[戻る]

「天使のお仕事 第十一話 ワルキューレの心」


・・・さて、今日はどんな夢を見られるかな・・・”あたし”はベットに入って布団をかけながらそんな事を思っていた。

このお仕事が成功した時は結構良い夢が見られるからだ!

今日も一人幸せに出来たので、寝るのが楽しみなのである。

・・・あの子・・・嬉しそうだったな!・・・あたしはそんな事を思い出しながら電気を消した。

・・・いけない!・・・あたしは起き上がり”ヘアクリップ”を慌てて外す。

・・・やば〜・・・”おれ”はヘアクリップを置き静かに目を閉じた。



・・・どこ行くの・・・

・・・みずき、おいて行かないで・・・

・・・いやだ・・・いやだよ!・・・

・・・ひとりにしないで・・・



おれはそんな所で目が覚めた。

・・・どうして・・・あんな夢を・・・

いつもなら楽しい夢が見られるはずなのに・・・

数瞬後、おれはその理由に気付いていた。

・・・これは瑞樹になにかが・・・おれは夢を思い出しながら考えていた。

・・・今のは・・・それにあの人・・・窓から入り込む朝日とは裏腹に、おれは言い知れぬ不安が胸の中に広がって行くのを感じていた。

それは遠く離れた瑞樹も感じている事であった。





――少年少女文庫100万Hit記念作品――

原作 100万Hit記念作品製作委員会

第11話担当 kagerou6


第11話 「ワルキューレ(瑞樹)の心」




・・・アレは絶対瑞樹だよな・・・朝ご飯を食べながら夢の事を考えている”あたし”。

「・・・伊織ちゃん・・・」あたしの隣に座っている真織がそう話しかけてきた・・・ヘアクリップつけないとご飯食べられないの、こんなだから・・

「なに?・・・真織・・・」

「なにか・・・心配事でもあるの?」そう言ってあたしを見つめる。

「心配事なんて・・・ただ・・・」あたしはそう答えて言葉を切っていた。

・・・あの夢・・・話して良いのだろうか・・・そんな考えが頭を過ったからだ!

「ただ・・・なに・・」真織は聞いてくる。

「少し・・・・気になる事があって・・・」あたしは箸を置いて立ち上がると真織と隣の部屋に行く。



「実はサ・・・」あたしは真織に今朝の夢の事を教えていた。

もちろん”瑞樹”が出ていた事など無しであるが・・・

「あたしはそんな夢見た事余り無いから・・・」話を聞き終えた真織はそう答えている。

「でも・・伊織ちゃんがそんな夢を見たのはきっとその人になにかが起きるかも知れない予知夢じゃなくて?」

「予知夢・・・なのかな・・・」真織の言葉にあたしはもう一度あの夢を思い浮べていた。

・・・瑞樹の泣く顔・・・アレはいったい・・・あたしは不思議そうな真織をそのままにして考え込んでいた。

「その子の名前も判らないんじゃどうにも出来ないわ・・・伊織ちゃん・・・」

「お父さんに頼んでお払いでもしてもらおうよ」真織はそうあたしに呟いていた。

あたしはそんな真織に頷いた。





「おはよう・・・伊織、真織」今バスから下りたおれ達に瑞樹はそう言って話掛けて来た。

「瑞樹おはよう」おれはそう言って瑞樹に答える。

「なんだ?伊織・・・なにかあたしの顔に」瑞樹はそう言っておれを見つめる。

・・・しまった、つい気になって・・・瑞樹に言われて気付くどじなおれ。

今日は日曜日、ここ運動総合公園で我が天ヶ丘高校サッカー部の試合が行われるのだ。

我が天ヶ丘高校は予選を順調に勝ち進み準決勝まできていた。

後2回勝てば念願の全国大会!いやがうえにも力が入る。

おれ達はそんなわけでサッカー部を応援に来ていたのである!

もちろん瑞樹は応援団だからいて当たり前だが・・・



「いいか!・・・お前達!」瑞樹の声がグランドに響き渡る。

そしてその声を合図にしたかのように部員達は応援を始めた!

・・・凄い迫力・・・おれはその声を身近に聞いてそう感じていた。

・・・これを纏めているのが瑞樹なんだものな・・・一人学ランを来ている”女のこ"におれは目を向けた。

・・・何処か間違ってるよな・・・凛々しい瑞樹を見ながらそんな事を考えるおれ。

しかし、応援団の力か実力かこの試合も我が天ヶ丘に勝利の天秤は傾いていた。

何故ならゴールを守護する芹沢が1点も相手に与えなかったからだ!



「よし・・・これでウチの勝利間違いなしだな・・・」学ランを着込んだ瑞樹はそう呟き、脇にいたおれに声をかける。

その姿は見るものに力を与えるかのように輝いて見えた。

「伊織・・・残念だったな・・・こいつらは自分で幸せになれるヤツらばかりでな・・・」

「そんな事・・・気にしてないよ」おれは瑞樹に見透かされたのが気になりそう呟いた。

でも、今ここにいるホントの理由は別の事であったが・・・

「・・・後5分、最後まで気を抜くなよ・・・」瑞樹は叫び後の団員達から声が飛ぶ!

