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あさひはまた昇る (後篇)

作:あおき あきお


(前回までのダイジェスト)
 親友、武本透(たけもと とおる)との友情を取って、失恋してしまった太田匡(おおた ただし)。
 友情のためとはいえ、やはり落ち込む匡。そんな彼を慰めるため、幼馴染みの弟分の河村旭(かわむら あさひ)が立ちあがる。
 旭は女装すると、匡の思いの人、飯室沙代子(いいむろ さよこ)そっくりになるのだった。
 デート大作戦の影の司令官、旭の姉である香(かおり)によって、旭は山村夕姫(やまむら ゆうき)として匡とデートをしたのだった。
 デートはうまくいき匡は元気になったが、旭は彼をだましているようで気が気でなく悩んでいた。
 しかし、運命の神様のいたずらか姉のノートパソコンに引っかかり、感電してしまった旭はなんと女の子になってしまったのだった。
 後継ぎが女の子になり、大騒ぎになる河村家。香の提案により、その場はなんとか収まる。
 そして、香りの策略により、いやというほど自分が女の子なったということを思い知らされ、かつその精神もどんどん洗脳されて行くのであった。
 女になって初めて匡とのデートに出かける。そこで、夕姫が女の子であることを印象付ける事件が発生する。
 あさひ(夕姫)はあさひで、匡を異性として意識している自分に気づき、その思いが男であったときから持っていたものであることにショックを受ける。
 なんとか、香のフォローで女性として生きたほうが自分らしいのではと思い始めたのだが……。
 感動(ウソ)の完結編スタート。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 あさひが女の子になってから2度目、夕姫としては3度目のデートの日。今回は、先のデートでの途中放棄のお詫びとして行われることになったのだ。
 本日の衣装は、フレアミニの若草色のワンピースに白いニーソックスをはいている。夕姫の清楚なイメージを保ちつつも、活動的なかわいさを出している。
 手にはバスケットを持っており、中には前日に奮戦して作ったサンドイッチとから揚げの改良版が入っているのだ。
 駅前で待っていると、いつも通りに定刻5分前にやってくる。
「太田さん!」
 夕姫(あさひ)が匡を発見し、手を振る。
「あ、夕姫ちゃん」
「この前はすみませんでした。ワタシ、その……」
「もういいよ、今回はお詫びデートだろ。今日は変な話や詮索は一切なし、いいね」
「はい」
「お互い楽しむこと! いいね?」
 さわやかではあるが力強く夕姫を説得する匡。
「はい! ありがとうございます太田さん」
「大田さんか、なんか固いな、オレも勝手にだけど『夕姫ちゃん』って呼んでるだろ。今日は仲良くなるためだからもう少し気軽に呼んでよ」
 今日は妙にフランクに振舞う匡。
 しかしあさひは、さすがにまだ『匡』とか『匡さん』と呼ぶ気にはなれなかった。しいていうなら『お兄ちゃん』なのだが、さすがにそれは問題がある。
 はたと思いつく。あさひはクラブに所属しておらず『先輩』と呼ぶ人はいなかった。
 たまに演劇部の手伝いをさせられるときも、ゲスト扱いだったので上級生を『○○さん』と呼んでいた。
 そうこともあり『先輩』という響きにあこがれていた。
「それじゃ、『先輩』って呼んでいいですか?」
「え? なんで」
「かっこいいなと思って……だめですか?」
 ちょっと上目づかいで匡を見つめる。
「いや、だめじゃないよ」
 おねだりをするような夕姫(あさひ)を直視してしまい、匡はどぎまぎして答える。
「やった、じゃあ先輩。あらためて今日はよろしくお願いします」
 これまでになく元気よく返事をする夕姫(あさひ)。
 今日はいつものようにビクビクやドキドキがなく、堂々としているため、元気な女の子の魅力であふれている。
 あさひは気づいていないが、容姿うんぬんではなく、あさひは女の子としての魅力に恵まれていた。前までのときめく乙女も、おしとやかな女性も、今回のような元気な女の子も演技ではなく、すべてあさひが持っているものだった。
「夕姫ちゃん。今日は、ちょっといつもとイメージが違うね」
「え、ええ〜〜。へ、変ですか?」
 心の中で、『姉ちゃんのバカ!』と叫び声を上げる夕姫(あさひ)。
「いや、なんというか、ちょっとお転婆さんに見えるかな」
「お、お転婆さんですか?」
「ちょっと言い過ぎかもしれないけど、それぐらいアクティブに見えるってつもり言ったんだけど……」
「先輩、『お転婆』って誉め言葉じゃ絶対使いませんよ」
「あ、ご、ごめん。そんな意味じゃ本当にないんだ。なんかいつもは物静かで、おとなしいから」
 カッコだけちょっとむくれて見る夕姫(あさひ)。
「今日のカッコのほうが夕姫ちゃんらしいかなと思ってね。その、今までのことから、以外と行動力あるなと思ったし」
 結構観察眼が鋭い匡。
「わかりました。じゃ、今日は手加減しませんから(クスッ)」
 すごくいたずらっぽい笑みを浮かべて、匡の腕を引っ張っていく。
 実は、匡と遊園地にくるのがかなり久しぶりだった。あさひとしても今回の遊園地は楽しみにしていたのだった。そのため今日はすっかり女の子の心になっていた。
 まずは、ミラーハウスなどの地味なものから攻めていく。
 夕姫(あさひ)は、どれがガラスか鏡か通路かがわからず途中、『ゴツン』とおでこをぶつける。
 慌てて匡が、夕姫(あさひ)の手を取って誘導してやる。夕姫(あさひ)は少し照れくさかったが匡の心遣いがものすごくうれしかった。
 匡も男としてエスコートできたことや、以外にも早くずっと手を握る口実ができで満足していた。
 ミラーハウスを出ると、匡は少し名残惜しそうに夕姫(あさひ)の手を離す。
「ははは、ワタシってドジですね」
 頭をぽかりと右手でたたき舌を出す夕姫(あさひ)。そんな彼女の仕草を見て微笑む匡。
「それぐらいのほうがかわいいよ」
 今日のお詫びデートはとりあえず好スタートをきった。
「先輩……」
「ん?」
「あの、次ぎはあれに乗って見ませんか?」
 指を指す夕姫(あさひ)の先を見ると、カップルたちがコーヒーカップを回している姿が見える。
 そう言うと元気に走って行く。ワンピースの裾は短く、広がっているので、元気に走ると中が見えそうである。
 実際、朝からたまに水色の縞々が『こんにちわ』と顔を覗かせ微笑みかける。そのたびに匡をときめかせるのだった。
 カップの大テーブルが回り出すと、夕姫(あさひ)は調子にのって自分たちのカップも勢いよくくるくると回す。
「それそれ!」
 あまりにも、調子に乗りすぎて回したため、スピーカーで係員から注意をされて大恥をかいた。
「あはは、ボクって懲りてないよね」
 条件反射で思わず匡は『うん』と答えてしまう。
 夕姫とは初めて遊園地にきたはずなのに、どこか心の奥で昔いっしょにきたような気がする。以前もカップを回しすぎて怒られたことがあるのだ。
 そんな疑問を考える間を与えられずに夕姫(あさひ)に次のアトラクションに引きずられていく。
 その後もウォータースライダーやジェットコースターなどに乗り、夕姫(あさひ)はキャーキャーと騒いでいた。
「あ〜、何年ぶりだろこんなに騒いだのは」
「ほんとだ。ものすごく楽しいよ。あはは」
 一息つくと、とたんにおなかが空いてくる2人。
 グ〜
 仲良く同じにおなかの虫が鳴く。
 思わす2人で顔を合わせて、大笑いする。
「お昼にしましょうか先輩」
「日ごろはおとなしい夕姫ちゃんのおなかの虫が、粗相するぐらいだからね」
 そういってベンチに向かって走り出す匡。
「も〜〜〜」
 軽く腕を上げて匡を追いかける夕姫(あさひ)。
 ひとつのベンチを占領し、ランチョンマットを広げる。
 夕姫(あさひ)は、バスケットからタッパを取りだし、ふたを開けては並べていく。
 タッパの中には恐らくサンドイッチであろうものと、狐色を通り越して、紅茶色になった唐揚げらしきものが入っていた。
 さすがにポテトサラダは見た目は問題ない。ただまわりの状況から想像するとジャガイモが茹で上がってなかったり、にんじんやきゅうりがつながったりしてそうだ。
 特にサンドイッチは、なんとも言えない形状をしていた。
 かわいく言うと、『ぐちゃ』としているのだ。
 匡は、形がいびつなサンドイッチを見て『ピン!』とくる。
「も、もしかしてこれ、夕姫ちゃんの手作り?」
「あ、はい、教わって作って見ました。ごめんなさいへたくそで……」
 夕姫(あさひ)はそう言うと、照れ隠しか両手を広げて口元に持ってくる。
 匡は、一枚だけ貼られていたかわいいキャラクターの描かれたパステルカラーの絆創膏に気づく。さりげなくだがよく見てみると、切り傷や火傷らしきものも見える。
「いや、うれしいよ。一生懸命作ってくれたんだろ」
 そういって匡は、サンドイッチをひとつつまむが、心なしか震えている。
「いただきます」
 噛み切るとき思わず目を閉じてしまう。少し覚悟して咀嚼(そしゃく)する。
