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あの戦争から5年の月日が流れていた。平和になったこの国で、立て続けに奇妙な事件が起きた。

 次々に、男が少女に変わってしまったその事件は、国防省情報部の活躍でこの国にいたあの国の協力者を倒す事で幕を閉じた。

 しかし、それは、あの国を最後の戦いへ駆り立てるきっかけとなったことを、この時には誰も気付かなかった。

 

あの国は、国防省情報部の情報部員、小川の恋人の父親である上田博士を拉致し、かつて正美を女性に変えた電磁波兵器の開発を急がせていた。

さらに、航空母艦を建造し艦載機の訓練を急がせていた。戦雲は確実に近づいていた・・・。

 

 

ガールズ・ファイター

ファイナル・オペレーション

(中編)

:逃げ馬

 

 

 

海軍・横須賀基地

 

基地内にある司令部の窓から、小沢提督は神戸から回航されて工事中の新造航空母艦『ずいかく』を見ていた。

少し前に、小沢は参謀達から状況報告を受けていた。小沢は、あの国の侵攻が始まると見て、各護衛艦隊と全海軍部隊に戦闘準備を命じた。

「進言はしてみたが・・・肝心な時に間に合わなかったな・・・。」

小沢は、『ずいかく』の大きな姿を見つめながら呟いた。『ずいかく』の艦上では、作業員が忙しく動き回っている。

小沢は、桟橋に接岸して補給作業を急いでいる彼の旗艦『まや』に視線を移した。『まや』もかつて彼がのって戦った『たかお』と同じく『こんごう』級のイージス護衛艦の最新の艦だった。

「今は、手元にある戦力で戦うだけだな・・・。」

小沢は呟くと、状況表示盤に視線を移した。そこには、あの国の部隊が、国境線付近に戦力が集中している事が表示されていた・・・。

 

 

 

早朝・国境・停戦ライン付近

 

守備隊の指揮官は、停戦ラインを見つめていた。

突然、国境線の向こう側が日の出のように明るくなった・・・真っ赤な閃光が、右から左へ、また左から右へと走る。少し遅れて落雷の音のような砲声が聞こえてきた。

「来たぞ!戦闘配置につけ!!」

指揮官がマイクに向かって叫んだ。

「おい!司令部に連絡だ!敵は、国境線の突破を開始・・・だ!急げ!!」

通信士に指示を出す指揮官。次々に砲弾が降り注いで爆発が起きる・・・また、戦いか・・・指揮官は思った。

 

敵は、SU−24攻撃機で爆撃をして陣地を無力化してから機甲部隊で突破していった。あちこちで陣地が突破されていく連合軍守備隊・・・。

 

連合軍の空軍基地を見下ろす丘の上に、奇妙な形の戦車が止まっている。大きな円盤を立てて空軍基地の方向に向けている。後ろには電源車がケーブルをつないでいる。しかし・・・なにも起きない・・・。あたりは静かだった。円盤は、しだいに色が赤く変わっていく。歩兵部隊は、いつ指示が出ても突っ込んでいけるように待機している。

 

基地の中では、司令官の宮下と竹間が参謀から状況報告を受けていた。

「フン・・・私達がここにいるのに、全く身の程知らずな・・・。」

宮下の言葉に、竹間も、

「すぐに国境の向こうに押し返してやりましょう!」

笑いながら言った。突然、

「ああ・・・なんだこれは!!」

通信士が声を上げた・・・彼の短く刈り込んでいた髪がするすると伸びていく。顔は小さく優しげになり、胸は大きく膨らんでいき、ウエストは細くなっていく、来ていた服はダボダボになってしまった・・・驚いて彼を見つめるスタッフ達・・・しかし、

「ああ・・・!」

次々にスタッフ達の姿が女性のように変わっていく・・・最初に変化した通信士は、すっかり女性の姿になってしまっていた・・・服の下にある自分の胸の膨らみを呆然としながら見る彼女・・・。

「うわ・・・俺まで!」

竹間が叫ぶ・・・彼もみるみるうちに女になっていく。

「ああ・・・うわーー!!」

宮下も自分の体が変化していく、あまりの事に歯がガチガチと音を立てて鳴る宮下・・・皺のあった顔は、ツルツルの滑らかな白い肌に変わっていた・・・髪の毛は、サラサラのショートカットになっていた、もちろん白髪などない。体は小さくなり、胸は膨らみヒップは大きくなっていく、すっかり体の線は女性のラインに変わった・・・周りから見ると17・8歳の女の子の姿になっていた。

