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あの頃の記憶(第2章)
作:T・H






<第6話>〜戸惑い〜


昼休みも終わり、今は5時間目。
由梨ちゃんは保健室からいっこうに戻ってくる気配はない。
俺はというと、真由美ちゃんの身体を借りたまま授業を受けていた。
だが、決して真面目に授業を受けていたとも思えない。
別に授業中に寝ていたとか、そのようなことではないのだが・・・
俺はずっと由梨ちゃんが気になって仕方がなかったのだ。
今は寝ているみたいだが、俺が気になっていた理由としては、足の怪我のことと・・・失ってしまった俺に関する記憶の事。
このような運命になってしまったのだから、今は由梨ちゃんが記憶を失っているが、もしかしてあの時、自分が幽体離脱してしまうほどの交通事故にあわずに、無事に由梨ちゃんを助け出せていたなら・・・
今頃こんなことにはなっていなかったかもしれない。
だって・・・由梨ちゃんが俺のことを忘れてしまった理由は、その時の事故によるショックなのだから。
俺はともかくずっと由梨ちゃんが気になっていた。
本当は一旦真由美ちゃんの身体から抜け出して由梨ちゃんの様子を見に行きたかったのだが・・・
今は授業中である。身体から抜けるには軽くジャンプをしなくてはならないが、今は授業中なのでその動作を行うことができなかった。
(由梨ちゃん・・・)
俺は授業中、ずっと物思いにふけるかのように、考えていた。

そして、ようやく5時間目が終わった。
今まで授業がこんなに長く感じたことはなかった。
恐らく、由梨ちゃんが気になって仕方がなかったからだろう。
俺はともかくダッシュで保健室を目指した。
保健室に行くまでの間、廊下にいた生徒たちに不思議な目で見られていた。
それもそのはず。真由美ちゃんは元々元気はいいが結構おしとやかと言う言葉が似合うような少女なのだ。だが、俺は今真由美ちゃんの身体で保健室を目指すとはいえ、廊下を猛ダッシュしていたのだから。

『ガラッ。』
俺は勢いよく保健室のドアの戸を滑らせた。
「由梨ちゃん!」
「シーッ・・・真由美さん・・・由梨ちゃん、まだ寝ているのよ」
保健の先生から言葉がきた。
「・・・由梨ちゃん、あれからずっと寝たままだったのですか?」
「うん、そうなんだけどー・・・何か不思議なのよねー」
「え?不思議って・・・何かあったんですか?」
「それがねー・・・」
『・・・ゆうちゃん・・・思い出せない・・・』
「ね?さっきからこの言葉ばかり寝言で繰り返しているの」
「そうなんですか!?」
「うん、そうみたいよ」
(もしかして・・・記憶を取り戻してきている!?)
俺は期待していた。由梨ちゃんの記憶が戻ることに対して。
一方由梨ちゃんは、その時夢を見ていた。

「由梨ちゃん?どうしたの?早く俺の元へおいでよ!」
「・・・あなた、誰なの?」
「いやだなー、忘れちゃったの?俺だよ!由梨ちゃんの彼氏じゃんかよ」
「え・・・?私に彼氏!?」
「本当に覚えてないの?ここまでおいでよ!俺の顔よく見て!」
由梨ちゃんは呼んできている人の元へ寄った。
「・・・何で?目がよく開かなくて顔がよく見えない・・・誰なの?」
「由梨ちゃんさっきから何言ってるんだよ!誰って決まってるじゃんか!俺はゆう・・・」
「ゆう・・・?あの、よく聞こえないんだけどー・・・」
「だ〜か〜ら!ゆう・・・」
「聞こえないよー・・・」
「ちゃんと聞き取ってよ!ゆう・・・」
「ダメ!ちゃんと名前が聞こえない!!!」
「・・・由梨ちゃん、ひどいや・・・俺の事忘れちゃったんだな」
「え?何?忘れちゃったも何も私はあなたとは初対面じゃないの!?」
「だからさ、俺は由梨ちゃんの彼氏だって言ってるだろ!」
「・・・何で?私に彼氏なんかいないはず・・・」
「それがいるんだってば!その彼氏が俺だって言ってるだろ!」
「・・・でも何でさっきから目がきちんと開かないの?あなたの顔が確認できない・・・」
「顔が見えなくたって声でわかるだろ?な?知ってる声だろ?」
「・・・知らない。初めて聞いた声・・・」
「・・・由梨ちゃん!しっかりしろよ!きちんと思い出してくれよ!俺、ゆう・・・の事を!」
「ゆう・・・あなた、名前の始めに『ゆう』って言葉がつくのね?」
「つくも何もさっきから言ってるだろ?」
「でも・・・誰だかわからない!あなたは一体誰なの!?」
「・・・まだ記憶は戻らないみたいだなー。しょうがない。今回はこの辺で帰るとしよう」
そういい残して由梨ちゃんと会話していた人はどこかへ消え去ってしまった。
「え?ちょっと待ってよ〜・・・記憶が戻らないって何の事!?今回って何の事!?」
由梨ちゃんは1人その場に残されたまま、1人で考え込んでいた・・・。
「・・・今の戸惑いの気持ちは一体何だったのだろう・・・?誰だかわかんなかったけど・・・何だか大事な人だったような気がする・・・?」