「ん?」
「どうですか?」
 ただならぬ匡の行動に、恐る恐るたずねる夕姫(あさひ)。
「うまい。おいしいよ夕姫ちゃん。正直見た目はびっくりしたけど、本当においしいよ」
 そういって匡はパクパクとサンドイッチを平らげ、から揚げに手を伸ばす。
「夕姫ちゃんて、料理の才能あるよ」
「本当?」
「ああ、保証する。がんばればいいお嫁さんになるよ」
「先輩ったらまた……」
 なぜかその言葉にまんざらでもない夕姫(あさひ)。ちょっと照れながら、サンドイッチに手を伸ばす。
 こうして手作り弁当も匡に喜んでもらえ、お詫びデートは順調に中盤を迎えた。
 食後も、夕姫(あさひ)主導で遊びまくる。
 さすがに続けざま乗り物に乗り続けると匡もまいってくる。ソフトクリームを食べながら休憩してると夕姫(あさひ)が早速食べ終わり、匡の手を取ってくる。
「次ぎは、もう一度ジェットコースターに乗りましょう」
「おい、もう行くのか」
「だめです。朝、お転婆って言った罰です。とことん付き合ってもらいますから」
「ついに本性をあらわしたな、こいつ」
 軽くじゃれ合うようにして匡が、夕姫(あさひ)にヘッドロックをかける。
 夕姫(あさひ)はわざと悲鳴を上げて抜け出そうともがく。
「キャー、もう、お兄ちゃんったら」
「お兄ちゃん?」
 ついはめをはずしいてしまい地が出てしまう。『しまった』と思うが、なんとかいい訳してみる。
「あ、あ、あの、ボ、いや、ワタシ、小さいころ仲のいい親戚のお兄ちゃんがいたんです。遊んでもらってこと思い出して。嫌でしたか?」
「いや、嫌ってことはないけど、夕姫ちゃんから、お兄ちゃんといわれるとなんか自分が後ろめたくなるな」
「うしろめたい?」
「兄妹でデートなんかやりづらいだろ」
「仲の良い兄妹っていいと思いますけど?」
 夕姫(あさひ)は、両腕を後ろに回して軽く握り、腰を折り曲げて顔を前に出すしぐさをする。
 思わずときめいてしまった匡は、夕姫(あさひ)を抱きしめる。
「兄妹じゃ、こんなことできないだろ」
「せ、先輩、まだ困ります」
 軽く拒絶するあさひ。
「あ、ごめん。その、つい。でもオレは兄妹じゃ嫌なんだ」
 匡の気持ちを考えて、あえて微笑んでうなずいてみせるあさひ。
「今度は観覧車に乗ろうか?」
「やだ先輩、下心見え見えですよ〜」
 わざとからかうように、やんわりと拒絶する夕姫(あさひ)。
 匡の申し訳なさそうな顔に『ちょっと許してあげようかな』と思う。
「いや、さっきは悪かったよ、今度は絶対あんなことしないから。どうしても夕姫ちゃんと乗りたいんだよ」
 必死に拝み倒す匡に、夕姫(あさひ)が折れた。
「本当に信用してますからね。絶対ですよ」
 そういって微笑みかけると、匡も満面の笑顔で答えるのだった。
「絶対に約束する」
 観覧車に乗り込むと、さっきのこともあるのか2人はテレビ番組の話しなどの世間話しかしなかった。
 頂上に近づくと、なぜか匡は黙って外を眺めている。
「あ、あれ」
「?」
「夕姫ちゃん、あっちの山のほうを見て」
 匡は夕姫(あさひ)を呼ぶと、山を指差す。
「ここから見る風景もなかないかすけど、あそこから夕方街を見るとすごく綺麗なんだ。隠れた名所なんだぜ」
「駅ビルに夕日が反射して炎の塔見たくなってなんか幻想的だったのを覚える」
 遠い目をする夕姫(あさひ)。
「夏なんか、アイス片手によくがけっぷちに腰かけて見てたね」
 不思議そうな顔を向ける匡に慌てていいわけをする。
「あ、それも親戚のお兄ちゃんとでした。先輩お兄ちゃんと似てるんです。だからダブって見えちゃって。ごめんなさい」
「いや、別に謝る必要はないよ。オレも女の子みたいな弟分がいてね。小さいときそいつとみてたことを思い出したよ」
「この前言ってた旭さんですよね」
「ああ、あいつも小さいときは、今日の夕姫ちゃんみたいにいつもはしゃいでいたよ」
《……おにいちゃん……》
 あふれる想いを抑えて話をあわす。
「先輩! またひどいこという、ワタシはそんな子供じゃありませんよ」
 ちょとすねて見せる。匡は笑顔で夕姫(あさひ)を見つめる。
「……先輩……」
「なに?」
「……先輩……もしワタシが……」
「????」
「……いえ、なんでもないです。あ、もう終わっちゃいましたね」
 降りる準備をそそくさとはじめる夕姫(あさひ)。匡は彼女に従うしかなかった。
「そうだね、次ぎはなにする」
 二人は観覧車を後にすると少しだけしんみりしていた。
 匡も夕姫のただならぬ気配を察して気を使う。
 そんな匡を見て『これはお詫びデートだから』ということを思い出すと。
 目の前にあった案内板をみて、夕姫(あさひ)が元のテンションを取り戻す。
「あ、なんだか新しいアトラクションができてる。ね、先輩いっしょに行きましょうよ」
「ああ、ほんとに夕姫ちゃんは元気だな」
「バーチャルシアターですって」
「なんか、映画をやってるようだな、3D映画かな?」
「入ってみればわかります。先輩、行きましょ」
 腕をがっしり掴む。だんだん夕姫(あさひ)の行動が打ち解けとけたものになり、胸を匡の腕に押し付けていることも気づかず彼を引きずりまわす。
 匡は、その小ぶりだが適度な張りと柔かさのある感触を、天に上る心地で堪能した。
 このアトラクションのバーチャルな部分というのは、乗っているライドが映画のシーンに合わせて動くというものだった。
 ジェットコースターのように上から安全バーで固定されるため、『しがみついたりは期待できないなぁ』などと、またしもよこしまな事を考える。
 動き出すと、そんなことを考えているひまはなかった。内容は、特殊飛行船で、惑星探索を行うという定番SFだったのだが、隕石郡へ突っ込んだり、迷路のような洞窟で変な怪物に追っかけられたりと、ライドが動くというウリが十分堪能できる内容だった。
 しかし。この『ライドが動く』という部分が中途半端でなく、むち打ちになるかと思うほど頭をシェイクされた。なんとなく笑いがこみ上げてくる。半端なジェットコースターよりGがかかるのだ。(※1)
 夕姫(あさひ)は、長い髪を振り乱して、文字通り『キャーキャー』言いながらも思いっきり楽しんでいた。
 そのときに自分の身に起きた変化に気づいてはいなかった。
 薄暗い館内から夕暮れを迎えようとする屋外に出て、匡はギョッとする。
「夕姫ちゃん、その髪どうしたの?」
 なんと夕姫(あさひ)のウィッグが、激しい揺れでずれてきたのだった。
「え?」
「いや、キャーキャー」
 変な方向へだれてきたウィッグを慌てて直そうとするが、ピンが本物の髪に引っかかりうまく行かない。
 焦りのあまり、ピンが髪と絡まり事態はより悪化する。
「痛い、痛い、痛い」
「夕姫ちゃん。落ち着いて。ちょっと待って」
 匡が夕姫(あさひ)に歩みよりウイッグを少し持ち上げて、丁寧にピンから髪を抜き取って行く。
「夕姫ちゃん。動かないでね」
 身長差のおかげで、作業はスムーズに進む。
「はい、できた」
 匡は、ピンに絡まっって乱れた髪を直してあげようとするが、夕姫、(あさひ)によってやんわり断られる。
 仕方なくはずしたウィッグをもったまま、髪を整えるのを待っている。心の奥底で何か引っかかりものを感じ考え込む。
「あ、ありがとうございます」
 夕姫(あさひ)はウィッグを返してもらうため振りかえると、ばっちり匡と目を合わしてしまう。
「あ、旭!?」
 引っかかりの正体に気づき、あまりの驚きにそれしか言えなかった。
 振りかえった夕姫の背格好、髪型は、少し違和感のあるものの女顔の幼馴染みの河村旭そのものだった。
 よく考えると、夕姫の挙動不審な行動や、思い出を共有していたり、旭でもそんなことまで教えないだろうということをやけに詳しく知っていたりするのもうなずける。
「どうりで初対面の感じがしなった訳だ。でもこんな簡単な女装……」
 『見破れなったのか?』と続けたかったのが、疑問がわいてきた。
「お前本当に旭であり夕姫だよなぁ。…………その……この前も…………」
 匡は混乱していた。前回の事件がなければ、軽くとっちめて、その後はじわじわといじめてから水に流すということもできた。
 しかし、あのボートでの事件で夕姫、すなわち旭が女だということを確認している。
 『どうして、旭が女なのか?』それが引っかかり旭に問う。
 あさひは答えることができない。
「旭、お前、いったいどう言うつもりだよ!!」
 理解不可能な疑問から思わず怒鳴ってしまう匡。
 あさひは、とっさの言い訳からとんでもないことを口走ってしまう。
「お兄ちゃんをだまそうとしてたんじゃなく、こうでもしなければボクなんかお兄ちゃんに相手してもらえないと思って……信じて……」
 言ってから自分はもしかしたらとんでもないことを口走ってしまったのではと気づくあさひ。
 恥ずかしさのあまり、そのまま走り去ってしまう。
 匡の頭の中ではいろいろな勘違いが、勝手な結論を作り上げていく。
 そして、あさひの行動を『これってムネキュン?』と結論付けた匡が、ぽつんと残された。
「……オレ、一体あさひとどう接すればいいんだ……」