「た・・・助けてくれー!」

叫ぶ宮下と竹間。その声は、すっかり女の子になっていた。しかし、助けるものは誰もいない。基地の男達全員が変身していっていたのだから・・・。

 

「そろそろでしょうか?」

観測員が、暗視双眼鏡で基地の様子を見ながら言った。指揮官が、時計を見ながら言った・・・。

10分か・・・よし・・・電磁波停止!!」

「了解!停止!」

赤くなっていた円盤がしだいに黒く戻っていく。

「突撃!」

歩兵部隊が基地に突っ込んで行く。

『ダダダダダッ』

機関銃の音が基地に響く。女性化してしまった兵士達は、混乱していてまともな反撃はほとんど出来ない。

『バン』

作戦室のドアが突然開いた。作戦室には、17・8歳に見える女の子達が怯えきった目で兵士達を見ていた。

『ダダダダダッ』

機関銃が火を噴く・・・。

「そんな・・・あの戦いの英雄のはずの俺がなぜこんな所で、こんな姿にされて・・・。」

胸に熱い塊を撃ち込まれた・・・宮下の意識はそのまま暗い闇の中に、永久に消えていった・・・。

 

「制圧完了!こちらの死者、負傷者は全くありません。」

「よし・・・。」

指揮官が満足そうに頷いた。

「よし・・・前進!」

部隊は、再び南下をはじめた。

 

敵は、夜が明けると前線の守備隊陣地への航空攻撃を強化していった。

「ドラゴン・リーダー・・・敵は前方160km。射程距離到達まで後3分!」

「ドラゴン・リーダー了解!」

F−15とF/A18で編成された40機程の編隊、ドラゴン飛行隊が、敵の迎撃に向かっていた。

「ドラゴン隊・・・敵は射程距離に入った!」

早期警戒機が知らせてきた。

「了解・・・攻撃開始!」

編隊の戦闘機が次々にミサイルを発射する・・・夜明けの空のあちこちに爆発の閃光がきらめく・・・。

「・・・!!」

レーダーが敵のミサイルを捉えた。警報がコクピットに響く。

「全機、回避行動をとれ!!」

編隊を解くと、全機が急旋回、急降下していく。あちらこちらでミサイルが味方機を捉えて爆発している。

「くそ!」

隊長が叫ぶ。

「あれは!」

ミグ21・23・29の混成編隊が、空を埋め尽くすほどの数で突っ込んできた。敵味方入り乱れての空中戦が始まるが。味方は、敵の数に圧倒されてあちこちでF−15、F/A18が爆発している。

「全機、一先ず戦闘空域を離脱しろ!退却だ!!」

隊長は叫んだ。しかし。味方機は次々撃墜されていく。もちろん、こちらもかなりの数を落としているが・・・。

『ビーーーッ』

パネルの後方監視レーダーが鳴った。

「くそ!」

隊長機の後ろにミグ29が現れた。赤外線誘導の短射程ミサイルを発射するミグ29。隊長機は機体を捻って回避しようとしたが、距離があまりに近かった。

轟音と共にエンジンにミサイルが命中して爆発すると、隊長のF−15は大空にその破片を撒き散らしていた。

 

敵は、迎撃機部隊を排除すると、SU−17・24の大編隊が前線基地に襲いかかった。空からの攻撃に連合軍は必死に抵抗したが次々と前線部隊や基地は沈黙していった。その後を機甲部隊や歩兵が前進していく。戦況は、敵に有利になっていた。

 

 

 

日本海海上・海軍・第2護衛艦隊旗艦『あたご』艦橋

 

海軍は、佐世保に待機していた第2護衛艦隊に、連合軍の増援部隊の輸送を護衛するように命じていた。

「司令・・・あと2時間で到着します!」

艦長が司令官に報告した。司令官が、海に視線を向けたまま頷いた。突然、

「国籍不明機、約70機接近してきます!」

管制員の悲鳴のような声が艦橋に響いた。

「総員戦闘配置!!」

艦長が命じる。艦内には警報ブザーが鳴り、乗組員が配置についていく。

「通信士!空軍に援護を要請しろ!急げ!」

司令官が命じる。

「ミサイル接近!!」

管制員の報告に、艦長が、

「イージス・システム作動!データ・リンク開始!準備できしだい迎撃開始せよ!!」

次々に指示を出す。

第2護衛艦隊の各艦からミサイルが発射されていく。この艦隊は、前の戦争でジャンヌダルク飛行隊と共に戦った、海軍では最も実戦経験の多い艦隊だった。それだけに対応は早い。