・・・この瑞樹にあんな秘密があるとは思えないのだけど・・・

凛々しい瑞樹を見つめたままおれはこの間の事を思い浮べていた。





「・・・パラレル・・・聞きたい事があるんだけど・・・」おれは、社務所でお茶を飲んでいるオオボケ天使パラレルに声を掛けた。

「イオちゃん・・・なにか?です〜」せんべいに出した手を止めそう聞き返してきた。

「前から聞きたかったんだけどさ・・・」

「・・・なんで”瑞樹”をパートナーに選んだの?・・・」

「イ・・・イオちゃん・・・どうして・・・今更・・」お茶を落しそうになりながら慌ているパラレル。

「だって・・・早川さんとかね・・・優しい人いるでしょ?」

おれの言葉にパラレルの顔に筋が浮かぶのを判った。

「ねえ・・・どして”瑞樹”だったの・・・」

「そ・・それは・・・」


「パラレル・・まさか”お兄さん”と関係でもあるの・・・」

「・・・どうして、そう思うわけですかあ〜・・・」

「だって・・・じゃないと・・・」

「じゃないと・・・なんです〜・・・」

「早川さんとか神様に仕える人は、多いはずなのに・・・」おれはそう答える。

「そんな人の方が神通力があってパラレルの役に立つのに・・」

「・・・・・」何も言わないパラレル。

「やっぱり・・・そうなんだね”瑞樹”が候補だったわけ・・・」



「ワタクシが”瑞樹”さんを選んだのは〜・・・”シード”の・・・」パラレルは話し出した。

「“シード”は・・・ホントに優しい心を持った人でないと力が発揮できないのです〜・・・」

「それって・・・」

「本当の優しさは”悲しみ”を知った人が持ってるのです〜・・・」

「・・・人を幸せにするには”悲しみ”を知った心がシードに必要なんです〜・・・」パラレルは言いきった。

「だから瑞樹なの?」

「彼女は”お兄さん”を亡くした悲しみをずっと持っていたから・・・自分でも気付いていないです〜・・」

「彼女のそんな”悲しみ”をずっと誰にも言わないで・・・心に仕舞っていたのです〜」

「・・・そうだったんだ・・・」

「彼女の無意識の中では”お兄ちゃん”の分まで生きようとしている・・・けなげなんです〜」パラレルは冷めたお茶を飲み出した。

「・・・だからあいつは・・・」おれはこの間あった事を思い出していた。(里花さん・・第10話)



「男らしいとか女らしいとか関係なく”あいつらしい”わけか」一人おれは呟いた。

「もしかして・・・一番幸せに遠いのが”瑞樹さん”かもしれないです〜」そう言ってせんべいをかじるパラレル。

「なんで・・・そんな事」

「だって彼女・・・”お兄さん”を追っているからです〜・・・」

意外なパラレルの発言におれは愕然とした!





「ご苦労・・・サッカー部の諸君!」瑞樹は団員達の先頭に立ち、試合に勝利したサッカー部を労っていた。

「諸君らの活躍はわが応援団の誇りでもある!・・・今後の活躍を期待する!」瑞樹はそう言ってサッカー部部員一人一人に声を掛けていく。

・・・瑞樹・・・結構、イイトコあるな・・・おれはそんな瑞樹を目で追いかけながらそう思っていた。



「ご苦労・・・芹沢・・・」瑞樹は芹沢にそう言い彼を見つめている。

そんな瑞樹の態度をおれは不思議に思いながら見つめていた。

「あのさ・・・芹沢・・・」瑞樹は恥ずかしそうに何やら言っていた。

「なんだよ・・・笹島さん・・・」芹沢もそう瑞樹に答える。

何せ振られた相手だ!

いくら近くにいても声を掛けにくいのだろう・・・おれはそう思って二人を見ていた。

「今日も無失点・・・ご苦労だった」瑞樹は芹沢にそう言って肩を叩いた。

「なんだ・・・その事か」芹沢は瑞樹から声を掛けられなにかを期待していた様だったのか元気が無い!

「もうすぐ決勝なんだが・・・大丈夫か?芹沢」瑞樹は自分が原因で元気を無くしたなんて考えないから一言一言が芹沢の胸を貫いていく!

芹沢はただ瑞樹に向かって笑うだけだった。



「なんだか・・・芹沢君・・・」おれと一緒に二人を見ていた真織はそう呟いた。

「芹沢君が・・何?」おれは言葉を途中で止めた真織が気になり彼女を見つめていた。

「だって・・芹沢君、笹島さんといる時凄く・・・」真織はそう言っておれを見つめる!

真織の目はうっすらと憂いを含んだ”女”の目をしていた。

・・・う、うぅ・・・その目!やめてくれ〜・・・おれはつい真織から目を逸らしていた。

「凄く・・・表情が変わるの!・・・」

「伊織ちゃん・・・貴方も”女のこ”なら・・・判るでしょ?・・」真織はそう言って更に顔を近づけた!

・・・や・・やばい・・・これ以上は・・・おれはスカートのポケットを探り一つのものを手にした!

「伊織ちゃん・・・芹沢君は笹島さんの事・・・」そう言って真織は更に近付いてきた。

・・・だめだ、こうなったら!・・・おれは手にしたものを瞬時に”髪”につける!

ジュワ!

