」
「クリアできないと意味ないよ〜」
そして俺と香澄ちゃんはDDEの場所をあとにした。
そしてギャラリーも散っていった。だが…
「あの女たち2人共すごくかわいかったよな…よし!追跡だ!」
「とりあえず捕まえるんか?」
「ああ。そしてあの2人を捕まえたら…ふふふっ…」
俺と香澄ちゃんはギャラリーの中に怪しい2人組みの男がいたことに気付かなかった…。


<第8話>


「あ〜!あかねちゃん!香澄大変だよ〜!」
いきなり香澄ちゃんが店内に響き渡るくらいの大きな声で言った。
「なにっ!?ど!どうしたの香澄ちゃん…?」
いきなりの香澄ちゃんの大声に驚きながらも俺は聞き返した。
「トイレ行きたい!」
「へっ?」
「だから!トイレ行きたいの!あかねちゃんも一緒に行こうよ〜!」
な、なんだ。何事かと思えばトイレに行きたいだけか〜…。
でも、学校とかでもよくそうだけど何で女の子って言うのは1人ではなく
大抵は2人以上で束になってトイレ行くんだろう…?
「あ〜!もうガマンできない!あかねちゃん!早く行こ!」
俺は香澄ちゃんにおもいっきし手を引っ張られたままトイレまで連れていかれた。
トイレまで連れていかれたはずなのだが…俺が連れてこられたのはゲーセンの近くの公園だった。
「香澄ちゃん?あれ?何で公園なの?トイレ行くんじゃなかったの?」
「だって〜!あのトイレ男子トイレと一緒でしょ〜!だから公園でする!」
あ…そいえばあのゲーセンのトイレ、男の立ちション用トイレのとこにあるドアが
女用のトイレなんだよな…。ほとんど男用だけみたいなものだったな…。
「でも、この公園にもトイレないんじゃない?」
俺の言う通り、この公園にも確かにトイレはないはずだ。
「だから!そこの草の茂みに隠れてするからさ!あかねちゃんは別のところでやっていて!」
「く、草の茂み…」
男の立ちションじゃないんだから草の茂みでやるなんて…香澄ちゃんすごいなー。
でも、人気はないみたいだし。それに実を言うと俺も用を足したいし…。
今の状態じゃ確かに俺でもゲーセンのトイレ入りずらいし…香澄ちゃんもここでやるって
言ってるし…俺も香澄ちゃんとは別の草の茂みで用を足しておくか。
俺が草の茂みで用を足している間、香澄ちゃんも別の草の茂みで用を足しだした。
「ふぅ〜っ…すっきりする………えっ!?」
しゃがんで用を足している香澄ちゃんの目の前に突然誰かが現れた。
「よーし。いい子だからおとなしくしてね〜…」
「あ、あなた誰!?」
香澄ちゃんは用を足しているところを見られて恥ずかし混じりに言った。
香澄ちゃんの目の前に現れたのはすごく怪しそうな雰囲気の男だった。
香澄ちゃんはそれなので逃げようとしたが、用を今足しているのでその場から動けない。
男が香澄ちゃんの後ろに回って香澄ちゃんの身体を押さえ込んだ。
「キャ〜…うっ…うう〜っ…」
香澄ちゃんの口は男の持っていたガムテープでふさがれてしまい、香澄ちゃんの挙げた悲鳴は途切れた。
ちょうどその時、用を足し終わった俺は香澄ちゃんのかすかな悲鳴を聞きつけた。
「香澄ちゃん!?」
香澄ちゃんの入って行った草の茂みに向かってみる。しかし、そこには香澄ちゃんの姿はなかった。
でも、確かにあとがあるのでここで用を足したことは間違いない。すると…
「こ…これは!…香澄ちゃんのつけてたリボン…何でリボンが落ちているの…」
さっきの悲鳴といい何か嫌な予感がする…香澄ちゃんの身に何かが!?
…でも香澄ちゃん何処いっちゃったんだろ?とりあえず探してみるか。
公園周辺、ゲーセン内、その他の近くの場所…探したけど何処にもいない。
香澄ちゃんは一体何処へ行ってしまったのだろう…?その時
「あ!あかねちゃんやっといた!探したよ…」
誰かが俺に話し掛けてきた。香澄ちゃん?かと思って振り向くと…
「俺〜っ!?」
「落ち着けよ!俺だよ!あかねちゃんに徹の魂を入れた本人だ!」
「あ…そいえばそうだったな。マジ驚いた。で?何か用?」
「それが…大変なんだ!香澄ちゃんが怪しい男に誘拐されたらしい!」
「ゆうかい〜っ!?」
「まあさっき色々あって仕入れた情報によると、あかねちゃんと香澄ちゃんがDDEをしていた時からその男は香澄ちゃんを狙っていたらしい。それで男はあかねちゃんと香澄ちゃんを追跡して、香澄ちゃんがトイレ行くって言うんで1人になったところを連れ去ったらしい」
「なっ…何で香澄ちゃんが!?」
「わからない…でも、その男はあかねちゃんのことも狙っていたらしい…ヘタしていればあかねちゃんも誘拐されていたかもしれない…」
「私も狙われていたの!?」
「そう。で、犯人は2人の男で、そのうち1人が香澄ちゃんを押さえ込んで誘拐し、もう1人が車で連れ去ったようだ…」
「何処に連れ去ったかわかる!?」
「いや…それが、まだわからないんだ…今は香澄ちゃんの家族にも伝わっているからみんな心配している…何としても早く香澄ちゃんを助けないと!」
「私にも何か手伝える事ある!?」
「とりあえず、犯人の逃げた場所をまずつきとめることだな。でも、今は警察も捜査している。時間の問題で見つかるかもしれないが…」
「でも、一刻も早く香澄ちゃんを助けなきゃ!警察だけじゃいつ見つかるかわからないし…私も香澄ちゃんの居場所を探す!」
「おい!よせ!まだ中学生の女の子が1人で香澄ちゃんの場所を探すなんて危険だ!香澄ちゃん見つかったら犯人も一緒にいるかもしれないだろ!」
「大丈夫!今は中学生の女の子でも私は本当は男なんだから」
「でも、DDEの時はあかねちゃんができるから激しいもクリアできたんだ。それなら体力とか攻撃する力とかも今はみんなあかねちゃんの力になっているはずだ。そんなんで犯人のとこに自ら行くのは危険過ぎる!」
「…でも行く。今は…香澄ちゃんが危ない目にあっているかもしれないんだ!!」
俺は知らないうちにその場から走り出していた。
「あ!おい…待てってば!あかねちゃん!!…」