 翌日。
「あ〜、あ〜、どうしよう」
 あさひは、朝から心底憂鬱だった。ついに、夕姫が旭(あさひ)だということがばれてしまったのだ。
 しかも、自然公園の事件で女の体になっているのをばっちり見られているのだ。
「いったいどんな顔してお兄ちゃんとあえばいいんだろ」
 どう思われているのだろ。性転換手術を受けたとおもわれているのだろうか、それとももともと女であることを隠して男装していたと思われているのだろうか?
 どちらにせよ、あさひであることを偽って。夕姫として何度もデートをしていたのだから、多分相当怒っているだろうと考えられる。
「傷ついていなきゃいいけど……はぁ〜」
「朝からそんな顔をしているとせっかくの美人が台無しだよ」
 香が満面の笑みを浮かべて話し掛ける。
 『人の不幸がそんなうれしいのだろうか?』どん底まで落ち込んでいるあさひは、たいへんネガティブになり、かなり被害妄想が入らないと物事が見られなくなっていた
「別にもういいよ。どうだって」
「やけに投げやりね。あんたが思っているほど、世の中は捨てたもんじゃないと思うけどなぁ」
 香は昨日のあさひの『ばれた』という報告を詳しく聞いて、匡があまり怒ってないと予想していた。
 ただ、お互いの気まずさがあり、どちらかが歩み寄らないと物事は進展しないだろうとも読んでいた。
 (ふむ、場合によってはキューピット香ちゃん出撃か)
 てなことを香は考えていた。
 もし、言葉に出していっていたら、姉に引っ掻き回される前にあさひは積極的に自分で解決しようとしたであろう。
 いつものように姉に眉毛を描いてもらい、サラシを巻く。しかし、今日はいつもよりきつくしめてしまう。レースの下着同様、これがさらなる事件を巻き起こすとはこのとき思わなかった。
 1時限目、朝から体育という素敵なスケジュールだった。
 もうじき6月というこの時期、暑いのだがまだ春に分類されるため、服は合いもの、プールの授業にはまだ早いという中途半端な季節だった。
 あさひの場合、サラシを巻いてそれを隠すネック部分までぴっちりした厚手のシャツをきっちり着こむと、かなり蒸れた。
 胸さえ隠れればなんともないので、シャツと体操服の裾は短パンの外へ出していた。
 体を思いっきり動かすと、適度の疲労感でしばらくいなやなことが忘れられる。ストレス解消とはこういううことなんだろうな、とあさひは身をもって実感する。
 今日の内容はバスケットボール。
 本気でやるとかなり疲れるが、あさひは嫌なことを忘れるためにもいつもよりはりきった。
 ただ、試合の最中に『やっぱりブラっていいな。確かにサラシも胸を固定して動きやすけどつけ心地はぜんぜん違うもんな』などと考えていた。
 実際、帰ってからは着用している。女性の下着って合理的にできてるなと感心し、最近は抵抗がなくなっている。
 一瞬のぼっーとした隙にボールが飛んでくる。
「河村!」
 ほとんど条件反射でボールを受け取り、状況を把握しようとしているところに、猛チャージを受ける。
 ビリッ
 あさひはこの音に気がつかなかった。
 旭だったときと比べて体重が軽くなっているあさひは、コートの外まで吹っ飛ばされる。驚いたのは、チャージをかけた男子生徒だった。まさか、あれくらいでこんなにも飛ぶとは思ってもいなかったのだ。
「大丈夫か? 河村」
「へ? ううん大丈夫だよ」
 片手でひょいと起こされる。
「お前なんかむちゃくちゃ軽くなってないか?」
「え、え、いや。き、気のせいだよ」
 何とか笑ってごまかすあさひだった。その後は何も起こらず授業を終える。
 教室の帰り道なんとなく、ちょっとサラシが緩んだかなと思ってはいたが、さすがに体育のあとだったので仕方ないとたいして気にしていなかった。
 タオルで汗を拭いていると、さっきチャージをかけてきた生徒が、あさひに声をかける。
「河村、なんだこれ」
 あさひの返事を待たずに裾から出ている布を引っ張っていく。
「包帯? 河村!! 大怪我してたかお前?」
「へ? 怪我なんかしてないよ」
 男子生徒の持つもの、それは包帯ではなく胸のふくらみを隠すためのサラシである。 「ちょっと、ちょっと」
 立ちあがったのが悪かった。
「なら大丈夫だな。それ、悪代官ごっこ」
 サラシを引っ張られ、くるくると回されるあさひ。