・・・ふぅー、やばい、あれ以上遅かったら・・・”あたし”は目の前の真織を見つめそんな事を考えていた。

『大丈夫ですか?〜』いきなり気の抜けたパラレルの声がしてあたしは振り向いた。

「パラレル?・・・どこにいるの?」

『ちょっと樹の上です〜』

「早川さんに気付かれちゃうよ?」あたしはそれが心配になりそうパラレルに話掛けていた。

『気付かれません〜大丈夫です〜』のんきなパラレルの声がしてあたしは不安になっていた。



「どうしたのさ・・・こんな所に・・・」

『なんだか・・・イヤな予感がしたんです〜』言葉と内容が一致していないパラレル。

でも一応天使だし・・オオボケだけど・・・あたしはその”イヤ”な事を聞き出そうとしてパラレルに声を掛けた。

『それが・・・わからないんです〜』パラレルは何も考えずただ答えた。

・・・おいおいあんた天使だろう?・・・つい突っ込みをあたしはいれたくなった。

『こっちの方で・・・あれ?・・・』パラレルはココに来た理由を思い出そうとしていたが何せオオボケ天使!記憶力という言葉は存在していない!

「まあ・・・不幸が起きたらあたしが幸せにするから・・・」あたしはついそんな事を言っていた。

だが、数分後にそれは間違いだという事を知らされるのであった。

そして、ホントのシードの力も・・・







「あのさ・・・笹島さん・・・」芹沢は瑞樹にそう言ってグランド脇の倉庫の方に連れ出していた。

瑞樹はぶつくさ言いながら芹沢について歩いていく。

「・・・芹沢君・・・やっぱり笹島さんの事・・・・」真織は二人を見たままそう呟いた。

「でも・・・伊織ちゃん・・・」少しだけ真織は躊躇いがちに呟くと、あたしに振り向き話掛けてきた。

「・・・なに?・・・」そんな真織にあたしは少し戸惑っていた。

「・・・伊織ちゃん、芹沢君・・・笹島さんに取られちゃうのよ?・・・」意味ありそうな笑顔であたしを見つめて呟いている。

「・・・伊織ちゃん・・芹沢君と付き合っていたんじゃなくて?・・・」

「違う!・・・そんなんじゃないの」あたしはそう答えたが真織は信じてくれそうに無かった。

「芹沢君・・・人気あるのに・・」

「真織は・・・あたしと彼、どんな関係と思っていたの?」

「恋人!」真織はそう言ってあたしを見つめてくる。



「違う!」あたしははっきり真織に答えたが真織は意外そうな目で俺を見つめてきた。

「違う?・・ホントに???」真織はそう言って更に顔を近づける。

ドッキ〜ン!

あたしの心臓がバクバクしていた!

余りにも真織が近付いてしまったため”ヘアクリップ”が支えきれなくなっていたのだ!・・・男の伊織の心を・・・

「・・・伊織ちゃん・・・」

・・・この距離・・・夢に出そう・・・あたしは触れそうになった真織のくちびるにそんな事を考えていた!

「ホントよ・・・芹沢君とは仲が良いけど、それだけよ」

「信じられないな・・・伊織ちゃんの言葉・・・」真織はまだそういう。

「さっき,真織は自分で言ったのよ・・・芹沢君の事・・・」あたしはそう言い返して、なんとか真織の気持ちを二人に向けさせようと頑張った!

「それはそうだけど・・・」真織はさっき言った自分の言葉を思い出したのか声が小さくなっていた。

「アレを見て・・・さっきの言葉言える?」あたしは二人を指差しながら更に言った!

「そう・・・よね・・・」真織は更に声が小さくなり,そして二人を見つめている。

・・・チャーンス!・・・

「じゃなければ・・・瑞樹を・・・二人の事・・応援しないよ!」あたしはそう言って顔を二人に向けた。

そんなあたしの行動に納得?したのか真織も顔を二人に向けた。

「・・・そうね・・・芹沢君は・・・笹島さんの事・・・」真織はそう呟き二人を見つめている。

・・・このまま上手くいけそう・・・あたしはそんな真織をみてホッとしたが、実は考えが甘かった。

「ね・・・伊織ちゃん!・・・」いきなり真織はあたしに向かって話し出し微笑んだ!

「なに?・・・真織」いきなりの事に驚きはしたが、あたしの事が終わった事に余裕があったせいか二人を見たままあたしは呟き答えていた。

「芹沢君・・・笹島さんになんて言うのかな?」いきなり言い出す真織!

・・・???何が言いたいの?真織は・・・いきなりの内容!にあたしは真織を見つめていた。

「一度笹島さんに振られた芹沢君・・・が、・・・なんて言うのかしら・・・」

・・・あ・・・真織は・・・その言葉にあたしの背中を”冷たいモノ”が落ちていくのを感じていた。

「気になるよね?・・・あの二人?」真織はそう言い切りあたしの手を握る。

「そう・・だけど・・」そんな真織の行動にあたしは一つの予感がした。

恐らくは99,9・・・%以上の確率で当たる予感が・・・・

「見に行きましょ!・・・ネ、伊織ちゃん!」

・・・あ、やっぱり!・・・

あたしはその時、真織の後ろに黒い影を見た気がした。

・・・でも、確かに気になる・・・もともと真織に言われなくても二人が気になっていたあたしは真織の提案をすぐに受け入れた。



「たしかコッチに来たのよね?」真織はそういって倉庫の影から周りを見回す。

そんなあたし達の目にいきなり二人の姿が入りこんできた。

・・やば!・・・近くに来過ぎ・・・あたしは真織を押さえる様にして倉庫の後ろに隠れる。

「ちょっと・・伊織ちゃん・・・」いきなり押さえられた真織はそうあたしに言い出した!