俺は自分でも何処へ走っているかもわからない。しかし俺は走りつづけた。
「はぁっ…はぁっ…」
しばらく走って息が切れたので、俺は止まってしまった…。俺が止まった場所は、ちょうど学校の目の前だった。
今日は日曜日で学校全体で部活はないので、学校は静かになっている。
香澄ちゃん…このまま香澄ちゃんを探そうとしたが、息切れしてしまったので
俺は水を飲もうと思って門が開いていた学校の校庭へ入って行った。
俺は水道へと向かおうとした。が、途中で立ち止まった。今日は部活がないので学校には誰もいないはず。
なのに何故か体育館の入り口が開いている…。先生も学校にいないはずだ…何故!?
何だかすごく気になったので、俺はそーっと体育館に足を踏み入れる。
体育館に入ってみると…何故か体育倉庫に置いてあったはずのものが全て出されている。
うちの学校の体育倉庫は結構広い。なので置いてあったものがたくさん出ていた。
何故置いてあったものが出されているの…?何だか変に思って、俺は体育倉庫の入り口を開けてみた。
すると…俺の目にある光景が入ってきた…。体育倉庫に立っている鉄柱のところに、
ロープで香澄ちゃんが縛られており、香澄ちゃんの口はガムテープでふさがれていて、
下には香澄ちゃんが今日穿いていたミニスカートが落ちていた…。
そして男が2人。香澄ちゃんの下着を脱がそうとしているところだった。
香澄ちゃんは身動きが取れない上に声も出せないからなされるがままだった。
男2人は俺の存在に気付いて、こっちを振り向いた。
「誰だ!?あ!おめえはこいつとゲーセンで一緒にいた奴だな…わざわざ捕まりに来たのか?」
男の1人が言った。
「ふざけるな!香澄ちゃんを返せ!」
「誰が返すかよ!それよりおめえにも思い知らせてやる…こいつよりおめえの方がやりがいがありそうだ…」
1人の男が言って、もう1人の男が俺の身体を押さえ込んだ。
「キャア〜〜〜ッ!助けて…うっ…うう〜っ…」
俺は逃げる間もなく捕まってしまい、口にガムテープを貼られてしまった…。
「さーって。こいつどうするっすか?」
「まずはこっちと同じようにロープでそこに縛れ!」
「わかった」
そして俺まで香澄ちゃんの横にロープで縛られてしまった。
「よし!こっちは後にして先に今捕まえた方からにするぞ!こっちの方がかわいいしやりがいありそうだ!」
「そうだな。じゃあ早速…」
「うう〜〜〜っ…う〜っ…」
俺は悲鳴を挙げたくても声にならない。そして俺は穿いていたスカートを脱がされた。
だが俺は運良く下に体育着を穿いていた。何とか助かった…。だが
俺は体育着も脱がされそうになったが…
「待て!」
急にもう1人の男が脱がせるのを止めた。
「体育着もなかなかかわいいじゃないか…よし!先に上を1枚脱がせ!」
俺は先に上を1枚脱がされた。運良く上にも体育着は着ていた。
「よし!写真1枚取っちゃえ!」
『パシャン』
俺は体育着の姿のまま1枚写真を犯人に取られてしまった…。
「なかなか発育いいじゃんか〜」
男の1人がそう言って、俺の胸を触ってきた。
「!!!ううっ…う!」
俺は何だかすごく変な気持ちになってきた。
「よし!そろそろ下も脱がすか」
そして、俺はもう1人の男に穿いていたブルマーも遂に脱がされてしまった…。
「へぇ〜っ。なかなかかわいいの穿いてるじゃねーか!よし!そのまま脱がせ!」
もうダメだ〜!俺はきっと色々されるんだ…。
「やめろ!」
「誰だ!?」
そう思った瞬間、入り口から声が聞えた。立っていたのは原田 徹だった。
「あかねちゃんと香澄ちゃんを放せ!」
「ヤロー!おめえ殺されてーのか!」
「いいから2人を放せ!」
「かまわねー!やっちまえ!」
するともう1人の男が、原田 徹に飛び掛った。
原田 徹は逃げようとしない。そして男が原田 徹に攻撃しようとした瞬間、
「げふっ!」
急に男がバタリと倒れた。一体今何が起こったんだ!?まるで男を自然に弾いたかのように見えたが…。
もう1人の男は、あ然としている。その隙に原田 徹は香澄ちゃんのミニスカートを拾って
俺と香澄ちゃんのところにきて縄をほどいてくれた。
そして俺と香澄ちゃんのガムテープをはがしてくれた。俺も香澄ちゃんも脱がされた服を着なおした。
「お前も覚悟しろ!」
原田 徹があ然としている男に言った。すると男は我に帰り、逃げ出した。
「ひぇぇぇ〜っ!こいつバケモノだ〜!」
「逃すか!あかねちゃんも香澄ちゃんも手伝ってくれ!」
そう言って原田 徹は俺と香澄ちゃんにテニスラケットとボールを渡した。
「それで犯人を捕まえるんだ!」
「わかった!香澄ちゃん!」
「うん!」
「せーの!」
俺と香澄ちゃんはテニスボールを犯人に向かって打った。俺と香澄ちゃんの息はピッタリ合っていた。
そして俺と香澄ちゃんの息がピッタリ合っていた玉は、信じられないほどの威力で逃げる犯人に命中した。
「げふっ!」
テニスボールを当てられた犯人はその場に倒れた。