「あ〜〜れ〜〜〜」

 思わず条件反射でお約束の悲鳴を上げてしまう。
 はたと我に返ったとき、みんなの熱い視線を感じる。
 いくら小さな胸でも、汗を吸ったシャツが貼りついてはその頂点は隠せない。
「おい、河村の胸、女みたいにポッチがあるぞ」
「きれいなピンク」
「それに心なしか全体的に膨らんでいる」
「なんか肥満の胸とはちょと違うな」
「形がいい。本物の女みたいだ」
「確かめ必要がある」
「ちょ、ちょっとでいいから触らせて」
「や、やめろよ、ボ、ボクは男だぞ」
「いや、わかってるんだけど」
「男だぞ〜〜!!」
 1人が暴走すると『オレも、オレも』と後に続く。どさくさにまぎれて、もみくちゃにされるあさひ。
「いや〜〜〜〜〜〜!!」
 あさひの悲鳴が響きわたって一呼吸置いたとき。

ガラッ

 突然教室の窓が勢いよく開き、ひとつの影が飛び込んでくる。
「オラ、オラ、オラ」
 瞬く間にあさひを襲っている男子生徒が投げ飛ばされていく。
 本当に一瞬のことで何が起こったかがわからなかったが、助けられたという結果はわかった。
 『匡兄ちゃん!』と思ったが、そこに立っていたのは『事情通の香』だった。
 着替え終わった女子たちも何事かと入ってきて、香に『おいでおいで』をされてあさひの近くまで寄ってくる。
 そして着衣の乱れたあさひを見て、絶句する。
 あきらかに胸があり、脱がされかけたトランクスの下からショーツが見えている。
 『女装? 変態? 性転換手術? ニューハーフ?』
 彼女達の頭は混乱する。
「あら、あさひちゃんばれちゃったのね」
 あさひを抱きしめて、わざとらしい大声で叫ぶ。
「でもしかたなかったのね、河村家を守るためだったのだもの」
 これでもかという大根だが、これで十分だった。
 母が、旭に対して男らしくするためにしてきた習い事などの履歴を知っているものも多い。
 そもそも男らしさとか女らしさってなんだという気がするが? 田○陽子に見つかれば噴飯ものの内容なのであえてやめよう。
 姉の一言から『家を守るためのけなげな男装少女』の物語が各自の頭の中に展開され、萌えるもの、感動するものが出てくる。そこらじゅうで『そういえば……』というひそひそ話しまで聞こえ始めた。
 人間というものはファジーにできているらしく、視覚情報からあさひが女であるとわかったとたん、聞きなれた声や仕草も女の子っぽく感じるらしい。
 もしかしたら、香はTSの神様によって洗脳電波の能力を与えられているのかも知れない。
 女子の一部が突然あさひの周りに立ちはだかり、壁を作る。
「さ、河村……くん? 早く着替えて!」
 君つげすることに戸惑いながらも、あさひを守ろうとしているのがわかる。
「……あ、ありがとう……」
 思わず優しい声で礼をいうと、『わぁ〜』というどよめきが起こる。
「なに、今の声、河村の本当の声か」
 突然男子生徒がざわめき始める。
 ≪確かにボクの胸は小さい。でもいくら小さくても中学3年間と高校2ヶ月気づかずにいられるわけはない。
でもみんなはボクが女の子になってもなんとも思わないらしい。
『あさひさん無理しなくてもいいのよ』と誤解をしたまま同情してくれる人まで現れた始末だ。
そうだ、これは陰謀だ、なにものかの陰謀だ〜〜〜ッ!!》
 心の中で絶叫するあさひ。
 明日には明日の風が吹くというわざがある。世の中なるようにしかならないのだ。
 午後は、緊急の職員会議が開かれることになり5、6限目は自習となった。
 その時点で、あさひはいやな予感がした。
 放課後、担任に呼び出され、職員室に向かう。なんとなくではあるが、話の内容はわかる。
 しかし、あまりにも対応が早すぎる。きっと香の暗躍があったに違いないとあさひは踏んだ。
「おまえの母親を思う気持ちはわかるが、ばれた以上男としているのは難しい」
 案の定な話しの内容。あさひはあまりにもお約束な状況に説明する気も無くなったようだ。
「それに、飢えた狼どものむれに、お前を置いとくのは教育上好ましくない。間違いが起きる前に対処したい。明日からはちゃんと女子の制服を着て登校してくれ。それと生徒手帳も作りなおしだ」
 右腕を旭に肩に置いて話し出す。
「これは、先生だけの意見ではなく、緊急職員会議で先生たちすべての決定事項なんだ。もちろん校長も、お前を退学させず、このまま学校にいられるようにと承認をくれた」  そして改まって言葉を続ける。
「ただ、お前がちゃんと女生徒として暮らすというのが条件なんだ。飲んでくれるな!」
 教師の目は真剣そのものある。
 あさひは無言でうなずく。小学校のときからそうだったが、旭は回りの人間からいつも気を使われている。それがうれしくもあり、申し訳なくもあった。
「ちゃんと女子の有志が体操服など世話をしてくれるそうだ。ここは甘えておけ」
 完全に世間は、多少の疑問を持っただけで自分を受け入れてくれた。本来は、すごく幸せでうれしいことなのだが、今のあさひにはそのことに気づかない。
 失意のどん底で家に帰ると最後のダメ押しが待っていた。
「ばれちゃたんだからしかたないわよね〜♪」
 第2回タンスの中の強制模様替えが香によって行われる。今度は男物はすべて破棄された。
「ね、姉ちゃ〜ん」
 パシッ!
 泣きつくと平手打ちを食らう。
「いいかげん女々しいわよ。男なら現実をきちんと受け止めなさい」
 都合のいいときだけ『男』という単語を持ち出して、あさひを精神的に揺さぶる香だった。
 本日の夕食当番の父、政利と食事の支度をしていると、ニコニコしながらあさひに話しかけてくる。
「香から聞いたぞ、ついに学校にもばれてしまったらしいな、でも心配しなくていいぞ、今日やっとあさひの戸籍を女に変えられたから」
「はぁ?」
「なかなかタイミングが難しかったんだけど、なんとか成功したよ。ばれたら父さん役所クビだ。あははは」
 全包囲網完成!
 もう、後戻りはできなくなっていた。