<第7話>〜過去・・・そして思い出〜


俺は保健の先生と一緒にしばらく由梨ちゃんの様子を伺っていた。
相変わらず寝言ばかり言っていたが・・・
「・・・・・私は一体・・・?」
突然気がついた。そして、由梨ちゃんは俺の存在に気付くと、俺を見ながら
「あ・・・そういえば私・・・体育の時足に怪我しちゃって・・・真由美ちゃんが運んできてくれたんだよね・・・」
「由梨ちゃんはあれからずっと寝ていたのよ」
保健の先生が由梨ちゃんに言った。
「そうだったんですかー・・・私しらないうちに寝ちゃったのかしら?」
「由梨ちゃん、もう大丈夫なのですか?まだ寝ていてもいいですよ?」
「先生、もう足の方も痛みがひいたみたいです」
「そう、それならもう安心ね。先生はっと、ちょっと用事があるので職員室に行きますね」
「あ、はい。わかりました」
保健の先生は職員室に行くために、保健室をあとにした。
そして、保健室には俺と由梨ちゃんだけが残った。
「真由美ちゃん・・・さっきはありがとうね」
「う、うん」
「前も足くじいちゃったし・・・これで2回目だなー・・・」
「でも、それってまだ中学生だった時のことでしょ?」
「うん、そうだけどねー・・・」
何だか由梨ちゃんと会話していたら、あの時の事を詳しくと思い出してきた。
今、俺の頭の中で駆け巡っている記憶・・・