<第9話>


その後警察が到着して、あとは警察が処理してくれた。犯人はもちろん、2人共警察に逮捕されていった。
私と香澄ちゃんは原田 徹に連れられて学校の校庭にいた。
「香澄ちゃん!大丈夫だったかい?」
原田 徹が香澄ちゃんに言う。
「助けてくれてありがとうございました…ところであなたは?」
「俺?ああ、俺は原田 徹。広樹の兄ちゃんさ」
「あ〜!あなたが原田君のお兄さんだったんだ〜!どうりでかっこいいと思った!」
へっ?私ってそんなにカッコよかったかなー?
「それにしても香澄ちゃんは無理やり誘拐されたからしょうがないとして…あかねちゃん、だから無茶だって言ったんだろ…香澄ちゃんを1人で助けに行った時点で犯人にかなうわけないって言ったのに…」
「ま、まあ確かに私も捕まっちゃったけど…でも!あの時は必死だったから!」
「あかねちゃん…必死で香澄を探してくれていたんだね…ありがとう」
「まあでも2人共無事だったからよかった!さーってと!そろそろ帰ろうか」
気がつけば、いつの間にか空には夕日が出ていた。



その後、原田 徹は先に帰ったので私は香澄ちゃんと一緒に帰っていた。
「ほんっと!あかねちゃんが来る前はもうダメかと思ったよ…」
「まあ私も危なかったけど…無事だったんだし!あ、そうだ」
「あかねちゃん?どうしたの?」
私はポケットからあれを取り出した。
「はい!これ」
「あ…私のリボン…拾っててくれたんだ」
「香澄ちゃんのリボン落ちてるのを見て…香澄ちゃんに何かあったんじゃないかって思ったんだよねー…」
そう言って私は香澄ちゃんにリボンを渡した。
「ありがと…」
何だか香澄ちゃんとの友情が深まったような気がした。
そういえば…なんだか知らない間に心の底も本当の女の子みたいな気持ちになっている…。
私も犯人にあんなことされそうになったから女の子としての気持ちが今は優先的に出ているのかもしれない。
男ならああいうことは嬉しがるし、男の状態の私なら絶対ああいうことされる人を
仮に見たとしたら絶対喜ぶんだろうが…でも、さっきは私は嬉しくもなかったし、
興奮もしなかった。男の時の気持ちなんてどこにもなかったのだ…。
その代わり、すごい恐怖心が心の中に溢れていた。もう恐怖心で、心臓が破裂するんじゃないかと
思うくらいすごく怖かった…。きっと香澄ちゃんも私と同じだったと思う…。
もともと男である私だってあんなに怖い気持ちでいっぱいだったんだから…
本当の女の子である香澄ちゃんは、きっともっと怖い思いでいたんだろうな…。
「あかねちゃん…」
私が考えていたら、香澄ちゃんが話し掛けてきた。
「私ね……すっごく怖かったよ〜…ううっ…」
香澄ちゃんが私に泣きついてきた。やっぱり…香澄ちゃんも怖かったんだ、すごく。
私は泣きついてきた香澄ちゃんを暖かく受け入れた。
「香澄ちゃん…早く家に戻ろう。きっとうちの人も心配しているよ…」
「うん……」



「香澄ちゃんは私に泣きついてきているままだったので、私は香澄ちゃんを家まで送ってから
あかねちゃんの家に帰った。今日は本当に大変だったな〜…まさかあんなことになるとは…。
人間の危機なんて、本当にいつ起こるかわからないものだ。私もあかねちゃんになってしまった
以上、本当にいつ何が起こるかわからないかもしれない。でも、今は私があかねちゃんである以上、
私がちゃんとあかねちゃんの振りをしなくちゃね…。
現在の時刻は夜の7時くらい。そろそろ夕飯の時間のはずだ。それなので、私は下へ行ってみた。
しかし、下には誰もいなかった。何処かに出かけているのかな?
家中探しても、私以外誰1人いなかった。ううっ…おなかすいたなー。
おなかがすいてたまらなかった私は、思わず冷蔵庫を開けて見る。すると…
冷蔵庫にはすぐ食べられそうな物は1つも入っていなかった。
カップメンもないみたいだし…おなかすいたなー…。父さんや母さんが帰ってくるのを
待つしかないのかなー…。まだ帰ってこない以上しょうがないので、私はしばらく待った。
1時間経過…更に30分経過…2時間経過…時刻はもう9時をまわっている。
それなのに、親はまだ帰ってくる気配はない…。おなかすいた…。
こうなったら、家がすぐ近くだし香澄ちゃんのとこ行ってなんとかしてもらおうかな?
俺は家を出て、香澄ちゃんちへ向かった。
『ピンポーン』
インターホンを鳴らす。…応答がない。何だか香澄ちゃんち全体に人気がないように見える。
……1分くらい待っても応答がなかった。私は諦めて家へ戻ろうとした時…
「はい…どなたでしょう…」
家の中から、小さな元気の無い声が聞えてきた。どうやら香澄ちゃんの声のようだ。
…香澄ちゃん、やっぱ元気ないなー。さっきの事件のショックが強いのかな…。
「あー、あのー、あかねだけど…」
「…あ…かね…ち…ゃん?」
香澄ちゃんの返答の声は今にも途切れそうな声だ。なんだか今にも声が死にそうという感じだ。
というより、香澄ちゃんの声はなんだか既に死んでいる…。よっぽど元気がないらしい。
「………今ドア…開けるから……待ってて」
そう言われて、私は少し待った。約15秒後。ドアが開いた。
「…香澄に……何…か…用?」
「あ、実はうち親がなかなか帰ってこなくってさ…悪いけど、おなかすいちゃったから何か食べさせてくれないかなー?」
「………上がって…」
香澄ちゃんの様子は、何だか元気がないと言うより、まるで別人のように見える。
香澄ちゃんの表情にもなんだかいつもの面影が感じられない。
あまりにショックが大きいと人と言うのはこんなに変わってしまうものなのか…?
それとも、それ以外に何か理由があるのだろうか……?