 次の日の朝、いつも制服がかかっていた場所をみて物思いにふける。
 夕べの強制模様替えで、姉のお古の女子制服に変わっているのだ。
 ≪遠山高校の女子の制服は、赤色がメインのプリーツのタータンチェック、白いカッターシャツに赤のリボンタイ、白いVネックのべスト、合いや冬には紺のジャケットを羽織るんだ。ありがちなデザインだけど、とてもかわいいと思っていた。それが今度は着る側に回るとは正直思わなかったけど……。
 ないしょだけど、着てみてちょっと似合うかもなんて思っているだ。きゃは(はぁと)
 ちなみに男子はなぜか紺の詰襟の上下なんだけど、襟の高さが低いので普通のバンカラ詰襟学生服とはイメージが違うんだ。ちょっときざっぽいかな》
 心の中で架空の誰かと会話をしながら、姿見の前でくるくると回りながら着替えていくあさひ。時たま完全に女性化するときがあるようだ。
 女子制服に身を包んで登校すると、非常に視線を感じる。
 なにか話されていると思うと思わず聞き耳を立ててしまう。
 このままでいると、今度は耳が猫の様に大きくなりそうだ。
「あー君大丈夫」
 背後からいきなり声をかけられて飛び上がってしまうほどあさひは驚いた。
「……ご、ごめんね。そんなに驚くとは思わなかったから……」
 無事着地したあさひは声のかかった方を恐る恐る振り返って見ると、そこには肩まである髪を後ろにまとめて縛った少女が申し訳なさそうな顔で立っていた。
「沙代ちゃん」
 あさひの従兄妹にあたる飯室沙代子だった。
「びっくりしたわよ、香さんからあー君が本当に女の子になっちゃったって聞いたから」
《あの、姉!!》
「……本当にってどういうこと?」
「あ、ごめんなさい。小さいときから、あー君って私よりかわいいところあったから」
「…………」
 あさひはなんといって良いかわからない。
「あと、写真見たけど正直驚いたわ」
「しゃ、写真って!」
「デジカメで撮ったって香さん言ってたけど。それより、髪の長いあー君って私とそっくりね」
「……うん、そうだね」
 姉の行為にがっくりきて元気なく答える。その時、沙代子があさひの耳元でささやく。
「ね、こんど一回私と入れ替わって見ない」
「へ?」
 間抜けな驚き顔を沙代子に向ける。それとは対照的にいたずらっぽい笑みをあさひに向ける。
「真剣に考えておいてね、あー君」
 どうやら今度は別の機体にロックオンされたらしい。
 《香といい、沙代子といい、多分これは飯室の女性陣の血なんだろうか。それに姉(香)は、あの母の血が混じっているからきっと最強なんだろうな。もしかして女性化したボクもいずれ……》
 などと考えているうちに学校についた。
「河村さん。はいこれ」
 教室につくなり1人の女生徒が、あさひに紙袋を差し出す。
「へ?」
「私のお姉ちゃんのお古だけど良かったら使って。サイズは多分大丈夫だと思う」
「あ、ありがとう」
 何をもらったのかわからないが、とりあえずお礼をいうあさひ。
 紙袋の中身を確かめて見ると、そこには体操服が一式入っていた。
 他の女生徒からも、先輩とか姉のお下がりやお古の衣類をもらった。
 あさひが考えていた不安をよそにみんな良くしてくれる。女子は、まるで自分の妹みたいな感じで、あさひに女の子独特の習性や仕来たりについて教えてくれた。
 大体の女の子の大変さなどは、姉から聞かされていたのですんなり受け入れることができそうだった。
 ただ困ったことに、あさひの取り合いや教育方針をめぐって喧嘩まで発生した。
「お願い、ボクのことで喧嘩しないで」
 と、事態を収拾させようとあさひが止めにはいったとき、言い方と困った顔がツボに入ったのか、喧嘩の事もすっかり忘れて、みんなにもみくちゃにされたりもした。
 これら一連の話しを後日、沙代子にしたところ、『あー君しっかり、英才教育を施されているのね。私も女の子としてうかうかしてられないわね』といわれたのだった。
 なぜか男子連中は喜んでいる。『昨日まで男だったのにそれでいいのか?』と心の中で疑問をぶつけて見るあさひだった。

