戻る


§本当の自分 第2版

連載第3回

第1章


 2001年6月14日


 その日、母がいつものように仕事に出かけた時間を見て、僕は1階に降り、居間に行った。居間には、朝食が、普段通りに用意してあった・・・と思ったら、食卓代わりの居間のテーブルには、今朝の日付の朝刊が、置かれていただけだった。
「あれ?」
 朝食は、間違いなくといっていいほど、かならず用意してあるはずなのに。

 最近の僕は、あまり食が進まない日が続くこともあったり無かったりで、これはどういう理由でそんな風になってしまっているのかはわからない。今日は、しっかりと空腹感があったから、母が出かけた後に降りてきたというのに。

「どうしよう・・・。」

 母は朝が早い。いつも朝8時になる前には出勤してしまう。小学生だった頃は、いつも毎日、母と一緒に出かけるのが日課になっていた。もっとも、中学に入ってからも、短い間はそうだったけど。
 台所の炊飯器を見てみると、”保温”のランプがついていない。中身を見てみると、炊かれる前の米が、しろく濁った水に浸かって入っている。
「あれ・・・?」
 ついでに言うと、台所の流し台には、今朝、母が朝食で使ったような、汚れている食器も見あたらない。ここのところ、母が朝食で使った食器も僕が洗っていたから、見あたらないのは変。
 そして普段、パンを置いておくかごの中を見る。でも、珍しく何も入ってはいない。食パンまで無いのは、本当に珍しい。戸棚には、缶詰やインスタントラーメンの類はあるけれど、どうも朝食向きじゃない。

「う〜ん、もしかしたら、炊飯器の予約忘れてた・・とかなのかなぁ。」

 僕は、そう思うと、今度は冷蔵庫の中を見る。案の定、昨夜の残り物・・・も無かった。


 結局、僕は部屋に戻ってしまった。朝食を用意することも出来たけど、一人でこれから用意するのは面倒かな、と思ったから。それにしても、母はいったいどうしてしまったんだろう?


 その頃、悠の母は、朝一番の東京行きの新幹線の車内にあった。目的はただ一つ、最初に悠を診察した市立病院の医師、鈴木健史(たけし)によって紹介された、弁応大学付属病院の医師、山河内雅(みやび)に訪問する為に。


 母が、そのような事をしているとは、悠には一欠片も感じない。ただ単に、昨夜、炊飯器の予約スイッチを押し忘れて、朝食を食べずにそのまま出勤していったのだろうと、思うばかり。


 しかし、悠が部屋に戻り、そして急に彼が感じていたのは、彼の心とは裏腹に過ぎ去っていく時間。さっきまでの空腹感が、さらにそれを強調させてしまっている。
 急に、なにか絶望のような気持ちに包まれていく気分なのか、悠はベットの上で小さくなっていた。今の彼は、明らかに過度の情緒不安定になっている様相にみえた。さっきまでの空腹が、強く裏返しになってしまっている。
 急に落ち込んでしまった彼は、ただつぶやいた。
「どうして、僕はこんな事になってしまったんだろう・・・。」
 いくら答えを出そうとしても、出せない。



 そして、時刻が、10時になろうとした頃、和代は、東京の弁応大学付属の総合病院の門をくぐろうとしていた。
「ここが、弁応大学ね・・・。」
 地元の市立病院と比べると、少なく見ても4倍以上の大きさの建物。東京の都心部にある病院を象徴しているのか、大きな立体駐車場まで併設されている。まるで、大型量販店のようになっている。
 テレビで何度か見たことのある、弁応大学付属病院の建物。なにしろ、著名人もよく使っているという病院。知名度は国内の病院のなかでも一番上だろう。そんな病院を、紹介されたのだ。悠の病気は、それだけ難しいのだろうか。和代は、その病院の規模に驚きながらも、建物の中に入っていく。

 とても広い待合室。これだけで、普通の学校の体育館よりも広いスペースが取られている。そこには、たくさんの老若男女が、待ち続けている。

 和代は、案内板に従って行動していくのに、精一杯になってしまっていた。


 やっぱり、短いですか? 小出しにしかいまのところ書けない私は、駄目駄目でしょうか?

 本当の自分 
  Original script by Ayano Kamikawa / studio "Horizon" since 2001
             ayano_k@studio-horizon.org
             http://www.studio-horizon.org/

戻る

□ 感想はこちらに □