「なに話しているか・・・聞こえないじゃない!・・」

「でも・・・二人に判っちゃうよ?」

あたしと真織はそんな事を倉庫の影で言いながらそっと顔を出し二人を見つめていた。



瑞樹に何やら呟いている芹沢と、そんな芹沢を無視をする瑞樹の姿があたし達には映っていた。

「芹沢くん・・・一途なんだね・・・」二人を見つめている真織はそうあたしに呟いた。

・・・”おれ”だってそうなんだよ!・・・真織にそう言いたかったが今は言えない。

ただ真織と二人を見ているだけであった。

「・・・結局、瑞樹次第なのかな・・・」

「笹島さん・・・芹沢くん嫌ってたものね・・・」

「そう”男女”って言われた事気にしてるから・・・」真織はそう言っている。

「それはあいつがボキャが足りないからで・・・」あたしは真剣な芹沢の姿になんとなく同情してそう答えていた。



「笹島さん・・・君は・・・」芹沢はそう瑞樹に声を掛けていた。

「なんだよ?」瑞樹は芹沢を見ずに答えた。

「好きな相手でもいるのか?」

「いきなりそんな事聞くか?普通・・・」瑞樹はあきれてそう聞き返した。

瑞樹は置かれていたブロックの上から話していた。

それが何を意味するかは判らないが、あたしには芹沢を”威圧”している様に思えた。

そう、彼を見下す位置に瑞樹はいたのだから!

「・・・いつも俺の事・・・」芹沢は瑞樹にいつまでもいい返事を貰えない事にそう思って聞いたのであった。

「・・・それともお前、女のこの方が・・・」

「おい・・・いくらなんでも・・・」瑞樹は完全に怒って怒鳴り返す。

「じゃあ・・何でだよ」諦めの悪い芹沢はまだ話掛けている。

「・・・だから・・・あたしの事はほっといて!・・」瑞樹はそう言って芹沢を睨み付けようと身体を振った。

その時瑞樹が乗っていたブロックが滑り、崩れ出した!

「・・・瑞樹!・・・」芹沢はそう叫び、瑞樹を突き飛ばした!

「いてーな・・・いきなりなにすんだ・・・え?・・・」瑞樹は突然自分を突き飛ばした芹沢にモンクを言おうと彼を見て言葉を失った!

芹沢はブロックと共に倒れたまま動こうとはしなかったからだ。

そして、芹沢の破れたユニホームからは紅い血が流れていた。





瑞樹の心を一瞬暗い記憶が駆け抜けた!

目の前で倒れた男のこ

紅い色を纏っている男のこ

自分の大切な男のこ

そして、二度と会う事の出来ない男のこ

瑞樹の中の誰にも言わなかった記憶

二度と思い出したくないと思っていた記憶

それは瑞樹の心の奥から溢れだしていた!