その日はたまたま女子の体育教師が体調不良で早退したため、俺達男子の先生が女子も面倒を見ることになり。女子はグランド横でバレーボール。男子はグランドでサッカーとなった。
「おーい佐藤!」
俺はサッカーの途中、教師に呼ばれて何事かと思って行くと、そこに足を抱えてうずくまる由梨ちゃんがいた。
「佐藤、お前確か男子の保健委員だったな」
「はい、そうですが」
「すまんが、高山を保健室までつれていってくれないか。小川ではちょっと大変なんだ」
確かに小川さんはクラスで一番小さく、支えにはなっても由梨ちゃんをおぶることまでは出来なかった。
「痛たた」
本当に痛そうな声がするほうを見るとそこに由梨ちゃんがいた。
由香ちゃんは昔から活発な娘で、クラスでもちょっとは気になる存在ではあった。
弱々しく座り込む由梨ちゃんの白い体操着からはブラのカップの線だけが見える。さらに下を見ると剥き出しになった太ももが見え、慌てて顔を上げる。
さすがに中学3年にもなると出るところは出ているので、どうしてもそこに関心がいく。いろんなことを想像するとおぶるのはなんとなく気が引けた。
考えた挙句、俺は由梨ちゃんの背中とひざ下に腕を入れて抱きかかえた。いわゆる、お姫様抱っこと言うやつだった。
しかし、いっせいに周りから笑いが起こる。
「由梨ちゃんお姫様みたい」
「ということは佐藤君は白馬の王子様?」
女生徒の中からそんな声も聞こえる。
グランドの中央にいる男子達からは『ヒュー、ヒュー』という冷やかしのコールが聞こえる。
「こら、お前らそんなに今の授業が嫌ならメニューをマラソンに変更してもいいんだぞ!」
さすがに先生もその様子を見かねたらしく、俺と由梨ちゃんと小川さん除いた生徒を授業に復帰させた。
「さ、佐藤くん、その、できたら普通におぶって欲しいんだけど」
うつむいて真っ赤になりながら由梨ちゃんはつぶやいた。
俺だって顔から火が出るほど恥ずかしかったし、由梨ちゃんを投げ出して逃げたかった。でも、俺の腕の中で恥ずかしそうに口元を手で隠し、小さくなっている由梨ちゃんを見ると、慎重過ぎるほどゆっくりと彼女を下に降ろした。
本来由梨ちゃんを運ぶはずだった保健委員の小川さんに手伝ってもらい由梨ちゃんを普通におぶる。
「佐藤君ごめんね。じゃ高山さんをよろしくね」
そう言って小川さんも授業に戻っていった。
由梨ちゃんは、足の痛みもありあまり意識してないようだが、俺はものすごく意識していた。
否が応でも背中に柔らかいものがあたるからだ。ふくらみの柔らかさもさることながら女の子って全体に柔らかいなとあらためて感心した。ふかふかの布団のように暖かくて気持ちいい。
「た、高山さん大丈夫?」
「うん、大丈夫、それより……」
なんだか由梨ちゃんが恥ずかしそうに話しを切り出した。
「さ、佐藤君、私、その……重くない?」
「え?」
一瞬何を言い出すかと思ったけど、なんだか無性におかしくて笑い出したのを今でもはっきり覚えている。
だけどあの一言がなかったら、その後の会話は続かなかったような気がした。
「ぷぷっ」
「へ? やだやだ、そんなに変な質問だった?」
「いや違うよ。一応俺は男だし、それに高山さんは軽いよ」
「そ、そうだよね。佐藤君男の子だもんね。でもなんか不思議。中一ぐらいまでは男女あんまり変わんなかったのにね」
「……そうだね」
再び背中に押し付けられるふくらみの存在が気になりだした。そんな時不意に由梨ちゃんが足を動かした。
「痛っ」
「足痛いだろうけど……俺がついてるから……安心して」
なんとなく照れくさかったけど、そんな言葉を由梨ちゃんにかけてあげたくなった。
「……さ、佐藤君、うん、ありがとう……」
一瞬びっくりしたような間の後、由梨ちゃんも照れくさそうにお礼を言った。
さっきのお姫様抱っこだと、お互いの顔も見えてもっと恥ずかしかっただろう。それに、下のふくらみも感づかれそうだし。
「佐藤君って肩幅広いんだね」
「そ、そう」
「なんだか小さいころお父さんにおぶってもらってたこと思い出しちゃった。なんか暖かくって、安心できる」
そう言って俺に全体重を預けてくれた。
保健室までのわずかな道のりだったけど、ものすごい時間が流れていたような気がしたし、それくらい話しをしていた。
多分、お互いの気恥ずかしさを紛らわすためだったけど、そのときの由梨ちゃんの優しい声をずっと聞いているとなんだかそばにいて落ち着く存在のような気がしたっけ。いつのまにか下もおさまり、不純な気持ちで由梨ちゃんを見ることがなくなった。

このような過去の記憶が俺の頭の中を巡っていた。
今からしてみれば、いわば思い出の記憶であろう・・・。
「真由美ちゃん?さっきからボーッとしてどうしたの?」
「えっ?あ、ちょっと考え事してたんだ・・・それより、もう大丈夫?」
「うん、もう大丈夫だよ!」
「じゃあ教室戻ろうか?」
「うん」
俺と由梨ちゃんは、保健室をあとにした。