迎撃ミサイルが次々に対艦ミサイルを叩き落していく。ミサイルの迎撃網を突破されると、各艦からバルカン砲が発射されていく。爆発が次々に艦隊の前方で起こる。突然、黒煙の中からミサイルが飛び出してきた。

「・・・!!」

ミサイルは、『あたご』の艦橋の前にあるミサイルの垂直発射ランチャーの側面に命中すると、轟音と共に爆発した。次々にランチャーの中のミサイルが誘爆を起こしていく。『あたご』は真っ二つに折れると日本海の波間に黒煙をなびかせながら沈んでいった。

次々に対艦ミサイルが護衛艦隊と輸送船団に命中していく。あちらこちらで大爆発を起こす輸送船団・・・。

 

「くそ!」

第2護衛艦隊に所属するイージス護衛艦『たかお』の艦橋で艦長が歯軋りしている。彼は前の戦争で、同じ『たかお』の航海長として小沢提督の下で戦った。その艦隊が次々に沈められていっている。

彼は、『たかお』を右に、左に急転舵させながら、対空ミサイルとバルカン砲でミサイルを迎撃していた。しかし、敵の攻撃の手は緩まない・・・このままでは、いくらイージス艦であるといっても彼の艦もいずれは・・・。

「後方から味方機!約30機!接近してきます!」

管制員の報告に、艦長は情報表示パネルに目をやった。高速で接近してくる編隊・・・。

「来たな・・・。」

笑顔になる艦長。

「砲術長!味方を撃たないように注意しろ!」

指示を出す艦長。

 

ジャンヌダルク飛行隊と、ユニコーン飛行隊が、戦場に到着した。

「酷いな・・・。」

正美が、コクピットで呟いた。海面のあちらこちらに貨物船や護衛艦が黒煙を上げながら動きを止めたり、沈みつつある・・・。何隻かの護衛艦や貨物船は、全速力で右に左に舵を切りながら回避運動をしている。

「『たかお』よりジャンヌダルク・リーダーへ・・・。」

インカムに通信が入る。

「こちらジャンヌダルク・リーダー・・・状況はどうですか?!」

「旗艦をやられた・・・艦隊は半数を失っている。退却をするから援護を頼む!」

「了解!」

正美は、通信を終えると梶谷に声をかけた・・・こういうときには、夫ではなく同期生の梶谷だ・・・。

「ユニコーン・リーダー・・・行くよ!」

「了解!!攻撃用意!!」

梶谷も答える。ジャンヌダルク隊とユニコーン隊の戦闘機は、編隊を解くとミサイルの発射態勢に入る。

「ジャンヌダルク・リーダー、ターゲット、ロックオン、発射!!」

正美のF−2から炎の尾を引きながらミサイルが飛び出していく。

「ユニコーン・リーダー、発射!!」

「ジャンヌ2、発射!!」

32機のF−15、F−2からミサイルが発射された。前方で次々に爆発が起きる・・・敵の戦闘機が突っ込んでくる。

「全機、突撃!!」

正美の号令で全機が突っ込んで行く。たちまち、青空で飛行機雲が絡み合って、あちこちで爆発が起きる。

正美は、目の前のSU−17を捉えると、バルカン砲の発射ボタンを押した。主翼にバルカン砲が命中すると、主翼が折れて錐もみ状態でSU−17は日本海に落ちていった。

あちらこちらで、味方のF−2、F−15が敵のSU−17、SU−24を追いまわしている。

「ジャンヌ・リーダーより『たかお』艦長!今のうちです。退却を開始してください!!」

「了解!ありがとう、ジャンヌダルク・リーダー!!」

上空では、空戦が続く・・・歴戦のパイロットが多いジャンヌダルク隊と、ユニコーン隊が押し気味だ。海上では、『たかお』の艦長が指揮をとって残存艦隊をまとめて退却に入る。輸送船を先に逃がし、生き残った護衛艦は、『たかお』が先頭に立って退却を援護している。

 