「芹沢・・・なんでよ!」瑞樹は倒れている芹沢に向かいそう呟き近寄る。

「・・・どうして・・・あたしなんか・・・」瑞樹は廻りの事を考えずにただ芹沢を見つめ泣いていた。

その瑞樹はいつもと違ってだれが見ても”女のこ”そのものだった。

「・・・どうしてよ!・・」瑞樹はただ芹沢を抱いたまま呟いている。

そんな瑞樹にあたしは声を掛けられないでいた。



「・・・伊織・・・」瑞樹はポツリ呟いた。

その弱々しい呟きにあたしは瑞樹を見つめたままなにも言えないでいた。

「・・・いるんでしょう?・・・」瑞樹は芹沢を抱いたままで、そう呟いている。

「・・・ゴメン瑞樹・・・気になって・・・」あたしと真織は倉庫の陰から顔を出してそう答えた。

「・・・芹沢が・・・あたしの事・・・」瑞樹は芹沢を抱いたまま呟くと赤い目であたしを見つめてきた・・・涙に濡れた赤い目で・・・

「・・・瑞樹・・・ケガ・・・無いか・・・」そんな時芹沢は弱々しい声で瑞樹に声を掛けてきた。

「・・・何で・・・あんな事したの・・・」瑞樹は芹沢のした事が理解できていないらしく彼に話掛けた。

「瑞樹は・・・女のこ・・・じゃない・・か」芹沢はそう呟いて微笑むと意識を失った。

「バカ!・・・どうしてあたしなんかに・・・」瑞樹は弱々しい声でそう芹沢に呟くとまた腕に力を入れた。

だが、芹沢はそんな瑞樹に何も答えてはくれなかった。



「良いじゃないの・・・笹島さん・・・」真織は瑞樹に近付くと優しく話し掛けた。

「なによ真織・・・何がいいのよ!」突然の事に瑞樹は真織を睨みつけていた。

瑞樹には彼女の言った言葉の意味が判らないのだろう。

真織は瑞樹の手を芹沢の胸に当ててまた呟いた。

「芹沢君の心の中ではね・・・”瑞樹さん”、貴方だけなのよ”女のこ”は・・」真織はそう言って瑞樹を見つめる。

そんな真織の言葉に驚き顔を赤くする瑞樹。

「彼は自分に素直なだけよ!・・・好きな”貴方”にね・・・」

瑞樹は真織の言葉に芹沢を赤い目で見つめていた。

「・・・好きな娘のために彼は・・・きっと・・・」

瑞樹は真織の言葉にやっと気付いたのかまた泣き出した。

そう、それは瑞樹の初めての女のこらしい感情だったのかもしれない。

自分を大切に思ってくれている人に気付いた証かもしれない。

ただ、瑞樹は芹沢を抱いたまま泣いていた。



「・・・伊織・・・」暫く泣いていた瑞樹はそう言ってあたしの事を呼んできた。

「瑞樹・・・なに?」

「あんた・・・人を幸せにするのが仕事なんだよね?」

「バカ・・・瑞樹・・・こんなとこで・・・」あたしは真織がいるのでつい言い返していた。

「あんた・・・こんなあたしより真織のほうが大切なんだ・・・」瑞樹はおれを見つめそう呟く。

「・・・そうじゃないけど・・・」

「じゃあ・・伊織・・・お願い!」赤い目で瑞樹はあたしを見つめ呟いた。



「伊織ちゃん・・・いったい”仕事”って・・・・」真織は不思議そうな顔でそう聞いてきた。

芹沢を抱えていた瑞樹とあたしの会話が余りにも不自然だったので気になったのだ。

「伊織ちゃん・・・あたしに何か隠してない?」真織はそう言い、あたしと瑞樹を見つめる。

「そんなことないわよ・・・ネ!瑞樹」あたしはそう言って瑞樹を見つめたが、瑞樹はそんな余裕など無いのだろうフォローは無かった。

・・・やっぱり・・・言うしかないか・・・あたしは右手をヘアクリップに添えて真織を見つめた。

「あのネ・・・真織」そう言いながらヘアクリップを外して”おれ”は真織を見つめる。



バサバサバサ!



頭上からそんな音がしてパラレルが降りてきた・・・なぜか、真織の頭上に・・・

「・・・真織・・・危ない・・・」おれはそう声を掛けようとしたが遅かった。

一瞬にして真織は潰れていた?!

「ふ〜い・・・着地成功です〜」そう呟くパラレル。

「パラレル・・・足元・・・」おれはそうパラレルに呟くと、パラレルは自分の足元を見て驚いた!

「真織さん・・・なんでこんな所で寝ているんですか〜?」そう呟くパラレル。

・・・お前が真織の上に降りたからじゃないか!ボケ・・・おれはそう言いたかったが口には出さなかった。

これはまさしく神?の恵だったからだ!

・・・これで真織に言わなくて済む・・・おれはそう考え寝て?いる真織を見つめていた。



「それより・・・パラレル・・なんでここに?・・・」おれは真織をパラレルから助けだし?木陰に寝かせながら呟いた。

「・・え・・み・瑞樹さん達の事が気になって・・・そうだ!イオさん一大事です〜」パラレルはそう言って瑞樹達を見つめた。

「真織さんの事は後にして〜・・・」パラレルはそう言っておれを見つめる。

「早く助けるです〜」

・・・確かに今は瑞樹たちを・・・おれはパラレルを見つめた。

「イオちゃん・・・早くです〜・・・・」パラレルの言葉におれはまた二人を見つめた。



「・・・瑞樹・・・」おれは瑞樹に声を掛けた。

「伊織・・・お願い・・・芹沢を・・・彼を・・・」瑞樹は芹沢を抱いたまま振りむき、涙を溜めたままそうおれに呟く!

「・・瑞樹・・・始めるよ・・・」おれはそう言って静かに目を閉じた!

・・・そうだな、瑞樹に頼まれなくたって芹沢を・・・おれにもそんな想いがあったからだ。

深呼吸して目を開けたおれは芹沢の胸に手を置いた。



おれの願いがシードを動かし”人を幸せ”にする力を発揮する!

判りやすい”不幸”ほどおれは悩まないで済むからミスも少ない。

最近経験値が上がったのか傷を塞ぐ事も出来るようになったのだ。

・・・傷さえ塞げば・・・おれは胸に置いた手に力を入れ”不幸の元”が消える事を願った。

・・・傷よ消えろ!・・・

誰が見ても間違いの無い”願い”だ!

おれの体の中でシードによって”光”が産まれ置いた手に移動してくる。

さらに、手のひらに集まった光は”シート”になって芹沢の体を移動していく。

傷の処に来た光は芹沢に吸い込まれる様に消え、一瞬芹沢の腹部が光った。

・・・恐らく、これで・・・おれは脱力感に包まれていた。

シードを発動した時はいつもこうだからだ。

おれは傷の確認の為、光の消えた所に手を当てた。

ヌル!

指先にあってはならない感触が走る!

・・・そんな、傷が・・・おれは一瞬パニクってしまった!

「伊織・・・どう?」瑞樹はおれの様子に聞いてきた。

「だめ・・・上手くいかない!」おれは瑞樹では無くパラレルを見つめ叫んでいた。

その声に気付いたのだろう瑞樹の顔から血の気が引いていく。

「・・・伊織・・・何とかしてよ!」声だけは勢いがあったがいつもの瑞樹の迫力は何処にも無かった。





「瑞樹ちゃんの力が必要なんだわ〜」いつのまにか瑞樹の顔を見ていたパラレルは気の抜けた声でそう呟いた。

「それって・・・いったい」おれはこの能天使に聞く。

「今必要なのは・・・彼女の中の”想い”の力なんです〜」

「今だけシードを瑞樹さんに動かします〜」パラレルはそう呟いた。

「おい!・・・パラレル」おれはそう言いながらパラレルに手を伸ばした。

「何をするんです〜?」いきなりおれが乱心したんだろうと感じたのかパラレルは瑞樹の後ろに隠れた。

「このオオボケ天使!」おれはそうパラレルに向かい呟いていた。

「シードを移動できるならそう言ってくれれば良いだろうが・・・おれを早く戻せ!」おれは瑞樹の後に隠れているパラレルを睨みつけ近付く!