<第8話>〜悪夢〜


俺たちは教室に戻ってきた。
でも、何か引っかかる事がある。
由梨ちゃんは本当にもう足の怪我はよくなったのだろうか?
何故そう思うのかと言うと、由梨ちゃんは確かにもう足は動かせるみたいだが、教室まで来る途中に何度かまだ足を抑えようとしたり、少しまだ痛そうな表情をしていたのだ。
(由梨ちゃん・・・もしかして俺に迷惑かけないようにしようと思って大丈夫って言ったのだろうか?)
どうやら様子からしてみれば、由梨ちゃんの足はまだ完全によくなっているとは思えない。
なのに、由梨ちゃんは・・・俺のために・・・あれ?
でも、俺は今真由美ちゃんなのだから俺のためではなくて、真由美ちゃんに迷惑かけないようにと思って気を遣っていたとのことかもしれない。
しかし・・・何度かゆうちゃんって言っていたのは・・・
記憶が戻りかけているのだろうか・・・?
・・・今の俺にはまだわからない。しかし、由梨ちゃん自身からしてもその答えは出ていないかもしれない。だが、俺の名前を言ったということは・・・
やっぱり・・・。いつかは記憶が戻るかもしれない。
でも・・・俺が真由美ちゃんに乗り移っている時、時々本来の真由美ちゃんの思考が頭に浮かぶような気がする。
ということは・・・そしかしたら由梨ちゃんに俺がしばらく乗り移っていれば、由梨ちゃん自身の思考も読み取れる、つまり、由梨ちゃんが俺の記憶を取り戻してきているかもわかるかもしれない。
休み時間の終わりまでまだあと1分くらいある。
そこで、俺は人目が俺の方に向いていない時に小さくジャンプすることにした。
人目が向いている時だと、いきなり小さくジャンプして変な奴だと周りに思われるかもしれないからである。
と言っても、俺がではなく真由美ちゃんがそう思われるのだから、別に俺はそれでもいいとは思ったが・・・自分が真由美ちゃんになっていると自分が変な奴だと思われるような感じがして・・・それだから、俺は人目がつかない時に小さくジャンプした。
これで一旦真由美ちゃんから抜けられるはず・・・あれっ!?
俺の視点の位置は、確かにさっきと変わっていなかった。
ということは・・・結果、俺は真由美ちゃんから抜けられなかった。
実は何故抜けられなかったのかと言うと・・・。
(何で!?何で私、真由美ちゃんから出られな・・・えっ!?わ・・・私!?)
突然私は、俺と言う言葉が出なくなっていた。
それどころか、感覚も本当の真由美ちゃんみたいな感じになってきた。
(もしかして・・・あんまり真由美ちゃんの中に長くいたために・・・!?)
祐一はまだ真相を知らない。だが、今真由美ちゃんからは抜けられず、
感覚も真由美ちゃんそのものみたいな感じになってきたことは確かだ。
(・・・どういうことなの!?)
「真由美ちゃん?どうしたの?」
その時、突然誰かに声をかけられた。
「えっ!?何・・・あ、由梨ちゃん・・・」
「真由美ちゃん?どうしたの?早く着席しないとチャイムなっちゃうよ・・・」
「あ・・・そうだね」
由梨ちゃんは、少し苦痛の表情で言った。
やはり・・・足がまだ痛むのだろうか・・・?
私はとりあえず着席した。だが・・・何で私は急に感覚が変わってしまったのだろう・・・?
これは真由美ちゃんとしての感覚かも知れないが、言い方を変えれば女の子の感覚とも言える。何だか由梨ちゃんの事を考えると、何故か切ない気持ちになってしまう。何故か私は本当の真由美ちゃんのようであった。