とりあえず私は、香澄ちゃんに元気の無い声で部屋で待っていてって言われた。
私は先に香澄ちゃんの部屋にきた。香澄ちゃんの部屋は…すごくきれいに片付いている。
やっぱり女の子って言うのは誰でもきれい好きなのかなー?
そしてしばらく待っていると、香澄ちゃんがきた。香澄ちゃんはドアを開けて部屋に入った。
入ったが、部屋のドアの前で立ったまま止まっている。
「…香澄ちゃん?」
私は香澄ちゃんの名前を呼んでみたが、反応は無い。
香澄ちゃんは手を後ろに回している。その手は、何かを持っていた。
「……香澄…ちゃん?」
私がまた名前を言った次の瞬間、香澄ちゃんは手を前に持ってきた。
香澄ちゃんの手には…包丁が握られていた。
そして香澄ちゃんはその包丁を私に向けてきた…。
「えっ…か、香澄ちゃん…?」
次の瞬間、香澄ちゃんが急に動いて包丁を私目掛けて突きつけてきた。
「うわっ!」
包丁は部屋の壁に突き刺さった。私は反射神経で間一髪よけた。
「か…香澄ちゃん?い、一体何をするつもりなの…?」
すると香澄ちゃんは小さく呟いた。
「………殺す!」
香澄ちゃんは包丁を壁から抜き、再び私目掛けて包丁を突き刺してきた。
包丁はまたもや壁にささった。私はまた間一髪よけた。
これはどう考えても絶対におかしい。香澄ちゃんがこんなことをするはずがない。
なんだか今の香澄ちゃんの目は死んでいるかのように私には見える…。
香澄ちゃんは…普段の自分を見失っている。ショックはこれほどまで大きかったのか…!?
香澄ちゃんは包丁をまた抜こうとしているが、壁に深くささってなかなか引き抜けない。
その間、ここにいるのは危険だと判断した私は、香澄ちゃんの部屋を飛び出した。
階段を急いで駆け降り、家を出ようとする。
玄関に着いた時、香澄ちゃんが上から追ってきた。
「逃がすか!」
香澄ちゃんがそう言った次の瞬間、玄関のドアのカギが勝手にしまった。
えっ?…今一体何が起こったの!?
でも内側からならカギが開くはず…あれ?何で開かないの!?
私がそうしている間、香澄ちゃんは私の真後ろまできていた。
私は追い詰められてしまった。もうダメだ!殺られる…。


