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 某日、蔵灘(ぐらなだ)温泉スノーパークにて。

「「わあああああ〜っ!! どいてどいてぇ〜っ!!!!」」

 センターゲレンデから最初のリフトを降りたばかりの広い踊り場。さらに上のリフトを目指す中上級スキーヤーに、ここからシュプールや尻餅を描いて降りて行く初心者。ファミリーやカップルに仲間達がひしめき合うこの場所に、ひときわ大きな金切り声が響き渡った。
 傍若無人に突き進むスキーに呆然とするスキーヤー。
「「「きゃあああああっ!!」」」
 目の前に迫ってくるスキーヤーに、恐怖のあまり悲鳴を上げる少女たち。
 悲鳴が悲鳴を呼び、そして……


どんっ!

 という、スキーヤー同士の衝突横転事故があった。
 事故自体は、全国どこかのスキー場で日常茶飯事の如く発生していることゆえ、さして珍しいことではないが、ぶつかった相手が共に美少女同士ということで、ゲレンデの中ではちょっとした話題になっていた。

「見たか? さっきの」「ああ、見た見た」「凄かったよなー」「可愛かったし」「いや、趣旨が違う」「近くの娘も災難だったよな」「オレ、キャンディヘアの娘がいい」「って、どんどん趣旨がずれているぞ」「けど、ショートへアの方も中々」「違う。お尻のラインに魅力が」「そうお尻。レディースのスキーウエアはヒップラインを美しく見せる最高のアイテムなんだ。ボードウエアなど邪道だ」「何を言う。ボードと毛糸の帽子にアクティブな茶髪が女の子をよりキュートに見せるのだ。時代遅れな風習にしがみつく輩など愚の骨頂」「なんだと、もう一度言ってみろ」「ボードファッションが最高」「いいや、スキーウエアがいちばん」「電話は2番」「3時のおやつは文○堂!」
 …………と、目撃者が目の前で繰り広げられた惨劇を色々と語っているが、その予兆は3日前から始まっていたのだ。





―― 学園戦士 レッドブルマー 外伝 ――

たちをスキーに連れてって♪

しまうから、こんなことになってしまったんじゃないかと(笑)。

                      CREATED BY よっすぃー
                      (special thanks MONDOさん・南文堂さん)