 帰りに靴箱を覗いてみるとそこには予想通り、たくさんの手紙が入っていた。
 その山を見て思い出す。
 《もともと男のときからこの手の手紙は、たまにもらったけど。
 ただ内容は『私のお姉様になってください』とか、すごいのになると『僕と付き合ってください』という男からの手紙だっただよな》
 どうせ似たようなものだろうとたかをくくっていたのだが帰って目を通すと、多くは男性からのまともなラブレターだった。
 内容は、あさひの制服姿をみて一目惚れをしたというような内容だった。
 しかし、中には『もう一度男子制服に戻ってください』という中等部の女の子からの手紙も何通かあった。
 あさひもこれにはさすがにまいったが、差出人の名前を確認すると中学の時代に『お姉様になってください』と手紙をくれた子だった。
 《自分で言うのもなんだけど、女の子の服を着ていても、結構ボーイッシュに見えるから、今後も女の子からの手紙は増えるとみたね。
 男として見てもらえれば、結構うれしいことなんだけどね。は〜ぁ》
 あさひの苦悩は続くようだった。
 しかし、それに反して周りの環境は、あさひは家のために女を捨てようとした悲劇のヒロインとして認識され、そのけなげな姿に人気は男女問わず加熱の一方だった。
 翌日、朝珍しく香が『いっしょに行きましょう』誘ってくる。拒む理由も何もないのでいっしょに登校すると、女性に飢えた男子生徒たちが、果敢にあさひに交際を申し込んでくる。
 香は次々と男たちを撃墜し、その屍の山にこう言い放つ。
「あさひと付き合いたかったら、姉であるあたしに気に入られることね」
 これを訳するとこうなる。
『あさひと付き合いたかったら、あたしに貢物を持っておいで、気に入ったら考えてあげる』
 あさひは、男性恐怖症がひどくなると同時に、本当に香は自分の姉なんだろうかと真剣に悩んだ。
 朝からどっと疲れたあさひだったが、平穏な授業が始まりようやくもとの日常を取り戻したと思っていた。
 しかし、その平和は4限目の体育で見事に壊される。
 体育の授業は男女別で行われ、隣のクラスとの合同授業になる。女生徒の1人に腕を引かれ更衣室へ連行されるあさひ。
 隣のクラスには、あさひの従兄妹にあたる沙代子がいる。
「あー君。体育はいっしょの授業になるね」
「う、うんよろしくね」
「わ〜、ほんと沙代と良く似てるわね」
「紗代をボーイッシュにしたらこんな感じかな」
「いいな双子の姉妹みたいで」
 隣のクラスの女子たちは、おしゃべりしながらも着々と着替える。
 あさひは周りを見ないようにこそこそと着替える。『見てはいけない』という男性的考えから、目をつぶっているため周りの状況がわからない。
 そんなあさひを、女子の面子が取り囲んで覗きこんでいる。
 周囲の異様な空気に気づきめをあけると、さっさと体操服に着替えた女子たちに囲まれていた。
「え、え、え、み、みんなどうしたの?」
「みんな、あー君がどんな美人さんかチェックしてるのよ」
「ええ〜?」
「ね、体見せてもらってもいい?」
「体って、そんな、ボク嫌だよ。恥ずかしいよ」
「みんなも興味あるし、ね」
 みんな『ね〜〜』とかわいく返す。
「そ、そんな、女同士だよ」
「だからいいじゃない。減るもんじゃないし」
「観念しろ、えい!」
 体を見るというか剥かれるあさひ。ブラを簡単にはずされ、ショーツをずらされ取り押さえられる。ある意味昨日の男子生徒より残酷だ。
「本当に女の子だ」
「薄いんだ〜」
「手術じゃ下はこうはいかないわね」
「あ、かわいい胸」
「やっぱりサラシって良くないのね。あんまり発育してないわ」
「全体的にまだ幼い感じが残ってるんだ」
「あさひちゃん。これから毎日揉んで大きくしてあげよっか」
「めぐちゃん危な〜い」
「この体、紗代の中学時代を思い出すわね」
 泣きそうになるあさひを置いて、みんなは言いたい放題やりたい放題である。
「あー君、泣かないで。女の子の洗礼だと思って我慢して」
 女の子の世界ってちょっぴり怖いところもある。
「そうそう、私なんて5年生ぐらいで結構胸があったから男の子にもやられたわよ」
「でも河村さん昨日も襲われてたわよ」
「大丈夫、これからはあたし達が守ってあげるから」
 襲っているのはそう言ってる人だったりする。
「ほらあー君、こんなに早くみんなに受け入れてもらったよ」
『どうしてボクの周りの女性はみんなこんな人ばかりなのだろう』と真剣に悩むあさひだった。

 その日の帰り道、自宅の近くで一番あいづらい人が、あさひを待っていた。
 あさひを発見するとその人物は、近づいてくる。
 実はあれ以来2日間、あさひはわざと匡を避けていた。まさか、匡のほうからあいにくるとは思わずどうしたらよいかわからない。
 かばんの取っ手をぎゅっと握り締め、全身もこわばる。
 悲壮な顔で下を向いていると匡が声をかけてくる。
「あさひ、お前、本当に女の子だったんだな……。ごめん気づいてやれなくて、男にならなくちゃって苦しんでたんだな。遠慮なく言えよ。オレでできることならなんでも力になるから」
 匡には2回目のデートでの事件で、胸を触られ、薄い黒の下着のせいでばっちり女の子を見られ、その感触まで知られている。女じゃないとい思うほうが難しい。
「え? お兄ちゃん、ちが……」
「……あの、短い髪も似合ってるな」
「…………」
 匡にも完全に誤解され、ますます憂鬱になったあさひ。
「あら、あさひもう帰ってきたの?」
 振り向くと河村家の実質の当主のみちるが買い物篭を下げて立っていた。
 目ざとく横にいる、匡をチェックする。
「あら、匡ちゃん」
「あ、ご無沙汰しています」
「まあ、しばらく見ないうちに大きくなったわね」
「はあ」
「かっこいいお兄さんになったじゃない」
「いえいえ、図体ばかりって奴ですよ。中身は昔のままですよ」
 ふ〜んっといった感じで全身をなめるようにみると。
「たしか匡君って長男じゃなかったわよね」
「はい、7歳離れた兄がいますが……」
 みちるは、匡のことをよく知らなかった。それは匡のほうが、この強烈な母親を苦手としていたからだった。
 母親がいるときは、めったにあさひの家で遊ぶことがなかったのだ。
 みちるは、荷物を置いてあさひに近づくと、耳元でささやく。
「あさひ、母さん交際を認めます。ただし、河村家の婿養子というのが条件ですからね」
 そういって背中をポンとたたく。
 再び荷物を取りに行こうとしたとき、匡がその荷物をもって立っていた。
「おばさん重かったでしょう? 家までオレ運びますよ」
「なんて良い子なんでしょ。ますます婿としてきてもらいたいわ。あさひちゃん。もっと綺麗になって、家事を覚えて匡君に嫌われないような魅力的な女の子になりなさい」
「いや、おばさんそんことはないですよ、オレなんかまだまだです」
「いやだわ、匡ちゃん。おばさんなんて水臭い。『義母(おかあ)さん』と呼んで」
 匡は少し引きつりながらも、あさひの家までみちるの世間話付き合った。
 あさひにとっては救いの神だったみちるの登場で、話の腰を折られた匡はこっそりとあさひに『いつものところで待ってる』といって帰っていった。

 着替えて廊下に出ると、ばったりと香りに出会う。
「あさひ、今日は女の子に襲われたんだって?」
 香の目は思いっきり笑っている。
「…………なんで知ってんだよそんなこと……」
「ま、あたしを甘く見ないことね」
「でも、良かったじゃない。女の子に完全に受け入れてもらったわよ」
「………………」
「仲の良い女の子じゃれあいってあんなものよ。気にしないほうがいいわよ」
「うん」
「耐性をつけたかったらいつでも言っていいわよ。あたしが相手してあげるから」
「姉ちゃん、本当にいいの?」
 前回いっしょにお風呂に入ったとき、あさひにHないたずらをして返り討ちにしたことを思い出す。
「いつまでもネンネだと思わないほうがいいわよ。いつまでも妹に負けるわけにはいかないから」
「あはは」
 あさひに笑顔が戻る。
「あさひ! ファイットォ!!」
 親指を立てて香は自分の部屋に入る。
 いつもながら、姉の気遣いには頭が下がる。多分今日も匡とあさひと母のやり取りをどこかで見ていたのであろう。あさひが帰ってすぐに、香も帰ってきたから間違いはないはず。