岩田は、初めての空中戦で早くも2機を撃墜していた。

「よーし!」

岩田は、目の前を飛んでいるミグ23を追う。スコープに捉えた・・・発射ボタンを押そうとした瞬間、

『ピーーーッ』

後方監視レーダーが鳴った・・・ミラーを見ると、ミグ29が真後ろについている。ミグの機首に発射の火花が散った。

『ガンガンガン』

機体を叩く音がして不気味に振動した。パネルに警報ランプがついた。

「キャーーッ!!」

叫ぶ岩田。インカムに正美の声が響いた。

「ジャンヌ10!ダイブして!」

岩田が操縦桿を、乱暴に前に倒す。F−2が黒煙を噴き出しながら急降下していく。岩田のコクピットの上を機関砲の真っ赤な線が通った。

「遅い!!」

正美が発射ボタンを押した。バルカン砲が、岩田を襲っていたミグを捉えた。エンジンが爆発してミグ29は、破片を大空に撒き散らした。

 「ジャンヌ10・・・大丈夫?まだ飛べる?」

 正美が岩田に聞いた。

 「はい・・・何とか・・・。」

 「基地に帰還しなさい!」

 「しかし!」

 岩田の言葉に正美が被せるように、

 「落ちちゃったら何にもならないよ!ここは我慢して一先ず基地に帰りなさい!」

 正美の指示に、岩田は、

 「わかりました!」

 岩田は、乱暴に機体を旋回させると、基地に向かって帰還して行った。

 上空では、まだ空中戦が続いていた・・・。

 

 前線では、侵略国の機甲部隊が補給を受けていた。兵士達は激しい戦いが続いていたため休息を取っている。ずっと、勝ちつづけていたためだろうか?兵士達には、笑いが絶えない。

 兵士が、大きな金属製の円盤をつけた戦車に近付いていく。

 「おい!その車両には近づくな!!」

 士官が、声を荒げる。

 「ああ・・・申し訳ありません。しかし、この車両のおかげで、我々が勝ち進んでいるのですね。」

 「そうだな・・・相手を女に変えてしまって、抵抗力を削いでくれるわけだから・・・しかし、今はこれ一台しかないからな・・・大事に使わないと。」

 兵士と、士官が話をしていると、

 「おまえは・・・どこの部隊だ!」

 一人の将校が、兵士に近づいてきた。

 「我々と・・・靴のマークが違うな・・・我々は、識別のために靴に緑色のラインを入れている。おまえの靴にはないな。」

 将校がピストルを取り出した。

 「おまえは・・・何者だ・・・。」

 ピストルを構えようとする将校。突然、兵士が戦車の後に飛び込んだ。

 『バン』

 乾いた銃声が響く。くつろいでいた兵士達が、驚いて銃声の方向を見る。一斉に立ち上がって銃を手にとる。その間に銃撃を受けた兵士は、停めてあったジープに飛び乗るとエンジンをかけて急発進させた。

 『ダダダダダッ』

 機関銃の銃声が後から響く。ジープのフロントガラスが砕け散った。

 「くそ!ドジッたぜ!!」

 長谷川は、ジープの運転席でぼやくと後に向かって手榴弾を投げた。後方で爆発が起きる。敵の兵士が怯んでいる隙に、長谷川は逃げ去った。

 

 北九州基地に、正美たちが帰還してきた。次々に戦闘機が着陸してくる。基地のスタッフ達は、久しぶりの勝利に沸き返っていた・・・その輪の中に、先に戻っていた岩田がいた。正美のF−2が、滑走路に着陸すると、誘導路を格納庫へ戻ってきた・・・整備員達が拍手をしている。エンジンが止まると、ステップが機体に取り付けられた。キャノピーが開き、正美が降りてきた。

 「すごいですね・・・今日は10機撃墜だそうですね!!」

 服部が、笑顔で言った。

 「ありがとうございます!・・・こちらは、撃墜されたものがいませんからね・・・良かったです。」

 ヘルメットを取ると、正美も笑顔で言った。

 「岩田さん・・・大丈夫だった?」

 正美は、岩田を見つけると声をかけた。

 「はい・・・私は大丈夫ですが・・・。」

 岩田は、格納庫の中のF−2に目をやった。岩田のF−2は、機体のあちこちに穴が開き、炎の痕が、機体を黒く焦がしていた。岩田がため息をついた。

 「リーダーに・・・以前『訓練と実戦は違う』と教えられていたのに・・・油断してしまいました。どうもすいません・・・。」

 岩田が、正美に向かって頭を下げた。

 正美は、岩田を優しい目で見ていた。整備担当の服部が、脇から声をかける。

 「機体は、それほどダメージは大きくない・・・二日もあれば修理は終わるよ。」

 正美は、岩田を見つめながら言った。

 「機体の代わりはあるけど、君の代わりはいないからね・・・今日は助かったけど、今度はわからないよ・・・空中戦では、一瞬の油断で命がなくなるよ。僕だってかつては・・・。」