授業も終わり、放課後。
「ねえ、真由美ちゃん!一緒に帰らない?」
「あ・・・由梨ちゃん・・・」
由梨ちゃんは楽しそうに言ってきた。もう足は治ったみたいだが・・・
何故か由梨ちゃんに対して私はドキドキしてしまう・・・。
何故だろう?祐一の時やさっきまでは全然ドキドキしなかったのに・・・。
「真由美ちゃん?どうしたの?考え事?早く帰ろうよ〜!」
由梨ちゃんはそういい残して走りだしてしまった。
「あ・・・由梨ちゃん、待ってよ〜ぅ・・・」
私はとりあえず由梨ちゃんを追いかけた。
由梨ちゃんはどんどん走って先に行ってしまう。
私も由梨ちゃんをひたすら追いかけた。
由梨ちゃんは何故こんなにずっと走り続けるのだろう・・・?
理由は私にもわからなかった。
そして、由梨ちゃんは交差点のところまできた。だが、相変わらずスピードを落とそうとしない。
そして、私も由梨ちゃんを追いかけた。
だが・・・由梨ちゃんが交差点を通り過ぎようとする直前、 ・・・悪夢は起こった・・・。
「えっ・・・きゃああああああああ・・・」
由梨ちゃんは次の瞬間、大型車に跳ねられていた。
そして、やっと由梨ちゃんに追いついた私だが・・・
一瞬言葉を失ってしまった。だが、私は慌てるように
「由梨ちゃん!?由梨ちゃん!?・・・由梨ちゃんが大変だ・・・」
私は何故由梨ちゃんが走るのを止めることができなかったのだろう・・・。
私が由梨ちゃんを止めていれば・・・こんなことには・・・。
前の時だって由梨ちゃんを守れても自分の身は守れなかったために私は今こんなことになっている・・・。
今度は・・・今度は由梨ちゃんまでも守れなかった・・・。
・・・自分のせいだ・・・自分のせいで由梨ちゃんは・・・。
「・・・私・・・もうダメ・・・」
かなり重症でありながらも、最後の力を振り絞ったのか、由梨ちゃんが喋った。
「由梨ちゃん!?しっかりして!」
「励ましてくれてありがとう・・・ゆうちゃん・・・」
「え?由梨ちゃん!?今最後になんて言ったの!?」
・・・だが、それっきり由梨ちゃんの反応はなかった。
「由梨ちゃん!?由梨ちゃん!?・・・由梨ちゃん・・・」