 ことの起こりは、どこにでもある私立高校での、たった一言から始まったのだった。

「え〜っ! 行けない? どういうことよそれ?」
 お昼休みの教室で、携帯片手に一人の少女が叫んでいた。
 平均よりやや高めの身長に、バランスよく伸びた四肢。ほどほどの長髪と、それに見合う整った小顔。配置されるパーツも絶妙な位置に絶妙な形状を有しており、出合った人間全てが「美少女」といった評価を下すであろう恵まれた容姿。加えて、学年トップクラスの頭脳に、抜群の運動神経。さらに経済的にもそこそこ恵まれて。と、天があっさり二物も三物も与えてしまったのだ。ただひとつ「性格」という要素を除いて……
 伊達典子(だてのりこ)という女生徒を表すのに、まこと端的な言い回しであった。
「補習に行かなくちゃいけない? テストで手を抜くからよ。だいたい授業聴いていれば、あんなテスト問題ないでしょう? アンタと一緒にするなって、あたしはふつうの事をあたりまえに言っただけよ! そんなことより予定変更の方が重大よ。急に言われたって困るじゃない。まだ3日もある……って、ちょっと。切るなー!」
 憤慨しながら携帯を床に投げつけようとして、自分の持ち物だということに気が付いて寸前で思いとどまる。
「ったく、ダメだったら最初からダメって言ってよね。今更キャンセルも出来ないし、どうしてくれるのよ」
 すでに通話の切れた携帯に向かってひとり文句を言う。側から見るとかなり痛い人に見えるのだが、見た目が美少女でも性格が知れ渡っているので、その辺りはみんな納得しているようだ。
「いったい何に憤慨されているのですか?」
 爆発寸前の火山のような典子に尋ねてくる命知らず。白鳥ジュンであった。
 自他共に認める世界有数の資産家令嬢。どこをどう間違ってこんなごく普通の高校に通学しているのか不思議だが、ことの経緯は本編の方に譲りたい。
 その彼女が小首をかしげて訊いてきた。
「憤慨せずにはいられないわよ。あたしが今度の休みに泊まりでスキーにいくのは知っているでしょう?」
「ええ。蔵灘温泉でしたわね?」
 それが何か? という感じで先を促す。
「一緒にいく予定だった相棒が急にダメになったって言うのよ。3日前よ、3日前! 信じられる? 今頃言われてもキャンセルも出来ないし、どないせぇーって言うのよ!」
「まぁ。それは大変ですわね」
 心配そうに答えるが、下々の生活に疎い彼女のこと。勢い口調は他人事になる。
「そう思うならジュンちゃん、助けてよ〜」
「そう言われましても……」
 歯切れ悪くジュンが言葉を続ける。
「あいにく私もその日は予定が埋まっておりますの。アラスカのカルナック山嶺に滑りに行くことになっていますから」
「はぃっ?」
 カルナック山嶺と言えばリゾート中のリゾートではないか! 知名度こそ高くないが、それはむしろ庶民に手が出ない高級リゾート過ぎる所以であり、避暑やウインタースポーツを楽しむセレブ御用達のリゾートとして最高級にランクされる地である。滅茶苦茶遠いけど。
「って、この3連休だけで行く気?」
「専用の超音速ジェットを出しますから、すぐに着きますわ」
 にっこりと答えるその笑顔には一切の邪気が無かった。
 ったく、金持ちって奴は…… 
 自身の家もそれなりだが、所詮は庶民のレベルでのお金持ちというだけだ。桁外れの資産家とは規模が違う。典子はジュンの誘致をあっさりと諦め、次なる道連れを探し始めた。
 しかし、間際にそんなに都合よく相手が出来るはずも無い。
「ダメダメ。その日はハヤタシン君とデートなんだから」「北斗星二クンと買い物に出かけるの」
 当てに出来そうなふたり(富士亜希子と南夕子)にも早々に断りを入れられ、他の生徒も逃げ出す始末。男子生徒に声をかければついてくる奇特な奴がいるかもしれないが、いくらなんでもそれは典子自身が願い下げだ。
「結局、キャンセル料払って断るしかないのかな〜」
 はぁぁ……とため息をつき典子がうなだれる。あの後放課後まで粘ってあっちこっちに誘いをかけたが、「小遣いが無い」「その日は講習が」「面子がテンコじゃねー」「その他」などという理不尽? な理由で、ことごとく断りが入ったのであった。
「いっそのこと生徒会長命令で強制的に参加させようかしら?」
 って、あぶない考えをぶちまける。それは横暴を通り越して無謀だと思うのだけど……
「で。ひとりでなにぶつぶつ呟いているの?」
 と、のっそり出てきたのは、典子の担任である藤崎エリコだった。20代半ばで可愛らしい印象の女教師で、男子生徒の人気も高い。しかしその実態は宇宙人(比ゆ的な意味ではなく)で、ここで書くと色々な意味で痛い人だと誤解(一部は事実)されそうな経歴の持ち主なのだ。
 とはいえ、教員免許を取得した教師であることは紛れもない事実であり、なおかつ典子の担任であることも間違いない。教え子が悩んでいる様は放っておけるはずもなく、「どうしたの?」と理由を聞き出すことに相成ったのである。
「でも、プライベートな事柄ですよ。相談して良いんですか?」
 曲がりなり? にも生徒会長。一応公私のけじめを付けて相談するのをためらっていた典子に、「アタシとあなたの間柄じゃない」と軽くかわして「じゃあ、言いますね」と話が続いていった。
「実は、かくがくしかじか……」
「かくがくしかじか、って。そんな呪文みたいな言葉で言われても。先生、理解できない」
「……おぃ。小説上の約束を理解せんかいっ!」
「てへっ♪」
 疲れる先生である。
「で、要するにスキー宿の予約をとったは良いけど、肝心の相棒が直前でキャンセルしてしまって困っている。と?」
「あたし言いました?」
「言ったじゃない。7行前に「かくがくしかじか」って」
「…………疲れる」
 とまぁ、無意味なやり取りがあったが、事の真意は伝わったようである。
「スキーなんてひとりで行っても楽しくないし、ましてや泊まりだから。キャンセル料を払うのは痛いけど、ここは断るしかないのかなーと」
「ははぁ、なるほどね。確かに高校生のお小遣いで、一銭のメリットもないキャンセル料金を払うってのは痛いわね」
 実際のところ典子の生活レベルが悪いはずはないのだが、諸般の事情(笑)で女子高生一人を扶養しているので、お小遣いに余裕がないのは事実なのだ。
「でしょう。この際だから先生が一緒にスキーに行くのはどうですか?」
 もはやなりふり構っていらねないらしく、真面目な表情でエリコに頼み込む。
 しかしその願いはナノセコンド単位の返事で拒否されてしまった。
「ゴメンねー。それはちょっと無理なの」
「そんな即答で」
「だって、行きたいと思わないもの。エコノミー症候群の温床みたいなスキーバスに揺られるのも嫌だし、電車で行ったら駅からスキー場まで遠いし、車で行ったら設備もろくに整っていない駐車場に千円払わされて、ガ○ダムの足みたいなスキーブーツを履いてゲレンデまでの長い距離を歩かされるのよ。しかも、しかもよ。それでなくても豪雪地帯の山間部に人工降雪機でさらに雪を水増しして、独占企業を良いことに防寒対策を何一つ施していないリフトを5千円近い高額で乗せるわ、ベンチもない青天井で何十分も待たせた挙句、上に上がったらあがったで、レトルトと大差ないカレーが一杯千円以上の不当な値段で販売されているし、勿体無いったらありゃしない」
 ………………なんだかなぁ。
 が、切羽詰った典子がその程度で引き下がるわけにはいかなかった。
「そう言わず、ちょっとは考えてくれませんか? スキー場での値段が多少高いのは認めますけど、ウインタースポーツって楽しいですよ」
「ダメ」
「お願いですから」
「お願いされてもダメ」
「そこをなんとか」
「ダメなものはダメ」
「無理を承知でお願いします」
「お出かけするには色々と都合が悪いのよ」
「ダメな理由ってなんなんですか? デート。ってことはないでしょう?」
「それはね……寒いからよ!アタシの心と同じくらい」
 地雷を踏んだ典子をぐいっと睨みつけると、エリコはずんずんと職員室に戻っていく。
「巻き添えにするのなら一人適当なのがいるでしょう? そいつにしておきなさい」
 一言そのセリフを残して。