 正美は、最初の戦争でのことを一瞬思い出していた。気持ちを切り替えて岩田に言った。

 「でも・・・君は今日の戦いで、艦隊を助けるという自分の任務は果たした・・・よく戦ったよ!」

 正美は、にっこり笑った・・・岩田も笑顔で頷いた。

 二人は、再びF−2に目を向けた・・・服部や圭子たち整備員が、破損した個所の修理をはじめている・・・格納庫の中には、指示と復唱の声が響いていた・・・。

 

 

 

 数日後・某国・先端技術研究所

 

 先端技術研究所の中の広い部屋・・・そこは、厚いコンクリートに囲まれた、コンピューターや、情報表示板の並ぶ、近代的な侵略国軍の総司令部になっていた。

 「現在の所、作戦は順調・・・予定通り進行しております。」

 司令官の報告に、恰幅のいい男が満足そうに頷く。それは、この国の独裁者だった。

 それを遠くから見ている、兵士に変装している長谷川・・・。

 「さて・・・報告だな・・・。」

 長谷川は、研究所を抜け出すと、ジープに乗り込み首都に向かった。

 

 

 

 翌日・空軍・北九州基地

 

 作戦室に、朝倉司令官をはじめ飛行隊のリーダー達や、各部門の所属長が集まっている。

 中央のテーブルには、衛星写真でとられた“先端技術研究所”の写真と周辺の山の写真が置かれている。

 「幕僚本部と、国防省情報部の調査報告では、以前に梶谷正美中佐を女性に変えた電磁波兵器の発展型を搭載した戦車が一台実戦配備されているようだ。その戦車は、空軍基地の要員達を女性に変えて、歩兵部隊と連携して全滅させた後、防御陣地の突破を支援している・・・。」

 朝倉は、ファイルから戦車の写真を取り出してテーブルに置いた。

 正美の目は、その写真に向けられていた・・・。6年前の出来事が、また、今になって自分の目の前に現われてきた・・・そう思っていた。

 「情報部の報告では、この研究所は、敵の総司令部になっているということだ・・・これは、あの国の指導者を首都に置いておく事で、こちらの攻撃にさらすのを防ぐためだろう。戦車の開発も、ここでされたそうだ。」

 米村参謀長が言った。

 「一気に決着をつけるためには、ここにトマホークミサイルを撃ち込んでやればいいと思いますが。」

 ファルコン・リーダーの浅原が言った。

 「いや・・・それは無理なんだ・・・。」

 米村が苦虫を噛み潰したような顔で言った。

 「この山岳地帯は、谷が入り組んでいるため、トマホークミサイルでは対応できないようなんだ・・・。」

 「いずれにしても、奴らの総司令部を叩かないとな・・・。」

 朝倉が呟いた。

 「よし・・・私から進言してみよう。」

 朝倉は、国防軍司令部への直通回線の電話を手に取った。

 

 

 

 翌日・某国・山岳地帯

 

 連合軍総司令部は、弾道ミサイルと、爆撃機による攻撃を先端技術研究所・・・敵の総司令部に対して行う事にした。

 

 「目標の座標・・・入力完了しました!」

 司令部の中の一室・・・ミサイル管制室の暗い部屋の中で管制官が、ミサイル担当士官に報告する・・・情報を表示しているモニターの色とりどりの光が、士官の顔を照らしている。

 『あの独裁者もこれで終わりだな・・・10発のミサイルを一ヶ所に撃ちこまれて無事ではいられないだろう・・・山に篭もって安心していたのだろうが・・・。』

 士官は、そんな事を考えていたが・・・。

 「よし!1番から10番まで発射!!」

 力強く命じる・・・管制員が、発射ボタンを押した。ランプが、赤から緑に変わった。

 ミサイルが、炎と黒煙の尾を引きながら、まだ暗い空に向かって消えていった。

 