<第9話>〜高熱〜


「真由美ちゃ〜ん、大丈夫〜?」
どこかから声が聞こえる。
「・・・まだ意識が戻らないのかなー?」
やはりどこから声が聞こえる。
「・・・大丈夫かなー?」
「・・・由梨・・・ちゃん?」
「あ!真由美ちゃん気がついたね!」
「えっ?あれっ!?由梨ちゃん交通事故にあったはずじゃ・・・?」
「へ?交通事故?・・・何の事?」
「えっ?ええ〜っ!?」
「真由美ちゃん?どうしたの!?」
「何がなんだかわからない〜!!!」
「真由美ちゃん、落ち着いて!私が説明するからさ!」
「う・・・うん」
(何故由梨ちゃんは無事なのだろう・・・それに俺は何故意識を・・・お、俺!?)
何故か俺はまた普段の時と同じ感覚になっていた。
「真由美ちゃんね、覚えてる?さっき私の足がもうよくなって保健室から出てすぐに倒れちゃったのよ!」
「・・・えっ!?・・・覚えてないんだけど・・・」
「保健の先生がね、まあ今は職員室だけどね、さっき真由美ちゃんのおでこさわって、きっと熱があったのねっていってたよ」
「え・・・俺・・・熱あるの?」
「うん・・・あれ?真由美ちゃん、何で俺なんて言い方してるの?女の子なのに・・・」
「え・・・あれ?何でだろう・・・?」
この場で本当は祐一だなんて言えないしなー・・・。
「・・・真由美ちゃん?それも熱のせいなのかもよ?」
「え・・・あ!そうそう、熱のせいかも・・・」
「とりあえず真由美ちゃん、熱はかってみましょ」
そう言って、由梨ちゃんは俺に体温計を渡した。
俺は熱をはかりはじめ・・・そして数分後。
「・・・39.5度・・・何でこんなに熱があるの!?」
「やっぱり・・・真由美ちゃん熱が高かったようね・・・待ってて!保健の先生呼んでくる」
「え・・・あ、ちょっと由梨ちゃん・・・」
だが、由梨ちゃんは行ってしまった。
何で由梨ちゃんはさっき交通事故にあってしまったのにピンピンしているんだ・・・?
あれ?そういえば俺はもう学校から下校したはずだが・・・。
何で学校にいるんだろう・・・?もしかして・・・さっきのは全部夢!?
実はその通りであった・・・。俺は保健室を出てすぐのところで倒れたらしいが・・・。
教室に戻ったところからはもう既に夢だったのだ・・・。
・・・高熱のせいで変な夢を見てしまったのかな・・・?
それに・・・何だか火照ってる感じがする・・・。
これも高熱のせいかな・・・?高熱のせいで夢の中で俺は・・・
感覚が真由美ちゃんになったり・・・由梨ちゃんに対してドキドキしてしまったり・・・
していたのかもしれないなー・・・。
・・・段々息が苦しくなってきたなー・・・熱のせいかなー?
ところで、何故急に俺は突然高熱が出たのかというと、この熱は、突然の熱ではない。元々本当の真由美ちゃんが高熱を出していたのだ。
真由美ちゃんもそれに気付かず、俺もそれに気付かず、そのまま真由美ちゃんになってしまった俺。それだから、今は意志は祐一であっても、真由美ちゃんが元々高熱だったため、俺の意思のままでも熱が出てしまったようだ。
そういえば確かに今までなんだか少しだるかったしなー・・・。
今までは何とかしらないうちに熱に耐えてきたみたいだけど、遂に耐え抜くのも限界がきてしまった・・・ちょうどその時が、保健室を出てすぐの時だった・・・。
さっきのも、高熱のために見てしまった悪夢だろう・・・。
さっきのが現実ではなかったとわかったので、俺はかなり安心した。
そして俺が1人で安心していると
『ガラッ』
突然ドアが滑った。
そして、保健室に先生と由梨ちゃんが入ってきた。
「由梨ちゃんに呼ばれてきたんだけど・・・真由美さん、すごい高熱みたいね」
「先生、39.5度ですよ?真由美ちゃんは大丈夫なのでしょうか?」
「はい、でも、まさか先生もそんなにすごい高熱だとは思わなかったわ。とりあえず今日はもう家に帰って安静にしていることね」
「先生、真由美ちゃんどうやって家に連れて行くんですか?」
「まかせといて!先生が家まで真由美ちゃんを送っていきます」
2人は俺の様態や送り方などについて話していたが・・・
その後の話は耳に入ってこなかった。
俺はまた熱のせいなのか?意識が途切れてしまったのだ。
そして、気がついた時には既に誰かの部屋にいた。
俺が意識を失っている間に、保健の先生が家に送ってくれていたようだ。
で、俺が居たのは誰の部屋なのかと言うと、真由美ちゃんの部屋のようだ。
本当は俺は祐一でも、今俺は真由美ちゃんなので、先生は真由美ちゃんの家に俺を送ってきていたようだ。
あと、俺はいつの間にかパジャマ姿になっていた。
誰かの手によって着替えさせられたみたいだ。
・・・本当はこの状態は、熱のせいなのか?かなり苦くるしくなってきたから真由美ちゃんの身体から抜けたかったのだが・・・高熱のせいで肝心の小さいジャンプができない・・・。
なので・・・俺は真由美ちゃんから抜け出す事はできなかった・・・。
・・・苦しい。このままではマジでやばそうだ・・・。
その時、俺は近くに薬と水の入ったコップが置いてあった事に気付いた。
近くに紙が添えてある。
『真由美へ。目が覚めたら薬を飲むこと!』
と書いてあった。きっと真由美ちゃんの親が書いたのだろう。
俺はとりあえず薬を飲んだ。そして、だるかったのでまた寝る事にした。