<第10話>


香澄ちゃんがおもいっきし私目掛けて包丁を突き刺してきた。
私はもう逃げられない!一体どうすれば…!?まさに絶体絶命だ。
私はおもいっきししゃがんだ。すると、間一髪、包丁は私の頭すれすれの部分を通過した。
今度こそダメかと思った…しかし、安心している場合ではない。香澄ちゃんはドアに刺さった
包丁を、抜こうとしている。まだ私を殺そうとする気みたいだ。
自分を見失っている香澄ちゃんは、今殺人機と化している。一体どうすれば!?
とりあえず私は台所へ逃げた。すると、香澄ちゃんが包丁を抜いて追ってくる。
私は更に台所から茶の間、廊下、再び2回へと逃げ回った。
香澄ちゃんはしつこく後を追ってくる。そして私は小さいドアを見つけた。
私はそこへ逃げ込んだ。そこはトイレだった。私はトイレにカギを掛ける。
ふぅ…ここに逃げればとりあえず一安心だ…。私は必死に考え出した。
どうすれば香澄ちゃんを正気に戻せるか…だが、何も思い浮かばない。
今日は4月13日…まだ香澄ちゃんと友達になってからたったの6日しか経っていない。
たったの6日だけじゃ香澄ちゃんのことも私は全て知り尽くしてはいない。
一体どうすれば香澄ちゃんを正気に戻せるのか…必死に考えたが、何も思いつかない。
考えていると、トイレの灯りが急に消えた。どうやら香澄ちゃんが消したようだ。
香澄ちゃんは包丁を手に持ったまま、トイレのドアの前で待っているようである。
どうしよう…トイレは真っ暗だし、ドアから外には出られないし…何だか段々怖くなってきた。
自分が殺されそうと言う恐怖と…トイレの中が真っ暗で怖いと言う恐怖…。
やはり今は女の子である以上、私はたった真っ暗なだけでも心臓が破裂しそうなくらい怖くなってしまう。
私の心は恐怖心でいっぱいになりながらも、必死に真っ暗なトイレの中で耐え抜いた。
そして数分後。人気がなくなったみたいだ。香澄ちゃんはもうトイレの前から離れた…かな?
恐る恐るカギを開けてドアノブを引いてみる。すると…廊下は静まりかえっていた。
私はそっと静かに廊下を歩き、階段を目指す。もちろん、家から逃げるためである。
階段をそーっと降りて、玄関に差し掛かろうとする。そして、玄関に差し掛かろうとした瞬間。
階段の下に隠れていた香澄ちゃんが急に飛び出してきた!やばい…本当に殺られる…。
香澄ちゃんは包丁を持って私を狙って構えている。私は必死に考えた。すると、
あるシーンが私の頭の中で再生された。



『あかね…妹のあかりが事故で亡くなって悲しいのはわかるけど…いつまで泣いていてもしょうがないでしょ…』
『だって…だって…あかりちゃんが…』
『母さんだって悲しいのよ…いつまでも泣いていないで…』
『………だって…』
『いくら泣いたってあかりちゃんは戻ってこないのよ…』
『………』
『唯一あかりちゃんが残していったものはいつも身につけていたお守りね……』
『………』
『あかね…このお守り、あかりちゃんだと思って…いつもあかねが持っていなさい…きっとあかねが危ない時、あかりちゃんがあかねを守ってくれる…』
『…お守り…?』
『そう…あかりちゃんが残していったものなんだから…あかねが使ってくれればきっとあかりちゃんは喜んでくれるよ…』
『…うん、あかね、もう泣くのやめる…今は姿はお守りだけど…あかりちゃんはちゃんとここにいるんだもん。ね?そうなんでしょ?』
『そうね…きっとあかりちゃんは今このお守りの中で生きているのね…』
『あかりちゃん…あかねをしっかり守ってね…』



気がつくと、私は現実に戻っていた。今の頭の中で再生されたのは一体!?
何だか現実の方ではまるで時間が止まっていたようだ。
でもさっきの記憶…私は原田 徹の時あんな記憶はないのに…。
ということは…今は私があかねちゃんなのだから、今の記憶はあかねちゃんの記憶!?
…でもDDEの時のこともあったし…いつ何が起こっても不思議じゃないって感じだったし…。
きっとさっきのはあかねちゃんの昔の記憶なんだ。いつもあかねちゃんがお守りを
服のポケットに入れてもち歩いているのもこんな思い出があったからなんだろう。
お守りはあかねちゃんからとって大事な宝物…きっとあかねちゃんからとって
あかりちゃん自身そのものなのだろう。あかねちゃんはきっとあかりちゃんが死んだと思わずに、
お守りになって生き続けているんだと思っているのかもしれない。私が考えていたら…
香澄ちゃんが包丁を再び私目掛けて突き刺してきた。私はもう逃げ場がなかった。
「……あかりちゃ〜〜〜ん!助けて〜〜〜!!!」
私は知らないうちに叫んでいた。すると、お守りが空中に浮かび、すごく眩しい光を放った。
そしてお守りの眩しすぎる光により、香澄ちゃんは意識を失って倒れてしまった。
今のは一体…そうか。あかりちゃんが私の出したあかねちゃんの声に反応して、
きっとあかねちゃんを守ってくれたんだ…良かっ……た…。
そのまま私も一緒に気を失ってしまった。