 30機のF/A18が、爆弾を抱えて夜明けの空を飛んでいた・・・この爆撃隊は、弾道ミサイルでの攻撃が失敗した場合に第2波として攻撃する事になっていた。

 「これで、あの男も終わりか・・・。」

 隊長は、コクピットの中で呟くと、司令部の指示を待っていた。

 

 10発のミサイルは、凄まじいスピードで“先端技術研究所”をめがけて飛んでいく。以前にこの国が九州にミサイルを撃ち込んだ時には、九州に展開していた空軍を壊滅状態に追い込んだのだが・・・。

 山岳地帯の山の尾根のあちらこちらから、ミサイルをめがけて何かが飛び出した。迎撃ミサイルだった。

 弾道ミサイルの至近距離まで飛ぶと、爆発を起こして破片を飛び散らして弾道ミサイルを破壊していく・・・空のあちこちで爆発の閃光が光り輝いて山を赤く照らしていた・・・轟音が山にこだまする・・・そして、弾道ミサイルは全て撃ち落されてしまった・・・。

 

 「司令部よりスワロー隊へ・・・ミサイル攻撃は失敗した!爆撃を開始せよ!!」

 「了解!」

 F/A18のコクピットで隊長が答えた。

 「攻撃用意!!」

 隊長は命令すると、酸素マスクを付ける。パイロット達もそれに従った。30機の戦闘機は、山岳地帯へ侵入していった。

 

 「敵機接近!!」

 総司令部で情報パネルを見ている管制員が叫ぶ。

 「またか・・・。」

 指揮官が無表情な顔で言った。

 「迎撃開始!」

 指揮官が命じると、

 「司令部より各セクションへ・・・迎撃を開始せよ!!」

 管制員が連絡していく。

 

 “先端技術研究所”に向かっていたスワロー隊の隊長は、コクピットの中で、山の尾根からたくさんのミサイルが発射されたのを見た。コクピットの警報パネルにランプが点き警報音が鳴り出す。

 「全機!回避行動をとれ!!」

 叫ぶと同時に、隊長は機体を急降下させる。隊長機のコクピットの上でミサイルが爆発する・・・隊長は、急降下しながら、味方の戦闘機が爆発するのを見た・・・警報音は、鳴り止まない。山からは、次々にミサイルが発射される。

 「くそ!!」

 それでも隊長は目標に向かう・・・そして隊長は見た・・・山の尾根から、山頂が真っ赤になるほどの閃光で対空砲が発射されるのを・・・。

『ガンガンガン・・・。』

機体が振動した。次の瞬間・・・隊長のスワロー・リーダー機、F/A18は、大爆発をして空に破片を撒き散らした・・・。

 

 

 

 空軍・北九州基地

 

 作戦室には、飛行隊のリーダーと、サブ・リーダー、そして朝倉司令官や、幕僚達が集まっていた。雰囲気は、重苦しい・・・。

 「・・・そう言うわけで・・・ミサイル攻撃は失敗、攻撃隊は・・・全滅しました・・・。」

 米村が報告を終えた。

 作戦室にいる全員の目が、幕僚本部から届けられた衛星写真と、コンピューターで分析された山岳地帯の対空兵器の配備図に注がれていた。上空からの研究所に対する攻撃に対して、死角が出来ないように対空砲とミサイルが配置されていた。

