戻る


衣替え5

ある高校生サッカー決勝戦

作:よしおか


「いままさに、全国高校生サッカーの頂点に立つチームが決まろうとしています。前半30分。どちらもゴールを決められずに、後半戦へと舞台を移したのですが、終了間近の、5分前、新生「めぐみ学園」が、ゴールを決めましたこれに刺激されたか名門「星光高校」が、電光石火の攻めで、ゴールを決め、残り時間後わずか30秒を切りました。ですが、「星光」の果敢な攻めに、「めぐみ」は、ゴール前までの侵略を許してしまいました。

あ、「星光」キャプテンの松下くんが、キック。「めぐみ」のキーパー本庄君が、ボールに飛びつくが届かない。ゴール!そして、ホイッスルだ。

ロスタイムなしで、試合終了。優勝は、「星光高校」。惜しくも「めぐみ学園」力及ばず、準優勝だ。だが、初出場で、準優勝の快挙を達成した。華奢な色白の選手たちでしたが、意外にもスタミナは予想以上にあり、最後まで粘ったのですが、力及びませんでした。

選手たちが中央に集まり、お互いの勇姿をたたえ、ユニフォームの交換だ。「星光高校」の選手たちが、ユニフォームを脱いだ。「めぐみ学園」の選手もユニフォームを脱いだ。ん?彼らの胸に巻かれているのは・・・さらしだ。なぜ彼らはさらしなどを・・・あ、選手の一人にさらしが取れて、膨らんだものが・・・胸だ。胸がある。男子生徒に胸がある。これはどうしたことだ。」

競技場のスタンドで観戦していた観客は、あまりの出来事に声をなくし、呆然と成り行きを見ていた。さらしが取れた選手はあわてて胸を隠した。だが、そのふくよかな胸は、しっかりと見られてしまった。

「これは由々しき問題です。男子サッカー選手権の準優勝チームの中に女生徒がいるなんて。そんなことは信じられません。まさか、他の選手も女生徒?そんなばかな・・・・わたくしには、まったく信じられない光景です。」

有名な女子校だったが、年々深刻化する少子化に押されて、今年共学校となったのだが、女性蔑視に対抗して、有数の有名女史を輩出してきた誇り高き学校も時代には勝てなかったとマスコミに取り上げられていた。だが、これが、その共学への反抗なのか。

「この放送をご覧の皆さん、めぐみ学園の選手たちは、一列に一糸乱れぬように並ぶと、相手選手に一礼して・・・ユニフォームを脱いだのですが、ところが、選手の中に女生徒がまぎれていたのです。そんなことが、ちょっとお待ちください。あ、脱いだユニフォームを足元に置くと選手全員が後ろの髪の生え際の辺りに、手をやりました。そして、何かをつかむと、それをめくり上げ始めました。え、え〜〜〜〜〜!」

その模様を実況していたアナウンサーは、絶句してしまった。そのあまりにも信じられない光景に、言葉を失ってしまったのだ。

「え、そんな、そんなばかな。そんなことが・・・あ、失礼いたしました。あまりのことに取り乱してしまいまして・・・でも、これから私が、皆様にお伝えすることを、信じてもらえるかどうか。わたしにも自信がありません。でも、これは真実なのです。この競技場で実際起こっていることなのです。彼らは頭の皮をめくり上げて、そして、その下から現れたのは・・・お、おお少女だ。長い髪の少女たちです。それも、清楚で愛らしい美少女たちの顔が現れました。優しい顔立ちだとは思っていましたが、と、すると、え〜〜〜、あの激しい戦いをしたのはこの美少女たちということになるのでしょうか。そんな・・・でも、あの彼らがぬいだカツラの下から現れたのは、確かに少女たちの顔です。それに、彼ら、いえ、彼女たちは、ずっとわれわれの目の前にいたのですから、入れ替わる瞬間はありません。ベンチにもカメラが設置されていたので、ちょっと待ってください。確認してみますから・・・間違いありません。試合中にベンチを離れたものはいません。となると、あの試合をしたのは、この少女たちで間違いありません。これはどういうことでしょう。解説のセザール・若林さん。若林さん。唖然としている場合ではありませんよ。若林さん。」

「あ、あ、ありえない。女の子が、こんなサッカーが出来るなんて、絶対にありえない。」

「若林さんは、壊れてしまったようです。お、今脱いだユニフォームを、対戦相手の「星光高校」の生徒たちに手渡しています。ただ、呆然となったままの彼らは、渡されるままに、彼女たちのユニフォームを受け取り、自分たちのユニフォームを、「めぐみ学園」の選手に渡しました。審判もユニフォームの交換が終わったところで、ホイッスルです。これは、完全に無意識の行動でしょう。優勝した「星光高校」の校歌が流れてきます。両チームとも、得点掲示板のほうを向いて、整列しています。続いて「めぐみ学園」の校歌です。なんと、波乱に包まれた試合だったのでしょう。男子高校生サッカーの準優勝に輝いたのは女子高生なのです。なんとコメントしていいのか。わたしにもわかりません。それでは、ひとまず、ここ○○サッカー競技場からの中継を終わります。それでは、皆様、さようなら。」