「ふぇーくしょんんん!!!」
 見た目の可憐さとは裏腹に盛大なくしゃみをする美少女が一人。本編の主人公でありながら脇役以下の扱いしかされない薄幸の少女?、伊達愛美(だてまなみ)であった。
「少女、少女って言わないでくれる。半年前までは普通の男の子だったんだから」
 ではその歳でモ○ッコに渡り性転換手術を?
「って、ち〜が〜う〜! かくがくしかじかの理由でこんな格好になったんだ!」
 そんな必死になって否定しなくても……
 詳しい説明は本編を読めば書いてあるのでここでは省略する。
 で、もう一度冒頭のシーンに戻る。
 盛大なくしゃみをすると、愛美は小さくなった肩を一層小さくしてがたがたと震えていた。
「う〜っ、寒い。冬だから寒いのは仕方ないかも知れないけれど、この格好になってから一層寒さが身に凍みるよな」
 愛美の基本容姿は典子のそれと完全に一致する。それは意識的に変えている髪型以外全てに渡り、身長・体重・スリーサイズは言うに及ばず細かな黒子の位置まで全く同じである。その徹底ぶりは体質にまで及び、食べ物の好みから冷え性なところまで全く同じなのである。
 したがってこの時期の寒さはかなり堪える。そのうえ女の子の衣装を強要(というか、女の子なんだけどね)させられるので、その寒さは一層増徴しているのだった。
「なにが悲しくて真冬にミニスカートを穿かなくちゃいけないんだろう。男の目を楽しませなくても良いじゃないか」
 自身の服装に突っ込みを入れる。今の姿―セーラー服にミニのプリーツスカートは冬のこの時期拷問と化す。ダッフルコートを着たところで寒さの緩和には程遠かった。
 もっともそれは彼女が服装の知識を持っていないからで、他の女生徒のようにマフラー・手袋・ルーズソックスを着用していないからに他ならない。これらの定番アイテムは一見ファッション優先に見えて実に理に適った衣装で、冷えやすい身体の末端部を保護することで寒さに見事に適応しているのだった。
 それはともかく、そんな寒さに弱い愛美を、典子は「背に腹は変えられない」と強引にスキーに誘ったのである。
「スキー? 寒いから嫌だよ」
 当然の如く即答で拒否をする。こんな寒い日、出来ればコタツで丸くなっていたいのが正直な気持ちなのだ。
「寒いって? 冬だからしょうがないじゃない。それにアンタ、スノボはやっていたんでしょ? だったらスキーに行ったっていいじゃない」
 理由になっていないが典子が強硬に説得? する。日程的に後がないので彼女も必死なのだ。
「ボードやっていたって言ってもそれは男のときの話で、この身体では何もしていないよ」
「だったら尚のこと経験しなさいよ」
「ヤダ」
 男のときならまだしも、この冷え性な身体で冬のアウトドアなどしたくない。先週不本意ながらご近所を守るスーパーヒロイン『レッドブルマー』に変身(笑)した時、半袖ブルマ姿の薄着のせいで半分風邪をひきかかったくらいなのだ。
「どうしても?」
「どうしてもヤダ。寒いのは苦手」
「それならこっちにも考えがあるわよ。行くって言わなければ…………」
「飯抜き? そのくらいでボ……ワタシの決意は動じないよ」
「そんな手ぬるいことをアタシがやるとおもう? 食事抜きにしても誰かにたかるでしょう?」
 嫌だ嫌だと言いながら、愛美は女の武器(笑)を駆使して男子生徒たちから色々と奢ってもらっている。これでなかなかしたたかな性格なのだ。
「肉体的な制裁は加えないわ。ただ……少年少女文庫の倫理規定に触れるような(都合により削除します)とか……」
「なっ!」
「(これまた都合により削除します)とか……」
「そ、それは!!」
「(これも都合により削除します)とか……」
「そんなことまで!」
「(申しわけありませんが都合により削除します)とか……」
「お願い。やめて!」
「(心苦しいですが、都合により削除します)……を言っちゃうわよ」
「ゴメンなさい。ゴメンなさい! ワタシが悪かったです!」
 泣きながら渋々承諾する愛美。削除されている文中に何があったかは知る由もないが、世の中には知らないほうが幸せなこともある。
「交渉成立。じゃあ、まず買い物ね。ウエアを新調しないといけないわね」
 結局その費用がかさみ、月末に激しい窮乏生活強いられることになるのだが、それはまた別の物語である。