 夕食後しばらくして、あさひは匡に会うために家を抜け出す準備にかかる。昔から母親と何かあると、抜け出して匡に慰めてもらったものだった。
 半そでのパーカーにキュロット、ロングソックス、スニーカーというアクティブなカッコで出かける。ちなみにパーカーとスニーカーは男だった時から着ていたものだ。
 窓を開け、慎重に1階の庇に足を掛ける。慎重にベランダの柱まで移動し、そのままするすると降りていく。
 この柱は、よく消防士ごっこして遊んだものだった。降りるのも昇るのもいまだにお茶の子さいさいだった。
「よっと、えーと」
 パンパン
 きょろきょろと体を見渡し、ほこりを払ってしわを伸ばす。
 降りてから無意識で身だしなみを整えるあたり、しっかり女の子に順応しているあさひだった。
 そのまま塀を乗り越えて裏の広場へ向かう。
 もう深夜を回ろうとしているので人気はほとんどない。
 そんな中、街灯に照らされて長い影を落とす人物がいる。
「あ、すまん。よく考えたらこんな時間に呼び出すのはまずかったな」
「え、ううん大丈夫だよ。…………お兄ちゃんがいるから……」
 そういって真っ赤になるあさひ。しかし、街灯の明かりではあまり目立たない。
「ここ、声が少し響くから児童公園へ行こうか」
「うん」
 二人は黙々と山手の児童公園まで歩いている。お互いにどう話しを切り出そうか考えているようだ。
 やがて、このあたりの子供たちのメインの遊び場だった児童公園に到着する。
「お兄ちゃんとこの公園にくるの久しぶりだね」
「ああ、そうだな。なあ、あさひ、こんなに夜に呼び出されてなんとも思わなかったのか?」
「……お兄ちゃん……だから……」
 わざといろいろな含みのある言葉で返答する。
「それは、脈があると取っていいのか?」
「脈?」
 その言葉の意味するところはなんとなくわかったきた直後。
「あさひ、その……オレと付き合ってくれ」
「え? えええええええっ!」
 匡のストレートな言葉に驚き、おののくあさひ。
「前回は突き放すようなことしてすまなかった。オレもよく考えたんだ、なんで飯室を好きになったんだろって」
「!」
「お前の影をなんとなく追ってたんだよ。弟みたいな、妹みたいなお前の影を」
「お兄ちゃんは勘違いしているよ! ボ、ボク男だよ」
 あわてて、自分を男だとわからせようとするあさひ。自分でもなぜそんなことを匡に言うのかわからない。せっかく両思いだということが確認できたというのに。
「……い、いっしょに立ちションだってしたじゃないか」
自分で言っていて恥ずかしくなって真っ赤になる。
「わかってる。でも、今は女の子だろ」
「…………」
 得体の知れない不安があさひをかたくなにする。
(お兄ちゃんを不幸にしてしまうかも知れない)
 『お兄ちゃんの近くにいちゃ行けないんだ』そう思うとあさひは、駆け出していた。
「……ごめんなさい! やっぱりボク、答えてあげることできない」
「あさひ!」
「お兄ちゃんを幸せにすることなんてボクにはできないんだ!!」
「待って、今度は離さない」
 女の子走りっぽく駆けるあさひ。振りかえって、匡が迫っていることに気がつく。
「だめ、追いつかれる」
 山のほうへどんどん逃げるが、男性陸上部員にかなうはずがない。
 追い詰められたあさひは、後先考えず工事中の柵を乗り越え崖へ向かう。
 ガードレールを乗り越えコンクリートブロック伝いに下に降りようとしたとき、あさひの重みでまだ乾ききっていなかったガードレールの支柱の一本がぐらりと傾く。
 その反動で旭はバランスを崩し、外へ投げ出される。必死になってガードレールのしがみつ付くと支柱の埋まってた土台が絶えられなくなり崩れる。
 結果的にその部分だけ宙ぶらりんの状態になった。普通であれば考えられない事柄だが、工事に手抜きまたは欠陥があったと考えるのが妥当だろう。
「きゃーっ」
「あさひ!!」
 とっさに手を差し出し、落ちそうになるあさひを掴む。
「お前ぐらい軽いものだ。怖いだろうが、オレを信じて手に掴まれ!」
 あさひは、うなずくとガードレールを掴んでいた片方の手で匡の差し出した右手を掴む。そして残ったもう片方の手も伸ばしたとき、タイミングが悪かったのか匡のバランスが崩れる。
「ぐっ」
 あさひは空中に投げ出されるが、匡が手を離さなかったので、勢いでブロックに叩きつけられる。
 必死になる匡を見上げると、記憶の中の彼の姿がオーバーラップする。
 子供のころの思いでが蘇えってくる。


 旭が低学年のころ、石垣を登ったり降りたりするのがはやったことがある。その中でもこの山の石垣は最大の長さと高さをほこり、勇ましさを示すにはもってこいの場所だった。
 もちろん学校ではそんな危険なことは禁止されている。
 高学年の子で何とか降りられるところを、なぜか旭が挑戦することになった。
 女の子っぽい外見と、香や匡のといった常に年上に守られてる旭は、よくからかわれる対象になった。
 香のおかげでいじめまでには行かなかったが、根性なしと思われていた。
「男たっだらやって見ろよ」
「できなんだろ。あさひは女みたいだからな」
「この前スカートはいてたもんな」
「いわかんなかったし」
「おまえほんとは女だろ」
「ちがうよ、ボクは男だ。スカートはねえちゃんがむりやりはかせたんだい」
「ならここおりて男らしいことみせてみろよ」
「それくらいできるよ。みてろ」
 勢いだけで、ブロックを降りて行く。ちょうど旭の背ぐらい降りたときに一番大きなブロックがあり、そこになんとか足を掛けそこで休憩をとる。
 一番大きいとはいえ足場は悪く、ささっと降りないと力尽きて大変なこととなる。
 しかし一瞬の休憩で気合が抜ける。思わず下を見てしまい怖さがこみ上げてくる。
(ふえっ、やっぱり怖いよ)
 旭が突然動かなくってけしかけた子供たちは何事かと集まる。
「おい、あさひどうしたんだよ」
「……うごけなくなっちゃった……」
 旭の現状に動揺する少年たち。
「オレ、しらないからな」
「オレもかんけいないから」
 どうしょうもなくなってなくなって慌てる少年たちはめいめいにいいわけをしながら逃げていく。
 置き去りにされて心細くなるが、何とか泣かずに絶えていた。いや泣く気力も無いといったところか。
 しばらくする、頼もしい声が聞こえてくる。
「旭!」
「おにいちゃん。ボク、もうあしがうごかない」
 膝ががくがくと笑い始めている。
「つかまれ」
「うん」
 伸ばされた匡の腕につかまるあさひ。
 匡は自分も落ちないように、近くにあった木の柵に下半身を引っ掛けて固定する。
 しかし、二人分の体重に絶えきれず木の柵が折れ、根元が匡のわき腹に突き刺さる。
「いてー−−−ーーーーー!!」
 それでも匡は旭を掴んでた手を離さなかった。
「にいちゃん!」
「うわー」
「おにいちゃんだいじょうぶ?」
「だい、じょう、ぶだ、おまえも、なんとか、じぶんで、のぼるように、しろ」
「うん」
 旭は状況を把握し、何とか残った力で足を踏ん張って登りきる。
 匡もなんとか旭を引き上げて一発殴る。
「いて!」
「いってー。いたいのはこっちだよ。なあ、なんでこんなことしたんだよ」
「みんなが女みたいだってバカにするから」
「女だとか、男らしいかどうかなんてかんけいないだろ、旭は旭だろ」
 ガシッと幼い旭の肩を組んで匡は、話しを続ける。
「たとえ、旭がどんなだろうと、オレはずっとそばにいてやるやら、だからもうバカなことだけはするなよな」
「うん」
 旭は元気よくうなずく。
「おにいちゃん。たくさんちがでてるよ」
「こんなのへいきさ。でも、いたいから早くかえってなおしてもらおう」
「うん。ボクをつえにしていいよ」
「つらくなったらたのむ」
 そういって2人は夕日の中を仲良く家路に急ぐ。
「あのね、おにいちゃんをきずつけてしまったからボクがせきんとるよ」
「はあ?」
「テレビでいってた。きずものにするとせきんとってけこんするんだって」
「あははは、いて!」
「だから、おにいちゃんとけこんするんだ」
「何言いだすんだ。わらかしたらきずがいたいじゃないか」
「おにいちゃんは、おとこらしいからおむこさんだよ」
「で、旭はおよめさんというわけか?」
「そう。だからボク、おにいちゃんのおよめさんになるんだよ」
「ばかだなぁ。男はおよめさんになれないだよ」
「なんで?」
「男どうしはけっこんできないからだよ」
「じゃ、ボクおんなのこになる」
「あはは、いくらおまえが、女の子っぽくてもなれるわけないだろ」
「いっしょうけんめいおねがいしたらゆめはかなうもん」
「よし、おまえが女の子になたっらおよめさんにしてやるよ」
「ボク、まいにちおいのりするからね」
「たしかにお前が女になったらかわいいだろうな。オレにいっしょうけんめいしてくれるし」
「おにいちゃんもボクにいっしょうけんめいしてくれるよ」
「そりゃ、お前が大切な弟だからさ」
「じゃ、いもうとになるね。かおりおねえちゃんもいもうとがいいっていってたし。ボクがおんなのこになればみんなうまくしあわせになれるんだ」
「おまえはへんにやさしいな」
 旭の頭を匡がなでる。
「でもおばさんはかなしみそうだよ」
「おかあさんはいいの! ボクにへんなことばっかりさせるから」
 そう言ったとき向こうから歩いてきてた和服姿の髪の長い女の人が、旭と匡の頭をなでていった。
「汝らの願い必ず叶うであろう」
 あさひは、はっきりと思い出す。
 自分の中にあさひが生まれてきたときのこと。幼い日に自分は女の子になりたいと願ったことを。その願いはかなえられた。