「・・・あの・・・イオさ〜ん・・・」パラレルはまた気の抜けた声を瑞樹の後から出している。

「なんだよ!」おれはそう言ってパラレルを掴み上げた。

「・・・ちょ・・ちょっと・・・まつです〜・・・」パラレルはおれの迫力に負けたのかいつもの様に飛んで消える事が出来ないでいた。

「この・・・さっさとおれを元に戻しやがれ!」おれは逃げられない様にしてパラレルを引き寄せた。



「伊織・・・彼が・・・」瑞樹の声におれは我に返った。

今こんな事をしている時じゃないからだ。

パラレルの御礼?はいつでも出来るが、芹沢を助ける事は今しか出来ない!

瑞樹の顔を見たおれはパラレルを掴んでいた手を離し、パラレルを瑞樹の隣に連れていく。



「おれより瑞樹の方が”シード”を動かすには適任なんだろう?・・・さっさとおれから”シード”を抜いて・・・・」おれはパラレルにそう話掛けた。

・・・このまま”男のこ”の戻れれば・・・そんな気持ちが?あったからだ・・・一部真織の事が引っかかっていたが・・・

おれはパラレルを睨み付けパラレルが”シード”を動かすのを待つ事にした。

「・・・イオさん・・・勘違いです〜・・・」パラレルはおれの質問にそう言い返した。

「なんだよ?ここに来てそんな事を言うつもりか!」おれはまた睨みパラレルに言い返す。

「・・・元には戻んないんです〜・・・」パラレルは表情を変えずにそう言う。

「どうして?・・・シードが抜けたら男に戻るんじゃ・・・」おれはそうパラレルに聞いていた。

「イオさん〜・・・勘違いです・・・ワタクシは”動かす”と言ったのです〜・・」パラレルはそうおれに言った。

「それっておれから抜くんじゃ?」

「違います〜」きっぱり言うけど抜けて聞こえるパラレルの声。

「どう違うんだよ?・・・パラレル」おれはパラレルの言っている言葉を理解できないで聞き返していた。



「伊織さんの中のシードに〜」パラレルはおれの胸に手をおき、片手は瑞樹を指差した。

「瑞樹さんの力が入るように少しだけ”シード”を瑞樹さんに動かすんです〜」パラレルはそう言った。

「それって・・・つまりは・・・」

「シード本体は伊織さんの中のままです〜」パラレルはそう言った。

「じゃあ・・・おれは・・・男には・・・」

「そのままです〜」そうきっぱり言うパラレル。

・・・なんだ、期待して・・・おれはそう言いそうになったが瑞樹のことを考えるとそれ所ではない!



「パラレル・・・どうやっておれから瑞樹に移動するんだ?」

「それはです〜・・・瑞樹さんの〜手を取って・・・」パラレルに言われおれは瑞樹の手を取る。

・・・柔らかい手だな・・・瑞樹の手を握りながらおれはそんな事を思っていた。

普段の瑞樹の行動を知っているとそれは意外なほどであったからだ。

「・・・それで・・・」おれはパラレルを見つめこれからどうするのか催促した。

まさか、手を握って終わりのはずは無いからだ。

「瑞樹さん・・・イオさんの手を思いきりツネって!ください・・・涙が出るくらいです〜」パラレルはそう言って瑞樹に指示した!

・・・おい・・・瑞樹!・・・おれはそんなパラレルの言葉に顔から血が引いていくのを感じていた。

何せ瑞樹は女の癖に”男のおれ”よりも握力があるからだ!

・・・そんな瑞樹にやられたら”あたし”の手は・・・

「あの・・・瑞樹サ・・・」おれがそういう前に瑞樹の手は握っていたおれの手を思いきりツネっていた!



イテ〜



「パラレル・・・てめ〜いったいどんな意味でこんな事をさせるんだ?」おれは思いきり怒鳴っていた。

「あの〜イオさん・・・」そんなおれにパラレルはとぼけた口調で言う。

「早くしないと〜・・・もう一度瑞樹さんにツネって貰う事になりますよ〜?」

「なんでだよ?」おれは涙も拭かずに言い返した。

「だって・・・が必要なんですもの・・・・」パラレルはそうおれと瑞樹に言う。

「なんで涙なんだ?」おれはそう聞き返していた。

「涙には〜・・・いくつもの〜・・・」パラレルはそう説明を始めた。

「なんだよ・・・思い○がある・・・なんて言ったら・・」おれはそうって睨みつけた!

「涙は〜・・・心に繋がっているんです〜・・・」パラレルはそう言った。

「心を〜・・・繋げるには〜・・・二人の手が涙でぬれているのが良いんです〜」

・・・それでおれはこんな目にあっているのか・・・わけを聞いておれは唖然としてしまった。

・・まったく最初から言えば良いのにパラレルのヤツ・・・おれはそう思いついパラレルを睨みつける!

「どうかしましたか〜」パラレルの惚けた口調に今更諦めお互いの涙を手に受け、そして手を合わせる。



「じゃあ・・・はじめるよ〜」こんな時でものんきな声でパラレルは言った!