RED BROOMER 〜the school guardian!!
(Illust by MONDO)



「うーっ……なんだってこんなことになっているのだろう」
 連休初日の朝。ターミナルに程近いスキーバス乗り場で愛美はまだ頭を抱えていた。
 半ば強要された状態でスキーに行く事になったがゆえ、その理不尽さは割り切れるものではない。
「いい加減諦めたら。男らしくない」
 今だぶちぶち言っている愛美を典子が嗜める。
「男らしくないよ。こんな格好しているし」
 言い訳がましく愛美が言う。今の彼女の格好は、白のタートルネックのセーターにダークグレーのブルゾン。ダークブラウンのミニスカートと同色のタイツを穿いて、踝まであるスノトレといったいでたちである。比較的暗色系のボトムだが、おとなしい印象? を与える彼女にはよく似合っており、スリムなボディと脚線美が一層際立っていた。トップは一転して白のセーターということで、意外にある胸元の膨らみがさらに魅力的で、さすがモ○ッコ仕立ての―
「違うって!」
 え、そうなの? とにかく無敵の美少女といった雰囲気を醸し出していた。
一方典子は、トップは同じながらボトムは黒のスリムジーンズとより活動的な装いを纏い、バスターミナルでもふたりは注目を浴びていた。
「さあ、いい加減諦めてバスに乗りなさい」「ふにゃー」
 そんなやり取りがあってスキー場に向けてバスが出て行く。
 ターミナルには色々なドラマが繰り広げられるのだ。