「…ちゃん…ね…ちゃん…かね…ちゃん…」
何だろう?どこからともなく声が聞える。
「かねちゃん…あ…かね…ちゃん…」
誰かが私を…呼んでいる、の…?
「あかねちゃんってば!あかねちゃん!」
「ふぁ………香澄ちゃん…」
「ビックリしちゃったよ〜!香澄が気がついたらあかねちゃんがいつの間にか玄関で倒れているんだもん!」
あれっ…私は確かさっき香澄ちゃんから逃げていて…急に眩しくなって…あとは覚えていないや…。
「あかねちゃん?もう大丈夫?」
「…うん、大丈夫…香澄…ちゃん?」
「えっ?なに?」
「…良かった。いつもの香澄ちゃんだ…」
「そういえばあかねちゃんいつの間にかうちに来たの?確か香澄を送ってきて自分ちに帰ったはずだよね?」
「…あれっ?私はそのあと香澄ちゃんちに9時くらいにまた来たじゃない?」
「へっ?何それ?あれからあかねちゃんは来ていないはずだけど…?」
「へっ?…香澄ちゃん、包丁の事覚えている…?」
「包丁?包丁って何が包丁なの?」
…香澄ちゃんはどうやら私が送って行ってからあとの記憶が途切れているみたいだ。
ということは…もしかしてさっきの香澄ちゃんは誰かに操られていた!?
「あ、あのね、香澄ちゃん包丁突きつけてきて私を殺そうとしたんだよ…」
「ええ〜っ!?香澄が!?本当に!?香澄があかねちゃんを殺すわけないよ!」
「…そ!そうだよね!香澄ちゃんはそんな事するわけないよね!」
…やはりさっきのは見た目は香澄ちゃんだったけど、本当は香澄ちゃんじゃなかったのかもしれない。
見た目はあかねちゃんだけど本当は原田 徹である今の私のように…。
まさか私みたいに誰かが香澄ちゃんに入っていたなんてことはないよね…。
それとも香澄ちゃんのもう1つの人格があってそれが出ていたとか…?
それとも本当に誰かに操られていたのかな!?
…結局考えても、何で香澄ちゃんがあのようになってしまっていたかはわからない。
でも、少なくとも香澄ちゃんは自分の意志で起こしたという行動ではないようだ。
だって香澄ちゃんはその時の記憶をまったく覚えていないんだから…。
でも、香澄ちゃんが正気に戻ってよかった。私もほんっと、ホッとしたよ…。
…でもまさか香澄ちゃんに殺されそうになるとは思いもしなかった…怖かった…。
「そういえば香澄ちゃんの親は?」
「何か今警察署まで行っているみたいだよ。まあ香澄が被害にあって色々あったからじゃないんかなー?」
あのー、あかねも被害にあっているんですけどー…あ!もしかしてそれだから
あかねちゃんの親も2人していなかったのかなー?そうかもしれない。
『グゥ〜〜〜ッ』
「あ……」
突然私のおなかから音が聞えた。そいえば私おなかすいてたんだ…。
「あかねちゃんおなかすいてるの?」
「え…ま、まあね」
「そっかー、じゃあちょっと待ってて!」
そう言って香澄ちゃんは下へ行ってしまった。何か食べ物でもくれるのかな?
「そして数十分後。香澄ちゃんが何かを持って戻ってきた。
まさかまた包丁じゃないよね…良かった。香澄ちゃんが持ってきたのは食べ物だった。