 「まるで要塞だな…。」

 浅原が呟いた。

 『まったくだな・・・。』

 正美も、そう思っていた…まるで、山岳地帯の尾根全体が、ハリネズミのようになっていた。

 「地上からの攻撃は?」

 梶谷の質問に、

 「それは無理だ・・・この山岳地帯は、地上部隊の進撃できるルートが一本しかない・・・攻め難く守りやすい地形なんだ・・・。」

 朝倉が言った・・・再び沈黙するスタッフ達・・・ふと正美の頭の中に何かがひらめいた・・・。

 「正美君・・・どうした?」

 朝倉が気付いて尋ねる。正美は、ペンで海岸から研究所までの谷をなぞる・・・考える正美・・・。顔を上げると、

 「超低空飛行で侵入して、この谷沿いに飛べば研究所を爆撃できます・・・。」

 正美の提案に居合わせた全員が驚いた。

 「真田・・・それは無茶だ!」

 米村が言った。驚きのあまり旧姓で呼びかけていた。

 「いったい・・・誰がそんな攻撃をするのですか?!」

 浅原の言葉に、

 「僕一機で充分だ・・・大部隊で攻撃をすると損害が大きすぎる。」

 正美がはっきり言った。朝倉は、正美の顔を見つめている・・・何も言わずに考え込んでいる。

 「やめろ・・・危険だ!」

 梶谷が言った。

 「あいつを倒さないと・・・全ては終わらないよ!」

 正美が瞳を潤ませながら言った。俯く梶谷・・・言葉の出ない石部。北田も、正美の顔を見つめている。

 「正美君・・・本当に研究所までたどり着けるのか?」

 朝倉が静かに言った。

 「はい・・・ミサイルや対空砲の配置から見て、山を縫って飛ぶ戦闘機などに対する攻撃は、考慮されていません・・・充分に成功の可能性はあります。」

 朝倉は、考え込んだ・・・部下をむざむざ失いたくない朝倉は、可能性とリスクを頭の中で比較している・・・どうする?・・・正美の顔を見つめる朝倉、正美が力強く頷いた。

 「よし・・・やろう!」

 驚いて朝倉を見るスタッフ達。

 「しかし、司令官!」

 米村が叫ぶが、

 「可能性があるならやってみよう!もちろん、むざむざ危険の中に放り出しはしない!作戦はしっかり考える。とにかく、幕僚本部に提案してみよう!」

 「リーダー機だけで作戦をするのは危険です!作戦は、ジャンヌダルク飛行隊で行うべきです!」

 石部が言った・・・・驚く梶谷と浅原・・・米村は、石部を頼もしそうに見つめていた。

 「わかった・・・。」

 朝倉は、にっこり笑って頷いた。

 

 

 

 同日・横須賀・海軍防衛艦隊司令部

 

 「長官、幕僚本部からです。」

 参謀が、“機密”と書かれたファイルを持って小沢に渡した。

 「・・・。」

 小沢がファイルを読んでいる・・・。

 「うーん・・・。」

 思わず呻き声が出る小沢・・・『また・・・とんでもない事を彼女は考え出したな・・・。』・・・小沢は、正美の決断力と勇気に驚いていた。同時に、小沢の頭の中でも何かがひらめいた・・・机の上の電話を手にとる。

 「幕僚本部につないでくれ・・・急げ!」

 

 

 

 連合軍は、正美と小沢の提案を元に、一斉反攻作戦“オペレーション・チェックメイト”を五日後に実施すると発令し、各部隊に戦闘準備を命じた。

 

 

 

 作戦4日前、東京・天王洲・東西商事

 

 小川と西村は、宮原部長の部屋に呼ばれていた。

 「連合軍の一斉反攻作戦が4日後に始まる・・・目標は・・・上田博士のいる研究所だ・・・。」

 宮原が、ファイルを二人に渡した。黙々とファイルを見る2人・・・小川が、

 「あの研究所には・・・わが国の国民がいます。彼らを救出すべきです!」

 気持ちを抑えて提案する小川。宮原と西村が黙って小川を見る。

 「策はあるのか?」

 宮原の言葉に、西村が一冊のファイルを宮原に渡した。

 「これは、僕と小川さんで考えた作戦案です・・・。」

 宮原がファイルを読んだ・・・そして、

 「誰に作戦をさせる?」

 「僕達でやります!!」

 力強く小川が言った。小川と西村の顔を見る宮原・・・。

 「よし・・・幕僚本部に連絡しよう!すぐに作戦の準備をしてくれ!」

 「「わかりました!」」

 3人が立ち上がる・・・小川と西村は、部屋を出て装備を受け取りに行った。宮原は、幕僚本部に作戦を提案するために、電話を手に取った・・・。全ての運命の歯車が動き出していた・・・。

 

 

ガールズ・ファイター  〜ファイナル・オペレーション(中編)〜終わり

 

 

 

 

 こんにちは!逃げ馬です。G・F「ファイナル・オペレーション」も、中編が終わりました。

 とうとう戦いが始まり、連合軍は押されっぱなしです。

さて、正美さんは、とんでもない作戦を考え出しました。小沢提督も何かを思いついたようです。そして小川君たちも・・・一体どんな作戦になるのでしょうか・・・?。

後編は、アクションシーン満載・・・ハイテンポの展開で一気に結末に向かいます。よろしければお付き合いください。

 

では、最後までお付き合いいただいて、ありがとうございました。

 

 尚、この作品に登場する個人、団体は、実在する個人、団体とは一切関係のない事をお断りしておきます。

 

 

 2001年6月  逃げ馬

 

 


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