パラレルが気の抜けた声で呪文を唱えると一瞬おれと瑞樹が輝いた!

・・・なんだ、これは・・・おれは瑞樹を見つめると瑞樹はそんな事に気付きもしないのかただ俺の手を握ったまま芹沢を見つめていた。

パラレルの新たな呪文が聞こえ瑞樹を握っていた手の感触が薄れてくる。

まるで瑞樹の手がおれと同化していくような感じだ。

それと同時におれは昔の事を思い出していた。

瑞樹と遊んでいた昔の事を・・・



・・・違う!これは瑞樹のこころ?・・・思い返していた記憶と感情の相違におれはこの記憶が瑞樹のものである事に気付いた。

・・・いま、おれは瑞樹と心が繋がっている・・・

おれが瑞樹を見つめると瑞樹はただ芹沢を見つめたままだった。

そんな瑞樹のおれは何も言えなかった。



「・・・今からシードを瑞樹さんに・・・」パラレルの声におれは握っていた手に力を入れる。

・・・なんだか、むずむずするな・・・おれはおかしな感触に手を離そうてとしてしまった。

「いけません・・・離しちゃ・・・」パラレルの叱責が飛ぶ!

おれはそんなパラレルにまた手に力を入れた。



むずむずした感覚が手のひらに移動している様で、瑞樹と握っていた手がより輝き始める!

・・・これが、シード?・・・おれはその感覚にそう思うしかなかった。

「そろそろです〜」パラレルはおれを見てそう言った。

「・・・え・・・なに?・・」驚くまもなくおれは手の感覚が変わっている事に気付いた。

瑞樹と握っていた手の感覚はもはやなく、繋がったような感じだ。

そしてむずむずした感じが移動を始めた。

おれの手から瑞樹に・・・

瑞樹の手が段々と輝きを増していく。

そんな感覚に瑞樹は驚いてパラレルを見つめた。

「・・これ・・・」

「瑞樹さん・・・それで芹沢君が助かるんです〜」パラレルはそう瑞樹に呟いた。

そんなパラレルの声に瑞樹はまた芹沢を見つめる。

「イオさん・・・瑞樹さんの”想い”を・・・」パラレルの声におれは瑞樹から流れてくる想いを心で受け止めた。

しかし、流れてくる想いには何かが足りないのかシードの力にはならなかった。

「イオさん・・・早くしないと・・・」パラレルがそう言っておれを見たが、芹沢の傷はなくならなかった。



「まさか・・・瑞樹さん・・・」パラレルはそんなおれに気づいたのか瑞樹に声を掛ける。

「時間がないです〜・・・瑞樹さんはやく〜・・・貴方の気持ちを・・・」パラレルはそう瑞樹に呟いた。

「あ・・・あたしの・・気持ち?」パラレルの問いかけに驚き聞き返す瑞樹。

「そうです〜・・・貴方が今まで人に言わなかった"その想い”です〜・・・」パラレルはそう瑞樹に言った。

「でも・・・それは・・・」瑞樹は躊躇っていた。

今まで口に出した事もない自分の”想い”

「今・・・芹沢君を助けられるのは・・・」パラレルはそう言って瑞樹を急がせている。



瑞樹は一旦目を閉じ一呼吸しておれを見つめてきた・・・いや、目で話掛けてきた。

・・・伊織、言わないで!・・・そんな気持ちが瑞樹の目から聞こえてきた気がする。

おれは瑞樹に頷いた!

いきなり瑞樹からの”想い”が増えおれは戸惑っていた。

流れ来る”想い”の一つ一つに力があったからだ。

・・・これが瑞樹の”想い”・・・

おれはその”想い”にパラレルの言った言葉を思い出していた。

・・・そうか、これが・・・

「芹沢・・・・眼を開けて!」瑞樹ははっきりとそう言った瞬間、流れ来る”想い”が溢れかえった。

・・・今だ・・・瑞樹の”想い”を・・・おれは、瑞樹を芹沢を見つめシードを使った。

シードはおれの中の”瑞樹の想い”を力に換え、さっきとは比べ物にならない光を発した!

・・これが瑞樹の・・・力・・・その光におれはパラレルが瑞樹を選んだ訳を知った。

そして・・・シードの本当の力も・・・

その光は芹沢を纏わりつき、身体を覆い始める!

まるで”光の包帯”の様に全てを包み込んでいく。

芹沢を覆い尽くした光は一瞬煌き消えた!