香澄ちゃんが持ってきてくれたのはオムライスだった。お!私ってオムライス大好物なんだよねー。
どうやらかかった時間から考えて、香澄ちゃんが自分で作ってくれたようだ。
わざわざ私のために……ううっ、とてもありがたい…。
「徹君オムライスって大好物でしょ?好きそうだなーって思ってオムライスにしたんだけど。食べてみて!」
「うん。ありがとう!香澄ちゃん」
私は香澄ちゃんからオムライスの乗った皿とスプーンを受け取った。
そして口に持っていく。そしてオムライスを口にほおばった。ん!おいしい。
「どう?徹君、おいしい?」
「うん!とってもおいしいよ!香澄ちゃん……」
なんだかおかしい。私はおかしい事に気付いた。どう見ても今の私はあかねちゃんの姿、
それなのに今香澄ちゃんは私に徹君と言ってこなかった?
そいえばさっきのオムライスを渡す前も…。
「おいしい?そう言ってもらえると香澄嬉しいよ!ありがと〜!徹君!」
…やっぱり今も徹君って言った。確かに私は中身は徹だけど…今の状態で徹なんて
呼ばれることは絶対にありえないはずだ…なのに何で!?
「…ねえ、香澄ちゃん?今あかねに徹君って言わなかった?」
「えっ?だって徹君でしょ…って!しまった〜!今徹君はあかねちゃんだった…あ!何でもない!何でもないの!!あかねちゃん!気にしないで…」
…やはり。これはどう考えても香澄ちゃんが私の正体を見破っている…。…でも、正体が見破られても特に問題はない…
『あ、そいえばさ、もし他の奴らに正体ばれたらどうなるの?』
『そうなったら原田 徹はずっと元に戻れず、あかねちゃんも戻れなくなる』
『マジ!?それって俺自身に戻って俺の人生を歩むって意味では命がけじゃんかよ!もしバレたら俺はずっとあかねちゃんなのかよ!?』
『そだよー。でも、命がけなのはあかねちゃんの方も同じだと思うけどなー。きみに全てをまかせているようなもんだし!』
突然初めの頃の、私をあかねちゃんに入れた本人との一部の話のやり取りを思い出した。
このやり取りによると…私、あかねちゃんが原田 徹だってバレたら元にもどれないんじゃん!問題大有りだ!
…もしかして心の底から本当の女の子っぽくなってきたのも、全ては香澄ちゃんが私の正体に気付いて、
私が本当のあかねちゃんと化してしまうと言う前触れだったのだろうか…?
でもそれやばいって!何とかしないと!
「香澄ちゃん!?さっき徹君とかって言ったけど、私はあかねだよ!…あ・か・ね!」
「そだよね…徹君は今はあかねちゃんだよね」
「だからあかねだって!」
「あれっ?あ!しまった〜!また徹君って言ってしま…あ!何でもないよ!はははっ…」
「だ〜か〜ら!香澄ちゃん!私は徹だって!」
「…徹君、やっと白状したね?」
「えっ…あ!間違えて徹って言っちゃった!」
香澄ちゃんはやはり私の正体を知っている…この状況、すっごくまずいと思う…。
香澄ちゃんが知っていると言う事は…私は原田 徹にはもう二度と戻れなくなってしまうの!?