<第10話>〜本当の由梨ちゃん〜


「ゆうちゃん!早く早くぅ!」
「え?由梨ちゃん?あれ?俺何で元の祐一に戻っているんだろう?」
「ゆうちゃん!何1人でごちゃごちゃ言ってるの?早くしないとおいてっちゃうよ〜」
由梨ちゃんは走り出した。気がついたら俺は由梨ちゃんと街中にいた。
それも、あの日、由梨ちゃんが記憶を失った日に由梨ちゃんといた街中に・・・。
「由梨ちゃん!?待ってよ〜ぅ・・・」
俺はとりあえず追いかけた。追いかけながら考えていた。
・・・何故由梨ちゃんは、記憶を失ったはずなのに・・・俺をゆうちゃんと呼んでいるのだろう・・・?
由梨ちゃんはどんどん遠ざかって行く。そして、俺は追いかける。
・・・由梨ちゃんは更にどんどん遠ざかって行く。俺はそれを追いかける。
・・・しまいには由梨ちゃんの姿はいつの間にか見えなくなってしまっていた。
・・・由梨ちゃんは俺を残して消えてしまったのだ・・・。
由梨ちゃんは消えた・・・。俺を残して・・・。
俺の記憶を持っている由梨ちゃん・・・。消えてしまった。
俺のことを覚えている由梨ちゃんは・・・今はいない。
俺の彼女としての由梨ちゃんは・・・今はいない。記憶を失ってしまっている。
由梨ちゃん・・・俺の彼女としての・・・あの時の由梨ちゃん・・・
一体どこに行ってしまったのだろう・・・。
今、街中で一緒にいた由梨ちゃんは由梨ちゃんであって、由梨ちゃんでなかったような気がした。
「んもう!ゆうちゃん遅いんだから〜・・・」
後ろから急に声をかけられた。声をかけてきたのは、由梨ちゃんだった。
「・・・きみさー」
「え?何?ゆうちゃん」
「きみさ、本当の由梨ちゃんじゃないだろ?」
「え・・・ゆうちゃん?急に何言い出すの?」
それは・・・俺自身にも理由はわからなかった。
何故か突然、目の前にいる由梨ちゃんは本当は由梨ちゃんではないと言うような気がしたのだ・・・。
「ゆうちゃん?本当も何も私は私、由梨だよ?」
「・・・いや、きみは由梨ちゃんじゃない・・・だって俺の知ってる由梨ちゃんは・・・」
「俺の知ってる由梨ちゃんは・・・?」
「俺の知ってる由梨ちゃんは・・・俺を残したまま姿をくらませたりしない・・・」
「えっ・・・・・」
「きみは・・・俺を残したままさっき姿をくらましてしまった・・・」
「・・・・・・・」
「俺の知ってる由梨ちゃんは・・・そんな人じゃない・・・絶対に俺を置いていったりしない・・・」
「・・・・・そうだよね・・・」
「それに・・・由梨ちゃんは今は記憶を失っているはずなのに・・・いきなり記憶が戻っているとは思えない・・・」
「・・・・・・・」
「きみは誰だか知らないけど・・・本当の由梨ちゃんじゃない・・・」
「・・・ゆうちゃん、さすが・・・私の負けね・・・そう、私は本当の由梨ちゃんじゃない・・・」
「・・・きみは一体・・・」
「私は・・・本当の由梨ちゃんではないけど・・・由梨ちゃんなの・・・」
「え?本当の由梨ちゃんではないけど由梨ちゃんって・・・どういうことなの?」
「それはね・・・それは教えられないわ・・・でも、大丈夫みたいね。私が本当の由梨ちゃんじゃないってことは見抜いたものね・・・この調子なら・・・本当の由梨ちゃんの記憶も・・・」
「え?記憶がどうしたって・・・?」
俺が聞き返した時、由梨ちゃんであって由梨ちゃんでない由梨ちゃんは・・・いつの間にか消えていた・・・。

(・・・あれ?・・・さっきのは一体・・・?)
俺は気がついた。外はすっかり真っ暗になっていた。
俺は今、真由美ちゃんの部屋にいた。ということは、さっきの出来事は恐らく夢だろう・・・。
夢と言うことはわかっていても・・・何だか不思議な夢だった。
それに・・・本当じゃない、さっきの由梨ちゃんは一体・・・?
・・・何だか今の夢は気になる。それに、最後夢で出てきた由梨ちゃんは、記憶も・・・って言いかけてたけれど、一体何が言いたかったのだろうか・・・?
・・・もしかして!記憶が戻るとか・・・?
・・・何だか考えているうちに段々疲れてきた。まだ高熱が出たままのせいだろうか?
とりあえず、まだ寝ていた方がよさそうだな・・・。
もう夜だったけど、何だか腹もすかないので、また新しく近くに用意してあった薬だけをとりあえず飲んで、俺は就寝した・・・。