芹沢の傷と共に・・・



「・・・芹沢・・・」瑞樹の消えそうな声がまた聞こえた。

「大丈夫です〜・・・傷はもうないです〜」パラレルの声を聞いても瑞樹は芹沢の名前を呼びつづけていた。

「・・・瑞樹、大丈夫・・・」おれはそう言って瑞樹の手を芹沢の胸に置いた。

小さな鼓動が手に伝わり瑞樹は芹沢を見つめていた。

そんな瑞樹の頬を伝わり安堵の涙が零れ芹沢を濡らした。

「・・・瑞樹?・・・」芹沢はその涙にそう口をあけた。

「・・・良かった・・・」瑞樹はそう言って芹沢をまた抱きしめていた。





「真織・・・大丈夫かな?」おれは瑞樹の事が終わったのでもうひとつの問題が気になりだした。

「大丈夫です〜・・・」パラレルはそう言って真織を見つめる。

・・・お前のせいだろう?まったく!・・・そう言ってやりたかったがそのおかげで秘密が守られたのも事実であるからなにも言えなかった。

「まかせてくださいです〜」パラレルはそう言ってゴニョゴニョなにかを呟きだしていた。

・・・一応天使だし・・・大丈夫かな・・・おれと瑞樹は芹沢を連れその場を後にした。



「あの時・・・お前は・・・」芹沢と別れ・・・部員は団体で移動するから・・・運動総合公園の入り口でバスを待ちながらおれは瑞樹に話しかけていた。

「あんな素直な瑞樹見たのはじめてだよ・・・」おれは瑞樹にそう呟いた。

「・・・お兄ちゃん・・・」珍しくしんみり呟く瑞樹。

「・・・やっぱり・・・」おれは瑞樹の言葉に頷いた。

「お兄ちゃんって?」後から声がして振りかえると真織が女の人と立ってコッチを睨んでいた。

「ま・・・真織、大丈夫なのか・・・」瑞樹はそう言って話題を変えようとしている。

「二人とも冷たいよね?・・・貧血で倒れた私を一人にしておくなんて・・・」真織は怒ってそう言う。

・・・あれ?・・・真織・・覚えてない!・・・おれと瑞樹はつい真織を見つめていた。

「なによ?・・今更心配そうな目をしても・・・」真織はおれ達に見つめられ不思議に思ったのかそう言う。

・・・記憶・・・消したのか?・・おれは瑞樹を見つめ目でそう訴えた!

だがそんなおれに気付いてないのか瑞樹はただ真織を見つめている。

「なんとか言いなさいよ!」真織はそう言っておれ達に答えを求めてくる。

「・・・あ・・・それは・・・その・・」おれと瑞樹はあの事を話す訳にはいかないので・・・シードとか真織が倒れた本当の事とか・・・、ただ黙っていたのだ。

「まったく二人より・・・”お姉様”の方が優しいわ」真織は後に立っていた女性の腕を組みそう言った。

それはパラレルの化けた姿であった!

「・・・あたしが気付くまでいてくれたんだから・・・」

・・・パラレル?なにをしたんだ?・・・おれは不思議そうな目でパラレルを見つめていた。

「・・・二人は〜サッカー部員を見送って〜・・・」パラレルはそう真織に言った。

「でもあたしの事忘れて・・・バスを待ってるなんて・・・」

「「ゴメン!」」おれと瑞樹はそう言って真織に謝った!

このまま真織をいじけさせていると何をしだすか判らないからだ!

とりあえず?おれ達に謝って貰って少し機嫌が良くなったのか真織は微笑んでおれに近付いた。



「伊織ちゃん・・・さっきの事なんだけど・・・」真織はそうおれに聞いてきた。

「さ・・・さっきの事って?・・・」おれは誤魔化そうとして聞き返す。

「・・”お兄さん”ってなに?・・伊織ちゃん・・・」真織はおれにそう詰寄ってきた!

「そ・・・それは・・・」おれはどう返事していいか判らずにいた。

ここで本当の事を言ったらおれの明日はない!そう思ったからだ!

おれは瑞樹を振り返り見つめた。

・・・ダメ!・・・

瑞樹の目はそうおれに言っていた。

・・・やっぱりな・・・

おれは二人に挟まれて眩暈を感じていた。

「・・・笹島さん・・・・どうして?」そんなおれに気付いたのか真織は、瑞樹に振りかえり追及を始める!

「あのな・・・だから・・」瑞樹は言いたくない事になんとか逃げようと必死だ!

「・・・ねえ・・・笹島さん・・・」真織の更に追及していた!



「瑞樹・・・帰るぞ!」良いタイミングで団長から声が掛かり瑞樹は走り出した。

「じゃあ・・・真織!」ただ一言を残して・・・

・・・上手い事逃げたな・・・おれはそんな瑞樹に目を向け笑っていた。

「じゃあ・・伊織ちゃん♪・・・」真織がそう言い近付く事を考えず・・・

おれは結局寝るまで真織の責め?にあっていた。



「・・・おはよう・・・」翌日、廊下で真織は前を歩いている瑞樹に話しかけた。

「よ・・・おはよう、真織、伊織・・・」瑞樹は答えさっさと教室に入っていく。

「・・・変わってないか・・・」ため息を付きながらおれは肩を落した。

「・・・変わってないって?・・・」おれの言葉に真織が反応しそう呟く。

「あの・・・それは・・・」おれは真織を誤魔化しながら、昨日の事が幻の様な気がしてならなかった!











今回、出番が無かったシリアルです・・・ぼくだってメインキャラなのに・・・

・・・ぼくの出番もうないの?・・・

ま、ぐちはこれくらいでサ・・・ハァー・・・



小さな髪飾りが一人のヒロインを変えた!

彼女の心に眠る”少女”はいったい?

小さな悪戯が・・・”神”のチカラをも凌駕し、真実の愛を!



第12話予告

作 ことぶきひかる

「瑞樹は瑞樹」



君は神を凌駕する真実を見つめられるか!


ほっほっほ・・・皆さんご機嫌いかが?
"ヒロイン”でおなじみ?コメディ作家?kagerou6です!
今回里花さんの後を受け第11話を私が書かせていただきました!
この後は大御所!ことぶきさんです
皆さん楽しみにしてください


◆ 感想はこちらに ◆