 そう、つい10分前。蔵灘温泉に向かう特急電車に乗る姉妹? と思しき人物にも、賞賛の視線が注がれていたのである。
 ひとりは小柄ながらも均整のとれた中学生と思しき美少女。ややあどけなさが残る表情にも、そこはかとなく色気が漂い未来の美女の片鱗をうかがわせる。一方は颯爽と言う言葉が似合いそうな20代後半くらいの美女。美少女が順調に歳を重ねればこういう女性になるだろうといういでたちで、黒のダウンジャケットを粋に着こなしていた。
「いいこと。たった今この瞬間から、私のことを『お姉さん』と呼ぶのよ。わかった? 美奈子ちゃん」
「お、お姉さん?」
 美奈子と呼ばれた少女はいきなりの提案に驚く。実際のところ実の『母親』なのだが、若すぎる容姿(実は30代後半と言うとんでもない年齢なのだ)と特殊な事情(詳しく知りたい方は南文堂さん作・「魔法少女 ラスカル☆ミーナ」を参照のこと)から、「琉璃香さん」と名前で呼ばせているのにこの上「お姉さん」と言わせるのか?
「う〜ん。まだちょっと硬さが残るなぁ。特別に奮発して琉璃香姉さんでも良いわよ」
 一緒じゃないか! 少女は心の中で突っ込みを入れる。
「どうしてそこまでこだわるの?」
「だって子持ちの主婦だってバレたら、良い男なんてひとりも寄ってこないじゃない? 美奈子ちゃんは素材は良いけどまだまだお子様でしょ? 男をGETするにはまだまだ色気と経験値が足りないものね」
「男をGETって……琉璃香さ(ギロっ)……姉さん、スキーに行くのにそんなもの必要ないじゃない」
「そんなことないわよ。上手くナンパしたらお昼ご飯奢ってもらえるでしょう?」
「それが狙い?」
「当然」
 それ以外に何があるの? と言わんばかりにのけぞって頷く。そもそもこのスキー旅行だって、美奈子が地元商店街の福引で当てたもので、彼女達が費用を出しているのではない。琉璃香はその上に商品に含まれていない現地での昼食代をたかろうと考えていたのだ。見上げた守銭奴……もとい、倹約家であった。
「そりゃそうよ。一家の財布を預かる主婦としては、私たちの勝手なスキー旅行で、賢治さんに余計な負担をかけさせたくないじゃない。だいたいスキー場の物価って高いのよ。片道しか乗せないリフトで1回3百円以上巻き上げるし、巷じゃ120円のジュースが150円もぼったくるし、レトルト並みのカレーが千円もするしね」
「え〜っ。そんなに高いの?」
 小学校の課外授業でしかスキーに行ったことがない美奈子が驚きの声を上げる。彼女の経済観念から言えば千円のカレーなど言語道断。それだけの費用があれば家族4人分のカレーにサラダとデザートが作れるじゃないかと、即座に頭の中で計算がたってしまった。
「そうよ。だからちょっと○○そうな男の子にほんの少しモテる気分を味あわせてあげて、その代価としてお昼ご飯を戴くのはギブアンドテイク。むしろこれだけイイ女をを侍らせれるのだから、むしろリーズナブルじゃない? ところで美奈子ちゃん。今一瞬所帯じみたこと考えたでしょう? 中学生の身空でそんなことをしていたら、高校生になったらぬか漬けバーさんになっちゃうわよ」
「あのねぇ……」
 誰のせいでそうなったと思うの! という心の叫びをぶちまけようとしたが、勝ち目が無いことは骨の髄どころかDNAの隅々にまで染み込んでおり、ただただため息をつくだけだった。


 そのさらに10分前。愛美たちが乗ったバスの1本前の便に、これまた高校生と中学生とおぼしきペアが乗り込んでいた。高校生の方はショートボブの活発な印象の美少女。中学生の方はキャンディヘアの小柄な美少女。とはいえ出るところは出ているし引っ込むところは引っ込んでいるトランジスターグラマーで、決してお子様ではない。もちろん服の上からでもスタイルの良さが窺がえる。こんな美少女を彼氏に持った男はさぞや幸せで―
「ふぇーくしょん!!」

「沙織ちゃん。風邪?」
「ち、違うよ。きっと誰かがオ……あ〜あたしのことを噂しているのよ。…………なんちゃって」
「まーねー。沙織ちゃんは可愛いからね。どこかの男の子が噂話をしていても不思議じゃないわね」
 くしゃみの照れ隠しに言ったセリフに沙織と呼ばれた少女は真っ赤に茹で上がる。自分の発言に自分で照れてりゃ世話はない。
「か、カワイイだなんて……」
 外見的には褒め言葉なんだけど、内面的にはちょっと微妙。
「もー、照れちゃってからに。この。この」
「わっぷ。ちょ、ちょっと、ほの…か、さん……」
 肘でぐりぐり押し付けてくるのだが、その際胸の膨らみが無防備に触れて、沙織の心拍数を無用に増加させているのだった。
「まぁ、こういうのも女の子同士だから出来るので、甲介相手だとちょっと無理よね」
 男として意識されて嬉しいやら悲しいやら。ちょっと微妙な感慨を沙織の中の甲介が意識して、頬がますます真っ赤に染め上がる。
「やーねー。沙織ちゃんが意識してどうするのよ」
 ほのかにすれば他の子にやっているのと同じようなスキンシップ。沙織がことさら意識すると自分の方が恥ずかしくなってしまう。
「ちょ、ちょっと暖房効きすぎだよね。あたし、お茶か何か買ってきます」
 このままだと場が持たないと思った沙織が慌てて車外に出ようとするその時、「ちょっと待って、沙織ちゃん!」
 ほのかがその手を握る。
「えっ?」
 その思いの外強く握り締めた掌の感触に、沙織の心臓は限界近くまで鼓動を強める。
「沙織ちゃん……」
 ほのかが潤んだ瞳で沙織を見つめる。
「ほ、ほのかさん……」
 沙織もまたほのかを見つめ返す。
「財布。忘れているわよ。それじゃ何も買えないわよ。あ、ついでにあたしのお茶も買っておいてくれる。沙織ちゃんと同じので良いから。お金は後で払うわね」
 いうところの意識しすぎ。