「祐一君、私ね・・・祐一君のことが好き見たい・・・」
「えっ?・・・由梨ちゃん?」
「・・・祐一君?急に何言ってるの?さっきからずっと一緒にいたじゃない・・・」
俺は今、学校の校舎裏にいたことに気付いた。
「で・・・祐一君はどう?その・・・私の事・・・好き?」
「えっ?・・・急に言われても・・・」
確かに俺は由梨ちゃんは好きだ。だが、何故か知らないうちにこのような展開になっている上に、いきなり私の事好き?と言われても、状況の把握のために由梨ちゃんの反応には戸惑った。
「祐一君?・・・私の事嫌いなの・・・?」
「え?別にそんな訳じゃ・・・」
「じゃあ急に言われてもってどういうことなのよ?」
「え・・・それは・・・」
「やっぱり私の事嫌いなんだね・・・祐一君ってそんな人だったの?」
俺は戸惑ってしまった。だが・・・何だか由梨ちゃん、いつもと性格が少し違うような感じがした・・・。
由梨ちゃんは、いつもちゃんと言い訳を聞いてくれるはずだ。
それなのに、今の由梨ちゃんは言い訳も聞いてくれずに勝手に『私の事は嫌い』と解釈してしまっていた。
それに・・・由梨ちゃんは絶対人に『そんな人だったの?』なんていわない・・・。俺は由梨ちゃんと結構長く付き合っているのだから、由梨ちゃんのそういう優しい性格は知っている。
だが、今の由梨ちゃんからは優しさは感じられなかった・・・。
「・・・きみ、本当の由梨ちゃんじゃないだろ?」
「えっ?・・・祐一君、突然何言い出すの?」
「・・・きみは・・・さっきも会ったね?最後に記憶も・・・って言いかけて消えちゃった・・・」
「・・・一体何の事かしら?」
「・・・いや、俺にはわかる。きみとはさっきあった。きみは本当の由梨ちゃんではない由梨ちゃんだね?」
「・・・よくわかったわね・・・やっぱりゆうちゃんにはかなわないなー・・・この調子なら・・・本当の由梨ちゃんの記憶も・・・」
由梨ちゃんは・・・さっきと同じように、また消えてしまった。
・・・一体この由梨ちゃんは誰なのだろう・・・?





☆あとがき☆


どうも!T・Hです。何だか話の雰囲気が急に変わってしまったみたいです。
由梨ちゃんの見ていた夢、それと祐一が見た夢。果たしてこの2つの夢は何なのでしょうか?
2つの夢に何か関係はあるのだろうか?今回は由梨ちゃんの記憶が戻る気配はやはりないままでした。
夢の中の由梨ちゃんのセリフの
「この調子なら・・・本当の由梨ちゃんの記憶も・・・」
というセリフ。この、「記憶も・・・」のあとに何が続くか、読み手のみなさんはわかりましたよね?
あ、別に仮にわかんなかったとしても大丈夫です。心配しないでくださいね。
もちろん、答えは「いつかは戻・・・」です!
全体的に今回はどうでしたでしょうか?
結構手ごろなバイト数だと思うので、すぐに読み終わってしまったでしょうか?
あ、今回はあおき あきおさんから1部文章を引用しました。
あおき あきおさん、あの過去のエピソード使わせてもらいました。
でも、使いどころがここで大丈夫だったかな?
第7話に出てくる回想部分、その文章は全部あおき あきおさんが考えてくれた文章です。文章を使ってもいいと言う許可を出してくださって、ありがとうございました。ちなみに、この文章は『あの頃の記憶』の感想欄に書き込んでもらったものです。
では!今回はこの辺で〜!!誰か『もう1人の自分』の二次作品って言うか、続きって言うか、その後のストーリーって言うか、作ってくれる人いないかなー?作者が許可しますので、二次作品作りたいと言う人がもしいましたらここの感想欄に書き込んどいてくださーい。
祐一「この作者、自分の前の作品の完結が少し納得いかなかったからって、二次作品を誰かに作ってもらおうとしているとは・・・」
作者「はいはい、どうせまた無責任って言いたいんでしょ?」
祐一「だって本当に無責任じゃんかよ!てゆーか、早く由梨ちゃんの記憶戻してくれよ!」
作者「それは祐一君のがんばり次第だねー」
ということで、まだ記憶は戻らないみたいです。(やっぱり)
ということで!今回は今度こそこの辺で!

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