 引き上げられたあさひは、何も言わず匡のシャツの裾を引っ張り出し、右のわき腹を見る。
「お兄ちゃん。これ」
「あ、あの後化膿して、死にかけたっけ」
 匡の右脇の傷跡を優しくなでるあさひ。
「お前、熱でて苦しんでいるオレの布団握ってワンワン泣いていたな」
「…………うん…………」
 あさひは、すごく恥ずかしいことを鮮明に思い出し、真っ赤になる。
「なぁ、あの時色々約束したな。覚えているか?」
 無言でうなずいて見る。
「お兄ちゃんのお嫁さんになる…………」
「あさひは約束通り女の子になってくれたんだ約束は守らなきゃな」
「でも、でも……」
 何かを否定しようとするあさひを制して話しを続ける匡。
「オレはあさひが、河村あさひが好きなんだ」
「気が弱いけど意地っ張りで、誰にでも本当にやさしいお前が好きなんだ」
「それがたとえ男でもオレは関係ない!」
「そう思うほど俺の心はあさひのことでいっぱいなんだ」
「……お兄ちゃん……」
「これからいろんなことが起こるかも知れない。でも、オレはお前のそばにずっといて支えてやりたいんだ」
「お兄ちゃん、お兄ちゃん」
(なぜか涙が止まらない、うれしいのに涙が止まらないよ)
 あさひは匡にしがみつくようにして泣きじゃくった。
「……こんな、こんなボクでいいの?」
 匡の男気にあこがれたのではなく、彼自身にあこがれていたのだとあさひは再認識した。
 自分を無条件に常に支えてくれる存在。それが匡なのだ。
 彼の暖かにいつまでも包まれていたいと思っていたが、東の空が明るくなってきたので帰ろうという話しになった。
「なあ、あさひ、今度こそちゃんとしたデートしような」
「うん、ふつつかものですが、どうぞよろしくね、お兄ちゃん」
 あさひは思う。
 闇に染み入る朝日のように、あなたの光に染まりたい。
 また落ち込んだりはすると思うけど、明けない夜などない。
 朝日はまた昇るのだから。

おしまい。


作者註: (※1)USJの『バックトゥーザフューチャー』に入ればわかっていただけると思います。





ショートコメディ

『すごいよ! 香さん』

「あさひ」
「なにおねえちゃん」
「あなたに本当に謝らなければならないことがあるの」
「え! なに」
 香が謝るということはよっぽどのことに違いなかった。身構えるあさひ。
「あなたがまだ小さかった時」
 あさひが匡と出会うよりも昔の小さかった時、香に『たんけんだ!』といって山の神社まで連れてこられたときがあった。
 神社の裏には小さな池があり、神様が住むといわれ入ってはいけなかった。
 しかし、フェンスの裂け目は子供たちの好奇心を刺激し、入るように誘惑する。
 河村姉弟も例外ではなく、その誘惑に負けその中に入ってしまう。
「おねえちゃんまってよ〜」
「はやくきなさい、でもあしもとにはきをつけな」
「うわ!」
 ジャポン!
 そう香が忠告したとたん、足を滑らせ池に落ちる旭。
「あさひ〜〜」
 ぶくぶくと泡立つが姿は見えない。いきなり沈んだみたいだ。
「あさひ〜」
 必死になって名前を叫びつづけるがいっこうに反応はない。
 どうして良いかわからず真っ青になって震えていると、突然水面が泡立って水柱が立つ。

 ジャバジャバジャバ

 和服を着たの髪の長い女の人が、水面に立っており、両手にはなんと二人の旭を持っていた。
「あんただれ?」
「わたしはこの池の精、わかりやすく言うなら神様ね」
「ふ〜ん、かみさまなんだ」
「さて、今あなたがこの池に落としたのは男の子の旭ですが、それとも女の子のあさひですか?」
「女の子のあさひ!」
 即答。
「ウソはいけません。ばつとして外見は中途半端にして、心だけは女の子にします」
「やった、やった」
 香に対してぜんぜん罰になってなかった。
「ねえねえ、かみさま。いい子にしていたら体も女の子にしてくれる」
「心が女の子になった旭ちゃんの面倒をちゃんと見てあげれば考えましょう」
「ぜったいがんばる」

「というわけなのごめんね」
「なんでウソついたんだよ」
「だって妹欲しかったんだもん」
「なんで男の心に戻してもらわなかったんだよ」
「かわいくないじゃん」
「だああああああああああああ」
 頭をかきむしり地団駄を踏むあさひ。
「あさひ、はしたないわよ」
「だれのせいなんだ〜〜!!」
 やっぱりすごいよ! 香さん。

    <終>




 なんとか終わらせることができました。
 つたない文章を最後まで読んでいただきありがとうございます。
 お忙しい中いろいろとアドバイスいただいた運営委員の皆様本当にありがとうございました。
 後編はちょっと苦しみました。
 ああ、最後は恥ずかしい話しになってしまった。一番の見せ場なのにあまりよく書けてませんね修行します。
 でも、最後までプラトニックなんだな。いや、すごいよ。

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