☆あとがき☆


実はこの話、T・Hの1番初めに投稿した話『俺が好きな人』より前に作った話です!
なんか初めは投稿する気はなくてなんとなく俺が好きな人を作っていたので、
キャラ名が思いつかずこっちのキャラと同じ名前にしたんです。
あ、でもこの話のキャラと『俺が好きな人』に出てくるキャラは別の人物なので。
その後は本当はこの話も投稿しようと思ったけど、キャラ名が一部かぶっているので
なんかあれかなー?とかって思って結局その頃は投稿しなかったんです。
でも、なんだか久しぶりに読み直してみたら自分的に結構いいかなー?って思ったので、
今はこうして投稿してみました。
実はこの話、さっき言った通り俺が好きな人より以前に作った話です。
初めに投稿しなかったのには、キャラ名のこと意外にもう1つ理由があるんです。
よく、初めは憧れの人のマネ(小説で言う場合ストーリーや内容を似せる?)をして
どんどん上達していくという例があります。T・Hも、この作品初めの方の部分は
ある作品のマネをして設定を少し似せてしまいました。それなのでパクりになって
しまうのではないのだろうか?と思って投稿しませんでした。
でも…なんだか投稿しないのももったいないと思い、結局投稿することにしました。
ちなみにT・Hが少しマネさせてもらった作品は、何の作品かわかります?
もしわかったら感想書き込みの欄に答えを書き込みましょう!(本当に答えなくてもいいですが)


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