最後の締めをするアナウンサーの横で、解説の若林は、ぶつぶつとつぶやいていた。

「そんなばかなことが・・・おんながアレだけの試合をするなんて・・・・そんなばかな・・・・」

閉会式が終わって、ベンチに戻ってくるイレブンたちを「めぐみ学園」の若い女性監督とコーチは、選手たちをやさしく迎えた。

「よくやったわ。これで、また我が校の名前が日本中に広がるわよ。それに、ばかな男どもも、騒ぎ出すでしょうしね。明日の話題は、我が校のことで埋め尽くされるわよ。」

「あの、監督。これ脱いでもいいでしょうか。」

キャプテンの髪の長い美少女が、笑いが止まらない様子の監督に聞いた。

「いいわよ。着替えてらっしゃい。ただし、さらしを取ったら、制服に着替えてね。わかったわね。」

「は〜い。」

イレブンたちは、力なく答えると更衣室へと向かった。やはり、更衣室の前では、さっきの事を聞こうと、各社のマスコミが、更衣室の入り口で、待ち受けていたが、決勝戦の対戦相手の「星光高校」のイレブンたちが、彼女たちをガードして、何とか更衣室の中に入ることが出来た。

彼女たちは、自分たちが使っているロッカーからスポーツバッグを取り出すと、その中から、下着や、女子の制服を取り出して、着替え始めた。

「キャプテン。いつまでこんなことを続けなくちゃなんないんだ。」

それは、その外見には似合わないぞんざいな口調だった。

「し、誰かに聞かれたらまずいだろ。あの口調で話せよ。」

「あら、キャプテンこそ。」

「でも、行くとこのなかったわたしたちを、こんな試合に出させてもらってうれしいけど、これだけは勘弁したいなぁ。」

そういって、部員の一人が、形よく膨らんだ胸の乳首をつまんだ。

「そうだよね。こんなものを着てて、試合するのしんどいよ。暑いし、換気が悪いから。」

「仕方ないでしょう。どこの学校にも受け入れてもらえないわたしたちを、こうして好きなサッカーが出来るようにしてくれているのだから。」

キャプテンにそういわれると誰もが黙ってしまった。

「さあ、さっさと着替えて、学校に帰りましょ。そうすれば、これともおさらばよ。」

「はい。」

イレブンたちは、さらしを取り、汗ばんだ、パンツを脱ぐと、下着をつけ、着替えを急いだ。

 

バスの中では、イレブンの着替えが終わるのを待ちながら、運転席のコーチとその後ろの座席の監督が話をしていた。

「作戦成功ってとこかしら。」

「そうですね。彼らを、使ったことは成功でしたね。実力は、超高校級だけど、問題があって試合に出場できないあの子達を、こんな形で使うなんていいアイデアでしたね。」

「そうでしょ。外見は、ビーナス・スーツで変っていても、中身は超高校級の実力を持つ男の子。だから、負けるはずはないわ。それに練習熱心なコーチもいることだし。ね、そうでしょう、コーチ。」

コーチはその言葉を聞いて、意味ありげに微笑んだ。

「試合に勝つことに執着して、どんな手を使っても優勝をもぎ取って、あまりのやりすぎに高校サッカー界を永久追放になった監督のおっしゃることですから、間違いありませんわ。」

「あら、練習のさせすぎで、サッカー部員を3名殺してしまったコーチにほめられるなんて、光栄だわ。」

「さて、そろそろ帰ってきますわよ。佐伯隆・・・いえ、隆子監督。」

「帰ってきたら、すぐに出れるようにお願いね。勝本正・・・いえ、正江コーチ。」

「でも、これ、暑いですね。このビーナス・スーツ、もっと、通気を良くしないと、彼ら、ばててしまいますわよ。」

そういいながら、シャツの襟をつまみ、前後に動かして、大きく膨らんだ胸に風を送った。

「学園長に言っとくわ。これからもっと、彼らには、がんばってもらわないといけないから。」

「女子サッカーのホープですものね。ビーナス・スーツを着た男の子だけどね。」

「わたしたちと同じね。ウフフフフ。」

「ホホホホホホ。」

二人の笑い声が、イレブンの帰りを待つ、バスの中に鳴り響いた。

 

あとがき

サッカーの試合後のユニフォームの交換から思いついたのですが、こんなものですかね。それでは、また。

戻る


□ 感想はこちらに □