 ま、どこにでもよくある話であった。


 そんなのどかな世界があれば闇に蠢く世界もある。
 世界制服を目指す足がかりとして町内制服を目指す悪の組織、トワイニングの一味である。
 全てが闇のヴェールに包まれたその組織の秘密基地。その入り口にはかような張り紙が貼ってあった。
 『従業員慰安旅行のため3日間臨時休業します』
 ……
 ……
 ……
 って、おぃ。

 そうして三者三様に出かけて行った、女の子同士? の冬のスキー旅行。
 それが運命の悪戯か、談合した結果か、単なる思いつきでか、共に惹かれあい、同じ宿であんな事やこんな事を繰り広げようとは、その時誰が予想していただろうか?
 それを語るのはまた別の機会で。


FIN




予告



「ブギー1からブギー7。降下準備は整ったか? であ〜〜〜る!」
「こちらブギー1。準備は万全であります!」
「ではミッションを開始する。ぐっどらっくであ〜〜〜る」
「お客さ〜ん。整理券もちゃんと料金箱に入れてもらわないと困りますよ」
「う、うむ……」

 ・・・降り立った暑苦しい影!(笑)


「し、師匠!」
「ぶわかものぉっ! おじいさまと呼べと何度言ったらわかるんじゃ〜っ! ただし、今回に限っては「こーち(は〜と)」でもよいぞ」
「はぁ?」

 ・・・波乱の展開。


「「いらっしゃい。お姉さんたちが色々教えて、あ・げ・る♪」」
「ちょ、ちょっとやめて。そんなところ触らないで! ダメだってば!」

 ・・・咲き誇る百合の花。
 あふれる湯煙の情緒・・・



MONDOさん作、『―― 萌え燃えっ! 白塁学園高校女子ロボTRY部 EX−S 「さおりんとりびゅーと」02 ――私たちをスキーに連れてって♪ ・・・くれたらたぶん、すんごいことになるんじゃないかと(笑)。』 

近日堂々公開!


……………………………………………………………………………………………………………………してましたね。とっくに……


改めておしまい





「あの〜っ」
 全てが終わった白紙の空間で、遠慮がちに愛美が手を挙げる。
 はいっ?
「ちょっと質問しても良いですか?」
 どうぞどうぞなんなりと。
「久し振りに演じてみたんですけど……この作品って、ちょっと手を抜きすぎじゃないですか?」
 なんですと?
「そうそう。山場もなんにもないし」
 一緒にいた典子も追随する。
「それどころかさ。沙織ちゃんやほのかさん。美奈子ちゃんとも全然絡まないし」
「楽しみにしていたのにね」
「さおりん……可愛いのにさ」
「美奈子ちゃんだって、お尻がぷりっとしていて素敵なのよ」
「それ、ちょっとあぶない方向だよ」
「愛美だってそうじゃない」
「わたし−というかぼくは中身は男だから健全な嗜好だと思うけど」
「でも傍からみたら百合な人よ」
「うっ……確かに」
「スキーのシーンはまぁ良いとして、他のエピソードだって軒並みないじゃない?」
「そういえば戦闘シーンも無かったね」
「活躍の場って、全く無いよね〜」
 こちらが黙っているのを良いことに次々に不満をぶちまける。
 確かに「外伝」と銘打っているが、彼女らの活躍の場は殆どない。しかしここは作者としてはっきり言っておこう。
 シリーズが完結してネタがない以上、物語に盛り上がりなどない! と。
 その言葉を聞いて唖然となる愛美。そして典子。
「逆ギレかよ。おぃ」
「つまりネタがないのに無理して書いたわけね」
「らしいわね」
 書いてしまえばこっちのものさ。なにか文句ある?
「言っても無駄よね」「そうそう」
 捨て台詞を吐いてふたりは消えていった。

こんどこそ本当に終わり 


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